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不確実性構造と 経営の機能的階層関係(1)

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(1)

421  

・−5ヱ・− 

不確実性構造と 

経営の機能的階層関係(1)  

井 上  勝 人  

Ⅰ序  

われわれほ経常紅関するOR諸手法をど汐ネス・.エコノミックス的に整序す  

るに・当り,まず本質的に異なる二つの問題群をもってこれに.臨むことができ   る。すなわち第一一に,OR諸手法ならびに.ピ汐ネス・ヱ.コノミックスに.おいて  

使われるそれぞれの不確実性概念把.関する分析と第二に,不確実性を負担■する   経営構造軋閲す−る分析とがそれである。第一・の点に関しては後払述べるよう   に,こ・の不確実性概念がビジネス・エコノミックスとORとの接触領域ないし   境界領域を形成し,とのことほ反面から云えば,ビジネス・エコノミックスに   おける不確実性概念の分析が,ビジネス・エコノミックスから0Ⅰミへの橋渡   しの役割を果すと看ることもできよう。けだしORにおける不確実性概念は統   計的決定理論を前提とするものである紅対し,ビジネ、ス・エコノミックスにお   ける不確実性概念ほ,一般の経済理論ないし経営理論がそうであるように,多  

くは危険概念をも含めた広義の不確実性,換言すれば,将来のないし統制圏外   のあらゆるfacto工ならびにその影響するところを意味する概念であるから,  

ビジネス・エコノミLツクスにおける不確実性の構造を考察し,それとOR紅お   ける不確実性概念とを接合することにより,ビジネス・エコノミックスから   ORへの進展あるいはOR諸手法のど汐ネス・エコノミックス的展開への道が  

ひらけるものと思われるからである。第二の点に.閲し経営構造とはその見地の   如何に・よっていろいろの構造として理解し得るけれども,ここでは経常の機態   的構造を中心問題として考察する。けだし経営の機能的構造は機態的組織構造   として経営の主体的構造と関連し,不確実性を負担する機関論的展開によって   意思決定行為の機能的階層関係を明らかにするから,階層別不確実性を媒介と   

(2)

第41巻 第5・6号  

−ゑ2−−  

422  

することによって経営のOR手法を位置づけることができると思われるからで   ある。そうしてその際の経常構造の分析ほわれわれの視点からは当然軋ビジネ  

(1)  

ス・エコノミックス的機能分析を中心とすることは云うまでもない。   

さて,上述の如くわれわれほ.不確実性構造と経営構造との二面から,経営に   関するOR手法をビジネス・エコノミックス的に位置づけることを試みるので   あるが,そ・の際の考え方の拠り所としてわれわれはグーテ∵/ベルクとサイモソ   を挙げることができるであろう。けだし不確実性と経営組織に関する論攻ほ多  

くの人枕よって行われたが本質的にはグ_テンペルクの組織代位の原基   本とするものであり,さらにそれの最も明快な分析を与えたのはサイモソの著  

(8)  

書「■経常に.おけるあたらしい意思決定の科学」であると思われるからであるd   したがって二,∵bれわれの論述ほ主として彼らの着古に依拠するとしても,そ・れ   らの単なる注釈を意味するのではなく,彼らの考えをビジネス・・エコノミック   ス研究に準用しようとするものである。ゆえに本稿の企図するところは彼らの   示す枠親によってど汐ネス・定コノミックスを考察することにあり,そうして   そ・の枠組みによる思考がまたOR手法の整序に連なる過程を明らかにすること   に.ある。然らば,われわれの依拠する彼らの思考の枠組とほいかなるものであ   ろうか。それほ上述した如く一号紅して云えば,組織代位の原則と称せられる   もの紅求められるのであるが,それを爾後の展開に必要な限り把.おいて示すな   らば次めとおりである。   

まず,グ丁テンペルクの考えに・ついてほ既に数多くの紹介があり学説の検討  もなされてこいるので屋上屋を重ねる愚ほ避けねばならないが,われわれの視点   

(1)因みに,ビジネス・、エコノミ.ックスにいおてほいわゆる経営管理論払おける諸原理,  

例えば権限の委簸,分擬管理などの批判的摂取の上でその所説を展開しているのであっ    て,ビジネス・エコノミ.ックスが経営学に著しく傾斜していることの一滴をここにも看    取できるのである。これらの点についてほ,拙稿,事業部制と分栃的経営管理,公営評   

論23号参照。  

(2)G11t9nberg,E.,GrundlagenderBetriebswirtschaftsユehre,Bd・Idie Produkt−  

ion,1955.,S..171い(溝口ー・雄・高田発訳,経営経済学原理,策1巻生産論)  

