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圃場排水にともなう窒素流出に関する数理的研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

圃場排水にともなう窒素流出に関する数理的研究

白谷, 栄作

https://doi.org/10.11501/3106967

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(3)

圃場排水にともなう窒素流出に関する数理的研究

白 谷 栄 作

1 995

(4)

はしがき

本論文は, 農地排水にともなう窒素流出の削減を農業 ・ 農村地域におけ る水環境保全のための最も重要な研究問題のーっと捉え, その定量的な把

握手法の開発を行い, 窒素流出の削減に関するいくつかの方策を提示する ものである.

かつて農業 農村地帯は農家, 農地と水が一体となって農村環境を形成 し, その空間の多様性が生活にうるおいをもたらしていた. しかし, 農業 の近代化とともに農地と農家の機能は切り離され, それぞれに目的を持つ 空間となるに至り, 空間の多様性としての機能は急速に低下したように思 う. 多様性は農業 農村地域の安定のため重要であり, それが機能するた めには多様な空間が生活のなかで有機的に結合することが必要である. 水 域は機能的には農業生産空間と生活空間の中間に位置し, 両者の関わりを 担う空間である.

研究のフィールドとした有明海沿岸低平地帯の水環境保全のためには解 決すべき多くの課題がある. それは, この地帯の主な水域がクリークであ り, その特殊な水利用形態と水理環境のためである. 有明海は最大6mにも 及ぶ潮汐によって発達する干潟を利用し, 干拓によって低平な陸地を拡大 していった. その過程で水不足は慢性的なものとなり, クリーク農業によ る用水の反復利用とアオ取水による水源確保という特徴的水利システムが 構築されていった. クリークは用水の反復利用のため大きな貯留機能を持 ち, これは有明海の大きな潮汐による排水困難に対しでも地区内排水の一 時貯留(バッファ)として機能する. そして, -ß_外潮位が下がり排水可能と なると排水路として機能する. このため, クリーク地帯の水循環とクリー ク内の水理は複雑で, 水質環境を把握すること自体が困難な水域となって いる.

そこで, 本論文では農業 ・ 農村地帯の水質環境形成に大きな影響を与え る農地排水にともなう負荷流出を研究の中心とし, クリーク水質環境保全 を考えるための一つの指針を与えようとするものである.

(5)

目 次

はしがき

第I章 緒 論 1 第1節 農業 農村地域の水質環境保全に関する既往の研究 . 1

1.1 農地からの負荷流出 1)水田からの負荷流出 2)畑地からの負荷流出

1.2 農業 農村地域の水質環境の評価 1.3 水域環境の水質評価

第2節 水質環境のモデル解析 2.1 水質解析モデルの分類

2.2 物質循環を基礎とした水質解析モデル 1)河川の水質解析モデル

2)湖沼の水質解析モデル 2.3 非物理的モデル

第3節 本研究における課題と研究の構成

3.1 沿岸低平農業地帯における農業土木的課題 1)広域水利システムの整備

2)水源確保 3)排水促進

4)農村の水質環境の保全 5)地盤沈下の防止

3.2 研究フィールド 1)水利事ド

2)気象的特徴 3)水質環境

第4節 本論文の視点と構成

1 3 0 5 8 0 0 1 2 4 8 9 9 9 9 0 0 1 2 2 8 1 5 I 1 1 2 2 2

2

2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 4 4

(6)

第E章 沿岸低平農地の裏作困場からの負荷流出機構 48 第1節 序 論 48 第2節 調査の対象とした圃場と調査方法 49 2.1 調査固場の土壌物理特性 49 2.2 負荷流出の調査方法 51

1)採水装置の開発 51

2)機器の設置と水質分析方法 52 第3節 麦作圃場からの流出負荷調査結果および考察 54 3.1 降雨量と排水量 54 3.2 降雨負荷 54 3.3 窒素, リンの流出負荷 57 1)一連続排水内の各成分の濃度変化 57 2)暗渠排水における各成分の濃度変化と流出特性 59 3)地表排水における各成分の濃度変化と流出特性 65 4)園場の窒素収支 66 第4節 結 言 67

第皿章 圃場の窒素流出評価モデル 68

第1節 序 日命 68

第2節 モデル構築 69

2.1 土壌中の窒素循環の概念構成 69

2.2 反応速度式 71

1)作物吸収速度 71

2)窒素溶脱速度 72

3)その他の反応 73

4)全体方程式 75

第3節 数値計算の条件 76

3.1 初期条件 76

3.2 パラメータの設定の考え方 77

1)作物吸収 77

(7)

2)土壌窒素の無機化速度定数 3)窒素の溶脱に関する定数 4)その他の反応速度定数 5)温度に関する係数 3.3 外部条件

第4節 モデル解析

8 9 9 1 2 3 7 7 7 8 8

8

4.1 パラメータの同定 • • • • • 83

1)遺伝的アルゴリズム(GA)によるパラメータの同定 . • • • • 83

2)モデルの検証 3)モデル考察 第5節 結 言

ゲJ ヴ/

ハU 8 8 9

第W章 圃場の窒素流出の簡略モデル 第1節 序 論

第2節 簡略化手順 2.1 感度解析

2.2 簡略化モデルの構築

1)地力窒素循環系概念の導入 2)仮定の検証

2.3 モデルの定式化 1)物質収支7

2)各反応式

第3節 シミュレーション 3.1 パラメータの同定 3.2 モデルの検証

第4節 一般的圃場条件への適用の可能性 第5節 結 壬

92 92 93 93 . . .102 . .102 . .104 . .105 . . . .105 . . .106 . .107 . .107 . .109 . . .110 . .110

第V章 圃場からの窒素流出の制御 第1節 序 論

. . . . .112 . .112

(8)

第2節 圃場排水モデル 2.1 基本的考え方

2.2 圃場排水の概念とモデル化の方法 2.3 圃場排水のタンクモデル

1)タンクモデルの構造

2)水移動の定式化

3)圃士嘉羽F71<のシミュレーション 第3節 窒素流出のモデル解析

3.1 モデルケースの設定 3.2 園場排水量と窒素流出

1)圃場の作付履歴による園場排水特性 2)排水特性の違いによる窒素流出 3.3 施肥方法と窒素流出

1)分施

2)硝化抑制剤入り肥料 第4節 結 言

第VI章 総 括

謝 辞

参考文献

英語要約(Summary)

