<はしがき>
血液細胞 の分化は組織特異的転写 因子 によ り制御 されている。これ らの転写 因子 は 他 の転写 因子 や転写共役 因子 との相 互作用 を通 じて分化 に必要な遺伝子 の発現調節 を行なって いる
。 Etsフ ァミリー転写 因子 の うちのい くつかのものは血球分化 にとっ て必須な ばか りでな く、白血病の発症 にも関わ る ことが知 られている。一方 、動物 の 発生にお いて重要な転写 因子であるホ メオ ドメイ ン蛋 白質 も血液細胞 の分化や 白血 病の発症 に関与することが示されて いる。そ こで本研究 においては、両転写 因子群 に 属す る蛋 白質間の相互作用を検索 し、そ の血球分化 における重要性を検討す る ことを
目的とした。
<研究組織>
研究代表者 : 山田俊幸 ( 弘前大学 医学部助教授)
研究分担者 : 根岸文子 ( 財団法 人佐 々木研究所 細胞遺伝部研究員)
<交付決定額>
( 金額単位 :円) 直接経 費 間接経費
合 計 平成
16年度
1,700,000 0 1,700,000
平成
17年度
1,400,000 01,400,000
総 計
3,100,000<研究発表>
(1
)学会誌等
1・YamadaT,SuzukiM,SatohH,Kihara‑NegishiF,NakanoH andOikawaT・Effectsof PU・1‑induced mousecalcium‑Calmodulin‑dependentkinaseI‑like kinase (CKLiK)on apoptosisofmurineerythroleukemiacells・Exp・CellRes・294:39150,2(X叫・
2・Kihara‑NegishiF,SuzukiM,Yam adaT,SakuraiTandOikawaT・Impairedrepressor activltyand biologlCalfunctionsorPU・1inMEL cellsinduced bymutationsinthe acetylation motifswithin theErS domain・Biochem・Biophys・Res・Commun・335:
477‑484,200 5.
3.TeramotoS,Kihara‑NegishiF,SakuraiT,Yam adaT,HashimotoITan aokiT,Tam uraS, KohnoSandOikawaT・Classificationofneuraldifferentiation‑associatedgenesinP19 embryonalcarcinomacellsbytheirexpressionpatternsinducedaftercellaggregation a
nd/orretinoicacidtreatm9nt・OncogeneRep・14:1231‑1238,2005・
4・NanashimaN,AsanoJ,HayakariM,NakamuraT,NakanoH,YamadaT,ShimizuT,Akita M,Fan Y andTsuchidaS.NuclearlocalizationofSTAT5A mdifiedwith0‑linkedN‑
acetylglucosan ineandearlyinvolutioninthemam maryglandofHirosakiHairlessRat.J. Bio
l
.Chem.280:43010‑43016,2(氾5.5・SuzukiM,Yan adaT,Kihara‑NegishiF,Sakurai T,HaraE,TenenDG,IiozumiN and OikawaT・Site‑SpecificmethylationbyacomplexofPU・landDnmt3a/b.Oncogene,in preSS・
(2
) 口頭発表
(国際学会)
1・Yam ada T,Nakazawa Y,Manabe N,M∝hizukiM,Oikawa T:C
o
oparative and antagonistic interactionsbetween ETS and Grl‑1transcnpt10n factorfam ilies.JBS InternationalSym Poslumin2005,NewFrontierofTranscnptlOnResearch,Kusatsu,Japan,2005.
2lYamadaT,SuzukiM,SatohH,Kihara‑NegishiF,NakanoH,Sakurai T,OikawaTand TsuchidaS・EffectsofPU・I‑inducedmousecalcium‑caim∝lulin‑dependentkinaseI‑like kinase(CKLiK)onapoptosisofmurineerythroleukemiacells.9thMeetingoftheHirosaki IntemationalForumofMedicalScience.Hirosaki,Japan,2005.
( 国内学会)
1.山田盛 事、根岸 ( 木原)文子、棲井拓也、及川恒之
:Etsファミリー転写 因子 と ホメオボ ックス転写 因子の機能的相互作用. 第
63回 日本癌学会総会、 福岡、
2004.2.根岸 (
木原)文子、坦旦塵 幸、樫井拓也、及川恒之 :
Etsファミリ
ーFli‑1と白血 病関連転写因子
AMLlとの相互作用の解析. 第
63回 日本痛学会総会、 福岡、
2004.3.
鈴木光浩、山田俊幸 、根岸 ( 木原)文子、及川恒之 :
Etsファミリー転写因子
PU.1と
DNMTsの相互作用 によるエ ビジェネティツクな転写制御 と
DNAメチル化制 御. 第
63回 日本癌学会総会、福岡、2
∝叫.4.
