ヒックスの物価指数理論(その2)
その他のタイトル Hicksian Theory on the Index Number of Prices (2)
著者 高木 秀玄
雑誌名 關西大學經済論集
巻 8
号 5
ページ 307‑335
発行年 1959‑01‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/15617
307
( 1 )
既に本誌第六巻第五号において︑われわれは消費者余剰の理論を基礎に置いて︑
そこでは消費者物価指数の理論を展開した︒その際︑彼を﹁消費者行動の分析と指数理論とを結合する﹂ものとし て︑スルーツキイ・ジョンソン・アレン・シュルツ・ホテリング・サミュエルソンの系列にあるものとし︑上の如
く消費者行動の理論を基礎とする意味で︑
あるものとしたのである︒
本稿では彼︑
o ry , O xf or d a t t he C la re nd on Pr e s s,
pp
V i i
+ 196)
に年
初ー
)/
匡
g開
さゎ
いヤ
↑坦
坪数
理込
躙e︑それへ対するR.L
・マ
リス
の
( 2 )
ヒックス批判を取扱う︒いわば︑上述の拙稿﹃ヒックスの物価指数理論﹄をより精密化させるために執筆されたも
ので
ある
︒
二
ヒックスの﹃価値と資本﹄の第三章を中心とする﹃需要理論の改訂﹄
(A
Re vision
o f J ;) e m an d T he ,
ヒッ
クス
の物
価指
数理
論︵
高木
︶
ヒ ッ ク ス の
アレン・ステーレー・フリッシュ・ワルト・コニュースと共通の立場に
なn n
J
﹄r
物価指数理論︵その二︶
ヒックスの物価指数理論︑勿論 木
秀
玄
308
費の比例的変化は
7] k( dp
‑q ) (P
・q )
であ
り︑
ヒッ
クス
の物
価指
数理
論︵
高木
︶ Th
eo re m)
いま
︑
便 マ
ヒックスは彼の新しい﹃需要理論の改訂﹄ー以下﹃改訂﹄とするーの第十九章に﹁指数定理﹂
(T he In de x‑ Nu mb er
において︑前章で展開した基本方程式の実際の適用可能性を立証する定理を提唱する︒なお︑彼はある
期間を通じて消費者の趣味︑嗜好あるいは欲求が変化しなかった場合をテストする場合を問題とする︒しかし︑
リス
によ
れ︑
本﹄
︑
以下のヒックス理論は一応︑価値はあるが全面的に賛意を表し得ないものであるが︑彼の﹃価値と資
( 4 )
ここでの﹃改訂﹄に展開された輝しい需要理論を否定するものではないという︒
ヒックスによれば︑同じ資料の適用されたラス︒ハイレス式と︒ハーシェ式との間の差は次のとおりであるC
Lー
PI
II
+s
I I
︷ ピ
望
Q
ー ビ
E g }
+ ︷ 旦 ︒ さ
t
ー
旦 嚢
︸
ビ
︒ P i
Qi
o
ピ
P ; 1
Q~;'E,P;
°Q
io
ピ
P;
.Q
;.
この式で
dy
Qi
は所得炊果だけの結果における市場における・1番目の商品の消費の基準時点
(O
)と比較時点(1)
との間にみられる数量の変化分を示し︑
d.
Q;
は代替致果だけによる対応的な変化分を示すものである︒
宜上︑消費者の嗜好は確定不変的である︒すなわち︑
d , と
dy
とはある特定の商品︑
の総変化を皆無たらしめるものと想定する︒
ーし~P;1dyQ;/
. l ' P
; i Q
;o
)
ヒッ
クス
は︑
ここでは
・1
番目の商品の消費
この式よりその第一のカッコ間の︵と
P;
od
yQ
;/
l . ' P
; o Q ; o
II
I
は︑所得の弾力性すなわち︑財Xに対する需要の所得弾力性mは︑所得の比例的増加
に対するそれに基
<X
の消費の比例的増加の比率であり︑もし価格が
(P )
から(P│
dp )
に変化すれば︑総所得は
(P .q
)であり︑費用較差は
(d p‑ q)
であり︑従って所得奴果を惹き起す所得の比例的変化は
(d p‑ q/ P・ q)
︑財X
の消
財Xのみに対する所得炊果は9]x合
(d p‑ q)
I
(p
‑q )
となりこれに
.