. .112 . .112 . . .113 . .116 . .116 . .117 . .119 . .121 . . . . .121 . . .124 .124 . .127 . . . . .130 . . . . .130 . . .132 . . . . .135

. .137

. .143

. .144

. .157

(9)

ーーーーー

第I章 緒 論

第1節 農業・農村地域の水質環境保全に関する既往の研究

1. 1

農地からの負荷流出

農地からの負荷流出機構の研究は, 園内では当初, 土壌肥料の農作物への肥 効の観点から始められた(例えば, 岩田(1928), 金井ら(1931))・ しかしながら,

1970年代から水域の富栄養化による有機性汚濁の進行にともなう自然環境,

生活環境の悪化が問題になるにつれて, 富栄養化の原因物質である窒素, リン の発生源の一つである 農地についても, これら栄養塩の負荷流出に関する調 査 ・研究が盛んに行われるようになった.

農地から流出する窒素, リンが流域の水質環境に与えるインパクトが問題と されたのは1969年から実施された琵琶湖の富栄養化に関する 研究が大きなき

っかけとなった. 土木学会(1970)はこの中で, 水田, 畑に 施用した肥料の流亡 による窒素, リンは琵琶湖の栄養塩のうちで大きなウェイトを占めていること は疑いもないとし, 施肥量に対する窒素, リンの流出率をそれぞれ30%, 5%

と仮定している. また, i中野(1976)は, 肥料流出率は水田, 畑ともに窒素が3 0%, リンは水田で4%, 畑で3%程度が妥当としており, 浮田ら(1985a)は, 水 稲についてそれぞれ20%, 3%, その他の作目をそれぞれ20---30%, 1�2%と

して農地の発生負荷の積算を行っている. これらはいずれも農地の発生負荷原 単位を係数法* によって設定する場合の根拠となるものであるが, 窒素, リン の流出は施肥条件, 土壌条件, 気象条件, 水管理条件などによって大きく変動 し, また係数法の考え方は負荷流出の時間的変動を評価する ことが困難である ため, 水域の水質管理に際しては負荷流出のメカニズムに基づいた, より理論 的評価が求められる.

家施肥量に対する困場からの溶脱率を予め設定し, 対象とする作物の施肥量にこの値を乗じて作期内の平均的発生 負荷量を推定する方法.

(10)

-ーー-ーーー

米国(1980b)は, 肥料成分の流出解析を行う場合, 負荷発生のメカニズムを 質的に1次負荷と2次負荷に, また流出ノぞターンから正常負荷と加速負荷とに 区別して評価することがその実態、を解明するうえで必要であるとしている こ のような観点から, 農地から流出する窒素, リンのなかで肥料に由来する流出 負荷は, 質的にみて施肥直後に水界へ流出する部分(1次負荷)と, 腐生連鎖,

土壌による固定やその他の反応によって, 土壌中で一度有機化あるいは吸収 ・ 固定され不溶性成分に転化した後, 長期的にみると年月の経過にともなって再 び無機化あるいは可溶性に転じて水界へ流出する部分(2次負荷)とに大別でき る. したがって, 2次負荷の評価のためには土壌中での窒素, リンの形態変化 を考慮する必要がある.

農地内の施肥窒素は, 化学肥料として施用されるものと堆肥などのように有 機物を主体として施用されるものがある. 図- 1 -1に農地内の窒素の形態、変 化の概念図を示す.

N20

図- 1 -1 圃場内の窒素形態の変化

堆肥や植物などの有機態窒素化合物はタンパク質, アラントインなどである が, タンパク質は土壌中では従属栄養細菌によるタンパク分解作用によってア

ミノ酸に分解され, 次に脱アミノ作用によってアンモニアが生成する. 尿酸の

(11)

土壌中での分解はアンモニアと炭酸ガスを生成する. 生成されたアンモニアは,

更に好気条件下でアンモニア酸化菌および亜硝酸酸化菌 によって亜硝酸態窒素,

硝酸態、窒素へと酸化される. また, 強光下では金属酸化物を触媒とした光硝化 によって硝化作用が行われることがある.

化学肥料として施用される窒素肥料は, 尿素CO(NHz)z)石灰窒素CaCNz,

硫酸アンモニウム(NH-I)2S0-lなどが多く使用されるが, これらも土壌中ではア ンモニアま で分解され, その一部は好気条件下で硝化プロセスに入り, 硝酸態 窒素を生成することになる.

硝酸態窒素は好気的環境では比較的安定に存在する物質であるが, 嫌気的環 境では硝酸・亜硝酸還元細菌によって硝酸態、窒素が亜硝酸態窒素を経て再びア ンモニア態窒素を生成する同化プロセスと窒素ガスへと還元する異化プロセス を経ることになる. また, 窒素ガスは根粒菌やAnabaenaの一部などの土壌微 生物によって固定され, 有機態、窒素に変換されるものもある.

リンについては, 農地内に存在するものの大部分は堆肥や植物などの有機態 リンとこれらの有機態リンの分解や施肥などによって生成するリン酸であるが,

窒素のように大気中への放出は無いため, この二態の無機イヒ・有機化反応と考 えて差し支えない.

いずれにしても, 土壌中の無機態窒素と有機態窒素の量は, 有機物の無機化 プロセスと無機栄養塩の有機化プロセスに左右されるが, 畑地と水田とでは挙 動を異にする点に注意する必要がある(米田, 1980c).

1

)水田からの負荷流出

田法1J(1986)は, 71<回状態における窒素のバランスシートを図- 1 - 2のよう に示している. 水田からの窒素, リンの流出の主なものは地表流出と地下浸透 である. また, 水田状態、の窒素循環を規定する水管理の特徴として, 水田の水 稲作では湛水によって, 土壌を還元状態、に置くことで起こる脱窒反応にともな う窒素除去がある. 農地からの窒素, リンの流出に関

る既往の調査 ・ 研究は 60件を越えるが, 以下では, そのうちいくつかの研究成果をもとに水田から の窒素, リンの流出特性について整理していく.

