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11 青森県の学校における禁煙教育の現状と課題

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弘前大学教育学部紀要 第63号 :33‑49(19903月) Bull.Fac.Educ.HirosakiUniv.63:3ー49(Mar.1990)

青森県の学校 におけ る禁煙教育 の現状 と課題

A StudyonAntiSmokingEducationat SchoolsinAomoriPrefectureinJapan

子*

Kaku Kazuko (1989.12.21.受理)

(論文要 旨)

本研究では,青森県内の全小 ・中 ・高校,計783校 (回収率89%,分析対象校699校) を対象に質問紙郵送 調査法を用いて禁煙教育の実施状況を調べ (1985〜 1988年),今後の禁煙教育のあ り方 を検討す ることを 目的 とした。禁煙教育を 「全校で継続的 ・計画的に行 ってい る」学校 は,小学校1 (0.2%),中学校11 (6.1%),高校12 (18.2%),何 らかの形で授業を行 ってい るのは小学校32%, 中学校57%, 高校74% あった。禁煙教育はまだ十分学校教育の中に位置づけ られていない。その推進 の問題点 として,教師側,質 料 ・補助教材,家庭,地域 ・一般社会 の4つの問題が考えられ るが,学校 で鍵 となる問題は喫煙す る教師の 問題である。

はじめに

本論文 のタ イ トルに 「禁煙教育 Anti‑Smoking Education」 とい う用語を用いたが, これは学校保健, 公衆衛生などの学会 では一般に 「喫 煙防止教育 Smoking Prevention Education」と言われているもので ある。「禁煙 quitsmoking」 とい うと,一般にはす でに常習奥煙 してい る者が "決意 して喫煙を一定期 間 止め る‥ とい う場合に使用す るが, これを喫煙防止教育 (吸わせないための教育) も中に含み,喫煙を止め させ る教育 とい う意味で 「禁煙教育」 とい う用語を使 い始めたのは 「嫌煙権確立をめざす人び との会 (1978

1)‑3)

(昭和53)年218日発足)」の中から教育関係者が集 まって結成 した 「禁煙教育をすすめ る会」(19837 4)

3日設立)(注1)である。青森県では 「青森県嫌煙権確立をめざす人 び との会」は1981(昭和56)115 5)

日に結 成され,1984 (昭和59)10月に 「青森県禁煙教育に とりくむ会」が発足 したO教育関係者の中では

「喫煙防止教育」 よ り実際的であ るので,本論文では 「禁煙教育」 の用語を用い ることとした。

現在,わが国の児童 ・生徒 の喫煙率は7・5・3(高校生 は70%,中学生は50%,小学生は30%)と言わ れ るほどであ り,未成年者 の契煙率の増加や低年令化は大 きな社会問題 とな っている。様 々な未成年者の喫 煙防止策の中で,特に学校におけ る禁煙教育の重要性 は多 くの人 々が指摘す るとこ ろ で あ る。今年 (1989

6) 午)は,未成年者喫煙禁止法ができてか ら88年,国会 で嫌煙権が初めて論争 (1978‑昭和53411日) さ

7)〜9)

れてか ら10年 とい う時期にあた り,文部省の喫煙についての小 ・中 ・高校 までの手引,及び厚生省の 『喫煙 10)

と健康』(一般に 「たば こ自書」 と言われ る)が昨年 (1988年) までに出版 され,禁煙教育を考える上 で 一 つの節 目とな る大 きな転換期に さしかか ってい る。

日本で学校教育 とタノミコのかかわ りが議論 され るよ うにな ったのは明治政府が タバ コを専売制 (1896‑ 明 29年) にし,「未成年者喫煙禁止法」(1900‑ 明治3337E),法律第33号)が制定 された頃からと言わ

11)

れてい るが (2), このあた りの学校 での喫煙についての指導はほ とん ど "未成年者の契煙は ダメ とい う 禁止法の建前 としての道徳律のおしつけだけで終始 してきた ものと考え られている(3)。学校教育におけ る 禁煙教育の位置付け としては,保健体育科におけ る保健学習 と特別活動 (児童 ・生徒活動,学校行事,学級 指導 ・ホームルーム, クラブ活動) のなかの保健指導,及び生徒指導 とに大 き く分け られ る.しか し学習指

*弘前大学教育学部養護学科教室

DepartmentofSchoolHealthScience,FacultyofEducation,HirosakiUniversity.

