長崎大学総合環境研究 第6巻 第1号 pp. 89‑112 2003年10月
学校給食の地場産 自給率 に関す る研究
中村 修 (長崎大学環境科学部)
秋永 優子 (福岡教育大学家政教育講座助教授) 田中 理恵 (佐賀大学大学院農学研究科修士課程) 辻林 英高 (長崎大学大学院経済学研究科修士課程) 川 口 進 (北筑前地域農業改良普及 セ ンター)
StudyontheLocal‑ProduceSelf‑SufficiencyRatioofSchoolLunch OsamuNakamura,YuukoAkiyama,RieTanaka,
HidetakaTsujibayashiandSusumuKawaguchi
Wehaveconductedin‑depthstudiesoftheusagestatusoflocalproduceforschoollunchuslngtheconcept oflocalproduceself‑sufficiencyratio.
Asaresultofconductingsixstudiesfrom 1999to2001,thelocalproduceself‑sufficiencyratiowasabout lO% onaverage.Basedonthisfinding,manylocalgovernmentshavegoneintoactionforlunchmadeof localproduce.Fuithermore,itisnecessaryfortheagrlCulturaladministrationtoactasleaderintaking actionforlunchmadeoflocalproduce,andwehaveverifiedseveralmethodsforsuchdevelopmentinthis researchpaper.WehavealsoclarifiedthatschoolnutritionistswoulduselocalagrlCulturalproducebythe agriculturaladministrationtakingactionwhichisthemainbodyoflocal‑producelunch.
1 は じめに
1‑1 食 と農の距帝の拡大
「地産地消」すなわち 「自分が生 きている土地 で 取れた ものを食べる」 という行為 は,生命が誕生 し てか らつい最近 まで当然の ことであった。 しか し, 都市への人口集中 ・食生活の多様化 ・外部化 ・輸送 手段の発達 ・卸売市場 といった大量物流 ネ ットワー クによって,「地産地消」 が あ らためて政策 と して 求め られるほどに,食 と農の距離が拡大 して きてい
る。
拡大 しているのは,「物理的距離」だけではない。
作 る人 と食べ る人のお互いの気持ちが見えない とい う 「心理的距離」 も拡大 している。 また,都市 で は 日々の暮 らしと農業 との接点が失われ,農村 もベ ッ ドタウン化 し地元農業への意識の差が広が るとい う 受領年月 日 2003(平成15)年5月29日
受理年月 日 2003(平成15)年8月20日
「社会的 ・文化的距離」 の拡大 も無視 で きな くな っ ている。 この食 と農の距離の拡大 によって, さまざ まな問題がお きている。
まず,生活習慣病,食べ残 しによる大量の廃棄物 問題 といった 「飽食」の問題。一方で,栄養バ ラ ン スの乱れ,孤食, ア レルギーといった 「栄養面 での 貧困化」。食のグローバル化 によ る地域 の 「食文化 の貧困化」 も指摘す ることがで きる。
ここ数年 は,BSE(狂牛病) ・偽装表示 ・遺伝 子組み換 え問題 などの 「安全性」の問題が頻発 して いる。
さらに,輸入農産物 との競争 により,価格破壊 が お こり,国内の農業 は大変な打撃を受 けている。 長 距離輸送のために使われ る薬品 ・エネルギーは環境 負荷を増大 させている。 これは 「フー ドマイレージ‑
食品輸入量 ×輸送距離」 という概念 によって、 その 間題が指摘 されている。
こうした問題を背景 に,各地で 「地産地消」再生
‑ 89‑ 総合環境研究 第6巻 第1号
中村 修 ・秋永 優子 ・田中 理恵 ・辻林 英高 ・川 口 進 の取 り組 みが は じまっている。 「物理 的距離」 を縮
