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井上秀典

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国際水環境紛争における衡平な利用原則の検討

井上秀典

I水環境紛争の現状

水環境紛争が生じる原因としては中東・アフ リカ地域では水資源の絶対量の不足、すなわち 降水量が少なく、数カ国が-つの水源を共有し ている場合である。サブサハラ・アフリカ地域 では貧困と水供給能力の不足、アジア・モンス ーン地域では人口増加、都市化・工業化による 水不足、洪水被害、貧困の複合が原因となって いる。国際社会では、多くの水環境紛争がある が、本稿では、上流国と下流国の紛争の事例を 取り上げる。2)

はじめに

人間にとって水は必要不可欠である。人間の 利用できる水は水全体の0.01%だといわれてい る。水問題には水質の問題とともに十分な水の 量を得られるのかという配分の問題がある。配 分の問題は、もともと地球上で利用できる水の 量が少ないうえにその分布がバランスを欠いて いるため、一部では多すぎるほどであるのに一 部ではまったく足りないという現状がある。ま た、急速な都市化が各地で水不足をもたらし、

水売りから飲料水を買わなくてはならないケー スが発展途上国では少なからず見られる。まさ に、二十一世紀は、水の時代であり、水の確保 のために国際的な紛争が生じている。

地球上に国際河川が現在263あり、')世界の人 口の約8割が、これら国際河川の流域で生活を 営んでいる。そこで、どのようなルールで河川 を管理するのかが問題になってくる。しかし国 際河川において地域的にも一定のルールが存在 するかどうかも不明確であり、明確な河川管理 の統一的ルールが存在しない。このため、どの 国がどの程度の取水を行っているかによって生 まれる不公平感が国家間の緊張を高めている。

とくにナイル川の上流諸国とエジプトやヨルダ ン川周辺諸国のような砂漠を有している国にと って水資源の確保は重大な問題である。

本稿では、このような共通の明確なルールの 存在しない国際河川管理に対し、)国際法がどこ まで、またどのような役割を果たすことができ るのか、その中でも衡平かつ合理的な利用原則 に焦点を当てて検討する。

1.現状

(1)ナイル川3)

ナイル川をめぐる紛争の関係国はエジプトと スーダンである。本事例は、慣行水利権と自治 権により発生する水所有権の対立が発端となっ ており、上流国と下流国のどちらに管理体制を おくべきかの問題である。

〈経緯〉

ナイル川の水源はエジプトの領外にある。そ れ故、エジプトはこの水源を守ろうとし、水利 用の主導権をエジプトが有していた。しかし、

近隣国の水需要の高まりとともに紛争が生じた。

1920年にナイル川計画委員会が結成され、「セン チュリー・ストレージ・スキーム」という上流 にダム建設を行うナイル川開発計画案が立ち上 がった。この計画案は上流国に権限を与える内 容であり、エジプトは反発した。その後、水系 全体の開発計画が浮上し、1929年5月7日、エ ジプト・スーダン間に「ナイル川水系協定」が 締結される。その内容は、下流国エジプトに全 流水量に関する権利を認め、ナイル川流域にエ ジプトの利益を妨げる計画を施行しないことな

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どであった、この協定に対し、流域国のスーダ ンなどは国家主権を根拠にこの協定の無効を宣 言する。エジプトは水を安全保障の問題として とらえ、1952年、アスワンハイダム建設を提案 するが、交渉は決裂し、軍事的な紛争に発展し た。1959年、スーダンとエジプトは「ナイル川 水系の全面活用に関する協定」を締結する。こ の新協定によって紛争は回避されたが、スーダ ンより上流の国家の水利用を認めなかった。こ のことが後に紛争の火種となる。スーダンはド ンゴラでのダム建設を計画し、エジプトは人口 増加に伴い食糊確保のための潅概による砂漠の 農地化のため「ニューバレー計画」を考えてお り、今後水紛争の生じるおそれが十分にある。

流域国の水の配分に関する総合計画は存在して いない。

違いや軍事力の分布もあり解決の困難性が懸念 されている。

Ⅱ水利用の原則

1.水利用に関する法原則の発展

ローマ法は今日の水源の管理および保全に関 する水法の中心となる原則の基となっている。

ローマ法は古くはハムラビ法典に規定された法 原則に影響を受けている。ハムラビ法典はメソ ポタミアにおける水法を規定し、ハムラビ王は 自らを「LagashとGirsuの給水場を配分する恵 み深い決定者であり、豊富な飲料水の寄贈者で ある」としている。とくに53条~56条には水管 理の規定がある。53条は「もし人が、田畑の土 手を堅固にすることを怠って、その結果、水が 田野を凌わした時は、彼は喪失させた穀物を賠 倣する」と規定する。そして、54条では「もし 穀物を賠償することが出来ない時は、彼と彼の 動産を売却し、水が凌いだ田畑の借地人に売上 代金を配分」しなければならず、さらに55条は

「もし人が彼の溝を濯概のために開き、彼の隣人 の田畑に水を凌がせた時は、穀物を彼の隣人の 損失割合に従って支払わなければならない」と している。また、56条は「もし人が水を開いて、

彼の隣人の田畑の耕作物を、水で凌がせた時は 1イクーに付き、穀物10クールを支払わなけれ ばならない」と規定する。`)

ローマにおいて、西暦300年頃から水利用原則 が出現する。東ローマ帝国においては、深刻な 水不足のため、水利用権の考え方に関して、水 資源に対する絶対的な主権に基づく上流国の利 用権が主張され、後にこの考え方はハーマン原 則の根拠となった。`)その後、この原則を緩和す る形でローマ法では先行利用原則である慣行水 利権が出現する。7)

ローマ法は私有財産に対し、優先度をおき、土 地及び財産の経済的重要性に重点があったにも かかわらず、土地所有者の法的地位は重要な問 題ではなかった。ローマ法は「物」を、動かすこ とができるかどうかで区別し、resmancipiとres necmancipiに分け、resmancipiは土地、奴隷、

牛馬などであった。従って土地と水の関係が必

(2)チグリス・ユーフラテス川‘)

