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租税と予算︑繁栄のための計画  

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(1)

粗税や政府支出について考えるとき普通の人が最初に尋ねる  

問題は﹁それは私にどのような意味があるのか﹂ということで  

ある︒われわれが個人として政府財政忙ついて考える紅当っ  

て︑われわれが支払う租税︑われわれが享受する政府用役︑わ  

れわれが所有する国債を通して︑それがわれわれに直接的紅影  

響を与えていると考えることは当然である︒しかし政府財政の  

奥の重要さほそこ紅あるのでほない︒すべての人々が支払う租  

税がわれわれすべてのものに与える影響︑および国債総額︑政  

府支出総額がわれわれに与える拶響が重要なのである︒   

政府の財政政策は︑われわれすべてに利害関係をもってい  

る︒それはつぎの問題に答えるのに役立つ仕方においてであ  

る︒   

着実な雇用と所得についての見込みはどうか︒   

インフレがわれわれの所得および貯蕗の購買力を低下させる  

危険はどうか︒   

われわれの生涯のうちに︑父粒や祖父母が経験したような生  

活水準の絶えまない向上を享受する機会があるであろうか︒わ  

租税と予静 繁栄のための計画  

紹 介  

租税と予算︑繁栄のための計画  

今  川  

れわれおよび子供達が自由社会の仕合せを引き続き享受する機  会があるであろうか︒   

これは非常に重要な問題である︒これほ財政政策や政府の行  

動を判断する基本的な基準である︒ここでは政府財政と経済発  

展︑自由︑安定との関係を説明し︑この目的に役立つプログラ  

ム紅ついて述べる︒この政策ほ二つの関連した部分からなって  

いる︒   

㈱ 予算政策において︑政府支出と政村収入との過当な関係  

を定める︒㈹ 租税政策において︑目的鱒最も適当な方法で必  

要な収入を徴収するようにする︒経済の安定発展のためにほ︑  

予算と租税とにおいて健全な政策がとられなければならないだ  

けではない︒他の領域璽貨幣および信用︑国債管理︑労働と  

経営の関係を含む ⁝ においても縫全な公共政策がとられなけ  

ればならない︒これらは特別にとり上げて研究すべき王題であ  

る︒ここではこの基本的経済問題の解決のために行なった経済  

発展委員会の勧告について紹介する︒それは政府および民間の  

貝した行動のプログラムの山部として述べられている︒  

財政政策︑高い雇用と物価の安定  

雇用︑物価の水準ほ財貨用役に対する総需要転よって大体に  

おいて決定される︒総論婆というのは個人︑事業︑政府およ  

び外国の購買者が買いたいと思い︑また買うことが出来  

るものを合計した額である︒意欲と能刀のどららも欠けてはな  

︵六二七︶ 六七   

(2)

第三十三巻 第五号  

らない︒いかに巨額の貨幣︑信用︑所得があっても︑もし個人  

や串某が消費や投鹿転それを使う意欲がなけれほ適当な総需要  

を確保するのに十分でないであろう㌔また買う能力がなければ   ならない︒しかし能力があればそれだけで需要となるのでほな  

い︒    総需要が利用可能な材料︑労働︑設備でもって生産出来る生   産高を超えるとき紅ほ︑戦争中のように物価は上昇し︑周知の  

インフレの幣害が起る︒総需要が不十分で︑労働力を完全雇用  

して生産出来る生産高を買うに足らないときにほ︑三〇年代の  

ように不況︑失業︑物価の下落が起る︒憲同い雇用と物価の安   定に不可欠の条件は︑適当な水準において総需虫を過度に安定   させることである︒それは生産能力が増大してゆくにつれて総  

需要の水準が絶えず上昇してゆくことを意味する︒虹    総謡要の水準は︑数百万の消費し投資しょぅとする個々の決  

定の合成によってできている︒それは消碧者︑事業︑政府が決   める︒政府ほこの決定を統制できるものではない︒また政府が  

このような統制をしようと試みるシステムほ自由を好む人々に   は耐えられないであろう︒しかし総謡要を左右しているこれら  

の決定に対して︑敵肘ほ租税︑支出︑借入れ︑すなわちその朗  

政政策によって影響しないわけ虹ほいかない︒   

個人や事業が消費︑投資を決定するに当って考慮する要因  

は︑彼らのつかうことができる所得の額である︒租税を徴集す   ることによって︑政府ほ個人︑寧英がつかうことができる所得  

︵六二八︶ 六八  

から差引く︒他方︑政府支出ほ民間で支出軋つかうことができ   る所得に追加となる︒民間所得の控除︑追加の額︑その時期に   ついての政策によって︑政府ほ数百万の個々の決定に影響を与   えることをさけることはできない︒    総需要を構成しているものの中には︑現在つかうことができ   る所得軋もとづいて決められるのでほなく︑将来に見込まれる   所得にもとづいて決められるものも沢山ある︒このことほ投資   決意︑新製品の生産開鹿︑新工場の建設︑新鶴械の購入につい   ての容共の決怨近ついては特にそうである︒その場合間惑症な   るのは︑投資がそれにともなう危険と費用を償うのに十分な報   酬を投資者にもたらすかどうかということである︒この決定に   ついてほ国の租税政策は重要な関係をもっている︒特に利潤に   課せられる租税の率やその性質は重要な意味をもつている︒    国供の額︑その形態︑その所有者が誰かということもまた個   人と事業の支出に影響を与える畢要な要素である︒たとえば仮   りに政府が貯蓄証券を個人聖冗り︑それからえられる収入を銀   行の保有している国債の倍速にあてるなら︑個人の所有する現   金ほ少くなり︑彼らの買入れも少くなるであろう︒    これらいろいろの方法で民間講要軋影響を与えることの披か   に︑政府ほ総需要のもう一つの大きな部分を直接に統制してい   る︒それほ財貨用役に対する政府自身の需要である︒国の政府   は労働の雇用者︑品物望而要老のぅち︑塵∴のものとしてほ特   別に大きいものである︒政府支出は減少すべきであろうが︑し   

(3)