高村ら(1977a )の調査によると, 施肥区田面水の総窒素, 総リン濃度は基肥

(12)

園田園圃圃圃・

直後にそれぞれ50mg.l-1以上, 約20mg.l-1と著しく 高くなり, それ以外は潅減 水とほぼ同レベルで推移することを示し, その結果, 田植えのための1回の落 水による窒素の流出量は全期間の30%にも相当することを明らかにしている.

l

施肥

図- 1 -2 水田における窒素のバランスシート(田淵: 1986)

また, 水田群内の排水路水質の調査結果(高村ら, 1976)でも同様の傾向を示 すことを報告しており, 水田排水の排水路水質への影響を示唆している. さら に, 中田(1972)はライシメータ試験の結果から, 湛水状態、の浸透水の栄養塩濃 度の変動について次のように報告している. アンモニア態窒素濃度は移植 ・ 施 肥の直後2.-..._,3mg.l-1程度まで一時的に高まり, 10日目頃から1.5mg.l寸前後にな

り, 更に2週間後には1mg.[-1以下に低下するのに対し, 硝酸態窒素は初期から 低濃度で, 無施肥区との差は少ない. また, 総リン濃度は窒素に比べて非常に 低く, 当初0_lmg.l-1程度であったが 1週間後には0.02.-..._, 0.05mg.l-1に低下して

いる. また, 水田の窒素, リンの流出は主に施肥直後に多量の降雨があった場 合であると考え, 同時に肥料施用後の田面水中の窒素, リンの溶存濃度を測定 し, ケルダール窒素濃度は施肥後4日目に急速に低下すること, リン濃度は施

(13)

肥後急速に低下し,

土木学会(1973)では,

る肥料成分の流出調査を実施しているが,

ずれの水田も基肥直後は硝酸態、窒素を主体とし,

移植水田では基肥直後約1週間の硝酸態窒素濃度が3 --- 4mg.[.1と比較 4日目には1mg.[-1以下になったことを示している.

琵琶湖周辺の水田について移植水田と直播水田におけ 浸透水中の形態、は窒素についてはい 以降アンモニア態窒素が主体

.園田園圃ー

となる.

作期を 施肥の影響は有意には見られない.

リンについては,

また,

追肥直後の濃度上昇は見られない.

通じてリン酸態リンの流出が主体となるが,

直播水田

移1直水田 20

15 10 5

15 10 5 的高いが,

(7一・ωE)制叫髄一w附側

(7一・ωE)

μm黙桝制

8月 9月 7月

6月 G

佐賀平野における田面水の窒素濃度(岡: 1979) 図- 1 -3

古賀(1979)と岡(1979)は,

において移植水田と直播水田においての養分収支について調査を実施している.

1975年と1976年に佐賀平野のクリーク水田地帯

平均値で2.5--- 3.0mg.[-1と極めて 水田の地表排水の総窒素濃度は,

そこでは

(14)

園田園圃圃ー

高く, 図- 1 - 3に示すように特に移植水田では6月, 7月の施肥後に高くなる 傾向が認められている. 直播水田の地表排水の総窒素濃度は7月, 8月の施肥 後に高く, 暗渠排水の濃度も同様の傾向を持つことが示されている. また, 併 せて実施されたクリーク水質の調査では, 肥料成分濃度は移植水田の場合は6 月や追肥後に高くなっており, 9月から10月にかけて漸減している. 移植水田 と直播水田との比較では, 肥料成分濃度は移植水田側のクリークよりも, 直播 水田側のクリークが高い傾向を示し, 特にリン酸についてこの傾向が明瞭とな

っている. また, 直播水田では地表排水の濃度よりも, むしろ暗渠排水中の濃 度に影響されるとしている 養分流亡の大半はイ乍期前半の7月までに発生して おり, 窒素, リンのいずれについてもその量は水質濃度より用排水量の大きさ によるものと考えている.

表- 1 -1 水稲作期(移植水田)の養分収支

水量(mm) T-N(kg ・ha-1) T - P (k g. h a -1) w-P(kg.ha-1) KzO(kg.ha-1)

1975 1976 1975 1976 1975 1976 1975 1976 1975 1976

lnp u t

降雨 838 1059 5.0 7.1 0.65 0.26 0.13 0.13 1.7 2.1

潅瓶 657 523 3.4 8.8 1.62 0.57 0.22 0.31 19.5 20.0

1495 1582 8.4 15.9 2.27 0.83 0.35 0.44 21.2 22.1

output

地表排水 281 415 6.9 12.3 2.62 3.58 0.74 1. 35 33.9 87.4

暗渠排水

281 415 6.9 12.3 2.62 3.58 0.74 1. 35 33.9 87.4

表- 1 -2 水稲作期(直播水田)の養分収支

水量(mm) T-N(kg・ha -1) T-P(kg.ha-1) w-P(kg.ha-1) KzO(kg・ha -1)

1975 1976 1975 1976 1975 1976 1975 1976 1975 1976

lnp u t

降雨 907 1150 5.6 8.1 0.74 0.31 0.13 0.13 1.8 2.1 j在j蹴 1225 804 8.2 15.0 2.58 1. 05 0.7 -l 0.57 46.2 31.8

213:2 1954 13.8 23.1 3.32 1. 36 0.87 0.70 48.0 33.9

output

地表排水 124 378 1.0 7.7 0.39 7.55 0.09 6.55 4.2 45.6

暗渠排水 959 24.0 15.19 10.04 125.2

1337 31.7 22.74 16.59 170.8

注)ーは測定していない量

これらの結果から, 水田の養分収支を表- 1 -1および表- 1 - 2に示すが,

(15)

.園田園圃ー

出流

栄養塩の供給は直播水田が多いため,

移植水田と直播水田を比較すると,

量でも直播水田が多いことは明らかである. また, 窒素については流出もしく は収穫による取り出しの1割前後は土壌中の地力窒素からの供給であり, 逆に

田面 リンについては施肥のうち多量の土壌蓄積があることが判明している.

