九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
バイオ炭の施用が土壌の理化学性、養分吸収、水利 用効率と作物生産に及ぼす影響
アナンダ, ミシュラ
https://doi.org/10.15017/4060225
出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
氏 名 アナンダ ミシュラ
論 文 名 Effects of biochar on physico-chemical properties of soil, nutrient uptakes, water use efficiency, and crop production
(バイオ炭の施用が土壌の理化学性、養分吸収、水利用効率と作物生産に及ぼ す影響)
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 凌 祥之 副 査 九州大学 教授 平舘俊太郎 副 査 九州大学 准教授 山川武夫
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
バイオ炭は軽量、多孔質で難分解の特徴を持ち、農地への施用によって炭素貯留および気候変動 緩和の可能性が期待されている。バイオ炭の施用は炭素の貯留だけでなく、農業への効用も多数報 告されているが、これらの効果は、施用する土壌、作物種や施用する炭化物種によっても異なるた めに、知見の蓄積や機構の解明が必要である。本研究は市販バイオ炭を用いて、農地施用の効果を ポット試験で解明し、機構の推定を行ったものである。
まず、もみ殻ともみ殻炭を施用した水田土壌において、イネとコマツナの栽培試験を行なった。
これはもみ殻炭の施用効果について、水田から畑地への転換利用を想定したものであり、もみ殻の 施用と比較して、継続的な効果を検証している。その結果、もみ殻炭の施用によって土壌の仮比重 は減少し、土壌 pH、有機物含量および間隙率は増加している。またコマツナの乾燥重量は、もみ 殻炭重量比2 %および4 %施用区で、無施用区に比べて有意に大きくなった。コメの単収はもみ殻 炭重量比2 %施用区でのみ、無施用区に比べて有意な増加が確認された。以上の結果から、もみ殻 炭の施用には最適施用量が存在する場合があることを示し、これらはリン酸、カリウムの吸収量と 吸収効率の向上から説明できることを示している。
次に砂質ローム土壌を用い、ダイズに竹炭を施用し、節水灌漑と竹炭施用の効果を調べている。
その結果、竹炭を重量比で 3 %施用することにより、土壌の仮比重が減少し、土壌 pH、間隙率お よび有効水分量は増加し、またダイズの地上部バイオマス量は、各灌漑区において無施用区に比べ て有意に大きかった。重量比3 %の竹炭施用区では、通常灌漑区で地上部バイオマス量が最大とな り、これは土壌有効水分量の増加に伴うリン酸とカリウムの吸収量増加によって説明された。特に 竹炭に保持されているカリウムの溶出および保水量増加による利用率の向上が貢献している。しか し灌漑水量を少なくした節水灌漑試験区では、地上部バイオマス量について増加は見られたものの、
通常灌漑区に比べれば顕著な効果ではなかった。節水灌漑区でも竹炭の施用効果は、リン酸、カリ ウムの吸収量の向上で確認している。
以上要するに、本論文はバイオ炭を対象に、施用効果を土壌、水や養分の吸収および作物生産や 単収について定量化し、それらの機構の推定を行ったものであり、灌漑利水学の発展に寄与する価 値ある業績と認める。
よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。