チグリス・ユーフラテス川をめぐる紛争の関 係国はイラク、シリア、トルコである。総合的な 水利計画はない。対立の発端は1975年の低水量 期に当時の人口増加が原因で南アナトリアのケ バン・ダムとシリアのタプカ・ダムの建設にお いて一方的な開発が行われ、2つのダムに給水 した結果、イラクへの流水量が減少したことで ある。イラクは水量の減少に対しアラブ同盟の 介入を要請し、アラブ同盟の技術委員会が構成 され仲裁が行われた。このような中で、1975年 5月、シリアはイラク機の領域内における航空 機の飛行禁止措置をとり、シリアとイラクは国 境に軍隊を配置した。緊張が高まる中、サウジ アラビアの仲介によって6月3日、紛争回避の 合意に達した。合意は非公開とされた。

トルコの「南東アナトリア開発計画」(エネル ギーと農業開発)によりユーフラテス川の水配 分問題の早期解決の必要性が浮上した。この計 画はチグリス、ユーフラテス川に21のダムと19 の水力発電所を建設するものである。これによ り165万haの土地に潅慨が行われ、年間260億kW の発電が行われるといわれている。一方、下流 では水量水質ともに低下することが必至である。

その後、交渉が行われているが、問題は未解 決である。政治、宗教、民族、イデオロギーの

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ずしも法的な権利に結びつくものではなかった。

ローマ法では恒常的に流れている河川は公の 共有資源(Fuluminumpublicorumcommunis estusus)とされ、自由に利用することができ

た。水の利用権は私的財産権としてとらえられ ており、81河岸所有者は他人の権利を侵害しない 限り水を自由に利用することができた。,)また、

表流水と地下水は明確に区別されており、地下 水は土地に付加するものとして所有が認められ ていた。ローマ法で培われた水利用の考え方は その後、ヨーロッパへ大きな影響をもたらすこ ととなる。

ローマ法から受け継がれた河岸所有者権 (,ipa1ianright)原則はヨーロッパから北アメリ カへと拡大していった。一九世紀のアメリカに おいては河岸所有者に自己の土地を流れる水の 合理的な利用権が認められるようになった。こ の考え方に従えば下流地域の水利用を考えずに 河岸所有者は水を利用することができる。この 考え方は、地域的な特性を有しており、乾燥地 域ではない地域で発達した考え方である。それ 故、潅漉によって下流地域の水供給量に変化が 見られない地域で適用される。一方、乾燥地域 においては「合理的利用」の原則が発達する。

すなわち他の河岸所有者に損害を与えるような 水利用は不合理とされる。また、慣行水利権 (priorappropriation)の考え方もローマ法から コモンローに引き継がれ、1840年代のカリフォ ルニアにおけるゴールドラッシュの時代をきっ かけに発展していく。

ランデ川をめぐるアメリカメキシコ間の紛争が 生じたことによりとられた考え方である。メキ シコはリオグランデ川のアメリカによる潅祇事 業がメキシコの都市への水供給を脅かしている と主張した。アメリカの司法長官ハーマンは以 下のような法律論を展開した。

「国際法における基本的な原則は、自国領域に おける国家の絶対的主権である。自国領域にお ける国家の管轄は必然的に排他的、絶対的であ る。国際法の原則および先例はアメリカ合衆国 に対し、いかなる責任または義務を課すもので はない」。】o)

ハーマン原則は当時の外交交渉の手段として 用いられたものであり、慣習国際法とはいえな いが、今日の水紛争においても卜流同が水利用 する際の根拠として用いられる場合がある。

(2)領土保全請求

流域保全請求は絶対的な領域主権と真っ向か ら対立する考え方である。この考え方は上流国 は下流国の「領土保全」を妨げてはならないと する。したがって下流国は量、質とも十分な水 資源を享受する権利を有すると同時に上流国の 諸活動に対し拒否権を有している。この考え方 は、後述のラヌー湖事件のスペインの主張にみ られる。またトレイルスメルター事件において もアメリカはこの考え方をとっている。また、

この考え方は、後の人間環境宣言原則21に具現 化されている。

(3)流域の統合管理

上記の絶対的な領域主権と領域保全請求の2 つの考え方を融和させたものが流域の統合管理 であり、その中で衡平な利用原則がヘルシンキ ルールに登場する。衡平な利用原則は国際法に おける衡平の原則が発展したものと考えられて いる。ローマ法に起源を持つこの原則は政治的 な解決の余地を残す柔軟な考え方だとされてい るが、その反面、暖昧さもあわせ持つものである。

後述の「国際水路の非航行的利用の法に関す る条約」6条は衡平な利用原則の要素として自 然的要素、社会的・経済的必要性、水路利用型 の水路国に与える影響、水路の現行利用などを 2.水利用原則の多様性

ローマ法における原則の多くがコモンローに 引き継がれているが、現在、考えられている水 利用原則の考え方は、以下のように多岐にわた

っている。

(1)絶対的な領域主権

領域主権の原則に基づき領域を流れる河川に 対して包括的な主権を行使することができる。

したがって上流国は下流国の利益を考えずに自 由に水資源を利用することができる。この考え 方はいわゆるハーマン主義といわれ、リオ・グ

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あげている.しかし、これらの要素には優先度 がつけられていない。例えば社会的・経済的必 要性という要素をとってみると国家によって、

その発展の程度が違うという点があげられ、こ の原則の適用は水利用に関する正確な情報の収 集と評価にかかっている。ボイル(A1anBoyle)

が指摘するように衡平な利用原則が流域の「統 合管理」への橋渡しとして見るならば大いに評 価できるとしている。m

流域統合管理の考え方はメコン川委員会 (MekongCommission)をはじめ多くの水域に 具現化されている。'2)また、1972年の人間環境宣 言や1977年国連水会議のマルデルプラタ行動計 画は国家に対し、環境保護を含んだ対等な開発 に必要な場合に委員会の設立を要請している。'3)

「国際水路の非航行的利用の法に関する条約」の 8条及び24条においても統合委員会の設立を考 慮する規定がある。しかし、「委員会の設置を検 討することができる」(8条2)という表現にと