309
dP x
C財Xの価格変化︶を乗じ︑それをあらゆる市場財についてアグレゲートすると次のような総所得奴果式をうる︒
もし、価格のすべてが同一の方向に変化しているときは(dp•rJq)
諸財の所得弾力性の加重平均であり︑
11
i(
dp
‑p
)
と述べうるが︑ここで一刀は︑その
このような所得弾力性の相対的な大きさが︑観察期間のある部分でたまたま
生ずる相対価格の変化と相関関係でとらえられ︑もし︑それがある程度の大きさであるときのみ上述Iは意味をも
つという︒すなわち﹁Sは二つの無差別点間の運動を表わしており︑したがつて正になる傾向を持つ︒したがつて
指数定理は︑所得奴果Iが正であるかぎりもしくは負であっても代替奴果を圧倒するほど大きくないかぎり無差別
( 5 )
でない点の間においても成立し続ける﹂のである︒さて︑このような商品の種類の多くが考察されるならば上の相
関関係は小さくなる︒けだし価格変化と所得弾力性とはその性質上︑別々のものではないからである︒
基本的定理の第二のカッコ︑すなわちヒックスのSの考察にうつる︒
り︑その大きさは可成りのものである︒その理由は相対価格の変化によって惹き起される代替奴果は必然的にこの
ような価格変化と相関づけられるからである︒故に︑L式は必ずp式を上廻るべきである︒
であれば︑当面の調査対象である消費者グルー︒フの需要の底にある嗜好が変化したと考えねばならない︒そこで︑
ヒックスによると﹁われわれの現在の研究を完了するに先立つて︑その適用に関して一言しておくことが必要であ
る︒指数定理は︑疑いもなく︑現実の数字に適用しうるテストを与えている︒しかしそれを適用する際には︑われ
われはその意味を明確にしておかなければならない︒それは選好仮説のテストなのであって︑それ以上でもなけれ
ヒッ
クス
の物
価指
数理
論︵
高木
︶
I I I
(dP•q)
(dP•'f/q) (P
.q )
通常
︑
もし︑かりにP>L これは代数的符号では︒フラスであ
310
マリスによれば﹁ ばそれ以下でもないのである︒もし︑さし当つて例外を除去するならば︑われわれは次のように言うことができる︒すなわち︑もし消費者の集団が︑時の経過を通じて︑理論上の消費者の集団が行動すると予期されるのとほぽ同様に行動していれば︑彼らはLVPを示さなければならない︒何故ならこの不等式は︑
対して不変の欲望が示す反応の持つ当然の性質に他ならないからである︒もし︑PがLを超過するならばその超過
は統計学的に有意なだけの大きさを持たなければならないが︑そのときには欲望が変化したと推定される︒したが
( 6 )
つて不変の欲望体系に照らして二つの点の間の比較をおこなうことは不可能となるのである﹂という︒このように
してテストされる﹁選好仮説﹂は二重的なものである︒すなわち︑心理学的な選好体系が存在することが仮説とさ
れるのみならず︑この体系の︒ハラメターが︑適当な期間を通じて固定的であるという二重的性格を有するのである︒
観察されるとき︑逆にいうと︑消費者は観察期間を通じてその嗜好に大きな変化がなく︑合理的に消費行動をとつ
ているとは明白に主張しないことが推察される︒しかるに︑嗜好は︑それが事実上大きく変化した場合でも︑L式
は多くの場合にP式に対して正常的な関係‑L>Pーを続ける︑又は別の表現を以つてすると︑嗜好の変化が特殊
の形態をとるときのみ︑P式がL式を超過することが示されるとき︑嗜好は変化するのである︒すなわち︑
スの前提である消費者の嗜好の確定不変が必ずしもマリスでは必要にして不可欠条件ではない︒
単にこの場合のみでなくP式が事実上L式を超過して観察されるのは︑嗜好の変化が現象の原因であるという仮定
が存在することも事実であることを示すのに努力しよう﹂という︒
以下はマリスの上の立場の説明である︒そのため︑彼のとった記号を示しておく︒ マリスのとるのは上の第二の仮説のテストであって︑
ヒック 一応第一の仮説は肯定される︒L式がP式を上廻ることが ヒックスの物価指数理論︵高木︶
変化しつつある環境に
四
pq
• c o v
ー1
c O I O
Qi
急
・ ビw
ー11︒
ピw ー—ーー・Po|I{III これより次のように示される︒ 全ピ故に
w
1 1 0
ぎ
II
︒ R
Q ; .
