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日本経済研究センター 産業ピックアップ 第 4 次産業革命 人口減少下の日本 ( 6 ) 自動車 自動車部品 1. 世界生産は拡大するも 国内販売 生産は縮小 2. 環境規制強化のなか 世界的に次世代車が普及していく 3. 次世代車普及は 国内生産 部品メーカーに下押し圧力 1 世界

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本―

( 6 ) 自 動 車 ・

自動車部品

1. 世界生産は拡大するも、国内販売、生産は縮小

2. 環境規制強化のなか、世界的に次世代車が普及していく

3. 次世代車普及は、国内生産、部品メーカーに下押し圧力

①世界の自動車生産台数は 2030 年に 1.2 億台に 世界生産台数は、一人当たり所得、人口の伸びにより増加を続け、2030年には1.2億台 に達する(図表6-1左)。モータリゼーションが始まるとされる「一人当たりGDP3,000 ドル」を超える国の世界人口に占める割合は、2030年には76%にまで増加する(図表6- 1右)。ただし、当面は北米や中国での新車販売減速もあり、やや伸び悩むだろう。 日系メーカーの生産台数も世界生産台数の増加に応じて増加するが、シェアは緩や かに減少するだろう(図表6-1左)。新興国の販売台数が増加する中で、日系メーカ ーが高いシェアを誇る日本や北米などの先進国の世界市場シェアが低下していくから である。海外メーカーとの技術力の差異が縮小していくリスクにも注意が必要である。 図表6-1 中所得者層増大のなか、世界的な新車生産台数は増加 (注)世界自動車生産台数は暦年。

(資 料 )IMF『World Economic Outlook2017』、Haver Analytics、OICA、Marklines、 日 本 自動 車工業会 ②人口減・高齢化により国内新車販売台数は現行の 7 割にまで減少 国内新車販売台数は、人口減少、高齢化に伴い減少するだろう(図表6-2)。2016 年度の運転免許保有率は、15~64歳で85%、65~74歳で71%、75歳以上は30%15と75 歳以上で急減するが、2022年頃から団塊の世代が75歳以上となるため、新車販売台数 の下押し圧力は強まると考えられる。また、40歳未満の世帯では自動車保有率が低下 を続けており16、今後全体の自動車保有率を押し下げていくこと、自動車の保有率が低 い単身世帯の割合が高まっていくこと17も販売台数の減少要因となるだろう。 15 警察庁『運転免許統計(平成 28 年版)』、統計局『人口推計』 16 統計局『全国消費者実態調査』 17 国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計』

0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 20 40 60 80 100 120 140 160 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 (%) (百万台) (年度) 【世界の自動車販売台数と日系メーカー生産台数・シェア】 世界自動車生産台数 日系メーカー生産台数(国内+海外) 日系メーカー生産シェア(右目盛) 予測 28.0% 57.6% 76.4% 13.6% 14.2% 13.5% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 2000 2016 2030 【世界人口と一人当たり所得別人口シェア】 世界人口 3,000ドル以上の国の人口シェア 20,000ドル以上の国の人口シェア (億人) (%) (暦年) (予測)

