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『江戸八百韻』に見える「?」の訓みについて

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『江戸八百韻』に見える「?」の訓みについて

著者 田中 巳榮子

雑誌名 國文學

巻 98

ページ 93‑107

発行年 2014‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/9230

(2)

はじめに ﹃江戸八百韻﹄に見える﹁吟﹂の 訓みについて

後に刊行された﹁合類節用集﹂に初めて見え︑それよりも古い

辞書には見えない︒また︑現在の﹁あつかい﹂に対応する漢字

は﹁扱﹂であり︑﹁鯵﹂を﹁あつかい﹂として使用されることは

︵1︶

ない︒拙稿一一○一一では︑同じ﹁江戸八百韻﹂の﹁胴郷﹂を﹁ヤ

︵2︶

サシ﹂と読むこと︑拙稿一一○一一一では︑﹁富流舗抜﹂の﹁悶る﹂

を﹁イキル﹂と読むことなど︑中国の字義に対応しない例につ

いて検討を加えてきた︒同様に︑本稿では﹁吟﹂を﹁アッヵヒ﹂

と読むことに注目して︑漢字と訓みの関係について検討するこ

とを目的とする︒

テキストには︑天理図書館綿屋文庫の﹁江戸八百韻﹂を使用

した︒また︑本文中の用例の傍線は稿者が付記した︒ 田中巳築子

9 3

近世初期俳譜集﹁江戸八百韻﹂は︑﹁俳譜大辞典﹂に﹁既に談

林調にも嫌らずして更に何らかの新句境を開拓しようとする要

求が表に発し︑俳風革新の第一声を挙げたものとして俳諸史上

注目すべき作品である︒﹂とある︒用字の採択にも新句境を目指

す創意工夫が窺え︑

ソヨ 髪に鳥おどし強弓を引︵幽山五八八︶

アソカヒ 鯵の中もはなれし庵の月︵言水五八九︶

と﹁吟﹂を﹁アッカヒ﹂と読む句が見える︒

右の句の﹁鯵﹂は︑﹁仲直りをさせようと取成している間に﹂

と﹁仲裁﹂の意で用いられる︒このように︑﹁アッカヒ﹂に﹁略﹂

を当てるのは︑辞書では﹃江戸八百韻﹂︵一六七八年刊︶の二年

(3)

ハダケル ︹俳字節用集︺︵上九︶吟︿口を﹀︵一八一一一一一年刊節用集大系 ﹁鯵﹂は︑日本の辞書では以下のように収録されている︒

︵一︶日本の辞番 辞書類での﹁畷﹂と﹁アッカヒヲ︶﹂

︹説文解字注︺芸略﹂張口也︿小雅珍号修号毛日嘆大見﹀ ︹漢和三五韻︺︵坤巻麻Ⅳオ︶函修︿クチハルヲホクチ﹀上馨

努韻日又麻韻張口也︵一六

八六年板古辞書研究資料叢

刊第五巻大空社︶

たらす ︹男節用集如意宝珠大成︺︵言語︶吟すかす也︵一七一六年

刊節用集大系二六巻︶

ダラス ︹雅言俗語俳譜翌桧︺︵言語︶亜睦︿すかすなり﹀︵一七七九年

刊古辞書研究資料叢刊第一

○巻大空社︶

また︑中国の辞書では以下のような収録が見える︒ ︹新撰字鏡︺︵天治本盲嘆く丁羅反張口也緩唇也又丁佐反言猶

腎垂也﹀

︹類衆名義抄︺︵観智院本旨吟︿砂加反張口又多音又昌者 反唇下オホクチ禾タシ虚

帯反﹀︵仏中四二・四︶

夕 ︹白河本字鏡集︺︵一一巻︶略︵左訓シ︶︿ヲホクチハタヵリ

テワタ︑シ﹀

夕 ︹倭玉篇︺︵夢梅本︶︾略︵左訓シャ︶︿張口也︵左訓クチヲハル

ナリ︶唇下垂完︿左訓クチビルシタニタ

ル︑﹀

︹倭玉篇︺︵篇目次第言略︿虚紙切シ反ヲホクチハタカリ

皮堕唇垂﹀

夕 ︹倭玉篇︺︵慶長一五年版︶略︿ハタカリテヲホクチ﹀ クラスヲ ︹運歩色葉集︺函略︿1人﹀ ダラス ︹伊京集︺略

シヤ ︹合類節用集︺︵巻八下︶坤修︵左訓アッカレ﹂︶

アソカヒ ︹書言字考節用集︺︵第十一冊言辞門九︶恥修

︵二︶中国の辞書 六○巻大空社︶ 鯵︿俗用一此字﹃或用一

一一

暖字↓於吟義床詳﹀

9 4

(4)

