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密集住宅市街地における地域主体のまちづくり手法 に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

密集住宅市街地における地域主体のまちづくり手法 に関する研究

志賀, 勉

https://doi.org/10.15017/1441333

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(人間環境学), 論文博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

密集住宅市街地における

地域主体のまちづくり手法に関する研究

志賀 勉

(3)

   

(4)

目 次

第1章 序論

1-1 研究の背景と目的 1-2 研究の方法 1-3 研究の位置づけ 1-4 論文の構成

第2章 住環境整備事業地区における空間整備と社会再生の進展過程 2-1 序

2-2 平松・鋳物師地区住環境整備事業の背景   (1)地区の概要

  (2)事業化の動き

2-3 まちづくりの課題と整備計画の策定   (1)地域性に配慮した住民参加方法   (2)まちづくりの課題と整備計画

2-4 コミュニティ住宅の計画と住民自主管理の誘導   (1)戸間住宅の構想

  (2)コミュニティ賃貸住宅の計画   (3)入居手続きと住民自主管理の誘導 2-5 地区施設の整備と住民組織の再編   (1)コミュニティ再生の取組み   (2)地区施設の継承と住民組織の再編 2-6 まとめ

第3章 都市収縮期の地方大都市における密集住宅市街地の住環境特性 3-1 序

3-2 調査対象都市の概要

  (1)北九州市の都市構造と住環境課題   (2)住環境整備事業の沿革

1 2 3 4 5

7 8 9

11

14

17

20

23

24

25

(5)

3-3 市街地住環境の評価と課題地区の抽出

  (1)住環境データベースの構築と評価フローの設定   (2)調査対象地区の設定

  (3)重点調査地区の抽出   (4)課題地区の抽出

3-4 課題地区の住環境特性と改善課題   (1)課題地区の分類

  (2)課題地区の住環境推移と改善課題 3-5 まとめ

第4章 斜面密集市街地の居住動態と住環境変容 4-1 序

4-2 調査対象地区の概況   (1)立地条件   (2)人口動態

  (3)地域住民組織の活動 4-3 居住収縮の進行状態と住民意識   (1)調査方法

  (2)住宅・宅地の物的状態   (3)住環境に対する住民意識   (4)小括

4-4 空家・空宅地の用途転換と飛び地利用   (1)調査方法

  (2)菜園利用の特性   (3)小括

4-5 住宅・宅地利用の利用動態

  (1)地域住情報データベースの構築   (2)住宅・宅地利用の利用動態   (3)小括

27

31

37

41 42 44

50

61

68

(6)

  (1)調査方法

  (2)高齢単身世帯の居住動態

  (3)不在住化後の住宅・宅地の継承実態   (4)小括

4-7 まとめ

第5章 地域主体による住環境点検・改善プログラムの実践と検証 5-1 序

5-2 住環境点検・改善プログラムの構成   (1)プログラムの概念

  (2)実践プロセスの概要   (3)プログラムの構成 5-3 住環境問題に対する住民関心   (1)調査方法

  (2)住環境問題の指摘内容   (3)空家・空宅地の指摘傾向 5-4 問題箇所の改善行動

  (1)改善行動の計画立案   (2)改善行動の実態 5-5 プログラムの住民評価   (1)プログラムの住民認知   (2)住環境の改善に対する評価   (3)プログラムの効果に対する評価 5-6 まとめ

第6章 結論

82

87 88 89

97

102

106

109

113

(7)

   

(8)

1-1 研究の背景と目的

1-2 研究の方法

1-3 研究の位置づけ

1-4 論文の構成

(9)

第1章 序論

1-1 研究の背景と目的

急激な都市化の過程で形成された密集住宅市街地

1)

の改善は、わが国の都市・住宅政策において今 なお重要な課題に位置づけられる

2)

。密集住宅市街地におけるまちづくりでは、地域空間

3)

の整備と ともに地域社会の再生をいかに図るかが重要であるが、わが国の住環境整備事業は、住宅や施設の更新 整備とその影響を被る世帯の生活再建に重点を置いており、地域文化の継承や産業の活性化などの地域 課題への対応は弱く、また、整備過程で損なわれる近隣関係や住民組織といった地域コミュニティへの 配慮も薄い

4)

。このため、地域の実情を踏まえて空間整備と社会再生の取り組みをコーディネートし、

相互の連動を図るまちづくり手法が求められる。

一方、産業構造の変化や人口減少による市街地の空洞化が進行する都市縮減期を迎えた地域では近年、

密集住宅市街地のまちづくりを取り巻く状況が大きく変化し、まちづくりの対象、主体、手段それぞれ に新たな課題を投げかけている。

その第一は、対象となる市街地の密度低下と管理不全による住環境悪化の問題である。都市縮減期の 密集住宅市街地では、住宅需要の減退による世帯数の減少から居住密度の低下が進むが、道路等の公共 施設の不足や条件不利地での住宅更新の停滞といった改善課題は依然存在し、これに加えて空家や空宅 地の増加と管理不全による住環境の荒廃が広がりつつある。よって、市街地の住環境の動向を地区レベ ルで監視し、対策に反映する仕組みづくりが求められる。

第二は、行政主導型から協働型へのまちづくり主体の転換に伴う課題である。地域主権型社会の推進 を背景に、地域問題の解決に対する町内会やまちづくり協議会など地域主体の積極的な取り組みに期待 が寄せられ、多くの自治体がコミュニティセンターや支援制度の整備に力を入れてきた。しかし、人口 減少や少子高齢化の進行は地域活力を着実に低下させており、民官の役割分担のあり方や地域主体のま ちづくり機能の強化策についてさらなる検討が必要である。

第三は、手段となる住環境整備事業の適合性の問題である。都市縮減期は自治体財政も悪化し、住環 境整備事業のような公共負担が重く周辺への波及効果が少ない事業には市民の賛同を得にくい。また、

住環境問題に起因する世帯減少が顕在化した地域に対して開発整備型の事業手法を用いることは、事業 完了までの過渡期にさらなる世帯流出を生む恐れがある。したがって、住環境の保全整備を重視し、小 さな改善を積み重ねて住み心地を高めるまちづくり手法の構築が必要である。

以上より本研究は、都市縮減期を迎えた地方大都市である北九州市を対象とし、居住密度の低下と住

宅や宅地の管理不全によって住環境が悪化する密集住宅市街地の実態と動向の解明と、町内会やまちづ

くり協議会などの地域主体による住環境の自主管理活動を基礎とするまちづくり手法の構築を目的とす

る。

(10)