(2)

導要領 に よって建前 としての時間が確保 されているとはいえ,1979(昭和54)年の 日本学校保健学会 の共同 12)

研究 の調査か らもわか るよ うに,小 ・中 ・高校におけ る保健学習や保健指導 の実施率は全国的に低 く,健康 にかかわ る科学的な学習は低迷 してい る。そ こで保健学習や保健指導に含 まれ る系統的な喫煙についての学 習 も同様 に低迷してい るとい うのが,現状である。

現在 の学校教育の中では ここ5‑ 6年 の社会的なたば この害についての世論 の高 ま りなどを背景 として, 健康教育 としての喫煙指導が少しずつ行われ るよ うにな ってきたが, まだ まだ =喫煙は非行 の始 ま り‥ とす る,いわゆ る =生徒指導日 としての =とりしま り強化日に よる非行防止の指導であ った り,喫煙問題が発生

13) 14)15) してか らの事後処置に終始 しているところが多い よ うである。文部省は1977,1979年 の生徒指導資料の中で 喫煙の有害性を指摘 し,問題生徒へ の指導 のあ り方を示 してい る。

禁煙教育 とい って も禁煙,分煙,防煙 と程度はいろいろであ るが,未成年者に対す る教育は これからたば こを吸わせない とい う防煙 (喫煙防止教育)が中心にな ることは言 うまで もない。そして未成年者にたば こ を吸わせないための主体面,環境面のアプロ‑チの うち,環境面‑の板 り組み (たば この生産 ・販売の禁止

・制限,禁煙 ゾーンの拡大,実族や仲 間など他者か らの誘惑その他) と共 に行 う主体面‑ のアプローチ とし ての健康教育の在 り方についての検討が必要であ る。 もちろん基本的に両面からのア プローチが必要な こと は言 うまで もない。

16)

これ までの禁煙教育の実施状況 の研究には,川畑他の中学校保健体育科 におけ る 「喫煙 と健康」について 17)18)

の全国的調査 (1982),皆川の新潟市 の幼経国,小,中,高校,大学 の教師を対 象に保健の授業以外の 機 会 も含めての調査 (1983)などがあるが,一つの県の全体像をつかむ よ うな研究はない。そ こで青森県 の全体 像をつかむ ことは,全 国の禁煙教育の動 向を把握す る上 で も大 きな意義があると考 えられ る。本研究では学 校全体 の禁煙教育の板 り組みのレベルを知 り,禁煙教育の推進を阻む要因について明らかにす ることを 目的 とした。同一年次に行 った ものではないが,県 内の小学校 ・中学校 ・高等学校 の禁煙教育の実施状況,必要 性,実施上 の問題点の3つに重点をおいて,青森県におけ る禁煙教育の現状 について調査を行い,検討 した 結果を報告す る。

尚,各学校種 についての3つの調査 は学生 の卒業論文作成時に行われ,概要 は文献19)〜21)に掲載 され てい る。高校の調査 は第34回 (1986年),中学 の調査結果は第36 (1988年),小学校を含めた全体的な結果 については第37 (1989年) の東北学校保健学会,及び青森県青森市におけ る1989年度第6回全国禁煙教育 夏期研修会 のシンポジウムで発表 してい る。

各調査 は二段階に分けて行われ, まず全対象校について質問紙調査を行い,次に禁煙教育実施校について 調査 した。

(1)第一段階の調査 ‑‑禁煙教育に関す る全対象校についての調査

(調査対象お よび期 間) 青森県内の全小 ・中 ・高等学校を対象 とした。各学校長 あてに質問紙を返信用 封筒 と共 に郵送 し,回答は生徒指導担当教諭あるいは適任者に依頼 した。調査対象校,期 間は次の とお りで ある。