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― 図表6-2 人口減少と高齢化、クルマ離れに伴い、新車販売台数は減少 (資料)日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会、国立社会保障・人口問題研究所『日 本の将来推計人口』 ③海外販売比率上昇に伴い、海外生産比率も上昇 国内市場の縮小と海外市場の拡大、緩やかな円の増価に伴い、海外生産比率は2030 年には80%に達し、国内生産台数は800万台を割り込むだろう(図表6-3)。ただし、 国内生産体制を急激に縮小することは雇用面などから困難であり、当面は輸出の比率 を高める形での対応が行われ、国内生産台数の減少は緩やかになると予測する。 図表6-3 海外生産比率は80%に達し、国内生産は800万台を割り込む (注)在庫や誤差のため 、国内販売+輸出-輸入 台数は、国内生産台数と 厳密に一致しない。 海外生産比率=海外生産/(国内生産+海外生産) (資料)日本自動車工業会、日本自動車販売協会連合会、軽自動車販売協会連合会 ④世界的な EV・PHV 優遇政策により、電動化が加速する 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)は、走行中に CO2を全く、あ るいは殆ど排出せず、Well to Wheel(運転時だけではなく、生産過程も含む全体)で も基本的には CO2排出量が少ない(図表6-4左)。ただし、電源構成に大きく依存す る点には注意が必要である。例えば中国では石炭火力が多いことなどから、2030 年に 至るまで EV はハイブリッドカーよりも環境負荷が高い。また、航続距離や充電時間と いった制約のほか、バッテリーコストの高さがネックとなっており、2030 年までにバ 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 (万台) (年度) トラック・バス(軽含む) 乗用車(軽含む) 新車販売台数 【国内新車販売台数】 予測 0 5 10 15 20 25 30 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 【15歳以上人口伸び率と75歳以上比率】 15歳以上人口伸び率 75歳以上比率(右目盛) (%) (%) 予測 (年度) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 (%) 海外販売比率 海外生産比率 予測 -400 -200 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 (万台) (年度) 輸入 輸出 国内販売 国内生産 予測 【国内自動車生産台数】 (年度) 【海外生産比率】

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― ッテリーコスト半減(100 ドル/kWh)、環境価値(80 ドル/tCO2)を加味したとしても 市場競争力は乏しく、「割に合わない」のが実態である(図表6-4右)。ただし、EV は走行距離当たりのコストは安く、仮にカーシェア・ライドシェアにより1台当たり の走行距離が3倍になれば、競争力を持つ。 図表6-4 EVはCO排出量は少ないが、当面はコストが高い (資料)IEA『Global EV Outlook 2017』 以上のことから、EVの市場ベースでの拡大は当面困難であり、普及スピードは政策 支援の強度に依存する。現在、各国政府はZEV規制 18やNEV規制 19など、電動化を促進 する動きを見せている(図表6-5)。その主な動機の1つは、環境面への配慮である。 パリ協定においてコミットしたCO2削減目標の達成が求められること、都市化に伴い大 都市での大気汚染が深刻化していることが大きい。現段階では高コストすぎて割に合 わないEVも、次世代蓄電池の開発により将来的には劇的にコストが低下する可能性も あり、その先行投資をしていると解釈できる。ただし、環境面・コスト面に優れたハ イブリッド車(HV)を過度に冷遇する中国の動きなどはそれだけでは説明ができず、 もう一つの動機として、産業政策面も大きいと見るべきである。エンジン車やHVより も構造がシンプルなEVを主戦場とし、キャッチアップを狙っていると考えられる。 図表6-5 各国政府は、EV・PHVへの優遇政策を進めている (資料)各種報道等より作成 世界の次世代車(EV、PHV、燃料電池車(FCV))販売台数は、IEA のパリ協定達成シ ナリオに近いペースで拡大し、2030 年には新車販売台数の約 20%に達すると予測する (図表6-6)。パリ協定での目標がトータルとして達成できるかは不透明であるが、 EV や PHV については産業政策的側面もあることから、ドライブがかかりやすい。実際、

18 カリフォルニア州等で導入されている、一定比率の ZEV(Zero Emission Vehicle)販売を義

務付ける規制

19 中国で導入される予定の、一定比率を NEV(New energy vehicle)生産を義務付ける規制

0 50 100 150 200 250 300 米 国 中 国 日 本 欧 州 【乗用車のWell to WheelのCO2排出量】 (gCO2/km) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2015 2030 2015 2030 2015 2030 2015 2030 2015 2030 2015 2030 2015 2030 2015 2030 ガソリン車 EV ガソリン車 EV ガソリン車 EV ガソリン車 EV 米国 中国 日本 欧州 【乗用車のパワートレイン別3.5年所有コスト】 ガソリン車コスト バッテリー モーター 自宅用充電器 電気代 走行距離3倍ケース 米国 カリフォルニア州のZEV(ゼロエミッション車)法において、2018年よりHVがZEVの対象から外れ、EV・PHV・ 燃料電池車のみが対象に。 英仏 2040年までにガソリン車とディーゼル社の新車販売を禁止の方針。 独 参議院で2030年以降は内燃機関を搭載した新車販売の禁止を求める決議案を採択。 インド 2030年までに全ての新車販売をEVに。 中国 NEV法を2019年から導入。EV・PHV・燃料電池車のみが対象。 【電動化に向けた各国政府の動き】