水田の窒素除去について, 三沢(1987)は,

に貯留されている状態の水質変化が大きく, 用水の無機栄養塩濃度が大きい場 逆に用水中の濃度が小さい場合には濃度減少率

水口から水尻までの過程で,

濃度減少率が大きし 合には,

あるいは濃度が増加することなど水田の水質緩衝作用を確認してい 水稲の生育前期では有機化, 脱窒, 土壌吸着で が小さし\

濃度減少の主因は,

る. また,

\、'Eaaad .,,,,

川ら(1984, 1985)および小川(1984)によると, 水田の窒素浄化率について,

水稲生育初期では20'--'_'40%であるが, 生育が進むにつれて高まり,

水稲の吸収は生育初期には5%程度であるが,

脱窒であるとしている. また,

生育後期では水稲の吸収と土壌吸着,

あり,

出穏期には 一方, 出穂、

90%以上に達する

中期から後期にかけて また脱窒は生育初期には20----30%,

は50�55%で推移する.

期には40%になり,

/ 期 dダ 0 3 08 ゐ

C{点山、/

o αonω e ,J

e

水草

1 .0 0.5

0.2 0.1

(7巴・NlE・凶)

0.05 0.03 0.02 0.01

酬州制鎧wm制

50 100 (mg. 1-1) 20

供給水の窒素濃度

Fhv

10

2

1985) 窒素除去量と供給水の窒素濃度(田技IJら,

図- 1

-

4

(16)

回決Jjら(1983, 1985)は, 湛水土壌系における窒素除去量と供給水の窒素濃 度の関係を図-1-4のグラフにまとめ, 供給水濃度が高くなると除去量も大

きくなることを明らかにし, 両者の聞を次式で推定している.

[窒素除去量(g.m-2day-l)J =0.01 x [用水中の窒素濃度(mg.Z-1)J [1. 1 ]

三好(1978)は, 高村らが水田における窒素の流出量と流入量の関係を整理し た結果から, 潅湖水のT-N濃度が2'"'"'3mg.Z-1以上の場合にはそのほとんどが流 入室素量より流出窒素量の方が小さくなっているとしており, 森川ら(1984)の 調査でも水田が浄化型を示すのは用水中の T-N 濃度が2mg.Z-1以上の場合と言 われている.

表-1 -3 水田の窒素除去量(田淵ら: 1985を加筆修正)

調査地 調査者

茨城, 刈取後水回 目前lら

茨城, 水田 小) 11・ 酒井

茨城, 水田 小川ら

供給濃度(mg.[-l) 湧出水 6� 12

ノノ 4�8

// 2�4

ふん尿

// 7

// 10

11 14

N03 ・N

// 6

11 12

1/ 31

除去量(g.m・2day-') 期間なと 0.05�0.4 植生なし, 0.02�0.2 植生なし, 0.07�0.13 植生なし,9�11月

0.02 水稲, 5�9月

0.08 /1

0.13 //

0.17 //

0.08 水稲, 5�9月施肥

0.13 //

0.22 //

0.49 //

水田の窒素除去量は, 回試IJら(1985)によって表- 1 -3に示すようにまとめ られているが, ここでは, 0_02'"'"'0.49g.m-2day-lの間となっている.

作期を通じた水田からの窒素, リンの流出量は, I農地排水をめぐる最近の 動きJ (農林水産省, 1979)にまとめられたものをみれば, 水田からの流出量は,

窒素:・17.9---+15_9kg・ha-1, リント3_0---+2_5kg.ha-1と大きな!隔を持ってい る これは, 施肥量, 施肥方法, 土壌 土質, 土層状態、, 水管理方法, 調査時 の降雨条件等によるが, 一般に汚水潅殺田や乾田で負の値, 清水潅淑田または

(17)

地表排水の多い湿田では正の値が得られている.

また, 近年の調査結果を加え, 田法1Jら(1985)によりまとめられた表- 1 -4 の水田群を対象とした流出負荷量調査結果では, 窒素:・27.8---+28.1kg・ha.1,

リン:・2.91"-'+5.4kg・ha-1と更にl隔は大きくなっている.

表- 1 -4 水田群における窒素 ・ リンの流入, 流出負荷量(因説1Jら, 1985) 単位 kg.ha-1

調査地 調査

年度 施肥量 流入 量 流出量 差引流出 施肥量 流入 量 流出量 差引流出 茨城 ・ 柴 1975 75 43.5 44.2

H ・ 馬 1976 77 10.4 10.2 H ・ 余郷入 1976 65 44.0 41.0 愛知 ・ 東 郷 1973 61.9 47.7 31.0 1974 66.8 41.0 40.4 1975 71.8 39.3 28.5 滋賀 ・ 彦 1974 133.3 37.1 52.6 1975 128.1 52.0 80.1 1976 126.5 19.0 23.1 1977 142.1 28.6 37.9 1978 146.8 20.6 31.5 滋賀 ・ 能登川 1979 45.3 44.3

11

1980

//

1981

//

北海道 篠津 1971 茨城 竜了歩 1981

31.4 24.8 31.2 43.5 23.4 33.2 36.2 32.8 28.6 19.0 49.6 37.7 29.9 48.4 56.8 29.0

十0.7 -0.2 -3.0 -16.7 -0.6 -10.8 + 15.5 + 28.1 +4.1 +9.3

tl 0.9 -1.0 -6.6 + 12.3 +9.8 -3.4 -9.6 -7.8 -27.8

1.99 4.78 74 0.11 0.34 68 0.76 0.72 30.6 6.45 3.54 29.8 7.33 8.46 28.7 7.23 6 28 50.2 1.0 1.1 52.1 1.1 6.5 31.7 0.8 1.0 42.5 0.7 1.2 39.7 0.9 1.3 1.54 2.37

十2.79 + 0 .23 -0.04 - 2.91 + 1 . 13 -0.95 + 0.1 十5.4 十0.2 十0.5 +0.4 +0.83 1.47

1.42 1.25 1. 51 1. 32 3.50 0.83

1.58 +0.11 2 13 +0.71 1.96 +0.71 1.43 -0.08 0.90 -0.42 3.10 -0.40 0.90 +0.07 注)ーは不明

以上にように, 水田の負荷流出機構については多くの実測例からその現象の 解明が進められているものの, 与えられた水田条件から流出負荷量を定量的に 推定することは困難である. そのため, 水田の負荷流出機構のモデル化が重要 となるが, 白鳥(1978)は, 田面水の窒素濃度変化を1次反応式で表現し, 田面 水の水深を一定に保つときの田面水の窒素濃度を次式で表現している.

