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死別体験のある子どもとその後

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Academic year: 2021

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〈シンポジウム発題概要〉

死別体験のある子どもとその後

小 川 有 閑

1. エッグツリーハウスとは

エッグツリーハウス(一般社団法人 The Egg Tree House)は、親やきょ うだいを亡くした子どもや青少年、また保護者のグリーフケア1)を行うこと を目的として 2014 年にスタートした2)。本シンポジウムでは、主にグリー フケアキャンプでの子どもたちの様子に焦点を当て、死別体験のある子ども がどのような感情を持ち、自身のなかで消化しようとしていくのかを紹介 し、私たちがどのようなサポートをしていくことが望まれるかをともに考え てみたい。

エッグツリーハウスの活動をまず 3 つに大別して紹介したい。一つ目は、

毎月第 4 日曜日に、小金井にある真言宗寺院・真蔵院の十住堂という多目的 ホールで開催するグリーフケアプログラム「たまごの時間」。約 2 時間、子 どもたちはアート、遊び、外遊び(徒歩 1 分の場所に広がる広大な小金井 公園での遊び)を自分で選んで過ごし、保護者たちは別室で死別の悲嘆感情 を語り、分かち合う。10 月には小金井公園でバーベキューパーティー、12 月にはクリスマスパーティーを行っている。これまでの参加者数は、2014 年度(全 11 回、7 月はキャンプのため休み)が子ども 40 人、大人 61 人、

2015 年度(全 10 回、7 月・8 月はキャンプのため休み)が子ども 57 人、

大人79人、2016年度(10月時点で全5回、7月・8月はキャンプのため休み)

が子ども 43 人、大人 48 人と、徐々にではあるが増えていっていることが 分かる。

二つ目はグリーフケアキャンプである。7 月と 8 月に、苗場の山荘にて 2 泊 3 日のキャンプを実施している。家族での参加でも、子どものみでの参加 でもかまわない。朝食と夕食は、参加者全員が参加し、子どもも火起こしか ら、調理、後片付けまで行う。夜は、子どもたちはテントの中で眠り、保護

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いる。キャンプの参加者は、2014 年度は子ども 9 人、大人 11 人、2015 年 度は 7 月が子ども 7 人、大人 4 人、8 月が子ども 10 人、大人 10 人、2016 年度は 7 月が子ども 7 人、大人 9 人、8 月が子ども 11 人、大人 5 人であった。

たまごの時間に参加している家族だけでなく、キャンプには、東海地方、関 西地方から参加する家族もいる。

三つ目は 16 歳から 35 歳までの青年期を対象とした活動で、毎月開催す るグリーフカフェ(分かち合いの集い)、9 月に開催するグリーフカフェキャ ンプ(グリーフケアキャンプと同じ山荘にて 1 泊 2 日)がそれにあたる。

グリーフケアを行う団体は様々あるが、遺児のケアは大学卒業までであった り、成人以降を対象とした団体だと、子どもを亡くした親の参加者が多かっ たりと、親・きょうだいを亡くした若者が気持ちを分かち合える場が少ない という声をもとに企画をしている。

その他に、ファシリテーター養成講座やグリーフについて広く知ってもら うための公開講座を開催するなど、地道に活動を進めている。

2. グリーフケアキャンプより

本シンポジウムで主に取り上げるのはグリーフケアキャンプについてであ る。グリーフケアキャンプの 2 日目の夜に、「たまごの時間」というプログ ラムがある。何をするかというと、子どもたちとファシリテーターが輪にな り、室内の明かりを消す。手には、亡くなった親やきょうだいとの思い出の 品。たまご型の蝋燭が各自の前に置かれている。進行役のファシリテーター からであったり、自分から手を挙げる子からであったり、その場に応じて、

最初に話す人が決まる。話者は、手元の蝋燭に火を灯し、思い出の品のエ ピソードや亡くなった人への思いを語る。そして、順番に蝋燭に火を灯し、

語っていくのだ。毎月のたまごの時間では、子どもたちは自己紹介で誰を亡 くしたか程度の話しかしないので、普段、うかがえない子どもたちの亡き人 のへ感情が表出される数少ない場となる3)

今回は、毎回、数名のファシリテーターが記録係として、終了後に記して いるレポートをもとに報告をしたい。そこで語られる子どもたちの声をその

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死別体験のある子どもとその後

まま発表することは難しいので、ファシリテーターのレポートから、子ども たちの様子を知り、考えていただければと思う。

2.1. 2014 年のキャンプレポート

・いつものたまごの時間とはまったく違い、蝋燭の火が幻想的な雰囲気 を醸しだしていて、みんな、厳粛な気持ちになっていた。みんなが話 している人に意識を集中していた。