"IF p .
. p "
go
p I l p
ーQ Q io
qi̲ これより
Q1
⁝⁝
︑ん 昂落 陶寄 滋
ここで
Q i o
は期間0
での
・
1番目の商品の数量である︒以下の分析では
P i l
とP i O
とは供給価格であり︑ある
P i にふくま
れる変化の全体は生産費の変動によって惹き起されるものと想定されるべきである︒
ヒックスの物価指数理論︵高木︶ Q
︒⁝
⁝
7洪碑陶寄蒋
⁝P 1
⁝︑ ん昂 苺宦 寄澪
p o ・
⁝・叫洪念宦寄滋
五
( 1 )
P i
で第2式を乗じ︑総和を求める︒
この際い
: W p ;
=
o
S; 次の第
2式によって︑上述の分割が示される︒ =pdp
dq
( 8 )
I I
︵E
MIふq唸︶̲ミ
であることを忘れてはならない︒しかるとき マリスはヒックスの﹁代替奴果﹂と﹁所得妓果﹂ 第1
式の
COV
は添字Pとqで示される変数の組合のWが加重した共分散を示す︒すなわちPとqとの共分散は
E[︵Pー
PP
)
︵qー Pq )] 11 E( Pq
ー芝ぷー
qP
ユ
' PP P q )
さらに
CO Vp q
の構成項を分析することが可能である︒
に追加して﹁嗜好変化炊果﹂︑すなわち︑嗜好が実際に変化したかどうかという問題をとりあつかう︒ここである
特定の商品の消費量の総変化の分割に︑残差項を導入する︒この残差項は所得と価格を一定不変として観察される
消費の変動量をあらわすものと考える︒
q i 1 1 s , .
+yi+ti+(1ーQo)………;………•………•••………
y i
⁝は﹁平均代替炊果﹂又は所得奴果よりの偏差としてではなV
S;
=d ,Q
;/ Q;
︒よりの偏差でとらえられたも
( 9 )
ので
ある
︒ t i
についても同じである︒
Co
vp
q 1 1 CO Vp
s +
CO Vp
y +
CO Vp
1 ,••………•••…………••'(
3.
1)
=
Va
Rq
(/
3s
p +
l9
yP
+[
iP
)
1 1 SDp(Ysp•SDs,ご、yp•SDy+
Y1p•SD,)
……;…·………·;……(
3.
3)
ヒッ
クス
の物
価指
数理
論︵
高木
︶
ここ
で︑
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
. . .