(3)Simon,H。,A。,The New Science of Management Decision,1960・pp・5−7・  

(宮城浩裕,経営におけるあたらしい意思決定の科学,(坂本藤良監訳,コンビュ−タ−   

と経営のうち)   

(3)

不確実性構造と経営の機能的階層関係(1)   −5β−  

423  

から重視すべき点ほ彼の経営経済学紅おける管理的要素の重要性の認識セあ  

(4)  

る。この点についてほ既に・山本教授らの指摘せるところであるが,アメリカに   おけるど汐ネス・エコノミックスの管理原理の浸透と対比して興味ある問題で   ある。それは.とも角,彼はほとんどのドイツ経営経済学がそうであるように,秩   序の形成から出発する0そうしてそのうちの経営秩序ほ人間の意職呵紅形成す  

(5) る手段,すなわち経営計画と経営観繊紅基づいて∴構成されるとして,計画と組  

織に.基本的重要性を認めている。而うして,彼ほ,経営全体の計画を経営の各   部分領域に割当てる原理を省察し,その判断基準として組織の−・般的規則ない   し組織の代位法則を考えた。彼ほ,経営事象は小さな差異を無視すれば,どの   経営にも同一魔の方法で多少とも規則的に反覆される多くの過程があり,かか  

る同一・または類以の過程が多少とも規則的吟行われる事態ほ,−・般的紅規則さ   れるような方向に押し進むものであって,このような一般的規則ほ関係者に.一   定の仕方を規定し,同時に.完全に自分独自の裁鼠によっ行動する可能性を取り  

(¢)  

去るものとして,一・般的規則は特殊的命令紅代位するという命題を樹立した。  

この命題に.はもとよりいろいろな論点がありうるけれども,細部の議論ほ別と   して,ここではグーテンペルクが確立しようと目途した命題がどぅいうもので   あったかということだけを明らか軋するに・とどめよう。そおしてかかる命題は  

−・般的に・ほ,経営の下層組織にいくにつれてその妥当性が増大するこ.とが容認   されるであろう。その後,この問題はサイモンに.よってとりあげられ,そのさ   いに.彼が用いた定型的意思決定(programmeddecision)と非定型的意思決定  

しニ)  

(non−PrOgrammeddecision)の概念は,経営の意思決定を論ずる場合の索出   命題として意思決定論の理論構成に・欠くぺからざるものとなっている。われわ   れはつぎにサイモンの主張点を見ておくこと紅しよう。   

サイモンは,グーテンベルクによっですでに.明らか把.されていた成果を意思   決定システムの設計という観点からこれを計画概念と接合するとともに,これ   

(4)山本安次郎著,経営学の基礎理論,341貢。  

(5)Gutenberg,a.aり 0.,S.170  

l6)Al.ah O‖,S.171 

(7)SilnOn,OP.Cit.,p5.   

(4)

貨41巻寛5・6号  

− 54 −   

424  

に加えてそれぞれの位置づけを考察した。すなわち,問題が反覆的常規的に.生   起する場合にほ,決定の処理のために明確庵手続が定められ,その都度あらため   て処理する必要のない場合にその決定は定型的であると云われる。定型的決定   が反覆的に.なり,反覆的な決定が定型的に.なる理由ほとくに.ある問題が反覆し   て起る場合軋,この問題を解決するために.通常常規的な手続が計画されること   紅よる0定型鱒意思決定紅対し,問題が斬新的でまた組織的なものがなく,か   っ重要なものである場合にほ,その決定ほ非定型的でありこ.ゐ場合に.は問題が   以前に.生起したととがないか,その性格や構造が理解できないか複雑である   か,あるいほきわめて重要な決定であるために,こ.の問題の解決のほつきりし   た方法がないとして,こ.れを非定型的決定と呼んでいる。このうち,定型的意   思決定は組織代位の原則をいいかえたもゐであるから,とくぺつな説明を要し   ない。非定型的意思決定は経営革新を基本課題とする現代経営体にとって特に  重要であることば.論を侠たないとと.ろである。そして更にサイモンはこれら定   型的決定と非定型的決定のためのそれぞれの分析テクニックの発達変遷に対応  

(8) する分類表を作成しており,このことはORの経営経済学的位置づげを志向す  

(8)伝統的意思決定テクニックと現代的意思決定テクニック  

意思決定   伝 統 的  

テク ニ ック  

現 代 的   決 定 の 型  

1.カ・ぺレ・−ションズ・リ  

サーサ  

数学的分析   モデル 

コンビ,コ、−・タ−・レミ 

ユレ′−シ′ヨこ/  

2・エレクトリック・デー   タ処理  

1〝 習慣  

2.書記の常規的業務:   