・お姉ちゃんを亡くした子供は、お姉ちゃんが作ったお祝いのカードを 見せながら、いつも弟にばかり優しくて自分には怒ってばかりであっ たと、涙ながらに話してくれた。でもその感情にはお姉ちゃんへの思 慕が感じられて、それをうまく言葉で表現できないように感じた。

・子供達がこんなにも自分の気持ちを表現してくれるとは思っていな かったので、正直びっくりした。いつもは元気に笑って遊んでいる子 供達も、この時間だけは特別な時間だということを感じているように 思った。家族以外、普段の生活ではおそらく表現する機会がないであ ろう故人との思い出を、子供なりに一生懸命に話してくれた。

キャンプ中も、毎月のたまごの時間でも、元気に遊んでいる姿しか知らな かったファシリテーターのある種の戸惑いが伝わってくるレポートである。

いつも元気な子どもたちだが、家族の死別を悲しまないはずはなく、大きな 悲しみを心に抱えながら過ごしているのである。

2.2. 2015 年のキャンプレポート①

・子どもたちを見ていると、それぞれにこのキャンプの意味、目的を理 解して参加していることがわかった。同じように、喪失体験をし、グ リーフを抱える友達と一緒に過ごすこと自体が癒やしとなっているこ とを強く感じた。夜のたまごの時間のみならず、遊んでいるときな ど、子どもたち同士での何気ない会話の中で話題にされることも多 かった。

・話したくないときはパスをしていいというルールをいつも通りしっか りと確認したが、パスをする子どもはいなかった。その確かな理由は わからないが、無言になりながらも、泣きながらも言葉をつなぐ姿か

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し、寝食をともにすること、話を聴き、聴いてもらうことは、子ども たちにとってきっとかけがえのない経験ではなかったかと思う。

同じ体験をしている人だけが参加しているという安心感、寝食をともにす ることによる信頼感、それらが醸成された結果、普段は隠している話したい 気持ち、聞いてほしい気持ちを素直に表出することができたのかもしれな い。

2.3. 2015 年のキャンプレポート②

・一通り話し終えた後、進行役が「亡くなった人の夢を見たことあ る?」と質問を投げかける。多くの子が「ある!」と手を挙げて話し 始める。「どんな夢?」と聞くと、「一緒に遊んでいる夢」と答える子 が多い。A 君と B 君が「○○で遊んでいる夢!」、「俺は△△で遊ん でいる夢!」と応酬のようになる。母を亡くした C 君が「僕はお母 さんに怒られている夢ばかり見る」というと、他の子からも「喧嘩し ている夢も見るよ!」という声があがる。

・進行役が「こういう話を学校で話すことはあるの?」と尋ねると、み んな、「しない」と答える。唯一、D 君だけが「僕は話している」と いうと、他の子たちは「え~、なんで?」と驚きの声をあげていた。

「どうして話さないの?」と質問すると、ある子は「前に友達に話し たら笑われたから、絶対に話さない」という。他の子たちは「ひど い」と共感。ある子が「お母さんに言っちゃダメって言われているか ら」というと、「うちも」と返す子もいた。

・E 君から「家族やきょうだいは何人?と聞かれた時、みんなはどう答 えているの?」という質問が出ると、ほとんどの子は亡くなった成員 の数は含めずに答えているようであった。「E 君はどうなの?どうし て聞きたかったの?」と尋ねると、自分自身、よくこうした場面で悩 むことが多いために質問したという話をしてくれた。

・「病院でのお父さんやお母さんが悲しんだりしている姿は覚えてい る?」という質問では、F 君は「病室でお母さんがお姉ちゃんの頭を

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死別体験のある子どもとその後

撫でていた」、G 君は「病室でお母さんとお父さんがお兄ちゃんを囲 み、優しそうに話していた」と語り、自分はそっとその場面を見守っ ている様子を語った。

・最後に進行役から「これからどんな風に生きたい?」と質問が出る と、「みんな、がんばろー」、「病気にならないように」、「生きるって がんばることだから」、「意地悪する人は長生きして、優しい人は早く 死ぬ気がする」、「人生って短くても、その人の人生なんだよ」と大人 もハッとする意見がいろいろ出る。

・ほとんどの子どもたちが学校では話せずにいること、親に気を遣って 日々過ごしていることが直接に伝わってきて切なく感じた。また、死 別体験を通じて、大人もビックリするような死生観を培っているよう に思えた。