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本―

パリ協定において長期目標として規定された『2℃目標』への進捗をレビューしてい る IEA の ETP2017 によれば、2016 年時点で、26 の主な環境技術のうち、EV とバッテリ ーと再エネの3つのみが順調な進捗と評価されている。また、自動車メーカーの打ち 出している長期目標も、概ねパリ協定達成シナリオに近い水準となっている。ただし、 バッテリーの技術革新が想定よりも進まない場合には、腰折れするリスクも十分ある ことには注意が必要である。

図表6-6 次世代車の新車販売台数に占める割合は20%に達する

(資料)IEA『Energy Technology Perspectives 2015』、IEA『Global EV Outlook 2017』 ⑤日本でも EV・PHV の普及は加速するが、政府目標の達成は困難 日本政府も、パリ協定での目標について、『自動車産業戦略 2014』ベースでの EV・ PHV の導入を前提として算定しており、「必ず達成すべき目標」と位置付けている(図 表6-7)。しかし、現時点での普及の動きは鈍く、2016 年のシェアは 0.5%程度にと どまっている。足元ではプリウス PHV や新型リーフが投入されているものの、各社の 販売目標が達成されるとしても、2017 年度で1%強のシェアに留まり、政府目標の達 成は困難な状況である。実際、2016 年3月の『EV・PHV ロードマップ検討会 報告書』 においては、「最大限の成果の発現を前提」として、2020 年の新車販売台数のうち4~ 6%を EV・PHV とする目標を目指すこととしている。 図表6-7 政府目標は野心的だが、達成は困難な状況 (注)2020年の『(4~6%)』は、EV・PHVロードマップでの目標水準。 (資料)経済産業省『自動車産業戦略2014』『EV・PHVロードマップ検討会 報告書』 現在、EVやPHVの普及を妨げている条件は何だろうか。長らくEVについては、航続距 離、充電、価格の3つが普及の壁となっている。そのうち、航続距離については、新 0 5 10 15 20 25 30 35 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2025 2030 【世界自動車販売台数のパワートレイン別内訳】 FCV EV PHV 内燃・HV 次世代車シェア(右目盛) (億台) (%) 予測 (暦年) 2020年 2030年 2020年 2030年 従来車 80%以上 60~70% 50~80% 30~50% HV 10~15% 20~30% 20~30% 30~40% EV・PHV 5~10% 10~20% 15~20% (4~6%) 20~30% FCV わずか 1% ~1% ~3% クリーンディーゼル わずか ~5% ~5% 5~10%   民間努力ケース 政府目標 【次世代車にかかる普及見通し、政府目標(新車販売に占める割合)】

