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■固有値・固有ベクトルと行列の対角化

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Academic year: 2021

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(1)数学特別講義 B (1) 参考資料 1. 2021 年度第 1 ターム. 学芸学部数学科 3 年 (月曜 1 限 / ハイブリッド講義 南校舎 S107 教室) 担当: 原 隆 (学芸学部数学科・准教授) ※ 以下、第 1 タームの参考資料では『線形代数学Ⅰ, Ⅱ』で用いた教科書 [三宅] 三宅敏恒『線形代数学—初歩からジョルダン標準形へ』培風館 の該当箇所を参考までに載せておきます。. ■固有値・固有ベクトルと行列の対角化. . . 定義 (n 次正方行列の固有値・固有ベクトル; [三宅] p. 98). n 次正方行列 A に対し、実数 λ および n 次元数ベクトル x (̸= 0) が存在して Ax = λx が成り立つとき、λ を A の 固有値 eigenvalue と呼び、x を (固有値 λ に関する) A の 固有ベ クトル eigenvector と呼ぶ。. . . 命題-定義 1.1 (特性多項式と固有値; [三宅] 命題 5.3.1).   n 次正方行列 A の固有値 λ は ΦA (T ) = det(A − T · In ) (但し In は n 次単位行列) で   定められる変数 T の n 次多項式 ΦA (T ) の根となる。多項式 ΦA (T ) を A の 特性多項式 characteristic polynomial (または 固有多項式 eigenpolynomial ) と呼ぶ。. 本講義の規約. 以下では 特性多項式が 実数根のみを持つ ような n 次正方行列 A のみを考. える; つまり特性多項式 ΦA (T ) が 1 次式の積 ΦA (T ) = ±(T − α1 )(T − α2 ) · · · (T − αn ). (α1 , α2 , . . . , αn は 実数) で表されるような A のみを考える*1 。 . . 定義 (行列の対角化可能性と対角化; [三宅] p. 106). n 次正方行列 A に対し、P −1 AP が 対角行列 となるような n 次正則行列 P が存在すると き、正方行列 A は 対角化可能 diagonalisable であるといい、対角行列 P −1 AP を正方行列 A の 対角化 diagonalisation と呼ぶ。. . 命題 1.2. . n 次元ベクトル空間 Rn が n 次正方行列 A の 固有ベクトルからなる基底を持つ な. らば (即ち行列 A が n 個 の 線形独立な 固有ベクトル p1 , p2 , . . . , pn を持つ ならば)、n 次. h 正方行列 P = p1. より詳しくは、P. −1. i. p2. .... pn は 正則行列 であり、行列 A は P によって対角化される;. AP は 固有値を並べた対角行列 となる。 ※ 行列 A が常に n 個の 線形独立な 固有ベクトルを持つとは 限らない!!. 【証明】 仮定より p1 , p2 , . . . , pn は 線形独立 で、実数 λ1 , λ2 , . . . , λn (固有値) に対して. (∗) :. Ap1 = λ1 p1 ,. Ap2 = λ2 p2 ,. ......,. Apn = λn pn. が成り立つ。 *1. 代数学の基本定理 fundamental theorem of algebra より、n 次正方行列 A の特性多項式 ΦA (T ) は 複素数根 も考 えれば 1 次式の積 ΦA (T ) = ±(T − α1 )(T − α2 ) · · · (T − αn ) (α1 , α2 , . . . , αn は 複素数) に分解される。したがっ て、 [三宅] のように 複素数係数 でベクトル、行列を考えてしまえばこのような規約は不要である。ただ、複素ベクト ル・行列には慣れている人はあまり多くないと思われるので、本講義では 実数係数 のベクトル、行列のみを扱う。.

