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MM MM(Modglan & Mller, 958 取引費用, 契約費用, 情報費用, 税金がゼロとすれば, 資本構成は企業価値に影響を及ぼさない W&Z[986] 訳 9 頁 資本構成とは, キャッシュフローを, キャッシュフロー パターンの異なる請求権に分割することにすぎない S 諸費用がゼロ

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Academic year: 2021

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(1)

PATの基礎理論

EMHとCAPMに寄せて

1

もくじ

1. 実証理論(PAT)の必要性 2. 効率的市場仮説(EMH) 3. 資本資産評価モデル(CAPM) 2

1. 実証理論(PAT)の必要性

■W&Z[1986]訳7-8頁 会計実務のシステマティックな動向の観察 1. 1. 無効果仮説の限界 2. 会計実務の説明への関心 3

理論の初期的発展

無効果仮説 (無関連性命題) 機械的反応仮説 無効果仮説 (無関連性命題) 機械的反応仮説 4 取引費用,契約費用,情報費用 税金がゼロであり,会計手続き 変更が既知であれば,当該変更 と株価変動は関連しない。 W&Z[1986]訳90頁。 会計報告書が唯一の情報源であ り,会計手続き変更がキャッシュ フローに影響を及ぼさなくても, それは株価変動をもたらす。 システマティックに株価を誤導する。 W&Z[1986]訳93頁。

無効果仮説

企業の経済的実態 将来キャッシュフロー 企業価値 企業の経済的実態 将来キャッシュフロー 企業価値 効率的市場 「市場万能論」 会計手続きの変更は企業 価値に対して無効果 効率的市場 「市場万能論」 会計手続きの変更は企業 価値に対して無効果

EMHとCAPM

■EMH 会計手続きの変更という情報が既知の場合,当 該情報にもとづいて株式取引を行ってもARは 獲得できない。W&Z[1986]訳91頁。 ■CAPM 企業価値は,期待将来キャッシュフローと期待投 資収益率の関数である。W&Z[1986]訳91頁。 EMHは無効果を予測するのみ。CAPMは,株価変 動の方向を予測する。W&Z[1986]訳91頁。

(2)

MM

■MM(Modigliani & Miller, 1958)

取引費用,契約費用,情報費用,税金がゼロとすれば, 資本構成は企業価値に影響を及ぼさない。 W&Z[1986]訳91頁。 資本構成とは,キャッシュフローを,キャッシュフロー・ パターンの異なる請求権に分割することにすぎない。S 諸費用がゼロの場合,分割によって,トータルの キャッシュフロー(企業価値)は変わらない。 税金効果分析(Tax Analysis)。 7

複合仮説

■Joint Hypothesis W&Z[1986]訳93頁 無効果仮説は,以下の複合仮説。 1. EMH W&Z[1986] 92 1. EMH(期待外性,W&Z[1986]訳92頁) 2. CAPM(p=f(E(c),i)) 3. 諸費用ゼロ(CAPMと共通) 8

無効果仮説の限界

■以下の現象を説明できない。 1. 産業ごとに資本構成がシステマティックに異なってい ること。[2]p.177. 2. キャッシュフローに影響を持たない会計ルールの変 2. キャッシュフローに影響を持たない会計ルールの変 更をめぐって利害団体がロビー活動をしていること。 [1]p.137; [2]pp.176-177. ⇒PATの開発

資本市場研究(Capital Market Studies)から実務 の説明へ 9

無効果仮説の貢献

■EMH Fama[1970]。実証理論と実証的研究方法が 会計学に導入され普及する契機を作った。会 計利益と株価,会計手続きと株価等。 計利益と株価,会計手続きと株価等。 W&Z[1986]訳19頁。 ■CAPM 1960年代に財務論から導入。有価証券の市 場価格に影響を及ぼす要素の特定。 10

