平 成
1 8年 度 共 同研 究 実施 報 告 書
研 究 題 目 大野 .種市.における地域農産物の健康機能研究 と食品開発、事業化振興 共 同研 究者 研究代表者 西洋 直行 (岩手大学農学部 .教授)
(所属 .職) 瀧音 二三男 (洋野町 .ユーキの里づ くり推進室長補佐) 小 田島 弘 ((財).さん りく基金 .主任研究員)
研 究代 表 者 電話 :
0 1 9 ‑ 6 2 1 ‑ 6 1 6 7 FAX:0 1 9 ‑ 6 2 1 ‑ 6 2 6 2
連 絡 先
Eメール : m is i z a wa @i wa t e ‑ u. a c . j p URL:
研 究 目 的
本研究は、大野 .種市地域の特徴ある農産物 を活用 したもの作 り、健康機能研究及び商品化 . 事業化研究 による北三陸地域の小規模農業 .食品事業の振興 .活性化 に資 し、雇用創出を図る
ことを目的 とするo 研究結果の概要
1
はじめに (研究の背景等)背景 :北三陸の大野 .種市地域 は、やませのような冷涼 な気候 を生か したホウレン草、大根、
ニ ンジン、大豆、雑穀、 リンゴ及び山菜等の畑作農産物の栽培、及びウニ、アワビ、海藻類 な どの海産物の生産、 さらに広大 な草地 を活用 した酪農が盛 んである○ また、家畜糞尿 の有機質 堆肥 を積極的に生産 し、その施肥、及び可能な限 り少量の農薬や化学肥料の使用 によって品質 の高い、安心 .妄全 な農産物 を生産 し差別化 をしようとしているo しか し、いまだ安価 な原材 科の供給 に留 まっているのが実状であるo従 って、現状 を改善 し、高附加価値の食品開発、商 品化 をしたいニーズあるo
一方、北三陸の大野 .種市地域の野菜及び山菜類の健康機能 を明 らかにしようとする研究は 全 くなされお らず、また、これ らの食品の開発研究は充分 にされていないo̲
従って、大野 .種市地域の特長ある野菜 .山菜類の健康機能研究の成果 と地産地滑 に基づ く これ らの附加価値の高い食品開発、商品化 .事業化の必要性 と意義は極めて大 きい と思われるo
本研究は、次の内容で行 った○
1)大野 .種市地域の特徴ある野菜、山菜類の農産物素材の栄養機能性成分の含量の測定
2
)上記の健康機能開発研究3
)上記の食品開発 と商品化 .事業化2.調査方法
本研究は、次の内容で行 った○
1)大野 .種市地域の特徴ある野菜、山菜類の農産物素材の栄養機能性成分の含量の測定 大野 .種市地域か ら、以下の ように、野菜、山菜類 を入手 し、それぞれの栄養素成分含量 を 測定 した :ホウレンソウ、 うるい、ふ き、大根葉、す ぐり、 しどけ、がまずみo
食品の健康機能の一つに、その抗酸化機能があるが、その測定は、総ポリフェノール含量 と
1 ' nV I ' t T
O実験の活性酸素消去活性 によって評価 したo以下のように、i
nVi t r o
実験で、総ポリフェノール含量 とラジカル消去活性 を、測定 したo( 1 )
給ポリフェノール含量の測定 :ポリウエノ‑ル量は、熱水抽出 と1 %
塩酸‑メタノール抽出‑ 5‑
三陸総合研究 第
3 1
号( 2 )
ラジカル消去活性の測定 :DP P H
ラジカル消去能によって、抗酸化活性 を測定 した。2
)上記の健康機能開発研究( 1 )
ウレンソウ画分の単回経口投与がラッ トの耐糖能に及ぼす影響本実験では、ホウレンソウの成分組成 とホウレンソウを水溶性画分 と沈殿画分 に分離 し、
それぞれをラッ トに単回投与 して
、Or a lgl uc o s et o l e r a nc et e s t
を実施 して、それ らの画分 が糖代謝にどのような影響 を及ぼすかを調べた。( 2 )
ホウレンソウが2
型糖尿病 ・肥満モデルマウスの糖代謝、脂質代謝 に及ぼす影響ホウレンソウ凍結乾燥乾燥物 を高脂肪、高 シ ョ糖食餌条件下で
、C57 BLKS/J I a r ‑+Le pr db/+Le prdb
マウスに摂取 させた時の糖代謝、脂質代謝 に及ぼす影響 を、2%
