• 検索結果がありません。

ヒューマン・インターフェイスにおける認知的基盤

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ヒューマン・インターフェイスにおける認知的基盤"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

75

ヒューマン・インターフェイスにおける認知的基盤

The Cognitive base in Human-Interface

ネットワーク情報学部 上平崇仁

School of Network and lnformation Takahito KAMIHIRA

Eeywords : Human Interface, Interaction, Information design, Cognitive Science, Cognitive Semantics・

(2)

76 専修ネットワーク&インフォメーション No.8,2005 インターフェイスは、はじめは機械を操作するための単 純な操作盤程度の意味合いで使われていたが、コンピュー タの登場とその一般社会への普及に併せて、それらをわか りやすく処理するために、どのように使うか、システムが どうあるべきか、という使い方やソフトウェア全体を含め、 いくつかの層を持つ総合的な概念へと変化してきた。特に 複雑な手続きや処理が必要なソフトウェア開発の周辺が強 く要請したため、インターフェイスのデザインというとき、 それは当初は画面の中だけで進められることが多く、ハー ドウェアのデザインとは分離したままそれぞれ別の流れで 発達せざるを得なかった。その後、テクノロジーや設計に 対する考え方の進化に伴って、この二つの流れは融合し始 め、現在に繋がる広い意味でのインターフェイスの概念が 共通項になったとされる【5】。なお、こういった考え方で情 報機器が設計され始めたのが80年代後半頃であり、まだま だ歴史が非常に浅いことがわかる。 インターフェイスをデザインする場において、これらが 従来のモノ作りと決定的に異なっていたのは、図1でも見 えるように、その内部機構とユーザの操作面が分離してい たことである。例えば、ポインティングデバイスであるマ ウスの内部には電子回路が組み込まれており、移動したと きの方向や距離をセンサーがとらえ、コンピュータ本体に 伝えるための信号に変換しているが、ユーザがこういった 内部機構を気にすることは、通常はほとんどない。一般的 なユーザにとってのマウスとは、その形状やさわり心地で あり、画面内をすべるカーソル移動のレスポンスであり、 つまりインターフェイスそのもののことなのである【61。そし て当然の事ながらコンピュータを使う理由は操作すること 自体ではなく、それを用いて対象物に対してなんらかの目 的に沿って変化させることである。例えばWeb閲覧の場 合、隠れているページのコンテンツを見ることを目的とし て、ウインドウ右側にあるスクロールバーをスライドさせ るのであり、そしてスライドするためにマウスを微妙な力 で押しながら机の上で位置を移動させるのである。これら のためには、本来はコンピュータの介在を意識しないで操 作できることが望ましい。しかし実際には人間の感覚・認 識能力にも機器のパフォーマンスにも限界があるため、 「人 間の作業」と「対象の変化」の間で情報を変換していく過 程でのズレが発生することは避けられず、直感的な操作を 妨げることになる。インターフェイス設計が困難だとされ るのもこういったところに原因があり、設計のどの段階に しても、異なる境界は完全に繋がるわけではなく、もとも と無謀とでも言える点を持っている。しかし、これらに対 して生じる「分かりにくさ」をできるだけ無くしていこう、 そしてより学習しやすいものにしていこうとする試みが、 ヒューマン・インターフェイスという領域の最も重要な問 題意識である。 JoelSpolskyは「全てのヒューマン・インタ ーフェイスデザインの基本原理は、使う人がそう振る舞う だろうと期待したようにプログラムが振る舞うように作る ことである、ただそれだけだ」【7】と明快に言い切っている が、インターフェイスに関わる人間は、こういった基本的 な姿勢こそをまず理解しておかねばならない。 2-2 インターフェイスとインタラクション インターフェイスと似た言葉に、インタラクションがあ る。例えば、コンピュータ全般を使いやすくするための方

(3)

