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国語科における基礎学力把握 と

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(1)

国語科における基礎学力把握 と

その向上のための方策について

‑小 ・中連携実践事業を契機 として ‑

松 本 修 1 国語科学力論における基礎学力の捉え方

基礎学力の低下が社会問題化 して論 じられている。算数 ・数学の学力テス トの国際的順位の 低下や、東京大学入学者の読みの力が著 しく低下 していることが大手の添削指導出版社か ら指 摘 されたことが報道 されるな ど、小学校か ら大学にいたる幅広い段階での学力低下問題が問題 として取 り上げ られ るようになってきている。 この学力低下の原因は、社会構造の飽和ない し 成熟の結果、学習が社会的 ・経済的成功な どの達成 をもた らさない ことを子 どもたちが見抜い ているところにある、 とい うような社会学的な分析がなされ●'、 「子 どもたちに寄 り添った新た な学習観が必要だ」とい う提言を生む一方で、「新 しい学習観は何 ら新 しい価値 をもた らさず、

む しろ知の崩壊 を招 くとい う考え方を対極 に作 り出 している。学力低下を否定す る立場か ら は、 「異なる学習観による学習の成果は異なる評価によって測 られ るべきだ」 とい う声 もあが るが、実際の ところ、私たちは新 しい学力の定義 も新たな評価法 も決定的なものとしてもって いるわけではない。国語科の基礎学力の向上を言 うとき、現在私たちがおかれているこのよ う な状況を無視することはできない。 また、新 しい学力観 とい う理念の もとに推進 されてきた教 育改革が 2002年度実施の新学習指導要領 、とりわけ総合的な学習の時間 とい う形で結実す る一方で、早 くも一層の学力低下が心配 されているとい う状況がある。 この状況は、戦後の単 元学習導入のもとで学力低下が指摘 された半世紀年前の状況に似ているとい うことも言われ、

両者の比較を前提 とした研究 も活発になっている。

大槻和夫は、戦後の基礎学力論争か ら学ぶべきもの として、「読 ・書 ・算」が基礎学力 とし て位置づけ られ、特に言語による認識の意義 を高 く評価する学力論が深め られたことをあげて いる̀2が、このことは、一方では、国語科 を単なる道具教科 としてではな く、認識 を支 えるも の として捉 え、全体 としての基礎学力の根幹 をなす ものとして位置付 けるとい うことを意味す ると同時に、もう一方では、全体お よび国語科における基礎学力 として 「読 ・書」を位置付け るとい うことをも意味 している。 こうした評価 は、逆に見れば、基礎学力論争では国語科の中 における基礎学力の中身は十分に明 らかにされず、む しろ実践的な形で しか中身についての認 識 は深められなかった とい う事情がある。 もちろん、そもそも言葉の力は、言語の多様な機能

*1佐藤学 教育改革 をデザイ ンする』 岩波書店 1999.pp.46

*2 大槻和夫 基礎学力論争か ら学ぶ『国語教育基本論文集成 3』 明治図書 1994.

pp.409411

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に即 して実践の場で検討 され るべきものであるが、国語科学力論 を展開 しよ うとすれば、その 中身 ・内部の構造 を問題にせ ざるを得ない。その実質についての検討 は困難 を伴 うがゆえに放 置 されてきた とも言える。柿崎町の′ト 中学校では、平成12年度13年度の文部省 ・文部科 学省指定事業 として 「ト 中連携教育実践事業」を実施上 基礎学力向上に取 り組 んでお り、

