貿易独占とゲームの理論
その他のタイトル Monopoly of International Trade and Theory of Games
著者 木村 滋
雑誌名 關西大學商學論集
巻 6
号 2
ページ 129‑144
発行年 1961‑06‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00021694
︵ 木
村 ︶
体の間で行われる貿易取引に考察を限定するであろう︒
ま え が き
貿易独占とゲームの理論
九
国内では価格の需要供給作用が自動的に作用する自由生産・消費市場が行われており︑外国貿易が私的独占体に
よるバークー・ディールによって行われていると仮定しよう︒かかる私的貿易独占体の追求する目標は︑その貿易
超過利潤を最大ならしめることであり︑二国の貿易独占体の同意のもとに成立する種々のバークー・ディールのう
ち︑どのような取引が彼等の目標にてらして最適であるのか︑そしてまた︑結局彼等はそれぞれどれだけの超過利
潤を獲得するにいたるのか︑という問題を協力
2人ゲームの取引問題の理論を適用して考察してみよう︒
貿易独占体が私的なものではなく︑政府貿易独占体であるばあい︑彼等の間で行われる政府貿易ほ︑その目標を
超過利潤の追求におくよりも︑産業構造政策︑国民支出を高める政策︑その他国民経済計画上の︑私的貿易独占体
がもっばら追求するものとは異なる目標におかれていることは言うまでもない︒われわれはここでは私的貿易独占
貿 易
独 占
と ゲ
ー ム
の 理
論
木
村
滋
130
ふ
第
1回d
う
゜H
るいは第三象限︶に画かれる︒即ち︑
Ita
と思がそうである︒容易に証明
J.E・ミード教授の緻府貿易亀の原理と例示を必要な変更を加えて︑われわれの私的貿易独占の考察に用いよ
A
国と
B国の二国のみ存在し︑各国はそれぞれ
A財と
B財の二種類の財を共に生産していると仮定して︑
由貿易における肉内外均衡は第
I図に示される︒
o x
︑
軸 は
A
国で消費される
A財 の
を 量
測 り
︑
OY
軸 は
A
国で消費
貿 易
独 占
と ゲ
ー ム
の 理
論 ︵
木 村
︶
図はその︱つである︒
QP 1E P1
︑ は
A
国の生産能力を表わしている生産ブロ
ック︵生産ボックスとも称せられる︶を示し︑
る あ
︒
OX
軸は
B国で消費される
A財 の
量 を
測 り
︑
OY
︑ 軸
は
B
国で消喪され
る
B財 の 量 を 測 り ︑
XO Y
︑
限 象
で
B
国の消費無差別曲線群が画かれ︑
I
さ は その︱つである︒
Y
︵ ボ
ッ ク
ス ︶
示 を
し ︑
P2 KP 2
︑は生産無差別曲線である︒ある消費無差別曲線︑
例えば
I 8
および
I c
b に接しつつ生産ブロックを底辺を水乎に維持しなが ら移動させると︑
その消費無差別曲線に対応する貿易無差別曲線が生産ブ ロックの直角をなす角の点の軌跡として︑貿易象限とよばれる第一象限︵あ されうるように︑貿易無差別曲線の任意の点の勾配は︑それに対応している消費無差別曲線の対応点における勾配に
等しいという性質を有していが
原点
0を通る貿易無差別曲線
I5 v
︑ 芯
と
I
︑
tbはその線上では︑貿易を行うも何ら新
QP 2K P2
︑ は
B
国の生産能力を表わしている生産ブロック
P1 EP
1
︑は生産無差別曲線で される
Bを 測 り ︑ 財 の 量
x象限で
A︑
OY国の消費無差別曲線群が画かれ︑
四 〇
自
第
1[回
Y
p
ヽ
Ob
︐ .P
M
︵ 木
村 ︶
四
たな利益を附加しないという意味で無貿易無差別曲線と称される︒したがって
A国 は
I
︑
芯 線
よ り
左 方
に お
い て
︑
ま
た
B国 は
I
︑ t b 線より右方において貿易点が決まるばあいにはじめて貿易利益
l生産プロックの直角の角が原点
0にあるばあいのその生産プロックに接する消費無差別曲線よりも︑原点
0よ り
み て
︑
産ブロックが接するということにより︑換言すれば︑効用増加という形で貿易利益が示されているーーが生じる︒