ホウレン草を含む飼料で
42
日間飼育 してその効果 を検討 した。3
)上記の食品開発 と商品化 ・事業化食品開発 は、以下のように、新食品試作製品開発 を行い、次年度 における商品化 ・事業化の 目処が立てられた。
( 1 )
しいたけパ ンの製品開発( 2 )
うどん、ソバ、豆腐の新食品試作製品開発3 結 果
1)大野 ・種市地域の特徴ある野菜、山菜類の農産物素材の栄養機能性成分の含量の測定
( 1 )
栄養成分含量 :ホウレンソウ凍結乾燥物の1 0 0g
中の成分組成のデータを示 した。水分4 . 2 g
、 タンパ ク質3 3 . 1 g
、脂質6
,0g、灰分2 0 . 8g
、糖質3 5 . 9g
、鉄1 6 . 1 mg
、カルシウム81 3 mg
であった。食物繊維は、水溶性食物繊維が
8 . 3g
、不溶性食物繊維2 6 . 7g
であった。 また、シュウ酸9 . 0 3 g
、α‑
カロテン検出せず、 β‑カロテン4 3 7 0 0〃g
、総カロテノイ ド1 7 5 mg
であった。 しどけ、ふ き、うるい、大根葉の成分分析の結果は、以下の通 りである :タンパ ク質は、 しどけが
3 0 . 6g
と4
種の中で最 も多 く、 うるいで2 7 .
0g、大根葉で1 8 . 9g
とな り、ふ きは7 . 9g
と4
種の中では最 も少なかった。糖質は大根葉で
6 0 . 8g
と4
種の中で特 に多 く、ふ きで2 5 . 2 g
、 うるいで2 1 . 1 g
とな り、しどけが
1 6 . 1 g
と最 も少なかった。食物繊維はふ きで43 . 6 g
と4
種の中で特 に多 く、大根葉で31 . 0 g
、 うるいで2 9 . 4g
、 しどけで29 . 2 g
となった。ナ トリウムは、 しどけが8 . 9 mg
、ふ きが5 . 0 mg
、うるいが
9 . 0 mg
だったのに対 して、大根葉で5 36 mg
と他の3
種 と比較 して特 に多かった。カル シウムは、大根葉で1 3 40 mg
と4
種の中で特 に多 く、ふ きで86 6 mg
、 しどけで6 27 mg
とな り、うるいが
41 4 mg
と4
種の中で最 も少なかった。血 中のホモシステインレベルを下げる成分である葉酸含量 は、 しどけで
96/ ∠g
、 うるいで9 9/ Jg
であったのに対 して、ふ きで6 6 0/ ∠g
と他 と比較 して際立 って多いのが特長でった。が まずみの成分含量 :健康機能成分のポリフェノール量が、多いことがわかった。赤 ワイ ンや野菜 ・果物の健康機能成分のポリフェノール量 は
、3 30 mg
であ り、最 も含量の多い赤 ワ インとほぼ同 じ量か、少 し多い量が含 まれていた。( 2 )
総 ポ リフェノール含量 :試料1
g当た りか ら各溶媒 によって抽 出 されたポ リフェノール量( ga mi ca c i d
当量,GAE)
を測定 した結果は、以下の通 りである。しどけはメタノール抽出で
5 3 . 9 5 ± 1 . 83 GAE g/g
と最 も多 くのポリフェノールを抽出するこ とがで き、次 に多かったのは熱水抽出で31 . 8 4± 0 . 1 6GAEg/g
であった。エ タノール抽出では1 4. 6 9±0 . 57 GAEg/g
、アセ トン抽出では3 . 03 ± 0 . 20 GAEg/g
とあま り多 く抽出することはで き なかった。 しどけは、 どの抽出溶媒で も4
種の中で最 も多 くのポリフェノールを抽出すること がで きた。ふ きはメタノール抽出で
3 8 . 6 6 ± 1 . 1 9GAEg/g
と最 も多̲くのポリフェノールを抽出すること‑ 6‑
がで き、次 に多かったのは熱水抽出で
1 9 . 1 1±0 . 2 8 GAE g/ g
であった。エタノール抽出では6 . 3 5
±0 . 9 3 GAE g/ g
、アセ トン抽出では1 . 0 7±0 . 1 2 GAE g/g
