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原語 か ら直訳 された 新奇 な隠喰文 の即時的 な理解

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原語 か ら直訳 された 新奇 な隠喰文 の即時的 な理解

社会情報学科 山 公

喰 (metaphor)を使 って,話 し手や書 き手 (以下,話者 と呼ぶ) 自身が これまで知 らなかったことが らを創造 して表現することがある。それまで話者 の長期記憶 になかったことが らであるので,何 にた とえるか (愉辞 [vehicle] と呼ばれる) を決めることに加 え, これか らた とえようとしている対象 (被愉 [topic]と呼 ばれる) と愉辞 との間の意味関係 を,話者の作業記憶の中で 創 出する。

この発話 を,聞 き手や読み手 (以下,聴者 と呼ぶ)が隠嘘 として理解 しよう とす るとき,被曝辞 と喰辞 との間にどの ような意味関係があるか を聴者 も創造 的に探索す る。では,どのように してその意味関係 を聴者 は探すのであろうか。

隠 愉 文 を 理 解 す る 際, 被 愉 辞,喰 辞 そ れ ぞ れ か ら連 想 し う る 属 性 (attribute,property)群が聴者の心 内にあ り,それ らを文の隠帳的な解釈 に 使 う。愉辞,被愉辞の間に意味関係 を認めることとは,愉辞の属性群 と被愉辞 の属性群の間に何 らかの対応関係 を見つけることとされて きている。 この点で は,隠輪 的 な理解 を扱 う研 究者 の間で一致 している (た とえば,Bowdle&

Gent血er,2005;Gentner&Bowdle,2001;Gentner,Bowdle,Wolff,&Boronat, 2001;Giora,2003;Giora,&Fein,2001;Glucksberg&Keysar,1990;Gluckberg,

McGlone,&Manfredi,1997;Ortony,1979,など)0

属性 は愉辞,被愉辞 ともに無数にある。それゆえ,愉辞,被喰辞の間の意味 関係 も無数 にあ りうる。 とすると,冒頭で述べた問題 は次の ように言いかえら れるであろ う。す なわち,新奇 (novel) な隠愉文 を理解す る際,愉辞 と被檎 辞 との間に無数にある属性群の中か らどの ように して解釈 にな りうる属性群 を

〔1〕

(2)

2 第59 2 ・3号 聴者 は選びだすのか。

過去の隠愉文理解過程の研究が示す ところによれば,文脈の後 におかれた文 を隠略 として理解するのに要する時間は長 くて も4, 5秒程度である (た とえ ,Blasko&Connine,1993;Inhoff,Lima,&Carroll,1984;Ortony,Schallert, Reynolds,& Antos,1978;Shinjo& Myers,1987を見てほ しい)。 こうした隠檎 文理解過程の研究では文のオ ンライ ン的な理解 を問題 に して きている。 1文 を 理解す るのに10秒 を超 えるような状況は鑑賞 (appreciation)と呼ばれ,理解 (comprehension)の状況 とは区別 される。 これまで見聞 きしたことのない新 奇 な隠喰文 を文脈か ら切 り離 し,単文で呈示 した とすると,そ うした状況が し ば しば生 じる。そこで,本研究では,文脈 によって一定の解釈 に誘導 された文 を新奇 な隠嘘 として どの ように聴者が理解す るかを調べ ることに した。

文脈の後 に置かれた文の新奇 な隠輪 としての理解 を直接調べた研究はこれま でほ とん ど行われて きていない。その理由の一つには,実験材料 として,新奇 な隠喰文その もの,お よびそれを新奇な隠帳 として理解 させ る文脈 を数多 く用 意す ることが研究者 にとって も難 しい, とい うことがあるのであろう。本研究 では, 『直訳 された隠喰文』 (後述する) を利用することで,新奇 な隠喰文 とそ れを新奇 な隠喉 として解釈 させ る文脈 を実験 的に設定 した。

一度で も聞いた り目に した りした表現であれば,過去 にその表現 を理解 した 経験 を使 うこともで き,二度 目か らはたやす く理解で きるようになる。た とえ ば, 『男 は狼 だ』 や 『女性 は太陽である』等の隠喰文は,多 くの人に とって過 去 に理解 した経験が多 くあ り,そ うした解釈の結果 をそのまま使 って理解する こともで きる。 しか し,新奇 な隠喰文の場合,そ うした過去の経験 を使 うこと はむろんで きない。

過去 に理解 した経験がある隠愉文,す なわち慣用的 (idiomatic)な隠喰文1)

1)より正確には慣習的 (conventional)な隠喰文と呼ぶべ きであろう。ただ,本研 究の実験の中で用いている集合関係を表す文も慣習的な文と言える。誤解を招か ないようにするため,本稿では慣用的 (な)隠喰文という言葉で統一することに する。

(3)

原語から直訳された新奇な隠喰文の即時的な理解 3 を理解することの中には,喰辞が (文字通 りのカテゴリーを指示す ると同時に) 隠喉的なカテゴリーを指示すること, さらに被愉辞の指示する文字通 りの カテ ゴリーがその隠帳的なカテゴリーに含 まれる関係,すなわち集合 関係 を認める ことが含 まれる (Bowdle&Gentner,2005;Gentner&Bowdle,2001;Gluck‑

sberg&Kayser,1990;Gluckberg,McGlone,&Manfredi,1997), とされる。

隠喰的に理解す る経験 を重ねた結果,この隠橡的なカテゴリーを,喰辞の ( 輪的な)語義 (sense)として聴者の長期記憶 に登録す るようになる。登録 さ れ た慣 用 的 な喰 辞 は, 隠喰 的 な語 義 と文 字 通 りの語 義 を併 せ もつ 多 義語 (polysemousword)になる (Bowdle&Gentner,2005;Gentれer&Bowdle, 2001)0