o a
は
A国 の
︑
O b
は
B国のオッファー曲線で︑これは原点
0を通る次々の価格線︵交易条件線︶と貿易無差別曲線
の接点の軌跡である︒オッファー曲線の交点は貿易均衡点を示している︒第
n図で︑仮りに両国両財の交換比率が︑
xo a
及 び
0 b
以外の一点︑例えば
Pに定まったとする︒
A国のオッファー曲線上の
T
点
は ︑
A
国で輸入
B財
T
M
︑量に対して外国へ引渡して差支えない輸出
A財 の
量
ST
を示している︒しかるに
P点では
A国の貿易業者は
B財
T
対して
AM M︑ 量 の 輸 入 に
財 の
ST
量より少い
SP
量を輸出すればよいのであるから︑通常利潤以
゜
s仮りに
O a
につき当ったとすれば︑左叉は右へ動く力はないが︑上方へ引上げられる力が存在するので︑
Pは
O a
に沿ってか︑あるいは上方に離れてもこんどは
O b
につき当り︑ともかくかようにして︑
Qの 方
へ 移
動 す
る ︒
O b
につき当ったばあいも同様に
O b
に沿ってか︑あるいは下方に離れてもこんどは
O a
につき当り︑ともかくかよ
う に
し て
︑
Q
の方へ移動する︒かくしてオッファー曲線の交点
Qは ︑
貿 易 独 占 と ゲ ー ム の 理 論
上に超過利潤を獲得しうることになる︒自由競争が行われているかぎり︑
ら の
A
財の輸出は増加し
P点は右に動く︒同様にして
P点は左に動く︒又これ
らの運動は
B国にても同様であって︑
点 P u
は 下
方 へ
︑
A
国
か
p
点は上方へ動く︒
P点 が
P
が
A
財の国際需要と
B財の国際需要が一定の内 ヨリ遠い消費無差別曲線に生
132
第皿回
> '
x '
y '
て対内外需給は均衡する︒
貿 易 独 占 と ゲ ー ム の 理 論
る ば
あ い
︑
しかもそれが貿易均衡点であるならば︑
外同一相対価格で均衡する点である︒第
I
図にもどって KK
︑は契約曲線で︑これは両国の貿易無差別曲線の接点
の 軌
跡 で
︑
A
国の国内価格線
a l
と
B国の国内価格格線
a z
が同じ勾配をもつのはこの契約曲線上の点で︑
にとって最大の満足を与える貿易はこの契約曲線上の点でもある︒
さて︑自由貿易のもとでの貿易均衡点は第
1
図
の
Q
点である︒この
Q点は容易に見られるごとく︑両国の生産プ
ロックの直角の角が接しており︑契約曲線 KK
︑ 上
に あ
り ︑
ぶ直線である交易条件線
aはまた︑両国の国内価格線
a l
と
a z
に勾配が等しい︒ここで︑
を
FG
量 生
産 し
︑
A
財を
c o
量消費して
O
M 量
輸 出
し ︑
量 ︑
B
財を
HG
量 生
産 し
︑
かつ両国のオッファー曲線の交点である︒
0と
Qを 結
B
財を
G0量輸入して FO
量 消
費 す
る ︒
B
国
は
A
財を
L M
A
財を
M
O 量輸入して LO
量 消
費 し
︑
︵ 木
村 ︶
さ て
︑
かつ︑両国
A
国
は
A
財を
CM
量 ︑
B財
B
財を
HO
量消費して
OG量輸出する︒かくし
われわれは︑貿易業者の間で競争が完全に行われるならば︑貿易 均衡点は︑両国のオッファー曲線の交点において決定されることを述べた︒
かかる貿易業者の間の競争がなければ︑独占利潤たる超過利潤は消滅せず︑
貿易点はオッファー曲線から遊離したままとなる︒私的貿易独占体の間で 同意のもとに成立する貿易点が︑右の自由貿易の貿易均衡点より離れてい 一致より生ずる貿易独占体の超過利澗ないし損失は如何という問題を考察
し て
み よ
う ︒
一国の対内外価格の不 四
貿 易 独 占 と ゲ ー ム の 理 論
︵ 木
村 ︶
四
^ 滴 ^ 滴
゜
召部営l
ロ 如芦菩 >゜
,.,. 守Er゜
9マ
Er 苓:`
曲 、コ•
袖↓ =
国芭湘 包 醤
涵 滴
濾滴
部 部
l
部 部営 営 搭 搭
正 正
圧
rIlrb3寄 吝 苓 吝
葦 溢
童
i堂冷 醤 冷 箋
^ ^ ^ ^
六 > 7 ス.