ヒューマン・インターフェイスにおける認知的基盤 77 いだろうO いずれにせよ、共通している重要な点は、両者とも「作 る側

J

ではなく「使う側jの視点から考えるという立場を とることであるO 設計する側は、自分達の技術やコストの 問題を優先しがちであるが、その技術を利用するのは専門 の人ではなく普通の人であるo したがって抽象化した理想 的な人間ではなく、生身の実在する人間の使用状況を想定 した設計を行うことがもっとも重要となるO このような使 う側、つまりユーザの理解しやすさや操作のしやすさの程 度を表す言葉は「ユーザピリティ

J

と呼ばれ、こういった 考え方を活かした設計手法としてHuman-centeredDesign のアプローチが提唱されている[10Jo 1999年 に は 国 際 規 格 ISO 13407(Human-centered Design Process for Interactive Systems:インタラクテイブシステムの人間中心設計)[l1Jが 制定され、2005年には人間中心設計機構 (HCD-Net)[12Jが 設立され、日本でもユーザピリティ工学の気運が高まりつ つあるD 2-3 Graphical User Interface 現在、コンピュータにおけるヒューマン・インターフェ イスとして最も普及しているのがGraphicalUser Interface、 通称GUIであるO ユーザに対する情報の表示にウインドウ、 ア イ コ ン 、 ボ タ ン と い っ た デ ィ ス プ レ イ 上 の コ ン ピ ュ ー タ・グラフィックスを用い、マウスなどのポインティング デバイスによって操作することができるO ディスプレイ上 のアイコンやボタンは、人がコンピュータに命令を下すた めの手掛かりとして存在しているが、内部的には、目に見 えない信号の規則によって処理されており、言語や情報処 理の方法がまったく異なる人とコンビュータの間に立って、 お互いがコミュニケーションできるように手助けするO 当初、コンピュータはコマンドラインのような命令が必 要であった。しかしGUIの出現によって一般人にも簡単に 操作できるようになり、コンピュータのみならず携帯電話 やカーナピ、 ATMなどの情報機器と人聞が直感的に操作す る上で欠かすことが出来ない要素のひとつとなった。また、 現在誰でも作ることが出来るWebサイトもGUHこよって操 作されるわけであり、 Webクライアントの技術が多様化す るに伴い、 WebベースのシステムやWebサイトもデスクト ップアプリケーションと同等に対話性を考慮する必要が出 てきていると言える。 GUIの歴史は古く、最初にGUIのアイデアが登場したの はまだコンピュータもなかった1930年代のVannevarBush による思考支援装置/MEMEX[131の構想にまで遡る O そし て 現 在 と ほ ぼ 同 じ コ ン ビ ュ ー タ の 姿 が 考 案 さ れ た の が 、 XEROXのパロ・アルト (PARC)研究所でアラン・ケイら によって試作されたワークステーションAltoで、あり、 1973 年のことであるIUlo Altoは、将来のグラフイカルな操作環境の開発を見越し て、ピットマップディスプレイ、マウスを当初から標準で 装備し、この世界初のGUIベースOSであるSmalltalkシステ ムを介し、 1970年代半ばにはすでに、 WIMP(Window

I

c

on

Menu,Pointingdevice)、つまりウインドウシステム、メニ ュー操作、アイコン、ポインテイングデバイス、 WYSIWYG (WhatY ou See isWhat Y ou Get)エディタなど、現在のパ ソコンに匹敵する特徴も備えていた。Altoはその後の個人が 使用するためのパーソナルコンピューティングの方向性を 示 し た 歴 史 的 な コ ン ピ ュ ー タ と な り 、 そ の 思 想 は 現 在 の MacやWindowsPCへと引き継がれているO なお、現在主流の机の上に見立てられた作業環境である デスクトップメタファを用いた GUIは、 1977年にアラン・ ケイによって基本コンセプトが提示されたが、コンピュー タの処理能力が著しく向上したのと対照的に、現在までほ とんど進化していない。逆に言えば今に至るまで誰も次世 代のGUIを提案できておらず、アラン・ケイのアイデアが 極めて画期的かつ普遍性があったことを示しているO 停 滞 する二次元GUIを越えるために、サンマイクロシステムズ のLookingGlass Projectl151のように3次元GUIも試みられ