調 調査期 間

青森県 内 全高等学校(全 日制) 81校 (回収校 66校,回収率81.5%),1985年10

全中学校 207 ( 181校, / 87.4%),198710

全小学校 ̲̲壁 」 45̲2琴し 91.1%),198810 783校 (回収校計699校,回収率89.3%)

(調査方法) 選択肢法 と自由記述法併用の質問紙郵送調査法 (全16,B4サ イズ質問紙2枚半〜 3枚) (2)第二段階の調査‑‑禁煙教育実施校についての調査

(調査対象 ・期 間 ・方法) 第一段階の調査において禁煙教育を 「教員全体 で話 し合い,継続的 ・計画的 に行 ってい る」 と回答 した小 ・中 ・高等学校,及び回答か ら実施 内容等 の詳細を知 りたい と考えた小学校 で, 次に示す とお りである。

(3)

青森県の学校における禁煙教育の現状と課題 35 高等学校 12 (1985年11月)10校は電話調査法,2校は 自由面接法

中学校 11 (198711月)電話調査法 小学校 7校 (1+6校) (1988年11月)質問紙郵送法

30

(1)回答者 の属性

(回答者の性別)高校 の回答者の男女の比率は79%20% (52人 :13人),中学校は76%23% (138人 : 42人),小学校では65%35% (293人 :157人) で,一般 の教員構成 と同様,中学校,高校 の回答者は男性 が多 く,小学校では中学校や高校に比べて比較 的女性が多 くな っていた。その他回答を生徒指導担 当教師を 中心に依頼 した ことか ら,男性教師が多 くな っていた ことも考えられ る。

(回答者 の職 名)表1にみ られ るように,小 ・中 ・高校 のどの校種で も 「生徒指導主事」 の回答が多 くな ってお り,高校 では55% (36人),中学校では60% (109人),小学校では34% (154人) とな っていた。 しか し,保健指導 で扱 うためか,次に 「養護教論」が多 く,高校14% (9人),中学15% (27人),小学校28% (126人) とな っていた。小学校では17% (78校) と 「教頭」 の回答 も多 くな っていた。

(回答者 の年令,教職経験年数)表2にみ られ るよ うに,校種 ごとの年令構成を反映 して もい ると思われ るが, どの校種 で も30,40,50才代で30%前後の回答率 であった。小学校では40才代 の回答率が中学 ・高校

1 回答者の職名

r 0(0.0%)l 5( 2.8%)l 12( 2.7%) 1( 1.5 ) 12(6.6) 78(17.3 )

生徒指導主事 36(54.6 ) 109(60.2 )I 154(34.0 ) 保 健 主l 1(1.5 )l 2 ( 1.1 ) l 12( 2.7 ) 学 年 主 任 1 1( 1.5) 1( 0.6 ) 2( 0.4 ) 教 科 主 任 l 1( 1.5 ) 12(6.6 )

養 護 教 論 I 9(13.6 )r 27(14.9) I126(27.8) 5(2.8 )l 12( 2.7 ) 2( 1.1 )1 12( 2.7 ) 1 66(100.0)

2 回答者の年令

(4)

に比べて低いが,20才代 の若い教師の回答率が高 くな っていた。 これ とともに10年 ごとに区切 った敦職経験 年数についてみ ると,高校,中学校では 20‑29年」の者が 約40%を占めて最 も多 くなってお り,次いで

10‑19年」が20‑30%であった。高校では これに 「10年未満」を加えた30年未満の教職経験者でほ とんど を占めているが,中学校.小学校では 「10年未満」 「30年以上」 も含めて,すべての年代でほは均等に役割 分担 してい ることが伺えるC

(回答者の契煙の有無)表3にみられ るように, どの校種で も最 も多いのは 「吸 っていない」で約半分で あるが,「現在 も吸 ってい る」者が約1/3であった。

3 回答者の喫煙の有無

(単位 :%)