私 もそこに参加 してい るが、そ うした取 り組みにおいても、本 当は前提 として、この国語科基 礎学力論が要求 されている。

竹長吉正は、 「自己学習力」とい う、いわば新 しい学力観 に近いキー ワー ドに即 して、浜本 純逸、井上尚美等の論考2を検討 しつつ、 自己学習力の構造化モデル を提出 している●。それ によると、基盤層 として 「学習の仕方 ・スキル ・基礎学力」 (技能面)が前提 され 、中間層 と して 「自己学習 (ひ と り学び)‑の意欲 ・内発的な動機」 (情意面)が、発展層 として 「課題 発見力>問題発見力 ・学習計画力 >学習構想力 ・資料活用力 >情報操作力 ・自己評価力 (自己 モニター能力を含む)」 (認知面)が位置づけ られている。 この ように、何 らかの実際の言語活 動における情意面や、セル フモニタ リングに代表 され る認知面での学力を位置づける際におい ても、前提 として学習の仕方 ・スキル ・基礎学力が別に把握 される必要があると考 えられてい る。竹長氏 も、自主的な学習 を説きなが ら一方で 「強制」の必要を認める 「ラングランのジ レ ンマ 4 を紹介 している通 り、その学習においては ドリル的な訓練、極論すれば 「詰 め込み も 辞 さない」 とい うよ うな考 えを基本的に持っているのであろ う。そ してこのよ うな認識は国語 教師に広 く共有 されているものと考 え られ る。その基礎学力 とは何なのか、それを身に付ける ための学習のあ り方は どうあるべきかが問題である。

2 国語科基礎学力の内容

いわゆる基礎学力を常識的に捉 えた一例 をみてみ よ う。飛 田多善雄 は、次のように国語科基 礎学力を捉 えてい る。

*1 小 ・中連携教育実践研究事業 1年次報告書 学力の向上を目指 して』新潟県教育庁

・義務教育課 ・柿崎町教育委員会 2001.3

*2 浜本純逸 『自学の力』育成の歴史覚え書き」『教育科学国語教育』437明治図書 1991.1 浜本純逸 総合単元学習 と自己教育力」『現代教育科学』 339明治図書 1985.2 井上尚美 『国語の授業方法論』 一光社 1983

*3 竹長吉正「自己学習力」の構造化モデル と国語科教育一生涯学習時代 を見据 えて‑」

『国語科教育』40全国大学国語教育学会 1993.3pp.20‑24

*4 ラングランのジレンマについて、竹長氏は次のよ うに述べている。

「自己学習」 (ひ とり学び) とい う学習者の主体性 を重んず る教育のあ り方 を説 くラングラ ンが、一方で E・デ ュルケムの考 え方に従 って、 「親や先生が社会の委託 を受けて、子 どもに 対 して行 う 『強制』」の必要性 を説 いてい る。それ を指 して波多野は 「ラングランの ジレン マ」 とい う。

波多野完治 『生涯教育論 小学館 1972

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先ず、言語要素についての知識 ・理解 ・新指導要領で言 えば 「言語事項」 (従来の 「こと ばに関する事項等)にかかわる能力を基礎学力 とす る考え方である。内容の 〔言語事項〕

の (1)に 「国語による表現力及び理解力の基礎 を養 うため‑」の文言 も有力な根拠であ るが、古 くか ら読み ・書 き能力 と言われているように、また、言語 による表現 ・理解の実 践行為に不可欠の要素である発音 ・文字 ・語句 ・文法等の言語事項の能力を基礎学力の要 因 と考 えることは当然である。 しか もなお私は、言語事項だけでな く、表現能力の基礎 と なる事項、理解能力の基礎 となる事項の習得 も大事な要因として加 えるべきであると思 う。

もともと国語の能力は、言語 に関す る 「知的能力」 と 「技能能力」 (態度は一応別にす る) と考 えることができるが、その場合、知的能力が言語事項 に相 当す るので、いま一つの面 の技能能力の基礎的な ものをとい うことである。端的に言 えば、学習指導要領の内容に示 されている表現及び理解 の能力の基礎的な事項 を確実に身につ け させ ることである。それ は表現力や理解力その ものではないか と思 うか もしれないが、そ うではない。た とえば、