峰中世後期から多く見られるとある︒但し︑見出し字には

﹁扱﹂と﹁暖﹂はあるが﹁略﹂は記されない︒そこで︑﹁アッカ

ヒ︵うこに対して︑日本の古辞書ではどのような漢字が当てら

れているかを次に示してみたい︒

︹新撰字鏡︺︵天治本旨喝︿於月反傷熱也阿豆加布﹀

︹類緊名義抄︺︵観智院本言徳︿多勤反ノリサィハィメク ムトルヲクルアッシノホル

アッカフ﹀︵桃上三六︶・念熱︿アッ

カフ﹀︵法中八八︶

︹色葉字類抄︺零育︿アッカフ﹀・喝︿同﹀︵前田本下三○ウ/

黒川本下二五オ・ウ︶・念熱︿アッカフ﹀・敦

養︿同﹀︵前田本下四○オ/黒川本下三三

オ︶

︹温故知新書旨機・熱・喝・微・鶴・卿・暖・唾・初︵以上態

蕊門︶・念熱︵複用門︶・柄樺︵モ・複︶

︹運歩色葉集旨扱・暖・操・椛奄

︹倭玉篇︺︵篇目次第盲熱︿如折切セチ反ネチ反アッシァ ︵三︶漢字辞書での﹁アッカヒ﹂に対応する漢字

9 5

︵中華民国六五年全園各大瞥局︶ シャノーIワ−1タリ ︹字棄︺亜﹁曙﹂薗昌者切車上声張口詩小雅降り号修号又大︲

ノノノ

ト.ンテラ ロ貌又唇下川垂貌又衆意囲哩於是珍︲然外南侯一也

ノシノ−ノ

又園尺里切音恥義︲同又圃丑亜切音姥義同又囲丁可

切多上︲聾義同又叶語敵呂切音杵悶昌陶閃馴圏圃園

ノニシテタリハー

紫焔嘘阿高癖垂下堕重︲星従︲坐錯︲落修修堕音吐

︵和刻本辞書字典集成第三巻汲古書院︶

タ クチヲハル ︹大贋益会玉篇︺卵﹁略﹂︵左訓シャ︶︿虚紙尺篤一一切張口﹀

︵和刻本辞書字典集成第二巻汲古書院︶

以上の辞書に﹃異体字研究資料集成﹂所収の﹁古俗字略﹂︵二

期八巻巻三・三七︶と﹁五経文字﹂︵別巻一下三六︶を付け

加えておくと

︹古俗字略旨嘆く大口﹀騨移捨套︿並同上﹀

︹五経文字旨略︿昌志反昌也反大也見詩大雅﹀

と収録がある︒

以上のように︑中国の辞書では﹁口を張る︑唇下がり垂れる︑

大口の貌﹂という義であり︑いずれにも﹁アッカヒ︵Z﹂に対

アツカヒ 応する義は見られない︒本稿で取り上げた﹁鯵﹂は︑同じ字形

であっても中国の字義とは対応しない日本独自の用法である︒

﹁日本国語大辞典﹂に﹁あつかひ﹂を﹁仲裁する﹂意に用いるの

(5)

ツカフアダ︑カタクマシ温盛

也﹀・蕪︿在火見如雪切トモスア

ッカフ﹀.鳴くイコフヨテアッカフ

イ祷同共﹀

サウ ︹倭玉篇︺︵慶長一五年版︶函扱︵左訓サッ︶︿トルアグルヒ

クヲサムウルサシハサムア

ッカウ﹀

︵四︶節用集での﹁アッカヒ﹂に対応する漢字

︹日本国語大辞典︺︵第二版二○○一年小学館︶

あつかい︻扱・暖︼あれこれと世話をする︒両者の間に立っ

て争いをとりなすこと︒訴訟や紛争の仲裁︒調停︒示談︒

かしらとして人々を取り締ること︒人の相手になって話し

たり︑もてなしたりすること︒あれこれと操作して動かす

こと︒⁝⁝

とあり︑また︑動詞﹁あつかう︻扱・暖・刷︼︵他︶﹂では︑右

の名詞とほぼ同じ意が記され︑左の語誌︵2︶に記される︵六︶

の用法には︑﹁両者の間に立って争いをやめさせる︒仲裁する︒﹂

とある︒ 抄・温故知新書の﹁念熱﹂︑または︑新撰字鏡・温故知新書・篇 目次第の﹁熱・喝﹂などは熱くて苦しむ様を表し﹁仲裁する﹂ とは意味が異なる︒しかし︑﹁日本国語大辞典﹂﹁角川古語大辞 典﹂﹁大言海﹂などでは︑﹁熱﹂と﹁扱﹂の関係の記事が見え︑ 自動詞から他動詞への変化に伴い︑﹁熱さに苦しみ煩う﹂意か ら︑﹁物事を処理する﹂意を持つようになることが記されてい る︒

︵五︶現代の国語辞典

9 6

︹伊京集旨扱・描・観・宰・捕/︹明応五年本︺︹易林本節用

集旨扱/︹天正十八年本節用集旨扱・宰・撚/︹鰻頭屋本節

用集旨扱・暖/︹黒本本節用集︺恥扱・宰・荊/︹合類節用

アッカウシヤ 集︺恥扱︿又柵同取扱﹀・暖︿又略︵左訓アッカヒ︶同﹀/︹香 アッカヒ脚脚 言字考節用集︺恥扱・和諭・略︿俗用二此字﹃或用二暖字雪於吟義二

未し詳﹀/︹俳字節用集旨和諭︿暖/扱﹀

︵三︶︵四︶の辞書の中で︑﹁扱﹂は︑︵三︶の運歩色葉集・倭

玉篇︵慶長一五年版︶︑︵四︶では全ての節用集に﹁アッカヒ

︵フ︶﹂に対応する漢字として収録がある︒一方﹁睦﹂は︵三︶

では全ての辞書において収録されない︒類緊名義抄・色葉字類

(6)

