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(1)

教育 目標の新 しい分類法

一― ブルームの分類法か らマルザー ノの分類法への発展 一一

A New Taxonomy of Educationa1 0闘

ect市es

一一Development from Bloon■ 's to Marzano's fraxonomy一 一

高 橋

Kotti TAKAHASHI

(平成12年10月 10日受理)

1.新たな分類法の提案

2000年7月に『教育 目標の新分類法 をデザインする』(Dと い う本が出版 された。その題名が示 唆するように、それは、ブルーム編 による『教育 目標 の分類法』 (1956)② を念頭 に置 き、その 改訂版 とい うよりも、それに取 って代わ る新たな分類法の構想 を提示 している。

いわゆる 〈ブルームの分類法〉は、刊行後のほぼ半世紀 にわた り、最 も影響力のある教育文 献の一つ と云われている。その ことは、テス ト、評価、カ リキュラム開発、教授および教師教 育の論議 における引用件数の多さによって実証 されている。

けれ どもこの半世紀の間に、心の働 きと知識の性質、および両者の相互作用 についての理解 は劇的 とも言 えるような変容 を遂 げてきている。当初 ブルームの分類法 は、プログラム教授の 組織化 に貢献 したが、やがてその役割 はガニエ (Gagne,RoM.)の枠組み (1977)に 引 き取 られ ることとなった。それで もなお彼の分類法 は、 日標ベースの評価 において有効 な手段 とな りう ることを示 していた。

だが1980年 代 に入 り、アメ リカ教育界が、生徒の く貧弱な実行力〉 とい う問題 を 〈より高い レベルの思考〉の育成 によって解決 を図ろうとする基本方針 を打ち出し、それに伴 ってブルー ムの分類法 を、知識 0認知の性質 に関す る新たな研究水準 に即 した ものに更新すべ きであると の要請 はもはや回避 しがたい もの となったのである。

こうした状況 において新 しい分類 法 を提案 したの は、 コロラ ド州 にある 〈Mid‐Continent Regional Laboratory〉 の上級研究員であるロバー トJ・マルザーノ (MarzanO,Robert J。)●) である。

マルザーノが提示 した新分類法の主要な特徴 は、ブルームの分類法にはない くメタ認知〉 と く自己―システム思考〉 を取 り上 げ、それ らを重要 な もの として位置づ けてい ることである (図‑1参)。 それ ら二つの能力 を高めることは、く自己一調節力〉

(self‐

reguration)を 発達 させ る不可欠の条件であるとマーザーノは捉 えているか らである。教育の基本的な目標 と言 え る自己一調節力 を強調 している点 において、マルザーノの新分類法 は現在の教育要求 に応 える 要素 をもっているのである。

新分類法が視野の中に置いている 〈より高いレベルの思考〉 というのは、論理的な認知能力 だけではな く、 さらに身体運動能力、および自己モニタ リングや情動的反応の吟味等か ら成 る

(2)

自己―調整力能力 を包括 したいわば く人間的な思考〉である。 したがって新分類法 は、ブルー ム らが企図 した認知領域

(1956年

公表)、 情動領域

(1964年

公表)そして運動領域 (未公表)と いう三領域 における教育 目標の分類 を集約 して仕上げているという性格 を帯びている。

そうした人間的特性 を総合的に保持 させている新分類法 は、 どのような理論やアプローチの 手法 に基づいているのであろうか。本稿では著者マルザーノの視点 と考 え方、そしてそれに基 づ く分類項 目とその構成要素をできるだけ忠実に捉 えることを基本的な課題 としている。

Bloolm et.al.

レベル

6:評

価 レベル

5:総

合 レベル

4:分

析 レベル

3:応

用 レベル

2:理

解 レベル

1:知

Matzano

レベル

6:自

己 ―システム思考

(自

己 ―システム

)

レベル

5:メ

タ認知

     (メ

タ認知 システム

)

レベル

4:知

識活用

     (認

知 システム

)

レベル

3:分

       (  

   )

レベル

2:理

       (  

   )

レベル

1:知

識検索

     (  

   )

‑1.BloomとMarzanoの 分類法における6つ のレベル

2.新分類法 を支える考え方

2‑1.行動モデル と思考のシステム

教育 目標 を分類 し幾つかのレベルに位置づける指針 を設定す ることは、学習活動 において生 徒 による獲得が意図 され期待 されている能力や行動が実際にどの程度 まで達成 されたのかを評 価することに役立つ ものであ り、 また達成のグレー ドを押 さえたカ リキュラム編成への手がか

りとなるものである。

そうした ことを主要な動機 として開発 されたブルームの分類法における問題点 としてまず最 初 に挙 げられ るのは、分類項 目の各 レベル間の差異 を規定する基準 に関 してである。

ブルーム分類法 における組織化の指標 は、認知領域では 〈複合性の増加〉であ り、情動領域 では 〈内面化の増加〉であ り、そして運動領域では 〈協調性の増加〉である。 に こで問題 とさ れているのは、く複合性の増加〉基準である。ブルームの分類での く知識〉か ら く評価〉のレベ ルは、行動 (beha宙ors:これは想起、推理、問題解決、 コンセプ ト形成、制約付 きの創造的思 考 を含む もの と解 されている。)における 〈複合性〉の程度 に従 って配列 されている。つまり、

「評価」は「総合」よ りも、「総合」は「分析」よりも複合的であ り、そして同時により困難な 心的過程 と見 なされているのである。

それに対 してマルザーノは、「結局の ところ、心的処理過程の困難 さに基づいて分類法 をデザ インするとい う試みはどんな ものであれ失敗する運命 にある。」0と厳 しく批判 している。 その 理由 として、最 も複合的な過程であって も、ほ とん ど又 はまった く意識 されていない努力で遂 行 され るレベルにおいて学習 され うることがある、 とい う心理学的原理 を挙 げている。

階層的な秩序づけの基準 としてマルザーノが具体的に提示 しているのは、心的な諸過程間の コン トロール関係である。ある心的過程 は他の心的過程の操作に対 してコン トロールを行使 し てお り、 このコン トロールの流れがJb的諸過程間の系列的な序列 を構成 している、 と彼 は捉 え ているのである。そうした彼の考 え方は図‑2の「行動モデル」で示 されている。

その行動モデルは、人がある時点で新 しい課題 に取 り組むか どうかを決め、取 り組んだ場合 にその課題へ向けての過程 を示 してお り、同時にその過程で情報が どのように処理 されている

(3)

か も説明 してい る。

自己一システムが取 り組むか否かを決定する

← 一一―― 新たな課題

現在進行 中の行動 を継続す る 取 り組 む ↓ 取 り組 まない 一 ― 一 ― →

メタ認知 システムが 目標 と手法 を設定す る

認知 システムが関連する情報 を処理する

‑2.Marzanoに よる行動のモデル (NTEO,p.11.)