どまっている。

1911年にマドリッド宣言を採択した。この宣言 は、共通の河川流域を有する国家は相互に恒久 的な地形上の依存関係にあるとするものであ る。'5)国際水法の権利義務に関して国家の相互性 が最初に受け入れられた動きであり、流域国の 権利を認めたものである。この宣言の考え方を 発展させたものとして国際法協会によって1966 年に採択された国際流域における包括的なルー ルがある。国際河川水の利用に関する規則(以 下、ヘルシンキルール)である。その後、1982 年の国際河川流域水の汚染に関する規則(モン トリオールルール)および地下水に関するソウ ルルール'`)によって補完されている。ヘルシン キルールは国際流域の非航行利用に関するルー ルであり、地理、水文、気候、歴史、社会・経 済、技術的条件を基準として、「衡平かつ合理的 な配分」を強調したものである。では、ヘルシ ンキルールは国際水法の創成にどのような役割 を果たしているであろうか。

ヘルシンキルールは国際河川流域を「表流水 および地下水を含み、共通の到達点に流入する 水系の集水域の限界により決定される2カ国以 上の国家に広がる地理的範囲である」と定義す る(2条)。'7)この規定は概念を一つの河川から 流域水にまで拡大している。すなわち表層水、

地下水、河口水は全体としてつながっていて-

つであるという考え方に基づいていて、本流の みならず支流にも適用されるとする。この考え 方は下流国の開発にとっては有利な考え方であ り、前述のアスワンハイダム建設の事例はこの 考え方が当てはまる。

問題は上流国と下流国の関係である。たとえ ば、下流国のダム建設が上流の洪水の原因にな り、漁渡量の減少をもたらす場合があるからで ある。しかし、この概念は、多くの国の反対す るところとなる。この点もふまえ、次に国際法 協会の作業が大きな影響を与えた国際法委員会 の条約草案および国際水路の非航行的利用の法 に関する条約について検討する。

(4)流域共同体

流域共同体という考え方はさらに進んだ考え 方である。水源地と下流受益地の国家の自主的 な参加を通じた「流域共同体意識(パートナー シップ)」にもとづく水源地の総合的な整備であ り、流域内のより多くの国家が広く連檎・協力・

参加することが重要になる。このため、流域国 家が流域内の水源地という貴重な資源を共有し、

共同管理するという考え方にたって、それぞれ が役割分担をしていくことが必要である。流域 共同体の形成に際しては、流域の地理的な特性 や、歴史的な地域間の交流形態などに留意する ことが必要となる。'4)オーデル川判決に見られる 利益共同体の考え方をはじめとし、第3回世界 水フォーラムで採択された閣僚宣言もこの考え 方をとっていると理解できる。

Ⅲ国際法における動向 1.国際法協会

(lntemationalLawAssociation,ILA)

L'InstitutedeDroitlnternational(IDI)は

2.国際水路の非航行的利用の法に関する条約

(以下、国際水路条約)

1949年以来、国際河川の問題は国際法委員会

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の懸案となってきた。1970年の国連総会決議2669 (XXV)に従い、国際法委員会(International LawCommission,以下、ILC)は国際水路の非 航行的利用について議論を重ねてきた。'81そして 1997年4月に国際水路の非航行的利用の法に関 する条約草案(以下、条約草案)を採択し、同 年5月に国連総会は「国際水路の非航行的利用 の法に関する条約」を採択した。''1

へルシンキルールと条約草案の違いはヘルシ ンキルールが国際河川流域という概念を国際的 なレベルで支持している一方で、実際の国家実 行は自国領域内の水系の包括的な管理を行うた めの国家の請求を認めている点である。

条約草案の審議過程において下流域国は国際 河川流域(IntemationalRiverBasin)という概 念に賛同し、上流国はこれに反対した。釦)

河川の範囲は、その条約の目的に依拠する場 合が多いが、国際河川流域の概念が国際慣習法 といえるかどうかについては、まだ議論のある ところである。いくつかの国際組織が国際河川 流域という概念を取り入れている。たとえば、

EUの水枠組み指令では2条で「河川流域(river

basm)とは、連続した流水、河川、および単一

の河口、入り江または三角州をもつ海にそそぐ 湖から流れでたすべての表流水が貫流する領域 である」とする。また、「河11流水域(riverbasin district)とは河川流域管理のための1つの単位 として、・・・地下水および沿岸水域に付随す る1つまたは複数の隣接河川で樹成される陸地 および海洋をいう」と規定される。卯さらに2000

年のSouthemAiiPicanDevelopmentCommumty

(SADC)改定議定書は「水路とは自然の関連性 ゆえ、海、湖または帯水層といった全体として 1つの通常、共通の流失口に流入する表流水お よび地下水の系」と規定する。22)1999年のライン 川保謹条約では集水域(catchmentarea)とい う概念を用いている。また、スケルデ川(Scheldt river)ならびに、直接または間接的にスケルデ 川に流入する水路および運河を河川流域とし (riverbasin)、スケルデ川またはその支流に流れ 込む水城(drainagebasin)とを明確に分けた 1994年のスケルデ川に関する協定がある。麹)1995 年のメコン川流域の持続的開発に対する協力協

定はメコン川流域を「メコン川流域の水および 関連資源」と規定する。ただし、中国およびミ

ャンマーが当事国でないこともあり、すべての 水域には適用されない。”

一方、宣言としてECEでは1980年の「越境汚

染を含む水汚染の防止および管理に関する政策

宣言」や1984年の「水の合理的利用に関する政 策宣言」の中で国際河川流域概念を明示してい る。25)しかし、国際河川流域という考え方は地域 的条約や宣言の中に具現されてはいるが、未だ 多くの国によって受け入れられるまでに至って いない。このことが、ILC条約最終草案の結果 へとつながっていくのである。

ILCは当初、地形学に基づいた国際河川シス テムという概念を示したが、ヘルシンキルール の概念と相似しているという点から採用されず、

代わって最終的に登場したのが国際水路という 概念である。坊)条約草案2条では「その地形上の

関連性ゆえ-つの統一体を構成し、また、通常 共通の流出口に流入する表流水および地下水の 系」をいうと規定されている。また、国際水路 は「その一部が複数の異なる国家に所在する水