生︒熱さに苦しむ︒熱がる︒暑さのために悩み煩うところ

から︑処置に窮する意に転じうる契機を持ち︑てこずる︑

もてあます意の他動詞﹁扱ふ﹂との交渉が考えられる︒

︹時代別国語大辞典室町時代編︺︵一九八五年三省堂︶ アッカィ卿脚 あつかひ︻扱一﹁扱・宰・柵﹂︵黒本節用︶︒人の相手になっ

て︑その人に対する評価に応じた対応︑取扱いをすること︑

もてなし︒﹁あひしらひ﹂︒ある人や事柄を話題としてあれ

これと各自の意見を述べること︒意見や立場を異にするも

のの間に立って事態をとりまとめ︑また︑妥協・和解する

ようにとりなすこと︒調停︒仲裁︒⁝⁝

あつかい とあり︑同書の略した記事の中には︑﹁宰物のかしら﹂︵和漢通

あつかい 用︶﹁柄手にて物をなおす也﹂︵和漢通用︶の記述がある︒動詞

γツカフ アソカウH ﹁あつかふ︻扱ふ︼︵動四︶﹂では︑﹁扱﹂︵易林節用︶﹁扱・椿﹂

アッカウ脚 アヅカウアッカウアッカウ ︵正宗節用︶﹁扱・暖﹂︵鰻頭節用︶﹁宰・扱・樵﹂︵天正節

用︶﹁手︑言葉などで処理する︒口︑手︑足などで処理する﹂︵日

葡︶と記す︒

︹大言海︺︵昭和七年冨山房︶

あっかひ︵名︶一捌一︵ニアッカフコト︒アッカフ仕方︒

待遇︵二︶戦争︑争論︑訴訟ナドノ仲裁︒和解︒調停

動詞﹁あつかふ︵他動︑四︶﹂でも﹁扱﹂のみが見出し字であ

9 7

︷開園︵1︶もとは自動詞﹁あっかふ︵熱.暑︶で︑熱・病・

心痛など﹁事態に対して身をもって苦しみ煩う﹂ような意

であったものが︑﹁身を煩わせて事態に対処する﹂意に転

じ︑他動詞に変わっていくのにともなって︑﹁身を煩わせ

る﹂ことよりも﹁事態に対処する﹂ことの方に重点が移り︑

やがて前者の意味特徴は忘れられ︑単に﹁物事を処理する﹂

意となったものか︒

︵2︶中古から中世前期の物語などの例では︑何に対処する

かによって︑さまざまな文脈的な意味が見られるが︑かか

わりを持つ事態のためにあれこれ心を尽くして身を煩わせ

る点では共通している︒中世後期から多く見られる︵六︶

の用法も︑他人のもめごとに対して身を挺して処理すると

ころから生れたものと思われる︒

︹角川古語大辞典︺︵一九八二一九九九年角川書店︶

あつかひアッヵィ︻扱一世話をすること︒協定・裁判︒また︑

仲裁示談︒

とあり︑動詞﹁あつかふアッヵウ﹂では﹁扱・練﹂の漢字が見出

し字となっている︒また﹁熱﹂を当てる﹁あつかふ﹂には︑次

のような語釈が見える︒

あつかふアッカウ︻熱かふ︼﹁あつし︵熱︶﹂の語幹からの派

(7)

︹古文書古記録語辞典旨暖あつかい鯵︑扱とも書く︒①世

間のうわさ︑評判︒②支配︑領知︒③紛争解決のための仲裁︑

ゆ麓 調停︒紛争当事者がその解決を第一二者に委ね和解する制度

らゅうにん ︵中人制︶︒貸借︑売買︑土地争いなどの民事と︑刃傷︑殺人

などの刑事︑また合戦などの仲裁にも及んだ︒..⁝.

︵東京堂出版︶

︹古文書撰大辞典旨あつかい暖・鯵・扱・刷①扱いと同じ︒

あれこれと世話をすること︒紛争などの調停をすること︒②

近世用語では仲裁︑調停人などをさし︑訴訟などを内済し和 ︵六︶古文書辞典

前掲の古文書辞典での﹁あつかい﹂に対応する漢字には︑﹁暖・

略・扱・刷﹂があることから︑古文書における﹁略﹂の用例を

︵3︶

探すことを試みた︒しかし︑古文書では﹁暖・刷・扱﹂が用い

られるが︑﹁鯵﹂の用例は見受けられない︒時代が遡るが﹃本朝

続文粋﹂︵巻第一雑詩︶に︵﹁熟﹂の右傍に異本での表記﹁塾﹂

を稿者が付記した︒︶

︵鶴︶

門熟安木梗挟箭共甥喝

︿門熟木梗を安んず箭を挟み共に吟喝たり﹀

と見える例があり︑﹁吟唱﹂は︑唇の垂れ下がって正しくない様

を表す︒﹃五山文学新集﹂では次の二例が見える︒三巻﹁流水 解させること︑また︑その人の意︒取扱ともいう︒

︵柏書房︶

﹁近世古文書辞典﹂︵国書刊行会︶でも︑前掲の古文書辞典と

同様に︑見出し語の漢字には﹁暖﹂以下﹁略﹂も記され︑語釈

もほぼ同じである︒しかし︑これらの古文書辞典に示す用例で

の漢字表記は﹁暖・刷﹂であり︑見出し語の漢字に﹁略﹂があ

るのにも関わらず︑﹁吟﹂の使用例は示されない︒

二﹁畷﹂の用例とヨミ

9 8

り︑﹁扱﹂の語源には︑自動詞﹁あつかふ一悶熱一﹂の﹁心シラ

ヒス︒無ヅカフ︒懸念ス・﹂の意の﹁他動二鞠ジタルナリ︑もて

あつかふト云フガ正シキナルベシ﹂と記される︒

︹古語大辞典︺︵一九八三年小学館︶

あっかひ︻扱ひ︼アッカイ︹名︺①世話をすること︒②交渉

や訴訟などの斡旋・調停をすること︒

以上の国語辞典の用例では︑﹁アッカヒ﹂に﹁扱・暖・刷・線・

椿﹂の漢字は見えるが︑﹁略﹂を用いる例は示されない︒

(8)

句意は﹁暖かいので春のようだと願されそうであるが︑季節

は小春︵十月︶である﹂と解釈するのだろう︒右の﹁ダラス﹂

のョミは︑第一節の︵一︶に掲載した﹁運歩色葉集﹂﹁伊京集﹂

クラス に﹁略﹂と見え︑時代が下り一七七九年刊の﹁雅言俗語俳譜

ダラス 翌桧﹂︵言語︶にも︑同様に﹁鯵︿すかすなり﹀﹂とある︒﹁世話 みなそやあ玄やかしそだてニさやうたらしつかひ 用文章﹄︵上︶には﹁皆親之騒生育たる故候左様之者は略遣 泌ろく 候へは下路/︑仕者にて候﹂という一文が見え︑﹁志不可起﹂の