この経過 を具体的な文 を使 って考 えてみ よう。AisB』(A,Bは名詞 また は名詞句)の形の文 を隠輪 として理解 した とすると,Aが被曝辞,Bが愉辞 と 呼ばれることになる2)。 この形 をとる文 を隠橡 として理解す る経験 を重ねるう ち,喰辞 『B』 を一種の多義語 として長期記憶 に登録す るようになる。た とえ ,『Mysurgeonisabutcher』 は多 くの英語母語話者 にとって きわめて慣用 的な表現であるが,か りにこの文 を隠唯 として 2, 3度ほど理解 していた とし てみ よう。 この文 を見 た (読んだ)結果,聴者 は butcher』が (文字通 りの カテゴリー 『肉屋』 を指示すると同時に)隠橡的なカテゴリー 『手先の不器用 な人』を指示 していると分か り,さらにmysurgeon』が 『手先の不器用 な人』

に含 まれる意味関係,すなわち集合関係 を認める(Glucksberg&Keysar,1990) ことになる。同 じ表現 (あるいは被愉辞 はおそ らく人間であれば何で もよいの で,人間である被曝辞 と同 じ喰辞の組み合わせ) をさらに何度か見聞 きす るう ち,butcher』 が持つ (隠喰的な)語義の一つ として喰辞 『不器用 な人』 を 彼 らの長期記憶 に登録す る。butcher』 は 『肉屋』, 不器用 な人』 な ど複数 の語義 を持つ多義語 になる

2)文の隠帳的な理解に関する過去の研究の多 くは,その文形式の単純なAisB』,

ABである』の形の文を隠帳として理解する場合を考察の対象としてきてい る。

(4)

4 59 2・3

新奇 な隠喰文 を理解する場合,喰辞 と被曝辞 との組み合わせ を初めて見聞 き す るの で, 隠帳 的 な カテ ゴ リー は聴 者 の長 期 記 憶 に は む ろ ん存 在 しな い (Gentner,Bowdle,Wolff,&Boronat,2001)。では,新奇 な隠愉文 を理解す る 際,愉辞 と被曝辞 との間にどの ような意味関係 をどの ように聴者 は見つけるの であろうか。未知の隠喉的な意味関係の見つけ方に関 し, これまで2通 りの考 え方が提案 されて きている。

一つは,新奇な隠喰文に対 して も,慣用的な隠喰文 を理解す る場合 とまった く同 じように, (隠除的な)集合関係 をもつ もの として理解す る (Glucksberg

&Kayser,1990;Glucksberg,McGlone,&Manfredi,1997)とい う考 えである。

初めて見 る文 を新奇 な隠愉 として理解す る場合,隠幌的なカテゴリーを長期記 憶内にあ らか じめ用意 していないに もかかわ らず,喰辞の指示するカテゴリー が被喰辞の指示するカテゴリーに含 まれると結果的に聴者は認知 していなけれ ばな らない。それがで きるためには,何 らかの仕組み を新奇 な隠愉文の理解過 程 に用意 している必要があるが,その詳細 までこれまで明 らかにされて きては いない。ただ,隠除 としての良 さや適切 さ (aptness)が媒介 的な働 きをす る ことで円滑 に集合関係 として理解す ることがで きる (Blasko&Connine,1993; Jones&Eates,2005,2006)と指摘 されて きてはいる。

もう一つ は,新奇 な隠愉文 を見聞 きした人は,その文 を 『ようだ』,『like な どの類似性 を有標化 (mark)す る表現上の指標が暗示 あるいは省略 されて いるとみな し,愉辞の属性群 と被愉辞の属性群 とを比倫的に比較するとい う考 えである。比較の対象 にな りうる属性群 は, もしそれ らが存在すれば被喰辞側 で は顕著性 (salience)が低 い (Gentれer,Bowdle,Wolff,&Boronat,2001; Ortony,1979)はずであるか ら,比較の対象 に しようとす る喰辞の属性群 に も

とづ い て, そ れ と対応 づ け る こ とので きる被 愉辞 の属性 群 を整列 (align;

Gentner&Wolff,1997)させてお く必要がある。 もし対応づ けることので き る被愉辞の属性群がなければ属性群 を導入 (introduce;Ortony,1979;Ortony, Vondruska,&Foss,1985)した後 に整列 させ ることも必要 になる。 この立場

にたてば,初めて見 る文 を新奇 な隠権 として理解す る場合 には,一種の類似性

(5)

原語から直訳された新奇な隠喰文の即時的な理解 5

判断の過程 にな り,一度で も過去 に理解 した経験のある文を隠喰的に理解する 場合 (こち らは カテ ゴ リー化 の過程 にな る) とは異 な る (Jones&Eates, 2005,2006)ことになる