Ball & Brown[1968]以降の研究

■W&Z[1986]訳19-20頁 有価証券評価のために情報を資本市場に供給 するときに会計数値が果たす役割について, EMHとCAPMが提供するインプリケーションを調 EMHとCAPMが提供するインプリケーションを調 査してきた。 [2]chs.3-5. PATにおいても,EMHは実務を説明するのに妥当 なものと仮定され,EMHとCAPMに関する先行研 究の成果が,仮説の構築に利用されてきた。

PATの方法論的基礎

■規範理論vs.実証理論

Normative vs. Positive Accounting Theory ([1]p.136)

Positive and Normative Propositions([2]p.7) Positive and Normative Propositions([2]p.7) 実証理論≒記述理論

Friedman[1953]で一般化した。([2]p.8)

Wolk et al.[2013](p.36)では,「規範理論と記述理 論」で整理。

(3)

実証的命題

■「AならばBである。」 反証可能。[2]pp.8-9. 【例】「会社がFIFOからLIFOに変更し,株式市場が 【例】「会社がFIFOからLIFOに変更し,株式市場が その変更を予期していなかったならば,株価は 上昇するであろう。」 「FIFOからLIFOへの変更」,「市場の予想」,「株価 の上昇」は,いずれも検証(反証)が可能。 13

規範的命題

■「AならばBであるべきである。」 反証不能 【例】「価格が上昇しているので,LIFOが選択される べきである。」 べきである。」 「LIFOの選択」がなぜ“must”なのか,説明できな い(検証条件)。 「LIFOの選択」が“must”でない 場合とは,どのような場合かを想定できない(反 証条件)。 14

規範命題の反証可能化

■目的を与えることで,条件付予測に転化でき,反 証可能な命題となる。[2]pp.8-9. 【例】「価格が上昇していれば,LIFOの選択は企業 価値を最大にするであろう。」 価値を最大にするであろう。」 ※ 「企業価値の最大化」という目的を設定。当該 目的に照らせば,「LIFOの選択」が“must”となる。 操作的定義(戸田山[2011]133頁)。ただし目的 の設定は,理論の利用者による。 15

科学哲学における理論

理論の条件 検証可能(反証可能)なこと。 徳賀・大日方[2013]123頁。 間違いを認める仕組みを持つこと。 戸田山[2011]141頁。 16 戸田山[2011]141頁。 理論の役割 因果関係の説明。[2]p.4. 仮説=理論。伊勢田[2003]38頁;戸田山 [2011]24頁。 「説明」し,「予測」すること。 [1]p.1; [2]p.2; 戸田山[2011]55頁。

規範理論の評価

■規範理論は,「あるべき」ものとして前提された目的に 基礎を置いているが,会計人が普遍的に認めた目的 というものは存在しない。 ■したがって,規範理論は,前提となる仮定を受け入れ た人たちだけの間で受容されるものである。 ■したがって,規範理論は,前提となる仮定を受け入れ た人たちだけの間で受容されるものである。 ■とはいえ,財務報告の目的に基礎を置いているという 意味で,ほとんどの会計理論は規範的である。 [1]p.137.

疑似科学

■Pseudoscience 反証条件を明らかにせずに,仮説を反証例から守 ろうとすると,疑似科学っぽさがアップする。戸田 山[2011]151頁。 山[2011]151頁。 1. 仮説を曖昧な言葉で述べる,ほとんど反証例 のありえない仕方で述べる。 2. 反証例が現れたときに,アドホックな仮説を付 加して仮説を反証から守る。

(4)

バーナム効果

■曖昧なことや両義的なことを書けば,あらゆ る人が自分に当てはまると思ってしまう効果。 戸田山[2011]128頁。 【例】O型女性の性格判断 「自分の好きな人とは上手に付き合うが,苦手 な人は無視して反感をかうので,注意しましょ う。」 19