中滞洋介、鈴木光浩、山田俊幸、根岸 ( 木原)文子 、橋本嘉幸、望 月正隆、及川 恒之 :
Etsファミリー転写 因子 と血液細胞特異的転写 因子
Gri‑1
,Gri‑1Bとの相互 作用. 第
63回 日本療学会総会、福岡、2
∝叫.5.
棲井拓也、近藤信夫、新井仁明、浜 田淳一、山田俊幸、山本三毅夫、及川恒之 :
Etsファミリー転写 因子
Ri‑1の乳がん細胞 のアポ トー シスにお よぼす影響. 第 63回 日本癌学会総会、福岡、2
α叫.6.
中揮洋介、鈴木光浩、由 坦俊幸、根岸文子、及川恒之、望月正隆 :血球分化 にお ける転写因子
Ets‑1とGr
i‑1の相互作用 の解析. 第
125回 日本薬学会年会、 東京、
2(X)5.
7.
山田俊幸、根岸 ( 木原)文子、横井拓也、及川恒之、土 田成紀 :血球分化 に重要
な
Etsファミリー転写因子 とホメオ ドメイ ン蛋 白質の相互作用.第
71回 日本生化
学会東北支部例会、仙台、 2
(泊5.
8.
山田俊幸、木原 ( 根岸)文子、樫井拓也、及川恒之 :
Etsファミリー転写因子 と ホメオ ドメイン蛋 白質の物理的、 機能的相互作用.第
64回 日本癌学会総会、 札幌、
2(X)5.
9.
木原 ( 根岸)文子、山田俊幸、鈴木光浩、横井拓也、及川恒之 :白血病関連転写 因子
PU.1のアセチル化 ・リン酸化 による修飾制御 とその生物学的機能.第
64回
日本癌学会総会、札幌、 2
005.
10.
鈴木光浩、木原 ( 根岸)文子、山田俊幸、及川恒之 :
Etsフ ァミリー転写因子
PU.1とDmn t
3Sとの相互作用 によるp1
6INK4a遺伝子 の転写制御 とDNAメチル化制御.
第
64回 日本癌学会総会、札幌、 2
(氾5.
ll.
横井拓也、近藤信夫、新井仁明、浜 田淳一、山田俊幸、山本三毅夫、及川恒之 :
Etsファミリー転写因子 の乳がん細胞 の悪性度 におよぼす影響.第
64回 日本癌学 会総会、札幌、2
005.12.
五十嵐麻希、吉田緑、山用俊幸、棲井拓也、植松史行、高橋正一、前川昭彦、及 川恒之、中江大 :ラッ ト肺腺がんの発生過程 におけるβ‑カテニ ンの変化 に関す る 検索.第
64回 日本癌学会総会、札幌、2
005.13.
七島直樹、浅野純平、清水武史、秋 田美李、箔洋、叫田俊幸、土 田成紀 :
Hirosaki hairlessrat(HHR)の乳腺 における核 内受容体転写共役因子 (PBP、
SRC)の発現変化.第
64回 日本癌学会総会、札幌、 2
005.
14.
浅野純平、七島直樹、清水武史、秋 田美李、箔洋、出周俊幸、土 田成紀 :オエル オキシソ‑ム増殖剤 によるラッ ト肝二頭酵素
(BE)誘導の個体差 における
steroid receptorcoactivator(SRC)3の関与.第
64回 日本癌学会総会、札幌、
2005.15.
七島直樹、浅野純平、秋 田美李、清水武史、箔洋、山田俊幸、土田成紀 :
HHRの乳腺における0‑
GIcNAc修飾による
STAT5Aの活性化.第78回 日本生化学会大
会、神戸、 2
(氾5.
16.
浅野純平、 中野創、早狩誠、七島直樹、清水武史、箔洋、秋 田美李、出田俊幸、
土 田成紀 :
sRC3はグルタチオン トランスフェラーゼ遺伝子多型ラッ トにおける ク ロフイブ レー トによる肝ベロキシソ‑ム二頭酵素誘導 の差異に係わる.第
78回 日本生化学会大会、神戸、
2005.17.