標準作業手続   3.組織構造:  

共通の期待   下位冒標の体系   明確な情報チャンネル  

定型的:   

常規的反覆的決    定  

組織は七れを   あつかうため   の過程を発展   させる  

ヒューーリスティックな問題   解決テクニックの適用対象  

(a)人間としての意思決定  

者の訓練  

(b)ヒュ・−リステ・イツク・  

コンビュ」−・ター・プロ  

グラムの作成   1.判断,直観,創造性  

2.メノコ算  

3.経営者の選抜および訓   練  

非定型的:   

単発で新奇な方    針決定   

−・般的な問題解   

決過程で処理さ   

せる  

サイモン前掲邦訳沓26瓦から  

こ、の表は,  

細部ほ.異なっているが,   引用した。   

(5)

不確実性構造と経営の機能的階層関係(1)  

−5∂−  

425  

るわれわれに・とって注目に・催する0これらのことは後に詳論されるところであ   るが,われわれはさし当ってグーテンベルクとサイモンの考え方を推論の拠り   所として,以下にORの経営経済学的位置づけを解明することを試みよう。  

ⅠⅠ不確実性概念  

上述したように,経営に.関するORをど汐ネス・エコノミ.ックスに沿って整   序するにほ,第1に.両者酷使われている不確実性概念を分析し,ビジネス・エ  

コノミックス的不確実性からOR的不確実性へと橋渡しすることが必要であ   り,第2に.ビジネス・エコノミックス的経営構造の分析軋よって,それと不確   実性概念を接合することの前提とすることが要請されるのである。そして第  

1,第・2の分析を総合する際の拠るぺき考え方がグーテンペルクやサイモンの   組織代位の原則であった。それゆえに,まずわれわれは以下にど汐ネス・エコ  

ノミニックスとORに.於ける不確実性概念を分析し以て:問題展開の緒口としよ   う。   

−・般に,経済理論の中紅「不確実性」概念を導入し,それに.よって理論の展  

(9) 開に.新らしい途をひらいたと云われるのは,19別年払出仮されたナイトの業績  

(10)  

であったことほ周知のとおりである。すなわち,彼はクラL−クの利潤動態説に  対して利潤危険説を提唱したのであるが,同時紅利潤発生の根拠たる不確実性   の分析にも爾後の当該概念分析の基本たる見解が捉示された。それは要する   紅,利潤は動的諸変化の結果生ずる不確実性にそこの発生の根拠を求めるぺきで   あり,不確実性を引受けるのほ企業者であるから利潤は企業者に.帰属する。そ   してこの不確実性とほ,日常使われている危険概念とは明瞭に区.別され,測定   し得る不確実性を危険ないし客観的確率と云い,測定し得ないものを不確実性   ないし主観的確率と呼んだ。かくの如ぐであるから,われわれほここ∴で,経済  

(9)Knight,F,H.,Risk,Ur)Certaintyand Profit,1921・(奥隅栄音訳,現代経済学    名著選集ⅤⅠ.)  

(1O)Clark,JB..,The DistributionofWealth1900;and Essentialsof Economic    Tbeory,1907.   

(6)

第41巻 鰭5・6号  

−56 −  

426   

琴論や経営理論で使われる不確実性概念を分析するために,それの代表者と目    されるナイトの不確実性に関する論議を明らか軋すること粧しよう。けだしナ・   

イト以降の経済理論に於ける不確実性はすぺてその忠議や内容をナイトに拠っ    ており,例えばピ汐ネス・エコノミックスに.計鼠径済学的分析拳法を大巾に.導  

(11)   

入したと冒されるスぺンサ〜・レーザルマンにして.も彼らの不確実性に.関する    取り扱いはナイトを超えてほいないとみることができるからである。  

ナイトの「危険・不確実性及び利潤」の眼目が,利潤論の解明に.あったこと  

、は前述の通りであるが,それに加えて予想に.関する不確実性概念の導入と分析    が,彼の大きな功績の一つ紅数えられることに異論ほあるまい。それは残余所    得としての利潤が何らかの競争的静感均衡からの離脱を意味するものであると    ころからの自然の帰結であったとも云えるが,当時として経済理論のなかに不    確実性概念を導入し予想の経済学とも云えるものを確立したことは,それまで    の経済理論が完全予見ないし完全情報の仮定に立って成立していたのに.対し,   

画期的な業績であったと云わねほならぬ。すなわち,彼によって展開された考    え方に従うならば,まず,仙切の事物が絶対に整一・に.動くとき紅は将来は現在    において完全に.予知されるから,競争はすぺての価格が諸原貿とひとしくなる  