︷ ん
9‑
六
( 2 )
最後に
なお
︑
ヒックスの物価指数理論︵高木︶ e s
もおよび
e t
を次のように規定する︒ および
SD y
Q︒ ぎ~ー > yと
V t を次のように規定する︒ V
AR p
P o 2
0 l 1 価格比の相対的分散度︒すなわち相対的標準偏差の平方であり相対的偏数の測度
SD p
P︒
0p
11
SD , Qo
0i
第い式は
CO Vp
を代替奴果︑所得奴果および嗜好変化奴果上の価格比のそれぞれの共分散の総和として示すものq
である︒第︐い式は︑これが価格変化の総分散度と順々に上った代替敦果・所得妓果および嗜好変化炊果と価格比の
単純相関分析より求められた三の統計的回帰係数の総和の積となることを示す︒これより︑もし代替妓果が一般に
2 1 3
いつて小であれば︑第・式の年は小となる︒第.式は所与の命題を対応するゼロ次の相関係数と標準偏差の形式へ
3 3
転換する︒なお︑江は変数のW加重標準偏差であり︑すなわちそのW加重分散度の平方根を示すものである︒第
つぎのとおりである︒ つぎにマリスは記号に若干の手を加える︒すなわち︑彼によると﹁ちょっとみると複雑であるが︑実際は簡単な
( 1 0 )
もの﹂である︒すなわち
価格比の相対的標準偏差 式は三式のうちで最も明白である︒
七
314
な公式は 変化とが相関関係でとらえられるときその相関係数が逆弾力性としてあらわされることを意味するにすぎないので
その弾力性の精確 ある︒もし︑函数
f(
x)
が
X O と
X l との間のあらゆるXについて不変的な弾力性をもつとき︑
勿論
︑ も と
1 1 . L . 8 . e i
ぶ こ 向
Qo
Qo
ー•ey11ぎp
. Q o e ,
/ 3 s
p
この最後の記号は︑逆弾力性の形式へ転換された回帰係数をあらわすものであることが推察されうる︒すなわち
e s
はその代替奴果が代表的な大きさである商品の︑商品一般の逆代替弾力性であり︑
きんによって精確に予測されるものである︒すなわち︑
Q;
s
Q;
0
,
~PoQo
• (P;, Q;0)
・ピ
Po Qo e s
11
(M
Po
Q1
ー 日 匂
01)Qjo
ー ビ 送 ︒
︐ 隠
︒
Q °
旦 ︒
この式で商品
tは︑その代替奴果が心によって精確に予測される商品であり︑
Qj
1 1 ,
Qi o
+ d
,Q
i
であ
り︑
d, Qi
は
S;
+
︵
1ー
Q°
)1
や1
p . p
i である商品である︒すなわち
e s jは 商品の価格の一般価格へ対する
( Q O をウエートとする加重平均︶
比率の対応的な比例的な変化分で割った︑代替奴果に帰せしめられる・
1商品の商品一般の︑
P O
をウエートとす
る加重平均消費量へ対する比例的変動である︒
e l
とはこの段階ではまだ明白な経済的意味づけは不可能である︒
I o
g f
1
, '
l o g ̲
︒t ;
E1
1
ー
e1
19
91
̲1
99
9,
1,
l o g
ぷー
I o
g x
0
ヒックスの物価指数理論︵高木︶
た と え ば も は 所 得 妓 果 と 価 格
は次のように規定されることより上のようになる︒e S それ自体の価格比に適用されると
八
れる
︒
ヒックスの物価指数理論︵高木︶ このことは︑所得奴果Iについても同様である︒
九
しか
るに
︑
IとSとで分析は全部終らない︒
( 1 1 )
この式で
fx
1 1 o/
o, /X 1
1 1 /
f である︒もしが任意の函数であるとき︑この式は逆弾力性を示す︒51
上述の新しい記号を使ってマリスは第③式を第②式へ代入し次の二式をうる︒
ヒッ
ク
P o P1
‑
ー
1 1 0 p 2 ( e .
+ e ; y
+ei)
………••…•………
•••(4.
1)
p o
I I 0 p ( Y s p 0 + s+ ry p. 0y +r
‑P .0
‑
︶ Aー
E P o
•...•.•.•
iA9‑
(12) いわゆる指数の限界理論の中心問題であるL式指数とP式指数との間のギャッ︒フは相対的形式で表現される︒
が割られるのである︒ラ式と︒ハ式の両方の計算に必要な情報が適用可能である限り︑ すなわち価格変化の一般的なスケールでの絶対的な大きさでの増加する傾向を除去するために︳
P o
そのもので全体
V P
と 四 が 直 接 に 計 算 さ れ
る︒しかるに︑他の記号であらわされる大きさは︑そのような直接の計算は不可能である︒
が大である事実を示すために炉で乗ぜられる︒なお︑ 既述のヒックスの定理式へ︑数量指数よりも︑物価指数に関係しているという事実についての必要は調整をしな
がらマリスは上式を適用する︒Sであらわされるヒックスの集計的な代替項は.式の
e s
で示され︑さらにその項4
それが絶対値ではなく︑相対的概念であるから
P o
で乗ぜら
と ︑ ヒックスの理論は︑ ここで
4 9 X O T
マリスによって次のように統計的用語で述べられる︒ ーA
p1 1s +I +T
ey
(0
p 2
) J' i
; ,
r‑P0‑0pg ryp0y0jpo
es
(V
p2
)P
o
rs
p
Vs
V
p
p︒ スではみられなかった集計的な嗜好変化奴果が残っている︒ ヒックスの物価指数理論︵高木︶
のSおよびIさらにマリスのTに対して次のような対応がみられる︒上式を再化して次の対応をうる︒
k.