このモデル図の特徴 は、「 自己―システム」、「メタ認知 システム」そして「認知 システム」と い う用語か らも明 らかなように、近年の認知科学、認知心理学の研究に基づいていることであ る。それ ら二つ思考 システム間のコン トロール関係 は系列的な秩序関係 を生み出 し、全体的な 組織 を構成 しているのである。そして各 システムは、蓄積 された知識 を利用 していることが示

されている。

新分類法の基本モデルを構成 している三 システムの働 きについてマルザーノは次のように捉 えている。 )

〈自己―システム〉とい うのは、もろもろの信念 と目標のネ ッ トワークを含んでいて、そのネ ッ トワークを利用 して新 しい課題 に取 り組 む ことの適否 を判断 しているのである。つ まり、く自 己一システム〉は課題 の重要 さ、成功の確率 を判断 し、課題 に対する自己の情動的な反応 を感 知することによって、新 しい課題 に着手するか どうかの動機づけを遂行す るのである。

新 しい課題が選択 されると くメタ認知 システム〉が作動 しはじめ、その課題 に関わる目標 を 具体的に設定 し、 さらに目標達成 に必要なス トラテジーをデザインす る過程 をコン トロールす るのである。そうした作動過程 において この くメタ認知 システム〉 は 〈認知 システム〉 と絶 え ず双方向的に作用 しあっているのである。

そして く認知 システム〉は、課題 に不可欠な情報 を処理 してその達成 に寄与する働 きを遂行 す る。つまり、情報 を分析 した り、総合 した りして理解 を深 め、課題解決のために知識 を活用 す るとい う役割 をこの く認知 システム〉 はもっているのである。

最後 に、モデル図の「知識」 に関 して、課題達成の成否 はその課題 に関 して個人が もってい る知識の量 にかな りの程度左右 され る、 とマルザーノは捉 えている。

そのような三 システムを中心にして構成 された新モデルは、ブルームの分類法 を次の二点に おいて改善 しているとマルザーノ自身が指摘 している。

第一の改善点 は、ブルームの分類法が思者の「枠組み」(framewOrk)を提示 しているのに対 して、新モデルは人間の思者の「理論」 を提示 していることである。

ブルームの分類法 は、「分類 は純粋 に記述的なスキーム(図)でな くてはならない。そのス キームの中で、あらゆるタイプの教育 目標が比較的中立の形で表現 され うるのである。」)と う指針原理 に基づいてお り、その分類 イメージは図書の十進分類法なのである。そうした「枠 組み」分類法 は、人間の行動 を一定の「枠」内に位置づけ分類で きて も、特定の行動 を予測す

(4)

るようにデザインされてはいないのである。

それに対 して新分類法 は上記のようなシステムモデル・ 理論 を提示 していて、行動の予測 を 可能 にしているのである。図‑2は、例 えば、く自己―システム〉内での個人の信念 を理解すれ ば、一定の課題 にしめされ る関心 とか動機づ けに関 して予測す ることを可能 にす るとい うメ

リッ トをもっているのである。

第二の改善点 として、新モデルは「人間の思考の階層的システム」のデザインを提示 してい ることが挙 げられている。なお、その階層的システムは、「情報の流れ」と「意識のレベル」と い う二つの基準 に基づいて構成 されている。

新モデルの解説か らすでに察知 されているように、情報処理 は常にく自己一システム〉で もっ て開始 され、くメタ認知 システム〉へ と進行 し、く認知 システム〉そして最後に く知識領域〉ヘ と進行す るのである。情報処理の流れの視点か らみて、 これ ら三 システムは階層的な関係にお いて結びつけられているのである。

「意識のレベル」 に関 して。く知識〉の想起・再認 は比較的低い自覚の下にいわば自動的に進 行するけれ ども、課題の重要 さ、 自分の情動や動機 を省察する働 きを担 う 〈自己一システム〉

は文字 どお りもっ とも明確な自己意識の存在 を前提 にしている。その視点か らみて、三システ ムは階層的な関係 にある。 ここではその指摘 に留めておきたい。

2‑2.知識の三領域

新分類法 とブルームの分類法 との重要な相違点は「知識」の捉 え方に見 られる。マルザーノ が採用 しているアプローチは「内容」と「作用」とを区分することである。 したがってマルザー ノは、「新分類法 は、知識の多様 なタイプを、それ らに作動 している心的諸過程か ら分離 させて いる。」 と述べ、ブルームの分類法 との違いを明示 している。

ブルームは両者の差異 を暗黙的に認めてはいるが、分類法上の観点か ら混同した見解 を取 り 続 けているのである。その ことは、マルザーノの引用を再確認すれば、「われわれの分類法の意 図のために、われわれは知識 を、観念や出来事 をそれ らが もともと出会われた との非常に近い 形で想起 す ることとほぼ同 じもの として定義 している。」0とい うブルームの記述か ら窺われ

る。そう捉 えざるをえなかった ところに、認知理解での時代的な制約がみ られる。

知識 とそれに作動す る心的過程 との混同を回避するために、マルザーノは知識 を三領域 に分 類 し、それ ら三領域 を操作 している三種類の思考 システムを確認するのである。それに基づい て、新分類法の6レベルを構成するのは、階層的な構造 を有 している思考の三システムである