(12)   

如き理想的状態に諸事物を凋整するこ.とができて−,利潤は存在しない。したが    って,利潤ほもっぱら動的変化の結果であると考えられるが,彼の考えの特徴    は単に動的変化そのもの紅利潤の原因を求めず,さらに変化に激する予想にそ    の原因を求めたところに.ある。けだし,諸状態の変化そのものを利潤の原因と   

して考える動態説では,予知し得る変化と予知し得ない変化との差異という根    本的由題を見落しているばかりでなく,利潤をもたらすことのない変化がおこ  

t13)   

り得ろことならびに.動的な諸変化が全く存在しなくても利潤が起り得ることが  

(11)Spencer,MIP H・and㌔ Siegelman,ManagerialEconomics,1959・(佐竹儀昌,   

永澤題郎,渡辺修訳,経営経済学入門(止)(下1)  

(12)mlight,OpJcit.,p・37.  

(13)クラークの「動的変化」とほ次の5種の変化を指す。  

1.人口は増加しつつある。   

2.資本は増加しつつある。   

(7)

不確実性構造と経営の機能的階層関係(1)   −き7−  

427  

説明され得ないからである。クラ」−クの動態説に対しナイトの危険説と云われ   る所以である。かくして,利潤の鹿因は動的変化そのものではなくて−,変化紅   対する予想されたものおよびそれ紅基づいて事業取引がなされたところのもの  

と現実の諸状態との相違に求められて.いるのである。こ.こにおいて,われわれ   は予想の経済学として彼の論旨を理解することができる。   

予想の問題は,・劇般匿.経営計画の構成因子であり,ケインズも指摘している   如く,「現在の情勢をそのままにうけとってそれを将来に.投影するととであ  

り,変化を予想すべき多少ともほっきりした理由がある ときにかぎって,それ  

(14)  

に.修正を加えるにすぎない」という態度で貫ぬかれてきたことにみられる如   く,ケインズの言葉の袈紅ほ現実の予想は−・般に・不明確であり多値的であるこ   辛が看取される0ナイトはこの不明確な予想の問題に論理的な解明を与えよう   と試魂たのであり,彼の不確実性分析ほ予想と関連せしめられて明確な形を与   えられる軋至る。すなわち,予想の性質として危険と不確実性を挙げ,前者は事   象の集合に.阻する確率分布がア・プリオリに計算を通じてか又は過去の経験の   統計からかのいずれかにより知られているのに反し,後者では生起する事象が   高度に・ユ∴ニークなため等質的な分類が不可能であり,したがって・その等質的集   合を形成することが不可能であるという理由で,確率分布の型が知られていな  

(15)  

いか,確率分布の概念自体が規定することができない場合である。かくて,彼   は後者の確率の概念に.よって把握されない不確実性が真の不確実性であると規   定し,この裏の不確実性こそ全体としての経済組織匿企業の特質的な型を与え 

(18)  

るものであり,企業者に独㍍一な収入を与えることを説明するものであるとして   いる。   

3.生産方法は改著しつつある。   

4.産業施設の形ほ変りつつあり,・一層能率の大なものが残存する。   

5.消費者の欲望は増大しつつある。   

Clark,The Distrib11tion of Wealth,p.56.  

仏4)Keynes,JりM..,The GeneralTheoryof Empl 

1936‖ p小148 

個 こ馳ight,Op.Cit..,p.233 

㈹ Op.cit…p.232 

(8)

第41.巻 第5・6号  

ーー∂β−  

428   

ところで,彼が危険と不確実性とを分け,後者の不確実性こそが其の不確実   性であると規定したこ.とほ.,彼の確率に.対する考え方が,先験的に得られる先   験的確率や数多くの観察ないし試行に.もとづく統計的確率つまり客観確率を措   定していたこ.とを物語るものである。とのことほ,ミーゼスに.従えば,相対的  

(1り  

頻度の測度として確率を概念づけていたのであり,後に詳論されるように.,信   漑度の測度として:のいわは主観確率の概念を加えるこ.とに.よって補強さるべき   点であり,この点に決定理論の斬らしいテクニックが注目される根拠がある   が,かかるナイトの足らざるところ軋注目することによって,われわれは経済   理論から決定理論への不確実性という架橋を通じて,決定理論の成果を吸収し   なけれはならないことを主張す之と共紅,逆に個別的に発展せしめられたOR   の諸技術を経営の経済理論に浴うて\整序することの可能性を主張するのであ   る。それほとも角として,ナ・イトの不確実性分析ほその後の研究者に継承され   て例えば,あれわれの当面の研究課題たるビジネス・エコノミ.ックスにも導入   されてそれぞれの理論の豊穣化に稗益したのであ卑0 ビジネネス・・エコノミッ   クスのなかでも統計学と計義経済学の新しい理論と方法をとりいれてきわめて   ユ‥ニークな業績として評価されているスぺンサ−とシ、−ゲルマンの「マニジュ   リアル・,エコノミックス」においても不確実性の問題ほナイトの考.え.方をその   まま踏輩して展開されている。すなわち,危険は客観的予想であり数量的確率   的に測定できるが,不確実性ほ主観的現象であって反覆試行が不可能であり鼠  