‑‑
0 0 芦 存゜ ゜
1l!ll片 片 ,.,. H
コ
`ゞヽ
ツ 廿
→、グ じ3R R
℃
Rて て
‑ ‑ ‑ ‑
‑ ‑
回℃ て
R ℃:) R R互•
ト ト
,,.,,. ,.,.,.,. 甫ゞ ゞ ゞ9ゞ5ゞ ゞ苓
憐 湊
藝 韓 藝
^藝^
>^ ^
スた! スカ^ ^ ^
71 国‑
汁• H ‑ ‑ ヤ
存 召 R六7六7六六
ト わ ト ト
,,.,,. b、コ・`̀ ゞ ゞ画
→→ じ3 、h一、h
て
、一ヽ—
ヽ@@ @ @ R ◎ I
ヽ
x
瀕
H
浙
次の第
I表と第>図で示される︒ 国 貿 易 独 占 体 の ︑
ROt !
B
国貿易独占体の損失を示している︒
k Y
第団図.が決まるとす れるようにこれは第>図の領域①のケースである︶貿易点
Q第皿図の如く︑両国オッファー曲線上にないと仮定された︵後で説明さ
れば︑交易条件線
rは ︑
A
国の国内価格線
RI IR
1
よりも勾配が急であり︑
他方
B国の国内価格線
B 1 1 /
国の消費者は
3 1よりも緩やかである︒
ARI IR 1
という価格にて
D
C
を提供して
Q
AC
を入手するが︑国際貿易では
国 は
r
という交易条件により
o c
を提供すれば足りる︒したがって差額
D0は 貿
易独占体の超過独占利潤である︒
B国についても同様に︑
OKが貿易独占
x
にないと仮定されており︵第>図領域⑥のケース︶
rが
RI IR
1
よ
り 緩
や か
で ︑
p 1 1 (
は
A3 1よ り 急 な ば あ い で ︑
OD体の超過独占利潤である︒第
図
I Vは
Q
点はやはり両国のオッファー曲線上
貿易点がどこにきまるかによって両国の貿易独占体にもたらす超過利澗ないし損失の関係のありうべきケースは
D‑ R
藁
( J )
x x
`
雲 代
0
冷
盗 ︾
K
芦P繁( J )
yy
︑ 雲
ド
8
冷
` ぎ
RI R
撚
( J )
yy
︑ 雲
r a
冷 盗
゜
134
第 四 回 第V図
Y
> '
x H
Y̲
0 ,
J
叫。
x
k
LV゜ ⑥ a 0
)
K'
貿 易 独 占 と ゲ ー ム の 理 論
x ︵ 木
村 ︶
第
I表の各ケース①!⑥は︑貿易点が第>図の各位置にあるばあいにおこ ることを示すことは有益であろう︒この説明は第
V I
図と第
V I l
図で行われる︒
第
V I
国
で
A
国のオッファー曲線
O a
の左方のある点
Cを と
り ︑
長して
O a
と
Gで交わらしめ︑この線を
a o
と
名 付
け ︑
無差別曲線を画け︒
Dを
Cより垂直上方にあるこの貿易無差別曲線上の点
と す
る ︒
C
を通過する貿易無差別曲線は︑もしそれが
a o
と同じ程勾配が急
で あ る な ら ば ︑
貿易無差別曲線は交わらないので︑ OC線を延
G
で
a O に接する貿易
D
を通過する貿易無差別曲線を
Dと
Gの間で切るであろう︒
C
を通過する貿易無差別曲線の勾配
a l
は
a o
よりも緩やかである︒それゆえ
a l
は
0の左方
Hで
x x