(2) h. ここで、仮定より p1 , p2 , . . . , pn は 線形独立 なので、行列 P = p1. p2. .... i pn は. .... 正則行列 である*2 ことに注意しておこう。 さて、行列の積 AP を行列の掛け算の定義にしたがって計算する*3 と.  AP = A p1. p2. ....   pn = Ap1. ....    = λ1 p1 λ2 p2 . . . . . . λn pn = p1. (∗).  λ1 0   .. =P . .  .. 0. 0 λ2 .. . .. . 0. ··· ··· .. .. ··· ··· .. .. ... ... . ···. Ap2. p2. .... .... .... ....  0 0  ..  .   ..  .  λn. . ···.  Apn  λ1 0    .. pn  . .  .. 0. 0 λ2 .. . .. . 0. ··· ··· .. .. ··· ··· .. .. ... ... . ···. . ···.  0 0  ..  .   ..  .  λn. となるので、左から P の逆行列 P −1 を掛けると P −1 AP は.  λ1  0  . −1 . P AP =  . . . . 0. 0. ···. ···. 0. λ2 .. . .. .. ··· .. . .. .. ··· .. . .. .. 0 .. . .. .. 0. ···. ···. λn.          . □. のように 固有値を並べた対角行列 となる。つまり A は P により対角化される (!! ). ■参考: 対角化の “図形的な意味 " # ”. 2 次正方行列 A =. 5. −6. が定める線形変換 fA (x) = Ax が、平面ベクトル x を どのような規 −4 則で変換しているのか を “目で見て分かるように” 解釈してみよう。 " # y 9 y fA (x) = 5 5. 3. fA. x=. 1 e2 O e1. " # 3 1. e2 O e1. [. *2. 『p1 , p2 , . . . , pn が線形独立 ⇔ P = p1. p2. *3. より正確には、P を P =. pn. [. p1. p2. .... x. 1. x. 3. /. ]. .... 3. fA 9. x. ] pn の階数が n ⇔ det P ̸= 0 ⇔ P は正則』に注意!!. と区分けして AP を計算する。.

(3)   2 行列 A は固有値 2 に関する固有ベクトル p1 = と固有値 −1 に関する固有ベクトル 1   1 p2 = を持つ (各自確認すること!! )。つまり 固有ベクトル p1 , p2 の行き先 は、定義より 1 fA (p1 ) = Ap1 = 2p −p1 となるので、線形変換での行き先を知りたいベクトル 1 , fA (p2 )= Ap2 =   1 0 x を予め (標準基底 e1 = , e2 = による線形結合 x = xe1 + ye2 ではなく) 固有ベクト 0 1 ルによる線形結合 x = sp1 + tp2 の形で表しておく と、線形変換 fA は 『p1 方向 (“s 軸方向”) に 2 倍に拡大し、p2 方向 (“ t 軸方向”) に (−1) 倍に拡大する変換』 であると捉えられる。. y. fA (x) =. t. 1 1. p2 −1. p1. 2 " # 3 x= = 2p1 − p2 1. O. 5 t = 2(2p ) − (−p ) 1 2 s. y. s fA. /. 4 2. x. " # 9. ×(−1) 1 p2 −1. x p1. ×2 fA. O. x. 数ベクトル空間 Rn が A の 固有ベクトルからなる基底を持つ ならば、数ベクトルを 固 有ベクトルによる線形結合の形に分解することで、線形変換 fA (x) = Ax を『各固有ベク トル方向に固有値倍に拡大する線形変換』として “視覚的に” 捉えられる!!. ⇝ このことを端的に表しているのが 行列の対角化  ※ このとき P = p1. . " 2. # 1. は、標準基底 {e1 , e2 } から “固有ベクトルのなす基底” 1 {p1 , p2 } への 基底の変換行列 change-of-basis matrix ([三宅] p. 93 参照) となっている; つ. p2 =. 1. まり、対角化 P −1 AP とは、固有値からなる基底を考えたときの線形変換 fA の行列表示 に 他ならない!! ■固有値が相異なる場合: 対角化可能であるための十分条件 命題 1.3 ([三宅] 定理 5.4.1 も参照) n 次正方行列 A の 相異なる固有値 λ1 , λ2 , . . . , λr (r ≤ n) を考える。各 1 ≤ j ≤ r に対して、pj を 固有値 λj に関する A の固有ベクトルとすると、. p1 , p2 , . . . , pr は 線形独立 である。 【証明】 1 ≤ k ≤ r に対して p1 , p2 , . . . , pk が線形独立であることを、k に関する数学的帰納法によ り証明する (k = r の場合が 命題 1.3 の主張である)。k = 1 のときは、固有ベクトルの定義より. p1 ̸= 0 であるから、c1 p1 = 0 が成り立つのは c1 = 0 のときのみである。したがって {p1 } は線形 独立であるから、題意が成り立つ。 次に k ≥ 2 として線形関係式 (⋆) : c1 p1 + c2 p2 + . . . + ck pk = 0 を考える。(⋆) の両辺に. (A − λk In ) (但し In は n 次単位行列) を掛けると (⋆)′ : c1 (A − λk In )p1 + c2 (A − λk In )p2 + . . . . . . + ck−1 (A − λk In )pk−1 + ck (A − λk In )pk = 0.