yヽX
( J )
s
(N~l't
i . ! l ! )
E.
yヽ
XOI
係でとらえられるならば︑
あるとする︒なお︑ (4.1)又は(4.2)
A . l :
t
i)
e ‑
︵0
p2
)
も︑価格変化と所得の弾力性がその間に相当の幅で拡がるときは︑
ここでマリスは供給価格の変化が自
y y P
の母集団の値はゼロ すなわち﹁需要の一般法則よりする
r S P は有意的な大きさをとり︑かつ負でなければならない︒しかし︑もし充分に多数の商品が考察され︑しか
りは小さくなる傾向をもち︑これより項
Iも
また小さくなるようになる︒より精確にいうと︑
' y s と麻とは独立的であると想定され︑
(13)
となるように仮定される︒収束確率の法則より︑考案される商品の標本の有奴的な大きさが大であればあるほど
V y p
(14)
の標本値はゼロの母集団に近迫するであろう︒﹂しかるに︑この議論は結果としてそれが
Tを述べることを欠くが
故に不完全なものである︒嗜好の変化が︑ある何等から理由で︑又は偶然によって商品ごとに価格の変化と相関関
その結果だけに影響する︒しかるに︑定義によって嗜好の変化は価格の変化と無関係で ヒックスもマリスも供給価格の変化は数量の変化と相関関係をもたない︒すなわち︑結果的に は供給の弾力性は無限であるということを暗々裡に想定しているのである︒
マリスはこれをTであらわす︒しかるとき︑
一 っ
ヒックス
情報なくしては︑その現象が正のIによるものか︑正のT
によるものか︑それとも︑二つの組合せによるもの
るに足るだけに充分に小であれば︑同じことは
rptがより有意的に正又は
て分析を進める︒もし後者が強ければ︑偶然によって生ずる 主的であり︑統計的には体系間で独立変数であること︑さらにその仮説が除去されるとき︑ふくまれる重要な条件
( 1 5 )
の考察の必要性を主張する︒
次の考察は︑供給の弾力性は無限︑有奴な標本の大きさが非常に小さい故に︑分析の基礎的な手がかりとしての 収束確率の法則が適用されない場合である︒ヒックスは﹁低開発﹂国の場合としてーすなわち工業化に努める場合 ー製造工業製品の実質生産費の切下げ︑当然に食料供給の増加という点で不成功な場合を挙げ︑財の大分類間の相
( 1 6 )
対価格の変化の奴果を分析する︒この場合︑統計学的にはグルー︒フ間の分散度︑グルー︒フ間の分散度の算出によっ
巧の有意的な大きさの尤度はより大となる︒ジョン
も︑正のI ソンによると︑所得の弾力性が個々の消費者間およびそのグルー︒フ間においての分散度が小さいときのみ︑この事
( 1 7 )
実が成立するという︒しかも︑ヒックスによると︑この価値は正又は負である︒たとえ︑嗜好の変化がないときで
は負のS
を超過することがありうる︒特に
S
が小となる可能性があるからであり︑その有意性が
負の大きさをとるのは︑
このような事情のもとにおいてである︒もし︑標本が より低くなるという事実によるものであり︑もし嗜好が変化したならば︑偶然によって
r
がゼロヘ収束することを阻止す r p l
についてもあてはまる︒L
式指数と
P
式指 数が
︑
それぞれ正
常な事態にあるならば︑嗜好は一定不変であると想定され得ない場合のみではなく
P式指数が相当の幅でL式
指数を超過しそうな事態のもとで︑しかも上のような正常な関係とが成立すると観察されるときは︑さらに豊富な かを語ることは不可能である︒別言すれば︑消費者の嗜好は不変化したか︑それともこのような不変化が生じなか
ヒックスの物価指数理論︵高木︶
ヒックスの物価指数理論︵高木︶
ったのであるか︑そのいずれをも断定出来ないのである︒故に﹁原則的に︑L式指数より大なるP式指数の観察
は︑嗜好が不変的であるときよりも︑それが変化しているときに︑