︑
を 切
る ︒
OH
は
貿易独占体の利潤を表わす︒次に︑ Odの右方の点
Eを通過する貿易無差
別曲線が
Gを通過する貿易無差別曲線を切ることを妨げるためには︑
りも急な勾配
a z をもたねばならない︒かくして
Jは
0の 右
方 に
あ り
︑ は貿易独占体の損失を表わしている︒同様に
B
国 に つ い て も ︑
B
国貿易独占体の利潤を表わし︑ 四 四
B
国のオッ
ファー曲線
0 b
より右方にある点では︑その点を通過する
B
国の貿易無差
別曲線の接線は原点
0より下方で
YY︑軸を切り︑この点と
0との距離は
o b
より左方にある点では︑その点を通
過する
B国の貿易無差別曲線の接線は原点
0
より上方で
YY︑ 軸
を 切
り ︑ 0
J
a o よ
場 で
販 売
さ れ
︑
Y
k愧団回
︵ 木
村 ︶
四 五
この点と
0との距離は
B国貿易独占体の損失を表わしている︒第
V J I
図の契
約曲線 KK ︑の西南方にある点
Cで は
8 線の方が a 線より勾配が急で︑又︑
K K
線の東北方の点
Dで は
a
線が 8 線より勾配が急であることを直観的に
知ることができる︒第
V I
図︑第
V J I
図の結果を総合して第
I表と第>図を得
以上がミードの﹃国際貿易の幾何学﹄における政府貿易論をわれわれの
私的貿易独占体の利潤ないしは損失の問題に適用したものであるが︑さら
0
にミードの﹃貿易と厚生﹄における政府貿易論を播いてその数字例をわれ
われのゲームの理論に利用しよう︒ここでもやはり若干の変更を加えて︑その数字例が次の第
I l
表によって与えら
れる。この例は、幾何図表では、第>図でみれば、
T1~両国のオッファー曲線の交点Qに当り、 T2 ~B 国のオッ
ファー曲線上にありかつ契約曲線の西南方の点である︒
T 3
は上記
Q点より右下方の契約曲線上の点であり︑
T 4
は
同じく
Q点より左上方の契約曲線上の点であり︑
T 5
は ⑧
に ︑
T 6
は ⑥
に ︑
T 7
は ⑥
に ︑
T 8
は ③
に ︑
T 9
は ①
に ︑
T 1 0
は
号
20
0
の値打のある
A財が
Aの国内市場から取出されて
B国の市
ま た
10
0
単位の
B財 が
Bの国内市場から取出されて
A国の市場で販売されるとき︑両市場における
B
財の自由市場価格はともに等
2となるというばあいで︑国内外価格がみな等しいのであるから︑両国の貿易独占
体には超過利潤または損失はあらわれず︑これは両国貿易独占体間のバークー取引が︑自由競争のもとでの貿易の
場合と同じ貿易点において合意に達した場合であるが︑合意がかかる点で成立することは寧ろ例外に属することで︑
貿易独占とゲームの理論
④に当る︒さらに説明を加えるならば︑
T 1
で は
︑
b
2t
a I
3 t
‑ b
ー
︐
tー
.‘、-—2-ヽ
︑一
, 7
一
‑︑ ︱
ょ '
ヽ
f
‑
︑t
ヽ
3
︱ ク
; ク ク
︑ ¥ / ・ ク ' ‑ ;
'
﹁
% ム
‑B r
ヽ
一
誓︑ ︱
‑ 4
,
a .