かし絵需要に対して大きな影響を与えるはど巨額のものである  

ことは今後も変りないであろう︒   

財政政策は高い雇用と物価の安定を維持する問題のすべてに  

効く万能薬でほない︒総需要の完全な安定は︑仮りにそれが達  

成されたとしても︑雇用あるいは一般物価水準の変動を除去し  

てしまうことはできないであろう︒また財政上の行動だけでは  

総需要を完全に安定することはできない︒何百力もの個々別々  

の独立の決定が行なわれている︒自由経済においてほいつでも  

こうである︒だから財政政策にょって総諸費の変動を完全に平  

らにすることほできない︒安定した総需要という完全な調和を  

生むようた︑財政といぅ楽器のキイを精確に操作する全能の専  

門家を頭に描いてみることほ非常に危険な空想である︒しかし  

もしわれわれが財政が事実上︑どのよう紅動いているかについ  

て知っているだけでなく︑それが雇用や物価に与える衝撃を正  

しく認識してそれを操作するなら︑高い水準の経済情動を維持  

するのにこれまでよりずっとよく貢献できるであろう︒そして  

これを他の分野︑貨幣︑銀行︑外国貿易などの分野における賢  

明な行動でもって補うなら︑高い水準の雇用を維持できるもの  

と期待してよいであろう︒  

財政政策と経済発展  

過去仙世紀紅わたっで︑合衆国において∵時間の労働で生産  

された実質生産鼠ほ世代ごとに倍になっている︒生産性の上昇  

租税と予算︑繁栄のための計画   が速かったことが国力の主要な源泉であった︒それは国民の物  質的福祉を引き続いて改善しただけにとどまらなかった︒ある  グループの人々ほ他のグループの人々と一緒に︑それを犠牲に  することなし紅一層よくなる見込をもつことができた︒経済の  進歩はグループの間に起るかもしれない不和を減らすのに重要  な役割を果した︒しかもアメリカが二度にわたって軍国主義と  の故に勝つことができたのほ︑その接塵性がすぐれていたたま  ものである︒   

経済の進歩にとって不可欠なものほつぎの二点である︒﹁㈲  

人々がその努力︑創意︑資本を生産の増加︑生産効率の上昇︑  

新製品の生産に投入しょうとする意欲︒およぴ ㈲ 経済発展  

のフロンティヤに進んでいこうとする資本め供給︒﹄合衆国に  

おいてはこれら二つの要素は豊富であった︒その制度紅おいて  

は努力あるいは資金を経済発展にむける個人にほ巨額の報酬を  

与えるようになっている︒この巨額の報酬をえることができる  

機会が︑限りない冒険の背後濫ある推進力であった︒矢数した  

人も多い︒しかし多数の人が大なり小なり成功した︒そうして  

経済発展の曲線を上に押上げたのである︒成功した企業からの  

利潤が大きな資金の流れとなって︑冒険的な︑勢力的な︑創意  

紅富むしかも一層の発展のためにその資本を投ずる危険をおか  

す人々の手に渡ったのである︒強調したい点は︑彼らが巨額の  

貯蓄の供給をもっていたためだけでなく︑その貯裔が危険をお  

かして経済的企業にひきつけられていったということである︒  

︵六二九︶ 六九   

(4)

第三十三巻 筍五号   

今日アメリカ経済ほ新しい情況に直面している︒戦争中ある  

いはその余波以外でほ︑現在直面しているような高い租税に我  

慢したことほなかった︒これはつぎのことな意味している︒個  

々の事業ぬとって刺激になり︑民間投資の源泉となる所得から  

租税として耽りあげている割合ほこれまでよりもずっと大き  

い︒近い将来に戦前と同じくらい低い租税水準にもどることほ  

望めない︒しかし政府支出を節約して租税を引き下げることに  

長者をつくさなければならない︒なお負担しなければならない  

ものは︑発展をそこなうことが扱も少いように配分しなければ  

ならない︒  

財政政策と自由   

刑政政策ほ︑それが雇用︑物価︑発展に効果を与えるので︑  

自由の保持に徳接関係がある︒危険なのはつぎの点である︒も  

し自由社会にふさわしい方法で安定と発展の目的を達成しえな  

いなら︑人々ほ自由にとって有害な統制の方直向きをかえるで  

あろう︒危ないのは合衆国の自由だけではない︒仮りに合衆国  

がその政策に矢数すれば︑世界の国は︑自由社会には準本的経  

済問題を解決する能力があるかどうかに凝間をもつであろう︒   

財政政策が自由社会の存否に影響を与える方法には別のもの  

がある︒自由社会の経済ほ競争的︑地方分樅的なものでなけれ  

はならない︒このような経済においては︑他人の福利に彩響を  

与えるような決定 −価格︑賃金︑生産高に関する決定1を  

する個々の力は︑市場広行なわれている競争︑現実的あるいほ   ︵六三〇︶ 七〇  

潜在的競争︑にょって制限されている︒   

競争的経済にとって不可欠なことは﹁新しい小さな独立の事  

業が受胎し︑出生し︑そして大きくなり繁栄するような環境で  

ある︒⁝⁚もし新しい事業が出現する機会が破壊されるか︑ある  

いほ消失すると︑自由企業の制度ほやせおとろえるであろう︒﹂   

したがって独立の事業が新しく出ることをさまたげ︑すでに  

確立されている事業の成長を阻止するような租税制度は︑自由  

経済および自由社会に対する脅威となる︒現在の租税制度はそ  

うなっている︒それほ事兼軋おける新しいもの︑独立︑成長︑  

競争的活力に関係のある特色にとって非常な負担になるであろ  

う︒それほ︑特忙危険のある︑所得が大幅に変動する︑あるい  

ほ自己金融に鳴く依存している事業が成功することをさまたげ  

ている︒すべての事業檻公正な租税制度を作ることによって︑  

われわれは自由社会の活力に大きな貢献をすることができる︒  

予 算 政 策   

うえで略述した基本的目的を達成するために︑予算政策すな  

わち政府の総支出と総収入に関する政策のみたさねばならない  

要件について述べよう︒  

予藩政策の原理  

予静政策の展開においてはつぎの四つの点が特別竜要である︒   

ね︑ヨ凶の財政ほ総需要の変動を緩和し︑そうして雇用︑物価  

の安定強化紅役立たなければならない︒し 総需要が総供給を超   

(5)

