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長崎大学教育学部自然科学研究報告 第30号 25‑36 (1979)

ジメチルサルファイド,メチルゲルミルサルファイド およびジゲルミルサルファイドのラマン,赤外

スペクトルならびに構造 浜田 圭之助・森下 浩史

(長崎大学教育学部化学教室) (昭和53年10月31日受理)

The Raman and Infrared Spectra and the Structures of Dimethyl, Methylgermyl and Digermyl Sulfide

Keinosuke HAMADA and Hirofumi MORISHITA Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki

Abstract

The Raman and infrared spectra of dimethyl sulfide (CH3‑S‑CH3) have been assigned in terms of a D3d model. The structurally related compounds, digermyl sulfide (GeH3‑S

‑GeH3) and methylgermyl sulfide (CH3‑S‑GeH3) are prepared according to the literature, and their vibrational spectra are measured. The analyses of these spectra comparing with those of CH3‑S‑CH3 allow us to determine the molecular structures to be a D3d for GeH3

‑S‑GeH3 and a C3v for CH3‑S‑GeH3, both of which have a linear skeleton.

序論

MY3‑X‑MY3タイプ分子には二つの構造が考えられる。つまり直線型(」>3またはA*)およ び折線型C^2U)構造である。これまで発表された論文の殆んどほCH3‑X‑CH3 (X‑O,S,Se, Te)5‑18), SiCl3‑0‑SiCl319‑28)およびGeH3‑X‑GeH3 (X‑O,S)3‑29)などC2V構造であると報 告している。しかしそれ等の論文においては> ^zv構造の既約表現が示すところの,ラマン活性の 2iおよび赤外活性の17の基準振動が完全に帰属されていない。さらにある論文30)では,現著者ら が指摘しているように31) 1基準振動にかかわる回転一振動スペクトルの包絡線を,複数の基準 振動に間違って帰属していると考えられるものもある。ところが反面SiCl3‑0‑SiCl332‑34¥ SiH3‑

0‑SiH335)およびSiF3‑0‑SiCl334)が直線型分子であるとする報告もある。現著者はCH3‑X‑

CH3X)やSiCl3‑0‑SiCl334)の振動スペクトルの測定の結果,ラマソ・赤外交互禁制が成立してい

ることを見出した。このことはこれらの分子がD3a構造をもつことの著しい証拠である。また

(2)

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浜田圭之助・森下浩史

振動スペクトルは一般に簡単で,C2.構造が示す21基準振動中全部がラマン活性で,その中17が 赤外活性であるとは考えられない。 さらにCH3−X−CH31)の回転一振動スペクトルは,固有の P−R間隔を持つPQR構造を示しているが,このことは3回回転軸の存在を示すもので,これ

また1)3¢構造の強力な支持となるものである。

 MY3−X−M Y3タイプ分子の場合も,直線型(C3,)および折線型(C、)の二つの構造が考え られるが,既約表現は両者間に非常な相違がある。以上のことから現著者はMY3−X−MY3タイ プ分子としてGeH3−S−GeH3,そしてMY3−X−M/Y3タイプ分子としてCH3−S−GeH3の振動ス ペクトルを,すでに研究したCH3−S−CH3分子のそれと比較しながら研究することにした。

実 験

 Ge:H3−S−GeH3およびCH3−S−GeH3の合成は文献2印4)に従って行なった。ラマンスペクトルは JEOLJRS−SIB分光器を使用して測定した。光源はAr+レーザ光(4880A)を使用した。赤 外スペクトル*1)は島津IR−450分光器を使用した。光学物質はKRS−5である。

結果およぴ考察

CH3−S−CH3,CH3−S−GeH3およびGeH3−S−GeH3の振動スペクトルをFig.1に示した。そ の基準振動の帰属はTable1に示した。

 GeH3−S−GeH3の振動スペクトル

 この分子は直線型であればD3¢あるいはD3ん構造であり,折線型であればC2.構造であ る。C2.の既約表現は7A(R,ρ:皿)+4且2(R)+6B1(R:皿)+4B2(R:皿)であって,21基 準振動はすべてラマン活性(うち7はP,パソド)で,21中17基準振動は赤外活性である。D3¢

の既約表現は3A9(R,汐)+1・41%(ガα)+3!12鴨(駅)+3Eg(R)+4E%(IR)で,一般的にいって簡単で あると共に,ラマソ・赤外の交互禁制が成立する。D3んのそれは3.A/1(R,汐)+L4 ・(6α)+3.A 2