・H 君が涙ぐむファシリテーターの前にそっとティッシュの箱を移動 させるのを見て、子どもの感受性や共感力を再認識した。

日常では、亡くなった家族の話を意識的にしないようにしていること、感 情にふたをして過ごしていることが良くわかるやり取りであろう。友達に笑 われた子の悲しさはいかばかりであろう。きょうだいが亡くなり、親が悲し んでいる様を見守る子の気持ちはどのようなものだったかと想像するだけ で、心が苦しくなる読者もいるだろう。かように、子どもは子どもながら に、しっかりと死別の現実を認識し、周囲の状況を見ているようである。

2.4. 2016 年のキャンプレポート

・普段は見られない子どもたちの表情がたくさん見られた。思い出の品 を持って、大切な人のことを話すということが分かった上で思い出の 品を持ち寄り、参加していることを思うと、あの場に来るまでにその 子なりに亡くした人との思い出を振り返ったり、何を話すか考えたり 準備をしていると思った。その作業は亡くなった人と向き合うことで あり、つらい作業であり、楽しい作業であると思った。

・普段は自由奔放に遊んでいる子どもたちも、きちんと他の友達の話を 聞き、共に涙を流したり、自分の感情と向き合って嗚咽するように泣 きながらも今の思いを必死に言葉にしたり、子どもたちの強さ、ひた

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・こうやって思い出と共に これからも生きていくこ とや、悲しみと向き合い ながらも自分は今の人生 を生きていく、生きて いってもいいのであると いう思いになれることは 大切なことかなと思っ た。

亡き人への思いを一人で整理 するということは、死別と向き 合うことでもある。そして、そ の思いを語り、友達の思いに耳 を傾ける。普段は隠している感 情をありのままに話し、ありの ままに受け止めてもらえるとい う経験が、これから成長してい く中で、自己肯定感の醸成にも 役に立っていくのかもしれない。

子どもも火起こしから調理、片付けまで一緒に行う 自然のなかでともに過ごすことで、信頼感・安心感 が醸成されるのかもしれない

蝋燭に火を灯し、思いを語り合っている 夜のたまご

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死別体験のある子どもとその後

3. 子どものグリーフケア

子どもは子どもなりに死を認識し、グリーフを持つ。しかし、周囲に気を 遣って、グリーフを抱えたままになってしまうことが少なくない。たとえ ば、親の悲嘆を感じ取って、自分は良い子でいようと思ってしまったり、レ ポートにもあるように、亡くなった家族の話をしたくても、ふたをしてし まったりする。逆に、子どもは大人のような死別の悲嘆感情を持たないであ ろうという誤解から、死別が生じた際に、子どもが蚊帳の外に置かれてしま うという話もよく耳にする。子どもも死別の悲嘆を感じるものであり、家族 の一員として、ともに悲しむということが必要なのかもしれない。

自分のグリーフをありのままに表出することが、グリーフワークを進める 大きな要素とされているが4)、家庭や学校でグリーフを語れず、心にふたを してしまうことで、グリーフワークが進まなくなることも十分に考えられ る。当たり前のことであるが、子どもにとって、きょうだいや親が亡くなる ということは、10 年も満たないような人生のなかで、最大級の出来事のは ずである。どう消化して良いか、死別体験を自分のなかでどう位置付ければ 良いのか、分からないのも自然なことであろう。キャンプの夜、言葉でどう 表現したら良いのか分からず言葉に詰まり、ただ涙を流すだけの子に対し て、周囲の子たちは、それがその子の気持ちの表れと理解をし、誰も次に進 めようとしなかった。そこには、子どもが安心して、心のふたを開けられる 場が成立していたように感じられた。

また、学校生活などで、他の子たちと比較することであらたに喪失を感じ ることもある。たとえば、父の日や母の日に、学校でお父さん、お母さんの 絵を描きましょうといった時間があれば、自分にはいないのと喪失感を新た にすることもあるであろう。「きょうだいは何人?」といった会話で、「うち は一人っ子」と答えるときの、心の痛みはどうしたら癒やせるであろうか。

「エッグツリーハウスに来る子は、みんな、死別体験がある」と共有されて いることで、嘘をつかなくても良い、亡くなった家族の話をしても良いとい う安心感が醸成されているのである。

まだ生まれて数年のエッグツリーハウスの活動から報告者が得た経験、感 じたことを紹介してきたが、これをもとに、多くの人が、子どもが安心して

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1) 本報告では、死別の悲嘆感情をグリーフとして論を進める。

2) エッグツリーハウスの詳細は、http://www.eggtreehouse.org/ を参照。また、本 書所収の西尾温文「死別後の悲嘆に寄り添う―エッグツリーハウスの活動から―」

にも詳述されている。

3) 同じ時間、保護者達は別室で同様のプログラムを過ごす。

4) J. W. ウォーデン『悲嘆カウンセリング―臨床実践ハンドブック』(山本力監訳)

誠信書房、2011 年。

参照

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