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― 型リーフでは実際の走行でも 300km程度の航続が可能となっており、通常の自動車利 用であれば十分な水準に達している。また、充電についても、充電インフラの普及に より、理論的には電欠が起きない水準 20に達している。ガソリンスタンドが減少する なか、これまでのペースで充電インフラの普及が進めば、充電インフラの相対的な魅 力度が高まっていくだろう(図表6-8)。充電時間や集合住宅での充電インフラなど、 まだ課題は残るものの、徐々に解決に近づいていると言える。 図表6-8 2030年までには、急速充電施設数がガソリンスタンド数を超える可能性 (注)ガソリンスタンドの値は年度末 (資料)CHAdeMO協議会、電動車両電力供給システム協議会、経済産業省、全国石油協会 他方、価格面では、ハイブリッドカーと比較すると大きく劣後しており、市場ベー スでの拡大のためには、バッテリーのイノベーションが不可欠であることがわかる(図 表6-9)。現行ケースはもちろん、原油価格が高騰し、さらに高位の炭素税が課税さ れるシナリオですら、補助金を含めても競争力は乏しい。これは、バッテリー価格の 高さと耐久性の低さが要因である。バッテリー価格が半減し、耐久性が HV と同等にな ってようやく保有コストは同等になる。また、仮にシェアリングが進み、走行距離が 長くなると、走行費の低い EV の優位性が高くなる。比較に用いた新型リーフ(モデル S)は車線逸脱警報など安全面での付加価値があること、プリウス(HV)と比較して量 産効果が十分出ていないと考えられることなどから、完全な同条件の比較となっては いないことには留意が必要だが、市場ベースでの拡大が当面難しいことが伺える。 20 電力中央研究所(2014) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030 【ガソリンスタンド、急速充電施設、普通充電器の普及推移】 ガソリンスタンド 急速充電施設 普通充電器 (万) (暦年) 予測

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― 図表6-9 バッテリーの価格・耐久性のイノベーションが必要 (注1)各シナリオは、左のシナリオから順に、前提条件を付加している。たとえば炭素税導 入シナリオでは、原油価格高騰も前提条件。 (注2)原油価格高騰シナリオ:原油価格が120ドル/バレル、炭素税導入シナリオ:2万円/tCO2、バ ッテリー改善シナリオ:バッテリーの償却期間が7.5年⇒10年及び価格が100ドル/kWhまで低減、 次世代バッテリーシナリオ:70ドル/kWh、シェアリング進展シナリオ:年間走行距離6万km (資料)各社カタログ、電力会社HP、経済産業省HP、e燃費 、IEA『Global EV Outlook 2017』、

トヨタホームHP、経済産業省『平成28年度エネルギー使用合理化促進基盤整備委託費 (EV・PHVの充電インフラに関する調査)調査報告書』、次世代自動車振興センター『充 電インフラ整備事業採算性等調査 報告書』等より作成 日本市場での次世代車シェアは 2030 年時点で 10%強と、諸外国と比較して低い水準とな ると予測する(図表6-10)。日本においても、EV・PHV の普及は、政策支援の強度次第と なるが、日本メーカーは HV に強みを持っており、産業政策として EV・PHV に力点を入れる 必然性が諸外国に比して小さいことから、ZEV 規制、NEV 規制のような抜本的な動きは考え にくい。また、先にみたように、現行の CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金では不十 分であり、その金額を増やす動きも見られない。したがって、政策支援の強度は高まりに くく、その販売拡大ペースも、現状から緩やかに加速していく程度となるだろう。 図表6-10 日本市場での次世代車シェアは伸び悩む

(資料)IEA『Global EV Outlook 2017』、 EV Sales

-20 0 20 40 60 80 100 120 プリウス リーフ プリウス リーフ プリウス リーフ プリウス リーフ プリウス リーフ プリウス リーフ 現行ケース 原油価格高騰 炭素税導入 バッテリー改善 次世代バッテリー シェアリング進展 【廃車になるまで保有する場合の年間あたりコスト比較(シナリオ別)】 CEV補助金 炭素税 充電器コスト 走行費 車体償却 正味保有費用 (万円) 左のシナリオから順に、前提条件を付加 少 前提条件 多 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 2010 2016 2020 2025 2030 【国内乗用車販売のパワートレイン別内訳】 FCV EV PHV 内燃・HV 予測 (年度) (%) (%) (%)