表現能力を形成 してい る要素は指導事項に示 された ものだけではない。表現す るための 目 的 ・対象 ・具休的材料の識別 をは じめ、興味 ・関心 ・意欲等の情意面 も加わ り、大方選択 や叙述力も基礎 とな り、それ こそ生きた表現力 として多響的、統一的に育成 され るもので ある。理解力の場合 も同様である。その意味で私は、国語 (料)の基礎学力 を認識領域に かかわる知識 ・理解 と技能、いわば 「言語事項」 と 「表現能力 ・理解能力の基礎 となる事 の手堅い実践的体得にあると考 えているのである。音読や黙読技能の訓練 も複写 ・聴 写指導の強化 も、そ うした観点か ら新意義 を見つけ出 している。なお、 「言語事項」に関 し ては、音声 ・文字 ・語句 ・文法等の記号体系の知識だけでな く、記号を運用す る仕方や知 識 を獲得する仕方に関する理解の面のあることを見落 としてはな らない。'1

2期前の学習指導要領に対応 した記述であるが、基礎学力の常識的な把握 としては、今 日で もそ う変わ らない ものだと言 えよ う。 このような常識的な把握に対 して異論 を持っ場合でも、

子 どもに実際に何 をまず身に付けてほ しいか と問われれば、答 えはそ う違わないものになって しま うはずである。すでにここに見 られるよ うに、言語事項に関わる内容はそのまま基礎的な 言語的知識 として基礎学力の内容をなす ものであるが、そ こに表現や理解 とい う機能に関わる 基礎的な技能 も基礎学力の内容をなす もの として把握 されている。竹長氏の言 うスキル もここ に含まれ ると思われ るが、この技能 ・スキル をどのよ うなもの と位置付けるかによって、国語 科基礎学力の把握の実質は、それぞれ異なるものとなる。そ して、言語事項 をも含めて、そ う

した内容が どのよ うな学習方法によって身に付 くのかとい うことに対する考え方によって、実 は学力の内容は異なるもの として把握 されていると言える。知識は、運用によって して しか確 認できない とい う意味で、言語事項 もまたスキル ・技能に関わるものであるか ら。飛 田氏 も 「 堅い実践的体得」 とい う言葉 を使 っているように、技能 ・スキルは何 らかの活動な しに身に付

事1 飛 田多善雄 論説 基礎学力の育成 一言語の教育 としての立場か ら‑『国語教育基本 論文集成』3 前掲 pp.388389

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くものではない。

この活動 を国語科単元学習で言 うよ うな 「実の場のよ うな場での活動 と考 えるのか、それ とも訓練のよ うな もの と考 えるのかによって、実は技能 ・スキルの内実は揺れ動いているもの と見るべ きであろ う。 もともと学力論 は評価論や指導方法論 との関係の上にな りたっ議論であ るとも言 えるわけである。 しか し、 ドリル的訓練的な形で指導 され る基礎的な知識 ・技能の下 支えな しには、場における技能 も身に付かない とい うような考 えが広 く共有 されているか らこ そ、基礎学力向上が常に繰 り返 し説かれているのだ とも言 える。学習指導要領 を念頭に置いて 基礎学力を多様に考 える場合でも、基礎の基礎 としての言語的知識 ・技能は前提 されているの である。基礎学力の内容について多様 な把握の可能性 は開かれているが、 とりあえず飛 田氏の 論の方向に拠 って学習指導要領 との関わ りにおいて基礎学力を考えてみることに一定の意味は あろ う。

3 学習指導要領 にみる基礎学力

飛 田氏の論 を2002年施行 の学習指導要領 にあてはめて考 えてみ ると、 「言語事項」に関 す る言語的知識 と技能、 「話す ・聞 く読む書 くに関す る基礎的な言語的技能、 とい う