路」と規定され、国境を貫流する河川本流のみ ならず支流および国際水路とつながっている地

下水も含まれることになる。ただし、表流水と

つながっていない地下水である被圧地下水には

適用されない。しかし、被庄地下水を除外した

ことが本条約の弱点となった。

ここで国際水路条約について国際法委員会で の論議も加え検討する。国際水路条約は、前文、

37条および付属書で構成されている。

(1)前文

前文では「総会は国際法の漸進的発達および

法典化を奨励するために調査研究を行い、勧告

する」という国連憲章13条に言及している。ま た、国際的な水問題に対する認識として「増加 する需要と汚染から発生する問題」、「リオ宣言 とアジェンダ21の原則と勧告」にふれ、環境へ の配慮も加えている。途上国の主張する「開発 の権利」については直接明文化されていない。

さらに、「枠組み条約が国際水路の利用、開発、

保全、管理および保謹、ならびに現在および将

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来世代のための最適および持続可能な利用の促 進を確保するという確信」という目的にも言及 する。本条約は他の環境関連条約と同じように 枠組み条約である。リオ宣言およびアジェンダ 21については環境関連条約でたびたび引用され るが、いわゆるゾフトローとしての位置づけで しかなく、実質的な影響力はあっても、形式的 には法的拘束力を有していないと考えるのが妥 当である。いわゆる環境を重視する立場に立つ 研究者は、予防的アプローチの場合にもその例 が見られるが、ソフトローに重点を置き「環 境」という一つの目的達成のための根拠として とらえている。")しかし、法実証主義の立場に立 つならばこの点は否定されるといわなければな

らない。

適用する水路協定の交渉に参加し、その当事国 になり、また、関連する協議に参加する権限を 有する」と規定し、4条2では「国際水路の利 用が水路の一部にのみ、もしくは特定のプロジ ェクト、計画、または利用に適用される水路協 定の実施により著しく影響を受ける場合」、協定 に関する協議に参加する権限を有し、「適切な場 合、自国の利用が影響を受ける限り、かかる協 定の当事国になる目的で誠実に協定交渉を行う 権限を有する」と規定する。

現在、水利用に関して地域的および二カ国間 条約が多数存在する。3')このような状況の中で国 際水路の利用と管理に関して共通の原則を条約 の中で策定するのは、困難である。

条約3条2は既存の「協定とこの条約の基本 原則との調整を考慮することができる」と規定 し、必ずしも調整の義務を課してはいない。さ らに、基本原則については定義がない点など既 存の条約との関係について暖昧な部分を残した

ままである。

(2)概念

水路(watercourse)という概念について国際 法上、歴史的な論争があるが、本条約は「水路」、

「国際水路」、「水路国」にわけて定義をしている。

定義は重要な問題の一つであり、定義が暖昧で あると実際の水紛争に際して条約の適用が困難 になる。「水路」概念はヘルシンキルールの国際 河川流域と比較した場合、「水路」概念は流入し ない流域内の河川を除外しているので、実際は 条約の適用範囲が国際河川流域概念より狭まる ことになる。国際水路条約では「水路」とは「そ の地形上の関連性ゆえ一つの統一体を構成し、

また、通常共通の最終的な流出口に流入する表 流水および地下水の系をいう」と規定する。麹)一 方、ヘルシンキルールはすべての水系を含み、

共通の流出口に流入するすべての河川を対象と している。国際水路は国際河川よりは広い概念 であり、表流水と地下水はつながっているとい う事実が考慮されている。麹)ただし、表流水とつ ながっていない被圧地下水には適用されないが、

国際法委員会は準備草案に含まれる諸原則に従 う趣旨の「越境被圧地下水に関する決議」

(Reolutiononconfinedtransboundaryground‐

water)を採択している。釦)

(4)衡平な利用および重大な危害を与えない 義務

衡平な利用は国際水路条約の中心となる部 分である。「衡平な利用」は平等な利用とは異な る。衡平とは水路国の水需要および効率的に 水を利用する能力を考慮に入れた平等な配分を 意味する。型)上流国は下流国との関係でどのよう にして自国の国際水路の利用が衡平かつ合理 的であると判断するのかという問題が生じてく

る。国際水路条約の5条~7条は衡平な利用と 危害を与えない義務およびその関係を規定して いる。5条は衡平かつ合理的な利用と参加、6条 は衡平かつ合理的な利用に関連する要素、7条 は重大な危害を与えない義務について規定す る。たとえば、上流国がダム開発を計画した場 合に下流国が歴史的に潅概用水として水利用を 行ってきた場合に問題が生じる。この点は5条 と7条の関係で論議となった。国際法委員会の 第1次草案(1991年)では、「水路国は他の水路 国に対し、相当な危害(appreciablehaml)を引 き起こさないような方法で国際水路を利用しな ければならない」と規定され、麺)最終草案(1994 (3)既存の条約との関係

4条lで「いずれの水路国も国際水路全体に

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年)では、「水路国は重大な危害(significant

harm)を引き起こさないような方法で国際水路

を利用するために相当な注意(duediligence)

を払わなければならない」と規定する。鋼)`appre‐

ciable'と`signifYcant,の違いは微妙であるととも に「相当な注意」概念が取り込まれている。と ころが国際水路条約では相当な注意という文言 が削除され代わって「すべての適切な措置をと る」という表現に置き換えられた。鋤この点は、

実質的には変わりがないと思われるが、問題は 衡平な利用と重大な危害との優先関係であった。

水路国に重大な危害を与えない義務は国際慣 習法として確立している損害を与えない義務で あり、衡平な利用は水路国間での配分の問題で ある。これら2つの概念は相反する場合が多い。

すなわち、環境保全と天然資源に対する領域主 権との対立である。損害を与えない義務はトレ イルスメルター仲裁判決、人間環境宣言原則21 およびリオ宣言原則2に具現化されており、い わゆるゾフトローである。

衡平な利用と重大な危害を与えない義務との 関係では、ILCの審議過程で異なる立場があっ た。すなわち、いわゆる環境保護の立場に立つ 論者は危害に重点を置き、危害がなければ、衡 平な利用原則に従って水利用がなされるとし、