過してインフレ的状態が支配的なら︑国の予静は総需要を抑制  

する効果をもたなければならない︒総需要が低く︑失業が高  

く︑.価格が下落しているとき紅ほ︑租税︑政府支出は総需要を  

刺激する効果をもつものでなければならない︒    ㈲﹁予算政策ほ不必要な政府支出を抑制し︑政府の効率を高  

めるの紅役立つものでなければならない︒﹄政府払おいて節約   することが重要なことについては誰でも同意する︒しかし節約  

の達成のためにほ︑節約がよいと考える確信が︑他の圧力︑あ   る特定の支出を支持するに当っていつもみられる圧力︑に対抗  

してむけられ有効でなければならない︒    予界政策が節約にとって効果のある力となるのは︑合法的な  

特殊な利益を統御し︑減税紅より劇般的利益に合うよう虹する   ことができるときである︒政府の機能を拡張しようとする提案  

はすべて︑租税でその支払をするつもりが社会紅あるというテ  

ストに合格しなければならない︒   

M﹁予静政策は適度堅向い雇用と生魔のもとで︑国債を軽減  

する用意のあるものでなければならない︒し現在合衆国でほ︑  

国債に対する利子の負担が国税負担額の約一割に達している︒   たしかにわれわれはこれらの租税が蓋いと考えることはできな  

い︑といぅのはその租税収入は利子としてわれわれ自身紀文払  

われているのであるから︒しかし︑冒険にのり出し︑努力を⁝試み  

ようとする刺激に対してかけた商い租税のもつ阻止的効果は︑  

国債の利子によって相殺されてしまうことはない︒国債の利子  

租税と予算︑繁栄のための計画  

ほ個人の努力︑事業に報酬を与えたり︑それを盛んにすること  にとって重要なものでほない︒   

㈹︻予算政策を立てるに当っては︑財政上の決定をしたり︑  

その効果をえるのに大低の場合長い時間がかかること︑および  

経済変動を予測するわれわれの現在の能力が非常に貧弱である  

ことを考慮に入れてしなければならない︒h経済に迅速に反応  

すること︑個々の決定をまって既知の経済変動に′調整すること︑  

将来の変動を正確に予測することに扱っでいるような財政政策  

ほすべて失敗に終るであろう︒   

個々の政策措置の中には︑非常にすみやかに始めることがで  

き︑もし必要なら迅速に反対の向きにすることができるので︑  

比較的に短期の安全な予想ぬしか根っていないものもある︒し  

かし則政政策の構成要素の大部分を成功裏に操作するために  

ほ︑経済変動の予想払おく信頼を最小限にしておくことが必要  

である︒  

予算とは何か   

予弊政策紅ついて結論を下すまえに︑予算の意味をはっきり  

させておく必要がある︒   

公式に編成され現在用いられている国の予静には二つある︒  

それは行政予穿と統合現金予界である︒行政予欝は予算制度が  

最初つくられたときの役目を果している︒議会や大統領は国の  

政府を構成している多くの機関が行う支出や運営を管理するこ  

︵六三一︶ 七一   

(6)

第三十三巻 欝五号  

とができる︒これをするに当って︑つぎの資金についてくわし  

く述べている︒各機関︑各目的に充当される資金︑これらの項  

目として支出されることから生じた義務︑および各基金から支  

出された資金額︑他の勘定に支払われたり振替えられた金額も  

含めてある︒この行政上の機能のうえに︑この予算は︑その補  

足的な陳述と劇緒にして︑その他の目的にも役立っている︒こ  

れほ国の種々の機関︑公社︑信託勘定の公衆に対する︑あるい  

ほ勘定相互間の資金関係の勘定記録を示している︒   

第二の予界︑統合現金予鈴は全く別の目的のために組まれて  

いる︒それは次のものを表わしている︒経済会体に影響な与え  

るような政府資金の収支を示している︒財貨用役な吸収したり  

個人所得への追加になる支出︑個人所得から差引く収入︑人々  

の貨幣や政府債の保有高の追加になったり減少になったりする  

赤字あるいほ剰余金︒   

総需要に移響を与える貨幣ほ︑公衆に支払われたりそれから  

徴収されたりする貨幣であって︑一つの政府勘短から他の勘定  

に振替られる貨幣はそうでない?だから統合現金予算では︑政  

府の部門間の取引きほすべて除かれている︒そして総需要にと  

って重要な取引は貨幣の収入支出をともなっているので︑この  

予算は﹁現金﹂主義にもとづいているのである︒政府・・−これ  

には政府機関︑公社︑信託基金のすべてを含む−−・と公衆との  

問のすぺての現金取引が示されている︒人々に対する貨幣支払  

をともなわない取引︑人々からの貨幣収入をともなわない取引   ︵六三二︶ 七二  

はすべて除かれている︒   

﹃ここでの勧告ほ統合現金予算についてなされている︒﹄   

最近の大統領予算教書において︑統合現金予静に関する勘定  

書が補足的な情報として用いられ︑国の財政換作と経済との関  

係をはっきりさせるために用いられている︒この統合現金予鈴  

はまた大統領の経済報望書においても用いられており︑国の予  

界の経済的影響を述べるのに重要な役割を果している︒経済発  

展委員会の調査政策委員会はその政策の声明﹁インフレを克服  

するための財政政策﹂九四六・九月︶において︑桐政の衝撃  

紅関する数凡盟的な勧老女する紅当ってこの予鈴を用いた︒その  

他の事業や政府以外の団体でも︑この予算の経済紅与える衝撃  

に関心をもつものは︑統合現金予算によって示される点に注目  

することが多くなってきた︒ここで二︑三の例をのべて二つの  

予静のちがいをはっきりさせておこなう︒   

統合現金予算では政府間の取引をすべて除いているので︑そ  

れほたとえば︑一般政府勘定から社会保障制度の適用のために  

設けられた基金勘定への振替ほ支出として示されていない︒こ  

のような蚊引は︑種々の勘定相互間の状態を記録する行政予鈴  

においては重要である︒しかし︑この振沓の取引ほ今期重要な  

効果をもつ取引ではない︒   

また統合現金予算にあらわれるけれども︑行政予辞にほあら  

われない収支もある︒その著しい例は︑社会保険制度の収入支  

出である︒政府とこの基金勘定との問の︑現在の法律上経理上   

(7)