情報量と反証例

■正の相関 P1 この打席で,イチローは,ヒットを打つか,打たない かだ。 P2 この打席で,イチローは,ヒットを打つ。 P2 この打席で,イチローは,ヒットを打つ。 P3 この打席で,イチローは,二塁打を打つ。 P4 この打席で,イチローは,三遊間に二塁打を打つ。 ※降順(Pn→Pn+1)で,反証例(外れるリスク)が多くなる が,情報量も多くなる。論理的真理( P1 )の情報量は ゼロ。 20

実験者効果

■反証例の発生原因を実験者の心理で説明し,仮説を守る 効果。戸田山[2011]139頁。 仮説:「超能力者は,テレパシーで,あなたのカードを当てる ことができる。」 検証:はずれ(反証) 検証:はずれ(反証) アドホックな仮説:「超能力者はテレパシーで,懐疑的な人を 見分ける。そのため,透視能力が働かなくなる。」 ※反証例になるはずのものを,逆に正事例に変えることがで き,いつまで経っても反証できない。フロイトの精神分析。 抑圧効果。戸田山[2011]141頁。 21

エージェンシー理論=PAT

■エージェンシー理論とは,会計実務や会計基 準を説明しようとする実証的会計理論(PAT) である。その研究はEMHを所与としており,会 計を資本市場への情報提供者とみる ([1]p.137)。 ([1]p.137)。 [2]では,会計理論=実証理論。「会計理論の 目的は,会計実務を説明し予測することであ る。」([2]p.2) 22

PATの貢献

契約費用,情報費用,政治費用がゼロではない という仮説を設けることで,説明を修正しようとし た。 会計手続きが企業価値に影響を及ぼす可能性 会計手続きが企業価値に影響を及ぼす可能性 が生じ,会計手続きがクロスセクションで異なる こと,時系列で異なることが,説明できるように なった。 [1]pp.176-177.

PATの論理構成

■契約費用と情報費用がゼロではないと仮定する 経済理論を適用して,会計実務を説明する理論。 W&Z[1986]訳173頁。 ■契約過程と政治過程の研究 ボーナス制度仮説 負債比率仮説 規模仮説(政治コスト仮説) Scott[2015]訳276-278頁。

(5)

仮 説 仮説の内容

ボーナス制度仮説 Bonus Plan Hypothesis

他の条件が等しければ,ボーナス制度のある企業 の経営者は,報告利益を将来の期間から当期に 移す会計手続きを選択する可能性が相対的に高 い。訳211頁; Scott[2015]訳,276頁。 財務制限条項仮説 (負債比率仮説) Debt Covenant Hypothesis

会計数値に基づいた特定の制限条項に抵触する おそれのある会社ほど,当期利益を増やす手続き を用いる傾向がある。訳222頁; Scott[2015]訳,276 頁。 25 頁。 他の条件が等しければ,負債比率の高い企業の 経営者は,報告利益を将来の期間から当期に移 す会計手続きを選択する可能性が相対的に高い。 訳221頁 政治コスト仮説 (規模仮説) Political Cost Hypothesis

他の事情が等しければ,規模の大きい会社の経営 者ほど,当期から将来の期間に報告利益を繰り延 べる会計手続きを選択する傾向がある。訳248頁; Scott[2015]訳,276頁。

契約過程

■エージェンシー理論の応用 株 主=プリンシパル 経営者=エージェント 26 代理人 (Agent) 企業経営者 本人 (Principal) 資源提供者 資源の委託 資源の委託 資源の受託責任 資源の受託責任

エージェンシー費用(狭義)

■本人 代理人の私益極大化による本人利益の犠牲 →機会費用 対抗策として,資源提供のリスク・プレミアム 27 対抗策として,資源提供のリスク・プレミアム (契約利息など)を積み増す。 ■代理人 資金調達コストの上昇