ことになるが、その内実はやは り明確 とは言えない。試みにい くつかの項 目について学習指導 要領解説 も含めてその記述内容をみてみ よ う。

学習指導要領の国語第5学年及び第6学年の C 読む こと」の内容は次の よ うになってい る。

(1)読む ことの能力を育てるため,次の事項について指導する。

自分の考 えを広げた り深 めた りす るために,必要な図書資料 を選んで読む こと。

目的や意図な どに応 じて,文章の内容 を的確 に押 さえなが ら要旨をとらえること。

登場人物の心情や場面についての描写など,優れた叙述を味わいなが ら読む こと。

書かれている内容について事象 と感想,意見の関係 を押 さえ, 自分の考えを明確に し なが ら読む こと。

オ 必要な情報 を得るために,効果的な読み方 を工夫す ること。

これを見ると、「文章の内容 を的確に押 さえ」ることや 「事象 と感想、意見の関係 を押 さえ」

ることが、第5学年第6学年には読む ことの基礎学力 として位置付 け られそ うな印象 を持つ。

言語運用にかかる基礎的な技能を基礎学力 と位置付 ければ、そ うなるであろ うし、あるいは最 近の文部科学省の立場は 「学習指導要領の内容はミニマムエ ッセンシャルズである」 とい うと ころにあるらしい ことを想定すれば、すべてが基礎学力の内容 をなす と言って もいい。しか し、

それが具体的にどのよ うなことをす ることができる 「技能」なのか、学習指導要領の文面では わか らないのである。

学習指導要領解説」では次のよ うになっている。 (一部 下線松本)

イ ・.目的や意図に応 じて内容 を短 く要麹 した り,敷術 した りしてま とめる

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ウ ‑ 登場す る△塑像 について,心情や性格,考 え方 な どをよ り多面的に とらえる 人物の心情 を表現や叙述 と関係付 けて, 自分の読み を確 かな もの として高 めてい

情景な どの表現 に着 目す る

エ ‑ 説得 した り,問題 を解 明 した りす る文章構準 を理解 しなが ら読み を深 める

耳草構硬や卿 に着 目す るな ど言葉 を手がか りに して意見や感想 をとらえる オ ・・中心語句や畳蓬 に気 を付 けなが ら内容 の中心 を押 さえた り,墜鑑 塾 な どに着 目し

た りして,筆者の述べ方 を読み とる 言語事項 ・・多様 な辞書 を活用できる

下線 を付 けたよ うな部分が基礎学 力の内容 を構成す る素材 となる とい う印象である。 これ を 具体化す る学習課題や学習活動 を想定すれ ば、基礎学力の内容 はそれな りに明 らかになるだろ う。要す るに国語科の基礎学力 とは、実践の現場で課題や活動の形で明確化す る しかないのだ とも言 える。

言語事項〕では、次の よ うな記述がある。

(1) 「A話す こと ・聞 くこと」, 「B書 くこと」及び C読む こと」の指導 を通 して,次の事項 について指導す る。

文字 に関す る事項

(ア)第5学年及び第6学年 の各学年 においては,学年別漢字配 当表の当該学年 までに配 当 されてい る漢字 を読む こと。 また,当該学年の前の学年 までに配 当 されてい る漢字 を書 き,文や文章の中で使 うとともに,当該学年 に配 当され てい る漢字 を漸次書 くよ

うにす ること。

(イ)仮名及 び漢字の由来,特質 な どについて理解す る こと。

表記に関す る事項

(ア)送 り仮名や仮名遣いに注意 して正 しく書 くこと。

ウ 語句に関す る事項

(ア)語句に関す る類別 の理解 を深 めること

(イ)語句の構成,変化な どについての理解 を深 め,また,語句の由来な どに関心 をもっ こと。

(ウ)表現 した り理解 した りす るために必要な語句について,辞書 を利用 して調べ る習慣 を付 けること。

(エ)語感,言葉の使 い方に対す る感覚な どについて関心 をもっ こと。

文語調の文章に関す る事項

(ア)易 しい文語調の文章を音読 し,文語 の調子に親 しむ こと。

文及 び文章の構成 に関す る事項

(ア)文や文章にはい ろいろな構成があることについて理解す ること。

言葉遣いに関する事項

(ア) 日常よく使 われ る敬語の使 い方 に慣れ ること。

(6)