ているが、しかし、現在のところでは今のデスクトップメ タファを越える主流になるとは言い難い。図2にLooking Glassの画面キャプチャを示す。 図2 し∞kingGlass画 面 2-4 Post GUI GUIベースのPCは、優れた汎用インターフェイスとして 広く使用されてきたが、操作が画面内で完結してしまうた めに、感覚的なリアリティが欠如しているという欠点があ った。またPC自体が多機能で複雑すぎるために利用者や用 途が制限され、社会での普及にある意味で限界が見えはじ めてきた。こういった部分を改良するために、 GUIとは別 の直感的な操作を可能にするための次世代インターフェイ スが研究されているO 例えば、力学メディアなど、視覚以 外のモダリティも含めたマルチモーダルインターフェイス (MMUI: Multi-Modal User Interface)や、 MMUIに機械が 人 間 の ジ ェ ス チ ャ や 音 声 を 認 識 す る 機 能 を 付 加 し たPUI

(PerceptualUser Interface)が提唱されているO これらに

(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)

ヒューマン・インターフェイスにおける認知的基盤 現在、将来の構想としてユビキタス・コンピューティン グが提唱され、生活を支援するさまざまなアプリケーショ ンの開発が試みられている。それと共に情報技術をより人 間に近づけるためにヒューマン・インターフェイスの問題 はますます重要になっているが、これらの研究を突き詰め ていくと、 「人間とは何か」という問いに対面することにな り、その難解さと奥深さを痛感せずにいられない。 本稿は広い領域を概観することが第一の目的であったた め、ここで述べた考えについては細部までの考察に至って いないが、また別途稿を改めて実践と検証を行いながら深 めていく予定である。一つの視点として本稿が参考になれ ば幸いである。 参考文献、参考Website t11ロバート・ヤコブソン(編)篠原稔和(監訳) 「情報デザイ ン原論 ものごとをかたちにするテンプレート」東京電気大 学出版局 2004 【2】 「文化のインターフェイス 境界・界面・越境」日本記号 学会(編)東海大学出版会1987 【3】田村博(編)「ヒューマン・インターフェイス」オーム社出 版局1998 【4】佐伯肝「機械と人間の情報処理 認知上学序説」意味と情 報 竹内啓(編)東京大学出版局1988 【51情報デザインアソシエイツ(編) 「情報デザインわかりやす さの設計」グラフィック祉 2002 【6】ジェフ・ラスキン 村上雅章(釈) 「ヒュ-メイン・インタ ーフェイス 人にやさしいシステムへの新たな指針」ピアソ ンエデュケ一一ション 2001 【7】JoelSpolsky 「プログラマのためのユーザーインターフェイ スデザイン」 JoelonSoftware http://japanese.joelonsoftware.com/uibook/chapters/ 1.html l8】鈴木明「インタラクションデザインノート」神戸芸術工科 大学人学院 2003 【9】クリス・クロフォー-ド 安相通晃(監訳) 「クロフォードの インタラクティブデザイン論」オーム社開発局 2004 【10】黒須正明「人間中心設計の考え方とその実践」人間中心 設計機構・機構誌2005 Vol.1No.1発足記念号 pp.8-ll 【11】黒須正明他「ISO13407がわかる本」オーム社 2001 [ 12 I HCD-Net http://W.hcdnet.org/ 【131Vanenevar Bush. As We May Think

http : / /vw. p s. u ni-sb. d e / - duchier/pub /vbu sh /vbush-all. shtml 【14】浜野保樹(監修)鶴岡裕二(翻訳) 「アラン・ケイ」アスキ ー出版局1992 [15] ProjectLeoking Glass http: //www. sun.com/software/looking_glass/ 【16】椎尾一郎「GUIを越えて-BeyondDesktop 実世界指向イ ンターフェイス」 ヒューマンインターフェイス学会誌2003 Vol.5 No.2 pp.21-24

