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●シンポジウム 教員研修における大学の役割②●
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上越教育大学の場合
上越教育大学学校教育実践研究センター 釜 田 聡
Ⅰ
は じめに平成
1 9
年春, 日本学校教育学会第2 2
回研究大会事務局か ら 「第2 2
回大会 ・ 公開シンポジウムでの報告 をお願い したい。テーマは 『教貞研修 における大 学の役割』
です」 と要請があった。私 には荷が重い と感 じたことやテーマが今 日的な重要 な課題 を含 んでいる こと,本学が教職大学院の設置 申請 を している微妙 な時期で もあったことか ら,「日頃,私 自身や学校教育実践研 究セ ンター (以下,セ ンター)が実践 していることであれば報告可能です」 と,大会事務局の了解 を得 て,当 日の シンポジウムを迎 えた。
以下は,当 日のシンポジウムの発表概要である(1)0
Ⅱ
シンポジウムの課題について大会事務局か ら,次の二つの課題が提示 された。
1
大学が担 ってこそは じめて可能になる教員研修の在 り方 を探 る。2
大学 は現在の教員研修の在 り方 をどの ようにとらえているのか,研修の 場で何 を身につけるべ きなのか を明確 にす る。
最初 に, この二つの課題 についての私の立場 について説明す る
。
1の課題 について,私 は理論 と実践,大学 と教育現場(2)や教育委員会 を明 確 に区分す る立場 をとらない。逆 に可能な限 り連携 を図るべ きであ り,実践 や教育現場 を中核 に した教員研修 を充実すべ きだ と考 える。
22 4
上越教育大学の場合
その理由は,次の
2
点である。1
点 目は,学校教育研究において,教育現場での実践か ら著 しく乗離 した 教育理論の存在意義 について問題意識 をもっているか らである。 少 な くとも 公的な教員研修の場では無用の もの と考 える。
2
点 目は,教育現場 における実践 にこそ,優 れた理論が埋没 していると考 えるか らである。 教育現場では, 日々,教員が意識的にあるいは無意識的に, 目の前の子 どもたちのために,最善の方策を講 じている。
教育現場 は,歴史 や伝統 には ぐくまれ,実践 を通 じて磨かれた価値ある実践知の宝庫 になって いる。この ような教育現場で, 日々, フィルターにかけ られ生 き残 っている実践 的な理論 を くみ取 ることが重要だ と考 るか らである。
以上の理由か ら,あえて 「大学が担 ってこそは じめて可能 になる」 とい う 枠組みを設定す ることは,教育系の大学の存在意義 を矯小化す るもの と考 え る
。
「教育現場 こそ豊かな理論の宝庫 である」
とい う視座か らは,大学 と教 育現場,教育委員会の協働 によって創造 される教員研修の充実が求め られて いる。2
の課題 については,次の ようにとらえる。平成
1 8 年 7
月1
1日に公表 された中央教育審議会答 申 「今後の教員養成 ・免 許制度の在 り方 について」では,「養成段 階か ら,その後の教職生活 まで を 一つの過程 として捉 え,その全体 を通 じて,教員 として必要な資質能力 を確 実 に保持す る」 と,教員の 「質保証」の視点が明確 に打 ち出されている。 こ れ らは,学部段 階 における 「教職実践演習」 (新設 ・必修予定)での到達 目 標の設定,教育実習の厳格化,教職大学院の創設, さらには教員の免許更新制の導入 に明確 に 表れている
。
I
「教員研修」を取 り巻 く現状と課題
中央教
育審議会答 申 (平成18 年 7
月1 1日)
大学 入試 一義成段
階こうした動向は,現在の教育の危機的状況 を 打破す るため,あるいは教員への揺 るぎない信 頼 を回復す るための並 々ならぬ決意 と受け止め るべ きであろう
。
適性
質 的
保証
採用ti験
採用段
階 、
初任 者所感
現職研修
肺 葉新鰍席的
保証) 線恵分野 安 芸
2 2 5
他方,こうした教員研修の在 り方 (免許吏新制 を含 む) について,「教員 や学校の内発的な研修意欲 を信頼 していないのではないか」「教員の多忙化 に拍車 をかけるのではないか」 という批判や,免許更新制の制度 ・運用面に 関する反対意見は多数表明されている。 しか し,教職大学院や免許更新制に ついては,大学が直接かかわることが明 らかである。 そこで,教職大学院や 免許更新制 を教員研修の重要な場の一つ として とらえ,その見通 しについて 真剣 に検討す る必要がある。
Ⅲ 上越教育大学の取 り組み
上越教育大学は教員養成 と現職教員の研鐙 を支援する新構想大学 として, 昭和53年 に関学,昭和56年に最初の学部生 を迎 えた。現在,教員養成系の大 学は内 と外か ら揺 さぶ られ,まさに大学の存在意義が問われている。 とりわ け,上越教育大学のような地方の教育単科大学では,一層深刻 な問題 として 受け止めざるを得 ない。 このよう な環境のなか,本学の取 り組みのなかで, セ ンターがかかわっている五つの取 り組みについて紹介 し,そこか ら本 シン ポジウムの課題に迫 る。