1-2 研究の方法

本研究は、都市縮減期を迎えた地方大都市である北九州市を対象とし、市街地レベル、地区レベル、

住宅・宅地レベルの調査と分析を行い、密集住宅市街地の実態と動向の解明と地域主体によるまちづく り手法の検討を行った。概要を以下にまとめ、詳細は各章、各節に示す。

まず、市街地レベルについて、北九州市の市街地住環境の評価を行うため、都市計画関連情報 GIS(地 理情報システム)データベースや統計調査結果から住環境評価に有用なデータを収集し、GIS で統合し た住環境データベースを構築して分析を行った(第 3 章)。

次に、地区レベルについて、平松・鋳物師地区(小倉北区)と枝光一区(八幡東区)を対象に、現地 のまちづくり実践に参画しつつ、現況調査、住民意識調査、観察調査等を行った。このうち、平松・鋳 物師地区では、住環境整備事業のプランナーの一員として 1992 年(平成 4)から参画し、事業関連行 事の内容記録、計画資料や会議資料の収集、住民アンケート調査を行っており、本研究では、これらを 空間整備と社会再生の流れを踏まえて整理した上で考察を行った(第 2 章)。また、枝光一区では、枝 光一区地域まちづくり協議会のアドバイザーとして 2000 年(平成 12)から参画し、住民アンケート 調査や協働実践を行っており、本研究では、これらの集計や活動記録の整理を行い、住環境問題に対す る住民関心と問題箇所の改善活動の実態、活動に対する住民評価を捉えた(第 4 章 4-2、第 5 章)。

続いて、住宅・宅地レベルの調査として、枝光一区を対象に、空家や空宅地の実態と発生要因を捉え

るため、住宅・宅地現況調査及び高齢単身世帯の居住動態に関する調査を行った。このうち、住宅・宅

地現況調査では、地区全域の土地と建物の現況を調査員が目視確認し、自治会役員に依頼して空家の確

定を行った後、空家と空宅地の劣化状態を調べた(第 4 章 4-3)。また、高齢単身世帯の居住動態に関

する調査では、地区の高齢単身者の交歓行事用の名簿を継続的に収集し、世帯の異動を整理して不在住

化した世帯を確認した上で自治会役員へのヒアリング調査を行い、不在住化の理由や事後の住宅利用を

把握した(第 4 章 4-6)。また、枝光一区で収集した住宅、宅地、世帯に関する情報を GIS を用いて統

合した地域住情報データベースを構築し、住宅・宅地の利用動態の分析に用いた(第 4 章 4-5)。

(11)

1-3 研究の位置づけ

1995 年に起きた阪神・淡路大震災による甚大な被害とその復興は、密集住宅市街地の改善が急務の 課題であるとともに、物的改善のみならず、地域コミュニティの強化を図ることの重要性を広く認識さ せた。他にも、1970 年代に大量供給された公共賃貸住宅ストックの老朽化と住民の高齢化の問題や、

1990 年代のバブル経済とその崩壊に伴う中心市街地の衰退問題、また最近では、人口減少社会の到来 を象徴する郊外戸建て住宅地の空洞化問題など、近年の都市問題の多くが物的・人的両面からの解決ア プローチを必要としている。そのような多角的な改善活動を地域のまちづくりとしていかにマネジメン トするかが重要となっている。

日本建築学会編「まちづくり教科書」では、まちづくりを「地域社会に存在する資源を基礎として、

身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め『生活の質の向上』を実現するための一連 の持続的な活動」と定義し、また、まちづくりの原則として、①公共の福祉、②地域性、③ボトムアッ プ、④場所の文脈、⑤多主体による協働、⑥持続可能性・地域内循環、⑦相互編集(個々の活動成果の 相互的・整合的な組立て)、⑧個の啓発と創発性、⑨環境共生、⑩グローカル(グローバルかつローカ ルな視点と行動)、を挙げて多様な展開の枠組みを提示している。密集住宅市街地のまちづくりや住環 境整備に関する研究蓄積は厚く、その知見はこれらの原則の裏づけにも寄与している。

都市縮減期における密集住宅市街地のまちづくりを展望するものはまだ少ないが、真野

5)

は、地方 都市の密集市街地の状況が大都市圏と異なり、市街地の拡散が限界状態まで進んだ結果、密集市街地が もはや集中的な公共投資による包括的な整備を行う対象にならないことを指摘した上で、個別の場所や 人から始まる出来事やプロジェクトがパラレルに動く環境として地域を認識し、動きのあるフィールド に変えていくべきことを主張している。また、金

6)

らは、住環境整備制度の面から、横浜市の「いえ・

みち まち改善事業」を対象に、小さなプロジェクトの積み重ねによって徐々に成果を挙げ、それらを もとに実現可能性を持った計画を立てるような取り組みによる住環境マネジメントの可能性を分析・考 察し、従来のような仕様書型ではなく、性能型の解決策を現場で見出しながら事業計画を組み立てる新 しいタイプの制度の構築を提起している。その主体として、事業の積み重ねに対し、持続的に地域をマ ネジメントする住民組織の必要性を指摘している。本研究もこれらと問題意識を同じくするが、さらに 建築計画学の生活原点主義

7)

の立場から、住民の生活と空間との対応関係をもとに地区レベルの計画 論を導くことを志向し、空洞化によって住環境が悪化する密集住宅市街地の実態と動向の解明と、既成 の町内会やまちづくり協議会などの地域主体による住環境の自主管理活動を基礎とするまちづくり手法 の構築を目的としている。

一方、近年、郊外戸建て住宅地の維持管理問題を端緒に住宅地マネジメントの研究が盛んになってい

る。これについて、2009 年日本建築学会大会で開催された建築社会システム・建築計画部門研究懇談

会「住宅地マネジメントの課題と展望」資料には、多くの研究者や実務家から多様な論点や実践例が寄

せられている

8)

。しかしながら、本研究が対象とする戸建て持家中心の非計画的な既成住宅地を対象と

する研究はまだ少なく、また、都市計画分野で盛んな中心市街地研究とも異なり、研究の進展が望まれ

る対象と考える。

(12)

1-4 論文の構成

本論文は、全6章より構成されている。第1章は序論であり、本研究の背景と目的、方法について述 べている。

第2章では、北九州市平松・鋳物師地区住環境整備事業を対象に、住環境整備事業の背景、まちづく りの課題と整備計画の策定、コミュニティ住宅の計画と住民自主管理の誘導、地区施設の整備と住民組 織の再編の面から事業過程を通観し、密集住宅市街地のまちづくりにおける空間整備と社会再生との連 動のあり方について考察する。