(IR)+3E (R)+4Eノ(R:IR)で,D3¢との相違はEノバンドがラマン・赤外共に活性であるこ とである。GeH3−S−GeH3の振動スペクトルはFig.1に示すように非常に簡単で,とてもC2u 対称に基づいては帰属できない。 またCH3−S−CH3の振動スペクトルと非常によく対応してお

り,ラマソ・赤外の交互禁制が成立している。したがって以下の考察においては,これまでの論 文3・29)はMY3−X−MY3タイプ分子をC2.構造としているが,本論文ではD3¢構造として考察 をすすめてゆく。

 ラマンパンド

 !1、9バンド……!119に属する3ラマン活性基準振動はンsGeH3(in phase),δsGeH3(in phase)

およびレ、Ge−S−Geで,いずれも(P)・ミンドである。 GeH31はC3,構造であるので,赤外 バンドはそれぞれ対応するラマンバンドを持つが,その赤外パンドをGeH3−S−GeH3のスペクト ルと比較のためにFig.1に示した。GeH3−S−GeH3の強い(P)2080cm−1ラマソパンドは,GeH31 のツsGeH3バンドが2100cm−1付近に現われているので,ツsGeH3(in phase)に帰属した。

790cm−1ラマソバンドは(P)バンドか(dp)バソドかはっきりしないが,GeH31のδsGeH3が 808cm−1に現われていることからδsCH3(in phase)に帰属したQ368cm−1の強い(P)バソドは

*1)一般にガスサンプルと液体サンプルの,同一振動モードに対する振動スペクトルの振動数の差は殆んど

 ない。大きな差があるのは,水素結合の存在する時のような特別の場合のみである。

(3)

CH3‑S‑CH3 '  CH3‑S‑GeH3  s J;  )  GeH3‑S‑GeH  )  Raman, IR  27 

3000  2000  lOOO  cm  ‑l 

Fig. l  3000 2000 

Vibrational spectra of CH3‑S‑CH3 , CH3‑S‑GeH3, 

lOOO 

GeH3‑S‑GeH3 and GeH31 

cm 

(4)

28

浜田圭之助・森下浩史

ツsGe−S−Geに帰属した。何故ならばCH3−S−CH3の690cm噌1およびCH3−S−CH3の395cm−1バ ンドに見られるように,このタイプのバンドは強い(p)バンドである。

 .Egバンド……Egに属するラマソ活性の基準振動は(dp)バソドである。 これらはン、GeH3 の2115cm−1,δaGeH3の854cm−1およびρrGeH3の450cm−1バンドである。何故ならば2100 cm−1に現われる(dp)・ミンドは,非対称GeH3伸縮振動(ぬGeH3)であり,非対称GeH3変角振 動(δ、GeH3)バンドが850cm−1のバンドであることは,GeH31のδaGeH3が854cm『1である

ことから容易に予想できる。残りのGeH3ロッキソグ(ρ。GeH3)は450cm−1バソドに帰属し た。ρ,GeH3バンドは(dp)バンドのはずであるが,測定した450cm陶1バソドは(P)バンドのよ

うに見える*3・37・38)。しかしρ,GeH3と考えうる(dp)バソドは存在しないので450cm−1をρ,Ge−

H3*3)に帰属せざるを得なかった。

 ノ41錫バソド……このバンドはラマン・赤外共に不活性であることは,既約表現の示す通りで ある。しかしながら238cm−1バンド*2)はtorsionに帰属せざるを得ない。選択則の侵害が起って いるのであろう*4)。

 赤外バンド

 !12届バンド……このバンドは固有のP−R間隔を持つPQR枝を示すところの,平行タイプバン ド*5)を示すはずである。このことはCH3−S−CH31)分子においても見られた。2088cm−1バンド はレsGeH3(out of phase)をこ帰属でき,818cm−1バγドはδsGeH3(out of phase)に帰属さ れうることは,GeH31のンsGeH3およびδsGeH3バンドと比較することによって容易に分る。

残りの410cm『1の鋭いバンドは,平行タイプバソドでツsGe−S−Geに帰属できる。

 E%バンド……赤外活性の4基準振動バソドは,それぞれ垂直タイプ*5)で,swwの繰り返え しをもつQ枝ファミリー(Q連続枝)から成るはずである。このことは分子が3回回転軸39)を持 つ強力な証拠である。2127,853および560cm−1バンドはそれぞれツaGeH3,δ。GeH3および ρ,GeH3に帰属でぎる。何故ならば,これ等バンドはFig.2に示すように,swwの繰り返えしを