というマルザーノの構想が具体的な形態 を現 して くるのである。

マルザーノは知識 を、「情報」、「心的手続 き」および「運動手続 き」というカテゴリーの三領 域 に区分 している。

どんな主題分野で も、 これ ら三つのタイプの知識 によって記述 されている。例 えば、地理の 主題 は、地域、気候パ ターン、地域の発展に及ぼして諸影響 についての情報 を含む。 また、地 理 と関連 した知識 として、等高線地図の読み取 りと利用 という心的手続 きを含む。そして、 こ の場合少ないがあるとすれば、地理的に特殊 な運動の知識 も含 まれるであろう。

このように知識 を分類すれば、教育的にも有効 な手がか りをもた らすであろう。そこで次に 各知識領域 の特徴 を、マルザーノに従 って押 さえてお こう。0

(5)

□情報の領域

情報の領域 は、認知科学では「宣言的知識」

(declarat市

e knowledge)と 呼ばれている領域 である。マルザーノはこの領域 を、「細部事項」 (Details)と 「組織化す る観念」 (Organizing ideas)の 二つのカテゴリーに区分 している。そして、前者の「細部事項」を、「語彙用語」、「事 実」、「時間系列」、「原因/結果系列」および「エ ピソー ド」の6要素で構成 し、後者の「組織 化す る観念」を「一般的観念 (一般化

)」

(Generalizations)と 「原理」 (Principles)の 二要素 で構成 している。それ らの各要素 についてのマルザーノの説明 を要点的に見てお こう。

細部事項〕

・「語彙用語」:情報的知識の最 も個別的なレベルに位置す るのはこの語彙用語である。語彙用 語 を知 るとい うことは、一般的な形で語の意味 を理解す ることである。生徒が このレベルで 宣言的知識 を理解す るとい うことは、その語が意味す ることの一般的な観念 をもつ ことであ る。そして期待 され ることは、生徒が これ らの用語の意味 を、多少表面的であれ、精確 に理 解することである。

・「事実」:事実 は、特殊 な人、場所、生物 と非生物 そして出来事 についての情報内容である。

例 えば、「 ロビンフッドのフィクシヨンキャラクターは、1800年 代初頭の英国の文献 に初 めて 現れた。」、「 ピサの斜塔の建設 は1174年 に始 まった。」 といつた情報である。

・「時間系列」:時間系列の知識 は、二つの時間点の間で生 じた重要な出来事 を含んでいる。例 えば、1963年11月

22日

のケネディ暗殺 と、11月

25日

の彼の葬儀 との間で生 じた もろもろの出 来事 は、ほ とん どの人々の記憶 の中で一つの時間系列的な知識 としてのまとまりをもってい

る。

・「原因/結果系列」:こ れは、ある作品 とか結果 を産み出す ような出来事 を含む知識である。

例 えば、アメ リカの市民戦争へ と導いた もろもろの出来事 は因果的な系列知識 としてまとめ ることがで きるのである。

・「エ ピソー ド」:こ れは、(a)舞台装置(特定の時間 と場所)、 (b)特定の登場人物、(C)特定の持続 期間、(d)幾つかの出来事の系列、そして(e)特定の原因 と結果 をもっている出来事の知識であ

る。例 えば、 ウォーターゲー ト事件 は一つのエ ピソー ドとしてまとめることがで きる。

組織化す る観念〕

「一般化」(一般的観念):一般化 とい うのは、それに関 して具体例 を提供す ることがで きるよ うな言明である。例 えば、「アメ リカの大統領 は、多 くの場合、莫大な財産 と影響力 を有する 家柄 の出身である。」とい うのは一般化 (一般化 された知識)であ り、 それに対 して実例 を挙

げることがで きるのである。

先 に触れた「事実」 は、特定の人、出来事 な どの く特性〉 を確認 しているのに対 して、 この 一般化 は人や出来事 な どの 〈種類〉(クラス)ない し くカテゴ リー〉の特性 を確認 している知 識である。 また抽象的なことについての情報 は、ほ とん どこの一般化での形で言明 されるも

のである。

例 えば、「私の犬タフィーはゴールデンリトリバーである。」は事実であ り、「ゴールデンリト リバーはよい猟犬である。」は一般化である。そして「愛 は人間の もっ とも強い情動の一つで ある。」 は抽象的な ことの特性 を確認 している情報である。

・「原理」:こ れは、関係 を取 り扱 っている一般化の特殊 なタイプである。学校教育での宣言的 知識 には、「原因/結果原理」 と「相関的原理」 という二つのタイプが見 られる。

(6)

原因/結果原理 は、因果的な関係 を明確 に分析 して特定化するものである。例 えば、「結核 は 結核菌 によって引 き起 こされ る。」とい うのは原因/結果原理である。留意すべ きことは、 こ の原理 を真 に理解するためには、その因果 システム内の特殊な諸要素 とそれ らの相互関係に ついて知 らな くてはならない ということである。要するに、原因/結果原理の理解 には、非 常 に多 くの情報が必要なのである。

・「相関的原理」

:こ

の原理 は、本質的に必ず しも因果的ではないが、ある要因の変化が他の要 因の変化 と連合 しているような関係 を記述 している。「女性 における肺ガンの増加 は、喫煙す る女性の数値の増加 と正比例 している。」 というのがその一例である。

これ ら二つの原理 は、先 に挙 げられた「原因/結果系列」と混同されてはならない。「原因/

結果系列」の情報 は、ある特定の状況 に対 してのみ適用 されるの ものであるが、二つの原理 は多 くの状況 に対 して適用 され うるものである。

□心的手続 きの領域

心的手続 きは、認知科学 において「手続 き的知識」(PrOcedural Knowledge)と 呼ばれてい るもので、その形式的な働 きの面で「情報」 または「宣言的知識」 とは異なるものである。

宣言的知識 と手続 き的知識、すなわち内容知識 と過程知識 との区分 は、教育実践 におけるもっ とも重要な指導原理の一つである。宣言的知識 は「

what」

(〜であるもの・ こと)についての知 識であ り、手続 き的知識 は「how‐tO」 (〜する仕方)についての知識である。言 うまで もな く、

自動車の運転の仕方、長除法の仕方 は性質的に手続 き的なものである。 こうした手続 き的知識 が記憶 に貯蔵 されるフォーマッ トは、新分類法の構築 にとって有意味なものである。