の関係ぎはっきり示す虹ほ︑これらの取引きを他の収入支出と  

別個に示すのがよい︒しかし︑民間の購買力︑総需要︑雇用︑  

物価に与える予算の拶響を測るためには︑これらの収入支出を  

含む予算をつくってみなければならない︒   

統合現金予算の﹁現金﹂の性格をはっきり示しているのほ︑  

満期除隊軍人国債の発行買上げの取扱についてであろう︒一九  

四九会計年度では︑行政予罫においては︑約二〇億ドルの支払  

は︑その年に流通しない︑現金化できない︑国債で支給され  

た︒その経済的効果ほ小さい︒事実︑この満期除隊兵にこうい  

う形で支払をするのは︑インフレを招くことをさけるた.めであ  

った︒統合現金予静においてはこの項目を支出として含んでほ  

いない︒一九四八会計年度には︑これらの国債のうち約一五億  

ドルが現金化され︑その大部分が消費に向けられたが︑行政予  

殊におい▲ては何の支出も記載されていない︒しかしこの年壁の  

統合現金予算はこの一五倍ドルの支払を含んでいる︒それは今  

や現実紀文出しうる所得として個人の手に入っているからであ  

る︒   

二つの予算の正味のちがいの大きさは年々変る︒山九四八会  

計年度においてほ︑統合現金予昇での剰余金は行政予界の剰余  

金よりほぼ六〇倍大きかった︒しかしこれ紅比べて︑公式の推  

定でほ一九四八会計年度における統合現金の剰余金は五五億で  

行政の剰余金は四七億であろう︒八億の差である︒ある場合紅  

は統合現金の剰余金の方が行政の剰余金より少いだろう︒二つ  

租税と予欝︑繁栄のための計画   の予算の差の多くは︑各種の取引が記録される時点と関係があ  る︒十分長い期間︑たとえば山○年紅わたって測ればこの差ほ  相殺される︒現在では︑この二つの予算のもっとも重要な永続  的な差は社会保障基金勘薙の取扱いによる︒仙○年の期間にわ  たって測れば統合現金の剰余金ははぽ社会保障勘定の剰余金だ  け行政の剰余金を確過するであろう︒もし保障制度が設けら  れ︑しかも適当な期間を経過する間にその収支が均衡するよう  つくられているなら︑統合現金予算の平均剰余金ほ行政予算の  平均剰余金とはば等しくなるであろう︒へ統合現金予算ほ不景気  の時期に提案されることのある﹁資本予算﹂とは関係はない︒  この予算ほ政府予算を二つに類別することを要求するものであ  る︒一つは公共建築ダムなど︑結果として﹁資本財﹂となるよ  うな支出を含む︒このレス一グムは統合現金予算とは反対方向紅  動いた︒後者ほ重要な経済的効果をもつ取引を統一的に表わそ  うとするものであり︑金銭上のあるいほ機能上の相違紅考慮を  払うものではない︒︶  

予算政策のlニつの型  

予鈴政策には三つの犯がある︒  

一︑均衡予静政策  これは政府収入をひきつづき支出に等  

しくしておくか︑あるいはそれを超えるようにしておこうとす  

る試みであり︑経済状態について考慮を払うものでほない︒   

二︑補整予静政策  これは税率と支出予定とを︑必要があ  

︵六三三︶ 七三   

(8)

欝三十三巻・筍五官  

るたびに︑しかも雇用あるいほ国民所得をたえず高い水準に保  

っておく紅必要な大きさに︑調整することを試みる政策であ  

る︒   

三︑安定予鈴政策  これは予昇政策のすぺての目的を達成  

するもっとも実際的な方法であるといわれている︒ここではこ  

れを中心にのべる︒その基本原理ほつぎの通りである︒予鈴を  

均衡させるように税率を定め︑しかも雇用や国民所得が高い水  

準にあると認められるときには剰余金を生むよう紅税率を定  

め︑その後は鼠の政策あるいは国民生活に大きな変化のない限  

りそのままにしておく︒  

均衡予算政策  

予算を年々均衡にしておく政策は実行できないし︑またこれ  

を実行しょぅと努めるとインフレ︑デフレをひどくする℃それ  

が崩れることは不可避なことであるから︑財政々策ほその日ぐ  

らしの方笛になる︒   

この政策のためには︑国民所得の減少が予想されるときには  

いつでも 

出の削減をしなけれぼならない︒国民所得が増加するという予  

想によって巨額の剰余金が見込まれるときには何時でも︑税率  

の引さげや支出引あげの政策が許されるだけでなく︑そうしな  

ければならない︒記録によると︑この政筒は繁栄の二〇年代に  

は租税の切りさげな意味し︑不況の三〇年代には租税の増大を   ︵六三田︶ 七四   

意味する︒   

この政策の意味していることほ明らかである︒   

回 税率と支出の政策ほ︑高い雇用と物価の安定に対して︑  

非常に都合の悪いときに︑また都合の悪い方向に変えられる︒  

所得が低く失業がひろがっているとき紅︑税率を引きあげ︑政  

府支出を削減しなければならない︒この政策によると︑好況時  

に租税の軽減や新しい支出が歓迎される︒   

㈲ 年々均衡を維持する予鈴政策は︑長期においては政府の  

節約を助長するものではない︒この政策によると好況時におい  

ては︑税率を引きあげることなしに︑税率を引きさげてさえ︑  

公共支出を増大することができる︒この政策によると︑不必要  

な支出がはじめられるとしても︑それに対してしっかりした圧  

力をかけることほできない︒そして不況時に支出政策を削るこ  

とを止めるために加えるその圧力が効果のないことは確かであ  

る︒   

回 好況時に潜在的な多額の剰余金を︑このプログラムによ  

ると浪費することになり︑不況時紅は均衡を維持しょうとして  

無駄な努力をする︒景気変動をしている経済においては︑この  

政策は国債を減らすことにはならないであろう︒   

付 この政策を遂行するためにほ︑事業活動の変動を正確  

に︑過去においてなされたこともなく︑︑また今も不可能なほど  

正確紅︑予想することが必要である︒   

匝 この政策にほ︑不規則なまた予知できない税率の変更が   

(9)