第3章では、都市収縮期を迎えた地方大都市である北九州市を対象に、まず、GIS を用いた住環境デー タベースを構築して市街地の住環境評価を町丁単位で行い、木造住宅が密集し防災面の問題が大きい地 区を課題地区として抽出し、次に、課題地区の住環境特性と住宅更新の動向を捉え、住環境の改善課題 について考察する。

第4章では、少子高齢化と世帯減少が進行する密集住宅市街地では、住宅・宅地の利用行動や管理状 態がどう変化し、周辺住環境にどう影響を及ぼすのかについて、第3章で抽出した課題地区を含む斜面 住宅地である八幡東区枝光一区を対象とする調査をもとに詳細な分析を行う。手順は、既成住宅地にお ける居住密度の低下と管理状態の不全化が進行する現象を居住収縮と定義し、その実態と動向を画地レ ベルと住宅地レベルの両面から明らかにする。まず、住宅・宅地ストックの物的状態と住民意識を捉え、

居住収縮の進行状態を評価する。次に、空家・空宅地の管理や利活用について、特に菜園への用途転換 と飛び地利用に注目して分析を行う。続いて、居住収縮の進展について、5 年間の住宅・宅地利用の変 化を捉えて考察する。さらに、空家増加の主要因である高齢単身世帯の不在住化に注目し、世帯の居住 動態と住宅継承について分析を行う。

第5章では、居住収縮が進行する密集住宅市街地における地域主体によるまちづくり手法として「住 環境点検・改善プログラム」を提案し、枝光一区地域まちづくり協議会と同自治区会・町会及び筆者ら の研究室が協働して行った実践プロセスを通じ、住環境問題に対する住民関心と問題箇所の改善活動の 実態、活動に対する住民評価を捉え、プログラムの効果と課題を明らかにする。

第6章では、5章までの知見をまとめて結論として集約するとともに、今後の課題を述べる。

(13)

補註

1)「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」の第2条では、密集市街地の定義として「当該区域 内に老朽化した木造の建築物が密集しており、かつ、十分な公共施設が整備されていないことその他当該区域 内の土地利用の状況から、その特定防災機能が確保されていない市街地」としている。密集住宅市街地もこれ に準拠し、密集市街地の建築物が主に専用住宅で構成される市街地を指すこととする。また、居住密度について、

代表的な住環境整備事業制度である「住宅市街地総合整備事業(密集住宅市街地整備型)」の場合、対象地区の 居住密度に関する要件は「住宅戸数密度が 30 戸 /ha 以上」とされており、過密とは言えなくとも道路の脆弱 性等で住宅更新が進まない地区もカバーしている。

2)第3章、第1節参照。

3) 「地域」とは『活動、機能、空間などの同質性、一体性によって範囲づけられた土地』 (建築大辞典:彰国社)であり、

地理的な範囲の定めはない。本論でも、 「地域」を広がりを定めない語として用い、特定の範囲を指す場合は「地 区」を用いることとする。

4)参考文献 [1][2][3][4] 参照。佐藤は文献 [1] で、『まちづくりは住環境整備にその街に固有の課題が加わり、さ らに魅力を付加していくことで成立するものである。これに対して(多くの場合)住環境整備は普遍的な概念 であり、住まいとその周辺環境を直すハード事業である。』と指摘している。

5)参考文献 [12] 参照。

6)参考文献 [13] 参照。

7)参考文献 [14] 参照。

8)参考文献 [15] 参照。

参考文献

[1] 佐藤圭二:住環境整備,鹿島出版会,2005

[2] 住田昌二:居住地再編と住環境政策の課題,2002 年度日本建築学会大会 都市計画部門パネルディスカッショ ン資料,pp.5-12,2002

[3] 日本建築学会編:まちづくり教科書 1 まちづくりの方法,丸善,2004 [4] 内田雄造:同和地区のまちづくり論,明石書店,1993

[5] ランドルフ・T・ヘスター,土肥真人:まちづくりの方法と技術 コミュニティ・デザイン・プライマー,現代 企画室,1997

[6] ニック・ウエイツ,チャールズ・ネヴィット著,塩崎賢明訳:コミュニティ・アーキテクチュア,都市文化社,

1992

[7] 日笠端:市町村の都市計画 1 コミュニティの空間計画,共立出版,1997 [8] 財団法人住宅総合研究財団編:現代住宅研究の変遷と展望,丸善株式会社,2009 [9] 倉沢進・秋元律郎編著:町内会と地域集団 , ミネルヴァ書房 ,1990

[10] 志賀勉:循環コミュニティデザインへの展開,竹下輝和・池添昌幸編著:持続都市建築システム学シリーズ  循環建築・都市デザイン,技報堂出版,2008

[11] 志賀勉:まちづくり実践と建築計画研究,2007 年度日本建築学会大会 建築計画部門研究懇談会資料,pp.33- 36,2007

[12] 真野洋介:地方都市密集市街地の新たな展開 : 尾道旧市街での取り組みから考える,社団法人都市住宅学会 都 市住宅学 83 号,pp.42-45, 2013

[13] 金胃錫・高見沢実:持続的・段階的整備を可能とするための密集市街地整備制度に関する研究 , 日本都市計画 学会 都市計画論文集 No.42-3,pp.661-666,2007

[14] 竹下輝和:ポストモダン時代と建築計画 , 建築雑誌 ,vol.102 No.1258,pp.17-20,1987

[15] 日本建築学会 建築社会システム委員会・建築計画委員会:住宅地マネジメントの課題と展望 - 成熟社会のプ

ログラム -,2009 年度日本建築学会大会建築社会システム・建築計画部門研究懇談会 資料 ,2009

(14)

    空間整備と社会再生の進展過程

2-1 序

2-2 平松・鋳物師地区住環境整備事業の背景 2-3 まちづくりの課題と整備計画の策定

2-4 コミュニティ住宅の計画と住民自主管理の誘導 2-5 地区施設の整備と住民組織の再編

2-6 まとめ

(15)

図 2-1-1 平松・鋳物師地区(1994 年)

第2章 住環境整備事業地区における空間整備と社会再生の進展過程

2-1 序

密集住宅市街地のまちづくりでは、地域空間の整備とともに地域社会の再生をいかに図るかが重要な 課題である。しかしながら、わが国の住環境整備事業は、住宅や施設の更新整備とその影響を被る世帯 の生活再建に重点を置いており、地域文化の継承や産業の活性化といった他のまちづくり課題への対応 は弱い。また、整備過程で損なわれる近隣関係や地域住民組織といった地域コミュニティを整備後いか に醸成するかについての配慮も薄い。