手続 き的知識の基本的な性質 は、心理学者 アンダー ソン (Anderson,J.R.)が 指摘 しているよ うに、「

IF‐

THEN」 (も し〜ならば〜せ よ)(〜の ときは〜せ よ)構造 をもっているということ である。 この

IF‐

THEN構造 はプロダクション (production)ま たはルール とも呼ばれている。

つ まり、手続 き的知識 は、「 もし〜ならば」という条件部分 と「〜せよ」という行為部分から成 るプロダクション・ ルールによって表現 されるものである。最 も簡単な心的手続 きは単一ルー ルで表現 され、それ以外の複合的な手続 きはこのルールの集合体であるプロダクションシステ ム として表現することができるのである。

こうした手続 き的知識の捉え方において、新分類法が新たな研究成果を取 り入れていること が顕著 に表れている。その妥当性 については、「近年の認知理論 においては、プロダクションは、

思考 の働 きを実現す るための標準的な情報処理手続 きになってい る といって も過言ではな い。」(10とい う指摘か らも承認することができるであろう。

次に、心的手続 きの領域 における知識の学習上の特徴 について押 さえておこう。心的手続 き というのは、一般的に、三つの段階を通 して獲得 されるのである。

第一 は「認知の段階」である。 この段階では、学習者 は心的手続 きの過程 を言語化でき、手 続 きを未熟ではあるがほぼ近い形で遂行することができる。

第二 は「連合の段階」である。 この段階では、手続 きについての初期的なエラーがつきとめ られて削除 され、手続 きの遂行がスムーズに行なわれる。

第二 は「 自動化の段階」である。 この段階において手続 きは洗練 される。それ まで学習者に よって復誦 されていた手続 きは自動的に遂行 されるようにな り、作業記憶 を利用する必要がな くなる。

(7)

なお、 この学習過程の段階に関 して、第一の段階だけが情報知識 と重なっていることに、マ ルザーノは注意 を促 している。

この心的手続 きの領域 は、大 きく「スキル」と「過程」のカテゴリーに区分 される。そして、

「スキル」は「単独ルール」、「アルゴ リズム」および「タクティクス」

(tactics)の

要素か ら構 成 されてお り、「過程」には「マクロ手続 き」が位置づけられている。以下、それぞれの要素 を 概観 してお こう。

スキル〕

・「単独ルール」

:こ

れ は心的手続 きの もっとも簡単 なタイプである。 これ は一つのプロダク ションか ら成 りたっているものである。

例 えば、英語での大文字化 には五つのルールがあるが、それ らを知 っている生徒 は、書いた 文章の校正 においてそれ らを別々にに適用するであろう。その場合、生徒 は単独ルール手続

きのグループを利用 していると言 える。

・「アルゴ リズム」:こ こで意味されているアルゴリズムは、非常に特定化 されたステップと結 果 を有する手続 きの ことである。マルチコラム・ サブ トラクションの手続 きはその一例であ

る。

・「方策」(タクティクス):これは心的手続 き内の階層の中間に位置 していて、アルゴ リズムの ように、特定の順序で遂行 されな くてはな らない一連のステップか ら成 りたってはいないも のである。   

例 えば、棒状 グラフを読むタクティクスは、(a)図表の凡例で示 されている諸要素 を確認する。

(b)グラフの各柱で表示 されていることを確定する、そして(C)二つの座標での要素間の関係 を 確定する、 という手続 きに関わ る三つのルールを含んでいる。 けれ ども、 これ らのルールを 遂行す るのに固定 した

1贋

序、秩序 はないのである。

過程〕

・「マクロ手続 き」:接頭語マクロが示唆するように、 これは、手続 きが非常 に複合的であ り、

多 くの下位手続 きの遂行 を含み込んでいるようなかな り確固 とした手続 きを意味 している。

しか し、その成果 または結果 においては多様 さをもっているものである。

例 えば、作文 はマクロ手続 きの主要な特性 を満た している。同 じ トピックスについて作文す る場合、同 じステ ップで遂行 して も、生徒たちは大変異なった作品を産み出す ものである。

□運動手続 きの領域

この領域 は身体的な諸手続 きで構成 されている。身体的手続 きは、各個人が 日常生活 を送 る ために、 また仕事や レク リエーションのために複合的な身体的活動 をするときに利用 されるも のである。

運動手続 きが ここに位置づけられていることは、新分類法の主要な特徴の一つである。言 う まで もな く、ブルーム らの分類法では、運動領域 は認知領域か ら分離 されていたのである。新 分類法 は、運動領域 を知識の一つのタイプ として捉 えることによって、それ を知識領域の中に 組 み込んでいる。そのようにした理由について、マルザーノは次の二点 をあげている。(10)

第一 に、運動手続 きは、心的手続 きと同様 に、

IF‐

THENプロダクション・ネッ トワークとし て記憶貯蔵 されること。第二 に、運動手続 きが獲得 される段階過程 は、心的手続 きの場合 と同 様であること。すなわち、運動手続 きは最初 は情報 として学習 され、そして初期的な実践の間

(8)

に具体的な活動 として形成 され、最後 に自動的なレベルで遂行 されるようになるのである。

この運動手続 きの領域 は、心的手続 きの領域 と同様 に、「スキル」 と「過程」に区分 される。

「スキル」は「基本的手続 き」 と「簡単なコンビネーシヨン手続 き」か ら成 り、「過程」は「複 合的なコンビネーション」で、 これ ら三要素 は階層 を成 している。

スキル〕

・「基本的手続 き」

:こ

れは基本的な身体能力の ことである。例 えば、キャロル

(Carron,J.B。

)

にしたが えば、「静止力、全身の平衡保持力、手足の動 きの敏捷 さ、手首 一指の敏捷 さ、指の 器用 さ、手の器用 さ、腕 一手の強 さ、 コン トロールの精確 さ」がその具体例である。

