、拍ll人学社会福祉{研究所年報 創「1房(]999) 137〜152
子どもの気質評価の親一保育 者間での「ずれ」について
その1 保育者のfども理解への応川一一…*
矢澤圭介1・栗崎久美子2・萩原亜希2・
横山直美2・海沼和代2**
問 題
1 質問紙(TTS)による子どもの気質評価の保育への応用
保育園には様々な性格の子どもがいる。r一ども一人一人の特徴を的確に把握し,その特徴に 合わせて関わっていくことが,保育者には求められるtt例えば,新しい環境にしりごみして消 極的なタイプと,あまり緊張せず積極的なタイプを区別することができる、消極的で慎重なタ イプの子どもを,新しい体験に向けて急がせたり活動を強いることは,好ましいことではな い。それよりも,その子が納得するまで,初めての環境を観察したり探索するのを許し,待っ てあげることが望ましいttしかし,積極的なタイプの子どもにこの配慮はあまり必要でないc/
ここで例にあげた子どもの特徴は,気質における回避性 接近性と呼ばれる牛寺性である(表 1参照)。気質は人間の性格の中核にある特徴で,その人間が生まれながらに持つ,つまり遺伝 的に規定された側面の強い行動のスタイルをいう、、例えぽ,f一どもAとBとは型はめ板が得意 である.ここでは「f・∫ができるか」(What?),つまり能力について2人はほぼ等しい、しか
し,Aは1つの型はめ板に取り組むと長時間取り組むが, Bはできないとすぐ他のに替える、,
ここでは どのように行うか、(Howつ),つまり気質における注意の範囲と持続性(表1参照)
について2人は異なるのである.環境を通じての保育,つまり子どもが仲び仲びと自分らしく 活動して自らの能力を高めていく保育。そうした保育を目指すなら,保育者は何らかの形でf一
どもの気質的特徴を掴む必要があるのである。
*On the discrepancies of the evaluations of toddlers temperament between the parent and the
nursery school teacher: (1) their apPlication for the teacher s understanding of the toddler s personality.
**Keisuke YAZAWA],Kumiko KURISAKI 2,Aki HAGIWARA 2,Naomi YOKOYAMA2,Kazuyo KAINUMA 2
1 立正大学社会福祉学部人間福祉学科 2 社会福祉法人 あすみ福祉会 茶々保育園 キーワード:1歳〜3歳未満児,気質評価質問紙(TTS),人間発達の生態学,保育実践への応」}1 ..137
、フIL人学社会福祉{VF究所イト報 創IHP J−↓1999)
表1は,アメリカの児竜精神科医Thomas, A.とChess, S.が,1956年から開始した一=ユー ヨー・ク縦断研究を通じて,見いだした9つの気質特性である 彼らは,ニューヨーク近郊に居 住する85家族,141名の乳児を対象に追跡して現在に至っている,.対象児が生後2,3ヵ月か ら,定期的に親との面接を行い,さらにf どもの行動観察,幼稚園・学校の教師との面接も実 施した 得られた面接記録の内容を分析して抽出されたのが,これら9つの気質特性である つまり,この9つの特性は誰もが持っている行動のスタイルで,例えばAは活動水準は低いが 周期性は高く,13は活動水準は高いが周期性は低いというように,「気質プロフィール!として 個々人の気質的特徴を描くことができる、
気質特性の評佃1・測定は,行動観察,親などとの面接,質問紙という方法で行われる。それ ぞれ一長.一短がある 保育者は行動観察を中心に,それに登降園時の親とのやり取り,連絡 帳,懇談会での話し合い(これらは 親との面接1といえる)を通じて,子どもの気質的特徴 を評価する 保育者が質問紙を利用する,あるいは親に回答して貰った質問紙を参考にすると いうことはほとんどない、質問紙は簡便さと実用性が長所で,回答者の回答内容の信頼性が難 点である 川答者の意識的,無意識的な反応の歪みが問題となる。しかし,行動観察の結果と 質問紙の結果とを比較したいくつかの研究では,親の質問紙への回答はある程度信頼できると されている
気質を測る質問紙の中で()っともよく知られているのが,アメリカの小児科医,Carey, W.