(18)

10壬�KIOg(l-岳)

ここで, C:田面水濃度, Cn 潅殺水濃度,

K:定数, x 水口からの距離,

L : [車場の長さ, r 流去率

[1. 2]

また, 森(1990, 1991a, 1991b)は, ライシメータ実験によって田面水の濃 度変化について土壌との反応を考慮した物質循環モデルを同定し, 水田内の窒 素, リンの挙動を精度よく表現することに成功している.

2 )畑地からの負荷流出

水田畑作や裏イ乍などの畑地的利用では, 圃場排水の多くが暗渠排水によるた め土壌中の物質挙動が負荷流出を大きく規定する. 従来より地下排水施設の設 置によって無機態窒素の溶脱量が増大する現象が乾土効果の問題として研究さ れてきた. 近年では畜産地帯における畑からの硝酸態窒素溶脱による地下水汚 染や窒素流出による河川水質の悪化が顕在化しており, 農地の畑地的利用に伴 う負荷流出現象の解明が重要となっている. 一般に, 畑作では水稲に比べて施 肥量が多い反面排水量が少なく, また土壌中の栄養塩の挙動も水田とは異なる.

ここでは, 従来の研究から畑地からの栄養塩の流出特性について整理する.

畑地からの流出に関する土壌内での窒素挙動は一般的に次のように理解され る. 畑地土層内が好気的であるため, 易分解性有機物の分解に続く硝化作用が 行われ, また湛水を行わないため脱窒は起こりにくく, 硝酸態窒素を速やかに 生成した後も硝酸態窒素として土層内にとどまる. しかし, 硝酸イオンは負に 荷電した土壌粒子表面には吸着しにくく, 土壌間隙水に溶解するため, 降雨時 に農地排水とともに流出する. したがって 畑地からの窒素流出は園場排水に ともなう硝酸態窒素の流出が問題となることが推察される.

しかしながら, これらの一連の現象は土壌条件や環境条件によって複雑な反 応を呈する.

(19)

まず, 畑土壌の土粒子径の窒素流出に及ぼす影響について, Kolenbrander は各種の土壌を使ったライシメータ試験から, 土壌の粘土含量の多いほど溶脱 量は少ないことを明らかにしている. また, Kolenbrander は施肥量との関係、

において, 窒素溶脱量はどの土壌でも施肥量の増大にともなって増加すること を認めており(米田, 1980c), このことが畑地土壌からの窒素流出負荷量原単 位の推定に際し, 負荷流出量を施肥量の関数として推定する係数法の根拠とな っている. しかしながら, そのメカニズムは単純ではない. Hebertは畑土壌 における窒素の動態を次のように要約している(米国, 1980c). 集約農業にお いては, 施肥窒素の供給量が作物要求量の半分以上に達すると, 作物残澄や根 系上に生育する多数の微生物の活動によって窒素の有機化が起こる. このよう にして有機化される窒素は加水分解性のアミノ酸の形態 となり, 土壌固有の有 機物より一層不安定なプールを構成 する. かつ有機化と無機化のサイクルの反 復によって窒素は益々無機化の困難な形態、 に転化する. そして, 根圏土層内の 微生物活性と関連しての根圏効果は 生育初期から生じる. また, 肥料窒素の施 用が土壌窒素の無機化を促進することが知られており, このことが窒素流出に 関与することも考えられる.

したがって, 畑地からの窒素の流出は, 施肥から直接1次負荷的に流出して

くるものが主体とは限らず, 土層内の施肥窒素の有機化に続く複雑な挙動の関 与の結果である. この複雑な系には土壌微生物が深く関与しており, それはま ず施肥窒素を根圏における土壌微生物が有機化することに始まる. このことは Hebertの試験(熊田, 1980)などでも確認されているが, それらはいずれも夏 期の緩慢な, または突発的な有機化であ り, 硝化作用は11月以降に確認され ている.

一方, 土壌中の硝酸態、窒素の挙動についても, 上述のように硝酸態窒素が水

溶性となり水移動とともに容易に流出する現象は, 含水量が大きく, 陽イオン 交換容量が小さく, 鉄, アルミニウムの酸化物含量が少なくかっpHもほぼ中 性を示す土壌において一般論として言えることである. しかし, 酸性土壌で鉄,

アルミニウムの酸化物が多い場合には硝酸態窒素も弱く吸着されることが認め られている(米田, 1980c)・

このように, 栄養塩の流出は農地内の肥料成分の溶出環境によって影響を受

(20)

ける. しかし, 一般に窒素流出量は施肥量に比例して増大すると考えられるた め, 施肥量に対する流出量を施肥に対する流出率で整理することは現象的に意 義がある. 田法lJら(1985)は, 畑地圃場における窒素溶脱率の調査結果をもとに 表- 1 -5のようにまとめている. 溶脱率は, 4'""'52%と大きな幅があり, 火山 灰土では50%以上の場合もあるが, 分肥によって溶脱率は30%以下に抑えられ ること, 沖積土壌ではいずれも20%以下と相対的に低いことが読みとれる.

表- 1 -5 畑地の窒素溶脱率(国内)(田法lJら: 1985を加筆修正)

測定者 供給窒素量 溶脱率

(kg・ha -1) (%)

小)11ら 標準施肥区 トウモロコシ・野菜の輪作 340 22 1974'""-'1977

多肥区 11 600 25 /1

広域圃場 多種作物 105 35 IJ\ ) 11ら ?イシメータ

火山灰土 297 52 1巴

/1 /1

297 27

沖積土 /1 267 15 1巴

1/ /1

281 14

広島農試 花商岩草地 227 25

洪積層 H /1 227 16

火山灰 H /1 227 15

徳留 ミカン畑 ミカン 190 6

岩田 7イシ}-� 200 19

金井 /1 /1 185 38

池田 /1 300 10

藤島 11 陸稲・小麦等の輪作 304 24

嶋田 7イシメータ

洪積土壌 キャベツ, ハクサイ 600 23

沖積砂嬢土 /1 600 18

二紀砂壌土 11 600 4

船ヲ| 7イシノ-� ミカン 695 30 各種の肥料

また, リン酸は好気的環境で土粒子表面に特異吸着されることが知られてい る. リンの土粒子への吸着機構については南条ら(1989)によって機構解明がな されている. リン酸イオンは土壌の持つ正電荷の量を超えて吸着される. 土壌 の正電荷は, 破壊原子価を構成するアルミニウム, 鉄原子と結合している水酸 基がプロトンを取り込むことによって生じる. これらの反応は, 図- 1 - 5に 示すようなリン酸イオンの吸着の際の土粒子表面での物質収支から, 形式的に

(21)

次で表される.