契約のインセンティブ

■エージェンシー費用の削減 →双方が契約のインセンティブを持つ。 代理人の利己的行動を制約する契約。 利益連動型報酬制度等 28 本人 自己の利益の防御 代理人 資金調達コストの削減 ※強制や義務によらない。 Cf.会計責任(会社法),投資家保護(金商法)

私的会計規制としての契約

■契約への会計数値の組み込み 一定水準の利益率や負債比率を決定。 その基準に抵触した場合,代理人は追加的コ ストを負担する。 ストを負担する。 (例)無担保社債の発行 財務制限条項に違反した場合,未償還残高 を即時償還する。→ボンディング

効率的契約と効率的会計選択

■エージェンシー費用を最小化するような契約 を,効率的契約という。 その契約の運用の局面で,エージェンシー費用 その契約の運用の局面で,エージェンシー費用 を最小化するような会計選択を,効率的会計 選択という。

(6)

規制不要論

■個別状況に応じた契約と会計選択 会計選択の幅は広い方が望ましい。 → 31 →規制緩和 規制不要 ※意思決定有用性アプローチに依拠した基 準の幅の縮小(比較可能性の向上)と対立す る。藤井[2015]29頁。

中間まとめ

エージェンシー関係 代理人の私益最大化 エージェンシー費用 双方の利得が低下 契約のインセンティブ 強制によらない規制 32 契約理論による仮説 1. ボーナス制度仮説 2. 財務制限条項仮説 3. 政治費用仮説

政治過程

• 理由づけ理論(正当化論) 「公共の利益」にもとづく議論(利害関係者が 不明確な議論)は,「自己の利益」にもとづく議 論(利害関係者が明確な議論)よりも,反対が 論(利害関係者が明確な議論)よりも,反対が 少なくなる。→「真の国民のための~」

Watts and Zimmerman[1986],368-369頁。

33

「公共の利益」論

■Question

What do the following three have in common?

1. Unified Budget Act of 1964 (by L. B. 1. Unified Budget Act of 1964 (by L. B.

Johnson Adm.)

2. Patriot Act of 2002 (by G.W.Bush Adm.) 3. Fair Value Accounting (by FASB/IASB)

34

Answer

■These labels were chosen to put potential opponents on the defensive before the debates even begin. This is an old device in the book of policy rhetoric. old device in the book of policy rhetoric.

Sunder[2008]p.6.

「公共の利益」論の経済的機能

■公共の利益という観点で規制を正当化する 会計規範論は,立法の潜在的反対者に法案 の分析を押しつけ,彼らの費用を増加させる ことになる。 ことになる。 →立法反対者のロビー活動の量の減少。

(7)

PATの評価

■すべての経済主体が自己の期待効用を最大化するように 行動するという基本的仮定を置くために,この理論は,政 治的・社会的な観点からは受入れにくいものとなっている。 ■なぜ多様な会計実務が存在するかを説明するのに役立つ 理論である。したがって,事後の検証によってこの理論が 理論である。したがって,事後の検証によってこの理論が 支持されたとしても,PATが,様々な状況下で正しい会計手 続きとしてどの手続きが適用されるべきかを明らかにする ことはないし,その結果,この理論によって会計実務が変 化することもない [1]p.140. 37

Analyticalの観点からの評価

■「理論」とはいうものの,実証エージェンシー 研究にもとづいて直観的に組立てられた仮説 を検証する実証研究であって,包括的な数理 モデル分析を行わないのが普通である。 モデル分析を行わないのが普通である。 太田[2008]270頁。 38

2. 効率的市場仮説

■ミクロ経済学 経済的利益=0 リスク調整済み市場投資収益率 上記の均衡状態を,不確実性下の競争市場にお ける証券価格形成に拡張適用したもの。 情報の「伝達」に着目する点で,レモン原理と共 通。応用ミクロ。現実性の加味。 39

効率的市場の定義

■Jensen[1978] 情報θtに基づいて取引をすることにより経済 的利益を得ることができないならば,市場は θtについて効率的である。 θtについて効率的である。 40