(18) 的に予測できないとされている。そして経営者の直面する不確実性の領域とし  

(用 Von Mises,R.,MathematicalTheory of Probability and Statistics,1964ル    pp.5〜10い ミーゼスは客観確率の基本的考え方な極限概念およびランダムネスの2つ   

の概念を用いて次のように説明する。ゐ種類の異なった標号(1abel)α1,α2,,α如    をもつ有限な標本空間(a fitlitelabelspace)S,および各・方]がaiで透る数列(.rj)   

紅おいて,勾をある特定の標号とし,数列†尤バ の最初の光個のなかにα名の標号をも    つ要素が符豆個であるとすると,比率〝¢/nが〈一方バの最初の乃個の・要素の中における   

aiの相対頻度(relativef∑・equenCy)と呼ばれる。数列(x])は無限に拡大されること    ができ,兜£/nは紹が無限大になるとある極限値に近づく。この極限値を数列i・方プ〉 に 

おける療号α豆の極限頻度と呼ぶ。この極限頻度の基礎になる数列(∬プ〉は,その中の    要素の配列ほアトランダムでなければならない。かかる場合,この極限頻度が確率と呼    ばれる。  

(18)Spencer az7d Siegelman,Op・Cit。,ppl・5〜15 

(9)

不確実性構造と経営の機能的階層関係 仙   −β9−  

429  

(19) て,利潤・需要・生産・費用・価格・競争・資本を挙げて論じているが,われ  

われの注意すべき点ほ彼らの論旨の展開過程に‥おいて不確実性の内容がいっの   間にか,危険概念と不確実概念を区別することなく一緒にして未来についての   不完全な知繊という意味にすりかえられてしまっており,切角ナイトの危険と   不確実性概念を導入しながらすべてを不確実性という語で説明することに・より   か.え.って何も展開し得ないという結果に終っている。つまり不確実性は未来の   不完全な知識に.ほ相違ないが,ナ・イトの規定を内容紅おいて生かしきれず常識   的な意味での用法に.堕してしまっていることを指摘したいのである。ピ汐ネ  

(20)  

ス・エコノミ.ックスほ経営経済学ないし意思決定のための経済学として経営計   画樹立のため紅いかに経済分析を活用すべきかを究明する研究領域であるか  

ら,当然に不確実性分析は最重要課題たることをまぬかれないのであるが,ス   ぺンサーらの場合は不確実性を強調するのみでナイトを越える進展は何ら見ら   れない。むしろ経営者の直面する不確実性に言及する以前の段階で不確実性構   造分析として試みられた危険と不確実性に.対する考察のみがナイトの水準紅迫  

る有益な論攻となっている。われわれほ.前述のナ・イトの主張点とそれの足らざ   る所ならび紅スぺンサー・らの不確実性の領域などの問題を考えあわせて経営の   直面する不確実性について再構成を試みる必要があると思ゎれる。   

われわれの叙述はかくの如くにして次紅ナイトの足らざる所すなわち主観確  

(21) 率論の領域に㌧入らなければならない。けだし確率論の発展はナ・イトの措定した  

u9)Op.cit・,pp・19〜21・  

鋤 宮川公男,意思決定の経済学,1貰d  

似)確率論の起源は,約3世紀前に創建された偶然を伴うゲームの理論紅存する。17世紀    中期に至って,種々のダームにおける賭博者の勝ち目を計算する合理的方法の必要から   

パスカル(Blaise Pascal)とフエルマ(Pierre de Fermat)によって近代確率論の基    礎が形成された。そうして,いわゆる古典的な確率の定義が結果されたが,所与のダー    ムにおいて,いかなるときに種々な可能な場合が同程度に可能であるとみなしうるかを   

決定すべき基準を与えていないところから,この定義紅は欠陥があ号と指摘され,その    後同程度に.可能な場合という概念を分析し,かかる古典的定義の必要とする同程度紅    可能な場合ついての具体的な観念を形成することは困難あるいは不可能でさえあると考    えられるに至った。そこで,確率論に.対する根本的に新しい接近方法が求められ,度数    型の定義が生じた。今世紀紅入って度数型の定義に.基づいて理論を建設しよ うとする   