見出し語﹁だます﹂の項には﹁⁝⁝たらすと云もだます二通テ

キコユたらすはとらかすノ署語力なはたらしナド︑云事アリ尤

ダル 垂義にも通ベシ﹂とある︒﹁唐話辞書類集﹂︵第九集徒柾字葉︶

には﹁那睦︿船ノ主﹀︵巻之三︶﹂﹁略口横議︿大言ヲ吐コト﹀︵巻

之五このような用例が見え︑後者の﹁略﹂は︑﹁口に出す﹂意

を表し少し仲裁の意に近づく感がある︒

以上のように︑現段階では︑﹁略﹂を﹁アッカヒ﹂と読む事例

を見出す事が出来ず︑﹃江戸八百韻﹂での用法は︑個人的な用法

なのか︑今後も用例を探し出し検討する余地がある︒

前掲の古文書辞典では﹁あつかい﹂の見出し語の漢字に﹁吟﹂

があり︑その中の﹁古文書僻大辞典﹂と同じ柏書房が出版する

﹁近世古文書︹解読字典︺﹂には︑﹁暖﹂の収録はあるが﹁吟﹂は

収録されない︒﹁古文書糾大辞典﹂の﹁アッカヒ﹂の見出し字に

9 9

集﹂︵枯香小仏事︶には

如梅噌哩夜之待三曾而椅龍華︑似金色頭陀之持一継而生鶏

とあり︑﹁梅略哩﹂は五山文学新集の中の﹃梅花無尽蔵﹄︵第四︶

に﹁梅多里﹂と見え︑市木武雄氏の注釈に﹁弥勅菩薩の号﹂と

ある︒或は﹁梅﹂は梅花無尽蔵主人の万里をさすことがあるこ

と︑また和尚の号に用いられることも多く︑﹁梅のたり夜﹂と読

み﹁万葉集﹂三二八○番に見える夜をほめる語﹁たり夜﹂とす

るか︑いずれにしても音訳﹁たり﹂と読む︒もう一例﹁五山文

学新集﹂第五巻﹁雪樵独唱集﹂︵四︶に孔子の弟子の名﹁漆離鯵

︵しっちょうしや︶﹂が見えるが︑これらの﹁吟﹂は﹁仲裁﹂で

ないことは確かである︒それならば近世初期の俳文学作品では

﹁吟﹂が見られるか︑﹁古典俳文学大系CDIROM﹂により︑

﹁鯵﹂と同時に﹁節用集﹂に収録がある﹁アッカヒ︵Z﹂に対

応する漢字を検索してみた︒その結果﹁柄﹂は﹁もむ・ひねる﹂

として使用されるが﹁あつかふ﹂ではない︒その他の﹁橘・醜・

宰・和諭﹂の漢字は見えず︑﹁アッカヒ︵Z﹂には﹁暖﹂又は

﹁扱﹂を当て︑ただ一例﹁吟﹂を用いる句がある︒しかし︑﹁略﹂

に付される振り仮名は﹁アッカフ﹂ではなく﹁ダラス﹂である︒

クラス ①あた︑かに吟といふが小春哉白雪﹁蕉門名家句集﹂

(9)