a
,t
ー
t ーK'
x
ることができるのである︒
13b
意識的に避けられることが多いであろう︒
第1I表貿易独占体間のバーター取引表
国際バーク B財 の 価 )
格
貿易利澗((+))ー取引 ($で表わす 又 は 損 失 一
A B J
ミ
A B A B取 国 国
貿 貿 I 国 国 国 国
弓l 易独 易独 ク
内 内
貿 貿占 占
体 体 I の の 易 易
ケ が が
与 与
価 市 市 独 独え え
l る る
格
場 場 占 占A B
財 財 価 価 体 体
ス の の
$ 数
格 格
昌 嚢 f=bX
g(c=‑beX) a b c=a/b d e (d‑c)
$ 量 数 $ $ $ $ $
T1 200 100 2 2 .,
゜
2
゜
T2 100 100 1 3 1 +200
゜
T3 225 75 3 2 2 ‑75 +75 T4 150 150 1 2 2 +150 ‑150 Ts 200 200 1 1.l 3 +100 ‑400
2
T6 250 125 2 1 3
ー
2 1 ‑125 ‑187一2 1 T7 270 90 3 1 2— 2 1 ‑180 +45T8 125 125 1 2— 2 1 14‑2 +187一2 1 ‑62― 2 1 T, 150 75 2 3‑21 ‑ 1 +112
―
2 1 +75T10 180
60
3 2一2 1 1 ‑30 +120 貿 易 独 占 と ゲ ー ム の 理 論て相対的に減少したこを意味し︑
T2
では︑バークー価格は
B国内市場価格と同じであるが︑
A国内市場
価格をバークー価格より以上に高からしめるばあいで︑
T 1
に 比
べ て
︑
A
の貿易独占体はヨリ優利な契約を取りきめ
て ︑
B
財
1 0 0
単位と交換に
T 1
のばあいの半額の吟
1 0 0
しか与えない︒これは
B国の市場での
A財の量が
B財に対し
B
財 は
A財に対して相対的に価値が低下し︑
他方
A国 で
は ︑
A
財 は
T 1
に比べて半分が
B国に輸出されるにすぎないので︑
B財の価格は毎
2か ら
華
1 に
低 下
し た
︒
B
財に比べて相対的にヨリ豊富とな
︵ 木
村 ︶
四 六
ではヨリ少い
B財 が 輸 入 さ れ ︑
︵ 木
村 ︶
バークー価格よりも低いというケースである︒
四七
T1
と比べて
B国の独占体はヨリ少量の
B財を手渡し︑他方
A国 の
自由競争の貿易が存在しているケースに対応するものである︒
T3
では両国の市場価格は同じであるが︑それらは り︑したがって
B財の市場価格は︑
A国では号
2か ら
華
3
へ上昇したのである︒かくして第
I l 表 で 示 す ご と く ︑
A国
の貿易独占体は等
200の超過利潤をうるが︑
独占体は逆にヨリ多くの
A財を与えるので︑その取引は
B国の独占体にとって有利となる︒
B国ではヨリ多くの
B財とョリ多くの
A財を享受し︑供給が両財同時に増加したため価格は毎
2のまま不変にとどまっている︒他方
A国
リ 少
い
B
財
を 輸
出 し
︑
貿 易 独 占 と ゲ ー ム の 理 論
B
国の貿易独占体は超過利潤も損失も存しない︒このケースは
B国 で
ヨリ多くの
A財が輸出され︑両財同時に供給が減少し︑価格はやはり蛉
2のまま不
変にとどまっている︒この結果︑
A国の貿易独占体は華 75
の 損
失 を
蒙 り
︑
B 国のそれは
$75
の利潤を獲得する︒
T4
は
T3
の逆のケースを示しているにすぎない︒以下
T s T 1 0
の説明は省略するが︑上述と同様に理解しうるもの
である︒ただ一言つけ加えるならば︑
T5
︑
T6
︑
T7
は
B財 の
B
国内市場価格が
A国内市場価格よりも高いケースで︑
こ れ は
B財が
A財 に
対 し
て ︑
A
国におけるよりも
B国において︑相対的にヨリ稀少であるためで︑
B国 が
A国 ヘ
ヨ
A
国からヨリ少い
A財を輸入するように取引を改訂することによって︑両国の消費者は改善
化されるものであるという意味において︑これらの三ケースは過剰貿易ケースといわれるであろう︒他方︑
T8
︑
T 9
︑
T 1 0
は
B財 の
A国内市場価格が
B国内市場価格よりも高いケースで︑これは
B財 が
A財 に
対 し
て ︑
りも
A国において︑相対的にヨリ稀少であるためで︑
B国におけるよ
B
国
が
A
国ヘヨリ多くの
B財 を
輸 出
し ︑
A
国からョリ多くの
A
財を輸入するように取引を改訂することによって︑両国の消費者は改善化されるというものであるという意味に
おいて︑これら三ケースは過少貿易ケースといわれるであろう︒前者の三ケースたる過剰貿易ケースでは︑両国を
138
換言すれば︑ 貿易独占とゲームの理論
併せて貿易独占体の損失が利潤を超えており︑他方後者の三ケースたる過少貿易ケースでは︑両国を併せて貿易独
占体の利潤が損失を超えていることが注意さるべきであろう︒
J.
