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学 位 の 種 類 博士(コミュニティ福祉学)

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Academic year: 2021

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18 氏 名 通山久仁子

学 位 の 種 類 博士(コミュニティ福祉学)

報 告 番 号 乙346号

学 位 授 与 年 月 日 2019年3月31日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号) 第4条第 2 項該当

学 位 論 文 題 目 発達障害のある人の「親当事者」団体による地域福祉活動の 生成・展開過程に関する研究―リーダー層の主体化に着目し て―

審 査 委 員 (主査) 三本松 政之(立教大学大学院

コミュニティ福祉学研究科 教授)

藤井 敦史(立教大学大学院

コミュニティ福祉学研究科 教授)

西田 恵子(立教大学大学院

コミュニティ福祉学研究科 教授)

朝倉 美江(金城学院大学人間科学部教授)

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Ⅰ.論文の内容の要旨

(1)論文の構成

論文全体の構成は、序章、終章を含めた全 8 章の構成である。序章では、発達障害のあ る人の「親当事者」としての実践をとりあげる前提となる、発達障害のある人や家族をめ ぐる社会的排除の状況を整理し、社会的排除に対抗する主体としての「親当事者」を定義 し、 「親当事者」が行う地域福祉活動へ着目する意義について論じた。また本研究の枠組み、

論文構成(図) 、研究方法について提示した。各章の概要については,次項に記載する。

図 論文構成

序章:「親当事者」という 視点の提示 研究枠組みの提示

第 1 章:発達障害児者・家 族への社会的排除 生活支援ニーズの提示

第 2 章:「親当事者」団体の運動と発達障害者支援施 策の展開とを分析し、今後の課題を提示

第 3 章:「親当事者」の主体化過程と地域福祉活動の 生成・展開過程をライフヒストリーとして提示

第 4 章:「親当事者」団体の全国組織の機能と課題を 分析

第 5 章:「親当事者」の主体化過程と地域福祉活動の 生成・展開過程のモデル化

終章:「親当事者」の 主体化の意義と

「親当事者」の 地域福祉活動に よる福祉コミュ ニティ形成の意 義の検討

第 6 章:各地域の「親当事者」団体の実態把握と特 質および課題の分析

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(2)論文の内容要旨

本研究は発達障害のある人の親を対象とし、彼らが行う発達障害児者・家族への支援を 基盤とした地域福祉活動の生成・展開過程とその意義、そして親の主体化の過程とその意 義を明らかにすることを目的とした研究である。序章では、発達障害のある人や家族をめ ぐる社会的排除の状況を整理し、社会的排除に対抗する主体としての「親当事者」を定義 した。また発達障害児者・家族を包摂しうる福祉コミュニティ形成に向けて、 「親当事者」

が行う地域福祉活動へ着目する意義について論じ、研究の枠組み、論文構成、研究方法を 提示した。第 1 章では、先行研究を用い、発達障害のある人の障害特性とそれに起因した 障害当事者とその親の社会的生活困難について分析し、親の当事者性を論じる意義につい て提示した。加えて障害のある人の親のジェンダー性や親の団体に関わる先行研究を概観 し、本研究において「親当事者」団体による地域福祉活動の生成・展開過程を分析する意 義を論じた。第 2 章では、発達障害者支援施策の展開について、 「親当事者」の全国組織に よる「クレイム申立て」運動との関わりから分析した。 2 つの全国組織の運動によって発達 障害者支援法の成立が促されてきた経緯、そして発達障害者支援が障害者福祉施策へと統 合化され、改正発達障害者支援法が成立するまでの経緯について整理し、発達障害者支援 施策の今後の課題を分析した。第 3 章では、前章の発達障害者支援施策の歴史的展開に対 し、そうした時代状況に生きた「親当事者」の個人史の展開について、インタビュー調査 をもとに、一人の母親のライフヒストリーとして描いた。そしてこのライフヒストリーを 養育歴と地域福祉活動の展開過程から分析し、地域福祉活動の実践主体としての「親当事 者」の主体化過程について論じた。第 4 章では、 「親当事者」の全国組織を取り上げ、団体 の役員へのインタビュー調査および文献資料から、団体の組織運営の方法と事業内容を分 析した。その上で全国組織としての「親当事者」団体の機能を明らかにし、加えて団体の 抱える課題について分析した。最後に全国組織としての今後の役割について提示した。第 5 章では、第 4 章の全国組織に対して、各地域の「親当事者」団体を対象に、地域福祉活動 の生成・展開過程と、 「親当事者」の主体化過程を分析した。ここでは「親当事者」団体の リーダーを対象としたインタビュー調査をもとに、その内容を質的に分析し、 「親当事者」