これ らの身体的機能 (運動手続 き)は、形式的な教育 (教)がな くともいわば自然 に発達 するものである。だか らと言 って、 これ らの基本的スキルは、教育 によって改善 されないわ けではない。例 えば、手の器用 さ教育 と練習 によって改善 され うる。要するに、 これ らは、

学習 され うるという理由で、知識のタイプ としての資格 を有するのである。

・「簡単 なコンビネーション手続 き」

:こ

れは、一連の基本的な運動手続 きを平行 して遂行す る ことを含んでいる。例 えば、野球での投球 は、手首 一指の敏捷 さ、 コン トロールの精確 さ、

腕 一手の強 さなどの基本的手続 きか ら構成 されているのである。

過程〕

・「複合的 コンビネーション手続 き」

:こ

れは、一連の簡単なコンビネーション手続 きを利用 し ている運動過程である。例 えば、野球での守備行為、テニスでのボール打ちな どほ とん どの 運動活動 はこの複合的 コンビネーション手続 きを利用 している。

以上が知識の三領域 についての概要である。この新分類法では、知識 は多様 な心的過程 によっ て行使 され るもの として捉 えれている。その点がブルームの分類法 との顕著な違いである。 ま た運動手続 きが、心的手続 きとの類似性 により、知識の領域 に組み込 まれていることも注 目す べ き変化である。

3.新分類法における6レベル

新分類法 における分類 は、先 に説明 された思考の三つのシステムによって構成 されている。

すなわち、自己一システム、メタ認知 システム、認知 システムは階層的に秩序づけられてお り、

最後の認知 システムの4要素が4つのレベルを成す ことによって、全体 として6つの接合 され たレベルが成立 しているのである (図‑1参)。

□記憶 (memOry)

各 レベルの説明に際 して、マルザーノはまず初 めに「記憶」の性質 と働 きについて次のよう な確認 をしている。(11)

アンダー ソンによれば、それ まで記憶 は短期記憶 と長期記憶の二つのタイプか ら成 るとい う 捉 え方であったが、それは、異なる働 きをもつただ一つのタイプの記憶だけがあるという理論

に取 って代わ られたのである。マルザーノは分類法の論議 に関 して重要 と見なす三つの機能、

すなわち感覚記憶、永続記憶および作業記憶(working memory)(認知心理学では作動記憶 と 呼ばれている。)に注 目している。

感覚記憶 は、アンダーソンによれば、出会 った ことについて多少はあれ完全なレコー ド (録 )を短時間貯蔵で きる。 その間に、人 はその諸要素間の関係 をメモ した り、諸要素 を永続記

(9)

憶 にコー ド化 (符号化)することもで きる。感覚記憶 における情報が減衰す る前 にコー ド化 さ れなければ、その情報 は消失する。主体が コー ド化する事柄 は、主体が払 っている注意 に依存

しているのである。

永続記憶 とい うのは、知識の三領域 を構成 しているところのあ らゆる情報、組織化す る観念、

スキル、および過程 を含んでいるのである。「要す るに、われわれが理解 していること、為す仕 方 を知 っていることのすべては永続的記憶の中に貯蔵 されているのである。」という認識 は、以 下の論究の基礎 となるものである。

次 に、作業記憶であるが、 これは「1970年 代以降、短期記憶の概念 にとって代わった とも考 えられる」(1のものである。具体的に言 えば、作業記憶 は記憶情報の系列であ り、プロダクショ ンルール と連携 して特定の行為 を実行 させる働 きを担っている。

マルザーノによる図‑3で示 されているように、作業記憶 は感覚記憶 と永続記憶 との両方か らデータを取 り込んで利用する。 それ らのデータが活性的に処理 される場が作業記憶である。

作業記憶の中に取 り込 まれたデータに対 して個人が意識的に注意 を向けている限 り、作業記憶 は活性的であ り続 ける。その意味 において、作業記憶 は く意識の座〉であると見なしうるので ある。要するに、意識 について経験するということは、作業記憶 において処理 されていること についてのわれわれの経験 なのである。

外部 の

   

感覚

     

作業 ← 一―一 永続 世界 一一―→ 記憶 一――→ 記憶 ―一―→ 記憶

‑3.記憶の諸 タイプ

(NttEO,p.30)

ロレベル1:検索 (Retrieval)(認 知 システム)

検索 とい うのは、知識 を永続記憶か ら作業記憶へ と移行 させ ることである。移行 させ られた 作業記憶の場で知識 は処理 され活性化 されることになる。検索 は、認知 システム内の一つの過 程であ り、 しか も生得的な過程である。生得的 とい うのは、その過程 はあらゆる人間の神経的

な くハー ドー配線〉であ り、一般 に個人の自覚なしに遂行 されるか らである。

検索の実際のプロセスは、検索 される知識 タイプによって多少異なっている。

情報の領域 に関 しては、検索は、細部事項 および組織化す る観念が永続記憶か ら作業記憶ヘ と単純 に移行 させ られ ることである。 これを「再生」 (reca11)と 呼ぶ。

例 えば、生徒が、永続記憶か らコソボの1999年 における葛藤 に関する情報 を検索 し、 それを 作業記憶 に置 く場合、それは情報記憶か ら細部事項 を再生す ることである。

この再生の際に注 目すべ きことがある。それは、情報が検索 される時に、生徒の最初の情報 経験の中に明示的に存在 していなかった新たな要素が加 えられることがあ りうるとい う点であ る。 というのは、人間は、情報 を作業記憶 に取 り込む際 に、その情報 を精緻化することがあ り うるか らである。

例 えば、次の情報 を聞いた とす る。「二人の少女、メア リー とサ リーははぎ取 リマ ッチを見つ けた、そしてす ぐに遊ぶためのゲームを考 え始 めた。午後3時ごろに家 は炎 に包 まれた」。この 情報 は、論理的に見て不完全である。 けれ ども人 は、明示的に述べ られた ことを理解す るため

に、欠 けている情報 を推論す るのである。

(10)