試みが繰り返され,公理化の傾向によって影響を受けている。公理化の観点をこ立つ確   

(10)

第41巻 籍5・6弓  

430  

ー6ク ー  

客観確率紅加えて主観確率を導入することによりその適用領域が拡大すると共   に.,適用の目的に応じて種々の形をとらざるを得ないからである。ナイトほ広   義の不確実性を二種類に分けて危険と狭義の不確実性とを区別したが,かく区   別せしめた彼の考え方の板紙にほ相対頻度を基礎に・して\確率を考えて−いたこと   が看取されることは既に指摘した。この考え.方は統討的事実から積率母関数に   よる吟味をへて確率分布の型を決定するような問題が第一・の局面をなすような   問題,例えば,在庫管理,品質管理,待合せ理論による設備計画などを考察す   るときほ極めて有益であるが,ナイトの称する轟の不確実性に対処するに・は不   適当となる。したがって彼は主観確率という語を使用しながらその内容展開に  

(22) 至らずして,かかる不確実性に・対処するに・ほ経営と経済統制の問題紅帰着せざ  

〈28)  

るを得ないと結論しているのである。われわれは.こ.れに対して主観確率の客観   化を考察し,彼の兵の不確実性問題に対処する方法を講じなければならぬ0け   だし主観確率は確信の度合を客観確率の頻度紅当てはめればよいと云って:しま   えば簡単であるが,少なくとも客観確率にイ以た形で定星化されなければ確率論   で展開されてきた数学手法が適用できないからである。   

主観確率は,ナイトの真の不確実性に対応するものとして,生起する事象が   ユニー・クなため等質的な分類が不可能であり,かつその等質的な集合を形成す   ることが不可能であるため,確率分布が知られて‥いないか確率分布の概念自体   が規定できない場合に適用される。換言すれば,対象となっている要素の集合   において,その全体集合および部分集合に・ついて明確な判断が下せず,各要素   について繰返しの仮定ができず,各要素について同様に確からしいと考えるこ  

とができないような場合である。かくして主観確率の解明ほ,ポーモルがいみ   

率の定義ほ,確率とはある公理を満たサー山つの数鼠である,とされ,W・Feller,A 

Ⅹ01znogoroffなどk:,よって代表される。これらに,ついての詳細は,Todhunter,Ⅰり,A   

HistoIyOf the MathematicalTheory of Probability,1865CIam6r,H.,The    Elements of Probability Theory and Some ofits Applications,1955り を参照。  

但2)Knight,OpりCit.,p.233  位3)Op.cit.,p.259 

(11)

不確実應構造と経営の機能的階層関係(1)   −6ユーー  

431  

(24)  

じくも指摘したように,現代の決定理論へとわれわれを導く。オペレ■−ジョン   ズ・リサ−チの大部分はナ・イトの指摘した危険概念に関するものであり,確率   統計的に.その確率変数の分布が推定可能な問題紅関するものである。そうし   て,問題によってほ.その積みあげに.よってルーチン化され,序で述べたところ   の組織代位の原則が適用されるに.至るが,不確実性問題ほ・その性質上最高経   営層の経営範疇に.属する。これらの問題紅ついては後に詳論するとして,主観   確率の客観化方式には幾多の方法があるが,ここでほその{例としてポーモル  

(26)  

の公理化による方法を吟味する。   

ポーモルの公理化の要諦ほつぎの点にある。いま,ある個人の選好行動が無   矛眉の仮定をおくことができて,ある公理,こ.の場合はノイマン=モルグンス  

(26)  

テルンの公理を満足し,彼の行動の仕方が客観的確率過程に・類似させて行動す  

(2亜現代甲決定理論はナイトゐ其の不確実性のもとにおける選択草取り扱うことを目標と   

して展開されてきた。Baumol,W小Jい,EconomicTheoyandOperations Analysis,  

1965.ppい 550−551小(頓馬庸訳「経済分析とOR」)。  

位51Baumol,Op.Cit.,pp 563−567.  