EMHの論理構成

保管費用,取引費用,情報費用=0のとき, t時点での情報θtに関して効率的な市場において, θtを所与とした当該市場におけるt+1時点の資産iの 期待価格および異常投資収益率は,

(

)

[

it t

]

t i t t i P E r P E( ,+1

θ

)= , 1+ ,+1

θ

(

it t

)

t i t i

r

E

r

v

, +1

, +1

, +

1

θ

つづき

多期間(T)を通してみれば,特定の情報を用い た異常投資収益率(abnormal rate of return)は, 平均して,ゼロである。

T ≅ 1 EMHは,特定の情報について,上記の式が成立 するか否かを調査することによって,市場の効 率性(ミクロ経済学の主要仮説)を検証する。

= + ≅ T t t i v T 1 1 , 0 1

(8)

検証の3つのカテゴリー

効率性 株価形成に織り込まれる情報 仮説 過去の株価や 取引高 公表された すべての情報 誰かが知っている すべての情報 43 弱度 ○ AR=0 半強度 ○ ○ AR=0 強度 ○ ○ ○ AR=0

EMHの意義と限界

■意義 1. 単一情報源仮説に現実的適合性がないこと(ニュースリリースや 注記情報等も有用なこと)を明らかにした。会計利益は,株価を システマティックに誤導しない(W&Z[1986]訳, p.25;[1]p.126) 。 2. 会計利益が株価(変動)と相関しているならば,単一の利益概念 に基づかない場合でも,会計利益は投資情報として有用である (W&Z[1986]訳, p.26) 。株価は,企業価値に関する投資家の合 (W&Z[1986]訳, p.26) 。株価は,企業価値に関する投資家の合 意を反映している([1]p.126)。 ※補助仮説の設定によって主要仮説を救う。Lakatos[1970] ■限界 会計の政治化を説明できない。PATが,より整合的な説明を提供して いる([1]p.127)。 44

EMHの社会的評価

2008~2009年リーマン・ショック ■批判者の評価 資産バブル崩壊の危険を過小評価した。 「アカデミックなまやかし」([1]p.125)。 「アカデミックなまやかし」([1]p.125)。 ■擁護者の反論 市場は被害者であり,原因ではない(Fama)。 しかし,理論的には,情報に精通していない投 資家は,市場を迷走させる可能性がある。 45

3. 資本資産評価モデル

• Fisherモデルを不確実性下に拡張適用したも の( W&Z訳p.28)。 T C 46

= = + = T t t t i i t C V 1 1 , 0 . ) 1 ( τ τ

CAPMの論理構成

]

)

(

[

)

(

r

r

E

r

r

E

=

+

β

危険資産iの期待投資収益率は,安全資産の 投資収益率と危険プレミアムを足したものである。

]

)

(

[

)

(

r

i

r

f i

E

r

m

r

f

E

=

+

β

) ( ) , ( con 2 m m i i r r r

σ

β

= E(ri) E(rm) リスク負担に対する報酬

グラフによる理解

投資収益率の 理論値 β 1 E(rm)-rf rf 消費の延期に 対する報酬 β: リスクの水準(量) 低リスク 高リスク

(9)

βの考え方

ポートフォリオのリスクに対する資産iの限界 寄与は,資産iの投資収益率とポートフォリオ の投資収益率の共分散に比例する。 N個の資産からなるポートフォリオの投資収益 率は,そのポートフォリオの投資収益率の散 らばり(分散)である。 49 分散 分散 資産 50 平均 期待投資収益率

∑ ∑

= = = N t i N t j j i j i m xx r r r ) cov( , ) ( 2 σ ポートフォリオの期待収益率の分散は,以下のように表される。 ) ( 2 ) , cov( ) , cov( ) ( 2 2 N N m x r r x r r x r r + + = ∂σ