Sが負 一般に各商品に撤布する︒すなわち︑ より不可能である︒P式指数がL式指数を超
過するとき︑あるいはL式指数がP式指数を超過するときに︑嗜好が変化したという前提は存在しないし︑又
これ以上にこれらの場合のいずれにおいても︑嗜好が変化しなかったという︑
( 1 8 )
る ︒
その v t
が いかなる前提も存在しない﹂のであ
たととば︑計量経済学的操作により︑Iの大きさを計測することが出来れば︑それは唯一の可能性である︒けだ
し︑ヒックスによれば﹁厳密に言えば需要法則は混血児である︒すなわち︑この法則は一方の脚を理論におくと供
( 19 )
に他の一方の脚を観察においている﹂のである︒しかるに収束確率の法則の適否の判断にはヒックス的な理論では
不充分である︒︱つの例外は次のとおりである︒すなわち︑価格の変動がSは小さくはないが︑Iが小さくなる
と期待するに足るだけ標本の大きさを拡大しうる︑しかるに嗜好の変化は極めて僅の重要な商品に集中され︑
有意的であっても︑作用される商品が僅である︒故にVtが偏差の大なる僅のものより構成されると仮定せよ︒この
ような嗜好の若千の大きな増加あるいは減少に対する相殺的な変化は︑
相対価格が両方向に移動したグルー︒フの上に拡散すると想定せよ︒この場合は︑たまたま若千の差のある嗜好の変
動が︑ある特定の方向の物価変動と一致する場合である︒この場合にTは有意的となり︑総てに一様に撤布する︒
なお︑その代数的符号は正負のいずれも可能であるし︑L式指数とP式指数との比較において︑Tが正の符号
をとり︑しかも︑その絶対値が大であればあるほど︑後者は前者をより大きく超過するのである︒もし︑
であり︑絶対値が大であればP式指数はL式指数を上廻るのである︒
319
﹁嗜好は変化している︒しかも常に変化している︒その事実はこれを生活の現実として認められるべきである﹂
こと
︑
ヒックスの物価指数理論︵高木︶ これがマリスの理論展開の基礎である︒われわれはマリスに従って︑
すなわち︑私の見解によると︑ ヒックスのマーシャル・レクチュアの
﹁私がここで述べたことは︑私が奴用理論について語らんとする主たる事柄である︒
これまで私を悩ましてきた混乱状態より︑そのもつれを解きほぐす長い道をあゆむ
のである︒社会的生産物における変化の真の尺度は価格線よりも︑むしろ︑無差別曲線に従ってとるべきであると
というこの主張において︑私はあらゆる測定の実際上の可能性を超える﹁尺度﹂を設定しているのではない︒統計
的方法によって概念的に近似化されうる何ものかが残っているのである︒加重の理想的な体系は限界炊用に対応す
る価格によるものではなく︑その供給が二点間に拡がつて変化した商品の平均評価に対応するような修正された価
格によるものである︒すなわち︑無差別曲線に沿う測定は消費者余剰を考峨に入れるが︑価格線に沿う測定はこれ
を考應に入れないのである︒しかし︑消費者余剰の包括は︑生産物から炊用もしくは厚生へと測られたものの変動
の炊果を有しないのである︒すなわち︑われわれが得るすべては︑社会的生産物の変動の︑よりよき尺度である︒
このよりよき尺度が統計的に推定されうるかどうかは︑われわれの努力の到着点として︑それを設定することが希
ましい︒けだし︑われわれは理論そのものを内部的に無矛盾的たらしめるために︑そうしなければならないのであ
(20) る⁝﹂と︒すなわち︑ヒックスは物価指数より転じて数量指数を理論展開の手懸りとしているのである︒
個々の場合に有炊に適用される二つの交替的な﹁真の尺度﹂がある︒すなわち︑ヒックスによるとAとBとが無
ーを
持ち
︑
B点から観察されたA点の状態︑もしくは︑ 差別であればそれぞれの状態でのPとqとを結合したものの間に成立する二つの不等式ーニつの無差別性テスト
( 2 1 )