める取 り組み として棒,産直活動,学校給食での地 場産物活用,農産物直売所,大手スーパーの直売 j‑
ナー設置,生 ゴ ミの リサイクルによる地場農産物 の 活用 などがある。 また,「心理 的距離」 を縮 め る も の としては,総合学習,農家のホームページな どが ある。「社会的 ・文化的距離」 を縮 め る もの と して は,市民農園 。体験農園 。援農 などで, 日常生活 と 農 との接点が作 られている。
このように各地で さまざまな取 り組みが始 ま ぅて いるが,政策的課題や制度上 の問題 など個人や‑T地 域の努力では解決で きない問題が出て きている。
そ こで,本稿 で は 「地産地消」 の第一歩 と して,
「地場産 自給率」という概念を用いて,「食 と農 の距 離 の拡大」 の現状把握を試みた。
1‑ 2 地産地消再生のための学校給食
本稿では,「地産地消」 の取 り組 み と して 「学校 給食での地場産物活用」 を取 り上 げる。
学校給食 を取 り上 げる理由の一つ は,児童期 に毎 日6‑9年間 も食べ続 けること,級友 と一緒 に同 じ ものを食べ ることか らも,子 どもの心身の発達 と味 覚 ・食噂好 。食習慣の形成 に大 きな影響 を与え ると 考え られるか らだ (荷見、根岸1993)0
完全給食実施率が小学校で98.5%, 中学校 で67.0
%という高い割合で普及 していることか ら,学校給 食で食習慣 を身 につ けた子 どもたちが,食料の消費 構造 を通 して,将来の農業 。食関連産業 に影響 を与
えることは必至である。
本稿では, こゐような学校給食 の重要性 にもかか わ らず, 地元農産物が豊富 にあ る農村地域 にお い て も,未来を担 う子 どもたちが食べ る学校給食 の食 材が遠隔地 。海外の農産物 に依存 している現状 を明
らかに した。
1‑3 地場産 自給率の提案
「地場産 自給率」 という概念を用いて調査をお こ なった。本調査で言 う 「地場産」とは市町村内産 の 食材 の ことを指す.算出方法 は,重量ベースでお こ な った。 よって,・「地塊産 自給率」 は,「全食材 の重
量 に占める市町村内産食材の重量 の割合」である。
算出方法 としては, カロ リーベース ・金額ベニ ス などの方法 も考え られるが,多数 の調理施設 を対象 に した膨大 なデータ処理であ った こと,調査票記入 を行 う栄養士の負担 などを考慮 し,最 も処理が容易 な重量ベニスを採用 した。 ただ, 「地場産 自給率」
の概念 ・調査手法 はまだ確立 されたものではな く, 後 に述べ るような様々な課題を抱えてお り,改善 し ていかなければな らない。 しか し,本稿の目的であっ た 「学校給食 における食 と農の距離の拡大」の現状 を明 らかにす る手段 としては有効であったと考える。
なお、1999年か らこの概念を用いた調査をおこなっ てきたが、 いまや佐賀県、山口県、熊本県、長崎県、
そのほか多 くの県、市町村単位で この概念を用 いた 調査が実施 され、 この概念 と調査方法 は定着 しつつ ある。
2 調査の概要 2‑ 1 調査の目的
本調査では,「地場産 自給率」 を用 いて, 学校給 食 における地場産物利用の現状を把握す ることを 目 的 とす る。
2‑2 調査の対象 ・期間 ・主体
ここでは,1999年か ら2001年の冬 に行 った6つ の 調査のデータを扱 う。 各調査をおこな った期間 ・対 象 ・主体 は以下の表の とお りである。
表2‑1 調査対象 。期間 ・主体一覧
調査期間 調査対象 調査主体
・地域 調 理場 数
〜6.25 大瀬戸町 部 秋永優子研究室 1999.ll.29福岡県 10北 筑前 地 域 農 業 改
〜12.3 粕屋 .宗像郡 良普及 セ ′夕‑
1999.12 長崎県 ・∴97,.二長 崎大 学環 境科 学部 .中 村修研究室 1999.12‑ 先進地 ∴ I20福岡教育大学家政学部 秋 永優子研究室 2000二10.2 福岡県大木町 1 福岡教育大学家政学
〜10.6 部 ∴秋永厚子研究室 200.1.ト 全国 ・p6】∴.殖 域 循 環 研 究 所 I‑2002'.1 ・(中村修研究室)
各 自給率調査 より作成
(1) 長崎県大瀬戸町の調査
この調査 は,一番初 めに行 った自給率調査であり, 1999年6月の1週間長崎県大瀬戸町の学校給食 セ ン