一方、開発推進の立場に立つ論者は水の利用が 合理的かつ衛平かの判断の一要因として危害を とらえている。McCaffreyは危害を与えない義 務は国家実行と一致していないとする。鋼)

衡平な利用原則は法的拘束力はないものの実 質的なルールとしてヘルシンキルールに明記さ れた。ヘルシンキルールは3条、4条および5条

1で合理的かつ衡平な配分はすべての関連要素 を餅酌して決定するとし、5条2でその関連要 素をあげている。ヘルシンキルールは衡平な利 用原則に従い国家は他の流域国の領域において

「重大な損害」をもたらさないように水汚染を防 除する措置をとらなければならないと規定し、

環境保全の規定を独立させている。また、優先 的利用を明確に禁止している。条約草案ではヘ ルシンキルールとは若干異なったアプローチを している。上流国を中心とする国は最終条約草 案を支持したが、下流国や発展途上国は危害を

与えない義務に優先度をおくことを主張した。

7条2は自国の水路利用が他の水路国に関し て重大な危害を与える場合、5条、6条の規定に 妥当な考慮を払い、危害を排除、軽減するため にすべての適切な措置をとると規定し、5条、6 条に定められる衡平な利用に優先度をおいてい る。また、本原則は水質の汚染に適用されるも のであって、今日の発展途上国における水量の 不足に関しては適用されない。このことからも 現実に生じている水紛争に対し、条約が実効的 でないことがうかがえる。結局、5条では「水 路の適切な保議と両立させて」という文言と「国 際水路の最適かつ持続可能な利用を達成」する という文言を並べることにより「持続可能な」

という文言の不明確性を主張する国家の不満を 解消する形となった。国際水路条約では、国家 実行と相まって、371最終的に衡平な利用原則に優 先度をおくことになった。

10条はたとえば、ダム建設を予定している国 家と潅慨用水を利用する国家間で紛争が生じた 場合、単に、7条の危害を与えない義務の適用が なされるのではなく、5条ないし7条を参照す

るという形で解決されることになる。McCaffiFey

は国家は発展のために水路国から水を享受する 社会的権利を有するとする。銘)この問題は、後述 のナジュマロシュガブチコポ事件に現れる。ま た、10条2は国際水路の利用の間に抵触がある 場合、とくに死活的な人間のニーズというとい

う要件に特別な考慮を払い解決されると規定す

るが、「死活的な人間のニーズ」という文言は人 権としての水に対する権利概念に近いものがあ り、現在の発展途上国における水不足の深刻さ を考えると将来的には人権として水に対する権 利の確立が必要となってこよう。釣)

(5)国際水路条約の評価

第一に国際水路条約1条2は適用範囲を非航 行利用に限定している点がある。ヘルシンキル ールにおいては航行利用も含まれていた。水資 源利用の衡平な配分という点からも十分ではな い。第二に定義の不明確さが問題となった。た とえば5条の「衡平で合理的な方法」の定義が ない。その結果、その内容はILCのコメンタリ

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意および「下流の利益」に対する補恢のバラン スをとることによって越境利用の統合管理体制 の構築を規定する。カナダは自国領域に三つの ダムおよび貯水池を建設し、アメリカに電力の 供給および洪水防止対策という形で利益を提供 した。反対にアメリカはカナダに対し、洪水対 策への対価とプロジェクトから生じる追加水力 の50%を提供した。⑤また、1972年VUoksi川の 水力発電に関する旧ソ連とフィンランド間の協 定は下流国フィンランドにある発電所の操業に 必要な水位を保つために締約国は河川の水流を 管理することに同意している。同時にフィンラ ンドは水流の損失およびソビエト側の発電所建 設から生じる損失に関して補倣を毎年受けるこ

とに合意した。46)

このように多くの条約の中で衡平な利用の考 え方が取り入れられていることは、ただちに国 際慣習法へとはつながらないが、衡平な利用原 則を単なる指針としてはとらえられない、むし ろ、条約を通じて現実として実効的であるとと らえるのが適切である。さらに、越境水路国は 水路利用に関して条約の中で衡平な配分を行っ ているが、何が衡平な利用かを考える場合に第 三者機関による判断が必要になってくる。また、

その判断のために関係国による情報の交換が必 要である。

次に衡平な利用原則に関連するラヌー湖事件 とナジュマロス・ガプチコポ事件という二つの 判例をとりあげ、判決によってどのように衡平 な利用原則が扱われているのかを検討する。

一によって理解をすることになる。たとえば、

21条の義務は「当該条項は水路国に相当な注意 の基準を課すものである」としている。401全体と して暖昧さを残したままの条約という評価を受 けることになった。い)第三に条約に示された原則 が国際頒習法とはいえない点である。このこと は第六委員会のワーキンググループでの意見の 不一致が如実に表している。42)さらに、それは投 票行動に表れている。投票結果は103(賛成):

3(反対):27(棄権)であるが、一見、多くの 国が賛成に回ったように見られるが、ブルンジ、

中国、トルコは反対、アルゼンチン、エジプト、

インド、イスラエル、パキスタン、ロシア、ス ペインは棄権というように国際水紛争をかかえ ている地域の国家が反対または棄権の投票行動 を行っている。

以上のように国際水路条約に対する評価を低 くとらえることもできるが、国際水路条約の成 立がどの程度慣習国際法の成立に影響を与えて いるのであろうか。

国際水路条約採択後、衡平な利用原則を取り 入れた多くの条約が誕生する。1995年のSADC 議定書および2000年の改定議定瞥である。SADC 議定醤では「配分水路システム資源の利用およ び管理に関する一般または慣習国際法の既存ル ールを尊重かつ適用するため、特にこれらのシ ステムおよび関連資源の衡平な利用における利

益共同体(communityofmter巴sts)原則を尊重

かつ遵守するため」と規定され、また、「衡平な 方法で配分水路を利用する」義務が含まれてい る。1992年の「越境水路および国際湖沼の保護 および利用に関する条約」(以下ヘルシンキ条約)