本章で取り上げる平松・鋳

いもじ

物師地区住環境整備事業は、北九州市の都心近傍に位置する旧漁業集落な どから成る密集住宅市街地の改善を目的に、1994 年(平成 6)に総合住環境整備事業(現、住宅市街 地総合整備事業(密集市街地整備型))の事業承認を受け、2005 年度末(平成 17)までの約 12 年を かけて施行された(図 2-1-1)。事業化の検討は 1992 年(平成 4)に始まり、市と住民、大学研究室、

民間コンサルタントのパートナーシップのもと、整備計画の策定や事業推進活動の運営がなされた(図 2-1-2)。整備内容は、任意事業ながら積極的な公共整備によって地区をほぼ全面的に更新するものであ り、道路・下水道等の基盤整備、住宅・宅地の建設(コミュニティ賃貸住宅、分譲宅地)、商店・事業 所の建設(賃貸、分譲宅地)、集会所の建設、公園・緑地の整備、祠堂の再建等を行っている。さらに 当事業では、これらの空間整備にとどまらず、整備後における共同生活の運営や共用施設の管理、地域 文化の継承、産業の活性化といった多岐に渡る住民活動の進展も果たした。

以上より本章では、平松・鋳物師地区住環境整備事業を対象に、事業関連資料や研究資料をもとに、

事業の背景(2-2 節)、まちづくりの課題と整備計画の策定(2-3 節)、コミュニティ住宅の計画と住民 自主管理の誘導(2-4 節)、地区施設の整備と住民組織の再編(2-5 節)、の面から事業過程を通観し、

密集住宅市街地のまちづくりにおける空間整備と社会再生との連動のあり方について考察する。

平松東町内会 平松中町内会 平松西町内会

水神町内会 鋳物師西  町内会

平松漁港 州都市高速道路

山陽新幹線 板櫃川

平松町

鋳物師町

明松橋

東港町

日明1丁目

ガス工場 極楽橋

JR鹿児島本線

公務員宿舎 往還道路

0 10 50 100 150M

平松・鋳物師地区

(住環境整備事業区域)

町内会境界

平松・鋳物師・水神のみなさん

●意見の交換 辻裏勉強会の開催

●活動内容のお知らせ まちづくりだよりの発行

まちづくり 推進協議会 建築都市局北九州市

コンサル大学 タント 行政の窓口役として、

まちづくり事業の具体 化を行う。

専門的技術のアドバイ ス役として、まちづくり 計画をまとめる。

住民の代表としてまちづくり活 動の企画・運営に取り組む。

図 2-1-2 まちづくりの体制

(16)

2-2 平松・鋳物師地区住環境整備事業の背景

(1)地区の概要

平松・鋳物師地区は、JR 小倉駅の北西約 1.5km に位置し、周囲を板櫃川、JR 鹿児島本線、山陽新 幹線に囲まれた約 5ha の区域である(図 2-2-1)。1994 年時点の住宅数は 412 戸、住民は 350 世帯、

835 人であり、地域コミュニティは平松西、平松中、平松東、水神、鋳物師西の 5 町内会から成っていた。

居住地としての歴史は古く、江戸期初めに細川氏が築いた城下町の北西端にあたり、平松は漁業集落、

鋳物師は町人町として形成された。また、旧街道である往還道路の南側に位置する水神は、対岸の農業 集落日明村の縁辺部で戦後に宅地化が進んだ。(図 2-2-2)

形成過程の違いから住宅の集合状態は一様でないが、総じて道路基盤は脆弱で建物密度が高い。この ため、下水道の整備や車輌の進入が困難な住宅が多く(下水道普及率 26.2%、接道不良住宅率 66.0%)、

加えて、日照や通風などの相隣環境の悪化で居住性が損なわれ、若年層の流出によって世帯の高齢化も 進んでいた(高齢化率 29.2%)。

特に、平松は漁業集落の構成を留め、網目状の路地を介して木造住宅が極度に密集し、住環境の悪化 が深刻であった。路地は宅地の境界部に通っており、住宅の玄関や縁が面する表の路地は「戸

とあい

間」、ま た、住宅の裏手の通路や物置場は「背

せど

戸」と呼ばれる。戸間は背戸に比べて共同性の高い空間であり、

かつては住戸周りでの漁労や家事の場として 1 〜 2 間の幅が確保されていた。しかし、 『昔は広かったが、

今では背戸になってしまった』と古老が語るように、都市化の進展による漁業の衰退や生活の近代化は 戸間の共同性を弱め、 住宅の増改築による拡張で次第に専用化されていき、戸間の狭あい化や背戸への 変質が進んだ。2 階を増築する世帯も多く、路地の日照や通風は妨げられ、居住性の著しい低下を招い た。(図 2-2-3、2-2-4、2-2-5)

図 2-2-2 地区周辺の市街化の推移

1)

1900 年

(明治 33)

1922 年

(大正 11)

1950 年

(昭和 25)

1969 年

(昭和 40)

平松・鋳物師地区 1km 2km 3km

小倉北区 小倉駅

西小倉駅

板櫃川

南小倉駅

JR新幹線 国道 JR在来線

N

図 2-2-1 地区の位置

(17)

(2)事業化の動き

市政においても当地区の改善は早くから課題視されていた。1978 年度(昭和 53)には建設省(現、

国土交通省)の「住環境整備モデル事業調査」が実施され、九州大学青木研究室(青木正夫教授、建築 計画学)による実態調査及び整備構想の策定が行われたが、その後の地元調整がつかず事業化には至ら なかった。

しかしながら、住環境の悪化による地域活力の低下が進み、住民の改善要望が高まったことから、

1992 年度(平成 4)より市建築局(現、建築都市局)が住環境整備事業の検討に着手した。同年 9 月、

住民代表によるまちづくり推進協議会(以下、推進協議会)が結成され、また、専門家として九州大学 竹下研究室(竹下輝和教授、建築計画学)が参画し、これより市と住民、大学研究室、民間コンサルタ ントのパートナーシップのもとで整備計画の策定や事業推進活動の運営がなされた。北九州市では当時、

北方地区環境改善事業(小集落地区改良事業、31.2ha、事業期間:1984 〜 1994 年度(昭和 59 〜平成 4))

が終盤を迎えた頃であり、ここで市が培った改善型整備や住民参加等の運営手法は当地区での取り組み にも受け継がれた。

図 2-2-4 平松の住居の変容(断面)

図 2-2-3 平松の住居の変容(平面)