M-OH+HzP04- →M-HzP04+0H­

M-OH+HP042- →M-HP04-+OH-

M-OH2tcr+HzP04- →M-HzPo4+cr+H20 ただし, Mはアルミニウムまたは鉄

pn一 A 1 m+

N a +

国相 CI-

④ , OH-

〉Si

/

拡散層

図- 1 - 5 リン酸イオン吸着に伴う物質収支の模式図

このため, リンの水界への流出負荷は地表流去によって生じるものが大部分 を占め, 形態としては溶存態と粒子態に分けられる(米田, 1980c). したがっ て, 農地の暗渠排水とともに流出するリンは少なく, むしろ土壌流亡とともに 起こる場合が多く, 土壌侵食をともなう地表排水の場合には圃場からのリン流 出が問題となると考えられる. このことは, 古くから金井ら(1931), 池田(193 7)や藤島ら(1972)によって確かめられている. これに対し米田(1981c)は, Ry­

denらの資料を考察し, 農地からの中間流出水は地表流去水に比べてかなりの 濃度の可溶性無機リンを含有するため, 暗渠流出水やライシメータ流出水のリ ン濃度を検討する場合, 十分に注意する必要があることを述べている. 嶋田ら は, 愛知県下の主要な土壌について野菜のライシメータ試験を行ったが, その っち沖積砂壌土からの溶脱水中には全期間を通じて1'"""'8mg.Z.1以上の高濃度の

(22)

リン酸が含まれていることを確認した. このことから嶋田らは, 畑地土壌から のリン酸の溶脱は一般的にはほとんど生じないと考えられているが, 長期間に わたって野菜栽培を続けた土壌では可溶性リン酸含量が100g当たり100mgを 越える場合があり, またリン酸の溶脱は土壌微生物の活性と関係があることを 示唆している(米田I 1981c).

土壌中の無機態リンは土粒子に吸着された場合は難溶性となるが, 嫌気的環 境ではその一部が可溶化すること が認 められている Furumaiら(1982)は鉄 と結合したリンが嫌気条件では可溶化されやすいことを示している. 小山(198 0)は, リンの鉄との還元状態での反応を硫酸イオンの有無に分けて, 硫酸還元 の行われる強い嫌気状態でのリンの溶出が大きいことを次のように説明してい る.

弱い嫌気状態

Fe(OH)3 →Fe(OH)2 →Fe2++20H.

FeP04 →Fe3(P04)2 →3Fe2++2P043・

強い嫌気状態 S042・ →S2・

Fe3(P04)2+3S2・ →3FeS↓+2P043・

米田(1981c)は土壌中での有機物の微生物的分解にともなって生成する有機 酸, ウロン酸などキレートイヒ能を有する有機化合物によるキレート化作用によ りリンの可溶化が進むと指摘している. これは, リン酸塩を固定しているアル ミニウム, 鉄がキレート材となる有機化合物と反応し, キレートを生成する反 応にともなうリン酸の可溶化反応である.

このため, 畑地のリンの流出機構は窒素に比べて土粒子との反応がより複雑 なため, 流出量は施肥量と直接関係するものでは無いと考えられる.

また, 懸濁態の有機物については, 土壌のフィルター効果により流出は少な く, 大部分は表面排水時に流出するものと考えられるが, フルボ酸などの可溶 化した有機物は暗渠排水時に高濃度で流出する可能性がある.

(23)

1. 2 農業・農村地域の水質環境の評価

従来, 農業 農村地域の水質環境は潅減水質汚濁に関わる農業被害の観点か ら調査, 研究が進められてきた. 第二次世界大戦前からも渡良瀬川などの一部 河川では主として重金属による水質汚濁が問題となっていたが, 富栄養化を含 めた一般的水質汚濁が一般的に問題化されてきたのは, 戦後の1951年からの 朝鮮戦争特需による鉱工業生産の増大からである(増島, 1978). そのような中,

農林省は1953年から全国の河川, 湖沼, 湧水の水質調査を行い, 当時の潅淑 用水の実態、を明らかにしている. 小林ら(1958)は, 水稲収穫量が秀でた佐賀平 野において潅淑用水の広域的な水質調査を行い, クリーク水の反復利用のため 各種の養分含量が特に高いという特徴を見いだしている.

表- 1 - 6 農業(水稲)用水水質基準

pH(水素イオン濃度) COD(化学的酸素要求量) SS(無機浮遊物質) DO(溶存酸素) T-N(全窒素) 電気伝導度 As(ヒ素) Zn (亜鉛) Cu(銅)

6.0----7.5 6mg.[-1以下 100mg.t.1以下 5mg.[-1以上 1 mg.t-1以下 0.3mS・cm'1以下 0.05mg.[-1以下 0.5mg.t.l以下 0.02mg.[.1以下

その後, 更に農業に関わる土壌汚染, 水質汚濁などの公害問題が深刻になる 中, 都市排水による過剰窒素が問題化し, 1970年には農林省公害研究会が,

表- 1 -6に示すような農業用水の水質基準(水稲)を発表した.