B.のものである,.それはThomas,A.とChess, S.らの研究に依拠して,表1の9つの気質特 性を測るものである、、4〜8ヵ月児を対象とするITQ(1970,1978年に改訂),12〜36ヵ月児
を対象とするTTS(Toddler Temperament Scale,1978)などがある。 T T Sは97項目の質問 からなり,f一どものある状況での行動が.ほとんど〜でないiから ほとんどいつも〜であ る の6段階で,どれくらい見られるかを評定する.佐藤俊昭と古田倭文男によって,その日 本語版が1982年に作成されている(本論末に付録として質問項目の1部を例示してある)。
筆者らはこのTTS(日本語版)に注目し,それを1歳児クラスを想定しての保育実践で有 効に利川する可能性を検討してきた.そのねらいの一つは近年,地域の[子育て支援1のセン
ターとしての機能が,保育所に求められるようになってきていることと関係するtt保育者は子 どもを保育し,登降園時にその親と触れ合うことを通じて,しばしば[もう少し違った見方で 子どもを見てドされば.と親r関係,さらに親の子育てについて感想を持つことがあるttそう した感想は,折に触れ親に伝えられるが,時間の制約などからなかなか意を尽くしたコミュニ ケーションがとれないtt勿論,親から保育者への要望が出ることもある、こうした保育者と親 とのコミュニケーションは,両者が子どもの社会化を規定するもっとも重要なエージェントで あるだけに,直接的に子どもの発達環境の質に影響するt,そこで,限られた双方の時間的制約 の中で,両者のコミュニケーシ。ンを促進する用具・媒体としてTTSが使えないか,と考え たのである、つまり,子どもについてTTSに保育者と親が回答する。その回答は多くの場合 一致することが多いと考えられるが,ずれる場合も起こる、そのずれが何故なのかについて保 138−・
r一どもの気質評価の親.保育者間での.ずれ、について(矢澤・栗崎・萩原・横川・海沼、
育者と親がコメントしあって,相互の子ども理解の促進を図るのである、近年,親(家庭)の 子育て力の低下が目立ち,子育て支援の必要が叫ばれている、こうした親の子育てに関する悩 みに,保育所側がアドバイスしていくコミュニケーションの媒体として,このTTSを使えな いかというのである。
第二のねらいは,保育者の子ども理解を促進する用只として,TTSが使えるのではないか ということである3すでに述べてきたように,保育において子どもの気質的特徴を把握するこ とは重要である。そしてそれはおもに保育の中での行動観察を通じて行われる.しかし,保育 者がTTSに回答すれぽ,保育者は自らの子ども理解を整理し,深めることができるのではな いか。さらに,同一の子どもについて担任がTTSをつけ合ったならば,了ども理解の共有を 担当者間で図れるのではないか。そして,親のTTSへの回答から,自らのf一ども理解を反省
し,深めることもありうるのではないか,ということであるn
表1 Thomas, A.とChess, S.の見いだした9つの気質特性
「一一一一一一一一一一一一一一 一一一一.
.1.活動水準:子どもの運動の活発さの程度,運動量や運動の速さ,活動している時間とじ・,としてい る時間の割合等が関係「例えば,動き回ったり,食事等の時に立ちトがるといったことが色々な場面
で見られるなら,活動水準は高いtt
l2.周期性:食事や排泄,睡眠 覚醒等の生理的な機能の周期〔リズム)の規則Wの程度 例えば,規
後ろに隠れ聞かれても答えない)v
4 順応性:初めてのことに対する最初の反応でなく.環境の変化に対する慣れやすさの程度 例え.
ば,離乳食が開始して順調に進むか,叱られたり注意されると同じ失敗を繰り返さないか,クラス変
え等の新しい状況に早くとけこめるか。
5 反応の強さ:反応や感情表現を強く激しく表すかおだやかに表すかの程度、この時,反応のW質や 方向(泣く一笑う等)は問わない.例えば,笑う時に大きな声で笑うのとニコッとするだけ,好き嫌
いや不満をはっきりと出す出さない.
6 機嫌のよさ:愛想がよく,楽しそうに,にこにこしていることが多いか,気むずかしく,笑顔が少
なく,ぐずったり,泣いたりすることが多いか,
7 注意の範囲と持続性:注意の範囲とは,1つの活動にたずさわる時間の長さのこと,比較的長く1 つのことを続けるか,気移りするか、,持続牲とは,何かしていて妨害が入った後tそれまでしていた
活動を再開するかどうか、
8 散漫性:何かしている時,外的刺激によって妨害されやすいかどうか 玩具で遊んでいる時,そば を人が通るとすぐ目をLげてそちらを見るか,すぐ気分転換させやすいか,好きなTVを見ていると
呼んでも気づかないかどうか「
9 敏感性:様々な刺激に,敏感に反応するかどうかの程度、例えば,ミルクが少し冷たくなると飲ま
≡篤隠㌫ごるか 鞭毅るとす゜⇔くか 媒なも
∋
蹴とは,いつもほとんど同じ、獅.n覚め,眠くなり1蝕鰍1,端間も.坦てい。.が1
ト
,る㌶1㌫㍑㌫㌫.玩具。対す、反蹴質接幽,初めて。。と。、緊 rd
}・・とな,積醐・と、。避的・。,初めて。・と・消極的。こと,初めて・,人。会,と, Si・{ l
i
2 気質評価の親一保育者間での「ずれ」の心理学的意味
TTSの日本語版の作成者である佐藤俊昭(1990)は, TTSのカテゴリー得点の分布に地 域差が出ることの説明として,その差は子どもの気質の差でなく質問紙に回答する親の認知の
一
139一
、川人学判会福刊研究所イ1報 創日1りq999)
差とする仮説に次のように反論している 認知の違いなら,気質調査の評定者間相関は低く なるはずであるか,実際には予想以トに高い,ある一人のf どもの気質を両親,近所の人,幼 有f園の先牛など,そのr一をよく知っている7名に独、71に気質の質問紙に回答してもらい,評定 者間の・一致度を見たところ,7名の川答者による気質得点の5段階評定の評定値が殆ど完全に