は︑﹁相手の前をふさぐようにして立つ︒立ちはだかる︒﹂など

とある︒五八九番の句を争いの当事者の間に立ちはだかって︑

操め事を解決すると解釈し︑﹁立ちはだかる﹂と﹁あつかふ﹂の

情景描写に﹁鯵﹂を用いたとするのが︑最も妥当であると考え

られる︒

︵4︶

粛木一馬氏の﹁古記録の研究﹂︵上粛木一馬著作集1︶に

は︑既存の辞瞥は﹁収録されている語辞についても︑訓みと語

義とが必ずしも明瞭・的確には示されていないものが多いこと﹂︑

また﹁語辞の実際の用例に接し得なかったこと﹂に基因する不

備があると指摘がある︵二四二頁︶︒同書の中で︑近世初期の武

家記録の特殊な語辞として︑﹁暖﹂を取り上げているが﹁修﹂は

見えない︒﹁暖﹂では﹁上井覚兼日記﹂﹁細川両家記﹂﹁大友史

料﹂﹁上杉家文書﹂﹁家忠日記﹂﹃相良家文書﹂﹁慶長日件録﹄の

例文を提示し︵﹃古記録の研究﹂二四九・二五○頁︶︑﹁暖︵扱︶

アッカヒアッカフ﹂には︑﹁うわさ︑評判︑支配︑領知︑調

停︑仲裁︑和議︑講和﹂の意味があるとする︒

賓木一馬氏の前掲の書では﹁記録・文書の大部分は︑その全 三﹁唾﹂について

lOO

﹁修﹂があるのに︑何故﹁峰﹂の用例が示されないのか︑何故解

読字典には収録されないのか︑そこに疑問点が指摘される︒そ

こで︑少々付会の感を免れないが︑﹁アッカヒ﹂に﹁唆﹂を当て

る根拠を︑以下のように推測してみることにする︒

一つには﹁暖﹂の崩し字からの誤用ではないか︒二つには﹁大

アツカフ 一一一一口海﹂に︹扱ハ︑手及ノ合字︑手ノ及ブ意︑古写本節用﹁扱﹂

イキ 暖ノ字ハ︑親愛ノロ入ノ合字︑玉篇﹁暖︑暖気也﹂ノ義ニハア

ラズ︺とあるのに倣えば︑﹁暖﹂は多くの口入るの合字となる︒

調停はことばで処理するから口偏を用い︑複数の人が関与する

から秀には﹁多﹂を付け︑意味を考慮した﹁鯵﹂の漢字が選択

されたとも捉えられる︒三つ目には﹁多口﹂という漢語があり︑

﹁大漢和辞典﹂での訓義には﹁口数が多い︒多言︒﹂などと記さ

トウヶ○ウ れる︒また﹁唐話辞書類集第一一集﹂︵唐話篤文菱︶には﹁多口

︿ヲウモノイフ﹀﹂︑同書第三集︵忠義水瀞伝紗課︶には﹁多口人

︿クチマメナル人﹀﹂とある︒この﹁多口﹂の二字の合字として

﹁吟﹂を転用したのかと様々な仮説を立ててみたが︑いずれも確

信をもって︑その傍証を固めることができない︒

そのような中で︑﹁鯵﹂は﹁白河本字鏡集﹂﹁倭玉篇﹂︵慶長一

五年版︶の下注に記される﹁ハタカリテ﹂の意味を持つことに

注目してみた︒﹁日本国語大辞典﹂での﹁はだかる﹂の語釈に

(10)

アツカフ 節用集では﹁合類節用集﹂に﹁暖﹂と収録が見え︑﹁異体字

研究資料集成﹂所収の﹁和字正俗通﹂︵九巻4オ言詞︶にも

アッカフアッヵウ ﹁暖・扱﹂と見える︒しかし︑﹁色葉字類抄﹂︵黒川本︶に﹁暖

ナクサム﹂︑﹁白河本字鏡集﹂に﹁暖︿ナクサムヲウ﹀﹂とあ

り︑﹁異体字研究資料集成﹂所収の﹁倭字孜﹄︵九巻過オロ部︶

ナクサム にも﹁暖今全日物語廿六第五像﹂と︑﹁暖﹂に共通して﹁ナクサ

ム﹂のヨミが与えられる︒また﹁倭玉篇︵篇目次第︶﹂には﹁暖

︿烏蓋切アイ反気也﹀とあり︑﹁大漢和辞典﹂には三暖︼ア

イ・ガイいき︒あたたかい気︒おくび︒歎詞︒いたみをしむ

情を表はす︒﹂の記事がある︒中国の辞書では アイノーヲクヒ謎. ︹字葉︺暖︿扇茸於蓋切音愛暖気也﹀

アイ キ ︹大麿益曾玉篇︺︵第五︶暖︿烏蓋切暖気也﹀

と収録がある︒ちなみに﹁説文解字注﹂には﹁暖﹂の漢字の収

録が見られない︒辞書でのヨミを確認した所で︑次に用例を見 ﹁アッカヒ﹂に﹁暖﹂の用 について考えていきたい︒

②八百日ゆく浜ったひにも牛に乗︵二一五︶此暖は浪の声々︵二 一六︶﹁俳譜大句数﹂︵第三︶

前句の浜から浪を付け︑﹁紛争を仲裁する声は波の打ち寄せる

音のようである︒﹂と詠む︒

③町中をよべばこそ髪に来りたれ︵八七一︶よい暖のかかる公 事宿︵八七二︶﹁大坂檀林桜千句﹂

③の﹁暖﹂の語注には﹁仲裁﹂とあり︑句意は﹁訴訟事件で

地方から出て来た人たちが泊る宿では︑よい和解策が示される︒﹂

と解する︒

④天よりも小刀則降くだり︵一一七六︶談合して倒やうがあら ふ物︵一一七七︶﹁二葉集﹂

右の句は﹁話し合えば仲直りの方法があるだろうに︒﹂の意と

捉え︑②③と同様に﹁暖﹂は﹁仲裁﹂を意味する︒

カザシタ ァレ他ゾナイカリ ⑤風下無事に千秋万歳︵五一一五︶暖衆綱碇にてかかる露︵五一一 て行く事にする︒ ︵︵︶内の句番号は︑便宜上︑その俳譜集での通し番号を示す ものである︒︶

︵一︶﹁古典俳文学大系﹂における用例

1 0 1

文を真字書きにすることを原則としているために﹂﹁和製漢字・

和製漢語の類が少なからず混在する﹂︵三三○頁︶と述べ︑原義

と異なる特殊な用い方をした漢字の中に﹁暖︿アッカイ﹀﹂があ

る︒前節での﹁古典俳文学大系CDlROM﹂の検索結果では︑

﹁アッカヒ﹂に﹁暖﹂の用字が見えることから︑ここでは﹁暖﹂

(11)

︵解釈は﹁新編日本古典文学全集﹂﹁新日本古典文学大系﹂など

を参照した︶ わけいゑみな ⑫藤六申は︑ふたつに分たる家を︑皆藤七にとらすべしと申せ

陰いすみ かたな いゑきやうこう ば︑やうやう暖ひ済て︑藤六は刀ばかりとって家を出︑向後

しやう みやこ 百姓をやめると︑都にのぼり ③秋の風あらくな吹そ暖に第二巻・一二 ⑨此囲はのけて置しゃれ第二巻・一九 ⑩咽きかすにいかなるか末第二巻・一二 ⑪閏ふからは髪をせにせよ第三巻・三一