いずれの考 えを採 った として も,新奇 な隠愉文 を理解する場合,被曝辞 と愉 辞 との意味関係で,かつ問題の文の置かれた文脈に合 うものを見つけなければ ならない。そ うした意味関係 を見つけることがで きるためには,愉辞の属性群 (さらに被喰辞の属性群 も)の中か ら文脈 (の解釈)と首尾一貫性(Coherence) のある属性群 を見つけていなければならない。

実験の概要

本研究の 目的は,文脈 に誘導 された状況下において,聴者が新奇な隠愉文 を どの ように理解するかを調べ ることである。本研究の実験 (実験1,2)では, 外国語 (ポーラン ド語,中国語)ではよく使われるが 日本語 にはない隠喰文 を 日本語 に直訳 した文 を被験者 に呈示 し,喰辞 と被喰辞 との間の未知の意味関係 を被験者が どの ように見つけだすか を調べた。以下,このような文 を 『直訳 さ れた隠愉文』 と呼ぶ ことにする。外 国語で よく使われる隠愉文 を,その外国語 でその隠愉文が よ く使 われる文脈 と一緒 に, 日本語 に直接置 きかえ, 日本語母 語話者 に聞かせた としよう。た とえば,中国語で よく使 われる AはBだ』の 形 をとる隠喰文 『太郎はナメクジだ』 を,中国語で この文が よく使われるであ ろ う文脈の後 に呈示 したとしよう。明確 な意味は伝 わ らないが,原文の意味の ニュア ンスは伝 わる感 じがする。単純 に単語 を置 きかえてお り,置 きかえられ た 日本語の単語の指示内容 と原語の単語 との指示内容がずれているため,明確 な意味はそ もそ も伝 わ らない, とい うこともあるか もしれない。 しか し,A Bとの間に何 らかの関係づけがなされることがあるの も確かであるように思わ れる。むろん人によってはまった く理解で きないこともあるであろう。 こうし た理解の状況は, 日本語母語話者である被験者 にとっては,未知の文 を新奇 な 隠喉 として理解する状況に近いように思われる

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6 第59 2 ・3号

本研究では,原語の意味に誘導する文脈の後 に,直訳 された隠喰文 を置 き人 が どの ように理解するかを調べた。 日本語母語話者である被験者 に,直訳 され た隠喰文 を理解 した過去の経験 はないが,文脈の誘導があるので理解で きるよ うになっている (理解で きないこともあるが)。

直訳 された隠愉文 を原語の意味に受けとらせ る文脈の後において被験者 に理 解 して もらう状況 を,慣用的な隠愉文 を慣用的な意味に受け とらせ るように誘 導す る文脈の後 に置いて理解 して もらう状況 と比較 してみ よう。いずれ も文脈 の誘導がある点では同 じであるが,被験者 に過去の経験があるかないかで異 な る。

日本語母語話者 にとって,直訳 された隠喰文の原語の意味は,愉辞の最 も顕 著 な属性群ではないが,慣用的な隠愉文の慣用的な意味は,愉辞の最 も顕著 な 属性群である。それゆえ,直訳 された隠喰文の理解 と慣用的な隠愉文の理解 を 比較することによって,愉辞の属性群 をどの くらい早 く, また どの ように利用 するか を知 る手がか りを得 ることがで きる。

直訳 された隠喰文は別の言語ではよく使われている。原語では慣用化 し使 い 古 されているが,元来良い隠喰であったか らよ く使 われるようになった とも考 えられる。 もしそ うな ら,直訳 された隠愉文には潜在的に良い隠帳 として理解 される可能性 もある。新奇 な隠帳 を理解する際に隠幌 としての良さの情報が何 らかの役割 を果たす とした ら, どの ような役割か。本研究の実験 はこの問いに も示唆 を与 えることがで きる。

本研究では,ポーラン ド語 と中国語でそれぞれ よく使われる隠愉文 を直訳 し 刺激材料 として用 いている。 もし両者の理解 に違いがあれば,良 さは言語特異 的な知識 とい うことになる。 日本語母語話者 にとっては中国語か ら直訳 された 隠愉文の方が,おそ らく文化的に近い とい う理由で,理解 しやすいか もしれな い。逆 に,違いがなければ,良 さは普遍的な可能性が高 くなるであろう。

本研究の実験1では,文脈の誘導下にある直訳 された隠喰文の理解 と比較 を 行 うために,過去 に理解の経験がな く,かつ文脈 との首尾一貫性の低い文 を次 の ように して作 った。 日本語で 日常的によ く使 われる単語の一覧 を用意す る

(7)

原語から直訳された新奇な隠喰文の即時的な理解 7

その中か ら一つ ランダムに単語 を選んで,問題の文 (直訳 された隠喰文,慣用 的隠喰文,集合関係 を表す文のいずれか)の述語 と入れかえる。入れかえは実 験のたびごとに行い,入れかえられた元の文の述語 はその実験では使 わない。