共同水道 戸間 背戸 専用庭 玄関 勝手口 土間 便所

共同水道(跡) 戸間 背戸 専用庭 玄関 勝手口 土間 便所 内風呂

1965 年頃

1997 年

通りニワ 6畳 6畳

6畳 6畳 6畳 6畳 6畳

6畳 内部空間

内部空間

作業空間 作業空間

戸間空間 戸間空間

戸間空間 戸間空間

専有 増築

内部空間 内部空間

共同水道

内部空間 内部空間

2階を増築 隣家と合築

板間

板間 板間

板間 台所

廊下

勝手口 玄関

大規模な改築

8畳 板塀 土間 板間 押入

1997 年 1965 年頃

※住民ヒアリングにもとづく復元

図 2-2-5 戸間の変容(左:1965 年頃右:1997 年)

(18)

2-3 まちづくりの課題と整備計画の策定

(1)地域性に配慮した住民参加方法

住環境整備事業の初動期において、地域性を踏まえた整備計画の立案と住民や地権者の合意形成をい かに進めるかは事業運営における重要な課題である。当地区は形成過程や住環境の課題を異にする地域 コミュニティから成る。このため、整備計画の策定では、推進協議会での検討作業にとどまらず、辻裏 勉強会と称する町内会ごとの学習会を重ね、住民意向を踏まえた計画内容へと収斂させる手続きがとら れた。また、まちづくりだよりを発行して各世帯に配布し、事業に関する情報の周知を図った。さらに、

市の担当課では基本計画がほぼまとまった段階で、各世帯の意向を確認する訪問調査(戸別意向調査)

を行い、事業への理解の浸透度合を判断した。

こうした住民参加の方法は、その後も整備計画の見直しや各建物の計画において原則踏襲され、住民 意向の変化や事業制度等の変化に伴う事業の軌道修正に対応した。また、事業着手を機に市の現地事務 所が開設され、事業統括と地元窓口の役割を担った。大学側も、筆者が地区内に転居して活動拠点をつ くり、地元密着を強めて住宅・施設計画の提案や住民のまちづくり活動の支援にあたった。

(2)まちづくりの課題と整備計画

平松・鋳物師地区住環境整備事業の基礎調査から事業完了までの動きを表 2-3-1 に示す。基礎調査の 結果や推進協議会、辻裏勉強会での議論を通じ、地区のまちづくり課題として、住環境整備事業が目的 とする「住宅密集の改善」 「都市基盤の整備」やその他の住環境課題である「河川改修」 「JR 沿線の騒音・

振動対策」に加え、「地域産業の活性化」「歴史・文化の継承」が求められた(図 2-3-1)。また、平松 の路地空間の呼称である「戸間」を集住性を特徴づけるキーワードとして住宅計画に活かすこととした。

これに基づき策定された当初計画の整備方針は次のとおりである。

①土地・道路等の整備: 老朽住宅の密集が著しい平松ブロックはクリアランス型、他のブロックは 部分修復型の整備を行い、下水道や生活道路などの基盤を整える。旧街道の往還道路は地区の生活 幹線として現在の道筋を保ちつつ拡幅する。

②住宅・商店等の整備: 幅広い住宅階層に対応するとともにコミュニティが偏らないよう、多様な 住宅タイプを分散して配置する。特に、零細な持家世帯の再建意向に応えるため、戸間の良さを活 かした接地性の高いコミュニティ分譲住宅(戸間住宅)を計画する。また、商店・事業所は賃貸型 と分譲型を設定し、主要道路沿いに集約配置して集客力や利便性の向上を図る。

③公園・地区施設等の整備: 地区の東側にコミュニティ広場や集会所、西側に親水緑地を設け、相 互を緑道でつないで回遊性を高める。往還道路沿いに集会所を建設し、コミュニティ活動の拠点を 形成する。また、神社や祠は地元要望をふまえて再建する。

一方、事業採択条件の関係から広範囲のクリアランス整備に任意事業を用いざるを得ず

0)

、加えて、

整備の足がかりとなる種地の不足、高齢世帯の生活再建等、事業推進を阻む課題も多く、住民の合意形

成はもとより、市の財政負担や人的負担は重いものとなった。整備計画は情勢変化に合わせて見直しを

重ね、事業完了までに整備計画を 3 回、事業計画を 5 回変更している。(表 2-3-2、図 2-3-3)

(19)

まちづくりアンケート(1)

現況調査/まちづくりアンケート(2) 基本構想の策定 着手

事業計画の策定着手 戸別意向調査(1) 事業申請/事業承認 地形測量

平松改善事務所の発足 建物調査・用地測量 開始 改善事務所の施設 建設 土地・建物買収開始

まちづくり事業起工式

鋳物師団地(1期) 竣工 平松開発事務所 に改称 戸別意向調査(2)

整備計画・事業計画変更(1)

道路・分譲地整備 着工 仮設住宅の建設

貸店舗一部竣工(平松ブロック) 戸別意向調査(3)

ひらまつ団地2棟竣工/行者堂移築 戸建用地分譲(水神ブロック) 事業計画変更(2)

道路整備(往還道路)

事業所用地分譲(鋳物師ブロック) 1992年

(H4)

1993年

(H5)

1994年

(H6)

1995年

(H7)

1996年

(H8)

1997年

(H9)

1998年

(H10)

1999年

(H11)

2000年

(H12)

2001年

(H13)

2002年

(H14)

2003年

(H15)

2004年

(H16)

2005年

(H17)

整備計画変更(2)・事業計画変更(3,4) ひらまつ団地3棟竣工

戸建用地分譲(平松,鋳物師,水神) ひらまつ団地2棟貸店舗竣工

開発事務所の移転・組織改正

整備計画変更(3)・事業計画変更(5) ひらまつ団地7棟竣工

ひらまつ団地6棟竣工 御神輿倉庫竣工

町内会長懇談会

まちづくり推進協議会の発足 大学・コンサルタントの参画 まちづくりだよりの発刊 辻裏勉強会(1.まちの現況)

辻裏勉強会(2.基本構想案) まちづくり集会(1.基本構想) まちづくり集会(2.事業申請) 市営住宅見学会(北方他) 商店部会・漁業部会の発足 辻裏勉強会(3.住宅の計画)

辻裏勉強会(4.講演会)

辻裏勉強会(5.住宅の計画) 辻裏勉強会(6.家賃制度/計画変更) 鋳物師団地 内覧会

慰霊祭・夏祭り 辻裏勉強会(6.計画変更) 戸間住宅勉強会(1.計画の経緯) 戸間住宅勉強会(2.参考例) 戸間住宅勉強会(3.諸経費) 戸間住宅勉強会(4.事例見学)