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― ⑥世界的な EV・PHV の普及は、国内生産台数の下押し要因に 世界販売台数においてEV・PHVシェアが高まることは、日本メーカーの販売台数を押 し下げ、国内生産台数の減少にもつながる蓋然性が高い。電動車はエンジン車やHVな どよりも日本メーカーの強みを生かしにくく、また、最大の市場の中国ではBYDなどの 自国EVメーカーの優遇を進めており、日本勢がシェアを伸ばしにくいからである。実 際、日本メーカーのエンジン車の海外でのシェアは 2016 年度で 27%21あるが、EV・PHV では、11%程度 22と半分以下にとどまっている。日本メーカーのシェアが現行水準の まま世界的にEV・PHVが普及すると、エンジン、HVの国内生産台数は 600 万台を切り、 生産台数の 13%程度が次世代車になる(図表6-11)。 図表6-11 EV・PHV の普及は、国内生産台数に減少圧力

(資料)IEA『Global EV Outlook 2017』、 EV Sales、OICA、日本自動車工業会、日本自動車販 売協会連合会、軽自動車販売協会連合会 ⑦世界的な EV・PHV の普及は、部品メーカーにも影響大 EV・PHVの普及は、①国内生産台数の減少、②エンジン車がEVに置き換わることによ る部品代替影響(減少、増加)の2つの点から、部品メーカーへの影響がある。この うち①については、図表6-12 のとおり、減少が予測される。②について、減少分に ついては、エンジン車からEVになることにより、エンジンやトランスミッション、シ ャフト類が不要になり、部品出荷額ベースで3割以上(1台当たり 50 万円程度)が不 要になると想定される。一方で、増加する部品として、バッテリーやモーター、電子 制御装置がある。これらの合計は、EV1台当たり 100 万円程度の規模となり、その額 は不要となる部品の額を上回る。したがって、仮に国内生産車内での日本部品メーカ ーシェアをガソリン車と同程度に維持 23できれば、EV・PHVの普及は、国内生産1台当 たりの部品メーカー売り上げを大幅に引き上げる。ただし、部品メーカーのプレイヤ ーが入れ替わることには注意が必要である。 21 OICA、日本自動車工業会、日本自動車販売協会連合会、 軽自動 車販売 協 会連合会 より算 定。 22 EV Sales の 2017 年 1-5 月実績より算定。 23 現状では、車載向けリチウムイオン電池ではパナソニックが約4割の世界シェアを占めるほ か、その肝となる4部材全てにおいて、日本の素材メーカーが高いシェアを誇っている。 0 2 4 6 8 10 12 14 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2025 2030 【EV・PHVの普及を前提とした国内生産台数見通し】 FCEV BEV PHEV 内燃・HV 次世代車シェア(右目盛) (万台) (%) 予測 (年度)

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― 以上を前提に、輸出率を横置きとして試算すると、EV・PHV が普及した場合の部品出 荷額は、普及しないシナリオと比較し、2030 年時点で 1 割弱ダウンする(図表6-12)。 部品代替影響については、増加が減少を上回り、プラス寄与するものの、国内生産台 数の減少が響き、トータルでは EV・PHV の普及はマイナス寄与となる。国内生産台数 の減少を前提とすると、部品出荷額の減少を食い止めるためには、日本メーカー以外 へのバッテリーなどの販売拡大を通じた輸出比率向上が必要である。 図表6-12 EV・PHV の普及は部品出荷額を 2030 年度で 1 割程度押し下げる

(資料)IEA『Global EV Outlook 2017』、EV Sales、OICA、日本自動車工業会、日本自動車販 売協会連合会、軽自動車販売協会連合会 、日本自動車部品工業会、経済産業省『素形 材産業ビジョン』、日本産業機械工業会 <予測方法について> ■世界の自動車販売台数(図表6-1) 2017年度以降の世界自動車販売台数については、一人当たり自動車販売台数を被説 明変数、一人当たりGDPを説明変数とする回帰分析をベースに予測した。サンプル期間 は1995年から2016年まで。世界人口はIMFの予測値、世界GDPは日本経済研究センター 『第44回中期経済予測』の値を使用。 ■日系メーカー生産シェア(図表6-1) 2017年度以降の日系メーカー生産シェアについては、一人当たりGDP2万ドル以上の 国家の世界人口シェアを説明変数とする回帰分析をベースに予測した。サンプル期間は 1990年から2016年まで。人口シェアはIMFの予測値より作成。 ■国内新車販売台数(図表6-2) 2017年度以降について、乗用車販売台数については以下を説明変数とする回帰分析 をベースに予測した。サンプル期間は1991年から2016年まで。 ・実質民間最終消費支出:日本経済研究センター『第44回中期経済予測』の予測値を使 用。 -5 0 5 10 15 20 25 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2025 2030 【EV・PHV普及を前提とした部品出荷額推移】 部品代替影響(増加) 部品代替影響(減少) 生産台数減少影響 EV/PHV考慮前出荷額 EV/PHV考慮後出荷額 (兆円) (年度) (兆円) 予測