以下, この ように して作 られる文 を 『属性高連想文』 と呼ぶ ことにす る。 『 性高連想文』 は,元の文 (直訳 された隠喰文,慣用的隠愉文,文字通 りの意味 の文)のために作 っておいた文脈の後 に置かれる。属性高連想文 と文脈 との間 の首尾一貫性 はきわめて低い。文脈の文 を理解 した後,属性高連想文 を見せ ら れた被験者 は,多 くの場合,首尾一貫性 を見つけることがで きず,理解で きな いであろう。 しか し,属性高連想文の述語 は 日常的によく使 われる単語である ので,その単語か ら連想 される顕著 な属性の数が多い。それゆえ, どの ような 属性群 を解釈 に利用す るかは人によって変わるが,そ うした属性群の中か ら文 脈 と首尾一貫する属性群 を偶然見つけることもある3)。文脈 と属性高連想文 と の間に首尾一貫性 を被験者が偶然見つける割合 を,問題の文の解釈 を見つける チ ャンス レベル とみなす。文脈の誘導下での直訳 された隠喰文の理解 を,文脈 に誘導 され偶然解釈 を見つけることがで きた場合の属性高連想文の理解 と比較 することによ り,直訳 された隠喰文の解釈 を文脈のそれに統合する過程 をうか がい知 ることがで きる

以下,実験1では,文脈の後 に置かれた 『直訳 された隠愉文』の理解 を,慣 用的な隠愉文お よび 『属性高連想文』の理解 (いずれ も同 じように文脈の後 に 置かれている) と比較する。熟知度 (familiarity)4)の違いによって,お よび, 文脈 との首尾一貫性の違いによって,問題の文の理解 に違いがあるか どうか を 調べ る。直訳 された隠喰文の理解が,慣用的な隠喰文のそれ と同 じな ら,直訳

3)か りに,高頻度語ではなく,唯辞と同じ文字数の単語を,何 らかの語桑データベー スからランダムに選んで文を作 り呈示 したとすれば,その文の述語 (喰辞に相当 する)から連想できる顕著な属性の数が必ずしも多 くないため,その文を解釈で きる可能性は高頻度語の文 (属性高連想文)の場合よりずっと低 くなるであろう。

4)Gentれer,Bowdle,Wolff,andBoronat(2001)の定義に従い,愉辞と被曝辞の組み 合わせをどの程度知っているかを熟知度と呼んでいる。熟知度が高ければ,喰辞 の慣用度および喰辞の慣習性 も高 くなると考えられる。

(8)

第59 2 ・3号

された隠喰文の (オ ンライ ン的な)理解 は慣用 的な隠喰文の理解 と同 じように 行 われていることを示唆す る。属性高連想文の理解 と同 じな ら,直訳 された隠 愉文 は偶然理解 で きたに過 ぎない ことになる

実験2では文脈 と問題の文 との間に首尾一貫性 をつけない。全体 を一つの文 章 として理解 して もらうのではな く,文脈 をプライム,問題の文 をターゲ ッ ト とみな し,一種 のプライ ミング課題 を行 って もらう。ただ し,ここでの課題 は, ターゲ ッ トの文 を文字通 りの意味で真 か偽 か を判 断す る (Glucksberg,Gildea,

&Bookin,1982)ことである。文脈 は1文 とし,文脈 と問題の文 との間に意味 的な関連性があるようにす る。熟知度の違 いに よって,お よび,文脈 との意味 的関連性 の違 いに よって,問題の文の理解 に違 いがあるか どうか を調べ る

1

被験者 日本語 を母語 とす る大学生43名であった。

刺激 ポー ラ ン ド語母語話者2名,中国語母語話者2名 にそれぞれの言語で よ く使 われる ABである』 の文形式 に相 当す る隠愉文 を原語 と日本語 で挙 げて もらった。それ らの中か ら故事 や伝承 に由来す る ものを除いた後,ポー ラ ン ド語 (た とえば,『忙 しさは鬼 だ』),中国語 (た とえば,『爆笑 は雷である』) それぞれ10文ずつ合 わせ て20文選 び 『直訳 された隠喰文』 とした。巻末の付録 に実験 1で使 われた刺激材料 を示す。

これ ら 『直訳 された隠喰文』 と比較 を行 うために,次の3種類 の文 を用意 し た。 まず, 日本語で よ く使 われる隠喰文で,予備実験 において熟知度が5段 階 4 (やや使 われ る)以上 とされた慣用的 な隠喰文 (た とえば, 『看護婦 は天 使 だ』)を10文用意 した。さらに,集合 関係 を表 わす文 (た とえば 『犬 は動物 だ』)

を10文選んだ。

以上の3種類 の文,合計40文のそれぞれの前 に,3文か らなる文脈 をつ けた。

直訳 された隠喰文の文脈 は,直訳 された隠喰文 を考 えたポー ラ ン ド語母語話者

(9)

原語から直訳された新奇な隠喰文の即時的な理解 9

お よび中国語母語話者本人に 日本語で書いて もらい,実験者が 日本語 として不 自然な箇所 を修正 した。

3文の文脈 は次の基準で作成 した。可能な限 り,文脈 と問題の文が一つの文 章 として首尾一貫するようにする。そ して,文脈の1文 目または2文 目あるい はその両方で問題の文の解釈 に関係のある属性 を呈示す る。 3文 目はその属性 に関係のある情報 を呈示す る。