﹁大矢数﹂では﹁アッカヒ﹂の漢字表記は﹁暖﹂のみであり︑

すべて﹁仲裁する︑調停する﹂意として使用され︑調査資料と

した俳文学作品集では﹁暖﹂を﹁ナグサム﹂と読む例は見えな

かった︒ちなみに﹁西鶴五百韻﹂にも﹁傘をやふれ暖きかぬ時

︵二一七︶西鶴﹂と﹁暖﹂を仲裁に用いる例がある︒

︵三︶西鶴の浮世草子での用例 ︵二︶﹁古典俳文学大系﹂に所収されない西鶴の﹁大矢数﹂で

の用例

1 0 2

六︶﹁阿蘭陀丸二番船﹂︵独吟西山梅翁︶

⑤は俳譜の世界を船に替え︑新しい俳風をうまくまとめる人

の意に﹁暖衆﹂を用いる︒これらの句以外に︑俳譜論普﹁ふた

つ盃﹂では︑高政と随流の論争を奉行所に差し出した訴状の形

式で両者の主張を述べさせ︑それに判を下すという趣向の中に︑

次の⑥のような例が見える︒

アシカィ イケイ ヘキ ⑥・暖を仕りまして︑古風を畏敬する処の辞をやぶらせ

・前句何様のうつりにても︑ひくりかへさず︒﹁さ︑めごとの

︹に肋雌 山﹂﹁暖の山︑古河政きこゆるか︒︵﹁暖﹂の振り仮名︹ア︺

は校注者が底本の脱字を補ったものである︒︶ 冊唯マンマッスグ ・暖に入て真中に真直に立︑﹁此様にめされよ﹂といふたれ

ば﹁ふたつ盃﹂

⑦松二有情トハ夫婦ヲ云ヘルニ︑畢寛ハ有無ト姿情トー一文字ノ

アツカヒ 暖ノ自在ナル︑言ハザ互照ノ絶妙卜称スベシ︒

﹁和漢文操﹂︵△﹁文選﹂﹁冊類二﹂⁝⁝︶

右の⑦の﹁和漢文藻﹂は︑②から⑥の作品集より時代が下り

一七二三年成立の詩文を集め注を加えたものである︒⑦では前

の②から⑥とは﹁暖﹂の用法が異なり︑これまでのような調停

や仲裁の意味ではない︒言葉を表す文字を工夫している様を表

現している︒

(12)

古文書での﹁修﹂の用例は探し得なかったが︑古文書辞典の ︵四︶古文書における用例 ﹁あつかい﹂の見出し字に﹁暖・刷﹂もあるので︑両者の用例を 次に提示しておきたい︒ ⑯誓度寺之事︑地下衆色々暖候而候候︑錐背先例候︑於後々者︑

可篤不入者也︑価篤支護状如件

︵高野山文書五巻一八六誓度寺支誼状明応七年︶

⑰中節両方依有申事相論之儀候︑然虚東南院篤暖︑賜無篤候︑

然上者五位々等之時者︑合百五十文可納候

︵高野山文書五巻二五一・粉河寺衆議状永正一四年︶

⑱十月十六日︑営地江戸罷立︑中途へ打出候虚︑御同名新五郎

方藤田右衛門佐︑小幡其外和談取刷由申来候︵略︶遂封談候

間︑定富座之刷計儀与存之候虚

︵北条氏網書状・上杉家文書大永四年︶

⑲不慮之儀仕出︑所々之造作罷成候時︑方々を語︑或者及暖一一

失墜行事候者︑面目之失墜をは公事本へ可懸︑

︵高野山文書五巻二五四不動院海寂等連署定書永禄三年︶

⑳塚原陣之時︑以駿河之圏無事︑既驚神慮︑以誓詞申合︑

上杉家文書には︑これら以外にも﹁暖﹂﹁刷﹂が使用されてい

る︒﹁刷﹂は必ずしも﹁仲裁﹂の意として見えるのではなく︑

﹁所々御料所へ御年貢御催促候︑御刷之御年貢義も﹂と年貢の催 ︵上杉家文書永禄七年︶

1 0 3

﹁西鶴諸国はなし﹂巻二神鳴の病中

あつか ⑬両町き︑つけさま人︑に暖へどもきかざれば︑やう/︑四人

ひげ につくり髭をさせ

*注﹁暖へ﹂Ⅱ和解させるために仲裁を試みること

﹁西鶴諸国はなし﹂巻三お霜月の作り髭 し:うしり直いIつくひげ ⑭いかにしても︑女郎の裸はと尻からげに暖ひ︑作り髭のかは

1ゆすみほう りに眉墨を一方おとさせ

﹁諸艶大鑑﹂巻八終には掘ぬきの井筒 きんきんよくぁ腺ひ寸誉 ⑮金銀の欲にふけて暖にして済し手ぬるく命をたすくるがゅへ

に ﹁好色五人女﹂巻二こけらは胸の焼付さら世帯

⑫は︑長男と次男の刀の相続をめぐる争いに対する親戚の人

たちの調停︑⑬は︑いたずらをされた男が住む町の人たちと︑

いたずらをした男達が住む両町の者が間に入り︑和解させるこ

と︑⑭は︑女郎の裸はと仲裁して許すこと︑⑮は︑金銀で示談

にすること︑などを﹁あつかひ﹂と表現し︑﹁暖﹂の漢字を用

い︑﹁暖﹂以外の漢字表記は見られない︒

(13)