一一致したという例もある,ここでは,f一どもをよく知る者が気質を評価すると,その評価は一 致することが強調されている この観点に、71つなら,気質評価の親 保育者間の1ずれ はな いことになる しかし,集団的傾向としては親と保育者の評定に相関が見られても,個別に見 るとそこに相当の不一 致が出るのではないか そう考えるのは,この問題を人間発達の生態学
(Bronfenbrenner, U,1979)の観点から捉えるからである、、
Bronfenbrenner, U,は,人間発達の生態学を1積極的で成長しつつある人間と,そうした発 達しつつある人間か生活している直接的な行動場面の変わりつつある特性との問の漸進的な相
η:調整についての科学的研hb.1と定義する,そして この過程は,これらの行動場面間の関係 によって影響を受け,さらにそれら行動場面が組み込まれているもっと広範な文脈によって影 響を受ける とする そして,人間にとっての環境を生態学的環境と見て それぞれが次々に 組み込まれていくような,位相的に同じ中心をもつ人れ子構造 と捉え,それぞれの構造を マイクロ,メゾ,エクソ,マイクロシステム1と呼んだ
マイクロシステムとは,1特有の物理的,実質的特徴をもっている具体的な行動場面におい て,発達しつつある人か経験する活動,役割,対人関係のパターン であるtt具体的には,家 庭,保育園といった 人々が対面的相互作用を容易に行うことのできる1行動場面で人々が経 験することである マイクロシステムとしての家庭と保育園は大きく異なる、スウェーデンで の研究(Cochran M.,1977など)によると,子どもと人人はともに類似した役割を持っていた が,彼らは:つの行動場面で異なったことを行い,異なった種類のZ者関係を形成する、、つま
り,家庭の中では,探索的な行動とともにt読み,名前づけ,対面的相互作用が多く見られ,
対人関係では,家庭の中では人人とr・どもの:者関係が多く,保育園では仲間同上の相互作用 が優勢である そして,特に権威を伴うf どもへの制約という点では,保育園よりも家庭の方 に制約が多かった、
次いでメゾシステムとは,発達しつつある人が積極的に参加している二つ以上の行動場面 間の相η,関係 である 例えば,f一どもにとっての,家庭と学校と近所の遊び仲間との間にあ る関係である、メゾシステムは,人間が新しい行動場面に入る 生態学的移行 によって生じ る、例えば,子どもAか保育園に入ると,Aが家庭と保育園との間の「基本的連結環:で,2 つの行動場面にともに参加している他の人々(親,家庭訪問する保育者など)は1補足的連結 環 である.そして,Bronfenbrenner, U.は,2つの行動場面で連結環をなしている人々がか かわる役割,活動, :者関係が,相々二信頼,肯定的方向づけ,行動場面間の目標の一致などを 促すならば,メゾシステムにおける行動場面が持つ発達可能性は高まると仮定して,こうした 補足的連結環を「支持的連結環 と呼ぶ、さらに,他の行動場面にいる人々に対して特定の情 .−140
子どもの気質評価の親保育者間での ずれ について(矢澤・栗崎・萩原・横川・海沼)
報を提供しようと,ある行動場面から伝えられるメッセージを 行動a] [fii間のメッセージ と
呼ぶtJ
こうした人間発達の生態学の観点に立つと,f一どもの家庭,保育園での経験は人きく異なる
.家庭経験≠保育園経験川1∫能性がある。そうだとすると,そこで示される行動 =気質×経 験.も相当違ってくる 家庭行動≠保育園行動、,親と保育者は,そうした異なった行動を観察 して質問紙に回答するので,その評価がいくつかの特性で1ずれる ということは当然に起こ る,この状況は,図1のように示すこと
ができる.この観点では,気質評価の
.ずれ1は親や保育者の認知の歪みとい うより,気質が顕現する観察対象行動の 違いとして捉えるL」二記の佐藤(1990)
の指摘する口本での地域差も,同様の観 点で研究することができそうに思う]。
したがって,異なる行動場面での1一補足 的連結環、による評価の異同を比較する
ことで,われわれは「. 基本的連結環」で ある子どもの気質について,より深い理 解を得ることができるはずである。
このような枠組みに立つと,筆者らは 保育園児のよりよい発達を願って,その
「支持的連結環 を高めるべく,TTS を媒介として,保育園から家庭への 行 動場面間のメッセージ1を強化しよう と,その有用性の検討を試みていると捉 えることができる。
補足的 連結環
として.一一 の親、
保育者
親の観察に
よるTTS
の評価
「ずれ」一・
≠ .ニコ_
]
→
家庭行動 IL
≠
保育者の観察 によるTTS
の評価
↑
基本的 連結環
として一一 の子ど も
× 気 質
≠
家庭という ← 保育園という 行動場面 → 行動場面
1
已解 1の促 1進
i
行動場面間のメソセージ
↓ 支持的連結環の強化
図1 人間発達の生態学の観点からの,親一保育者 間のTTS評価の「ずれ」の仮説的理解
3 本研究の目的
人間発達の生態学の観点から予測される,親一保育者間の気質評価の「ずれ1が起こるのか 起こらないのかを,事例的に検証する.さらに, ずれ1が起こるとすると,どんな側面にどの ように起こるのかを確認する。また,筆者らの検討・話し合いの中で,1歳児クラスの担任保 育者だけでなく,子どもが進級した2歳児クラスの担任保育者の気質評価もとってみることに なった。そこで,親一1歳担当保育者一一2歳担当保育者間の気質評価の1ずれ」がどのように 起こるのかも検討する,そうした検討を踏まえて,今回はTTSの実施が保育者の子ども理解 の促進に,どのように応用できるかという側面に限って議論する、論点は,TTSの親・保育 者間の「ずれ;から,保育者は実践に有用などんな情報を読み取ることができるか,というご 一一141一