集合関係 を表わす文の文脈はすべて修辞的な解釈 を促す ものに した。た とえ ば, 『犬 は動物 だ』 は 『犬 は溺愛すべ きものではない』 な どと解釈 されるよう に した。その理由は,集合関係の文は誰 もがすでに知 ってお り,知っているこ とを意図的に言 う場面は,聴者がそのことを忘れたか,あるいは何 らかの事情 で知 らないかのいずれかになると思われるが,そのいずれ も聴者 にとって想定 しに くく首尾一貫性の高い文脈 にな りに くい と思われたためである。 この方針 に沿って集合関係 を表す文 と首尾一貫す る文脈 を作 ると,集合関係 を表す文の 文脈で呈示 される意味関係 は,集合関係 を表す文の述語の最 も顕著 な属性 とは 関連がないことになる。 これに対 し,慣用的な隠喰文の文脈で呈示 される意味 関係 は最 も顕著 な属性 と関係があるようになっている。集合関係 を表す文 と慣 用的な隠愉文 とは, ともに熟知度が高い点では同 じであるが,文脈で呈示 され

る意味関係の性質が異 なることになる

2人の実験者 とは別の 日本語母語話者 に文脈の 自然 さお よび隠愉文の理解 し やす さを評価 して もらい, 日本語 として不 自然 と思われる箇所 を繰 りかえ し修 正 した。

実験 を行 うたび,す なわち被験者 ごとに,3種類の問題の文 (直訳 された隠 喰文,慣用的隠喰文,集合関係 を表す文)の中か ら,それぞれ2文ずつ ランダ ムに選び,その述語 を,その述語の文字数 と同 じ高頻度語 にランダムに置 きか え,属性高連想文 を作成 した。た とえば,直訳 された隠喰文 『数学 は女王であ る』 の述語 『女王』 を 『会社』 に置 きか え, 『数学 は会社 である』 とした。述 語 を置 きかえた元の文は当該実験では呈示 しない。

属性高連想文の述語は次のように して選んだ。高頻度語か らなる1文字単語,

(10)

10 第59 2 ・3号

2文字単語, 3文字単語, 4文字単語の リス トを, 『電子計算機 による新聞の 語秦調査 (国立国語研究所,1973)』 をもとに して作 った5)。そ して,属性高 連想文 を呈示す るときに,元の直訳 された隠愉文の述語 と同 じか または最 も近 い文字数の単語 を各 リス トか らランダムに選び属性高連想文の述語 とした。巻 末の付録 に,高頻度語の リス トを載せた。

属性高連想文の文脈は,述語 を置 きかえる前の元の問題の文のために作成 し ておいた文脈 をその まま使 った。

この ように して4種類の ターゲ ッ ト文 (直訳 された隠喰文,慣用的隠喰文, 集合関係 を表す文,お よび属性高連想文) と文脈 を用意 した。文脈 とターゲ ッ ト文の組の一つ一つに, どの ように解釈 したかを確認するための質問を用意 し た。質問は三つの選択肢か らなっていた。その うちの一つ は,想定 される解釈 とほぼ同 じ意味 を表す文, もう一つ は,想定 される解釈 とは明 らかに異 なる意 味 を表す文であった。 3番 目の選択肢 は,それ らいずれで もない, または,意 味が分か らない,となっていた。属性高連想文の場合には,3番 目を正解 とした。

手続 き 被験者 はパ ソコンの前に座 り, 4文か らなる文章 を1文ずつ読 む。

最後の1文が ターゲ ッ ト文であった。

ターゲット文の暮味を 正しく理解したかとうカヽ r=関するrrq

1 1試行の流れ。ターゲット文が直訳された隠愉文の条件の場合。

5) 5文字以上の高塀度語は同書の中にはなかったため,元のターゲット文の愉辞が 5文字の単語の場合は4文字に置きかえた。

(11)

原語か ら直訳 された新奇な隠喰文の即時的な理解 11

11試行 の流 れ を示 す。 デ ィス プ レイ上 に 『++++』 の凝 視点 が500 ミリ秒 間呈示 された後 自動 的 に消 え,文が呈示 され る。被験 者 は,文が呈示 さ れ るたび,被験 者 はその文 を理解 で きた と思 った らで きるだけ早 く○ のキー(M また はZの キー), も し理解 で きない と思 った ときは ×の キー (ZまたはM キー) を押 す。以後, 1試行 の終 わ りまで,同 じこ とが4回繰 り返 され る。文 章 の最後 が ターゲ ッ ト文 となっていた。 なお,○ の キー,×の キーの位置 は, 被験者 ご とにカウ ンターバ ラ ンス された。

文章 を読み終 えた後 , ターゲ ッ ト文の解釈 内容 を質問 され る。被験者 は, 3 種類 の選択肢 の 中か ら理解 した内容 に最 も近 い選択肢 を選択す る。選択肢 の一 つ は最 も妥 当 と思 われ る解釈 ,もう一つ は,明 らか に妥 当 とは思 われ ない解釈 , 残 り一つ はそのいず れで もない また は意味が分 か らない, となっていた。 ター ゲ ッ ト文が属性 高連想 文であ る場合 には, 3番 目の選択肢 を正答 とみ な した。

安 当 と思 われ る解釈 の選択肢 ,妥 当 と思 われ ない解釈 の選択肢 の呈示順序 は試 行 ご とにラ ンダムに入 れか えた。

以上 を1試行 と し,練習試行 が3回,本試行が40回繰 り返 され る。文章 の呈 示順序 はラ ンダムに された。

実験計画 ターゲ ッ ト文 の種類 (直訳 された隠愉文 〔原語 が ポー ラ ン ド語〕, 直訳 され た隠愉文 〔原語 が 中国語〕,属性 高連想 文,慣 用 的 な隠愉文,集合 関 係 の文) の1要 因計画 であった。 ターゲ ッ ト文 の種 類 は被験 者 内要 因 と した。