(イ)共通語 と方言 との違い を理解 し,また,必要に応 じて共通語で話す こと。

学習指導要領解説」には次の よ うに書かれている。

ア ・・例 えば, 「収 める納 める修 める」の うちどれ を使 うかな ど,文脈 に沿って表 意文字 としての漢字 を適切に使 うこと

表音文字 としての平仮名 ,片仮名や,表意文字 としての漢字の由来や特質な どに ついて,初歩的な知識 を得 ること

表意文字 としての特性や ,畳 とが原則 としてあること,漢字の字形,漢字の構 成艶盆 な どについて初歩的な理解 をもてる

イ ・・例 えば, 「鼻血 (はなぢ)と 「地面 (じめん)」, 「みず うみ (湖)」と 「みかづき (三 日月)な どの区別 を付けて,串 ̲しく表毎できる

ウ ・・やがて品詞分類や去塵 造 を分析 した りす る基礎 として,文法的な類別 の理解 を深 められ るよう指導

堕星壷のほかに,複合語 ,略語,慣用語な ど

花 +畑」でハナバ タケ とい うよ うな音の変化, 「帰 る+道」で 「帰 り道」 とい う ような語形の変化,また 「物」 と 「物物 しい」の ような意味の変化

語源 を調べた り,請,漢語,外来語 な どの区別について関心をもった り

国語科 に限 らず他 の教科 な どの調べ る学習や 日常の生活の中で も積極的に辞書 を 利用できるよ う,必要 な ときにはいつで も辞書が手元にあ り使 えるよ うに配慮 し・

てお くことが大切

オ ‑ は じめ ・中 ・おわ りといった星盟 の仕方,考 えの中心 となる文の置 き方,重畳土 事実 との書 き分 け方,順序 に沿った述べ方な ど,文章の形態 によって構成 の仕方 は変わって くることについて,文章の実際に即 して構成の工夫を見出 してい く カ ‑ 相手 と自分 との関係 を意識 させなが ら,豊塑造や迷壷壷 をは じめ,丁寧な言い方な

どについて指導

言語事項の方が、具体的知識に関わるため、書 く側 として も格段に書きやすいのであろ う、

はるかにわか りやすい もの となってお り、む しろ細かす ぎるのではないか と思 うくらいである。

ただ、その技能面‑の展開についてはやは り言語活動のあ り方が問題 となろ う。単なる作業的 訓練では学習はあま りに退屈やむ しろ基礎学力の低下を招 きかねない し、あま りに活動主義的 では、何の力がついたのか確認できないか らだ。

一例 を示 したにすぎないが、実際的な ところ、 「言語事項」については、学習指導要領 と学 習指導要領解説によって基礎学力の内容はほぼ決定でき、そのほかの領域については、学習指 導要領解説の内容を参考に、具体的な学習課題 、学習活動 を考 えてい くことによって基礎学力 の内容を決定するしかない、 とい うことになろ う。つま り、基礎学力の内容は、それ を身に付 けるための学習のあ り方 との関連 において一体のもの として考 えて初めて本 当に具体的なもの

となるとい うことである。

結局の ところ、基礎学力 とは何か とい う問題は、 どのような学習が当該の学習者集団にとっ

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て必要かつ重要なものなのか、 とい う当た り前の問題 をいかに的確 に把握す るか とい う問題に 還ってい くことになる。その際の資料 としては、いわゆる学力テス トのデータはあま りに不十 分なものである。 これは国語科の特性 の一つであろ う。