ターの栄養士の協力を得て調査票 に記入 してもらい, 福岡教育大学の秋永優子研究室で行 った。 このセ ン
ターは,町内の小学校 と分校5校597食 と中学校1 校318食の給食を受 け持 っていた。
‑ 90‑
学校給食の地場産 自給率 に関す る研究 (2) 福岡県粕屋 ・宗像郡内の調査
北筑前地域農業改良普及センター学校給食プロジェ ク ト研修班‑7名が平成11年5‑ 8月にかけて,各市 町村の教育委員会を訪問 し,各市町村1校ずっ小学 校の栄養士を紹介 して もらい,地場産物の使用状況 や将来 の意向についてイ ンタビューをお こなった。
その後,平成11年11月29日か ら12月3日の5日間に, イ ンタビューを行 った栄養士 に調査票 を記入 して も らった.回収 した調査票 は,福岡教育大学め秋永優 子研究室で集計 した。
(3) 長崎県の調査
1999年12月,長崎県教育庁体育保健課の協力 を得 て,長崎県内79市町村 の教育委員会に調査協力 を依 頼 し,58箇所か ら回答 を得た。調査票の記入 は各市 町村の小学校の栄養士 に行 って もらった。 これを, 長崎大学環境科学部中村修研究室で集計 した。
(、4)先進地20施設の調査
あ らか じや地場産物 を導入 していることがわか っ ている全国20の調理施設の栄養士 に調査協力を依頼 した。集計 は,福岡教育大学の秋永優子研究室で行 っ た。
(5) 福岡県大木町での調査
長崎大学環境科学部中村修研究室の取 り組む有機 物循環事業の一環 として、福岡教育大学の秋本優子 研究室が依頼 し、福岡県大木町の学校給食セ ンター の栄養士の協力を得て2000年10月2日か ら6日の5 日間に調査票に記入 して もらい、集計 した。
(6) 全国調査
長崎大学 中村修 が主宰 す るNpo法人地域循環研 究所が,「学校給食 自給率調査 の手順一調査 マニ ュ アル」 を作成 し,2001年5月〜10月の期間,雑誌や 新聞等で学校給食の地場産 自給率調査の実施 を呼 び かけた。 これに対 して,全国の給食施設 や学校 ・行 政などか ら100件以上の問い合わせがあ り,「学校給 食 自給率調査の手順 一調査マニュアルー」を送付 した。 この うち,61の給食施設か ら調査実施 の報告 書が返送 され, これを地域循環研究所で集計 した。
3 自給率調査 3⊥1 調査結果
6づの調査で得 られた自給率 は,図3‑ 1に示 す とお りである。
3‑2 産地別 自給率の構成割合
表3‑ 1は,6つの調査の うちの全国調査 にお い て、61や所の各給食セ ンター ・給食調理場か使周 し た食材の産地別 の使用割合 (平均 自給率) の構成 を 示 した ものである。 なお、「都道県産」 の数値 古手は 地場産物 の割合、「国産」 の数値 には都道県産物 の 割合 昼含 まれていない。各給食セ ンタ∴ ・給食調理 場が調査期間の5日間で使用 した食材の産地別 の使 用割合 (平均月給率) の構成を示 している。
地場産 自給率 は,最 も多か ったのが自給率0‑ 5
% (0%以上5%未満)で全体928% (17施設) を 占めた。次 いで自給率5‑10% (声%以上10%未満) で25% (15施設)。 この二つ を合 わせ , 過半数 の施 図 ÷3‑1 各調査の自給率
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100%
T 地場産 団 県産(道産) 国 国産 団 外国産 I 産地不明
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各 自給率調査結果 よ り作成 総合環境研究 第6巻 第 1号
中村 修 ・秋永 優子 ・田中 理恵 ・辻林 英高・川口 進
表3‑ 1 食材 の産地割合の構成 (%)
自給率 割合 自給率 割合 自給率 割合 自給率 割合 ・自‑給率 ー割合
10〜,15 ?7 20‑40 2 20‑30 36 10‑15 30 1‑5 8 15‑20 10 40‑50 17 30‑40 8 ‑15‑20 18. 5‑10 10 20‑30.. 5 50‑‑60 ■37 .40‑50 3 20‑30 2 10‑15 8.. 51‑60 3 60‑70 12 50‑60 3 15‑30 2 60‑70 2 70‑80 10 60‑70 7
70‑80 3 80‑90 5
設 において自給率10%未満であることがわかる。