と多 く抽出することはで きなかった。ふ きは、メタノール抽出、熱水抽出、エタノール抽出で しどけに次 ぎ
2
番 目に多 くのポリフェ ノールを抽出で きたが、アセ トン抽出では4
種の中で最 も少ない抽出量 となった。うるいは、熱水抽出で
1 0. 1 7±1 . 1 6 GAEg/ g
と最 も多 くのポ リフェノールを抽出することが で き、次 に多かったのはメタノール抽出で9 . 9 8±0 . 0 8GAE g/ g
であった。エ タノール抽出で は2 . 1 6± 0 . 0 6 GAEg/g
、アセ トン抽出では1 . 35±0. 2 0GAE g/ g
とほとんど抽出することはで き なかった。 うるいは、メタノール抽出、熱水抽出、エ タノール抽出でのポ リフェノール抽出 量は4
種の中で最 も少な く、アセ トン抽出では3
番 目の多 さだった0大根葉 は、メタノール抽出で
1 3 . 61±0 . 6 0 GAEg/g
と最 も多 くのポ リフェノールを抽出す る ことがで き、次 に多かったのは熱水抽出で1 2 . 1 7±0 . 3 4GAE g/ g
であった。エ タノール抽出で は3 . 86± 0 . 2 3 GAEg/g
、アセ トン抽出では2. 7 7±0 . 1 4GAE g/ g
とほとんど抽出することはで き なかった。大根葉は、メタノール抽出、熱水抽出、エ タノール抽出では4種の中で3番 目、ア セ トン抽出ではしどけに次 ぎ2
番 目に多 くのポリフェノールを抽出で きた。( 3 )
ラジカル消去活性の測定 :( 3 ‑ 1 )
熱水抽出物のDPPH
ラジカル消去能熱水抽出物で行 った
DPPH
ラジカル消去能測定の吸光度変化 は、 しどけ、ふ きでga l l i ca c i d
と同様の変化 を見せ、うるい、大根葉では大 きな変化 を見せなかった。消去率はポリフェノー ル濃度が0 . 1 mg/ ml
の ときで比較すると、ga ll i ca c i d
ではラジカルが33 . 71 %
まで減少 し、 しど けでは2 7 . 96 %
、ふ きでは32 . 0 0%
とこの二つの抽出物ではコン トロール と同程度 ラジカルが減 少 した。一方、 うるいでは8 2. 3 6 %
、大根葉では70 . 7 5 %
とこの二つの抽出物では強いラジカル の消去能は見 られなかった。( 3 ‑ 2 )
メタノール抽出物のDPPH
ラジカル消去能メタノール抽 出物で行 った
DPPH
ラジカル消去能測定の吸光度変化 は、 しどけ、ふ きでga l l i ca c i d
と同様の変化 を見せ、 うるい、大根葉で も他の3
種 と比べ ると少ないなが らも吸光 度の濃度依存的な減少 を見せた。消去率は、ポリフェノール濃度が0 . 1 mg/ ml
の ときで比較す ると、 コン トロールのga l l i ca c i d
ではラジカルが25 . 69%
に減少 し、 しどけでは27 . 9 0%
、ふ き では2 3 . 1 9 %
とこの二つの抽出物ではコン トロールと同程度 ラジカルが減少 し、うるいでは4 4 . 0 0
%、大根葉では
4 4. 05 %
とこの二つの抽出物ではコン トロールや他 の二つのサ ンプル と比較す ると消去能は弱いなが らも、この濃度でラジカルを半分以上消去 した。2
)健康機能開発研究( 1 )
ウレンソウ画分の単回経口投与がラットの耐糖能に及ぼす影響Or a lgl uc o s et o l e r a nc et e s t
血糖値経時変化 :グルコース投与後6 0
分でホウレンソウ沈殿 群1 4 0± 1 1 mg/dl
、上清群1 40±8 mg/dl
であ り、ホウレンソウ画分 を投与 していないコン トロール群 との平均的な値 と差がなかった。
( 2 )
ホウレフンソウが2
型糖尿病 ・肥満モデルマウスの糖代謝、脂質代謝 に及ぼす影響飼育最終 日の血中グルコース濃度は、対照群
49 6±3 5 mg/dl
に対 して、ホウレンソウ群4 45
±3 5 mg/dl