ひらまつ団地2棟内覧会

戸建分譲地勉強会(建築アドバイス) 市民花壇づくり(2棟園芸部) 建設部会・コミュニティ部会の発足

推進協議会解散 蛭子神社の再建

花壇づくり(コミュニティ広場) ひらまつ団地1棟・貸店舗・集会所竣工

鋳物師団地(2期)竣工 ひらまつ団地4・5棟竣工

※ 関連事業である市道大門鋳物師線の整備 および板櫃川河川改修は以降も継続

平松御輿復活(小倉祇園祭,~H16) 夏祭り(~H16)

町内会等組織の再編成(~H17暫定) ひらまつ団地3棟内覧会

戸建住宅勉強会(建築アドバイス)

●組織編成  ●基礎調査 ●全体計画 ●建物・施設整備  ●広報・啓発 ●行事等

事 了 完 査 調 礎 基

想 構 本 基

工 着 業 事

表 2-3-1 平松・鋳物師地区住環境整備事業の年表

(20)

5.02ha

412戸(うち空家48戸) [うち老朽365戸]

333戸 [うち老朽325戸]

60戸 147戸(5棟)

108戸(4棟)

20区画 1箇所

4件(コミ住に併設)

2区画(5件)

11路線

1994~2003年度 1994~2006年度 ※1)

7箇所(緑道等)

3件

373戸 [うち老朽360戸]

39戸 260戸(8棟)

42区画

1箇所(コミ住に併設)

6件(コミ住に併設)

10区画 15路線 1箇所(河川公園)

3件

13,237百万円(5,467百万円)

除却戸数 住宅戸数

地区面積(施行区域面積)

項目 1994年

(事業承認時) 2004年

(第5回計画変更時)

神社等移設・新設 事業期間

総合住環境整備事業 住宅市街地総合整備事業

基幹事業 賃貸店舗建設 商店事業所等分譲用地 存置戸数

コミュニティ 住宅建設

戸建住宅分譲用地 集会所

賃貸 分譲

13,766百万円(7,230百万円)

道路 公園・緑地

現況整備内容

※1) 2006年度は旧住宅関公施設(道路)の整備のみで、密集事業は2005年度末に完了している。

※2) 板櫃川河川改修事業(河川公園整備含む)分を除いた額を示す。なお、河川改修事業は現在も継続中である。

事業費(うち国費) ※2)

地区集会所 地区集会所

行者様 御輿倉庫 蛭子神社 御大師堂

水神社

共同作業場 共同作業場

コミュニティ広場 コミュニティ広場

水神社 蛭子神社 御大師堂 行者様

住宅・商店等の整備 公園・地区施設等の整備

土地・道路等の整備

N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m

N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m

コミュニティ住宅用地(分譲)

商店・事業所(賃貸) 商店・事業所(分譲) 戸建分譲用地

緑地・広場 共同施設

緑道 フットパス

史跡等

緑地・広場 共同施設

緑道 フットパス

史跡等 コミュニティ住宅用地(賃貸)

商店・事業所(賃貸) 商店・事業所分譲用地 戸建分譲用地 コミュニティ住宅用地(賃貸)

主要道路

除却整備エリア 存置エリア

生活道路 団地内道路 主要道路

除却整備エリア 存置エリア

生活道路 団地内道路 1994年(事業承認時)

住宅・商店等の整備 公園・地区施設等の整備

土地・道路等の整備 2004年(第5回事業計画変更時)

事業区域 平松漁港

JR 鹿児島本線

明松橋

極楽橋 板櫃川

平松町 往還道路

鋳物師町

山陽新幹線 平松漁港 JR 鹿児島本線

明松橋

極楽橋 板櫃川

平松町 往還道路

鋳物師町

山陽新幹線

住宅密集の改善,都市基盤の整備: 木造住宅が密集し延焼 危険性が高いため、住宅の建替えを進め、防災性を高める必要 がある。下水道や道路が未整備であり、良好な住宅地としての 都市基盤を整え、衛生面や生活利便性を高める必要がある。

鉄道沿線の騒音・振動対策: 鉄道沿いでは列車の騒音や振 動が激しく、対策が必要である。

板櫃川の改修: 板櫃川の河川改修事業が計画されており、

住環境整備との連携が求められる。

地域産業の活性化: 往還道路沿いの商店等の地域産業が衰 退しており、活性化が求められる。

地域の歴史・文化の継承: 古くからの歴史を刻む建物や地 域行事を後世に継承していく必要がある。

地区集会所 地区集会所

行者様 御輿倉庫 蛭子神社 御大師堂

水神社

共同作業場 共同作業場

コミュニティ広場 コミュニティ広場

水神社 蛭子神社 御大師堂 行者様

住宅・商店等の整備 公園・地区施設等の整備

土地・道路等の整備

N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m

N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m N 0 10 25 50m

コミュニティ住宅用地(分譲)

商店・事業所(賃貸) 商店・事業所(分譲) 戸建分譲用地

緑地・広場 共同施設

緑道 フットパス

史跡等

緑地・広場 共同施設

緑道 フットパス

史跡等 コミュニティ住宅用地(賃貸)

商店・事業所(賃貸) 商店・事業所分譲用地 戸建分譲用地 コミュニティ住宅用地(賃貸)

主要道路

除却整備エリア 存置エリア

生活道路 団地内道路 主要道路

除却整備エリア 存置エリア

生活道路 団地内道路 1994年(事業承認時)

住宅・商店等の整備 公園・地区施設等の整備

土地・道路等の整備 2004年(第5回事業計画変更時)

事業区域 平松漁港

JR 鹿児島本線

明松橋

極楽橋 板櫃川

平松町 往還道路

鋳物師町

山陽新幹線 平松漁港 JR 鹿児島本線

明松橋

極楽橋 板櫃川

平松町 往還道路

鋳物師町

山陽新幹線

住宅密集の改善,都市基盤の整備: 木造住宅が密集し延焼 危険性が高いため、住宅の建替えを進め、防災性を高める必要 がある。下水道や道路が未整備であり、良好な住宅地としての 都市基盤を整え、衛生面や生活利便性を高める必要がある。

鉄道沿線の騒音・振動対策: 鉄道沿いでは列車の騒音や振 動が激しく、対策が必要である。

板櫃川の改修: 板櫃川の河川改修事業が計画されており、

住環境整備との連携が求められる。

地域産業の活性化: 往還道路沿いの商店等の地域産業が衰 退しており、活性化が求められる。

地域の歴史・文化の継承: 古くからの歴史を刻む建物や地 域行事を後世に継承していく必要がある。

図 2-3-1 まちづくりの課題 表 2-3-2 事業計画の変化

図 2-3-2 整備計画の変化(上:事業当初,下:事業終盤)