都道府県産食材使用率 は,最 も多か ったのは使 用 率50‑60%の施設で全体の37% (22施設)を占めた。
さらに使用率60‑70%と70‑80%の施設を合わせ る と全体の過半数 (59%,36施設) の施設で,都道 府 県産食材を最 も多 く購入 していることがわか った。
国産食材使用率 は,最 も多か ったのは20‑30%の 施設で,全体の36% (22施設)を占めた。使用率30
%未満の給食施設 は全体の過半数 (71%,43施設) を占めた.一方で,使用率50%以上の給食施設 が全 体の18% (11施設) あった。 これは大都市の給食施 設 などで,例えば東京都○○区などでは地場産 (区 産) はもとより都産 も入手 しに くいという特殊 な事 情か らのようである。
外国産食材使用率は,最 も多かったのは使用率10‑
15%の施設で,全体の30% (18施設)を占めた。 次 いで使用率0‑5%の施設が全体 の29% (17施設) あ った。外国産食材 に含 まれた ものは,小麦粉製 品 (パ ン ・麺等),その他麺 (ビー フ ン ・春 雨 な ど), 大豆製品 (豆腐 ・油揚げ 。味噌 。醤油等), 冷棟野 莱 (ほうれん草 ・グ リー ンピース ・コー ン等), 缶 請 (果物 ・コー ン 。たけの こ 。トマ トピュー レ等), 冷凍食品 (魚 フライ 。エ ビ ・チー ズ等), 果物 (辛
ウイ ・バナナ),乾物 (レーズ ン 。ピーナ ッツ ・ご ま), ジャム, ソース等,池などであった。
産地不明食材の使用率 は,最 も多か ったのは0%
の施設で全体の41% (25施設)を占めた。次 いで使 用率0.01‑ 1%の施設が31% (19施設)だ った。 こ れ らを合わせて 「ほとん ど産地不明食材を使用 して いない」給食施設 は全体の72% (44施設)であった。
全国 自給率調査 より作成 産地不明の食材の内容は,畜産加工食品 (ベーコン・
ウイ ンナーなど),小麦粉製品 (麺類),水産加工品 (魚 フライなど), デザー ト (ゼ リーなど) ・香辛料 (コシ ョウ ・カ レー粉 など),ふ りかけ,池,砂糖 な どで,おそ らく外国で生産及び加工 されたと考 え ら れるものが多か った。
3‑3 産地指定 (1) 産地指定の実施率
本調査では,地場産食材の購入が意図的に実施 さ れたのかどうかを見 るために, 「産地指定」 の有無 を確認 して もらった。図3‑2がその結果である。
1週間の うちで 「地場産品1品 (l種瑞)の地元指 定」があったところが全体の23% (14施設),以下,
2品が2%(1施設),3品が5%(3施設),4品 が7%(4施設),5品以上が7%(4施設),地元 以外の産地指定品を しているところが5%(3施設),
まった く地元指定 ・産地指定がなか ったところが51
%(32施設)だ った。半数近 くの施設でなん らかの
「指定」は実施 しているが, その品数 はほとん どの 施設で1‑4品にとどまっている。 産地指定を実施 している給食施設の過半数が1品のみの指定である。
1回の給食に用い られ る食材の品数 (種類) が20‑
30ほどであるのに対 し, その品数 は決 して多 くない。
これ らの ことか ら 「意図的に」地場産物 の利用 を し ている給食施設が意外 に少ないことがわか った。
(2)地元指定の内訳
地元指定 されていた品の うち, もっとも多か った のが米であ った (15施設)。次 いで, 生鮮野菜 (ll
‑ 9 2 ‑
学校給食の地場産 自給率 に関す る研究 図 3‑2 産地指定の実施率
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100%菜
朱 鷺l図 1品指定 国 2品指定 □ 3品指定 ■ 4吊指定
各 自給率調査結果 よ り作成
施設),調味料 (3施設),畜産品 (1施設), 魚介 類 (1施設) となっている。 図3‑3は産地指定, あるいは地元生産者指定 されていた品 目の内訳 で あ る。