、ン:IE大学社会福311:研究所年報 創刊}膓く1999)
とである「
TTSを媒介に保育者と親がコミュニケーションを持って,相互の子ども理解を高め合うと いう応川側面については,次の報告に委ねる.,
方 法
被検児: 埼E県人間市の私、ン:C保育園の2歳児クラス(りす組)の園児4名,R, C,
Y,H それぞれの性別,親のTTS回答時の月齢,家族構成,人園月齢とその後の0歳児ク ラス〜1歳児クラス(ひよこ組)での簡単な生活歴は,次のようである。
R:女児,29ヵ月齢、家族は父母と本児。1996年5月に生後4ヵ月で入園,その12月頃から 中耳炎による耳だれ多く,表情の乏しいHが続くttl997年3月頃から外遊びも始められ,活発
さを取り戻す、
C:女児,28ヵ月齢.家族は父母,姉と本児e1997年1月に生後12ヵ月で入園,おたふく風 邪にかかり1月後 1 :から通園。5月になってすぐ不安定のためか,かみつきが見られたが,5
」]末には治まる、
Y:男児,30ヵ月齢tt家族は父母と本児ttりす組に人った頃第2子出生。1996年12月に生後 12ヵ月で入wa,,よく食べるが,自分から手を出さない。父母の対応はゆったりして,愛情深く 育てられているが,他児より依存心が強い。
H:男児,33ヵ月tt家族は父母,姉と本児v 1995年11月に生後2ヵ月で入園。1996年4,5 月(生後7,8カJj)頃から人見知りが始まるJO歳児クラスの頃は,ずっと気むずかしい子 だったが,1歳児クラスに進むと人なつっこい性格が現れる、
評定者: ヒ記4名のr一どものそれぞれの母親.また,RとCを,旧1歳児組(以ド,ひよ こ組とする)担任のH保母と現2歳児組(以.ド1りす組とする)担任のY保母が,Yを,ひよ こ組担任のK保母とりす組担任のO保母が,そしてHを,ひよこ組担任のY保母とりす組担任 のO保母が,それぞれ評定した,
質問紙とその実施手続き: Carey, W, B.の作成したTTS(Toddler Temperament Scale,1978)を,佐藤俊昭・占田倭文男(1982)が翻訳した口本語版.1998年6月に母親に評 定して貰った、そして,1998年11月にひよこ組とりす組の担任が評定した。したがって,ひよ こ組の担任は,rl分の1年間の担任の経験から,7ヵ月経た後で回想的に評定した、、一方,り す組の担任は,被検児R,C, Y, IIがそれぞれ34,33,35,38ヵ月齢の時点で評定した(H のみが36ヵ月齢未満というTTSの適用年齢を若干超過)。
研究会活動: 筆者の一人,矢澤がC保育園ひよこ組の園児8名(今回の4名を含む)の縦 断的観察を1997年の5月から開始し,6月から観察内容に関する研究会を原則月2回のペース で,乳児部チーフの栗崎,当時のひよこ組担任の萩原,横山,海沼と行ってきた。諸般の事情 かE) ,1998年度も同じ園児8名の,主に1997年度の観察記録について,同じメンバーで研究会 一.・142−.
{一どもの気質評価の親 保育者間での ずれiについて(矢澤・栗崎・萩原・横川・海沼)
を行っている したがって,3名のひよこ組の担任にとっては1年間の担任であったが,ノ〉回 の被検児4名についての理解は深いttこの報告は,その研究会活動の一部である、
結 果
1 TTSの評価の「ずれ」は,親一保育者間で認められたかどうか
検討を行う前に次の点を確認しておきたい。ひよこ組の担任は回想で]997年4月〜1998年3 月の保育経験を思い浮かべながら,7ヵ月後の1998年H月に評定したtt親はひよこ組の終9か
ら約2ヵ月後の1998年6月に評定した。ただし,ひよこ組担任はこの7ヵ月間,研究会で4名 の被検児の1997年度の行動観察記録(VTR)をしぼしば見ていた、したがって,記憶の保持 は1 分であったと考えられるが,各被検児の行動のイメージが変容(固定化,特徴の顕著化な ど)した可能性はある。これが本研究の問題点である。しかし,ここではこの点を頭に置きな がら,今回の両者の結果を同時点(2ヵ月差ほど),つまりひよこ組終了時での評定と見なして 検討していく。
TTSの結果の処理には,気質特性と診断類型による方法とがある ここでは,気質特性に よる方法のみを用いたn図2〜図5が各被検児の,特性ごとの平均評定値による気質プロ フィールである。ここで比較するのは, の親のプロフィールど一一一のひよこ組保母のプロ フィールであるu一見して明かな通り,4被検児の気質プロフィールは,親保育者間で多か れ少なかれ[ずれ」ている。人間発達の生態学の観点から予測された通り,親一保育者間の気 質評価には[ずれ1が生じたのである。
では,どの特性でどのように|ずれ」が生じているのかを,被検児ごとに確認していきた い。ここでは,まず特性のどの側面で違いが見られるかを記し,その後で親とひよこ組の担任 Hの記した各被検児の個性記述を示していく。
①R(女児,図2参照): 親よりも保育者が低いと見ているのは[活動水準,,1接近性↓,
「機嫌の良さ一である(尺度の方向性に注意)。逆に,高いと見ているのは,「周期性」,[反応 の強さ」と「注意の範囲と持続1である。つまり,保育者は親よりも,Rを運動の活発さ,新 しい環境への積極性,機嫌の良さで劣ると見,逆に目覚めや食事等の生理的規則性が高く,反 応や感情表現が激しく,活動の持続性が高いと評価している,t
親の個性記述: 気が短い,お調子者,忘れん坊,あきっぽい,几帳面.困っていることと して,負けず嫌いで,すぐムキになること、