の2条2においても「合理的かつ衡平に利用す ること」という規定が見られる。③1995年のメコ ン川協定では「締約国はメコン川のシステムを すべての関連する要因および環境に従い合理的 かつ衡平な方法で利用することに同意した」と 規定する。1966年のコンスタンツ湖取水規制協 定は直接、衡平な利用原則の文言はないが、3条 で「取水に伴う利益は他の利益との関係で十分 に評価されなければならない」と規定する。")下 流国の利益に配慮した条約として、1961年のカ ナダ・アメリカ間コロンビア川条約は衡平と同

Ⅳ判例

1.ラヌー湖事件

【事案】

フランスの電力会社がフランスの領域内にあ ったラヌー湖の水をアリエージュ川に転流して 発電目的のために利用しようとした。下流国で あるスペインはラヌー湖の水を農業用潅概水な どに利用していた。スペインは、転流によって ラヌー湖流域の自然が変更されるので、1866年 のバイヨンヌ条約および追加議定醤によって一 国の計画が他国に影響を与える場合またはその

(9)

49

大な影響の危険性などの緊急事態を理由に環境 影響評価が完了するまで計画を一時停止するこ とを求めた。それに対し、スロバキアは1977年 条約を一方的に変更し、1991年にドナウ川を分 流して人工運河とダム貯水湖を建設する「バリ

アントC計画」を実施した。それに対し、ハン ガリーは1992年に緊急事態の存在、環境保護に 関する国際法の新たな規範の発展などを理由に 1977年条約の終了宣言を行った。その後「バリ アントC計画」の完成によってハンガリーに流 量の変化などの被害を及ぼした。スロバキア側 はハンガリーの条約終了宣言によって経済的損 失を被ったとした。

【判決要旨】

1997年9月25日判決48)

条約の運用停止の理由である緊急事態の存在 は国際慣習法上の規則であることを認めるとと もに緊急事態が違法性を阻却するために国際法 委員会の国家責任条文草案(1980年暫定草案)

33条の掲げる5つの要件を援用した。すなわち、

①行為が国家の不可欠な利益に起因しているこ と、②利益が重大かつ急迫した危険によって脅 かされていること、③当該行為がその利益を保 護するための唯一の手段であったこと、④相手 国の不可欠な利益を重大に侵害するものではな いこと、⑤当該国家が緊急事態の発生に寄与し ていなかったことである。環境上の緊急事態は これらの要件を充足していないとしてハンガリ ーの1977年条約の不履行を緊急事態を理由とし て正当化することはできないとした。

環境保護に関する国際法の新たな規範の発展 については、環境保護の分野で新しい規範や基 準が発展してきたことを認め、両国はそのよう な規範を合意の上で1977年条約を適用すること によって組み込むことが可能であったはずであ り、条約の終了原因とは認められないとした。

持続可能な開発に関しては、単に経済発展と環 境保護とを調和させる必要性がこの概念の中に 適切に表現されているとしたにすぎない。また、

衡平な利用原則に関しては以下のような判断を 行っている。

第一に、1929年常設国際司法裁判所のオーデ ル川判決イ,)を引用し、航行可能な河川における おそれのある場合は事前通報が必要であると主

張した。1953年にフランスはスペインに同計画 を通報し、外交交渉が開始されたが、交渉は成 立しなかった。スペインは事前の同意なしには 計画は実施できないとし、フランスとスペイン の間で紛争解決のために仲裁裁判条約による仲 裁裁判所が設置された。

【判決要旨】

1957年11月16日仲裁裁判所判決、

フランスの転流はアリエージュ川に環流する ことから追加議定書に違反しない。フランスの 事業による環流がスペインの利益を害するよう な河川の汚染などをもたらし、スペインの権利 を侵害すると主張することができたとし、十分 な証拠によりスペインがフランスの違法性を問

うことができる可能性を示唆した。

国際水路の水資源開発における事前同意の原 則は国際慣習、一般条約(1923年水利用に関す るジュネーブ条約)および法の一般原則には存 在せずバイヨンヌ条約および追加議定書に根拠 をおく。追加議定書11条の通報義務は被影響国 の事前の同意を得る義務は含まないとした。

本判決では直接衡平な利用原則には言及して いないが、通報・協議義務は国際慣習法として 確立していると判断している点は国際水路条約

に大ぎな影響を及ぼしたと考えられる。

2.ナジュマロス・ガブチコボ事件

本判決は「国際水路の非航行的利用の法に関 する条約」が署名のために開放された時期とも

重なりICJ判決の国際法に与える影響が注目さ

れた。

【事案】

ドナウ川の開発をめぐるスロバキアとハンガ リー間の紛争である。スロバキアとハンガリー は1977年のドナウ川の開発と河川管理に関する 条約で、上流国であるスロバキアの領域内にあ るガブチコヴォと下流国であるハンガリーの領 域内にあるナジマロシュにそれぞれ、ダム、発 電所、航行施設を「単一かつ不可分の計画」と して建設することに合意した。スロバキア側の 工事は1989年までに順調に進んだが、ハンガリ

ーは計画によってもたらされる環境に対する童

(10)

50

"Communityofinterests'’の考え方が共通の法 的権利の基盤になっている点を非航行利用にま で拡大している。すなわち「国際法における近 代の発達は、国際水路の非航行的利用の法に関 する条約によって明示されているように国際水 路の非航行利用に対する当該原則を強化してい

る」とし、利益共同体“communityofinterCstも',

の概念を認めた。この概念によって国際水路に おいてすべての国家が利益を有することになる。

そして当該原則を本ケースに当てはめ、「ドナウ 川の天然資源の衡平かつ合理的な配分の権利を ハンガリーから奪うことになる」と判示した(バ

ラ85)。McCffreyは、この点が慣習国際法の規範

として衡平な利用原則の根拠となっているとし ている。so)