米 については,15施設で地元指定がお こなわれて いた。 この うち8施設 は地元JAを通 して, 4施設 は学校給食会を経由 して購入 し,3施設 は農家か ら 直接購入 していた。野菜の指定 は,11施設で地元指 定がお こなわれていた。 この うち9施設 は生産者 あ るいは生産者 グループか ら直接購入 し,2施設 がJ Aを通 して購入 していた。調味料につ いて は,3施 設で地元指定がお こなわれていた。2施設で味噌 と 醤油を,1施設で味噌を,それぞれ地元の加工業者 か ら直接購入 していた。 なお,3施設 とも主原料 の 大豆 は地元産であった。畜産品については,1施設 で鶏肉の地元指定がお こなわれていた。魚介類 につ いては,1施設で地元指定がお こなわれていた。 こ の施設では (オス,3枚おろ し)を地元漁協か ら購 入 していた。 また,地場産ではないが,近隣県 の農
放1614121086420施
家,農家 グループを指定 して米,野菜を購入 して い たところが2施設あった。同様 に県外の食肉加工業 者を指定 して加工肉 (ベーコン)を購入 していた と
ころが1施設 あった。
3‑4 ご飯献立 とパ ン献立の比較
調査 に参加 した栄養士か ら 「パ ンの 日は,献立 が 洋風化 し自給率が下が る」 という指摘があったため,
ご飯献立 とパ ン献立 による自給率の比較 を試みた。
もともと地場産物使用への取 り組みがない施設 で は比較がで きないため,地場産物使用 に積極的 に取 り組んでいる施設の献立 を もとに,主食の違 いによ る地場産 自給率 と外国産率の比較を試みたのが, 表 3‑2である。D町 ・A町 ・K町 は, 先進地調査 で 地場産 自給率が最 も高か った3施設 で あ る。 D ・K 町は,重量の大 きい牛乳が地場産であ ったこともあ
り,特 に自給率が高か った。
D町の ご飯1とパ ン1の献立を比べ ると,確かに, ご飯のほうが地場産物の使用率 も種類 も豊富である。
図3‑3 地元指定品の内訳
米を地元 指定 野菜を地 元指定 調味料を
地元指定 畜産品を
地元指定 魚介類を地元指定
全国 自給率調査 より作成
総合環境研究 第6巻 第1号
中村 修 ・秋永 優子 ・田中 理恵 ・辻林 英高 。川 口 進
表3‑2 ご飯献立 とパ ン献立 の自給率比較
献立 地場産物 外国産 +(産地不明)
・ナナ
顔」2.牛乳.ウマイ.ごま ドレッシ ング和 え.麦飯。胡瓜漬麻婆豆腐.シi42.6牛乳 .しいたけ.ネギ.咲 13.6+豆腐.わかめ.池 .自 ごま + (廃 油 .砂 町 噌.人参 .キ ャベ ツ (0.7) 糖)
ノヾン テ ィナポ リ夕.牛乳 .黒糖パ ン.ン.スパゲ ツ剣 エ ビ43.5牛乳 .キ ャベ ツ 33.9 小麦粉.スパゲ ッティ.マ ッシュルーム.トマ トピュー レ.ケチ ャ ップ ▲粉 チ‑
1 空揚 げ.ヨーグル ト和 え ズ.コショウ.池 .黄桃缶.パイ ン缶
町A 飯→\3†̲■̲、ヽ焼 き.ご飯 .ろ煮 .りん ご牛乳 .豆腐 お ろ し.そ ぼ五 目汁 .鮭照 53.7栄 .白菜」ギ.し椎茸 .大根 .青 菜 .味噌 .人参 .ごぼ う.芋 .りん ご長 ネ千 0.0
先進地 自給率調査 よ り作成
*表3‑2は, ごほん献立 とパ ン献立 の典型例 を用 いた。5日間全体 の献立 につ いては,巻末 に掲載す る。
しか し, ご飯2を見 ると,おかず に使 われてい る豆 腐が外国産率を押 し上 げている。 ご飯であれば, お かずが和風 にな り自給率が上が るとは一概 には言 え ない。 ご飯1・ご飯2では,豆腐 。ひじき ・わかめ 。 ごま 。醤油 といった典型的な日本 の伝統的な食材 が すべて外国産であ る。 しか し,A町の ご飯3で は, 豆腐 は県産大豆 。味噌 は地元産大豆 であ り,努 力次 第 で地場産 に代替す ることは不可能 で はない。一方, パ ン1.パ ン2で使用 されている外国産物 は,香辛 料 。マ ッシュルーム 。オ リ‑ブオイル 。エ ビな ど 日 本 では調達不可能 な もの も多い。D町で は, 牛乳 が 地場産物であるため, 自給率 は押 し上 げ られて い る が, その他 の地場産物 はキ ャベツのみで あ る。 K町 のパ ン2で は, おかずに地場産の牛乳 と野菜が多 く 使 われているため自給率が上が っているが,やはり, 外国産 と産地不明が30%近 くに上 る。
パ ン献立 では,努力次第で地場産物 を使 うことは で きて も,外国産物 の増加 は避 け られないよ うで あ
る。
4 食農教育 ・交流 ・意識調査 4‑ 1 食農教育
(1) 調査内容