団体の展開過程について検討した。さらに各団体の組織運営の方針とその方法から、 「親当

事者」団体の志向性を明らかにした。第 6 章では、発達障害者支援の全国の NPO を対象に

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Ⅱ.論文審査の結果の要旨

(1)論文の特徴

発達障害のある人の生活困難は可視化されにくい状況にあり、彼らに対する支援は障害 者福祉制度・施策において「制度の谷間」に置かれてきた。そうした状況のもとで彼らの 生活困難の解消に向けた取組みの多くは、親による自助に委ねられてきた。そして親たち は親同士の協働・共助による草の根の地域福祉活動を自ら立ち上げたり、支援に関わるネ ットワークを駆使したりすることで、こうした活動を地域が抱える様々な福祉的課題に対 応する取組みへと展開させ、発達障害のある人への支援を、地域の社会資源へと転換し、

普遍化する実践を試みてきた。

本論文の特徴は、発達障害のある人の親たちの、福祉を推進する主体としての側面に着 目をし、 「親当事者」という新たな概念を提示した点にある。それは、発達障害という障害 のある当事者を家族員に持つことを通して経験される社会的生活困難を契機に、自らのニ ーズを認識し、それを社会的に顕在化させ、社会を変革する主体となり得る障害のある人 の親であり、新しい現実としての福祉実践の担い手・創り手となり得る主体である。

本論文では「親当事者」について実証的に「親当事者」の主体化過程およびそれらの団 体の地域福祉活動の生成・展開過程について明らかにしており、この点に研究の独自性を 見いだすことができる。 「親当事者」の主体化過程とは、親が生活主体者としての自己を回 復し自分らしい生活や生き方の実現を求め、既存の環境に対抗し、変革しようと働きかけ る主体へと変容する過程をさす。 「親当事者」は「親当事者」としての気づきを自らの実践 や運動につなげ、その中で自身の認識を変容させるなどの自己変革を行い、加えて地域福 祉活動の実践において他者のエンパワメント等に貢献できることが「親当事者」の自己の 有用感にもつながっていることを明らかにしている。

(2)論文の評価

まず、本論文は、発達障害という固有の新しい問題領域、 「親当事者」という概念を設定 し、実証を通して検証するというリアリティのある論を展開した点を評価することができ る。とくに「親当事者」のライフヒストリー調査により発達障害のある子どもの親の抱え る困難さとその特徴、課題解決のプロセスを精緻に描き出した点は高く評価される。また 分析の枠組みの設定にあたっては、先行研究を幅広く渉猟し、また目的意識、調査方法、

内容とも明確であり、考察もていねいに行われている点も評価することができる。

次に、本研究では、居場所づくりの活動などのミクロレベルの個別支援をベースとして、

メゾレベルのネットワーク形成へ展開する活動、マクロレベルの制度・政策へと働きかけ

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らえた。そして①発達障害のある人の親の社会的生活困難と生活支援ニーズ(=生活課題)

について提示し、②発達障害のある人の「親当事者」団体の組織化と地域福祉活動の生成・

展開過程の特質を明らかにし、③その活動内容の地域福祉における意義を論じ、④発達障 害のある人の親が「親当事者」へと主体化されていく過程について分析し、親における主 体化の意義を明らかにし、⑤「親当事者」の当事者性を基盤とした地域福祉活動の展開に より形成されていく福祉コミュニティへの展望について論じた。この分析にあたっては、

発達障害児者・家族のニーズ、 「親当事者」団体の実践・運動、発達障害児者・家族への支 援システムの3つの位相を示し、「親当事者」の主体化過程と「親当事者」発の協働の展開 とを関連づけて論じ、地域福祉活動の生成・展開過程の全体像を明らかにしている点が評 価される。

第3は、本論文が発達障害に関わる当事者性を障害当事者とは別に「親当事者」の当事 者性に着目し 2 つの当事者性に分けたことに特徴がある。しかし、その点が十分に展開し きれていないように思われる。今後の課題として当事者性を 2 つに分けたことの理論的な 意味について積極的に位置づけていくこと、また2つの当事者性の葛藤という相互作用過 程を通して、障害当事者と「親当事者」がお互いに自立をしていくプロセスについて深め ることが期待される。

第4に、福祉コミュニティと地域的公共性とに関わって、地域的公共性という視点は福 祉的なテーマ以外の地域の課題も結びつき展開しうる可能性を有していることが指摘でき るが、本論文ではこの点が十分に展開されていない。今後の展開が期待される。

以上に述べたように、本論文で得られた知見はいくつかの課題はあるが、発達障害の「親

当事者」への支援のみならず、コミュニティ福祉学に関連する現場実践に還元し得る多く

の示唆が含まれている。以上のことから、本論文を学位(博士)授与に必要となる学術的

水準を満たすものとして評価する。

参照

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