但6)ノイマン=モルグソスチルソは,要凛(entity)〝,ぴ,紺からなる系び匿・おいて,   

〟>〃,および,いかなるαの値(0くαく1)に対しても演算α〟+(トα)ぴ=紺が与え    られる場合,系びの諸要素は以下の公理を満足するとしている○  

公理A 鋸二>ぴほぴの完全順序である。すなわち  

(A,α)いかなる2つの要素劇,即に対しても,次の3つの関係のうちのどれか   1つの関係が成立する。  

〟=が,〝>〝,〝<か  

(A,∂)〝>〃,ぴ>紺ならば,〝>抑である。  

公理β 順序と結合  

(β,α)鋸く:ぴならば,〝くα〝+・(1−α)ぴ  

(β,∂)〝>ぴならば,〟>α〝+(1−α)〃  

(β,ぐ)〝・く永くぴならば,α〟十(1−α)が■く紗を満足するαが存在する0  

(β,d)鋸>紺>ぴならば,α〟十(トα)〃>紗を満足するαが存在する○   

公理C 結合の計算  

(C,β)α〝十(1−α)ぴ=(1…α)ひ+・α加  

(C,∂)γ==αβならば,α(β〝十(ト・β)む)+(トα)ぴ=γα+(ト・r)が    公理Aは人間の選好の態度について,効用紅対して順序性と移行性を与え,公理(β,α)  

(β,∂)ほ独立の仮定,公理(β,C)(β,d)は効用紅対し連続性を与え,公理(C,α)   

は交換法則を,公理(C,∂)は条件確率の法則が適用されうることを示している0Von    Neumaz7n,Jい aZ7d O.Morgen$terr),Theory of Games and EconomicBehavior,  

1964,ppい26−27 

(12)

寛41巻 第5・6号  

ー62−  

432  

ると魂ることができるとき,主観確率を客観確率に換算しで求めることができ   るとするものである。つまり,ある個人が確率論的なものの考え方ないし,期   待効用の極大化を求めて行動していると想定できる場合の主観確率を求める方   港である。彼はその例証として,ノイマン忘モルグyステリレンの効用の仮定に  ついての単純な拡張によって,ペイズの基準以外のすべての基準が除外される  

(97)  

ことを挙げている。ポーモルほこれ紅ついて,つぎのような説明を与えてし、る。  

まずひとの無矛眉の選好が仮定され,次の公理が満足されるときにほペイズの   決定ルールを採用するとして,次の如き公理を列挙する。公理1,プレーヤー  艦.よる戦署の順位二づけはノイマン=モルグンスチルンの効用を満足する。ゐ   理2,ある戦署の効用ほその戦署に.ともなう利得と確率のみに従属する。公理  

3,決定者ほ.彼の利得または期待利得が同等であるような任意の2戦客に対し   て無差別である。公理1に.よって,自然に.対するゲームのもつ不可欠な特性が   示される0すなわち,自然が計算をする敵対者でほなく,決定者は自分の戦署   上の意図をかくしてもなんの得軋もならないことが示される。したがって公理  

2の,決定事項を競争相手にかくしてもその効用は影響をうけないことが導か   れる。以上の3つの公理から,ポーモル畔これらを満足する意思決定者ほ次の   理由紅よってベイズ規準を用いることを説明するのである。ポーモルのこの命  

(2り  

題を理解するために.ほ.,図形紅よるのが最も便利である。第1図において,2   つの戦容R,Sを考え.,それらはそれぞれW,Ⅴ軸上の点であられされるとす  

C   D   

0 Ⅵゴ(1・−q)s M芦p・S  

S v  

図1  

即 Baumol,Op.Citl.,pp.563−567.  

(13)

不確実性構造と経営の機能的階層関係(1)  

−63・−   

433  

るbただし,戦署Rに関しては利得lち=0およびW月=長さ0月=γ(rは任意   の数)とする。これらほ.戦署Sに.ついても同様であるとすれほ,利得行列ほ図   

2の如くなる。属,∫を結ぶ値線上の仕意の戦各点rほ,その■線分を1・一首お    よびヴの割合で分割する。こ.の場合,点γを純粋戦署rと考えること,ある   いは忍を確率ヴで,ぶを確率(1−¢)でとる混合戦署と考えることもできる○  

ただし,混合戦略朋■の期待利得y=¢㌢およぴⅣ=(1−ダ)ぶはrの利得と同じ   である。また,忍と無差別に.遺んだ点を∫とすると,仮設紅よって−〝(∫)=  

録(属),ノイマン=モルグンスチルンの公式によって混合戦客〟ほ  

〟(〝)=〃〝(点)+(1−¢)〝(∫)  

=曾〝(∫)」−(ト曾)〝(∫)  

=(¢十1一々)α(ぶ)  

=〝(ぶ)  

=〝(忍)   (〟ほ.utilityの客)  

と表わすことができる。かくて混合戦容〟は∫および忍の双方と無差別で   ある。しかし,公理3に.よって,純粋戦客1「は同じ期待利得を有するから〟  

と無差別である。したがって,直線尺ぶ上の任意の純粋戦各rほ戦各点およ   ぴ∫の双方と無差別でなければならない。次に双方の利得がともにゼロであ   る純粋戦客0を考える。この戦客は当然図の原点で示される。そこで点を任   意の固定した確率♪で,0を確率(1一夕)でとるものとしてまた,混合戦暑脇   はぶを確率♪で,Cを確率(1−♪)でとるものとして定義されるような脇お   よび肱を作れば  