作業記憶 において、その情報 は一貫 した全体 を生み出す ように補足 され る。例 えば、「ゲーム はマ ッチを使 うことを含んでいた。」、「子 どもたちがマ ッチでゲームをしていて、家 に火がつい た。」、「家 は甚大な被害 をうけた。」な どの命題 を推論 して補 い、論理的に完全な情報のバ ァー ジョンが作 られる。 これは「 ミクロ構造」 (Microstructure)と 呼ばれる。

よリー層完成 した ミクロ構造 を構成するために利用 され る推論 には、二つの基本的なタイプ すなわち「デフォール ト推論」 (Defaultf lnference)(既 定事項 に基づ く推定[筆])と「推理 された推論」(Reasoned lnference)がある。

デフォール ト推論 は、人・場所・物・ 出来事および抽象的な考 えに関 して行われ る。例 えば、

「 ビルは犬 を飼 っている。」とい う文 を読 んで、「 その犬 はビルに可愛が られるのを喜ぶ。」とい う情報 を付 けカロえるといった ことである。

そして後者の推論 について。例 えば、「実験心理学者たちは、一般化が真であるか どうかを判 断す るためにあなたはそれを検証 しな くてはならない、 と確信 している。」という文章 を読んだ 後で、ある実験心理学者が同僚か ら新 しい理論 を提示 された という情報 を読んだ時、われわれ は当然の如 く、その学者 はおそらく理論 を検証するようにア ドバイスするであろうと、結論づ けるであろう。 この推論 は実験心理学者 についての一般的な知識 に基づいて行われているので はな く、以前 に読んだ情報か ら帰納 されているのである。その意味で この推論 は「推理 された 結論」 を引 き出 しているのである。

次にへ、心的手続 きと運動手続 きの検索 についてであるが、 これ ら二つの領域の知識 は、再 生 されると同時に執行 され るという特徴 をもっている。手続 き的知識 は、プロダクション構造 をもってお り、作業記憶の情報 とプロダクションの条件が合致することによって、特定のプロ ダクション・ ルールが選択 され、特定の行為が実行 されることになるのである。

以上のような検索 という認知過程 は、ブルームでの分類項 目「知識」 と類似 していることを マルザーノは認めている。それは、先 に触れたように、ブルームは知識で もって心的手続 きの 執行 をも意味 させているか らである。 しか し、その ことは、「 ブルームは、検索の対象(すなわ ち知識)と検索の過程 (すなわち再生 と執行)と を混同 していた。」(10ということを確認 させ る

ことで もある。

ロレベル2:理 (Comprehension)(認知 システム)(10

理解す る過程 は、知識 を永続記憶への貯蔵 に適 した形式へ と変形することである。感覚記憶 を通 して作業記憶 に預 けられたデータは、経験 された ままでは永続記憶の中に蓄 えられない。

知識 をそこに貯蔵す るためには、保存 に適 した構造 とフォーマ ッ トに収 められるように変換 さ れな くてはならない。そしてより多 くの知識 を貯蔵するためには、それを縮減 した形 にす る必 要があるが、その縮減の程度 は個人が知識 を理解す る程度 と同 じである。

理解 は、「総合」 (Synthesis)と 「表象」 (Representation)と い う二つの過程 を含んでいる。

・「総合」:「 総合 は、知識 を、縮減 された一般的形式に組織化 して、そのキー となる諸特性 を 抽出する過程である」。その一般的な形式 は、ミクロ構造 と対照 して、マクロ構造 と呼ばれる。

ミクロ構造 は直接的経験 と推論か ら得た情報 を含んでいるのに対 して、 このマクロ構造の情 報 はマクロルール と呼ばれる三つのルールの適用によって獲得 される。

1.削

(Deletion)一

複数の命題か ら成 る系列の場合、その系列の他の命題 と直接的に関係づ けられない命題 を削除す ること。

(11)

2.一般化 (Generalization)一 ある命題 を、 よリー般的な形の情報 を含む命題 に取 り替 えるこ と。

3.構成 (Construction)一 諸命題のグループを、その中のよリー般的な用語で言明 されている 一つ またはそれ以上の命題 に取 り替 えること。

これ らのルールの適用 によって、細部事項 は含 まないが、重要な要素の一般的な輪郭 を有す る縮減 された情報の表現が生み出されるのである。要するに、マルザーノが指摘するように、

「生徒たちが知識 を有効 に総合 した ことの証拠 は、彼 らがその知識 に適 したマクロ構造 (そ

の知識の重要な又 は決定的な諸要素 についての言明)を生み出す ことがで きるということで ある」。(15)

「表象」:「表象 とい うのは、マクロ構造 (総合の過程 を通 して産出された もの)の中に含 ま れている知識のシンボル的なアナログ[類似体

]を

創 り出す理解過程である」。心的過程 として の表象 は、知識の「二重 ―コー ド化理論」 (Pa市io,Aが仕上 げた理論)に基づいて次のよう に説明 されている。

その理論 によれば、情報 は「言語的様式」 と「イメージ的様式」(Imagery mode)へ と処理 される。言語的様式 は本質的に意味論的な ものであ り、命題 またはプロダクションとして表 象 され るものである。後者のイメージ的様式 は、心的な画像 または臭い、味、触、運動的連 想、音 な どの身体的感覚 として表象 され るものである。要するに、表象 というのは、マクロ 構造 に含 まれている知識 を非言語的なシンボル・イメージ的な様式へ と変換す ることである。

情報 をシンボル化するバター ンとしては、 シーケンスパ ターン

0過

/因果パターン・問題/

解決パ ター ン・ 一般化のパ ター ンな どが挙 げられている。

この新分類法での「理解」はブルームの「理解」 とかな り似ている、 とマルザーノは捉 えて いる。ブルームの「置 き換 え」は、基本的には新分類での「表象」 と同義である。ただし、新 分類の「表象」 は非言語的なシンボル的様式 を強調 しているとい う特徴がある。 そしてブルー ムの「解釈」は新分類での「総合」 と同義である。最後 に、ブルームの「外挿」 は新分類での