4 ふたつの方向から

小学校第5学年か ら中学校 にかけて、前節で行 った よ うな作業によって、特定の学習者 を想 定 しないまま、試みに 「読む こと」についてま とめてみた基礎学力の内容は以下のよ うなもの である。

I 「読む こと

A主 として説明的文章教材 に関わって

・文章の内容を要約 した り敷術 した りす る

・文章構造 ををとらえる

一段落の内容、段落相互の関係、論の展開、大 きな意味のま とま りに着 目

・述べ方 をとらえる

一中心語句、段落、接続語 、説明の工夫、説得の方法に着 目

・事象 と感想、意見の違いをとらえる 一文章構成 、文末表現に着 目

(言語事項 1 文相互、語相互の関連か ら段落関係 をとらえる) B主 として文学的文章教材に関わって

・人物像 を心情、性格、考 え方な どか らとらえる

・心情 を表現や叙述 と関係付けて とらえる

・情景表現 をとらえる

・主題 を叙述 ・展開か らとらえる 具体的な着 目点 ? 例)文末表現 (叙述の分類 せ りふ、情景描写、心 中思惟 、説明‑‑‑)

(関連す る要素の抜 き出 しと構造的な関連づけ) (ミニマルス トー リーの抽 出)

・読みの技能

一関連す る部分に印を付 ける、関連す る部分 を抜 き書きす る 一説明、描写、比噛、文体に着 目す る

このよ うな内容 を、例えば、学習課題 とそれ に対応す る学習過程上の留意点の形に して表す と以下のよ うになる。

〜段落の中心文を抜き出せ。 >主題に関わる中心語句 」が含まれている。

〜段落 と〜段落 との関係 として適切な ものはどれか。 >〜 とい う接続語がある。

〜 とい う内容 を述べているのは どこか らどこまでか。 >大きな意味のま とま り。関連す る 表現0

(8)

〜に関する筆者の意見を示 している文はどれか。 >〜 とい う文末表現。

〜の部分の主人公の心情 はどれか。 >〜 とい う情景描写 と関連 させて とらえる。

〜の部分の表現の特色 として適 当なものはどれか。 >比喰表現、文体に着 目する。

言語事項」については、次のようなものが内容 としてあげ られ る。

言語事項

・漢字の由来、特質、字体、字形、構成部分、音訓等

・学年別漢字配当表の漢字の読み書き+常用漢字の読み

・仮名遣い

・同音異義語、慣用句、類義語 ・対義語等

・連濁、複合語、意味変化

・文の構成要素 とその並び方、文の成分、品詞分類 と活用等の文法

・敬語のきま り

・音声的特質に関す る内容 (新)

以上は一例に過 ぎないが、検討の対象 となる学習者集団 (‑ クラス、学年、学校、地域)に ついて、様々なデータと実践上の実感に即 しなが ら、重視すべき課題 を抽出 していくことが、

基礎学力向上のための対策の第一歩 となる。そこで抽出した内容について、その学習を進め、

基礎学力の向上を図るには、ふたつの方向か らのアプローチが必要であるものと思われる。

‑つは、学習者の実態の把握に基づいて、ポイン トを定めて基礎学力の向上をね らった学習 指導の改善を行 うことである。 これは個々の教室で実現 され るべきことであるが、地域的な特 色等に合わせて、ある程度共通に必要 とされ る問題点の対策 として、自習用教材を与えるとい うようなことも考えられ る。柿崎での取 り組みでは、新潟及び柿崎地区の学力テス ト等の調査 を基礎資料 としたが、そこか らは、「場面の様子や情景 を読み取る力人物の心情を読み取る 段落の関係 を読み取る力文法的な知識、理解に関する力」の不足ない しばらつきが指 摘でき、こうした課題に焦点化 して学習課題 を考えればいいわけである。すでに論 じてきたよ うに、基礎学力の内容 自体が学習課題や学習活動を想定 しなければ厳密には明 らかにならない わけであるか ら、学習課題 を考えることが、一方で対象 とする学習者にとっての基礎学力の内 容を明確化することにもなる。 日本における家庭学習の時間の減少は、国際的な比較において も著 しいものであ り、そ うした観点か らみても、適切な学習課題 を与える必要はあるとも言え る。小学校高学年以上な ら、直接に、強化すべき項 目を提示 し、身に付けるべき学力を明確化 して、教室で治療的単元を設定することも効果的であろ う。