小林らの研究からほぼ20年後, クリークの荒廃と農村の生活様式の多様化 による潅淑用水の富栄養化の懸念から, 古賀ら(1977)は, 有明海沿岸の河川お よびクリークの水質調査を行い, 都市あるいは工業排水の影響が強いほど富栄 養化が著しいこと, また水田農業地帯内のクリークでも富栄養化が進行してい ることを認めている. 調査結果はいずれの地点の総窒素濃度も農業用水の水質 基準を超過するもので, その値は20年前の値に比較して河川では5.8倍, クリ

(24)

ークでは4.4倍にそれぞれ増加していた. また, 松岡ら(1985)によると, 埼玉 県内の水質について, 水質汚濁の進行は1961年以降であり, 工場排水や生活 排水が流入する排水型河川では, 1967年頃にピークに達し, それ以後は少し ずつ水質改善が見られ1971年には1963年のレベルまで回復した. 1975年頃を 境に, 工場排水を主とした汚濁から生活雑排水による汚濁に変わり, 1985年 時点においても1960年以前のレベルまで回復していない この傾向は全国的 なもので, 現在, 前述の農業用水の水質基準を超過するものが多くなっている が, そのうち総窒素濃度に関する基準値超過が主である.

森川ら(1982)は, 1977年からの農業用水の実態、から汚濁物質濃度と稲作と の関係について検討を行い, 栽培現場に即した新たな水質基準の策定を試みた.

そのなかで, 森川らは農業用水の水質指標としては, ケルダール窒素(アンモ ニア態窒素+有機管、窒素)が最も適しているとし, その濃度は3mg.[-1以下であ るとしている. 大島(1979)の行った調査では, 総窒素濃度 が2�8mg.l-lの農業 用水では過繁茂, 倒伏によって収量が減少している. 小菅(1972)によると硝酸 態窒素の肥料効率は悪く, 過剰に吸収されても水稲体内では無害の形で蓄えら れる. 佐藤ら(1987)によると, 下水処理水の窒素濃度と稲作への影響について 圃場試験を実施した結果, 下水処理水の総窒素濃度が10� 20mg.[-1と高くても そのほとんどが硝酸態窒素であれば施肥量の削減や追肥を行わないことで窒素 過剰の影響をかなり削減することができる. しかし アンモニア態窒素が5"-' 10mg.l-1の場合には施肥量の削減でも窒素過剰の影響を軽減するには不十分で

あるとしている. なお, 三好(1978)は, 下水処理水中の有機物についても2"-' 5倍に希釈することで栽培上の危険性はほとんどないと述べている. しかし,

それはあくまで下水原水が生活排水を主体とした場合であり, 広域下水の汚泥 には農業利用に不適な重金属が多く含まれるため危険性がある(登川, 1977)と 考えられる.

以上のように1970年代を中心に農業用水としての水質汚濁の調査研究が盛 んに行われてきたが, 近年では, 農業 農村を生産の場としてだけでなく生活 の場, 更には都市の憩いの場と位置づけての整備がなされている. したがって,

農業・農村地帯の水域環境は生活環境保全の観点からの水質保全が強く求めら れている.

(25)

._.圃-

表- 1 - 7(a) 生活環境保全に関する環境基準(湖沼その1)

類型 利用目的 水素イオ化学的酸浮遊物質 溶存酸素 大腸菌群 の適応性 ン漣度 素要求量量 数(100ml

(p H) (COD) (SS) (DO) 当たり)

水道l級

水産l級 6.5以上 lmg-[" 1 mg-[" 7.5mg-[" 50MPN

AA 自然環境保全お 8.5以下 以下 以下 以上 以下 よびA以下の欄

に掲げるもの 水道2. 3級

水産2級 6.5以上 3mg -l" 5mg-[" 7.5mg-[" lOOOMPN

A 水浴 8.5以下 以下 以下 以 上 以下

およびB以下の 欄に掲げるもの 水産3級

工業用水1級 6.5以上 5mg-l" 15mg-/'1 5mg-/"

B 農業用水 8.5以下 以下 以下 以上

およびCの欄に 掲げるもの

ごみ等の

C 工業用水2級 6.5以上 8mg-l" 浮遊が認 2mg-l'l

環境保全 8.5以下 以下 められな 以上

いこと.

注)水産l級,水産2級および水産3級については,当分の間浮遊物質量の 項目の環境基準値は適用しない.

表- 1 - 7(b) 生活環境保全に関する環境基準(湖沼その2)

類型 利用目的の適応性 自然環境保全および日以

O.lmg-l"以下 O.005mg-l-'以下 下の欄に掲げるもの

水道1. 2. 3級(特殊なも

H のを除く)

水産1種,水浴および皿 以下の欄に掲げるもの 水道3級(特殊なもの)お

よびW以下の欄に掲げる O.4mg-/"以下 もの

W 水産2種およびVの欄に 掲げるもの

3 V

注)1.基準値は年間平均値とする.

2.農業用水については,全リン項目の基準値は適用しない.

一 全

O.2mg-l"以下 O.Olmg-["以下

O.03mg-l"以下

O.6mg-l"以下 O.05mg-l"以下

1 mg-l"以下 O.lmg-["以下

(26)

表- 1 -7に示すように, 生活環境の保全に関する水質基準と農業用水の水 質基準とは共通する水質項目が多く, 前述の農業用水の水質基準は有機性汚濁 に関しては湖沼の環境基準でC類型, DOについてはB類型, 窒素については V類型に該当する. しか しながら, 現在のところ生活環境保全の観点から農 業・農村地帯の水質を評価したものは少ない.

1. 3 水域環境の水質評価

河川や湖沼の水質については, 従来から生活環境保全の観点からの評価が行 われてきたが, そこでは理化学的水質項目による評価から生態学的見地を加え て, 生息生物や種の多様性による生物学的評価まで行われている. 水質を景観 的価値から見た場合, 濁りや 特定の植物プランクトンの異常増殖による赤潮,

アオコの発生の評価が重要となるが, いわゆる富栄養化に関する研究は主に二 つの立場から実施されてきた.

一つは, 種々の汚濁に対する生物の耐忍性を調べて生息する生物種または種 の多様性を自然度と解釈して水域の汚濁の程度を評価しようとする水域診断学 的立場である. もう一つは, 理化学的水質と水質障害を引き起こす特定の植物 プランクトンの異常増殖による富栄養化との関係を解析し, 水域の水質管理を 行おうとする工学的立場である.

前者の立場から津田(1964)は水質管理の中で, 生物学的評価は, 汚濁の影響 の平均値を見ることができ るとし, 生物学的水質評価について体系的にとりま とめ, 日本の水域の汚水生物系列を作成するとともに, 淀川水系の水質判定を 行っている. Sladecek( 19 73)は, Thomasが腐水性階級を理化学的水質と関係 付けることを試みた結果を更に体系化した.