「理解」過程 を超 え出ている推論 を取 り扱 っている、 とい うのがマルザーノの所見である。

ロレベル3:分 (Analysis)(認知 システム)(10

新分類法の「分析」には、知識の「推理 された」外延化 (Extention)が含 まれている。一見 違和感 を覚 えるが、マルザーノの説明 をた どってみよう。

この分析過程 を適用することによって、個人 は知識 を精緻化する (elaborate)の である。精 緻化 によって、「一定の場 に位置づけられている」 (localized)推 論 は外延的に拡張 される。 ま た、 この分析 は、本質的特徴 と非本質的特徴 との区別の確認 (この確認 は「知識」過程が担当 している。)に もこだわってはいない。要するに、「新分類法 における分析 は、個人 によってす でに所有 されていないような新 しい情報の産出を含んでいるのである」。(1つ

分析過程 には、「マ ッチング」(合致の照合)、「分類」、「エラー分析」、「一般化」、「特定化」

(Specification)と いう五つのタイプがある。

これ らの認知的操作 は意識的に考 えな くて も遂行 されている。 けれ ども、新分類法で規定 さ れているような分析の道具(tool)と して執行す るな らば、学習者 は自分の知識 を変容 させ、精 錬するとい うことを継続するようになるであろう。

そうした意味での分析過程の重要性 を強調するために、マルザーノはピアジェらの学習理論

(12)

に言及 している。

ピアジェにおける「同化」は、新 しい情報が学習者の保持する知識ベースに統合 されること であ り、「調節」は、新 しい情報 によって保持 している知識構造 (シェマ)が変更 されることで ある。そして他の研究者、例 えばラメルハー トとノーマ ンは学習のタイプを、情報の段階的蓄 積 に関わ る「増大化」、その情報 をより縮減 された手法で表現することに関わる「チューニ ング」

そして新 しい洞察 を生み出 した り、新 しい場面で利用で きるように情報 を組織 し直す ことに関 わ る「再構築」

(Restrllcturing)に

分類 している。それ らの紹介 をした上で、「新分類法 におい て分析 と呼ばれているのは、 ピアジェによって調節、そしてラメルハー トとノーマ ンによって 再構築 と言われているその学習のタイプに他ならない。」(10とマルザーノは指摘 している。

・「マ ッチ ング」

:こ

れは、 もろもろの知識の間の類似性 と差異 を確認する過程である。それ ら の確認 は情報処理 における基本的な過程であ り、差異の前提 とされる類似性の確認の方が よ

り重要であるとも言われている。

マ ッチ ングの基本的ステップ として、分析の対象項 目の特定/分析 に用いる属性や特徴の特 /分析対象の諸項 目間の類似 と差異の状態の確認/類似点 と差異点 についての精確 な言 明、 といつた ことが研究者 によって提示 されている。

・「分類」:分類 とは、知識 を有意味なカテゴ リーに組織化す ることである。世界 は無限 とも言 える刺激か ら成 り立 ってお り、同 じような刺激のカテゴ リーを形成す ることは思考のあらゆ る形式の中心である。

分類過程のステップ として、分類 されるべ き項 目の確認/その項 目を規定 している特徴の確 /その項 目が帰属す る上位のカテゴリーの確認 と、それがそこに帰属する理由の説明/そ

の項 目の一つ又 は複数の下位 カテゴリーの確認 と、複数のカテゴ リー間の関係の確認が提示 されている。

そうした分類 を遂行す ることは、諸知識 を単 に同 じカテゴ リーに組織化することたげではな く、諸知識 を階層的な構造へ と組織化することで もある。

・「エラー分析」

:こ

れは、知識の論理 または理 に叶 っていることを確保す る過程である。 この 認知機能の存在 は、知識が妥当な もの として受容 されるためには、理 に叶つているという条 件 を充たす必要があることを示 している。 このエラー分析 は、(a)明示的な基準 に基づいて知 識の妥当性 を自覚的に判断すること、(b)提示 されている推論 におけるエラーを確認すること、

という二つ役割 を果たす ものである。

エラー分析 を行なうためには、生徒 は証明 と適切 に構成 された論証の特質を理解 していな く てはな らない。生徒が妥当性 を判断するために知 る必要がある項 目について、マルザーノは

トゥール ミン、 リーケおよびヤーニクの研究 を紹介 している。その要点 を示 してお こう。

1.根 (理):あ る主張がなされ る場合、通常、 その主張は根拠 によって支持 されている。

要求のタイプによって、根拠 は次の どれかによって作 られる。すなわち、常識的なこと0専 門家の意見 0以 前 に確証 されている情報・実験的な観察・「事実」 と見なされる他の情報、な

どが根拠 を構成する要素である。

例、くヘ ミングウェイの卓越性の証拠 は、文芸批評家ラルフ・ジョンソンによる作品レヴュー に見い出せ る。〉

2.保証 :こ れは、根拠の中の情報 を特定化することまたは解釈することである。根拠 によっ て強調 されている情報 を詳細 に分析す ることを通 して、保証 は根拠 を支援するのである。

(13)

例、くジ ョンソンは記 している。ヘ ミングウェイの作品は、読者の情動 を喚起するとい う良い 書物の第一原理 を具現 している。〉

3.裏付 け :こ れは、保証の妥当性 を確立する働 きをする。保証 その ものは完全 に信頼 され る ものではないので、その保証 を受 け入れるための一般的な討論が必要である。

例、くヘ ミングウェイの批評 においてジ ョンソンによって引用 された原理 は、もっ とも頻繁 に 引用 されるものの一つである。〉

4.認定す る人 :保証 は主張 に対 して同 じ程度の確かさもた らす ものではない。受 け止める人 によって、主張の確かさの程度 は異なるのである。

例、く留意すべ き点 は、ヘ ミングウェイの熟練 した技能 はすべての人々によって評価 されては いないのである。〉

マルザーノは、同僚 と共同 して、生徒がインプッ トされる情報 を有効 に分析する際に知 って お く必要のある推理エラーの一覧表 を提示 している。その主な ものを項 目的に示 してお こう。

誤 った推論 として、軽率な一般化・ 論証がルールの例外事項 に基づいていることを確認 しな い誤 り・ 論点 とされていることを事実 と仮定 して論 を進めること・ 権威 に訴 えること・ 主張 す る人物 に反対 して論ず ること・ 無知 によって反対が証明 されない とい う理由によって、主 張 を正当化す ること・ 情動 に訴 えること、な どが リス トアップされている。