三年﹂﹁三巻一七四慶安二年﹂にも﹁暖﹂が見えるが︑﹁暖﹂

を用いる例は見ることができない︒﹁刷﹂に関しては︑ヨミは

﹁アッカフ﹂であっても︑意味は﹁調停・仲裁﹂ではなく﹁取り

計らう﹂であり︑﹁暖﹂とは相違がある︒一連の近世初期俳譜の

表記の研究の資料とした正章千句・紅梅千句・宗因七百韻・江

戸八百韻・富流龍抜・西鶴五百韻・江戸蛇之鮮・江戸宮笥・軒

端の独活・七百五十韻の一○俳譜集中での﹁刷﹂の用法を見る

と︑﹁富流龍抜﹂では

テフプガ 蝶番ひ六牧た魁む岩つたひ︵一六七︶

ハケ 刷ではいたる一片の雲︵一六八︶

と﹁ハヶ﹂と読む︒また︑﹁軒端の独活﹂では ウンタイキヨ フクサ 長安一片の花大虚に広ごる色服巾︵五一一一一︶ ウ暇旧 シ 繍耀霞を刷ぜイ婦人多︵五一四︶

と﹁ツクロフ﹂と振り仮名が付され︑身なりを整える意を表し︑

仲裁する意ではない︒

以上のように﹁暖﹂は古文書で一四○○年代から使用され︑

近世の俳文学作品や西鶴の浮世草子で多用されることから考え

て︑﹁アッヵヒ﹂に﹁暖﹂を対応させるのは特殊ではなく︑近世

の用字の一般的傾向を示していると考えられる︒

1 0 4

促の場面で﹁取り計らう﹂の意味を表す︒また︑﹁結城氏新法

度﹂︵弘治二年︶でも︑六条.三二条.五八条.八四条︵四例︶・

九○条︵二例︶などに﹁知行させる.宛行なう﹂などの意で

﹁刷﹂が用いられる︒

⑳今度秀吉其国鉾楯之段︑無心元候︑然者︑和睦儀是非共暖度

候︵足利義昭御内替・島津家文瞥天正十四年︶

など義久・義弘に秀吉との和睦を促す後内普や︑伊集院忠棟に

宛てて使者を薩摩に下す後内書などに﹁暖﹂の用例が見える︒

⑳御折帯披見申候︑価源二郎凋之儀︑表裏之由曲言候︑委細従

兵庫頭殿可被仰候之間︑令省略候︑恐々謹言

︵徳川家康書状・島津家文書慶長四年︶

⑳城龍申者到打死︑又ハ落申候得共︑遊佐勘解由左術門︑坂部︑

須田廿五人︑生地︑賢川壷人も落不申︑金太寺堅ク持堅メ申

候︑其内高屋暖二罷成︑則畠山殿を湯川之御供二而紀伊園江の

け申候

︵高野山文書六巻一六五坂合部新兵術尉書上室町後期︶

⑳先規の姿恥以無相違被仰付候者︑愚僧之安堵不可過之候︑若

又理ふ壷之暖も候は魁進退以前申収候

︵高野山文書四巻一二○樫池院龍海書状室町後期︶

高野山文書では︑以上のような用例以外に︑﹁一巻五八永正

(14)

四﹁扱﹂について ⑬旅人の箸で捌剖かやりかな﹁蒼乳翁句集﹂四○六

などが﹁あっかふ︵ひ︶﹂と読むと推定できる例であり︑⑰⑳⑳

⑪は仲裁する意と捉えられる︒このほかにも﹁うきつしづみつ

石仏で扱﹂︵其角十七回.七七四︶や﹁そら豆の花にせかるる扱

茶かな﹂︵蔦本集・一八○︶のように﹁扱﹂の漢字が見えるが︑

校注者により﹁こぐ.こき茶﹂と振り仮名が付され︑手でこす

る︑或はむしりとることを﹁こく﹂と云い︑仲裁・調停を意味

する﹁あつかう﹂とは意味の相違がある︒

西鶴の﹁大矢数﹂では︑前掲のように﹁アッカフ﹂を漢字で

表記する場合は︑すべて﹁暖﹂であり﹁扱﹂は使用されない︒

その結果︑﹁古典俳文学大系﹂所収の句と同書に所収されない

﹁江戸八百韻﹂・﹁西鶴五百韻﹂・﹁大矢数﹂を合わせると︑﹁アッ

カヒ﹂に﹁暖﹂を当てるのが︑俳文学作品では一一例︵浮世草

子は除外︶︑﹁扱﹂は︑ヨミの異なる﹁こぐ.こき﹂は除外して︑

仲裁・調停以外の義で﹁アッカヒヲ︶﹂と読む例を含めると七

例が見える︒同じく﹁古典俳文学大系﹂所収の句における︑仮

名書き﹁あつかふ﹂を検索した結果︑一二件の用例がある︒仲

裁して仲直りさせる意では︑例えば ⑭酒の喧嘩を酒で刻到洲剖餅夢﹁潤江話﹄五二

のような用例が見えるが︑漢字﹁略﹂と振り仮名﹁アッカヒ﹂

1 0 5

現在の﹁あつかい﹂に当てられる常用漢字は﹁扱﹂である︒

﹁新撰用文章明鑑﹂︵巻中︶では蒜&ぁ蝿厨是は道具ぅ燕瀞

とりまばすとりあつかいみあつかいあつかふ と取廻すいふ也/取扱身扱などに用ゆ﹂﹁暖是は詞をもって

あい冬つとりもつ 挨拶し執持をいふ:::﹂と﹁扱﹂と﹁暖﹂の差異を記す︒高

野山文書では

⑳十八日東村へ押寄せ放火し首セツ取︑又粉川之町二圃首一ッ

取︑手眉十二人︑然廿日朝より長田荒見衆捌一一より和睦ス

︵五巻三七粉河寺葱記案︶

⑳何事候共無御如在預御捌候ハ︑可畏入候

︵四巻三○七中島之信書状︶

と⑳では﹁仲裁﹂⑳では﹁取り計らう﹂意を表す︒﹁古典俳文学

大系﹂所収の句のみでは

あつかひ ⑰芭蕉葉の破れし喧嘩扱て利方﹁天満千句﹄六一

⑳いさかひは捌酬すとも心あれな宗因﹁宗因七百韻﹂二○○

⑳其中に三羽捌酬しほらしき千石﹁金龍山﹂一一五一

⑳捌剖て花いす人に負渡し梅房﹁其角十七回﹂五八八

⑳本閉じるごとく捌跡もどり大圭﹁草むすび﹂四五

@なま酔の刷捌訓もところてん黒己﹁梨園﹂二二九

(15)