0

20 40 60 80 100

高 等学 校 N ‑ 66

中学 校

N‑18I

小 学 校

N=‑452

1 喫煙間男の有無

(2)喫煙問題の有無 と問題発生後の対処の仕方

「あなたの学校では生徒の喫煙が問題になった こ とがあ りますか」 とい う質問に対 して 「ある」 と回 口ある 答 した学校は,図1のように高校では64校 (97%), EコIJ:

ロNA 中学校では134校(74%),小学校では94(21%)と, 高校や中学校ではほ とんどの学校で喫煙問題を抱え ていることがわか る。高校,中学校に比べ ると小学 校ではさすがに割合が低いが,それで も全体の1/5

の学校に問題が発生 していることが分か る。

この喫煙問題が 「ある」 と回答 した学校につい て発生後の対処 の仕方をみ ると,複数回答で表4に.

示 した ように小 ・中 ・高校 とも 「喫煙問題を もつ生徒に個人的に注意 ・指導を行 った」が最 も多 く,76‑90

%であった。その後は高校,中学校は同じ対処の順番で 「喫煙問題を もつ生徒の父母 との話 し 合 い を 行 っ 4 生徒の喫煙問題発生後の対処の仕方 (複数回答,%は学校数に対 して)

(5)

青森県の学校における新座教育の現状と課題 37 た」,次いで 「学年での話 し合い」,学級での話 し合,学校全体での話 し合い」 とな るが,小学校では 2番 目に 「学級での話 し合 い」, 次いで 「学年 での話 し合い,学校全体での話 し合い」で,最後に 「父 母 との話 し合 い」 とな る点が中学校,高校 とは異な ってい る。

中学校 のみであ るが,「あなたの学校 では喫煙に関す る所持品検査や構 内巡視を行 った ことがあ りますか」

と複数回答 で質問 した結果は,181校 の うち 「行 った ことはない」が63 (35%つ で最 も多 く,次いで 「 煙 問題発生後に行 った ことがある」が45校 (25%),全体 で定期的に行 っている」は39 (22%),学級 ま たは学年 の単位 で定期的に行 っている」は32 (18%),「その他」17 (9%)の中には,不定期に行 っ ている」 5,喫煙問題に関係な く行 ってい る」 3校があった。

(3)喫煙問題に対す る学校の関心 と実態把捉のための努力 1)児童 ・生徒 の喫煙率の予想 と教員の喫煙間者に対す る関心

「あなたの学校 の児童 ・生徒 の喫煙率は どの くらいだ と思い ますか」 と予想 して もらった ところ,高校 で は男子生徒 の80‑90%,女子生徒の20‑30%が輿煙 していると予想 した学校が多か った。中学校で払 男女 とも0%と予想す る学校が最 も多か ったが,回答者 の約10%位ずつが10%代か ら男子は70%位,女子は20% 位 までを予想 してば らつ きが大 きか った。男子の輿煙率を高 く予想す る学校では,女子 の喫煙率について も 高 く予想す る頗 向があ った (2検定,p<0.01,以下検定 方法は同じ)O ま た 「あなたの学校の先生方の生 徒の喫煙問題に対す る関心 は どの程度だ と思い ます

か」 と尋ねた ところ,喫煙問題に関す る先生方 の関 心 は, 図2の よ うに 「極 めて高割合高い」を含

めて高校 では33 (50%),中学校では88校 (49%), N St6ii 小学校 では82 (18%)の学 校が関心を寄せていた 。

中 学 校 高校や中学校の教師に比べ ると,小学校 の教員の閑 N‑181 心は低か った。 また同様に喫煙問題が 「ある」 と回 小 学 校 答 した学校 の方が 「ない」 と回答 した学校 に比べ て N=452