・「一般化」

:こ

れは、既知の情報か ら新 しい一般的な考 えを構成する過程である。 この過程 は 推論 を含むが、 ここでの推論 は、 ミクロおよびマクロの構造 を創 る際に利用 されている帰納 的な推論 を超 え出た性格 をもっている。 とい うことは、新分類法での「一般化」 は純粋 に帰 納的で も演繹的で もない とい うことである。 それは、 どんな心的過程 も純粋 に帰納的で も演 繹的で もない とい うマルザーノの基本認識 に基づ く規定である。

マルザーノは、新分類法における「一般化」を「 リトロダクティヴな」 (retroductive)過程 として捉 えることが適切であると述べている。 リトロダクションとい うのは、一つ またはそ れ以上のケースに基づいてある一定の考 えを生み出 し形作 る心的過程である。 この過程 は演 繹 よりも帰納の方をより重視するけれ ども、両者 を含み込んでいるのである。

マルザーノは、同僚 と共 に、一般化する際に生徒がた どる一連のステップを提示 している。

1.特定の情報 または観察事項 に注意 を向ける。何 も仮定 しない。2.確認 した情報の中にパ ターン又 は結びつきを探す。3.気づいたパ ター ン又 は結合 を説明す るような一般的な言明 を作 る。4.一般化が支持 されるか どうかを確かめるためにもっとよ く観察す る。 もし支持 されなければ、必要 に応 じて一般化 を変更す る。

・ 特殊化 :こ れは、既知の一般化 または原理の新 しい適用 を生み出す過程である。上記の一般 化が帰納的傾向が比較的強いのに対 して、 この特殊化 は演繹的傾向をより強 くもっている。

例 えば、ベルメーイの法則が適用 される新 しい状況ないし現象 を見つけ出す ことによって、

その適用か ら新たな知識が生み出されるのである。

マルザーノらは、特殊化過程のステップを次のように提示 している。

(1)考察、研究 をしようとする特定の状況 を確認す る。(2)その特殊 な状況 に適用する一般化又 は原理 を確認する。(3)その一般化又 は原理 を適用す るのに適 した諸条件 を、その特殊 な状況が 充た していることを確認する。(4)そ の一般化又 は原理 を実際に適用 して、特殊 な状況 について 知 ることがで きること、すなわち どんな結論が引 き出されるかのかを、 どんな予測がなされ う

るのかを確認する。

(14)

以上が新分類法における「分析」とい う認知カテゴリーの内容である。 この「分析」はブルー ムの分類 の三つののレベルの要素 を含み込んでいる、 とマルザーノは指摘 している。

例 えば、「マ ッチング」 はブルームの4.0(分)レベルの「関係の分析」 と類似 してお り、

新分類 の「分類」はブルームの5。0(分)レベルの「一連の抽象的観念の関係」と類似 してい る。そして、新分類 の「エラー分析」は、ブルームの4.0(分)の「組織化する原理」の分析 過程 と似てお り、かつ6.0(評)の「内的証拠 に基づ く判断」 と類似 している。

ロレベル4:知識禾U用 (Knowledge Utilizatiom(認 知 システム)(19

知識不U用 とい う過程 は、個人が特定の課題 を達成する際に採用する過程である。換言すれば、

課題 というのは、そこにおいて知識が個人 にとって有益 な ものに変 えられ る現場である。

知識利用の課題 は大 き く四つのカテゴ リーに区分 される。すなわち、(1)意思決定、(2)問題解 決、(3)実験的探究、 そして(4)調査、 というように。

・「意思決定」:意思決定の過程が利用 されるのは、個人が二つ又 はそれ以上の選択肢の中か ら 選択 しな くてならない場合である。比喩的に言 えば、意思決定は、個人が「何が最善の方法 か」 とか「 これ らの内の どれが もっとも適当か」 といった間に答 える際に用い られ る過程で ある。

意思決定の過程 に含 まれている基本的なステ ップ と手法 は、選択肢の確認・ 各選択肢 に対す る価値の割 り当て 。成功の確率の決定 。最高の価値かつ最高の成功率 を有する選択肢の決定、

である。

・「問題解決」:障害がある目標 を達成 しようとする場合 に採用 されるのが この過程である。比 喩的に言 えば、問題解決 は、「 この障害 を私 はどのように克服 しようか」とか「 これ らの条件 を充た しつつ、私 はどのように目標 に到達 しようか」 という問いに答 えるために取 り組む過 程である。

問題解決 に関わるステ ップ と手法 として、 日標への障害 を確認する・ 可能なかざ り目標の再 分析 をする 0別 の諸 目標 を確認する 0別 の諸 目標 を評価する・別の諸 目標か ら選択 し実行する、

ということが挙 げられ る。

・「実験的探究」

:こ

れは、物理的又 は心理学的な現象を理解す るために仮説 を作 り、テス トす る過程である。

実験的探究の一般的なステップ と手法 として、既知の原理又 は仮説の原理 に基づいて予想 を 立てる・ その予想 をテス トするための方法 をデザインする 。テス トの結果 に基づいて原理の妥 当性 を評価する、が挙 げられる。

・「調査」:調査 というのは、過去、現在および将来の出来事 についての仮説 を生み出 し、テス トする過程である。比喩的に言 えば、「〜 を規定 している特性 は何か」、「 この ことはどのよう にして生 じたのか」、「 これが生 じた理由は何か」、「 もし〜ならば何が生ずるであろうか」 と いつた問いに答 える試みにおいて通過する過程である。

実験的探究の証拠のルール は統計的な仮説 テス トの基準 に従 うのに対 して、 この調査 はエ ラー分析での健全な論証の基準 に従 うものである。

マルザーノらは、調査の家庭のステップと手法 として、調査対象に関 して知 られていること 又 は合意 されていることを確認す る・ その対象に関 しての混乱や論争点 を確認する・ 混乱や論 争点 に対する回答 を提起する 。提起 された回答 に対 して論理的な論証 を示す、 ということを挙

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