そ してもう一つは、効果があるとされているような学習活動そのものを実際に取 り入れなが ら、それが どのよ うな基礎学力の育成に関わっているのか、帰納的に基礎学力の内容を考えて い くことである。た とえば、「朝の読書」や 「教室における辞書活用」 とい うような実践につ いては、その実際的効用の大きさが学会やマスコミを通 じて報告 されてお り、一種の運動 とし ても広が りを見せてお り、基礎学力の充実に関 しても、効果あ りとする声が高い。辞書の活用 については指導要領、同解説でも強調 されてお り、そのわ りには実践の場での具体化が遅れて

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いる。 このよ うな実践が具体的に どのような基礎学力の内容項 目に効いて くるのか、調査によ って明 らかに してい くことによって、要す るに何が足 りなかったのか、基礎学力論 と学習指導 論、評価論 とを関係付 けなが ら明 らかに してい くことができれ ば理想的であろ う。朝の読書 を 取 り入れてか らどの よ うな項 目の学力が向上 したかを見れば、読書の時間の確保が どの よ うな 学力を向上 させ るのかが明 らかになるわけである。

5 伝 え合 う」力 との関連 と課題

新 しい学習指導要領 では、「伝 え合 う力の育成が新たな 目標 として掲げ られ、 「話す こと ・ 聞 くことの活動に関わ る学習が重視 され ている。前節までの議論では、 「言語事項」 と 「 む こと」についての基礎学力を論 じてきたが。 これでは基礎 としての 「読 ・書」の内容 を狭 く 限定 しす ぎなのではないか と思われ るかもしれない。確かに、文字 と文法 を覚 えたか らといっ て、それが 「書 くことを可能にす るかとい うとそ うではないだろ う。飛 田氏の指摘の通 り、

実際の活動の基礎的な技能 も考えなければな らない。 しか し、 とりあえず、まず基礎 の基礎 と は何かとい う方向か らアプ ローチす るな らば、最初の段階 として言語事項 を取 り上げる必要が あることは理解 され よ う。 また、た とえば 「話す こと ・聞 くことによって 「伝 え合 うこと を考 えた場合でも、日常的なお しゃべ りを超 えた、あるいは 日常的なお しゃべ りよ りも深い 「 え合い」が国語科の課題 として要求 されていると考 えれば、その下支 えをなすのはや は り 「 む ことであると言わ ざるを得ない。それは 「書 くこと」において も同様である。最近私は、

読むこと」の持つ本質に関連 して、文学教材 を取 り上げなが らその意義 について論 じた◆lが、

読む経験の少ない者 がま ともな文章を書 くことはできない とい う経験的事実は、誰 もが承知 し ていることであろ う。

ここでは国語の基礎学力 を学習指導要領 を素材に検討 してみたが、 これ と全 く異なるアプロ ーチをとることもあ り得 る。た とえば、工藤順‑ は、国語教育の現状 を痛烈に批判 しなが らも、

読書の重要性 を説 き、小学校 高学年段階 ぐらいで 『モモ『はて しない物語』 (ミヒヤエル ・エ ンデ)、『ゲ ド戦記』(ル ・グウイン)な どを通読す ることを奨めている2。この場合、例えば『モ モ』 を通読 して自分な りの感想 を述べ ることができるとい うことを基礎学力 として考 えて も いいわけである。ただ し、工藤氏 も段階 とい うことを考えているよ うに、どのよ うな学習過程、