秋 田美李、七島直樹、浅野純平、清水武史、箔洋、山田俊幸、中野創、土 田成紀 : 弘前へアレス ラッ トにおける皮毛の減少 と表面構造の変化.第
78回 日本生化学 会大会、神戸 、
2005.(3)
出版物
1.OikawaT,YamadaT,Kihara‑NegishirandSakuraiT.EtsfamilyoftranscnptlOnfactors innom alhematopoiesisandinleukemogenesis.MolecularGeneticsorCancer(Review) Ed・byD・Sinnet,ResearchSignpost,ppl19‑148,2005・
<研究 目的>
すべての血液細胞は造血幹細胞 に由来するが、その分化は組織特異的転写因子 によ る細胞系列特異遺伝子 の発現調節によ り制御されている。これ らの転写 因子は他の転 写 因子や転写共役因子 との相互作用 を通 じて標的遺伝子 の発現調節 を行なっている
ものと考えられている。
E
t sファミリー転写因子群は
Etsドメイ ンを
DNA結合 ドメインとして持つ転写因子のグループであるが、そのうちのい くつかのものは血球分化 にとって重要な役割 を果 たすばか りでな く、その発現異常や染色体転座によるキメラ蛋 白質の形成は白血病の 発症にも関わることが知 られている。
我々はこれまでに血球分化 における
Etsファミリー転写因子の役割 について解析 を 進め、その一員である
PU.1が赤血球系細胞の分化 を骨髄単球系細胞へ とスイ ッチさ せることのできる分化制御のマスター因子であること、また一方で
PU.1は赤血球系 細胞の分化 を抑制することで赤 白血病発症に寄与することを示 してきた。さらに
PU.1はその機能を発現する上で転写の共役因子である
CBPや
HDAC、また メチル化
DNAに結合することが知 られている
MeCPZと協調作用す ることを兄い出 してきた。また
pU.1以外の
Et sファミリー転写因子 についても
、TELが巨核球の分化 を抑制す ること
を兄い出し報告 してきた。
一方、動物の発生や形態形成 において重要な働 きをす るホメオ ドメイ ン蛋 白質はホ メオ ドメイ ンを DNA 結合 ドメイ ンとして持つ転写因子であるが、血液細胞の分化 に も深 く関与 していることが示されている
。これ らの蛋 白質には
Hox蛋 白質群 を始めと して、これ らと相互作用す る
Pbxlや
Meislなどが含 まれている。これ までに
Hox
AIOと
HoxC4がそれぞれ骨髄球系細胞の分化や リンパ球系細胞の活性化 に関わることや、
Ho
x
A9や
HoxC13あるいは
Pbxlが染色体転座を通 じて白血病の発症 に関わることな どが知 られている。
このように両ファミリーに属す る転写 因子は血球分化 にとって重要であるが、現在 までにその相互作用については知 られていない。そ こで本研究においては、両転写因 子群に属する蛋 白質間の相互作用 を検索 し、その血球分化 における重要性 を検討す る
ことを目的 とした。
<研究結果 >
(1)Ets
フ ァミリー転写 因子 とホ メオ ドメイ ン蛋 白質 の 機能的相互作用
まず検索の対象 となる
Et Sファミリー転写因子およびホメオ ドメイ ン蛋 白質を決定 するため、
RT‑PCRによ り種々のマウス血液細胞株 (B細胞、T細胞、骨髄球系細胞、赤血球系細胞 を含む)におけるこれ ら遺伝子の発現パター ンを検索 した。その結果を 踏まえて
Etsファミリー転写因子 としては
EtS‑1,Ets‑2,PU.1,Spi‑B,Ri‑1,Elf‑1,Erg‑3,TEL
を、ホメオ ドメイン蛋白質 としては
Hox
A10,HoxC13,PbxIB,Meislを候補に挙げ 以下の解析を行 った。
Ets
結合配列 を持つレポーターを用いたルシフェラーゼ法によ りそれぞれの
Etsフ ァミリー転写 因子の働きに対す るホメオ ドメイ ン蛋 白質の影響 を検索 したところ、
Ho
x
AIOと
HoxC13は
pU.1と
spi‑Bに対 しては協調的に、
Elト1,Erg‑3,Ets‑2に対 して は括抗的 に働 いたが、その他に対 してはいずれの作用 も示さなかった。また
pbxIBはすべての
Etsファミリー転写因子に対 していかなる作用 も示さず、
Meislは
Ets‑1と
Ets‑2に対 しては括抗作用を示 したがその他に対 してはいずれの作用 も示さなかっ た。
これ らのことか ら、血球分化に関与す る
Etsファミリー転写因子 とホメオ ドメイン 蛋白質の、少な くともいくつかのものの間には機能的な相互作用が存在することが明
らかとなった。
(2
)Etsファ
ミ リー
転写
因子 と ホ
メオ
ドメイ ン 蛋 白
質の
物理 的
相
互作 用
次にこれ らの組み合わせの中か ら、リンパ球系、骨髄球系両細胞系列の分化 に関与 する
Ets転写因子である
PU.1と
Elr‑1 、染色体転座 を通 じて白血病の発症に関与 して いるホメオ ドメイン蛋白質である
HoxC13に注 目して これ らの物理的相互作用を検索 した。
PU.1
と
HoxC13あるいは
Elト1と
HoxC13を
293T細胞 に共発現 させ免疫沈降法によ
り解析 した ところ、これ らはそれぞれ細胞 中で結合する ことが示された。また これ ら
蛋 白質の欠失変異体を用いた
GSTpull‑down法によ り、
HoxC13はホメオ ドメイ ンの
中間よ りC末端側の部分を介 して
PU.1、El
ト1と結合すること、PU.