また,被験者 , ターゲ ッ ト文 (刺激材料) をラ ンダム要 因 と した。 ターゲ ッ ト 文 は ターゲ ッ ト文 の種類 に埋 め込 まれていた。

文脈 その ものが理解 で きなか った場合 ,す なわち文脈 のいず れかの文 に対 し て理解 で きない と反応 した場合 ,その文脈 にひ き続 いて呈示 された ターゲ ッ ト 文の反応 は誤 反応 と し分析 か ら除いた。誤反応 を除 くすべ ての ターゲ ッ ト文の 平均読解 時 間は1547ミリ秒 ,標準偏差 は1134ミリ秒 であ った。 これ らの うち, ターゲ ッ ト文が理解 で きた と判 断 された場合 が1259試行 ,理解 で きない とされ た場合 が405試行 あ った。 以下 の分析 で は,すべ ての ターゲ ッ ト文 に対 す る平

(12)

12 59 2・3

均読解時間か ら標準偏差の3倍 を超 えるデータ (正反応の2.3%)を除外 した。

理解で きた と判断された場合の うち,実際に確認の質問にも正 しく答 えた割合 は72.20%であった。

読解時間 ターゲ ッ ト文 を理解で きた と判断 しかつ質問で正解 したデー タの み を分析 した。 1要因分散分析の結果, ターゲ ッ ト文の種類の主効果が認め ら れた (F(4,46)‑ll.61,♪<.0001)。多重比較 (Tukey‑Kramer法)の結果, 直訳 された隠喰文 〔原語がポーラン ド語〕と直訳 された隠喰文 (原語が中国語) との間に有意差 はまった く認め られなかった (i(41)‑.01,p1.000)oそ こ で,直訳 された隠喰文 (原語がポーラン ド語) と直訳 された隠喰文 (原語が中 国語) を一つの水準 にまとめ直訳 された隠喰文 として改めて1要因分散分析 を 行 った。その結果, ターゲ ッ ト文の種類の主効果が認め られた (F (3,66)

22.04,♪<.0001)

ターゲ ッ ト文の種類が慣用 的な隠喰文の場合 (〟‑210)の ターゲ ッ ト文の 平均読解時間は1258ミリ秒 (標準誤差90ミリ秒),集合関係の場合 (〟‑254) の ターゲ ッ ト文の平均読解時間は1041ミリ秒 (標準誤差87ミリ秒)であった。

これに対 し,直訳 された隠喰文の場合 (〟‑350)の ターゲ ッ ト文の平均読解 時間は1577ミリ秒 (標準誤差81ミリ秒),属性高連想文の場合 (〟‑88)の ター ゲ ッ ト文の平均読解時間は1585ミリ秒 (標準誤差103ミリ秒)であった。図2に, ターゲ ッ ト文の種類 ごとの平均読解時間 と読解時間の標準誤差お よび正理解率

(後述する) を示す。

多重比較 (Tukey‑Kramer法)の結果, ターゲ ッ ト文が直訳 された隠愉文 である場合 と慣用的な隠喰文である場合 との間,お よび,直訳 された隠喰文で ある場合 と集合関係である場合 との間に有意差が認め られた (順 に,i(46)

4.24,♪< .0004;i(42)‑7.45,♪< .0001)。 また, ターゲ ッ ト文が属性 高連 想文である場合 と慣用的な隠愉文である場合 との間,お よび,属性高連想文で ある場合 と集合関係である場合 との間 (順 に,i(148)‑3.34,9<.007;i(146)

‑5.72,♪<.0001)に有意差が認め られた。 さらに, ターゲ ッ ト文が慣用 的 な隠喰文の場合 と集合関係の場合 との間にも, 5%水準であるが,有意差が認

(13)

原語か ら直訳 された新奇な隠喰文の即時的な理解 13

表 集 隠 慣 隠 直

す 合 喰 用 喰 訳

文 関 文 的 文 さ

2 ターゲ ッ ト文を正 しく理解 した場合の平均読解時間,標準誤差, およびターゲ ッ ト文を正 しく理解 した割合 (正理解率)の平均。

め られ(i(41)‑2.66,9<.05)。 しか し, ター ゲ ッ ト文が直訳 され た隠愉 文 の場 合 と属性 高連想 文 の場 合 との 間 に有 意差 は認 め られ なか った (順 に, 打197)‑.08,♪1.000)

正理解 率 理解 で きた と判 断 しかつ 質問で正解 した場 合 を100%と し,理解 で きない と判 断 した場合 ,お よび理解 で きた と判 断 したに もかか わ らず質問で 不正解 であ った場合 を00/Oと した6)0 1要 因分散分析 の結果 , ターゲ ッ ト文 の 種 類 の 主 効 果 が 認 め られ た (被 験 者 ご とに平 均 :F(4,168)‑41.88,9<

6)元のデー タは100%または0%2倍 しか とらないのでむろん正規分布 しない。

しか し,被験者ごと,または,材料 ごとに平均値をとり,これ らを一つのデータ とみなす と,値は0%100%の間に分布する。 この分布 は正規分布すると判断 した。被験者 ごとに平均 した場合のF値 と材料 ごとに平均 した場合のF億の二つ を出 しているの はその ためであ る。計算 方法 その もの は,Clark (1973) Fl,F2の計算 と同 じである。