σ 資産iへの投資割合xiをわずかに変化させたとき, それがポートフォリオのリスクσ2(r p)に及ぼす影響 は,他の変数を一定とすれば, σ2(r p)をxiについて 偏微分すれば求められる。 51 ) , cov( 2 ) ( 2 ) , cov( ) , cov( ) ( 2 1 1 m i i i i j j j i j i j j i j j i m r r r x r r x r r x x r = + + = ∂ ∂

≠ = ≠ = σ σ この影響を,ポートフォリオのリスクに対する 比率で表すと,βとなる。

直感的理解

β=

資産xiの投資収益率と ポートフォリオの投資収益率の 関係の強さ 52

β=

ポートフォリオの投資収益率の 散らばり

Fisherモデルの拡張適用

) ( 1 ) ( ,1 0 , i i i r E C E V + = 1期間モデル i

= + = T t t i t i i r E C E V 1 , 0 , )] ( 1 [ ) ( 多期間モデル

CAPMと会計数値

) ( ) ( ) ( ) (Ai,t E Ci,t E Ii,t E Di,t E = + −  ならば ) ( ) (Ii,t E Di,t E ≈    ならば ) ( ) ( ) ( ) ( , , , , t i t i t i t i C E A E D E I E ≈ ≈ 会計利益はキャッシュ・フローに関する情報を提供する。 かつまた,期待投資収益率に関する情報も提供する。 W&Z[1986]訳34頁以下。ただし,上記の仮定は, CAPM以外の理論にも適用可能。

(10)

CAPMの実証モデルへの展開

■利益・株価関係の特定化 詳細は,W&Z[1986]ch.2を参照。 55

CAPMの意義と限界

■意義 1. EMHに依拠した仮説を検証する際に用いられてきたという意味で, 会計理論の発展に貢献してきた。ポートフォリオの多様化は,投資 リスクを軽減する([1]p.136)。 2. 新基準の情報効果の検証。期待収益率と実際収益率の残差→情 報公開に対する市場の反応。 ■限界 1. 過去のβを将来の株価(収益率)の予測に利用できるか。不正確 (Fama and French[2004])。反論も存在([1]p.136)。

2. 長期的視点を欠いた企業経営を助長。 ※CAPMには好意的な評価。旧版(第7版)ではより明確。 56

まとめ

1. 機会的反応仮説(単一情報源説)の破綻を 受けて,無効果仮説が登場した(会計学に 導入された)。 2. 無効果仮説と差別化を図る理論として,PAT 2. 無効果仮説と差別化を図る理論として,PAT が開発された。 3. PATには実証研究者と理論研究者の双方か ら批判が加えられているが,PATに依拠した アーカイバル研究が,今日の会計研究の主 要潮流となっている。 57

引用文献

[1] Schroeder, R.G. et al. [2014], Financial

Accounting Theory and Analysis: Text and Cases, 11thEd., Wiley, 加古・大塚監訳[2004]

『財務会計の理論と応用』中央経済社。 [2] Watts, R.L. & J.L. Zimmerman[1986],

Positive Accounting Theory, Prentice Hall, 須

田一幸訳[1991]『実証理論としての会計学』 白桃書房。

58

参考文献

Scott[2015], Financial Accounting Theory, 7thed., Pearson, 太

田他訳[2008]『財務会計の理論と実証』中央経済社。

Wolk, Dodd and Rozycki[2012], Accounting Theory, 8thed.,

SAGE, 長谷川他訳[2013]『アメリカ会計学』同友館。 伊勢田哲治[2003]『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出 版会。 版会。 桜井久勝[2015]『財務諸表分析』第6版,中央経済社。 須田一幸[2000]『財務会計の機能』白桃書房。 戸田山和久[2011]『「科学的思考」のレッスン』NHK出版新書。 藤井秀樹[2016]「会計理論とは何か」『商学論究』第63巻第3 号,133-155頁。

参照

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