第二に「国際水路資源の衡平かつ合理的な配 分に対する基本権および共有水資源の共通利用」

概念に言及するとともに(バラ78)、国際水路条 約5条2に規定される共有水資源の共通利用に

も言及している(バラ147)。

以上の二つの判例を通じて、私見として、判 決によって衡平な利用原則という概念が認めら れることがただちに国際慣習法の法規範性を認 めたことにつながるとまでは言い切れないと考 える。ただし、衡平な利用原則が今後の河川利 用に関する重要な原則となっていくことは確か である。判決がバラ85で1997年5月21日の国際 水路条約の「採択」自体に意義を見いだしてい る点からも、条約が発効しているかどうかとい う点は問題ではなく、採択自体が今後の河川利 用に影響を及ぼしていくという点からも今後の 衡平な利用原則の発展が考えられる。

二つの特色を有している。すなわち、第一の特 色は、安全な飲料水、基本的な衛生施設がない 人々の割合を2000年のミレニアム開発目標と2002 年の持続可能な開発に関する世界首脳会議

(WSSD)での合意に基づいて、2015年までに半

減させる取組を示したことである。閣僚宣言パ ラグラフ16で、これらの目標を改めて確認し、

着実に実施していくことを明示している。第二 の特色はパラグラフ3で、「水管理においては…

家庭および近隣コミュニティー(neighborhood

community)に根ざしたアプローチに一層強い 焦点を当てて、良いガバナンスを確保すべきで

ある」という指摘である。51)

人口増加による水不足の解決には第一に適切 な河川管理システムが必要であるが、歴史的要 素、政治的要素、社会経済的要素などから鑑み ると適切な河川管理システムの構築はきわめて 難しい国際社会の状況である。関係各国が近隣 コミュニティーという考え方に根ざして衡平か つ合理的な配分原則を取り入れることが必要で ある。そのためには当該原則が国際慣習法であ るという認識が各国に必要である。第二に明確 で柔軟な水の配分と質の基準作りが必要である。

第三に第三者機関による具体的な水紛争解決の メカニズムを構築することが必要である。

地域的な条約では、すでに述べたように様々 な水配分の考え方が存在するが、国際社会とし ての統一的な考え方がない。

国際法委員会では、地下水を含む天然共有資 源(SharedNaturalResourCes)の議論が始まっ ている。また、現在条約が発効していない状況 や国際水路条約の審議過程での問題点を考える ならば、表流水のみならず地下水に関する国際 的なルールをヘルシンキルールに立ち戻って再 構築することが必要ではないだろうか。

V結論

1992年の国連環境開発会議で採択されたアジ ェンダ21では、第18章が水問題に当てられてい る。水問題の重要性の高まりを受けて世界水会 議(WorldWaterCouncil)が発足し、さらに '997年に第一回世界水フォーラム(マラケシュ)、

2000年に第二回世界水フォーラム(ハーグ)、第 3回世界水フォーラム(日本)が開催された。

第3回水フォーラムで採択された閣僚宣言は

1)“TheWorld'slntemationalFreshwaterAgr℃e-

ments',,.〃rmf"www.「、"sbom"dmIwaZe西.oねt・

BdzJ/p脚b"cajio"s/mtJs/2004年1月20日 2)国際社会における水環境紛争の事例はほ

かにも多くあるが、他の事例については

‘ITransboundaryFreshwaterDisputeRe-soluP

(11)

51

15)24Annuai妃dermstitutdeDroitlntePnational 365(1911)

16)SeoulRulesontheLawoflnternational GroundwaterResources,Reportofthesixtysec ondconfermce,seoull986

17)GARes、51/229,annex(May211997),361LM 700(1997)、「地球環境条約集(第4版)」2003 年419頁。

18)UNGAResolution2669(XXV),paral(Dec、8,

1970)

19)UNDoc.A/51/869,Apr、11,1997,36LLM、

700(1997)、前掲「地球環境条約集」419頁 20)UNGAOR46thSess.,Supp・No.10,atl53UN

DocA/46/10(1991)

21)Directive2000/60/ECoftheEuropean

ParliamentandoftheCouncilof230ctober 2000ノmpJ//e”OPa.“.i"r/comm/e"viroル me"'/wqrer/MJrer介α腕ewOWi"dexe"・ノimM 2004年1月20日

22)RevisedProtoco1onSharedWatercoursesys‐

temsintheSADCRegionハメ、:"www、iwノ"、019/

DocJmze"fs/77m"ey2004年1月20日

23)AgreementonthePmtectionoftheRiverScheldt ハノUPWwWW.。z"zdbe.αC・"Aノノヒ3W/iWノrjソDocwme"LF/

77℃α"es/2004年1月20日

24)AgreementontheCooperationforthe SustainableDevelopmentoftheMekongRiver Basin,34ILM864,ハjjPf//www・rAewaremqge・

CO、/meA、8.hm02004年1月20日

25)DecisionB(XXXVL35thSessionoftheECE

1980

26)39UNGAORSupp.(No.10)

27)予防的アプローチおよび予防原則のとらえ方は 学者の中でも多種多様である。それは「アプロ ーチ」、「原則」という文言にも現れている。EU では2000年に「予防原則に関するコミュニケー ション」を採択し、予防原則を環境分野だけで なく他の分野にまで広く適用する。Commmn‐

cationonthePrecautionaryPrinciple,COM

(2000)ノmpf//“rqpa.“.i"'/e”-ノα/e"/CO、/

C"c/2000/com2000000に"OIP”2004年1月

20日

28)この定義に賛同する文献としてStephanC McCaffiPey&MpaziSinjela,“Thel997United

NationsConventiononlnternationalWater‐

courses''’92A、.』、1,t'lL97(1998)がある。

29)StephanCMcCaffrey(1991)“SeventhrCport tion''2000を参照。

AlanNicol,“TheNile:MovingBeyond Cooperationo,ノmPJ//webworノ。、Lu"escQorg/

water/wMZp/pccp/cd/cqJesmdjes・hjmノ2004 年1月20日

MichaelT・K1are,“ResourceWars''2001参 照。

DanteACaponem“Nationalandlntemational WaterLawandAdministmtion'’2003p、28

ローマ法大全(CorpuslurisCivilis,CLC)

Codex(勅法蘂纂)3.34.4,HialElver,

"PeacefUlUsesoflnternationalRivers,,p、29 ローマ法大全のラテン語テキストはハ、p://www・

zmor.edw/lawi〃sjder/ノibrqry/cノロssjcs/,

A"p://www、HP、/Lgre"06ノ&ノァノHaiZj/CO"「s/

A"、。`】Mi"〃から入手可能である。

Ibid・CLC、Codex3.34.7

C・LCDigesta(学説薬纂)43.12.1

1bid43.20.3.1

前掲HialElver,Pl31

PatriciaBimie&A1anBoyle,“International LawandEnvironment,SecondEdition'’2002, p298

メコン川委員会(MekongRiverCommission)は 水利用に関し関係国の協力のもとで大きな成果 を上げ2002年4月に中国はメコン川委員会と水 流および水位に関する情報を提供する協定を締 結した。‘PatriciaWouters,“Universaland RegionalApproaChestoResolvinglntemational WaterDispute:WhatLessonsLeamedfrom StatePmctice?'’2002p、137.