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14 59 2・3

.0001;刺 激 材 料 ご と に 平 均 :F(4,73)‑16.22,p< .0001)。 多 重 比 較 (Tukey‑Kramer法) の結果,直訳 された隠喰文 (原語 がポー ラ ン ド語) と 直訳 された隠愉文 (原語が 中国語) との間に有意差 は認め られなかった (被験 者 ご とに平均 :i(168)‑.59,9>.977;刺 激材料 ご とに平均 :i(73)‑.03, 91.000)。 そ こで,直訳 された隠愉文 (原語が ポー ラン ド語) と直訳 された

隠喰文 (原語が中国語) を一つの水準 にまとめ直訳 された隠喰文 として改めて 1要因分散分析 を行 った。その結果, ターゲ ッ ト文の種類 の主効果が認め られ た (被験者 ごとに平均 :F(3,126)‑58.91,9<.0001;刺激材料 ごとに平均 : F(3,74)‑21.92,p<.0001)o

ターゲ ッ ト文 の種類 が慣 用 的 な隠愉文の場合 の ターゲ ッ ト文 の正理解 率 は 64.42%,集合 関係の場合 の ターゲ ッ ト文の正理解率 は77.44%であった。 これ に対 し,直訳 された隠檎文の場合 の ターゲ ッ ト文の正理解率 は53.60%,属性 高連想文の場合 の ターゲ ッ ト文の正理解率 は27.59%であった。

多重比較 (Tukey‑Kramer法) の結果, ターゲ ッ ト文が直訳 された隠愉文 であ る場合 と慣 用 的 な隠喰 文であ る場合 との 間には有意差が認 め られ なか っ た7)(被 験 者 ご とに平 均 :i(126)‑2.72,p<.04;刺 激 材 料 ご とに平 均 : 亘74)‑1.42,♪>.49)。 しか し,直訳 された隠愉 文であ る場合 と集合 関係 で あ る場合 との間 (被験者 ご とに平均 :i(126)‑6.22,♪<.0001;刺激材料 ご とに平均 :i(74)‑3.07,9<.02),お よび,直訳 された隠愉文である場合 と属 性 高連想 文であ る場合 との 間 (被験者 ご とに平均 :バ126)‑6.61,♪<.0001;

刺激材料 ごとに平均 :∫(74)‑4.57,♪<.0001)に有意差が認め られた。

また, ターゲ ッ ト文が属性高連想文である場合 と慣用 的な隠喰文である場合

7)被験者,刺激材料をランダム要因とLFl,F2を計算する場合,Fl,F2の一方の 有意水準があまり信頼できない (たとえば5%程度) と,他方の有意水準が相当 低 くなければF値は有意にならない (Clark,1973)。実験 1とほぼ同 じ実験計画 の実験データに対するClark(1973)の分散分析では,Fl,F2のどちらか一方 が有意でない場合,F'値は他方の有意水準に関わらず有意になっていない。実 1の正理解率,および実験2の正答率の分析でも,被験者ごと,または刺激材 料ごとのF値のいずれかが有意でなければ,有意性はないと判断した。

(15)

原語から直訳された新奇な隠喰文の即時的な理解 15

との間 (被験者 ごとに平均 :i(126)‑9.33,9<.0001;刺激材料 ごとに平均 :

〜(74)‑5.10,♪<.0001),お よび,属性高連想文である場合 と集合 関係 であ る場合 との間 (被験者 ごとに平均 :i(126)‑12.83,9<.0001;刺激材料 ごと に平均 :∫(74)‑6.90,♪<.0001)にも有意差が認め られた。しか し,ターゲ ッ ト文が慣用 的な隠愉文の場合 と集合 関係 の場合 との間に有意差 は認め られな かった (被験者 ごとに平均 :バ126)‑3.50,♪<.004;刺激材料 ごとに平均 : 扶74)1.43,♪>.48)0

正理解率は文脈上最 もあ りそ うな解釈 に到達で きた割合 とみなす ことがで き る。数字の上では,直訳 された隠喰文の正理解率は,慣用的な隠愉文お よび集 合 関係の正理解率 と,属性高連想文の正理解率の中間にきている。直訳 された 隠愉文 に対 しては,慣用的な隠愉文 に対するほ ど,話者が想定 した通 りに解釈 しないが,属性高連想文 を偶然理解 して しまうよりは多 く理解で きる可能性 を 示唆 している。

直訳 された隠喰文に対す る読解時間お よび正理解率の結果 と属性高連想文に 対す る結果 とを比べてみ よう。読解時間では,両者の間に差がないが,正理解 率 には大 きな有意 な差がある。 この結果 を次の ように説明することがで きるか もしれない。高頻度連想文の述語 には連想頻度の高い顕著 な属性が多 くあ り, その分,主語,述語 によって共有 され,かつ解釈 に使 うことがで きそ うな属性 群 も多かった。被験者が高頻度連想文 を隠帳 として理解 しようとした とき,解 釈 になる属性群 を多 くの候補 の中か ら選 ばな くてはな らなかったが, どれ を

とって も解釈 とみなすのは難 しかった。た とえ選ぶ ことがで きた として も, ち ともとランダムに述語の位置 に高頻度語 を割 りあてているので,すでに解釈 を 終 えた文脈 にうま く適合す るような属性群 を選ぶ ことは困難であった。一方, 直訳 された隠喰文 を理解す る場合 には,述語 と主語 に共通する属性群が もとも と少な く,それを見つけることそれ 自体が難 しかった。そのために,属性高連 想文 を隠愉的に理解す るの と同 じ程 度 に,隠帳 として理解す るのに時 間がか かった。