による表記とは異なり︑﹁仲裁する﹂以外の情報は伝わってこな

い◎

おわりに ︹注︺

︵1︶﹁近世初期俳譜における﹁やさし﹂の用法l﹁江戸八百 ヤサシヤサ 韻﹂に見える﹁痢郷﹂﹁艶し﹂についてl﹂︵関西大学﹁国文

学﹂九五号︶

イキ ︵2︶﹁近世初期俳譜の用字考証l﹁富流龍抜﹂における﹁悶

る﹂についてl﹂︵関西大学﹁国文学﹂九六号︶

︵3︶上杉家文書︵﹁大日本古文書﹂家わけ十二ノー昭和五十

六年覆刻東京大学出版会︶/高野山文書一から七巻昭和

四八年歴史図書社/﹁近世の古文書﹂荒居英次編昭和四

六年小宮山書店/相良家文智之一︵﹁大日本古文轡﹂家わけ

第五大正六年東京帝国大学︶/沢氏古文書第一︵続群書

類従完成会平成元年︶/地下文書︵﹁史料纂集古文書編﹂

二○○九年八木書店︶/島津家文書︵﹁大日本古文書﹂家わ

け第十六昭和一七年東京帝国大学︶/﹁島津久光公賓紀

こ︵綱日本史籍協会叢書昭和五二年東京大学出版会︶/

﹁塵芥集﹂﹁結城氏新法度﹂﹁六角氏式目﹂︵﹁中世政治社会思想

上﹂日本思想大系型一九七二年岩波書店︶/﹁改編匠

材集﹂小林祥次郎編平成一三年勉誠社/益田家文書三

︵﹁大日本古文書﹂家わけ第二十二二○○○年東京大学出

版会︶/歴代古案第一︵﹁史料纂集︹古文書編︺﹂平成五年

1 0 6

以上のように︑﹁峰﹂を﹁アッカヒ﹂と読むことについて検討

してきたが︑﹁合類節用集﹂と﹁書言字考節用集﹂の辞普以外で

は﹁暖﹂に﹁アッカヒ﹂のヨミが与えられる例を探し出す事は

出来なかった︒﹁鯵﹂と﹁アッカヒ﹂の対応は︑後の俳譜の用字

に影響を与えることもなく︑そして︑近代の種々の国語大辞典

の見出し語﹁あつかひ﹂に︑漢字﹁鯵﹂を採用されることもな

いことから︑一般に流布しなかったことは確かである︒当該句

アヅカヒ の﹁略﹂は︑中国に漢字が存在するけれども︑その字義と異な

る特殊な用法によるものであり︑振り仮名﹁アッカヒ﹂は単に

ヨミを示す振り仮名ではなく︑意味のみを示す振り仮名でもな

い︒作者は﹁アッカヒ﹂から連想して︑﹁はだかる﹂の義を持つ

﹁鯵﹂を﹁アッカヒ﹂に当て︑仮名書きや他の漢字では表現でき

ないものを︑﹁鯵﹂の漢字と振り仮名によって︑表現に広がりを

持たせたのである︒

(16)

続群書類従完成会︶

︵4︶爾木一馬﹁古記録の研究上﹂斎木一馬著作集1平成

元年吉川弘文館 集﹂﹁宗因七百韻﹄﹁蒼乳翁発句﹂﹃蔦本集﹂﹁天満千句﹂﹁梨園﹂ ﹃俳譜大句数﹂﹁ふたつ盃﹂﹁二葉集﹂以上﹁古典俳文学大系﹂

一巻〜一六巻昭和四五年〜四七年集英社︵検索は﹃古典

俳文学大系CDIROM﹂集英社による︒︶

︵たなかみえこ/本学東西学術研究所非常勤研究員︶

1 0 7

参考文献 ﹁好色五人女﹂﹃諸艶大鑑﹂近世文学資料類従西鶴編3.4

昭和四九・五○年勉誠社/﹁五山文学新集﹂一〜六巻一九

六七〜一九七二年・別巻一〜二一九七七年一九八一年東京

大学出版会/﹁西鶴大矢数﹂﹁軒端の独活﹂﹁営流舗抜﹂︵近世文

学資料類従古俳譜編釘・詔・鉛昭和五○・五二年勉誠社︶

/﹃西鶴諸国はなし﹂︵新編西鶴全集第二巻平成一四年勉

誠出版︶/﹁志不可起﹄享保一二年成立﹃新撰用文章明鑑﹂元

禄六年刊﹁世話用文章﹂元禄五年刊︵近世文学資料類従参考

文献編6.7.9昭和五一年勉誠社︶/﹁唐話篤文菱﹂渡

遜約郎編︵﹁唐話辞書類集第二集﹂昭和四五年汲古書院︶/

﹁忠義水瀞伝紗課貢﹁唐話辞書類集第三集﹂昭和四五年汲古

書院︶/﹁徒紅字蕊﹂安政七年刊本会唐話辞書類集﹄第九集

昭和四七年汲古書院︶/﹁梅花無尽蔵注釈﹄市木武雄平成

五年続群書類従完成会/﹁渦江話﹂﹁大坂檀林桜千句﹂﹁阿側

陀丸二番船﹄﹁其角十七回﹂﹁金龍山﹂﹁草むすび﹄﹁蕉門名家句

参照

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実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる

[r]

〔付記〕

地区公園1号 江戸川二丁目広場 地区公園2号 下鎌田東公園 地区公園3号 江戸川二丁目そよかぜひろば 地区公園4号 宿なかよし公園

機器製品番号 A重油 3,4号機 電源車(緊急時対策所)100kVA 440V 2台 メーカー名称. 機器製品番号 A重油 3,4号機

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