含まれている︒それは事弟︑個人を動揺させる効果をもってい  

る︒  

補整予算政策  

補整予弊政策の理論は簡単である︒雇用が高い水準より下に  

﹁ありそうだ﹂と判断されるときにほ何時でも︑その予想が起  

ることを防ぐため紅︑必要な大きさだけ租税を切下げ支出を増  

加しなければならない︒物価が適当な水準より上に﹁あがりそ  

うだ﹂と考えられるとき紅は何時でも︑税率を引きあげ支出を  

削らなければならない︒   

景気変動の予想の正確さに頗ることは︑均衡予鈴政策の場合  

よりこの補整予静政策の場合の方が大きいであろう︒もし予想  

が不正確であれば︑補整予算は男気変動をやわらげるのではな  

く︑むしろそれをひどくしやすい︒   

均衡予静政策のように補整予算政策ほ︑景気変動のある段階  

において︑税率を引き上げることなしに支出増加の封別に力を  

貸す︒しかしながら︑均衡予静政策は︑好況時紅新支出への戸  

口針開くが︑山方補整予鈴政策はこの戸口を不況時に開く︒現  

実のものであるか予想のものであるかほ問わない︒いずれの場  

合にも︑政府の節約に与える効果は同じようである︒支出の急  

激な増加の後にはそれを削減しようとする無駄な努力を払い︑  

一般に支出を過度直上方へおしあげる傾きがある︒   

補整予算政策が国債を減少する方向へ向って進むため虹ほ︑  

租税と予算︑繁栄のための計画   繁栄の期間に︑租税を引きあげ支出を削減すること柊よって創  り出される巨額の剰余金をあてにしなければならない︒しかし  支出を減らすことにほ抵抗があるし︑租税引き上げのときにも  抵抗がある︒経済の予想能力が現状のようであれば︑不男気が  そこまで釆ているということを信じさせるのに︑もっともらし  い事情を作り上げることはいつでもで㌢る︒このような予想を  すると︑避けたい不愉快な途ほどちらも避けることができる︒  というのほ補整予鈴政策のもと紅おいては︑不景気が予想され  れば税率を低くし支出な増さねばならないから︒この補整予算  政策においてほ国債の減少について現実的な望みは全くもてな  い︒   

この政策のもとでは︑均衡予算政策のときと同じように︑税  

率ほしばしば不安定な変化をする︒  

安定予算政策  

安定︑政府の節約︑国債の減少を促進し︑しかも泉気変動を  

不可能なはど正確に予想することを必要としない政策としてほ  

つぎのものが考えられる︒   

﹃予界が均衡をたもつように税率を決めるが︑雇用︑国民所  

得のきめられた高い水準払おいては国債を償還するための剰余  

金を生むように税率な定める︒これらの税率を定めると︑国の  

政策あるいは国民生活の状態に大きな変化が起らない限りその  

まま紅しておく︒﹄  

︵六三五︶ 七五   

(10)

第三十三巻 罪五骨   

税率はそれ自身ではいくらの税収が徴収されるかを決定しな  

い︒たとえば税率は酒一〇立の販売につきいくら︑法人所得一  

〇〇ドル紅つきいくら︑ある範囲の個人︵課税︶所得小00ド  

ル紅つきいくらということを示すに退きない︒この税率でいく  

らの租税が徴収できるかは︑販売された酒の鼠や法人所得︑個  

人所得の額によってきまる︒租税ベイスの重要な要素はすペて   \  

国民所得に密接に結びついているから︑租税体系正二定でも︑  

租税徴収額は国民所得が増大するにつれて多くなり︑それが減  

る紅つれて少なくなる︒   

ある種の政府支出はまた経済情勢につれて変る傾きがある︒  

失米保険金の支給ほその著しい事例である︒失業が増大すると  

きこの支給額もまた多くなる︒そして失業が少なくなるとき支  

給額は減る︒そのうえ︑ある支出−−公共事業など−1は︑許  

された全支出政策範囲内で︑経済状態の変化に調和するように  

促進されたりさしひかえられたりする︒   

高い雇用のところの国民所得において適度の剰余金を生むよ  

うに税率が定められているので︑その水準以上に国展所得があ  

がると巨額の剰余金ができる︒国民所得が低いときにほ剰余金  

は少なくなり︑ある点以下になると赤字ができる︒   

この政策をとるときには︑国民所得が標準とされる高い雇用  

の水準を上廻るときにできる剰余金は︑それを支出の増加に用  

いてはならない︒同じように税率をさげるときには︑それに対  

応して支払を削減しなければ︑この政策に反するであろう︒それ   ︵六三六︶ 七六  

は現実の国民所得のところで現実の剰余金がいくらであるかに  

関係なくそうである︵ただしその例外については下に述べる︶   

﹃安定予算の原理のもたらす直接の効果ほつぎの通りであ  

る︒国民所得が変動しても税率の変動はひきおこさない︒また   ある支出項目が自動的に反応するという例外があるが︑支出の  

変化もひき起さない︒﹂しかしながら税率あるいは支出を変え  

ることが適当な事情のときもある︒たとえば国際情勢がよくな  

って年々の防衛支出が大幅に減るなら税率をさげるのが適当で   あろう︒同じように新しい政策が採用され︑年々の支出の水準  

が大幅に引きあげられるなら︑税率を引きあげるLとが必要で  

あろう︒    税率と支出をお互に歩調を揃えて上げたり下げたりしなけれ  

はならないというこの一般原理に対しては︑三つの例外がある  

ことに注目しなければならない︒   

加 入口は増加し生産性は向上するから︑高い雇用の状態に  おける国民所得は次第ぬ増加する︒そこで標準の高い雇用状態  

紅おける国民所得において一定の税率体系から得られる租税収   入は徐々に著実に増加する︒租税収入のこの漸次の増加は︑税  

率を引きあげることなしに︑人口増加や国民所得の成長に伴っ  

て起か政府支出の正常な漸次のいくぶんかの増加を許すであろ   う︒そのうえ︑経済が成長して高い所得水準に達するにつれ  

て︑高い雇用と物価の安定とに両立する国債減少額もまた増加  

する︒もしそうなら︑この租税体系から得られる租税収入の増   

(11)

加は︑この日的のためにとっておくべきであろう︒租税ペイス  

が長期的に成長することによって可能となる税率の再調整.ほ︑  

どれも適当な期間たとえば五年の期間をおいてなし︑年々税率  

をかえることによって起る不安な効果を避けなければならな  

︒   惚 時として緊急な必要が起り︑巨額なものでほあるが︑一  

時的とわかっている支出をする必要が起ることがある︒そのよ  

うな支出な︑その年の収入でまかなうために︑税率を大巾に引   一  

きあげたり︑またこの支出が止まったときに税率を引きさげる  

ことほ好ましくないであろう︒したがっていくぶん長い期間に  

わたってこの支出に見合う計画を立てることが適当であろう︒  

この計画ほ税率の引きあげが少なく︑それが長い期間にわたっ  

て行なわれるという形をとるであろう︒もしこの支出が借入の  

形でなされるなら︑その返済のための資金を出㌻ところが究魅  

においてその支出をみたす資金源となるであろう︒その支出を  

究極においてまかなう計画がどんなものであろうと︑その支出  

の差し当ってのインフレ的効果は反インフレ的な借入によって  

相殺しなければならない︒海外復興援助計画のための支出はこ  

の例外になるかもしれない︒   

㈲ この勧告ほつぎの確信にもとづいて述べられている︒も  

しそれが他の領域での適当な括経と将にとられるなら︑経済∵  

変動の高い水準からのへだたりはわずかに留るであろう︒しか  

しわれわれが再びひどい経済危機︑ひどい不況あるいほ大きな  

租税と予算︑繁栄の.ための計画  

インフレに直面するかもしれないという可能性を無視すること   は無謀であろう︒もしこのような危機が現われるとき軋は︑特   別の行動をとらなければならないし︑またそうされるであろ  