ひよこ組保母の個性記述: ・1月生まれで月齢は低いが,基本的に負けず嫌いの所があ り,お友だちが,トイレへ入ったり,パンツ,ズボンをはいたりするのをしっかり観察し,自 分も挑戦する。遊びの中でも,同じことをしようと少し無理なことにも挑戦する姿が見られ る。・自分の考え,イメージ,世界を常にしっかりと持っていてそれを他児,保母,母親に邪 .−143・
、〃:1[1大学社会福祉研究所年報 fitj H」号(1999)
活動水準
非 周 期 性 回避性一接近性
非順応性
反 応 の 強 さ 機 嫌 の 悪 さ 注意の範囲と持続が短い
散漫性 敏感性
注)ひ保母、り保 母とは、ひよこ組 保母、りす組保母
を指す/t
活 動 水 準 非 周 期 性 回避性一接近性
非順応性
反 応 の 強 さ 機 嫌 の 悪 さ
}主意の範囲と手寺続が短い
散漫性 敏感性
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.〔)
1.0 2.0 3.0 4、0
図2 Rの気質プロフィール
un
o6.0
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
図3 Cの気質プロフィール 144−一
r一どもの気質評価の親一保育者間での「ずれ1について(矢澤・栗崎・萩原・横山・海沼)
活動水準
非 周 期 性 回避性一接近性
非順応性
反 応 の 強 さ 機 嫌 の 悪 さ 注意の範囲と持続が短し
散漫性 敏感性
活動水準 非周期性
回避性一接近性
非順応性
反 応 の 強 さ 機 嫌 の 悪 さ 注意の範囲と持続が短い
散漫性 敏感性
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
図4 Yの気質プロフィール
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
4.63
⊥_一__」__
1,0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
図5 Hの気質プロフィール ー−145・一
泊[人学社会福祉研究所年報 創日㍑(1999)
魔されると,かっとなり怒り泣く「相壬が∫どもの時には,かみつく,ひっかく,これは,
かっとなった気持ちを.∫葉で表現することか苦手で,かみつく,ひっかくになると思う、・赤 ちゃん(0歳児)には優しくいたわる、,ilfi話好きな所もある、
2y C(女児,図3参照): 親よりも保育者が低いと見ているのは 活動水準」,[接近性」
である、逆に,高いと見ているのは 周期性k「注意の範囲と持続|,「非散漫性1である。つ まり,保育者は親よりも,Cを運動の活発さ,新しいことへの積極性で劣り,逆に目覚めや食 事等の牛理的規則性,活動の持続性,気の散り難さで優ると見ている。
親の個性記述: ・何でもお姉ちゃんと一緒で(やること,言うこと),自分は一人前と思っ ている,・人見知りはするが,いろんなことに興味を小し,活発な方だと思う、・あまり小さ なことは気にしない、,・やりたいことをはっきりと自己主張できる.・歌ったりおどったり,
顔の表現力が豊か、、・お調子者、
ひよこ組保母の個性記述: ・思いはあり,意志も強いが,口に出したり体で表現したり,
伝えることが苦千,・困った時や嫌なことがあった時は泣くかもじもじすることがほとんどt)
・一人だけの世界よりも.:人,一三人と同じ世界を共有することを好み,常に他児を気に掛け る,・集中力,持続力もあり,細かなことをする。玩具,スプーン,箸などもスムーズにクリ アする、・姉がいるためか,世話好きでおまぜである。・面と向かって話すよりも,横に座っ て話す方が安心する様∫。
③Y(男児,図4参照): 親よりも保育者が低いと見ているのは 活動水準1,「周期性」,
収応の強さ1,1敏感性!であるu逆に高いと見ているのは「順応性,「非散漫性]である。
つまり,保育者は親よりも,Yを運動の活発さ,目覚めや食事等の生理的規則性,反応や感情 表現の程度,刺激への敏感さで劣り,逆に変化に対する慣れやすさ,気の散り難さで優ると見
ている。
親の個性記述: のんびり屋,活動的,物事に慎重。
ひよこ組保母の個性記述: ・喜怒哀楽もはっきり表し,甘えたり,わがままを言ったりす る.・(ひよこ組での)前半は他児に興味を示さず,対大人か一人遊びに没頭する。後半,言 葉が出てくると,他児との関わりも急に増える。まだ他のr一がどう思うのかまでは考えられ ず,玩具を取ったり,割って入ったり,自分の欲望のまま動くことが多いが,月齢とともに相
f・を思う気持ち,いたわる気持ちが出てくる.・言葉の獲得と同時に,遊び,生活,対人面も 充実, 〜の?,なんで?、など質問も多くなるtt・意欲的に体を動かす方ではなく,運動は
苦:手。
(4)H(男児,図5参照): 親よりも保育者が低いと見ているのは 順応性、,1機嫌の良 さ、である。逆に,高いと見ているのは[活動水準」,敏感性一である。つまり,保育者は親 よりも,Hを変化に対する慣れ,機嫌の良さで劣り,逆に運動の活発さ,刺激への敏感さで優 ると見ている。
親の個性記述: 自分よりも小さい子,女の子には優しくできます。食事などだらだらと食 一146一
J 一どもの気質評価の親 保育者間での ずれ|について(矢澤・栗崎・萩原・横山・海沼こ
べることなく,パッと終わります、スパッとした性格?家だと甘えん坊です
ひよこ組保母の個性記述: ・自分の思い通りにならないと,かんしゃくを起こす、他児の 遊んでいる玩具,絵本,に興味を持ち,それを欲しがり,1カーシテ と言うが,貸してくれな いと,泣く,たたく.・知らない大人がいると,大はしゃぎし,興奮する,我を忘れる、・基 本的に素直で,話を聞こうとする子だが,気に入らなかったりすると,頑固になる一面もあ る ・一人遊びよりも,お友だちとの方が好き、・母親が厳しいためか,ウンチが出た1とか