その逆の状態が考えられる︒時間的には︑期間0より期間 一節を引用する︒すなわち︑
﹁期 間
1に実際に位置する﹂とすれば上と全く同じもの
(27) なお︑無差別等高線についての数学的形態に関する仮定によって︑集計的な代替奴果S
(28) が規定される︒
R1
"
ー 置する曲面の形態であるという仮定に基ずいて計算された﹁真の﹂
Ro 11
﹁期
間
0に実際に位置する﹂こと以外︑ め次の二つの項が考えられる︒
ヒッ
クス
の物
価指
数理
論︵
高木
︶
ある
とき
は︑
の大きさの間に次の関係 ︵無別に規定される︶指数 1をながめる場合と︑期間1より期間0をながめる場合とによる真の尺度の存在を指摘する︒もし︑嗜好が不変的で
これらの二つはヒックスの用語では︑それぞれ所得の﹁補整的変差﹂であり︑
に変化し︑かつ︑消費者の所得が︑所得がそのままであれば価格下落によって消費者が得たはずの実質所得上の利
得を相殺するところまで減少するときに︑消費者によって選ばれるはずの点である︒所得はこのとき補整的変差だ
( 2 2 ) ( 2 3 )
け減少する﹂と言われる点であり︑﹁価格の与えられた変化を相殺するような所得の変化﹂である︒これに対して
( 2 4 )
﹁等価的変差﹂とは︑﹁実質所得に対して価格下落と等価の炊果を与えるもの﹂であり︑﹁価格の変化によって誘
( 2 5 )
致されると同じ奴用の変化を誘致するような︑当初の価格状態で生ずる所得の変化である︒﹂これは生じた価格と
所得の変化の結果として一の無差別曲面より他の無差別曲面へと推移するとき︑旧曲面の形態と新曲面の形態を考
察して必要とされる﹁補整﹂の大きさを決定しうるのであるが︑マリスによればその結果は総体的に﹁等所得弾力
( 2 6 )
選好
体系
﹂ ( is o
, in
co me , e l a s t
i c , preference
sy st em )
に位置する以外は同一となる必要はない︒
それに基ずいて計算が行われる無差別曲面の適当な形態は︑消費者が実際に期間0においてその上に位 これを明らかにするた ﹁Xの価格が新たな値
一四
...•••.••...
uり1)
この第⑥式は既述の第固式と結合され︑収束確率の法則が適用されるときだけを考察するならば︑すなわち︑供給
価格の変化が自主的であると想定するならば
rp
y
と
rp
i
とはゼロに近迫し︑故にI
定することが可能である︒もし︑
この式の語ることは︑ そうであれば次の第切式が成立する︒
上述の代替的な真の指数ーここで﹁真の指数﹂というのは︑
うのではないーの両者に等しく︑P式指数とL式指数の単純算術平均によって近似的に規定されるということで
収束確率の法則が適用されない場合︑すなわち︑分散度の分析がグルー︒フ相互の分散度が内の総体の大きさに
まさることを示す場式を考察すること︑これがマリスの第二の課題である︒このような場合の重要な特徴は︑広い
商品グルー︒フ内でのある部分集合の他の部分集合へ対する代替は余り大ではないということである︒けだし︑グル
ー︒フ内の価格変化の分散度が小さいからである︒かかる代替行動は︑たとえば食糧品の相対価格が上昇したので衣
料品が食糧品に代替するようにグルー︒フ間の代替の形態がとられることになる︒しかるに︑このような代替奴果は
Se s は無視し.は無視してもよいようになり︑これより
ヒックスの物価指数理論︵高木︶ その性質上︑小さくあるいは無視してもよい︒すなわち あ
る︒
R o 1 1 R 1 1 1
t‑v~I +
雰i
R 1 1 I 1
︒+
I+
+ T 沖
S s 1
ヽ2
R o l l
︒ p
+
一五
コニュス的な意味のものをい
.. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .
‑9 . l
とT
とを無視しうると想
.. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . -I-
—
S;
1 1
P i p i
P i 1 1 a i q i
となり︑第一次的生産物の関連においては正となる﹂のである︒ トレンドの勾配が大である︒すなわち︑ 価格の変化は︑ 属性を述べる供給方程式の組を︑その体系へ挿入する必要がある︒
Ro 11 g
ぉよび
R1
1 1 A ヒックスの物価指数理論︵高木︶
てもよいようになる︒もしそうであれば︑指数の﹁問題﹂は起らないCすなわち
次に収束確率の法則が妥当しなくても︑現実に自主的な供給ー価格ー変化の仮定を持続しえない場合を考察しよ
う︒この場合は最も重要な場合である︒自主的な供給ー価格ー変化の想定の除去は︑結果的には﹁あらゆる商品が
無限の弾力性の供給ーすくなくとも︑分析期間を通じてーの仮定的状態から︑各商品が符号で正もしくは負であり
(29) うる︑ある有限的な供給の弾力性を有する状態へと推移することになる﹂︒故に供格ー価格変化の数量変化への従
一般に生産へ対する相対的な商品の生産の変化に線型的に依存すると仮定することによって︑
挿入が行われる︒経験的には需要と生産の最も急速な拡張をなすものは補助的産業であり︑その技術的進歩は最も
・1番の商品の価格と数量の変化の両方を決定する簡単な式を設定する︒
︵宝溶吋誰沖︶⁝⁝⁝⁝︵
8.
1 )
(方喉吋把沸)………•••(8.2)
上式でaとBとは所与の︒ハラメターであり︑aは供給条件に従って正でもあり︑負でもありうるが︑B
は通
常︑
負の
符号をとる︒なお︑あらゆる供給ー価格変化の全体は内在的なものと仮定される︒この仮定をとりはずし︑上の第 マーシャルの長期の外的経済の炊果である︒﹁これらの場合は弾力性は負
この
一般に物価に対する相対的な個々の商品の供給
六
323
11,• 丘
Qo
es
;
P ,
い式の追加的な自主的な解離項が挿入されると︑その結果としての代数的表現は︑より複雑となるが︑その意味す
る内容はより豊になる︒
第戸︑戸式を既述の第②式と結合し︑簡単化すると
すなわち︑消費者の嗜好にも︑
.. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .
‑£
︱︱
a i
とが与えられるときは︑
y i と
t i
とは
P i
と
の外在的決定項とみなされうる︒q i
その実質所得にも何等の変化がなければ︑あるいは︑
ゼロの所得弾力性を有するときは︑
はゼロとなり︑同じことはq i
P i
についてもいいうる︒すなわち︑.t番目の商
品の消費は平均︵一
Q o )
以上には増加しない︒a
と月とは既述の第い式の︐
e s
( 3 1 )
ぜしめられる︒かくして
すなわち相対的供給価格の比
例的変化のそれと関連ある相対的生産高の比例的変化の比の逆数である︒ 1
P i ︒
R i Q o e "
i
. t番目の商品の︵商品一般に対して︶代替の逆弾力性であり︑
,1
の
は e S で与えられる︒ ー
ヒックスの物価指数理論︵高木︶
e z i
はi番目の商品の相対的な供給の逆弾力性である︒ このモデルにおいて︑
/3;
と
(yt十
[ i )
ai .
11
l9
ia
i
p ̀
§ + t i )
1
1ーPき
q g
一七
この記号の代表的な値は第 の場合と同様に逆弾力性の形式へ転 マリスによれば︑もし商品が
(9 . 2 )