先生方 の関心は有意に高か った (P<0.01)。 2 喫煙間者 に対す る教具の関心 2)児童 ・生徒 の奥煙の実感調査

5に示 した よ うに,実施計画 中の もの も含めて児童 ・生徒 の喫煙に関す る実態調査を行 った ことがあ る か ど うか尋ねた結果 は,「行 った ことがある」学校は高校 では32(49%),中学校 では75(41%),小学校 では60校 (13%)であ った。 また実施 した時期について 「行 った ことが あ る」 と回答 した学校について尋ね た ところ,「3年以内」(即ち1982年以降) に行 った と回答 した学校が最 も多 く,小 ・中 ・高校 とも70‑80%

で,次いで 「4‑5年前」が10%代 で,それ以前は5%以下 と,最近調べている学校がほ とんどであ った。

5 喫煙 に関す る実態調査の有無

3)学校 におけ る禁煙我青の必要性についての教員全体での話 し合いの有無

禁煙教育の必要性について,最近教 員全体で話 し合 われた ことがあ りますか」 とい う問い に 対 し て,

「あ る」 と回答 したのは,高校30校 (46%),中学校70 (39%),小学校69校 (15%)であ った。話 し合 い の時期 は 「3年以内」 (即ち1982年以降)が小 ・中 ・高校 とも70%代 と多か ったが,中学校 では 「4‑ 5 」12 (17%),「6年以上 前lo授 (14%)と,高校,小学校がそれぞれ数% であ るのに比べ て以前か ら 話 し合 いが行われ ているよ うであ り,問題 の多 きを示 している。

(6)

(4)禁煙教育の必要性 とその理 由,必要 でない理 由

禁煙教育は必要だ と思い ますか」 の問いに対 しては,図3に示 した よ うに,「是非 とも必要 である「余 (単位 :%)

7B等 学 校 N = 6 6

中学 校 N‑181

小学 N=452

裕があれはや ったほ うがいい」を合わせ ると,高枚 0 20 40 60 80 100 では58 (88%),中学校では127 (70%,小学 ロぜひ必要である 校では231 (51%)であ った (「必要」群)。 また 因やった方がいい 「自分の学校 には必要な「全校的な ものは必要な [自校には必要ない

全校的には不必要 い」 とい う学校 は,高校 では3 (5%),中 学 校 その他一NA含む では49 (27%).小学校 では210 (46%)あ った

(必要ない」群)

「必要」群 に禁煙教育の必要な理 由を尋ねた とこ 3 的な禁要性

,「健康上 の有害性を教 え る必要 があるので」が 高校36 (63%),中学校107 (84%),小学校173 (74%)とどの学校種 で も最 も多 く挙 げ られてお り, 次 に高校では 「生徒 の喫煙経敦率が高いから11校 (19%), 中学校 ・小学校 では 「喫煙は非行 の前兆であ るか ら」が中学校69枚 (55%),小学校41 (18%),子供には有害だか ら」 は小学校 のみの選択肢 である 110 (48%)に挙 げ られていた。 また禁煙教育は 「必要 ない」群にその理 由を尋ねた ところ,「日常的な 注意 で十分」が中学校38 (78%),小学校97 (46%),生徒 の喫煙がない」 が中学校 は20 (41%),小 学校は136 (65%)で多 く,その他 は 「家庭 の しつけに まかせ る喫煙その ものが さほ ど重要 な問題で ない」な どがあげ られた。高校で も同様 の結果であ った。

(5)小 ・中 ・高校 の禁煙教育の現状 1)全般的な実施状況

禁煙教育の実施形態は,表6(複数 回答で割合は学校数に対す るものであ る) に示 した よ うに,教 員 全 体 で話 し合い継続的 ・計画的に実施 してい る」学校は,高校 で12 (18.2%),中学校 で 11校 (6.1%),小 学校では1 (0.2%)であ った。高校で最 も多か った のは 「学級や学科 の中で実施 した先生 を知 ってい る」

で24校 (36.4%)だ ったが,中学校や小学校では 「特に禁煙教育 として実施 していない」で,それぞれ78

(43.1%),296校 (65.5%)であ った。 しか し,継杭的ではな くとも何 らかの形 で喫煙 の指導 をしていた学 (学級や学科の中で‑」+必要 に応 じて臨時に‑」)は,高校 の39校 (59%)とまではいかな くて も, 中学校100校 (55%),小学校156校 (34%)にみ られた。