「嫌いな物」などは,絶対言葉には出さず,黙っている,
2 TTS評価の「ずれ」は,親一]歳担任保母一2歳担任保母間でどう現れたか
検討を行う前に次の点を確認しておきたいt/先の検討では,親と1歳担任保母とをひよこ組 終∫時の同時評定と見なした。そこで,ここでも両評定は同時に行われ,その約7カJ]後に2 歳担任保母の評定が行われたと見なして検討する。
ここで比較するのは,図2〜5の 親のプロフィール,一…ひよこ組保母のプロフィー ル,一・…りす組保母のプロフィールである,R, C, Y, Hのプロフィールを見比べると, C
とYではひよこ組保母とりす組保母のプロフィールが類似して(若「異なる特性もある),親 のプロフィールがそれらとずれる傾向にある。それに対して,RとHでは親とりす組保母のプ
ロフィールが類似して,ひよこ組保母のプロフィールがそれらとずれる傾向にある.前者のパ ターンは,約7ヵ月を経ても保育園での子どもの行動特徴にそれほど変化がなかったことを意 味している。ただしその中でも,若干の変化が見られる。
⑦C(図3参照): [注意の範囲と持続」と「散漫性」が低くなった.つまり,活動の持 続性,気の散りやすさが低ドした。これは肯定的変化であろう。
②Y(図4参照): 「散漫性]と[敏感性」が増大している、つまり,気が散りやすくな り,刺激に過敏になった。これはりす組に進んですぐ第2子が生まれたため,不安定になって 保母の後を追い,ずっと保母の指を握りしめて離さなくなったことと関係があると考えられ
る。これは否定的変化であろう。
他方,後者のパターンは,約7ヵ月経つうちに保育園での行動が変化して,家庭での行動に 近づいたことを意味しているttただし, Hの場合には,前者のパターンとの混合といった側面
もある。それではRとHでは,保育園でどんな気質特性がどうように変化したのであろう,
③R(図2参照): 活動水準,,1接近性L磯嫌の良さ1が増し,[反応の強さ」が低ド した。つまり,運動が活発になり,新しい環境にも積極的に関われるようになり,機嫌の良さ が増し,反応や感情表現が穏やかになってきたttこれは肯定的変化である。
④H(図5参照): r順応性」,[反応の強さ」が増し,「散漫性1が幾分低下した。つま り,変化に対する慣れやすさ,反応や感情表現の激しさが増し,気の散りやすさが幾分低下し た。これらは肯定的変化か,否定的変化か明確でない。
147・一
、1/1[人t ) cト1:会も,1啓【1:{りF究力〒イト報 倉1」IU膓ノ 〔1999)
考 察
1 親一1歳担任保母一2歳担任保母間のTTS評価の「ずれ」は,何を意味するか 人川発達の生態学の観点から予測された通り,親 1歳担任保母 2歳担任保母間にはTT S評価に明かな ずオ 1 !が見いだされた、これはそれぞれの評定者の認知の差による:ずれ1 とは見ない(勿論,厳密には実証しなくてはならないが)、そのうち,親 ユ歳担任保母問の ずれ は,家庭 保育園という行動場面での経験の差を反映したものと見ることができるで あろう では,1歳担任保母 2歳担任保母間の ずわ、はどのように考えたらよいのであろ
う この点を考察するために,家庭場面と比較してのひよこ組での各被検児の行動特徴を描 き,それがりす組に進むことでどのように変化したかを概括してみた、それが表2である、
表2 ひよこ組での家庭と比較しての行動特徴とりす組に進んでの変化の概要
R:家庭行動に接近
・へひよこ組〉
新環境に消極的 機嫌が良くない
戊又比㍉感†IIチ激しい 一 ・
運動的に不活発 牛理的に規則的 活動が持続的
べりす組〉
新環境に積極化 機嫌が良い 反応・感情穏やか 運動的に活発化
Y:t∫動は概田各変矛)ジ)ない
べひよこ組〉変fヒ}こ11頂L㌫rr勺
気が散らない 刺激に敏感でない 一一 反応・感情穏やか
(,、りす組\
気が散るように
・ 刺激に敏感に
C:
<ひよこ組\
新環境に消極的 活動が持続的
気(カミ散P)なし、
生理的に規則的 運動的に不活発
行動は概略変わらない 1
H:
〈ひよこ組〉
変化に非順応的
!機嫌が良くない
{運動的に活発 刺激に敏感
ぐりす組〉
活動が非持続的に
・ 気が散るように
家庭.行動に接近とばいきれない
レ
<りす組\
変化に順応的に
(やや機嫌良い)
〔やや非敏感に)
反応・感情激しく
(榊酬⊥」
Rは.一人っ子であり,ひよこ組担任Hが個性記述で述べていたように,自分の考え,イ メージ.世界を常にしっかりと持って挑戦する子である。しかも,かっとなった気持を表現す ることが苦手である。こうした特質が,ひよこ組での生活を,いろいろと体験して学ぶことの 多い,克服的なプロセスにしたと見ることができるであろう.特に,大人と違い配慮的でない 仲間との関係が厳しかったと考えられる。しかし,そうした経験から,自分の気持ちを伝える といった能力の獲得などを踏まえて,彼女の場合にはりす組に進んで,家庭と同じように,保 148一
f一どもの気質評価の親 保育者{呂1での ずれ1について次澤・栗崎・萩原・横山・海沼、
育園で自分を発揮できるようになったと考えられるのである
Cは,姉がいて家庭でいろいろ経験しており,多少の不安定を示しつつ,ひよこ組の仲間と の生活に適応できたと考えられる ひよこ組担任IIが個性記述で述べていたように,川避性と いう基本特質は持ちつつも,意志が強く,細かなことに取り組む集中力・持続力と,他児への 関心とおませな世話焼きの行動スタイルで,仲間という新環境にも順応的であったと考えられ るのである.この意味で,りす組に進んでも行動特徴の概要は変わらなかった ただ,若卜見 られた変化は,一層他児との関係の中に自分を開いていく,変化の兆しと見ることもできるで
あろう.