〝(脇)=β〟(点)+(1−β)〝〈0)  

および 緑(朗■s)=♪〝(ぶ)十(1一夕)〟(0)  

・を得る。5Iと忍は無差別であるように選ばれたものであるから,〝(点)=裾(∫)  

で,これより〟(脇)=〟(〃s)となる。すなわち,2直線の勾配ほ.等しく,患   線の無差別曲線仏独は点∫に平行である。任意の平行番線よりなる無差別   曲線はペイズゐ基準を満足する。ところで,ベイズ基準は未知なるものに・つい   ての等確率性の基準とも呼ばれるように,確率分布が明らかでないとき将来の   

(14)

−−64・−  

寛41巻 葦5・6号   434  

各状態の生起確率を等しいと考えて,各行動案の期待値を求め,そ・の最大の期   待値をもたらす行動案を選択しようとするものである。ポーモルほ主観確率   を,ベイズ基準に拠ることに.よって各事象の生起確率が同様に確からしいとい  

う標準確率過程の定義におきかえて,求める方法を例証したのである。ところ   が,主観確率が客観確率の公理的確率論の前提条件を満足するときは,その値   を求めるこ.とができるとほ云っても,それほ主観確率の対象となっている事象   の1っ1つが客観確率事象の確率に対応させて,全体集合と部分集合との関係   がはじめから明確でなければならない。ナ・イトの云う不確実性はその点が明確  

でないから不確実性と云うのであって,この限りでほポーモルの公理化に.よる   主観確率の求め方もそれほど有効であるとほ思えない。 

ルの論述妃よってわれわれが学ぶぺき点ほ.,主観確率を求めるにほ当然のこと   ながらそこ.に・は何らか客観的確率にイ以た形に連繋を求めて考察せざるを得ず,  

しかもなお理論的に充分な方法ほ.確立されていないということである。  

われわれは以上において−,不確実性の問題をナ・イトの経済理論からポーモル   の決定理論への橋わたしの問題としてまた,すべてのORの数学的基礎として   考察さるぺきであることを明らかにしてきた。そ・こに.おいてほ,事象の繰返し   が牽く,各事象およびその全体集合が明確紅規定されるような問題すなわち,  

ナイトの危険概念を内包するところの経営事象に対してほ.客観確率を適用し   て,いわゆる在庫管理・待ち行列・PERT・品質管理などのOR技術とし   て発展せしめられた。これに・対し,繰返しが少なく,各事象およびその全体集   合が明確匿規定されるとは考えられないような問題すなわち,ナイトの真の不   確実性を対象とするような経営事象紅対しては,少なくとも現在の段階では全  

き意味での合目的的な手段は開発されてはいない。そこで,われわれの注目せざ   るを得ないのは直観的に確率分布の塾を与えてシミ∴コ.レーション・モデルに.よ   っでその塾を修正していく方法である。本来,不確実性の問題は.衷をかえせば   情報の不完全さの問題であり,情報理論と密接な関係にあるものであるが,か   かる不完全情報の前提のもとに行動科学的に・これらの問題を追求したものが,   

(15)

不確実性構造と経営の機能的階層関係(1)   一一6苔・血 

435  

(98)  

サイモンのいわゆるヒュ.リステンク・プログラム設定の問題であった。こ.れら   の問題に.ほ統計資料の整備や経営スタッフまたトップ・マネ汐メソトの意識の   問題が研究されねばならず,総じて定屋的な計算をおこない得る組織の確立が   必要であり,その前提として組織的観点に.立つ経営の構造分析が要求される。  

われわれほ章をあらためて,不確実性の問題を組織的観点から考察しなけれは   ならない。(未完)  

C28)行動科学的heuristic program の設定の問題として現時点ではGeneralProb!em    SoIving Program・Quasi−AnalyticalMethodなど注目すべき・手法が考察さ叫て   

るが,これらの問題ほOR的に解決し得ないところのナイトの真の不確実性に対拠する    方法として,経営学的にはいわゆる「経営する機能」の中核的方法となるであろうと思    われる。この場合,ORはいわゆる「管理機能」の中心的方法として,両者は排反的紅    ではなく,経営の階層的機能関係に沿うて相互並立的に整序されると思う。これらの問    題紅ついてほ,Simon,The New Scienceof Management Decision,1960.Ansoff,   

H.Il.,Corporate StIategy,1965… などを参照。   

参照

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