【17】 Tangible Media Group http://tangible.media.mit.edu/ 【181塚剛告二、増井俊之:MouseField:「置いて,動かす」イデ ィオムを用いた日用品の拡張、インタラクション2004論文集 83 pp.45-46 (2004) 【19】坂村健「ユビキタス、 TRONに出会う」 NTT出版2004 【20】松山隆司「人間の情報処理の理解とその応用に関する研究」 京都大学情報科学研究所 http://vision.kuee.kyoto-u.ac.jp/Informatics-AO3/index-j.html 【21】D.A.Norman野島久雄(釈) 「誰のためのデザイン? 認 知科学者のデザイン原論」新曜社1990 【22】海保博之・原酬鬼子・黒須正明「認知的インターフェイス コンピュータとの知的つきあい方」 1991 【23】D.A.Norman岡本明他(訳) 「パソコンを隠せ、アナログ 発想で行こう!複雑さにわかれを告げ、情報アプライアンス へ」 2000 【24】ブレンダ・ローレル(編)上条史彦他(訳) 「ヒューマン インターフェイスの発想と展開 人間のためのコンピュータ」 2002 【25】楠見孝「インターフェイスデザインにおけるメタファ デ スクトップから仮想空間、そして言語への剛尋」デザイン学 研究特集号:デザインと記号論 2002 pp.64-73 【26】G.レイコ7、 M.ジョンソン 渡辺昇 一他(釈)「レトリッ クと人生 MetaphorsWeLiveBy」大修館書店1986 【271マーク・ジョンソン 菅野盾樹 中村雅之(訳)「心の中の 身体想像力のパラダイム転換」紀伊国屋書店1991 【28】松本曜(編) 「認知意味論」大修館書店20031 [291久保田晃弘「消えゆくコンピュータHuman-Interface」岩 波書店1999 【30卜三宅芳雄「ヒューマンインターフェイス研究と認知科学 講座:情報技術者のための認知科学【2】」 http://yoshio.sccs.chukyo-u.acjp/index.html 【31】BML? Walker http://www.biomotionlab.ca/Demos/BM Lwalker.html

【32】 Q. Taro : Quasi-stable Traveling and Action Robot h仕p : // sonyexplorascience.com/ 【33】バイロン・リーブス+クリフォード・ナス 相馬宏通(訳) 「人はなぜコンピュータを人間として扱うかメディアの等式 の心理学」 2001 【34】野沢総史 Ambiente Flow http://www.ne.senshu-u.ac.jp/-n130039/p2/index.html l351AndreasMuller, ForjulSeasons http: //www.hahakid. net/forallseasons/forallseasons.html 【361寺沢秀雄他「Found Behavior対話経験の参照によるイン ターフェイス発想」日本デザイン学会52回研究発表大会概要 集 【371D.A.Norman佐伯鮮(監訳) 「人を賢くする道具 ソフト・ テクノロジーの心理学」新曜社1996

【38】 Rudolf Arnheim, Visual Tinking University of California Press 1969

[391 Jeese James Garrett, "The Elements of User Experience" New Riders Publishing 2002

【40】ロバート・ヤコブソン(編)篠原稔和(監訳) 「情報デザ イン原論 ものごとをかたちにするテンプレート」東京電気

大学出版局 2004

(10)

参照

関連したドキュメント

いかなる使用の文脈においても「知る」が同じ意味論的値を持つことを認め、(2)によって

このように資本主義経済における競争の作用を二つに分けたうえで, 『資本

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

規則は一見明確な「形」を持っているようにみえるが, 「形」を支える認識論的基盤は偶 然的である。なぜなら,ここで比較されている二つの規則, “add 2 throughout” ( 1000, 1002,

WMS 計量モジュールには RS232 インターフェイスおよび RS422 インターフェイスが装備されてい

6 Baker, CC and McCafferty, DB (2005) “Accident database review of human element concerns: What do the results mean for classification?” Proc. Michael Barnett, et al.,

(注)

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本