う︒議会が緊急に税率を削減したり引きあげることが︵おそら  くある定められた臼に自動的に終了することをきめておいて︶  

用いることのできるものの中で最も効果的な最も危険の少ない   ものであろう︒  

安定予算改発はどのように行われるか   

ここ紅勧告した政策は常識と要心をしたうえでなけれは︑採  

用できないし実施もできない︒基本的には︑われわれほしなけ  

ればならない決意をなすに当って重要な原則を基本において強  

調した︒この焼則が首尾三園して行われ︑正当に解釈されなけ  

れぼ︑この政策はそれが生むはずの効果を始まないであろう︒   

どのような政策も︑それを行なう政楷の賃任者がそれを受け  

入れようとしないか︑あるいほ賓世辞だけいって︑その意図を  

だめにしようとするといった危険に直面する︒これほここに勧   告した政策について特別にその危険があるのでほない︒ある政  

策が成功するための第一の要点ほ︑まずそれを実行する意志が  

あることである︒しかしこの原理には正当な帰依がえられない  

と信ずるのほ︑不適当な冷笑であり︑経験によってもそれは示  

されていない︒    安定予鈴政策ほ他の政策のどれよりも且して採られるよう  

︵六三七︶ 七七   

(12)

第三十三巻 第五号  

である︒それはその方が容易であるからという簡単な理由によ  

る︒それは経済変動を不可能なはど正確紅予想することや︑不  

可能なはど迅速な行動をとることを要求するものでほない︒そ  

れは失業や所得の減少に直面するとき︑租税を我慢できないは  

ど多くしたり︑またできないはど高く増加しようとするもので  

はない︒  

一九四六年の議会改組法の制定は︑ここに勧告したような政  

策を政府が遂行する決意の進展紅確信をいだかせる基礎を提供  

している︒いま政策の観点からみて︑この法律の最も重要な特  

徴は︑議会が相互に関係のない一連の財政行為をするのとは別  

の財政政策をもっていなければならないことを認めている点で  

ある︒この法律および一九四六年の雇用法によってはじめて︑  

議会予算を定式化し︑それを実施することの当否に議会がその  

機構として接近していったのである︒この機構ほ強化し改革し  

なければならない︒特に︑行政予静を採用し歳入および税法虹  

おいてそれに従うことについての責任ほおも妃多数党にある︒  

しかし少くとも新しい議会の機構の方への進展の第一歩がふみ  

出されたのであり︑統合された議会財政政策を可能妃すること  

ができるよう紅なっている︒   

現在では︑大統領は現在承諾されている支出と税法とのもと  

紅おける収入支出の予算案と︑見込のもとでの推定額を毎年議  

会に提出している︒両院の収入支出の四つの委員会は︑一緒に  

行動して︑議会の予鈴を準備する︒この要員会は収入支出双方   へ六三八︶ 七八  

を含む予算の勧告案を作り︑議決を求めるために両院に提出す  

る︒これが可決されると︑この予算が支出と課税に関する議会  

の活動の指針となる︒   

財政政策を行うために必要なこの手続きの改革を別にする  

と︑安定予算政策は現在慣行のもとは三つの点でちがう︒   

山 大統領および議会匿おいで全収入と全支出について決定  

をするときにほ︑統合現金予算を用いるぺきであって行政予静  

を用いるぺきでない︒   

㈲ 現行のあるいほ勧告される租税収入の見積りほ︑高い雇  

用水準のところの国民所得にもとづくべきであって︑予想のあ  

るいは他に任意鱒選ばれた国民所得にもとづくべきでほない︒   

矧この勧告案ほ全収入と全支出との関係を決めるに当っ  

て︑大統領および議会の従うぺき標準を示している︒その標準  

というのほ統合現金予静が定められた高い雇用水準のところに  

おける国民所得からは適度の剰余金を生むようなものである︒  

現在のところ一般に受け入れる︑あるいほ言良して採用される  

標準といぅものほないようである︒  

安定予算政策と経済安定  

租税徴収額および政府支出額が国民所得の変動にともなって  

自動的に変動することがここに勧告した政策の基本的性格であ  

る︒もし財政政策が経済安定の助けとなるべきであるなら︑ま  

さにこの種の変動が必要とされるものである︒雇用︑生産︑物   

(13)