(16)

16 第59 2 ・3号

とはいえ,直訳 された隠喰文 を理解す る場合 には,何 らかの方法で,文脈 に 適合する属性群 を結果的にうま く見つけることはで きた。その際,文 をオ ンラ イン的に理解す るのに要す る時間の範囲内でみつけることもで きた。そのため, 結果 として直訳 された隠愉文の正理解率が,属性高連想文の理解率 よ りも有意

に高 くなった。 これに対 し,属性高連想文 を隠愉的に理解する場合 には,文脈 に合 う属性群 を偶然見つけだせたに過 ぎなかった。結果 として直訳 された隠愉 文の正理解率が,属性高連想文の理解率 よ りも有意 に高 くなった。

さて,今度は直訳 された隠喰文の読解時間 と正理解率の結果 を慣用的隠喰文 の結果 と比較 してみ よう。正理解率では両者の間に差 はないが,読解時間には 有意差が見 られた。 なぜ このような結果が生 じたかを説明する必要があるが, 新奇な隠愉文の理解 を調べた過去の研究が少 ないこともあ り,難 しい。ただ, 読解時間の結果 はBlaskoandConnine (1993)の実験結果 と似 ている。熟知 度の高い隠喰文 を理解する場合 と熟知度の低い隠喰文 を理解す る場合 とで,正 反対の結果 を彼 らは得 ている8)が,両者の理解の違い,あるいは熟知度の低 い 隠喰文の理解が どの ようであるかに関 しては何 も言及 していない。本研究の実 2の実験結果 とあわせ,総合的考察の中で慣用的な隠喰文の理解 と新奇 な隠 愉文の理解 との違いを考えてみることに したい。

実験1では, ターゲ ッ ト文 と首尾一貫する文脈の誘導下で問題の文が どの よ うに理解 されるか を調べた。文脈その ものは一定の基準で作 られていたが,ター ゲ ッ ト文その ものが異 な り,文脈その もの も表現 レベルで異 なっていた。その ため,実験者が コン トロール していない文脈の表現上の偏 りがなかった とは言 えない。そ こで,実験2では,文脈の数 を減 らす ことに した。減 らす と文脈 と ターゲ ッ ト文 との間に首尾一貫性 をつけに くくなるので,文脈 とターゲ ッ ト文

8)BlaskoandConnine (1993)は,様相間プライミング法 (crossmodalpriming method)を用い,隠喰文を聴覚的に呈示 した直後にターゲット語を視覚的に呈 示 した。その結果,熟知度の高い隠喰文の場合には,その愉辞の隠暁的な意味に 関連するターゲット語はコントロールよりも早 く単語であると判断されたが,熟 知度の低い隠喰文の場合には,その愉辞の隠帳的な意味に関連するターゲット語 はコントロールよりも逆に遅 く単語であると判断された。

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原語から直訳された新奇な隠喰文の即時的な理解 17

との間に首尾一貫性 をつけることは止める。代 わ りに,プライ ミング課題にお けるプライムの ようなもの と文脈 をみなす。文脈の文の意味関係 と問題の文の 意味関係 との間に関連があるよう設定 し,文脈の文 を理解することによって聴 者が受け とる意味関係 を, どの くらい早 く問題の文の意味関係 と関連があると 判 断で きるか を調べ る。実験2で は, 『文字通 りの意 味 での文 の真偽 判 断』

(Glucksberg,Gildea.&Bookin,1982)を行 って もらうことに した。 この課題 を使 えば,隠喉 としての処理の有無,お よび,その時間経過 を敏感に検 出で き (Gildea&Glucksberg,1983;Glucksberg,Gildea,&Bookin,1982)。 また, この課題 を行 うことで,理解過程の どの時点で隠帳的な処理が始 まるかを知 る こともで きる (Gentner,Bowdle,Wolff,&Boronat,2001)0

2

被験者 日本語 を母語 とする大学生35名であった。全貞,実験1の被験者 と は異なる。

刺激 外国語母語話者 (ポーラン ド語,中国語それぞれ2名ずつ) にそれぞ れの言語で よ く使 われる ABである』の文形式 に相当する隠愉文 を原語 と 日本語で挙 げて もらった。その中か ら故事や伝承 に由来するものを除いた後, ポーラン ド語 (た とえば,『忙 しさは鬼だ』),中国語 (た とえば, 『爆笑は富で ある』)それぞれ12文ずつ合わせて24文選んだ。巻末の付録 に実験2で使 われ た刺激材料 を示す。

これ ら直訳 された隠喰文 と比較 を行 うために,以下の3種類の文 を用意 した。

まず, 日本語で よ く使 われる慣用的な隠愉文で,予備実験 において熟知度が4 (やや使われる)以上 とされた もの (た とえば,『看護婦 は天使 だ』) を12文用 意 した。 さらに,ABの間に集合 関係がな く,かつ隠帳 として きわめて解釈 しに くい と思われる文 (た とえば, 『野球 は話 し合いである』) を12文選んだ。

偽の集合関係の文の述語 は,実験1で用 いた高頻度語の 1文字か ら4文字 まで

参照

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