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― ・民間最終消費支出デフレーター:日本経済研究センター『第44回中期経済予測』の 予測値を使用。 ・75歳以上人口比率:社会保障・人口問題研究所『日本の将来人口推計』の値を使用。 トラック・バスの販売台数については、民間住宅投資、民間企業設備投資、公的固定資 本形成を説明変数とする回帰分析により予測した。サンプル期間は1991年から2016年まで。 いずれの説明変数も、日本経済研究センター『第44回中期経済予測』の予測値を使用。 ■海外生産比率(図表6-3) 2017年度以降の生産比率については、以下を説明変数とする回帰分析をベースに予 測した。サンプル期間は1993年から2016年まで。 ・世界日系メーカー販売シェア:日系メーカー生産シェア、世界生産台数、日本販売台 数等から独自に算定。 ・ドル円レート:日本経済研究センター『第44回中期経済予測』の予測値を使用。 ■世界自動車販売台数のパワートレイン別内訳(図表6-6)

2017年度以降の割合については、IEAの『Energy Technology Perspectives 2015』 の2度目標シナリオ、IEAの『Global EV Outlook 2017』パリ協定シナリオの予測をベ ースに、政策動向を踏まえて、2030年のFCVの割合を経済産業省『自動車産業戦略2014』 の民間努力ケース並みとし、その分、EV・PHVの割合を高めた。 ■ガソリンスタンド、急速充電施設、普通充電器(図表6-8) いずれも、過去5年間(2011~2016年度)の傾向が続くと仮定して予測した。 ■廃車になるまで保有する場合の年間あたりコスト比較(図表6-9) 以下の前提を置いて試算した。なお、割引率は考慮していない。 (注1)実地での使用に近づけるため、カタログ性能の7割とした。 (注2)償却年数は、中古車市場(カーセンサーネット)の価格下落率から推計。 (注3)自宅充電器設置および充電器インフラ整備コストの利用負担。急速充電インフラ施設数、普 通充電器数は、IEA『Global EV Outlook 2017』のEV1台あたり施設数等をもとに独自に試算。

プリウスHV(モデルS) 新型リーフ(モデルS) 車体価格(万円) 247 315 燃費・電費(km) 26 7 EV走行距離(km) - 280 充電消費電力量(kWh) - 40 償却年数(年) 10 7.5 1kWhあたりgCO2 370 ガソリン1ℓあたりgCO2 2,300 ガソリン・電力価格(ℓ・kWh) 130 23 バッテリー価格(ドル/kWh) 200 充電器コスト(円/年間) 28,800 CEV補助金(万円) 0 40 年間走行距離(km) 10,000 シナリオ 原油価格 高騰 炭素税 導入 バッテリー 改善 次世代 バッテリー シェアリング 進展 タクシー並みの走行距離(国土交通省『タクシー事業の実 態』)を前提に、年間走行距離を60,000kmとした。 年間走行距離と償却率の関係は、Fraiberger and Sundararajanl(2015)をもとに算定した。 概要 原油価格が120ドル/バレルとなると仮定。 その場合のガソリン価格の感応度は原油価格を説明変数と する回帰分析、電力価格の感応度はエネルギー経済研究所 『電気料金の将来予測について』を基にした。 環境省『諸外国における炭素税等の導入状況』をもとに、 20,000円/tCO2の炭素税が導入されると仮定。 IEA『Global EV Outlook 2017』における現行のリチウムイオ ン蓄電池の限界値をもとに、バッテリー価格を100ドル/kWh とした。償却期間はHVと同等の10年まで改善するとした。 IEA『Global EV Outlook 2017』における次世代蓄電池のコ スト水準をもとに、バッテリー価格を70ドル/kWhとした。