もつQ枝ファミリーから成る垂直タイプ・ミンドであり,GeH31の垂直タイプバンドである2121,

854および558cm−1バンドに対応するからである。δGe−S−Geに帰属すべき垂直タイプパンド が見つからない。これはFig.1に示すようにδC−S−Cバソドは非常に弱いので,δGe−S−Geの バンドも強度が弱くて現われなかったのであろう。

 振動一回転バンド

 GeH3−S−GeH3の垂直タイプバソドのあるものは,swwの微細構造をもつ典型的な回転一振 動スペクトルを示す(Fig.2)Qこのことだけでも分子が3回回転軸を持つ証拠となる39・*5)。反面 PQR枝を示すはずの!生2%バソドは,PQR枝を示しているかどうかはっきりしない。しかしバ

ンドの鋭さは,これ等が平行タイプバンド*5)であることを示すものである。

*2)(P)238cm『1パンドもりsGe−S−Geに対する候補となりうるが,〃sGe−S−Geバソドとしては波数が小さす  ぎるように思える。

*3)CH3−X−X−CH337)およびCH3−S−S−CH338)の場合には(P)バンドがρrCH3に帰属されている。この選  択則に対する侵害の理由ははっきりしない。

*4)ねじれ振動はD3¢に対してはラマン,赤外共に不活性である。しかるにこの振動バンドが現われている  のは,分子間相互作用によって選択則の侵害が起っているためであろう。

*5)3回回転軸をもつ分子の平行タイプバンドは,その慣性能率が小さいときには固有のP−R間隔をもっ

 たPQR枝を示す。しかし慣性能率が大きいときはシャープな包絡線を示す。垂直タィプバンドは,慣

 性能率が小さいときにはSWW連続枝を示し,大きいときはブロードな包絡線を示す。

(5)

CH3‑S‑CH3 , CH3‑S‑GeH3 :  J  C  GeH S GeH CD Raman 

(1) vaGeH3( ,2127 om l) and ¥, GeH3( Il 2088  IR 

cm  ‑l 

29 

(2) 

2200 2100 2000 

6aGeH3 (JL.853 cm l)  6sGeH3( Il ,818 cm l)  and 

Fig. 2 Vibration‑rotational bands of GeH3‑S‑GeH8 

cm l 

850 

cm  ‑l 

(6)

30

浜田圭之助・森下浩史

CH3−S−GeH3の振動スペクトル

 CH3−S−GeH3の可能な構造は,直線型のC3.構造*6)と折線型のC、構造である。(為.構造*6)

に対する既約表現は6且1(R,ρ:1R)+1.A2(づα)+7E(.R:m)である。一方C8のそれは13。4ノ(R,

ρ:1R)+8A (R:1R)である。C3,の・42以外すべての振動はラマン,赤外共に活性である。

 Fig.1に示すようにラマン・赤外それぞれ約15のバンドが現われているが,そのうちのある ものは倍音あるいは結合音である。これ等を差し引けぽ到底,21基準振動すべてがラマン・赤外 に活性であるC・の既約表現によっては説明できない。したがって,以下C3.構造に基づいてス ペクトルを帰属してみるo

 本分子はCH3およびGeH3基を持つのでCH3−S−CH3,GeH3−S−GeH3およびGeH31のス ペクトルとの比較により,容易に帰属できる(Table1)。2100および818cm『1赤外バソドは,そ れぞれツsGeH3およびδsGeH3に帰属できることは,GeH3−S−GeH3と GeH31のンsGeH3

(2088;2110cm−1)およびδ・GeH3(8181808cm『1)との比較から容易である。これ等赤外ノミソ ドに対応する(P)2070および(P)812cm−1ラマソパンドを持つ。赤外( )2954,( )1333および

( )400cm−1パンドは,それぞれ対応するラマソ(p)2920,(p)1317および(p)395cm−1パンドを 持ち,CH3−S−CH3の(P)2912cm顧1(レsCH3)および(P)1325cm−1(δsCH3)ならびにGeH3−S−