(4) . . となるが、固有値・固有ベクトルの定義 Apj = λj pj より.   (A − λk In )pj = Apj − λk pj = λj pj − λk pj = (λj − λk )pj (1 ≤ j ≤ k) ′ が成り立つので、(⋆) に代入して計算すると、p1 , p2 , . . . , pk−1 の線形関係. c1 (λ1 − λk )p1 + c2 (λ2 − λk )p1 + . . . + ck−1 (λk−1 − λk )pk−1 + ck (λk − λk ) pk = 0 | {z } =0  を得る。一方で帰納仮定より p1 , p2 , . . . , pk−1 は線形独立であるから c1 (λ1 − λk ) = c2 (λ2 − λk ) = . . . = ck−1 (λk−1 − λk ) = 0 が従う。仮定より λ1 , λ2 , . . . , λk は相異なるので、各 1 ≤ j ≤ k − 1 に対して λj − λk ̸= 0 であるか ら、c1 = c2 = . . . = ck−1 = 0 が成り立たねばならない。これらを (⋆) に代入して (pk ̸= 0 であるこ. . とと併せて) ck = 0 も成り立つ。以上より p1 , p2 , . . . , pk. 系 1.4. は線形独立であることが示された。 □. n 次正方行列 A の特性多項式 ΦA (T ) が 重根を持たなければ (即ち特性多項式 ΦA (T ). が 相異なる n 個の実数根 を持つ ならば) A は対角化可能である。 【証明】正方行列 A の相異なる n 個の固有値を λ1 , λ2 , . . . , λn とし、各 1 ≤ j ≤ r に対して A の固有 値 λj に関する固有ベクトルを pj とすると、命題 1.3 より n 個の n 次元数ベクトル p1 , p2 , . . . , pn. . は A の固有ベクトルからなる Rn の基底であるか. は線形独立となる。したがって p1 , p2 , . . . , pn. □. ら、命題 1.2 より A は対角化可能である。. babababababababababababababababababab まとめ. A の特性多項式 ΦA (T ) が 相異なる n 個の根 (固有値) λ1 , λ2 , . . . , λn を持つ場合 ⇝ 各固有値に対応する固有ベクトル h ip1 , p2 , . . . , pn を求めれば、対角化に必要な正則 行列 P = p1 p2 . . . . . . pn が作れる ⇝ 対角化出来る ⇝ 対角化が出来ない可能性があるのは 特性多項式 ΦA (T ) が 重根を持つ 場合 (固有値の数が “減ってしまう” 場合). ■演習問題 演習問題 1-1. (行列の対角化可能性Ⅰ) 以下の正方行列の固有値、固有ベクトルを全て求めなさい。また、それぞれの行列が対角化可能で あるかを判定し、対角化可能であれば対角化しなさい。. ". (1). (4). A1 =. 1 2. #. ". (2). 2 1.  1   A4 = 0 0.  2 −1 0. 3.  −2  2. (5). A2 =. 2 6. #. " (3). 1 3.  4   A5 = 2 1. −3 0. .  −1 0  0 1. (6). A3 =. 1. 1. −1. 3.  4   A6 = 2 3. #. −3 −1 −3.  0.  0  1.

(5)

参照

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