(21)

2-4 コミュニティ住宅の計画と住民自主管理の誘導

(1)戸間住宅の構想

当地区では零細な持家世帯が多く、基礎調査時の住民アンケートでは地区内での戸建住宅の再建を望 む世帯が大半を占めた。このため、低廉で接地性の高い分譲住宅をいかに供給するかが、当初から事業 推進の課題となった。

「戸間の継承」を基本コンセプトとする住まいづくりの試みとして、事業初期には「戸間住宅」と名 付けた低層コミュニティ分譲住宅

3)

の計画に力点が置かれた。しかしながら、持家希望世帯の土地・

建物に対する専有志向は根強く、戸間住宅を希望する世帯は当初の見込みを大きく下回った。加えて、

1998 年度(平成 10)から公営住宅の家賃体系が応能応益制に移行したことで、高齢者世帯を中心に 持家再建を諦めてコミュニティ賃貸住宅への入居に変更する傾向が顕著となり、結局、2000 年度(平 成 12)の第 2 回事業計画変更においてコミュニティ分譲住宅の供給計画を取り止めることとなった。

図 2-4-1 ひらまつ団地 1,2 棟及び周辺施設配置図(1/1,200)

図 2-4-2 ひらまつ団地 2 棟平面図(3 階,1/500)

花壇 行者様

御輿倉庫 ゲートツリー

コミュニティ広場 緑の広場

JR鹿児島本線

住戸 住戸

EV EV

住戸 住戸 住戸 住戸 住戸 住戸

住戸 住戸

集会所

商店用地(分譲)

平松町13号線 平松町11号線

平松町15号線

東港愛宕1号線

往還道路(平松町 7号線)

1棟 2棟

貸店舗

貸店舗

貸店舗 貸店舗 貸店舗 貸店舗 歩道緑地帯

駐輪場

図 2-4-3 辻裏勉強会(1996 年)

図 2-4-5 棟管理会の活動(2002 年)

図 2-4-4 棟内覧会(1999 年)

(22)

図 2-4-6 ひらまつ団地 2 棟の入居手続き

(2)コミュニティ賃貸住宅の計画

一方、コミュニティ賃貸住宅では、最初の高層住宅であるひらまつ団地 2 棟(2000 年竣工、9 階、49 戸、

図 2-4-1、2-4-2)をモデルに位置づけ、推進協議会や辻裏勉強会(図 2-4-3)での意見交換を重ねて次 のような計画提案を盛り込み、また、入居後には住民の住まい方を調査して計画を事後検証し、後続の 住宅計画に活かした。

①住棟配置: 1 棟とともに新たなまちの玄関口として位置づけ、コミュニティ広場を囲むように配 置し、広場、通路、住戸の一体感を高めた。

②共用空間: エレベーターや共用廊下の配置に変化を与え、親しみのある街路性を演出した。また、

住民のコミュニケーションや共同作業の場として、スリット状の共用空間を階段室に設けた。

③住戸: 勝手口やサービスバルコニーを設け、住戸まわりを充実した。また、家族構成やライフス タイルに対応できるように 11 タイプの住戸プランを計画し、うち高齢世帯向けとして縁側を設け た南入りの住戸を計画した。

(3)入居手続きと住民自主管理の誘導

さらに、ひらまつ団地 2 棟では、住棟ごとの住民の集団形成を円滑に進め、自主管理活動を促すため、

入居手続きも工夫した(図 2-4-6)。一般の市営住宅と異なり、部屋決めの前に入居説明会や内覧会を 実施し、住宅計画についての住民理解を深めるとともに自主管理ルールの必要性を促した。管理人は、

開発事務所が候補を人選して入居者の承諾を得て決定した。また、低層階の住戸を要介護者や高齢者の いる世帯優先、小規模住戸は単身世帯向けに区分して部屋決めを行い、入居の際も住民の顔合わせを兼 ねた鍵渡し式を催した。

一方、鍵渡しから供用開始(入居完了)までの管理人の取り組みは住棟ごとに異なり、2 棟と 3 棟で は管理人が中心になって速やかに自主管理に向けた準備を始めたのに対し、他の住棟では管理人の積極 的な活動はみられなかった。入居後の自主管理活動の進み方も各棟一様でなく(図 2-4-8)、2 棟では、

供用開始以前から管理組織の構想や役割分担等の取り決めなどの管理人の率先した働きかけのもとで入

1組 組長1名 1〜3階 ・町内会費、管理費の徴収 2組 組長1名 4〜5階 ・回覧板の閲覧・巡回 3組 組長1名 6〜7階 ・市政だより等の配布 4組 組長1名 8〜9階

協力関係 管理部

管理人2名 ・管理活動の統括

・管理費の運用

園芸部 部長 園芸部員

8世帯

・1階花壇の手入れ

講師2名 ・各戸での園芸活動

・講習会

清掃部 エレベーター ・エレベーター、ホールの清掃

ゴミ捨て場 ・ゴミ箱、吸い殻入れの設置

ホール掃除 ・共用部分の大掃除の呼びかけ

消防部 (予定) ・避難訓練、消防団など(予定)

活動内容 ひらまつ団地2棟内

町内会住民による 2棟管理会 理人+ 平松町内会 町内会長

図 2-4-7 ひらまつ団地 2 棟の住民組織(2003 年)

(23)

居後早期に自主管理の体制が整い、園芸部や清掃部といった部会制による管理活動が始まっている(図 2-4-7)。その後も、棟内規約の作成・改正や住民の高齢化に伴い共同清掃を業者委託に変更するなど状 況変化への柔軟な対応がみられる。また、3 棟では、2 棟の管理人と情報交換して自主管理に対する問 題点を把握した上で、住民の自主性を引き出しながら管理人や清掃係を中核にした積極的な活動を行っ ている。

これに対し、他の住棟では明文化された規約や明確な役割分担がされた管理組織は形成されていない。

1 棟では、老人会や婦人会といった町内会と類似した居住者集団を中心として共同清掃などの管理活動 や親ぼく活動を行っている。7 棟では、住民に旧平松東町内会出身者の割合が高く、共同清掃などの集 団活動も特に取り決めなく柔軟に行われている。竣工が最も遅い 6 棟では、住戸数が多いため集団形 成に時間を要しているが、他棟を参考にしながら集団清掃や廃品回収などの管理活動を立ち上げている。

居住者の 従前所属町内会 階数・戸数

H12.10.1 H14.10.1 H15.11.1

入居手続き 住宅内覧会 部屋決め会 入居説明会(2部)