1は
Etsドメイ ンを介 して
HoxC13と結合す ることが明 らかになった。さらにpU.1、El
ト1との結合領 域 を欠いた変異
HoxC13は これ ら蛋 白質 との機能的な相互作用 を示 さないことか ら、
これ ら蛋 白質同士の結合はそれぞれの組み合わせ による協調作用、および括抗作用 に 必要であると考え られた。
次にマウス赤白血病
(MEL)細胞 をDMSOによ り赤血球方向へ分化誘導 した場合 のそれぞれの遺伝子発現を F
rPCR法によ り検索 した ところ、PU.1と
HoxC13の遺伝 子発現はともに低下するが、
Elト1の遺伝子発現は上昇することが示 された。
これ らのことか ら、
PU.1、
Elf‑1とHoxC1
3の間には物理的な相互作用が存在 し、そ の相互作用が血液細胞の分化 の制御 になん らかの関わ りをもつものと推察 された。
<考 察>
今回の研究か ら血液細胞で発現 している
Et sファミリー転写因子 とホメオ ドメイ ン 蛋 白質のうちの少な くともいくつかのものは物理的、機能的に相互作用す ることが明 らかになった。ルシフェラーゼ法 による検索 において、HoxC1
3とHoxAIOは
8種類 の
Et sファミリー転写因子 のうち
pU.1と
Spi‑Bに対 しては協調作用 を、El
f‑1,E甘 3, Ets‑2に対 しては括抗作用 を示 した。 しか しなが らPbxIBと
Meislは前者がEt 5
‑1と
Ets‑2に対 して括抗作用 を示 しただけで、そ の他 の
Etsファミリー転写 因子 に対 しては
いずれの作用 も示 さなかった。HoxC1
3とHox
AIOはその遺伝子が クラスター を形成している
Hox蛋白質群 に属 しその構造 も類似 しているが、
pbxlと
Meislは
Hox蛋 白 質群に属 さずその構造 も
Hox蛋 白質 とは異なっている
。このような ことが、Et
sファ
ミリー転写因子に対する作用の違 いの原 因のひとつと考え られた。
HoxC13とHo
x
AIOは、p0.
1と
spi‑Bに対 してはともに協調的な作用 を示 した。 こ の理 由として
PU.1と
Spi‑Bの構造がよ く似ていること、また両者は
B細胞の分化 に関わるという機能的類似性 を持つ ことが あげ られ る。 しか しなが ら一方、Et
s‑1と
Ets‑2もその構造がよく似ているにもかかわ らず、
HoxC13とHox
A10は前者 に対 してはいかなる作用 も示 さず後者 に対 してのみ括抗作用 を示 した。これ らの ことか ら、構 造 の類似性よ りも機能の類似性 によ り相互作用 の質が規定され る可能性が推察 され た。
本研究のルシフェラーゼ法に用 いた レポーターは
Ets結合配列 を持つがホメオ ドメ
イ ン蛋白質の結合配列は持たないものであった。そ こで今回観察 された協調作用、括
抗作用はホメオ ドメイン蛋 白質が
Etsファミリー転写因子 に対 して転写共役因子 とし て働いた結果であると思われる
。 HoxC13と
HoxAIOは
Etsファミリー転写因子のう ちのあるものには協調作用を、またあるものには括抗作用を示 したので、それ 自体が コアクチベーターまたはコリプレッサーの活性 を持つ とは考 えにくい。免疫沈降法、
GSTpul1‑down
法によ り少な くとも
HoxC13と
HoxAIOは
pU.1 、
Elト1と直接結合す る ことか示された ことか ら
、DNAに結合 した
Et sファミリー転写因子 にホメオ ドメイ ン 蛋白質が結合 し、さらに
CBPな どのコアクチベーターや
HDACなどのコリプレッサ ーが呼び込 まれ るものと考 え られた。また
pU.1、
Elト1との結合領域を欠いた変異
HoxC13はこれ ら蛋白質 との協調作用や括抗作用 を示さなかった ことか ら、コアクチ ベーターやコリプレッサーは この場合には
HoxC13に結合するものと思われた。
MEL