後者の立場からは生物学的水質と理化学的水質との関係についてWilber(長 瀬訳, 1972)は, 水質汚染の生物学的研究を総括し, 毒性 学, 生態学的見地か ら種々の物質による水質汚濁と水棲生物の反応 ・ 耐忍性についてとりまとめて いる. 中村ら(1975)は, 石などに付着している生物は生物学的水質判定にとっ て非常に重要な指標であると考え, 富山県内河川の付着微生物について有機性 汚濁と栄養塩レベルなど理化学的水質との関係について報告している.

(27)

これは, 付着藻類が移動能力が極めて弱く, 当該水域の代表的水質に適応し て生息すると考えたからである. また, 底生動物についても, 原田(1983), 上 回(1987), 小田(1991), 安ら(1993)など は底生動物相によって河川水質の評価 を行っている. これは体が大きく確認が容易であることおよび移動能力が弱い こと, および水域生態系による濃縮効果をも反映するものであるためであり,

水域の汚濁度のより総合的な指標として有効であるといえる.

一方で, 汚染の総合的な影響は生物群集の遷移となって現れるという観点か

ら, 群集構造の変化を取り扱うことの重要性が強調され, 生態学の分野で群集 構造の一側面を表す指標として用いられてきた多様性指数と水質汚濁の影響を 検討する研究が行われた. Wilhmは多様性指数を水質汚濁の評価にしようと するとき, 次の仮説を根拠とした(岡田ら, 1976).

( 1) 環境変化 は群集構造の変化をもたらす.

(2) 群集構造の変化 は多様性の変化をもたらす.

(3) 多様性の変化は汚濁などの環境変化では減少する傾向にある.

この仮説 は, ほとんどの場合において正しいとされ(Egloff,1973), Patrick(19 50)のように, 多様性の減少をもって汚濁と定義するという立場もある. しか

し, 森谷(1976)は, 多様性が高し1から良好な環境, 低いから劣悪な環境と短絡 的に解釈してしまうには問題があると述べている.

水域の管理 ・ 保全計画のため, 植物プランクトンの異常増殖を工学的に解析 する研究は, 主に衛生工学の分野で進められている. 中西ら(1975)は, 植物プ ランクトンの増殖をCODの内部生産で評価し, CODの平均増加濃度を流入す る窒素, リンから推定する方法を提案した. 端(1981)は, 琵琶湖における富栄 養化の総合的定量評価基準の抽出において理化学的水質と植物プランクトン数 で富栄養化の評価を行っている.

水域の水質管理のためには, まず実用上いわば絶対的評価基準である悪臭,

アオコ, 赤潮などを引き起こす特定の藻類について理化学的水質要因との関係 を明らかにしたうえで, 流域の負荷削減対策などの水質保全計画を策定する手 順となるべきものと考えられる. しかし, 現時点では植物プランクトンの増殖 と理化学的水質の関係についての研究は少なく(白谷ら, 1995), 水質障害の原 因種である特定種の異常増殖メカニズムについても解明されていない. すなわ

(28)

- ,....

ち, アオコ, 赤潮などの水質障害を引き起こす水質条件についてはある程度確 かめられているが, 与えられた水質条件から具体的な水質障害の有無および様 相を推定することは困難である. そこで, 現在のところ個別の水質障害を評価 の対象とせず, アオコ, 赤潮の発生とCODまたはクロロフィルの関係を別途 考慮、しつつ, r富栄養化」という概念を有機性汚濁(COD, BOD)や植物プラ ンクトンの総体であるクロロフィルaなどを指標として評価の対象としている ものである. 診断学的立場からの基礎的な知見の蓄積は, 71<生生物の生理 ・ 生 態学的解明とともに, 次に続く工学的解析に重要な指針を与えるものであり,

更に工学的な観点から水域の生態系を解明するための研究の進展が必要である.

第2節 水質環境のモデル解析

2. 1

水質解析モデルの分類

水域の水質環境をモデル解析する際には, その目的, 評価項目, 評価する時 間のスケールに応じて様々のタイプの解析手法が提案されている. 表- 1 - 8

にいくつかの代表的なモデルについてその特徴を示すが, 水質解析にあたって は各モデルの性格を考慮した上で, 目的にあわせた適切なモデルの選択が重要 となる.

水質管理計画の策定の前段として将来の年間の平均的水質を予め推定するた めには栄養塩負荷モデルや統計モデルが有効である. 栄養塩負荷モデルは, 湖 沼の富栄養化とリン負荷量の調査から, 栄養塩の負荷量収支と栄養塩沈降速度 から, 富栄養化を促進させないための栄養塩の許容負荷レベルを推定するモデ ルで, その後さらに栄養塩の滞留時閣の概念を導入することによって改良され ている(Vollenweider モデノレ). また, OECD総合解析モデルでは, Vollenwei der モデルをもとに平均滞留時間を水理ノミラメータとして導入しかっ栄養塩の 流入水年平均濃度と湖沼の年平均濃度と関連させ, 窒素, リンおよびクロロフ

ィルaを評価項目に加えられている.

有機性汚濁のみを対象とした水質解析には, ムCODモデル(中西ら, 1975) や単変数生産モデルが提案されている. ムCODモデルは, 評価の時間スケー

参照

関連したドキュメント

19370 : Brixham Environmental Laboratory (1995): Sodium Chlorate: Toxicity to the Green Alga Scenedesmus subspicatus. Study No.T129/B, Brixham Environmental Laboratory, Devon,

3.排出水に対する規制

よう素による甲状腺等価線量評価結果 核種 よう素 対象 放出後の72時間積算値 避難 なし...

・少なくとも 1 か月間に 1 回以上、1 週間に 1

予報モデルの種類 予報領域と格子間隔 予報期間 局地モデル 日本周辺 2km 9時間 メソモデル 日本周辺 5km 39時間.. 全球モデル

・圃場排水技術 等 平成 24 年度

水素を内包する設備を設置する場所 水素検出方法 直流 125V 蓄電池室 水素濃度検知器を設置 直流 250V・直流 125V(常用)・直流

超音波 S/C壁面 厚さ 17mm 鋼板.