長崎県内57施設,福岡県粕屋 。宗像郡内10施設, 先進地20施設 の調査 で は, 自給率調 査 と同時 に食 (農)教育 の実施状況 についてア ンケー ト調査を行 っ た。 (表4‑ 1参照)
(2) 調査結果
「給食で農家や産地 を指定 している食材 を使用 し ていることを,子どもたちへ知 らせていますか」 と い う質問では,回答があ った64施設 中52施設で 「は い」 という答 えが得 られた。 また,地場産 自給 率 ご とに比較す ると, 自給率が上が るほど 「はい」 が増 えていることがわか る。 どのように して知 らせて い るかについては,「給食便 り」「給食放送」「献立表」
「配膳表」 が多か った。
「子 どもと農家の交流 はあ りますか」 とい う質問 では,回答が得 られた64施設中, 「はい」と答 えた のは14施設 のみであ った。地場産 自給率 との比較 で 見て も,地場産物 を活用 していなが らその生産者 で ある農家 との交流 はあま りなされていないことがわ
‑ 94‑
学校給食 の地場産 自給率 に関す る研究
表4‑1 食農教育 に,関す るア ンケー ト調査 の内容
早)給食で農家や産地 を指定 して いる食材 を使用 して い草ことを,了 どやた ちへ知 らせていますかo 1 どのよ'うな方法セ
b)子 どもたちと農家 との交流 の突撃 につ いて
食農教育調査 ア ンケー ト調査票 よ り作成
表4‑2 「産地指定 して いる食材 の ことを子 ど もたちに知 らせて いますか」 に対 す る回答
地場産 自給率 はい いいえ
0% ■10 59% 7 11宛 0,1‑.9.9% ̲ 25 86如 ー5 17%.
10「‑20% ‑ 10 83% 2 17%
‑内 一客 (活 動 数 )
.立義 膳義 ノトド 紹介で 袷負展 ・J懲‑▼
長崎県 内57施設,福岡県柏屋 ・宗像郡内10施設,先進地20施設 におけるア ンケー ト調査 よ り作成
か った。交流 の内容 につ いて は,農家が学校を訪れ, (3)食農教育 プ ログラムの必要性
授業 に協力 した り,子 どもたち と一緒 に給食 を食 べ ア ンケー ト調査 の結果 で分 か るよ うに, はっき り るとい う形が多 く,子 どもが畑を訪ねたり,米作 り ・ した意図 を もった食農教育 の プログラムはほとん ど 野菜作 りをす るとい った交流 は少 なか った。(表 4‑ 行 われて いない。
3参照) 「学校給食 における地元農産物 の意義 を果 たす た
めに」 (比嘉、2000)で述べ られ て い る よ うに, 使
表4‑3 「子 ど もと農家 との交流 はあ りますか」 に対す る回答
地場産 自給率 はい いいえ
0野 1.・T696. 16 94%
0.1‑9.9% . 7. 24* 2'2 76■%
10‑20% 4‑L33% 7 58% は い (施 設 数 ): J整l完 .設えいい
l 内容 (活 動 数 )
長崎県内57施設,福岡県粕屋 ・宗像郡内10施設,先進地20施設 にお けるア ンケー ト調査よ り作成
‑ 95‑ 総合環境研究 第6巻 第1号
中村 修 。秋永 優子 ・田中 理恵 。辻林 英高 ・川 口 進 用 した地元野菜 につ いて献立表で紹介するだけでは,
ほとん ど子 どもたちに認識 されない。一方で、生 産 者 との交流 を試みた後では地場産野菜 に対す る認 識 が深 まっていた。
理想 の学校給食 とは 「児童 ・生徒が給食を通 して, 将来 自分 の心身の健康を守 ることにで きる食生 活 の 知恵 と実践力を身 につけ られ るよ うな給食」 (内野 、 2001) である。 このよ うな力を身 につけるためには, 献立表や掲示物 による一方的な伝達 や,思 いっ きに
よる単発型 の行事 だけでは不十分 である。
食品添加物 の記入 したカー ドを子 どもたちに配布 し、子 どもたちがおやつを購入す る指標 とす る福 島 県熱塩加納村 の 「おやつ安全 カー ド」に見 られ るよ うな 日常生活での食生活への応用 につながる食教育、
あるいは農家 との交流,栄養士 ・調理員 との直接 の 交流 などを,計画性 を持 って組 み合 わせた食農教 育 のプログラムを考えてい く必要がある。
4‑ 2 農家 と給食現場の コミュニケー シ ョン (1) 調査内容
地場産給食 においては,給食現場 と農家の情報 交 表4‑4 ア ンケー ト調査内容