Yは,ひよこ組の頃は一人っf一であり,ひよこ組担任Hが個杜記述で述べていたように,甘 えが多く,わがままで,穏やかだが,他児への配慮性にやや欠けるといった特徴を持ってい る 大人との関係に頼りながら,言葉の獲得につれ仲間との関係もでき,課題は残しつつもひ よこ組への適応を果たしていたと考えられる,りす組に進んでからもこのスタイルは八本的に は変化していない、しかし,第2子の出産もあり,ひよこ組での後半よりはりす組になってか ら,やや不適応な面を示していると見ることができる,.
Hは,姉がいる、しかし,ひよこ組担任11が個性記述で述べていたように,母親が厳しいた め家庭で自分が発揮できない,その満たされない部分を保育園で出しているようである.した がって,運動的活発さが許される保育園でそれを発揮しつつも,大人の視線に敏感で,仲間と の関わりでは,ダイナミックな変化について行けない面も出ていたt/ひよこ組の牛活では,基 本的な適応は果たしつつ,困難を抱えていたと推定される その問題は,りす組に進んでから
もあまり解決していないように思える、、順応的な側面は現れつつ,仲間とぶつかったり,障害 があると,激しく反応し感情をあらわにする面が出ている。
このように見てくると,]歳担任保母・2歳担任保母間の「ずれiは,同じ保育園という行 動場面であっても,子どもが経験から様々な能力を獲得し,園環境に慣れるにしたがって,そ
こでの子どもの経験が変化すること,を反映していると考えられるのである 2 親一保育者間のTTS評価の「ずれ」を,保育者の子ども理解に生かす
保育者は,現場で責任を持ってfどもを見ているため,自分の了ども理解こそが正しいと考 えがちであるttしたがって, TTSを親に回答して貰い,自分でも回答して,そこに ずれi が出ると,親の見方が間違っているという方向でその:ずれ.を捉えることも起こりうる、し かし,今回の事例的な検討から明らかになったことは,親の回答結果には豊かな情報が含まれ ているということである,特に,その回答を自らの回答結果と比較するならば,そこから読み 取れる情報の豊かさは,さらに増大するttそこで, TTs評価の ずれ,を保育者のr一ども理 解を深めることに利用していくためのポイントを,これまでの検討を踏まえて纏めてみるtt ①親の回答結果は,家庭という行動場面でのf どもの経験を反映したものと捉える.、そこで は,子どもが本来的自己(気質)を,保育園より家庭で発揮できている,i∫能性がある,という 一一149一
、it:ll:人学社会福祉研究所年報 創1二lp 」−q999)
見力か必要である、Rの事例で見たように,り川の保育園での∫・どもの成長の姿が,親の回答 に映し出されている可能性があるのである、また一方では,家庭での自己発揮が抑制され,そ のことがf どもの保育園での牛活にまで影響するという可能性もある。Hの事例がその1例で ある 他方,家庭でf ども自身はそれなりの自己発揮ができ,保育園の生活でもそのやり方で
一応の適応を果たしている、しかし,家庭での学習体験の不足が,保母への依存という形で目 につく場介もあるttYがその1例である,Yが現在のやり力をベースに,保育園で今後どんな 体験をして,その依存的側面をどう克服していくのかは末知数である。
::21保育者の川答結果は,保育園という行動場面でのfどもの経験を反映したものと捉える.