6 禁煙教育 の実施形態 (複数 回答,%は学校数 に対 して)

2)禁煙教育を 「継続的 ・計画的に実施 してい る」 と回答 した学校 の実施状況 (二次調査 の結果) 高校 の12校 の中,禁煙教育を年間計画に頼 り入れ てい るのは5校 であ り,1校 は年間2時間,4校 は年 間 1時間であ った。 また9校 で ビデオ ・映画等 の視聴覚教材を利用 していた。 この中,全校生徒を対象に体育 館で行 ったのは5校 であった。 この よ うな形態は 「必要 に応 じて臨時に行 った」高校12 (18.2%)の中に

も多い と考 えられ る。

中学校 の11校 の中,禁煙教育が年 間計画に入 っていると答えた学校は6校 あった が,保健指導」や 「

(7)

青森県の学校における禁煙教育の現状♪課題 39 徒指導」の年間計画 と内訳はさまざまであった。また年間何時間実施す るとい うような計画は酸味になって いる学校がほ とんどであった。視聴覚教材は6校で使用 されていた。行われた時間は保健体育の時間が多 く なっていた。

小学校では第2段階で7校について調査 したが,年間計画に組み込 まれているのは1校。学校の年間計画 ではな く,保健室の年間計画 とい う学校が1校,他の5校では 「学級指導 の時間」に行われていた。

禁煙教育が よく行われていると考えられた学校の内容について,表 7に示 した。

(6)希望す る禁煙教育の開始時期 と担 当者,実施時問 と形式

禁煙教育の開始時期は どの学校種で も 「小学校から」を最 も多 く望んでお り,特に 「小学校4‑ 6年」 と い うのが最 も多 く50‑70%であった。「小学校1‑3年」 と合わせて高校では44校 (67%),中学校では155 (86%),小学校では363 (80%)が 「小学校から」の開始を希望 していた.次は 「中学1年」で高校で

7 禁煙教育実施校の主な実施内容 A高校 (県立普通共学校)

・年間2時間 (LHRの時間を利用)1982年頃か ら実施。

1時間 :映写会 (30分程)を全校生徒対象に体育館で行 う。映写後に感想文を書 く。

1時間 :喫煙実態のアンケー ト集計結果を クラスごとに話 し合 う。

B高校 (県立普通女子校)

年間1時間 (LHRの時間を利用)1980年頃か ら実施。養護教諭の行 う薬物教育の中に入 るがタバコ が主である。

1年 :スライ ドと話を交える。成分 と具体的な害について。

2年 :資料配布 と講話。

3年 :「よい子を産むために」の時間の中で若干頼 り上げる。

A中学校 (郡部,全校生徒数 177名)

1985年頃か ら実施。1987年度か ら保健指導 の年間計画の中に禁煙教育 と性教育が並行 した形で組み込 まれている。

間 :年間1時間 (主に保健体育の時間使用)。各学年 ごと。

材 :ビデオ使用 (ア‑ニー出版,「タバコの害」,20分程度の もの)

実施者 :養護教論 (ただし計画では,保健体育の教師が行 うことになっている)0 B中学校 (郡部,全校生徒数 251名)

1977年以前か ら実施。毎 日のように吸い穀が発見 され るため,ほ とんど毎 日指導。保健的発想か らの 指導。

間 :保健体育の時間 (保体の教師),道徳 の時間 (学級担任)

材 :パンフレット。実際アンケー トを行 ってそれを使用す ることもあるO

その他 :文化祭で コーナーを設け ビデオを上映 (1986年度).pTAや地区別墾談会の際に父母に話す。

A小学校 (郡部)

1986年度か ら全校児童を対象 として実施。学級指導,全校集会を利用。 ニコチンやタールの吸収,輿 煙開始年令 と死亡の関係,肺の汚れ,心筋梗塞等,喫煙の有害性について指導。

教材 :紙芝居,掛 図 B小学校 (郡部)

19終年か ら実施.年間計画には組み込 まれていない。1988年度は児童保健委員会の研究発表 として実 施 (父母 も参観)O父親対象のアンケ‑ トの発表,児童が タバ コについて疑問 としていることを「Q&

A」形式にして発表。

教材 :ビデオ ア一二出版 「タバ コの害」

(9タバ コをつけておいた水に イ トミミズを入れた ら3‑5分で死亡。

(診タバ コの煙を ガーゼに吹 き付け,茶色につ くタールを見えるようにした.