C)栄養士 さんや調理員 さん と農家 の方 との交 流の実態 につ いて
1 交流 はあ りますか。
2 どの くらいの頻度で行われていますか。
3 どのよ うな内容で行 われていますか。
ア ンケ‑ 卜調査票 よ り作成
操が不可欠であると考え られ る。 そ こで,長崎県 内 57施設,福岡県粕屋 。宗像郡内10施設,先進地20施 設の調査で, 自給率調査 と同時 に栄養士 。調理員 と 農家の交流 の状況 につ いてア ンケー ト調査を行 った。
(表4‑4参照) (2) 結果
自給率別 の比較で見 ると, 自給率の低 い地域 での 交流が少 ない ことはいえ るが, 自給率が高 い地域 が 交流が盛んであるとはいえない。交流 の内容でみて も 「納品時の会話」「年‑〜数 回 の話 し合 い」 が一 番多 く,「月一回の話 し合 い」や 「畑 の訪問」「作付
け表 の作成」 などの密 な コ ミュニケーシ ョンを図 っ ているところは少 なか った。
ここで注意が必要なのは,農家 と給食現場のコ ミュ ニケー シ ョンは地場産物利用をスムーズに進 めて い くために不可欠な ことではある。 しか し、地場 の農 産物 を利用す るために、流通 に関わ る納品や支払 い などの諸作業のために打 ち合わせをす るだけでは、
関係 は深 ま らない。
地場 の農産物 を紹介す る。 地元 の農家の農業 へ の 取 り組 みを理解 し紹介す る、 といった子 どもた ちの 教育 につなが るものが、必要 な コ ミュニケーシ ョン であると考え る。
4‑ 3 栄養士の意識調査
2001年冬の全国 自給率調査では,調査 に協力 して もらった栄養士 に対 してア ンケ‑ トで学校給食 で の 地場産物活用 に対 しての意識調査を行 った。
表4‑5 「栄養士 や調理員 と農家 の交流 はあ りますか」 に対す る回答
地場産 栄養士 .調理員 と 自給率 生産者 の交流
あ り な し 0% 3 18% 14 82%
0.1‑9.9% 12 41% 17 59%
10‑20% 10 83% 2 17%
は い いい
内容
緬口 口口
時の 請A口し 請AEしコ 畑 撹莱 作付 学 読 計
い い 交 け 父 え
年 月 訪 疏 義 袷 負
A 云
請 数回〜 数回〜 問 A二三三 作成の 食展 Aここ
長崎県内57施設,福岡県粕屋 ・宗像郡内10施設,先進地20施設 におけるア ンケー ト調査 よ り作成
‑96‑
学校給食の地場産 自給率 に関す る研究
図4‑ 1 「地場産品を給食で利用す ることは大切だ と思 いますか」 に対す る回答
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100%国 とても大事 団 普通 に大事 [コ.それほどで もない } 大事ではさない 国 ̲その他 EZZ無回答
※ア ンケー トの回答 は自由記入方式であったが,得 られた回答を簡略化 し 「とて も大事」
「普通 に大事」「それほどで もない」「大事ではない」「その他」「無回答」 として図で示 した。
全国 自給率調査栄養士 ア ンケー トより作成
(1) 地場産品利用に対する意識
「地場産品を学校給食で利用す ることは大切 だ と 思 いますか?」という質問では,90%の栄養士が,
「とて も大事」「普通 に大事」 と回答 してお り,栄養 士が地場産物利用を肯定的にとらえていることがわ か った。なお,地場産品の利用 に否定的な意見 は皆 無だった。
自由記入では,「地場産物利用 を教材 に して, 千 どもたちに食への関心 を引 き出す ことがで きる」
「食べ残 しを堆肥化す るなど して, 循環型社会 の構 築に関 して身近な問題 として捉えやすい」「『旬』 と
いうことを教え られる」「生産者 を知 ることで感謝 の気持 ちが自然 にでて くると思 う」「栄養士 と して 子 どもたちに食指導す るときに非常 に役立っ」な ど という食農教育 に関す る意見が多 く見 られた。また,
「地場産物 は生産者の顔が見 え るので安心 して使用 できる」「四万四里の ものを食べていれば健康, と いう諺 は栄養学的に も正 しい」 といった安心感 ・栄 養面での肯定意見 もあ った。 そ して, 「調査す るう
ちに地場産物の重要性がわか った」とい う意見が あ り, 自給率調査の過程を通 して,栄養士が食材 や献 立の内容 を見直す ことに もつなが ったといえる。