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― ■国内乗用車販売のパワートレイン別内訳(図表6-10) 2017年度以降のEV・PHVのシェアの伸びは、価格低減に伴い足元のシェアの伸びが緩 やかに加速するのみにとどまると予測し、2020年度までは2017年度伸び率(1-5月実績 より推計)の1.5倍、2020年度からは2倍に加速するとして想定した。FCVは、経済産 業省『自動車産業戦略2014』の民間努力ケース並みとした。 ■EV・PHVの普及を前提とした国内生産台数(図表6-11) 2017年度以降の国内生産台数は、日系メーカーの海外販売シェア、国内販売台数、海外 生産比率、海外・国内のパワートレイン別内訳の予測を用いて算定した。ただし、次世代 車の海外・国内販売シェアは2017年1-5月実績を横置きし、次世代車の海外生産比率は、海 外販売比率の予測をもとに、『図表6-3』の予測に用いた推計式の係数を用いて推計した。 ■EV・PHVの普及を前提とした部品出荷額推移(図表6-12) 2017年度以降の部品出荷額推移は、EV・PHVの普及考慮前の数字は、過去の国内生産 台数1台当たりの部品出荷額について過去トレンド(2010から2015年度)が継続する ことを前提とし、国内生産台数の予測を用いて予測した。EV・PHVの普及考慮後の数字 は、国内生産台数減少影響については、EV・PHVの普及を前提とした国内生産台数の予 測を用いた。部品代替影響については、以下の前提をもとに、国内・海外販売のパワ ートレイン別内訳、海外生産比率の予測を用いて予測した。 (資料)自動車部品工業会、経済産業省『素形材ビジョン』、日本産業機械工業会、IEA『Global EV Outlook 2017』などをもとに推計。 エンジン車部品構成比 EVで不要になる割合 エンジン部品 1 4 .6 1 4 .6 電装品・電子部品 1 2 .8 9 .0 電気・電子部品 15.0 0.0 駆動・伝達及び操縦 装置部品 2 1 .6 8 .0 懸架・制動装置部品 5.4 0.0 車体部品 20.8 0.0 その他 9.8 0.0 合計 100.0 3 1 .5 EVにより不要になる部品の割合(金額ベース)     (%) 現状 2030 バッテリー (現状:200ドル/kWh、 2030:100ドル/kWh) 89 53 モーター、電子制御装 置、バッテリー制御等 25 23 合計 114 76 EVで新たに必要となる部品(1台あたり金額(万円))

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日本経済研究センター 2017.12 産業ピックアップ―第4次産業革命、人口減少下の日本― <参考文献> 経済産業省(2013)『新素形材産業ビジョン』 経済産業省(2014)『自動車産業戦略2014』 経済産業省(2016)『EV・PHVロードマップ検討会 報告書』 経済産業省(2017)『エネルギー使用合理化促進基盤整備委託費(EV・PHVの充電イン フラに関する調査)調査報告書』 次世代自動車振興センター(2014)『充電インフラ整備事業採算性等調査 報告書』 電力中央研究所(2014)『急速充電ステーション最適配置に関する解析調査』 日本経済研究センター(2017)『成長の芽を見出せない日本経済―賃金配分低く投資も 加速せず―、第44回(標準シナリオ)中期経済予測(2017-2030年度)』

UNFCCC(2015a)“Paris declaration on electro-mobility and climate change & call to action”

Samuel Fraiberger and Arun Sundararajan (2015)“Peer-to-Peer Rental Markets in the Sharing Economy”

IMF(2015)“Energy Technology Perspectives 2015”

IMF(2017)“Energy Technology Perspectives 2017”

参照

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