そのほかの例として、LakeChadBasin Commission,theRiverNigerCommission,the PermanentJointTechnicalCommissionfbrNUe Waters,theZambezilntergovern-mental MonitoringandCo-ordinatingCommittee,the lnterもgovemmentalCo-ordinatingCommitteee oftheRiverPlateBasin,Amazonian CooperationCouncil,Thel948Danube Commission,theUS-Canadianlnternational JointComlTnssionなどがある。

ReportoftheUNWaterConference,Mardel Plata,1977

水源地対策懇談会「21世紀の水源地・ビジョン 水源地の総合的な整備のあり方に関する提言」

平成11年9月参照。国際社会の状況と異なるが、

国内的にはこの考え方が主流になりつつある。

3)

111 456 1J1J1

789Ⅲu

12)

13)

14)

(12)

52

ⅣG・hmz2004年1月20日

47)LakeLanouxCaseAwardofArbitmlTIibunal24 nR,p、101

48)Gabcikovo-NagymarosProject(Hungary/

S1ovakia),JudgemenLICJReports,1997,p、7., hrjpf//www・ic:ノーc".o増/iQ/www/idecisio"s、Arm 2004年1月20日

ガプチコポ・ナジマロシュ事件については村瀬 信也「ガブチコヴォ・ナジュマロシュ計画

(G/N計画)事件」国際法判例百選別冊ジュ リストNo.1562001年4月、河野真理子「ガプ チコヴォ・ナジュマロシュ計画事件判決の国際 法における意義」世界法年報19号(2000年)な ど多くの内外の文献があるが、StephanM・

Schwebel,“TheJudgementofThelntemati⑨ nalCourtofJusticemtheCaseConcemingthe Gabcikovo-NagymamsProject",“Resolutionof lnteFnationalWaterDispute'’2003IquwerLaw Intemational,pp247-258は国際司法裁判所で 事件を担当した裁判官による論文である。

49)TerritorialJurisdictionofthelnternational CommissionoftheRiverOder,Judgement No、16,1929,P、CLJ.,SeriesA,No.23,p、27 50)StephanCMcCaffrey,“TheContributionof

theUNConventiononthelawofthenon-nav1‐

gationalusesofmtemationalwatercourse,',InL J、GlobalEnvimnmentalIssues,VOL1,Nos、3/4,

2001また、StephanCMcCaffrey,“TheLaw ofIntemationalWatercourses:NonPnavigational Uses”2001Chapter6、では楓習法ルール形 成のきっかけとなる点を指摘している。

51)閣僚宣言は、国土交通省ホームページによる。

Arlp://www.、l"・gojp/rochimjz“ノセノ82"/mizse〃

wW3/2004年1月20日 onthelawofthenorlnavigationalusesofinterb

nationalwatercourse''’2YB.’nt.L、Comm.,

V01.2,pL1,pp,45-69p、53,paras22-23

ReportoftheIntemationalLawCommissionon theworkofitsfOrtysixthsession,UNGAOR,

49thSess.,Supp・No.10p,326,UNDoc.A/49/10

(1994)以下、ILCReport

TransboundalyFiPeshwaterDisputeDataAbase,

htlp://www.〃α"360脚"darywaters,or81.ed皿/

2004年1月20日

ILCReport,pp221-222

Y.B・InLLCommo1991VO1.2,ptb2,p67 ILCReport,p236

StephanCMcCaffrey,“Anasseseementofthe wolkofthemtemationallawcommission'',NaL ResourcesJ.V01.36(1996),pP309-310では相 当な注意が黙示的に7条に規定されているとす る。

Ibid.PP、309-310,E312

melLC'scommentalytodaraftarticle5,1994 ILCReportlref2P218

StephanC・McCaffrey,“Ahumanrightto water:domesticandmtemationalimpUcati0,s'',

Geo、IntEnvtl・LRev.,VOL3,pp・l7-24 1bid・pPl-24

A/C、6/51/NUW/WG/L4.A。d・LApr、3,1997 この点に関しては多くの学者たとえば前掲Hilal E1vero`PeacefhllUsesoflntemationalRivers”

2002pp218-220も指摘している。

UNDoc.A/C、6/51/sr、62/add.L 前掲「地球環境条約集」424頁

AgrCementRegulatingtheWithdrawalofWater lromLakeConstanceh〃:"DCM."αcsaolg/9m〃

reSeq死ハノワビノhi/m779DDdocs/13ギE1VGhmu2004 年1月20日

TreatybetweenCanadaandtheUnitedStatesof Americaldatingtocooperativedevelopmentof thewaterrCsou、esoftheColumbiaRiverbasin hr(p://www・ノex"、.”IC"かeαノ.cdJ/cα“/e"/α8.ノ,

“、02.elMl”ノ2004年1月20日

AgreementbetweentheGovernmentofthe RepublicofFinlandandtheGovemmentofthe UnionofSovietSocialistRepublicsconcemmg thepmductionofelectricpowerinthepartof theVuoksiriverboundedbytheImatraand SvetogorskhydroelectricstationノmPf//ocjd.

“me.o咽/9m"「“eaJ℃h/Citメ(オノノoTFDDdbcs/ノイgE 30)

31)

32)

33)

34)

35)

36)

37)

38)

39)

40)

41)

11j 蛇偲“

45)

46)

参照

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