(2)給食で地場産物を利用するための努力 ・工夫
「給食で地場産物をよ り多 く利用で きるように工 夫や努力を していますか」 とい う質問 で は, 「強 く
している」「少 ししている」 を合 わせ る と, 約半数 (44%)の栄養士がなん らかの努力 を して い ること がわか った。
しか し,その内容 は 「地元農家や道の駅 に問 い合 わせて,今ある旬の野菜を可能な場合 は納入 して も らっている」「その月にどん な野菜が しよ うで きる か確認 してか ら献立 を立てています」 といった積極 的な ものか ら,「市の教育委員会 の方針 が県産野菜 の利用促進なので,地場産 (市産) の使用 に関 して はなにもしていません。」「たまに納入業者 に口頭 で お願 い しているだけ」といった消極的な ものまで幅 があった。
図4‑2 給食で地場産物をより多 く利用で きるように工夫や努力を していますか
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100%I ≡ ■ 宝 玉 ‑= =‑
塵I 強くしている 少 ししている [コほとんど していない Eヨ 全 くしていない
全国 自給率調査栄養士 ア ンケー トより作成
※ア ンケー トの回答 は自由記入方式であったが,得 られた回答を簡略化 し 「強 くしている」「少 ししている」
「ほとん どしていない」「全 くしていない」「その他」「無回答」 として図で示 した。
ー97‑ 総合環境研究 第6巻 第1号
中村 修 ・秋永 優子 ・田中 理恵 ・辻林 英高 ・川口 進
回答数 16 14 12 10 8 6 4
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2図4‑3 給食 に地場産品を多 く使用す る場合, ど ういった課題があ りますか ?
栄養士の些花農産物に関する知識・情報不足
地元で取れる農産物の豊だけでは足りないのでは
安定供給できるのヽカ
単価が上がるのでi
規格・サイズが合わないのでは 安全性
流通経路は大丈夫か(毎日の
品が問題なく行われるのか)
寮内
その他
よくわからない
端境期の野菜不足
関係者の食に対する意識が低い
調理設備が対応できるか
今の業者は地場産を扱ってくれない
価格や収穫時期が変動する
ので献立が製作できない
食農教育の不備
種類の豊富さ
栄養士に地元ネットワークがない
地元商店との関係
全国 自給率調査栄養士 ア ンケー トよ り作成
※ア ンケー トの回答 は自由記入方式であ らたが,得 られた回答 を複数回答 として扱 い図でまとめた。
(3)地境産物利用の課題
「給食 に地場産品を多 く使用す る場合, どうい っ た課題があ りますか」 とい う質問の答 えの うち, 上 位3つ・は 「規格やサイズがあわ な いので は」「単 価 が上 が るのでは」「安定供給がで きるのか」 等, 農 家な どの納入側 の課題が多か った と言え る。 具体 的 には,「農家 の戸数 ・経営規模 などが年々少なくなっ ている」 や 「地元 に注文 しよ うと思 って も必要量 が 揃わな くて断 られた」 といった意見があ った。5, 7番 目の 「栄養士 の地元農産物 に関す る知識や情 報 不足」「栄養士 に地元 のネ ッ トワー クが な い」は栄
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養士 に関す る課題である。 これは栄養士 には数年 に 一度 の転勤があ り, そのため特定 の地域 に深 く入 り 込む ことが難 しく,農家や農作物 の情報 に接す る機 会がないことが原因だ と思われ る。
(4)地場産物利用の協力
「給食 に地場産品をより多 く利用す るためにはど この (どういった職業 や機関) の協力が必要 だ と思 いますか」 という質問の結果 は,図4‑4に示 す通
りであ る。
一番多か ったのは, 地元 のJA (農協) の協力 が
全国 自給率調査栄養士 ア ンケー トよ り作成
※ ア ンケー トの回答 は自由記入方式であっ たが,得 られた回答 を複数回答 として扱 い図でまとめた。
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