GeH3の(P)368cm−1(ソ8Ge−S−Ge)に相当するバンドであることから,容易にツsCH3,δsCH3 およびレsC−S−Geに帰属される。

 赤外(⊥)3028および(⊥)1440cm−1はラマン(d)2985および(d)1430cm−1バンドに対応する。

3000cm−1領域のンaCH3,レsCH3および1300〜1450cm−1領域のδaCH3,δsCH3の振動数は,

CH3−X−CH3タイプ分子1)を通してほぼ一定であるので,赤外( )2954(ラマソP,2920),赤 外( )1333(ラマソP,1317),赤外(⊥)3028(ラマソd,2985)および赤外(⊥)1440(ラマン d,1430cm『1)は,それぞれソ・CH3,δsCH3,ン・CH3およびδ・CH3に帰属できる。赤外(⊥)1075 cm−1バンドはρrCH3に帰属した。この相当するラマソバンドは(P)1060cm印1バソド*3)である。

赤外の(⊥)バンドに対応するラマソバソドは(d)バンドでなければならない。此のラマソバンド の選択則の侵害は,我々には旨く説明できない*3)。強いラマンの(p)697cm牌1バンド(赤外712 cm−1)はレaC−S−Geに帰属される。CH3−S−CH3およびGeH3−S−GeH3の総C−S−Cおよび hGe−S−Geは赤外活性,ラマン不活性であるが,その波数はそれぞれ赤外(ll)974および( ) 410cm甲1である。

 赤外の974(レaC−S−C),712(レ、C−S−Ge) および410cm端1(ツsGe−S−Ge)ならびにラマンの690

(りsC−S−C),395(りsC−S−Ge)および368cm陶1(レsGe−S−Ge)は,軽い分子から重い分子にゆくにし たがって,予想通り振動数が減少している。

 赤外570(ラマソ568cm『1)バンドは,GeH31のρ。GeH3(⊥,558cm哺1)と比較することによ って,容易にρrGeH3に帰属でぎる。赤外の638cm−1パンドは未帰属のδC−S−Geに帰属され る。これはCH3−S−CH3の696cm−1(δC−S−C)と比較されるべきものである。対応するラマソ バンドは,弱すぎて現われなかったものと思われる。

 回転一振動バンド

 もしCH3−S−GeH3が直線型(q.)なら,平行タイプバンドはpQR構造を示すはずであるし,

垂直タイプバンドはSWW連続枝をもつ微細構造を示すはずである。測定した赤外スペクトルは Fig、3に示すようにsww連続枝を示しているものもあれば,Fig.4に示すように,P−R間隔

*6)CH3−S−GeH3は直線型分子の場合C3.とC3構造が考えられるが,C3りの方がエネルギー的に安定であるQ

(7)

      CH3−S−CH3,CH3−S−GeH3およびGeH3−S−GeH3のRaman,IR

(・)vaGeH3《⊥ 2…cm曹ユ)andvSGeH3qL2…cm一

31

        2200

(2)δaGeH3(⊥ 837

     2100

  −lcm )andδsGeH3d』

1900    −l

        cm

      噸1

818cm 》

Fig.

850      800

3  Vibration−rotational bands of CH3−S−GeH3

750

cm

一1

(8)

3'2 

(1) ¥,aCH3  (   , 3028  cm 1) and ¥)sCH3( Il 2954 c:n 

28 cm l 

l‑1'  R Q P 

‑l 

(2) 6sCH3  3040 

( 11 ,1333 

2960 

cm ) 28 cm l  ‑l 

2880 

CTn 

‑l 

R  Q 

1350  (3) ¥,aC‑s‑Ge( Il ,712 

1330 

cm  I ) 

28 cm l 

1310  cm  ‑l 

R  Q  P 

Fig . 

730 710 690 

4 Vibration‑rotational bands of 'CH3‑S‑GeH3 

cm  ‑l 

(9)

Table 1  Symmetry species and selection rules  CH3‑S‑CH3, GeH S GeH3, 

f D3a and C3v and frequency  CH3‑S‑GeH3 and GeH31 

assignments o f 

M = C and/or Ge 

 

  

 

 

(/)  ( )  cD C! 

?,  ( ;.  

cT)  1  

 

cr) 

 

 

 

:s 

cx)  cx) 

(10)

34

浜 田 圭之助・森 下 浩 史

28cm噛1のpQR枝を示すものもある。いずれもCH3−S−GeH3がC3。構造をもつことを示す有力 な証拠である。Fig.3の赤外バンドは,それぞれあたかも2100cm一1および818cm−1に中心をも っPQR枝の如くにも見える。しかし,もしそうだとすると約80cm−1のP−R問隔は大きす ぎるQ事実Fig.4に示すようにCH3−S−GeH3のP−R間隔は28cm−1であることが測定され