E . Me ad e:
A
Ge om et ry f o I nt e r na t i on a l T
ra
de
,
1 9
5 2
,
p p . 5 5
ー
68
J.
E . Me ad e: T ra de an d We
lf
ar
e,
1
9 5
5 ,
p
p . 5 7 8 1 8 5 .
入江猪太郎﹁国営貿易の原理﹂﹃貨幣経済と経済構造︑宮田喜代蔵博士還暦記念論文 集﹄
︑三 九七 ー四 一六 頁︒
貿易無差別曲線
Qより
Q
図の上の点への移動の垂直構成分子はI t
0 + d
︑︑水 平構 成分
I c
︑ ' ゑ 釘 子 は
b + b︑ とな るの で︑
Q
とQ
の問 の
I t
曲線の 勾配 は[ [[ でご ある
︒
Q
をQ
に近 ずけ ると
︑
a ‑
b
は生産フロックの接線の勾配に近ずき︑︐a ‑
がは消股無差別曲線I c の
lげ
︑
F
一 ー /
a / 侭 接 線 の 勾 配 に 近 ず き
︑
S
点でこれら二つの勾配は等しい︒即ち︑[I I[
それ ゆえ
Q
︑ ︶
各+
F
a+
a︑
にお ける
I t
線の勾配は︑ーーー曲11C1111
とな り
S
点にお ける
I c 曲
線の 勾配 に等 しい
︒証 明お わり
︒
b +
︑ b
そふ
︶
b
前節第JI表の二国の貿易独占体間のバーター取引表を用いて︑両貿易独占体間の非零和協力2人ゲームを考察しよ
う︒まえがきにおいても述べたごとく︑両貿易独占体の追求する目標は︑彼等それぞれの貿易超過利潤を最大にす
ることである︒両貿易独占体の合意に達しうべき取引は︑第
I I 表の
T i ,
a i い
i 1 O ( 1 1,
2,
⁝1 0 )
,
t ー'ー
I
U
^ / / ヽ
~/
/
゜
︵ 註
2)︵ 註
1)︵木
村︶
T2,•
…••"
= a 1
⁝
・ : a 1 I I 0 m S 1 0 (
Sはシンプレックスを示す︶として︑
T 1
︒とする︒ただし︑取引は
確率的実験の可能性をもつ︒即ち︑取引の確率化とは︑
Ma i
川1として︑両貿易独占体は合意の上︑
T 1
が
a 1
の確 率で
︑
T 2
が
R 2 の
四 八
第 罹 回
貿 易
独 占
と ゲ
ー ム
の 理
論
︵ 木
村 ︶
第2
国独占体
の起追利涸
( ~
四 九
確 率
で ︑
⁝ ⁝
︑
T 1 0が a 1 0
の確率で選ばれるような偶然装置によって取引の選択を定めることができることである︒か
くしてありうべきすべての混合戦略より結果する両独占体の超過利潤・損失の対は︑第珊図の凸葱で示される︒こ
越燐
莉油
.