かぎ渡し会 引越し

入居手続き 部屋決め会

かぎ渡し会 引越し 入居説明会(2部) 内覧会

入居手続き 部屋決め会 入居説明会 兼 住宅内覧会(2日)

引越しかぎ渡し会

入居手続き 部屋決め会 入居説明会 兼 住宅内覧会(2日)

引越し かぎ渡し会 入居手続き

(管理人候補への打診) (管理人候補への打診)

住宅内覧会 部屋決め会 入居説明会(2部)

かぎ渡し会 引越し

管理人と市担当者 の打合せ

H17.9.1 H18.3.15

入居プロセス 入居プロセス

入居プロセス 入居プロセス 入居プロセス

供用開始

1ヶ月後

2ヶ月後

3ヶ月後 4ヶ月後 5ヶ月後 6ヶ月後 7ヶ月後 8ヶ月後 3ヶ月前

2ヶ月前

1ヶ月前

ひらまつ団地6棟 ひらまつ団地 7 棟

ひらまつ団地 1 棟 ひらまつ団地 3 棟

ひらまつ団地 2 棟

8 ~ 14 階建 66 戸 7 階建 35 戸

7 階建 41 戸 7 階建 42 戸

9 階建 49 戸

団地内大掃除 ゴミ箱の設置 共用庭清掃 清掃部発足 清掃部員募集 園芸部発足 園芸部打合せ 共用庭の草抜き

共用空間の 利用方法 アンケート 規約の作成 の実施 管理人・組長 打ち合わせ

管理会打合せ 管理人打合せ

組長の決定

管理組織構想 町内会・管理人

打ち合わせ

町内会・管理会 打ち合わせ

管理人立候補

管理人立候補 管理人立候補

管理人立候補

管理人立候補

入居後の自主管理活動入居前の活動

会計報告 会計報告

団地内大掃除 第二期清掃係 の決定 ゴミだし駐車ルール 管理規約

清掃係の決定

清掃係の立候補 住棟周りの清掃 ( 顔合わせ ) 2 棟管理人と会合

2 棟管理人 と会合

花見 会計報告

会計報告

収支報告集団清掃の取り決め 祇園祭に参加 清掃間隔変更の決議

共用部分合同清掃

共用部分合同清掃

共用部分合同清掃

共用部分合同清掃

共用部分合同清掃

自主管理準備 自主管理準備 自主管理準備 自主管理準備 自主管理準備

共同清掃の 業者委託 来客用駐車券

の発行 来客用駐車券

の発行 共同清掃の

出不足金の設定 廃品回収の

開始 自主管理活動

(H18.11 時点)の変遷

自主管理活動

の枠組み 細則規約と部会制による

明確な役割分担による管理 おおまかな規約と

居住者のボランタリー性による管理 居住者間の暗黙知と

年齢階層別の居住者集団による管理 居住者間の深い親和と

居住者の自主性とモラルによる管理 他の住棟の管理方法を参考にした管理 第一回草取り

組長決定   21 ヶ月目

0% 50% 100% 0% 50% 100% 0% 50% 100% 0% 50% 100% 0% 50% 100%

57.1% 28.6% 16.7% 28.6% 23.8% 22.0% 29.3% 12.2% 19.5% 74.3% 20.0% 43.9% 16.7% 13.6% 21.2%

4.1%10.2%

16.3%

4.1% 2.4% 1.5%

8.2% 8.2% 9.8% 4.9% 2.9% 2.9% 3.0%

町内全体行事 棟内行事 / 親睦活動

生活ルールの頒布 共益費決算報告

規約作成・告知 体制づくり 園芸・緑化活動

共用空間の掃除 鋳物師西

水神

空室 ※入居者属性は

入居初期のもの 不明

平松東 平松中

平松西 入居プロセス 自主管理活動 自主管理準備

生活管理

維持管理 運営管理

入居者属性 合同行事

個人の動き

※記号の長さは取り組みの期間を表す 凡例 運営管理 生活管理 維持管理

図 2-4-8  各棟の入居手続きと入居初期における自主管理活動

(24)

2-5 地区施設の整備と住民組織の再編

当事業では、クリアランス整備で損なわれる地域コミュニティをいかに再生するかが、戻り入居が本 格化する事業後半の重要な課題であった。これについて前節では、住棟レベルでの入居手続きの工夫と 自主管理活動の形成について述べた。本節では、事業終盤以降になされた地区施設

4)

の整備と連動し た住民組織の再編や文化の継承、産業の活性化といった地区レベルの取り組みと進展についてまとめる。

表 2-5-1 に地区施設の整備の概要を、図 2-5-6 に時期別の地区整備状況と住民組織の構成を示す。

(1)コミュニティ再生の取組み

事業終盤の 2003 年(平成 15)、推進協議会ではコミュニティ施設部会を中心に新たな町内会組織や 新設集会所の管理運営の検討に着手し、事業完了時に再度見直すことを前提とする暫定ルールを定めた。

新町内会は、住民アンケートの結果をもとに 5 つの旧町内会を統合する方向で調整が進み、結果、平松・

水神ブロックを統合して新たな平松水神町内会を組織し、鋳物師ブロックは既存の鋳物師西町内会に編 入することに決まった。また、ひらまつ団地 1 棟に併設された集会所の管理も平松水神町内会が担う こととした。「平松水神町内会」は 2004 年(平成 16)に発足し、併せて、共同財産の管理、祭りの企 画運営、集会所や広場の管理運営を行う専門委員会も組織された。

この頃、伝統行事である平松御神輿の巡行が再開され、コミュニティ広場では共用花壇の花づくりや 夏祭りが催されるなど、住民活動も盛り上がり始めた。特に平松御神輿は、江戸期から小倉祇園祭に担 ぎ出され、戦後は太鼓競演会の露払いも務めてきた由緒をもつ。担ぎ手や世話人の減少で 1994 年から 祇園祭への参加が途絶えていたが、住民や漁協有志の尽力で 2003 年に復活を果たした。(図 2-5-5)

一方、平松漁協でも、市水産課の支援を受けて特産品イベント「平松よかタコまつり」を 2004 年に 始め、市民交流を通じた漁業活性化に乗り出した。2006 年(平成 18)からは特設会場で「とれとれ朝市」

を開き、毎週日曜の朝は多くの市民で賑わっている。(図 2-5-2)

図 2-5-1 集会所での町内会総会 図 2-5-2 漁協の朝市

図 2-5-3 御大師堂の地蔵盆 図 2-5-4 共有地の地権者之碑 図 2-5-5 平松御神輿の巡幸

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