価が上昇するとき国民所得は増大する︒国民所得が増大するに  

つれて租税徴収額も増える︒それは公衆のつかうことができる  

所得からますます多くのヰのをとりあげることによってであ  

る︒それと同時に︑失業保険のような支出ほ轡Q︒この過程は需  

要の増大とインフレの圧力を抑制する︒同じように租税収入の  

自動的減少ほ経済の下降を阻止する鋤きをする︒生産や所得が  

減少するとき︑租税収入もまた減少する︒税引き後の所得の減  

少は︑それを引く以前の所得の減少より少ない︒これは生産と  

雇用な維持する助けとなる︒安定独化の効果は失業保険その他  

の支出の増加によって強められるであろう︒   

いいかえると︑税率が安定しているとき租税収入と支出の変  

動は︑税引き後に手に残る所得の変化をやわらげ︑それによっ  

て需安と生産の変化を少くする︒これは新しいことでほない︒  

しかしその重要性ほつぎの理由のために戦前から非常に大きく  

なっている︒   

Ⅲ 節約紅熱心に努めているけれども︑国の租税は︑国民所  

得との関係においては︑戦前よりもここしばらくの間はずっと  

多いであろう︒   

惚 累進所得税に観ることが多くなっていることは︑国民所  

得の変動にともなって租税徴収額の変化が比較的に大きくなっ  

ていることを意味する︒たとえば賃金労働者が非常勤になると  

き紅も︑物品税のかかるタバコや日用品の消費はゼロにならな  

いであろう︒それは所得の減少に比例して減ることもなぃであ  

粗税と予算︑繁栄のための計画   ろう︒しかし彼の所得税はゼロになり︑彼の所得の低下より大  幅に減少するであろう︒   

矧 所得税をその源泉で徴収する方法ほ︑個人所得の下請と  

そ切結果として起る彼の所得税支払額の減少との間の時間を非  

常に短かくした︒はとんどの納税者にとっては所得の変化と租  

税の変化とほ同時に起る︒   

㈲ 失米保険ほ新しいものであり︑最近になってはじめて安  

定強化の力を発揮しだした︒﹂現行の法梓のもとでは︑失業保険  

金は失共著が百万増えるについて一年当り約百七十五億ドル増  

える︒そして﹂の額は給付期間の延長や保険金の増額という改  

良がなされればもっと多くなる︒   

これらの進展はわれわれに一つの道具を与えている︒それ  

は︑もしその操作を許されるなら︑経済安定のために一つの新  

しい強力な力となる︒   

租税収入と支出の自動矯正的反応が非常にすぐれている点は  

つぜの通りである︒﹁それが安定強化の効果を発揮するに当っ  

て︑経済変動を不可能なはど正確に予想すること︑あるいほ財  

政上の決定やその行動を起すことを不可能なほど迅速にするこ  

と常ほ依存していない︒h   

公共事米と資源保存 公共建築や資源保存のための支出の  

時機を変えること軋よって経済を安定することは︑全体の問題  

に比べると比較的小さなものであるということが今日仙般に認  

めちれている︒しかしその限界が認められておれば公共事集や  

︵大王九︶ 七九   

(14)

第三十三巷 第五号  

噴瀕保存計画の策定ほ大きな貢献をなすことができる︒もし政  

府あるいは公私の団体が安定した見透しをもって︑金運設活動  

が低調なときにその建設を集中すれほ︑貨幣と資源の双方が節  

約されるであろう︒それと同時乾これは建設産米の安産をもた  

らし間接的には経済全体の安定を助長する︒   

このような政策の成否は前もっ蔓なされた準備の艮否によっ  

てきまる︒できるだけ資金上︑技術上および行政上のとりきめ  

を完了しておいて︑必要に際して速やかに開始できるように種  

々の目論見を準備しておかなければならない︒有用な行動の範  

囲は︑国の政策および地方自治体の計画を調整することによっ  

て拡張されるであろう︒   

この種の国の政策にほ明らかに二つの危険がある︒第〟に︑  

その原理を長期の建設期間を要する計画砿適用しょうと試みる  

と︑他の建設活動が活発なときに国の建設が実際その頂点に達  

しているかもしれない︒第二に︑点気変動に粛抗するこの政策  

は︑国の政将にとって不相応な性質︑地域︑規模の継続的政策  

を実施するための口実につかうことができる︒しかしそれを避  

けるためには︑政府および議会の双方が絶えず注意する必要が  

ある︒  

安定予算政策と政府の節約  

予算のどのような規則も政府の節約と効率における輿の利益  

に代わることができるものではない︒しかしもし節約すること   ︵六四〇︶ 八〇  

が利益であるりであれは︑健全財政の原則を閻執することほ不  

必要な支出を阻止するのに助けとなる︒ここに勧薯した政策の   もとにおいてほ︑支出増加の掟粂のためには税率の引きあげを  

しなければならない︒︵ニ▼の原理に対する例外に注意が払われて  

いる︒㈲ 人口増大や生産性の向上とともに税収が伸びれぼそ   ︶  

︶. の限度について︑匝 巨額の劇時的支出に対して︑また 拉  

建設活動が停滞しているとき虹公共事巣や資源保護の実施を推  

進するう賢いて︒︶特定の事幾の社会的コストは税率の上昇  

という形においてはっきり目立つようになるであろう︒決定が  

なされるとき︑これらのコそ卜な支出による社会的利益と適当  

軋釣り合いをとるように持ってくることが可能であろう︒    安定予算政策のもとでは︑支出の税率との緊密な関連が景気  

変動のあらゆる段階において保たれる︒高い国民所得と特別の  

剰余金は︑追加的支出を税率の増加なしに想定してよいという   ことを意味するのではない︒また失業が存在するあるいは予想  

されるという事実ほ︑国の支出を新しく追加し㌧しかも税率を  

引きあげなくてもよいということを正当化するものでもない︒  

極端な場合ほこの例外であろう︒   

節約への最も確実な道は︑不必要な支出政策をほじめること  

を阻止することである︒.讐景気循確りどのような段階虹おいて  

であろうと納税者に苦囁でないように見えるという理由だけに  

よって︑新しく政府支出を招いたり許したりするような政策  

は︑結局において︑政府の節約になることを望むことではな   

(15)

い︒本当に恐ろしいことが起るのほ︑繁栄のときには均衡予鈴  

の煉理に固執し︑不況のときには補整的支出鱒信粗を置くとい  

うように動揺することである︒これほ好況にも不況にもますま  

す高い政府支出へと限りない上昇をつづけることを意味する︒﹄  

安定予算政策と国債の償還  

安定予算政策に固執することは︑過当な期間にわたってみる  

とき︑実際に国債を償還することになるであろうか︒この間題  

紅対する谷は二つの要因によってきまる︒山つは所得の標準の  

水準である︒その水準のところで予鈴ほ剰余金を生ぇ出すよ︑う  

に定められている︒他は現実に支配的な所得の水準である︒も  

し現実の所得水準が平均して︑租税徴収額が政府支出に等しい  

水準を上廻るなら︑国債ほ減少する︒もし国民所得が平均して  

この水準を下遡るなら国債は増加する︒予静政策だけでは︑す  

なわち税率と支出計画の決定だけでは国債の減少を確保するこ  

とはできない︒それほ国債を償還しようと思えばできるという  

条件を確立するにとどまる︒   

税率を十分高く定めておき︑国民所得が非常に低い水準のと  

ころにあっても剰余金を生み出すようにしようと思えばそうす  

ることもできる︒もしこうしたら︑広範囲にわたって失業が広  

がっていても国債を償還できるであろう︒しかしこの場合には  

予算は三〇年代のように︑不景気の状態にある経済に抑圧的な  

力をおよぼし︑予鈴自体が失業や低水準の所得を助長するであ  

阻税と予算︑繁栄のための計画   ろう︒とのような政策について考えて見ることはできるけれど  も︑たしかにそれほ国債の問題に対する満足すべき解答ではな  い︒そして過去の経験が示すように︑このような政策ほ大患の  矢来が創り出す圧力のもとであっても︑なお生き残るとは思わ  れない︒   