店
1 b 仏 の れ を
R
としよう︒両独占体が協力して結合的に行動することによっ
て︑彼等は
Rの点を彼等の超過利潤・損失として実現できる︒この
とき
Rの一点
(U"0)と他の点
(U︑
9
0
︑
) の
に 間
︑ 月
松
U
︑
か つ
汽 む
︑
という関係があれば︑前者は後者に結合的に優越されるといわれる︒
彼等は結合的に優越されない点に関心を集中するものと思われる︒
図の折線念
C で示されるこれらの結合的に優越されない利潤の集合
は ︑
R
の結合最大利得集合あるいはバレート最適集合といわれる︒
バレート・オプティマムの点とは︑他のプレイヤーの利得を減少す
ることなしには自分の利得を増加することができない点である︒さ
て
A国の貿易独占体は点
c即ち取引
T 2
を最も強く望み︑
B国貿易独占体は点 a 即ち取引
T 1 0
を最も強く望むであ
ろう︒このようなバレート最適集合の末端の点
a︑
Cを望んでも実現されることは殆んどないであろう︒取引
T 1
即
ち原点
(0
,
0)
に注目せよ︒バークー価格が自由競争のもとでの貿易均衡における交易条件と等しく︑ したがって
内外価格差は存在せず︑両貿易独占体は何らの超過利潤も損失もないケースであるが︑両貿易独占体は少くとも彼
等の超過利潤が
0よりも大であることを望み︑バレート最適集合上の点で︑ かかる利潤を得しめる点の集合︑折線
mb
c
は交渉集合と呼ばれている︒この交渉集合上のどの点が実際の結果として選ばれるかが問題とされよう︒以下
140
︵ 註 1)
Na sh
貿易独占とゲームの理論
Na sh
の公式と
Sh ap le y
の手法によって考察してみよう︒
︵ 註
1 ) の公式によれば︑取引
Tの両貿易独占体に与える利澗の対
(U‑0)u x 0
を最大ならしめる点
(u o9 0o )
が両プレイヤーにとって公正な利潤となる︒かかる点は明らかに
b点 で
︑
1 1
uox00111121x75となる︒したがって
A国貿易独占体は号
112ーの超過利潤を得︑
B国貿易独占体は号
75の 超 過
2 2利潤を得るような取引
T 9
が公正な利澗を両国貿易独占体に与える︒
︵ 註
2 )
つ ぎ
に
Sh ap le yの手法によるならば︑ゲーム外での支払
( s i d e pa ym en ts )
が許されているならば︑両国貿易
独占体の利潤の和の最大値
0(︷1̀ 2} )1 12 00
ただし
1︑
2はそれぞれ
A国と
B国の貿易独占体を示す︒それゆえ︑ Shapley の値は「
0({ 1,2})~|02+01,
v(
{1
,2
}
1 一即ち︹
01+02ー
10
0,
100
︺となる︒かくして︑両貿易独占体は合
意の上取引
T
2
を
行 い
︑
B
国の独占体の貿易超過利潤争
200のうち号
100を
A国貿易独占体にゲーム外の支払とし
てトランスファーすればよいという結果となる︒
Na sh
の取引問題︒財のバークー取引を行うことができるが︑交換を便利ならしめる貨幣をもっていない状態にあるニ 人の個人
1
︑
2を考えよ︒両者はそれぞれ初期財包をもって市場にやってきて︑ある交易が同意に達したならば︑かつ
そのばあいにのみその交易が行われる︒交易とは彼等の併せて保有する財包の再配分の実現のことである︒ T
︾
T
︑ に
よ つて異なるありうぺき取引を示そう︒これらのうち交易が現実に行われない現状維持的なものが区別され︑これを
T
骨 で
示 す
︒
T
に は
T の
1に対する効用と
2に対する効用を表わしている効用対
(U 90 )
が 結 び つ き ︑ T ︑には同じく
(U
︑