したがって,それは必ずしもf ども本来の自己(気質)を示すもの,と見ないことが大切であ る そこには,子どもの現在の発達課題を反映した,保育園での克服のプロセスを,見いだす ことができるかも知れない、RやHがその1例である.保育者がそのことに気づく着眼点とな りそうなのが,親の回答結果と比較して,保育園で丁どもの機嫌が良くない」ことのようで ある、表2で,RもHもひよこ組の生活では[機嫌が良くない からであるttその後,りす組 に進んでRはその点を克服したが,Hはまだその克服の途一ヒにあるようである。こうした保育 者の 気づき1は,例えば,ひよこ組担任HがRに行った[かっとなった気持ちを言葉で表現 するよう促す|といった,具体的な子どもへの処遇に希望と根拠とを与えるはずである。
③親の評価が家庭,保育者の評価が保育園での子どもの経験を反映しているとすると,そこ から…般的な家庭経験保育園経験を読み取ることができそうであるtt例えば表2を見ると,
家庭に比べ保育園で,R, C, Yは1運動的に不活発」で, RとCは「生理的に規則的1であ る.既述のように家庭に比べ保育園の力が,大人から子どもへの行動の制約は少ない。反面,
保育園の持つ集団性とそれと関わる生活の規則性が,平均的に子どもの活動水準を抑制し,生 理的規則性を助長している可能性が考えられる。また,家庭よりも保育園の方が,新しい経験 に出会うチャンスが多いであろう.だとすると,保育園の方で「新環境に消極的」という特性 は,より強く現れるはずである.つまり,多数の親と保育者の,子どもに関するTTS評価を 平均値比較するならば,一般的な子どもの家庭経験と保育園経験の共通性と違いを,浮かび上 がらせることができるttその調査を踏まえて,1人の子どもの親一保育者関でのTTS評価の ずれを検討していくなら,そこからより豊かな情報が読み取れるはずである/t例えば,一般に 保育園での方が家庭でより,子どもの活動水準が低いとする。表2のHのように,その一般傾 向に反している場合には,注目が換起されるし,その意味するところがより深く考えられる,
と思うのである。
結 論
その子どもをよく知る大人,親や保育者がTTSを評定すると,その評定の一致度は高いと されてきた.しかし,人間発達の生態学の観点からすると,親の評定は子どもの家庭での経験 一150−一
r一どもの気質評価の親 保育者間での ずれ について(矢澤・栗崎・萩原・横山づイぴ沼)
を,保育者の評定は子どもの保育園での経験を評価していると考えられる とするなら,親 保育者のTTS評価には ずれ,が生じるLl] 能性が捕{1された そこで,本研究では,2歳児
クラスの保育園児4名(女2,男2)の親と,旧1歳児クラスの担任にTTSに回答してもら い,それを比較することで,このf測を事例的に検討した、.また,両者の評定の 約7ヵ月 後,という想定で,現2歳児クラスの担任にもTTSに回答してもらった.
その結果,親 保育者間のTTS評価には相当大きなミずれ、が認められた そのずれが大 きいケースとそれほどでないケースがあった。また,旧1歳児担任と現2歳児担任の評価で は,ほぼ一致するケースと大きくずれるケースがあった「特に,ずれる場合に,現2歳児担任 の評定と親の評定とがほぼ一致するケースも認められた、今回は,パイロット的な,仮説の発 見を目的とする事例分析であったため,評定者間の認知のずれはないと仮定して分析した、結 果は,親の評価は子どもの家庭での経験を,保育者の評価はfどもの保育園での経験を反映
し,1歳児担任.2歳児担任間のずれは,子どもが獲得した能力によって,1司じ保育園での経 験が異なってくることを反映するものと,整合的に解釈できることが示された、.これらの検討 を踏まえて,親一一保育者間のTTS評価のずれを,保育者が自らの子ども理解を深めること に,応用する際の留意点が議論された。
今後の課題としては,①多数の親と保育者の子どもに関するTTS評価を平均値比較するこ とによって,K一どもの家庭経験と保育園経験との一般的な違いを抽出すること,②同じ行動場 面で子どもに接している大人の間では,TTSの評定は大きくずれないことの実証,③それら を踏まえ,TTS評価の親 保育者間での評価の「ずれ」を,保育者の子ども理解に応用して いくための,さらなる理論化である。
次の報告では,今回見られたTTS評価の親一保育者間での評価の「ずれ」を,親と保育者 相互のコミュニケーションを促進するための媒体として用いていく可能性について検討する、,
おわりに 今回の研究を行うにあたり,TTSH本語版の使用を快くお許しいただいた東北 福祉大学教授,佐藤俊昭先生に感謝いたします。また,研究の実施をお許しいただき,われわ れの研究会活動を支援して下さった茶々保育園理事長の迫田圭子先生,園長の河野李香先生に 感謝いたします。そして,TTSにご回答いただいた,被検児のお母様方,りす組担任の柳和 美先生,岡部玲美先生のご協力に感謝いたします。
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付録 TTS日本語版(佐藤俊昭・古田倭文男,1982)の質問項目の例示(全97項目の最初の15項目のみ示 す 質問項日の後の括弧内は,その項日で測ろうとする気質特Wを示す)
12345678
9 10
11
12 13 14 15
毎晩だいたい決まった時刻に眠くなる(ずれても30分以内) 周期性
静かな活動(お話をきく,絵本を見る)のあいだ,落ちつきなく身体を動かす.活動水準1 食べものの好ききらいを強くは示さず,おとなしく食べる 反応の強さ
なれない場所にはじめて行ったときでも,きげんがよい(ほほえtl ,笑う).機嫌のよさ 医者にみてもらうときも,はじめは P気である、接近性
親との遊びに集中するのは,せいぜい1分間ほどである 注意の範囲と持続性.
ウンチをする時刻はまちまちで,日によって1時間以Lもずれる 周期性
目を覚ましたとき,ぐずる(しかめっつらをしたり,ぐずぐずいったり,ないたりする)。L機嫌のよ
さ
はじめての人にあずけようとするといやがる(泣いたり,母親にしがみついたりする)..、接近性 きらいな食べものは,好きなものとまぜても,わかってしまう 敏感性
欲しいものや,やりたいこと(おやつ,人好きなこと,プレゼント)が数分間待たされても,がまん して待てる 順応性
服を着せられるとき,じっとしている 活動水準
自分がいる部屋のなかで物音がしても,ノ〉していることを続ける 『散漫性 失敗したときは,強い反応を示す(粒く,じだんだふむ、)反応の強さ 好きなオモチャでなら,10分間以Eも続けて遊ぶ.注意の範囲と持続性
一・一…一一・
以 卜 省 略 ・.……一
以トのような質問項目に,1(ほとんど〜でない),2(めったに〜でない),3(どちらかというと〜で あることは少ない),4Vどちらかというと〜であることが多い),5(しばしば〜である),6(ほとんど いつも・x一である)の6段階評定で回答する
・一一 152一