学習活動によって 『モモ』 を通読できるよ うになるのか、また、 「自分な りの感想が述べ ら れ るよ うにな るには どのよ うな読みの技能が必要なのか、そ うい うことを追求 してい くと『モ モ』 を通読 して自分な りの感想 を述べ ることができる」よ うになるために何が必要か とい う核 としての基礎学力が顕在化 してくることになるO もともと国語教育の内容が細分化 ・技術化 し て、試験問題 はできるが言葉の力がついているとは思われない子 どもが増 えてきたとい うのは、

評価の一人歩 きが起 こったか らである。工藤氏の批判 も理解できるが、国語科教育の体系 ・方 法 自体が否定 されているもの とは思われない。基礎学力の向上を図るために私たちも既存の評

*1 松本 文学の読み とその交流の実践的意義『国語科教育』第492001.3

*2 工藤順一 『国語 のできる子 どもを育てる』 講談社現代新書 1999.

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価 を暫定的に用いたが、本 当は、評価 のあ り方 も同時に問題化 されているのである。その意味 で、 「朝の読書の よ うな活動 か ら子 どもたちが何 を見出 してい くのか、具体的な感想文や証 言の中で考 えてい くことが必要になるのである。

一方で、強化すべ き学力を項 目として抽 出 し、その強化 に役立つ効果的な指導方法 ・学習課 題 を考 え、特設単元や とりたて指導 、 自習教材 の提供 な どを通 じて学力向上を図 り、その結果 を追跡す るOそ しても う一方では、学習者 の生活実態に応 じて、言語的経験その ものを増や し、

その質 を改善す る活動 を継続的に組織 し、そ うした活動の結果、 どの ような項 目の学力が向上 したのかを追跡す る。 こ うした双方 向か らの働 きかけを、結果 をフィー ドバ ックしなが ら継続 することしか、国語科の基礎学力の向上を図 る方策はないのではないか と思われ る。そ して も ともと、国語科の学習指導 とはその よ うな ものであったのではないか。国語科の学力において はどのよ うな構造 を実践上の作業モデル としてたてるに して も、分けたはずの各領域が互いに 絡み合 って単純には割 り切れ ない。 それは検討 した竹長氏の構造モデルに して も、柿崎での研 究報告にある三層モデ lに して も同 じである。数字だけをデータ とせずに、現場教師の実感

をもとに指導 を展開 してい くことが望まれ る。

(まつ もと お さむ 上越教育大学)

*1 『小 ・中連携教育実践研究事業 1年次報告書 学力の向上を目指 して』新潟県教育庁

・義務教育課 ・柿崎町教育委員会 2001.3p.4 に、A‑基礎学力 (基礎的な知識 ・技能)、B

‑基礎 ・基本 (各教科等の 目標 、内容)、C‑生 きる力 (自ら学び 自ら考 えるちか らな ど) と す る台形のC ⊃ B ⊃ Aとす る三層モデルが提示 されている。 しか し、 自ら学び 自ら考 える経 験によって こそ基礎的な知識 ・技能が身に付 くとい うこともあるわけであ り、そ もそ も境界は 常に暖味である。このよ うなモデル は作業上の仮説モデルにす ぎないのであ り、た とえば A ・B

・Cそれぞれ に対応す る別のテス ト問題 が存在す るとい うよ うな想定をす ることは極めて危険 である。解説では、基礎学力には 「話す ・聞 く、書 く、読むとい う国語科の活動領域がすべ て含まれてい るが、その内実は どの よ うな ものか示 されていない。 国語科はすべて基礎学力な のだ といえば国語科 を道具強化 に舷 めることに もな りかねない。解説では学習指導上の工夫 と して活動の重要性 にも言及 してお り、こ うした面に配慮 している。モデルはモデル として把握 し、参照 しつつ も、学習者の実態 に即 した教育活動が展開 されなければな らない。

参照

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