"
0
︑ )
が ︑
T *には同じく
(i
*9 0*
︶がそれぞれ結びついている︒ T と T ︑の間の確率化は
(U 90 )
と
(U
︑
9 0
︑)を結ぶ線分上
の点で表わされ︑そしてそれとは逆に︑かかる点はこれらの交易の間の確率を表わしている︒
Rを取引および取引間の
確率化を表わしているすべての点の集合としよう︒
Rは有界で︑凸且つ閉集合である︒上図である典型的な
R
が示され
ている︒もととなる取引集合が有限であるならば︑即ち財が無限に分割されないとすれば︑
Rは多角形となるであろう︒
︵ 木
村 ︶
に つ い て
︑ 交 渉 集 合 上 に あ っ て
︑
五
070
ィL
ヤー
2
の効用 効用函数の選択は一意的ではなく︑もしも異なる単位数のスケールと異なる原点をもつ他の選択を行ったとすれば︑新しい領域は旧領域の単なる変換と拡張であるにすぎない︒かくして同じ取引問題は筒単な関係をもった無限に多くの抽象叙述形式をもっている︒つまり︑取引問題はR
と( U
只0*
︶によって規定される︒かかる取
引を︹R
"
︵ i "
︾宝︶︺によって示す︒もしもいかなる取引もおこなわれないとすれば︑
得点は
(U
*"宝︶であり︑そして取引は両プレイヤーが得点を構成しているRのあ
る一意的な点で同意が成立するばあい︑かつそのばあいのみ行われる︒当然ながら︑
1
はR
のできるだけ右の方の点での取引を望み︑2はできるだけR
の高い点を得ることを望む︒しかしながら一般にはこれらは両立しない希望である︒それにもかか
わら ず︑
Rにおいて
(i
*9 0*
︶の上方かつ右方に何らかの点が存在するかぎり︑何らかの取引を行うのが彼らの義務で
ある︒以下を通じてかかる点の存在が仮定されるであろう︒今や︑︹R︑
(i
只宝︶︺について︑両ブレイヤーにとって公
正な結果である一恋的な得点︵苔
0o
) を求めたい︒即ち︑︹
R
" ( i5 90
*︶︺に作用してRの一点
(u
o9
0o
)
を与える裁定
函数
F
を求めたいと思う︒ナッツュの公式は︑( i )︑ 点 (U
*9 0*
︶が
(o
,
0)
へ変換されるように︑各プレイヤーの効川
測定の原点を変える︒その結果としての
R
の変換をR
︑としよう︒換言すれば︑現状維持点が
0の得点を与えるような
効用函数を選択するのである︒
( i i )︑領域
R︑において︑答
0
0︑がすべての積ミ︶ーー
'( U9 0) はR︑に属しているー│'の
最大値であるような一意的な点︵答
9 00
︑)を見出せ︒︵かかる点はR︑が有界かつ閉であるため存在する︒R︑は凸であ るため︑そして︑われわれは
uvo
か つ 色
VoであるようなR︑における一点
(U 90 )
の存在を仮定しているので︑一
意的である︒︶即ち︑⑱
.
(t
900io ︑
︑ )は
R︑の一点であり︑答
V o"
00︑
V o
⑮ ︑
R︑に属している
aN0 かつ
azoであ
るようなすべての点
(t S0 )
について︑
uo ︑
00苔N︑
点
(u
"00o︑)は取引ゲーム︹︑
R9
(O
"
0)
︺にたいする
N as h
の解である︒︹
R,
(u
*,
v*
)︺の解は
(u
900o︑ ︑
)に
かん
する効用変換を逆変換することによって得られる︒この点は︑R
に属 し︑
2 N
*i か つ
?N 宝 で あ る よ う な す べ て の 点 (U
"
0)
にたいして︑
(u
oー
i*
)︵
00
ー
0*
︶N (
Uー
究︶
︵?
ー 0*
︶であるような
Rの一意的な点
(u
o"
0o
)
として表わされうる︒
貿易独占とゲームの理論
︵木
村︶