(1) 上越教育大学の臨床的研究や学校支援
本学は,実践的な指導力 をもった教員の育成 をめざしている。臨床的教育 研究を重視 し,大学 と教育現場 との距離 をで きる限 り近づけようと努力 して いる。 また,積極的に学校支援 に出向 き,地域の各学校の校内研修 に参画す ることで,教員の資質能力の向上 に寄与 している
。
(2) 教職大学院の設置申請
理論的な考察 を学校教育の現場のなかで活か しなが ら教育実践 を展開,高 度化する活動 と,それに基づ く教育 を主たる目的 とする教職大学院の設置を 申請 した(3)0
(3) 特任教員 (新潟県教育委員会 から任期付 きの教員)の採用
上越教育大学の場合
セ ンターでは,平成
1 7
年4
月か ら,新潟県教育委員会か ら任期付 き教 員 (特任准教授) 3
名受け入れている(4)。本学教員 と連携 し,学部授業でのジ ョイン ト授業(5)や学生指導,地域の各学校での校内研修等に貢献 している。(4) 「上越教育大学 (上越市 ・妙高市連携)スタンダー ド(6)」の作成 上越教育大学では,学部学生の資質能力の保証か ら,大学のスタンダー ド を上越市 と妙高市 と連携 し作成する予定である(7)。教員 として必要 とされる 資質能力 を学部教育が担 うべ き部分 と新採用研修で担 う部分,1
0
年 目研修等 で培 うべ きもの,その他生涯を通 じて磨 き続ける必要がある資質能力 と分類 整理 している段階である。( 5)
教員研修評価 ・改善システム開発事業 (平成1 9
年採択)(『新潟県立教育セ ンターにおける
Ch e c k ‑ Ac t
システムの研究開発』) 本年度,新潟県の教員研修の評価 システムを開発する予定である。具体的 には,新潟県立教育セ ンターが中心 となって実施 している教員研修プログラ ムについて,質的 ・量的の両面か ら検討 し,新 しい評価 ・改善 システムを捷 案 しようと努力 しているところである。以上が,セ ンターの 「教員研修」 にかかわる取 り組みである。
Ⅳ まとめ
最後 に,本 シンポジウムの二つの課題について言及 し,本報告のまとめ と する
。
(1) 教員研修 について
教員研修 については,車 にた とえると,「自動車のハ ン ドルの遊び」があ る教員研修が必要である。 具体的には,エ ンジン部分が 「質保証」,ハ ン ド ル部分には遊びとして,「柔軟性 と多様性
」
「選択幅の拡大」が求め られる。つ まり教員一人ひとりのライフステージや問題 ・関心 に応 じた教員研修プロ グラムの作成 とそうした要望 を把握する評価 ・改善 システムの開発が喫緊の
2 27
課題である。 また,今後 の課題 としては,免許吏新制 と従 来の多様 な研修(8)
との関係 をどう整理す るかが問われる
。
(2)
大学の在 り方
教育現場 の教育課題 は,複合 的で重層的な要因 を内包す る。鋭角 な切 り口 か らの研 究 は必要であるが,ブ レン ドされた研 究や知見 も必要である
。
その ため には,「糊代」 のある大学教 員の役割が重要である。学術 的 な研 究 に没 頭す る教員,実践的 ・臨床 的な研 究 に取 り組 む教員,一人 ひ と りが個性 を発 揮す る必要がある。 しか し,相互 に糊代があって もよい と思 う。 また, こうしたアバ ウ トな境界領域 に着 日す ることで,関連諸領域 の研 究者 と実践者 の 協働研 究や協働実践が創 出 される。 この ような視座 か らは,今後,設置が予 定 されてい る教 職大学 院へ の期待 は大 きい。教 職大学 院は,「教 育現場」 を 磁場 に,研究者 と実務家教員,大学 院生 と実践者 を結 びつ ける場が用意 され ている (教育実習)。 この ように豊か なステー ジが整 え られ るこ とに よって, これ まで誰 もが兄 い出せ なかった新 しい形 の 「大学が担 って こそは じめて可 能 になる教員研修」が生成 される と考 える。
く注 )
( 1)
本稿は,釜田がシンポジウム当 日に発表 した内容 をもとに,一部加筆修正 し再構成 したものである。( 2)
ここでは,教育研究の対象 となる大学を含めたすべての教育現場 を意味す る。( 3)
平成1 9
年1 2
月3
日,文部科学省か ら本学大学院学校教育研究科 に,専門職 学位 (教職修士)課程教育実践高度化専攻の設置が認め られた。ア ドミッション ・ポリシーは,次のとお りである。
「教育実践高度化専攻は,多種多様な実践例に学びなが ら,自らも教育実 践 を行 うことを通 して,刻々と変わる教育現場の状況 を即時的 ・総合的に判 断 しなが ら,適切な学校運営の実現に向けた協働関係の構築や実践 を総合的 にデザインできる教員を養成することを目的とします。」