(8)

16 (24%),中学校では21 (12%),小学校では73 (16%)が希望 し, ここまでで90‑97%を占め, 学校側が早期からの禁煙教育の開始を望んでい ることがわかった。

希望す る担 当者は,小 ・中 ・高校 とも 「学級担任」が最 も多 く,高校では19 (29%),中学校では64校 (35%),小学校では249 (55%)が希望 していた。第2位は高校では 「保健体育の教師」,中学校,小学校 では 「全職員」で,中学校では52 (29%),小学校では116 (26%)であった。次いで 「養護教諭」, 徒指導の教師」等で,高校,中学校では 「学外からの特別講師」 とい う希望 も6 (9%),11校 (6%)

と,それ らと並 んで多かった。

実施額域,使用教材については小学校のみに質問 (複数回答) した結果であ るが,実施領域 としては 「 健指導」(特活) と答えた学校が246校 (54%),教科 (保健学習)」が89 (20%),その他の 「特別活動」

98 (22%)だ った。使用教材 としては,視聴覚教材」389 (86%)と答えた学校が最 も多 く,次いで

実験学習」197 (44%),資料, プ リン ト」の125 (28%)であった。

(7)禁煙教育を実施 しに くい理 由と推進,打開策,意見 1)禁煙教育 を実施 しに くい理 由

高校の例を理 由の多い順に表8に示 した。高校では① 「必要性は感 じるが,指導が難 しいから」31 (47

%),② 「必要性について,校 内やPTAの認識が統一 されていないから」29 (44%),③ 「時間的余裕が ないから」16 (24%)に対 し,中学校では① 「指導資料や教材が少ないから」60 (33%),(多 「指導が 難 しいか ら」57 (32%),③ 「校内やPTAの認識が不統一」54 (30%),小学校では(∋ 「指導資料や教 材が少ないから」232 (51%),② 「校 内やPTAの認識が不統一」158 (35%),③ 「時間的余裕がない から」106 (24%)であった。校種間での切実 さの度合に よる差が示 されてい る。「その他」には 「教師, 父母 も含めて大人が喫煙 してい る」などが挙げられていた。

8 禁煙教育 の実施 しに くい理 由 (複数 回答 :( )内%,%はNに対 して)

時間的余裕がないか ら l11 56(222 4.3)r51(2338.2) 1 60 hLuhLu 32 Fnq5Fnq

18(9.9)

Fnq

8

22 hLu 3 0 1 禁煙教育の概念が よくわからない l 2(3.0)l 24(13.3)I79(17.5)

12(18.2)l 26(14.4)l45(10.0)

表 9にあるよ うに,回答者が喫煙者か非喫煙者かで,理 由の中の 「指導がむずかしいから」 と 「指導資料 や教材が少ないから」の間に有意差 (p<0.05)があ り, 喫煙者群では 「指導が難 しいから」, 非喫煙者群 では 「指導資料や教材が少ないか ら」を挙げるものが多か った。非喫煙者群で最 も多い理 由は 「校内やPT Aの認識が不統一」であ り,調整の難 しさを示 している。 この傾 向は中学校,小学校で も同様であった。

2)禁煙教育の推進,打開策,意見

ア. 「生徒が喫煙習慣に陥 らない ようにす るため学校でなされ るべ きこと」については,高校では 「学校 特おけ る禁煙教育の充実をはかる」50 (76%),家庭 の協力を得る」42 (64%)であったが,中学校, 小学校では 「家庭 の協力を得 る」はそれぞれ131 (72%),319 (71%),学校における禁煙教育の充実」