ここに勧害した政策は︑高い雇用水準のところにおいて適度  

の剰余金な生え出す貯十分なはどの高さに税率を定め︑そして  

その高い雇用が維持されることを確保するためにあらゆる過当  

な方法をとることである︒このような政策にほ経済政策のあら  

ゆる血の相互依存が認められている︒   

租税の健全な構造はここに述べた政策のもとで国債を減少さ  

せるのに大きな貢献をするであろう︒同じような効果をもつ他  

の措置にほ金融︑国債管理の領域での活動︑蛙産性に対する態  

度についての労働や経営の政策︑建設的投資への貯蓄の流れを  

よくするためのとりきめ︑その他多くのものがある︒これらの  

項目は経済発展委員会において研究されている︒すでになされ  

た研究によると︑この政策をとると国債が減るような水準に雇  

用水準を維持することができるという確信がもてる︒   

¶当委員会はつぎのことを勧告する︒労働力の約九〇パーセ  

ントの雇用に対応する国民所得のところでほ約三〇億ドルの剰  

余金を生み出すはど︑十分に高く税率を定める︒労働力が現在  

の規模であれば︑失業が二五〇万人位の場合に約三〇億ドルの  

剰余金を生むことを意味する︒失業がはば四〇〇万から四五〇  

︵六四こ 八一   

(16)

第三十三巻 第五骨  

万であるときに予算は均衡するであろう︒し   

ここに述べた正確な数値はその近くにある他の数値よりも厳  

密によいと弁護することはできない︒そしてその方式が実施さ  

れた後で︑ある種の調整が指摘されるかもしれない︒しかしな  

がら︑適当な数値ほどららの方向にも余りかけ離れたものでは  

ありえない︒現実の失巣は︑時として凶パーセント以下である  

かもしれない︒しかしこの数値を大きく下廻るときにほ必ず深  

刻なインフレ的圧力を生むと思われる︒四パーセントの失並の  

場合には︑非自発的に徒食している者ははとんど職巣を変えて  

いる途中のものである︒したがって高い所得水準においてのみ  

適度の剰余金を生み出すように税率を定めることは︑公共政策  

が避けなければならない条件の下においてのみ国債が減ること  

を憩昧する︒他方において︑ずっと低い所得水準において国債  

を減少することができるはどに十分高い税率は︑経済にデフレ  

的な圧力をおよぼし︑そして失業を助長す五であろう︒  

国 債 管 理  

経済発展委員会は国偵管理紅ついては別の政策報葛巻を発衣  

している︒ここで強摘したいのほわれわれの観望している予静  

政策の成否が国債管理の成功虹よって強い影響をうけることだ  

けである︒   

たいていの人々ほ国債というと︑その間に差別めない単山の  

繚額であると考えている︒彼等は国債政策というのほ剰余金を   ︵六四二︶ 八二  

国債の償還軋用小ることだけのよう転考えている︒   

実際には国債紅は沢山の種類がある︒個人によって保有され  

ているものもあれば︑銀行によって保有されておるものもあ  

る︒また長期のものもあれば短期のものもある︒売買可能のも  

のもあれば∧それが不可能なものもある︒これら種類の異った  

国債の経済的効果︑インフレに与える効果︑デフレに与える効  

果はちがう︒現在のように大規模の国債がある場合にほこの差  

漁非常軋重要である︒   

国債管理の問題は︑剰余金があるとき償還すべき国債の種類  

などれにするかを決めることであり︑また赤字があるときある  

いほ国債の満期がくるときに発行すべき国債の種類を選ぶこと  

である︒われわれが雇用を高くしておき継続的に国債の減少を  

期待するためにほ︑これらの経済的作用を理解したうえでこの  

選択をしなければならない︒  

物 価 水 準  

ある定められた剰余金を生む国民所得の標準の選択のため紅  

は︑雇川水準の選択をしなければならないと同時に︑物価水準  

の選択をしなけれぼならない︒しかしながら︑雇用水準の選択  

ヒ物価水準の選択との間にほ基本的ちがいがある︒雇用水準で  

労働力の割合として定義されているものについては︑その他の  

ものよりはっきり優れているものがある︒労働力の八〇パーセ  

ントしか礎われていないよりも九六パーセン上尾われているカ   

(17)

がよい︒物価水準についてほこのような基準はない︒ある特定  

の物価水準のもつ利点も欠点も関連の問題である︒それほ過去  

の物価水準との関連︑現行の貸金水準との関連︑外国の物価水  

準との関連︑特定の価格相互間の関連である︒   

おそらく物価の選択払おいて最初の最も重要な考慮は︑採用  

された物価水準が安定した商い雇用の維持と両立しなければな  

らないということである︒基準の国民所得を算定するに当って  

用いた物価水準が低ければ低いはど︑それだけ必要とされる税  

率は高くなるじもし選ばれた物価水準があまり低過ぎると︑必  

要とされる税率は総需要を非常に制限し高い雇用水準を不可能  

にするかもしれない︒弁述しうる物価水準をきめるまでに漸次  

軋調整してゆく過程が必要である︒   

ひとたびこの制度が実行に移されるなら︑仮定された物価水  

準を変えないことが非常に有利である︒基準の国民所得は︑それ  

に畢ついて税率が定められるのであるが︑簡単でありまた客観  

的に決定できるものでなければならない︒このことはもし毎年  

同州の物価水準を用いるなら容易になるであろう︒そのうえ︑  

物価水準のベイスのある種の変化はこの制度の安定強化の力を  

うち破るであろう︒たとえば︑雇用が高い水準紅あるとき︑物  

価のインフレ的上昇は仮定された物価水準を引きあげるための  

信号であってはならない︒仮定された物価水準を引きあげるこ  

とは︑必要とされる税率をひきあげる結果となり︑こうしてイ  

ンフレをかもし出すであろう︒この想定はある条件のもとでは  

租税と予静︑繁栄のための計画   物価水準のベイスの改訂が適当なものであるかもしれないとい  う可能性を否定するものでほない︒しかし大低の事情のもとで  その水準を安定にたも︵.ておくことの価値を認識しておくこと  ほ︑理由なき増大を抑えることであろう︒人気はあるが経済的  に有害な租税の引きさげを理論的に袈づけるために︑この倣走  された物価水準を引きあげようとする誘惑がいつもあるが︑う  えのことはこれをくぢくのにあずかって力あるであろう︒   

なお左に題名をかかげておいた経済発展委員会の勧告の罪二  

節においてほ︑必要な政府収入を徴収するのにもっとも適当な  

方法についての勧告が述べてある︒しかしこれほ紙面の都合上  

割愛する︒  

Tbe COmmittee fOr EcOnOmic DeくelOpment.↓屯唇匂わき札  

野鼠g已⁝ゝ 旬言g⊇富.言う Lぜ烹忘恵まヾ 卦 a句選  

句cQ葛篭ヤー盟シ  

︵六四三︶ 八三   

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