ている。このP−R間隔値(28cm−1)はCH3−0−CH3(28cm−1),CH3−S−CH3(25cm−1),CH3−Se−

CH3(22cm−1)およびCH3−Te−CH3(20cm−1)に比して,妥当のものと思われる1〉。したがって Fig.3のバンドは,シャープな平行タイプバソド(2100;818cm『1)とブロードな垂直タイプバ ンド(〜21001837cm−1)とがそれぞれ重なったものであろう。〜2100および837cm−1赤外バン

ドは,対応するラマンバソドとして(d)2110および(d)860cm−1を持っており,それぞれ未帰属 のンaCH3およびδaCH3に帰属される。このことはGeH3−S−GeH3およびGeH31のソaGeH3

(2127;2121cm−1)およびδ・GeH3(853;854cm『1)に比べてみれば容易に理解できる。

 倍音およびFemi共鳴

 CH3−S−GeH3の(p)2920cm甲1ラマン( ,2954cm−1赤外)と(p)2840cm−1ラマソ(U,2886cm−1 赤外)はFermi共鳴40)によるダブレットを形成している。その中心は(d)1430cm−1ラマソ(⊥,

1440cm−1赤外)バンドつまりδaCH3バソドの波数の2倍とよく一致する。 CH3−S−CH3にお いてはラマンでは2912と2842cm−1,赤外では2936と2856cm−1バソドがダブレットを形成 しているo

 GeH3−S−GeH3においては,そのようなダブレットは現われていない。何となればδ、GeH3の 波数の2倍はツ・GeH3の波数と著しく相違するからである。

 不 純物

 CH3−S−GeH3はC3じ構造であるので,ラマソパンド(赤外バンド)は必ず対応する赤外パソ ド(ラマン・ミンド)を持つはずである。ところで(p)2575cm嗣1ラマソバソドは対応する赤外バン ドを持たない*7)。したがってこのバンドは基準振動バンドとは思われない。しかしこの(p)2575 cm−1パンドは強度が可成り強いので,倍音とか結合音とかも考えられない。これはCH3−S−GeH3 の分解生成物であるH2Sのン・S−H−Sによるものかも分らない。何故ならばツ・S−H−Sは2570 cm−1に現われるからである41・42)。

結 論

 実験結果はCH3−S−CH31)は勿論GeH3−S−GeH3をD3己構造と考えることによって,非常に 旨く説明できた。すなわち両分子の振動スペクトルは非常に簡単で,21基準振動がラマン活性で,

うち17が赤外活性であるところのq,選択則では到底説明できない。就中,ラマン・赤外の交 互禁制の成立,平行タイプバンドがPQR構造を示すこと,および垂直タイプバンドがsww連 続枝をもつことは*5),D3d構造に対する強力な証拠である。

 CH3−S−GeH3は直線型(C3。)と折線型(C、)とでは,既約表現において非常な相違を示す。 そ して実験結果は振動スペクトルにおいても,振動一回転スペクトルにおいても,C3.構造として 予想できるところと非常によく一致した。これら分子の直線型構造であるとすることに対する一

*7)(P)2575cm−1ラマンバソドが赤外に対応バソドを持たないことは,H2Sの構造すなわち直線型か折線型

 かの決定において重要である41)。もし折線型であればC2・構造で,その基準振動はラマン・赤外共に活

 性である。 一方直線型であれぽZ)・・ん構造で,ラマン・赤外の交互禁制が成立するはずである。

(11)

CH3−S−CH3,CH3−S−GeH3およびGeH3−S−GeH3のRaman,IR

35

つの反論は,s原子のsp3混成軌道43)によれば折線型の/S\しか考えられないということであ る。しかしながらsp、混成により直線型の一S一は可能である1・44)。今一つの,直線型に対する 反対の根拠は,1つの振動一回転スペクトルやFermiダブレットを複数の基準振動として帰属 したため,基準振動モードがGeH3−S−GeH3に対しては高対称D34のものより,CH3−S−GeH3 に対しては高対称σ3.のものより多いと考えたことである。そのため低対称のC2.あるいはC、

と誤って考えざるを得なかったのであろう。

 本研究に使用したラマソ分光光度計は文部省科学研究費補助金によるものである。当局に深く 感謝の意を表わすものである。

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Table 1  Symmetry species and selection rules  CH3‑S‑CH3, GeH S GeH3,  f D3a and C3v and frequency CH3‑S‑GeH3 and GeH31  assignments o f  M = C and/or Ge  o      o  (/) ( ) cD C! ?, ( ;.  cT) 1   cr)   J  :s * v cx) cx) 

参照

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