とホウレンソウを摂取することで、有意に低下 した。血渠中HDL
コレステロール 濃度 は、対照群の85 . 1±63 . 3 mg/dl
に対 し、ホウレンソウ群の値 は、1 21 . 8±43 . 9 mg/dl
と、ホ ウレンソウを摂取 ことにより高 まることが明 らかになった。血衆中アデイポネクチ ン濃度は 有意差 はか 、ものの、対照群の1 6 . 47±8 . 43 F Lg/ ml
に対 して、ホウレンソウ群の値 は、1 9 . 9 0±
4 . l l / ∠g/ ml
と、ホウレンソウを摂取することによりその レベル高 まる傾向があった。 これ ら‑7‑
三陸総合研究 第31号
の結果は、ホウレンソウが、血糖値低下や
HDL‑
コレステロール、アデイポネクチ ンレベル、肝臓の脂質代謝改善に機能する可能性が示 されたことは
、2
型糖尿病やインス リン抵抗性、及 び動脈硬化症の改善 ・予防に機能する可能性が明 らかにされた。3
)食品開発 と商品化 ・事業化( 1 )
しいたけパ ンの製品開発出来上が りは、色調、香 りも良い状態であった
。1 9
年度の商品化 ・事業化の目処がで きた。( 2)
うどん、ソバ、豆腐の新食品試作製品開発「しいたけうどん」 :ほのかな しいたけの風味があ り、製品ので きあが り、味は、良好で あった。
「ふの りうどん」 :ゆでる前 に、 とて も磯の香 りが して、製品ので きあが り、味 は、良好で あった。
「いなきみ うどん」 :きびの味がな く、通常のうどん風であった。
上記の中で も、特 に、「しいたけうどん」 と 「ふの りうどん」 は
、1 9
年度 に商品化 ・事業化 を 目指 したい。「カボチ ャ豆腐」 :あざやかなオレンジの色調 をあ らわ し、マーケ ッ トにない新規 な豆腐で あった。ほのかなカボチャの風味があ り、製品ので きあが り、味は、良好であった。
「しいたけ豆腐」 :しいたけのほのかな香 りが して して、製品ので きあが り、味は、良好で あった。 しいたけを味付 けするなど、改良を加えることが必要に感 じた。
「ホウレンソウ豆腐」 :あざやかな緑の色調 をあらわ し、マーケ ットにない新規な豆腐であっ た。ホウレンソウを味付 けするなど、 さらに改良を加 えることが必要ある。
「ニ ンジン豆腐」 :あざやかなニンジンの色調 をあ らわ し、マーケ ッ トにない新規 な豆腐で あった。ほのかなニンジンの風味があ り、製品ので きあが り、味は、良好であった。
「ふの り豆腐」 :ほのかな磯の香 りが して、製品ので きあが りは、良好であった。 しか し、
ふの りの味はほとんどな く、にが りを加 える直前 に、ふの りを添加するなど、製造 に改良を 加 えることが必要である。
上記の 「カボチャ豆腐」、「しいたけ豆腐」、「ふの り豆腐」、「ホウレンソウ豆腐」、「ニンジ ン豆腐」の
5
種 は、1 9
年度 に商品化 ・事業化 を目指 したい。4
考 察本年度の研究開発で、野菜 ・山菜類の機能性研究か ら、 しどけ、大根菓お よびが まずみの抗 酸化機能が高いことを明 らかにした。
また、ホウレンソウの動物実験 による健康機能研究で、血糖値 を低下 さげ
HDL‑
コレステロー ルおよびアデイポネクチ ンレベルを高める傾向を有することが示唆 した。さらに、野菜、ふの り等の海産物 を用いた試作 品の開発研究で、次年度の目標 として、充分 商品化 ・事業化することので きる製品開発がで きた。
これ らの本年度の研究か ら、洋野町地域のホウレンソウ、 しどけ、及びがまずみ、海産物の 高附加価値食品を開発、商品化 ・事業化するうえで重要な研究成果が得 られた。
地域振興への展開
本年度の研究成果に基づ き、次年度 には、更 に成分分析、健康機能研究開発 を推進 して、大 野 ・種市地域の北三陸の特長ある野菜 ・山菜類の地産地消 に基づ くこれ らの附加価値の高い食 品開発、商品化 ・事業化 を目標 としたい。
備 考
本研究の詳細は、『三陸総合研究』に掲載予定である。