はそれぞれ120 (66%),281 (62%)であった。中学校,小学校では第3位に 「地域の人 々の協力を得 る」が挙げ られているが,高校では 「喫煙者の発見に努め,指導 ・罰則を強化す る」であった。 また 「教師 が まず学校での喫煙をやめ る」は第4位であったが, どの校種で も喫煙者群 と非喫煙者群間に有意差 (P<

(9)

青森県の学校における禁煙教育の現状と課題

9 禁煙教育 の実施 しに くい理 由 (喫煙者,非喫煙音別) (高校の例,複数 回答 :( )内%,%はNに対 して)

41

※ :カイ二乗検定 P<0.05,非喫煙者群 と喫煙者群の有意差 0.05)がみ られ,教師側の問題を示 している。

ィ. 「禁煙教育の推進 のために有効 と思 うこと」は表10に示 した ように,小 ・中 ・高校 とも同じ順位 で,

保護者の認識を深め るよう啓蒙する」が最 も多 く高校45 (68%),中学校122 (67%),小学校227 (50%)で,ついで 「具体的指導資料や補助教材を作 る文部省,教育委員会で明確な位置付けを す る」

「教職 員の理解を深める研修会を開 く」 の順で挙げ られていた。「その他」に多 く挙 げ られていた の は,環 境面での対策である 「タバ コの広告の中止」や 「自動販売機の撤去」などであった。対策について都市,秤 部別の差はなかった。

10 禁煙教育 の推進において必要なこと (複数 回答,%はNに対 して)

ウ.禁煙教育についての意見‑・自由記述 で何 らかの意見が述べ られていたのは高校40 (60%),中学 98 (54%),小学校172 (38%)であった。それ らは禁煙教育の推進に積極的であるもの と消極的であ るものに大別 された.積極派 の意見 としては 「小学校か らの系統的な教育が必要で あ る家庭 ・社会 との 連携,そのための働 きかけが必要 である非行防止の見地か らでな く,健康教育の一環 として行 うべ きだ」

人体‑の有害性を教 える」等があ り,消極派 の意見には 「家庭での朕の問題で学校 で実施 しな くて もよい」

の他,指導す る大人の側が喫煙 しているのでは無理「未成年者に タバ コを売 らない社会 の体制が整わない 限 り無理「どの程度 の効果があるものか疑問」などの諦め もあった。

(1)禁煙教育を進 め る学校の体制について

1)生徒 の喫煙問題 (図1,2,表4参照)‑‑‑本研究で,生徒の喫煙問題 は小学校 (21%)ではさすがに

表 1 1 教科 「 体育」及び 「 保健体育」の学習指導要領における喫煙の書の取 L )扱いの変遷 昭和 3 3 年度改定 1 昭和 42, 43, 45 年 度改定 l 昭和 5 2, 53 年 度改定 l 平成 元年 度改定 小 学 校 ( 2 ) 健康な生活の基礎 と組み立てについて理解させ るり)飲食物の選び方 と健康障害について知ること酒, タバ コ, コーヒ ーなどと健康 学 校 ( 2 ) 精神衛生( 刀 精神の健康 精神の健康は,身体の健康,家庭 生活,社会生活 と密接な関係がある ことや
表 1 2 禁煙教育をめ ぐる日本および世界の状況 日 本 の 動 き † 世 界 の 動 き ◆英国王立内科医学会報告書 「喫煙 と 健康」 ◆第 1 回 「喫煙 と健康世界会議」 (ニューヨーク) ( 以後 4 年に 1 かれ禁煙オ リンピックと呼ばれ 開回る ◆厚生省通達 「児童の喫煙防止に関す る啓発指導の強化 について」(児童局長 ,1 月 25 日) , 「喫煙の健康に及ぼ す害について」( 公衆衛生局長 ,2 月 6 日) ◆紙巻 きたば この包装に 「吸いす ぎに注意 しましょう」 と注意表

参照

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