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「占領 目的 に有 害 な行為」 に関す る検察官 の 起 訴猶予 裁量 の運用

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Academic year: 2021

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【論 説 】

「占領 目的 に有 害 な行為」 に関す る検察官 の 起 訴猶予 裁量 の運用

‑「 連 合 国 占領 軍 、その将兵又 は連合 国占領軍に附属 し、若 しくは随 伴 す る者 の財 産 の 収受 及 び所 持 の禁 止 に 関す る政令 」(昭 和22年 政 令

第165号)の 制 定過 程 を中心 と して‑

出 口雄 一 著

一 序

二 昭和22年 政 令 第165号 及 び 第166号 の 制 定 三  勅 令 第311号 及 び 政 令 第165号 の 運 用 四 結 び に代 え て

一 序

第 二 次 世 界 大 戦 後 の 占領 期 の 我 が 国 は 、 連 合 国 側 で 唱 え られ た 「無 条 件 降 伏 」 モ デ ル に 伴 う 「占 領 管 理(Occupation  and Control)」 を さ ま ざ ま な レベ ル で 実 施 す る た め に 、重 層 的 な 法 的 構 造 に よ り規 定 され て い た が 、 そ の 中 核 を な す の は 、1945(昭 和20)年9月20日 に公 布 さ れ 、 即 日施 行 さ れ た 「「ポ ツ ダ ム 」 宣 言 ノ 受 諾ニ 伴 ヒ発 ス ル 命 令ニ 関 ス ル件 」(勅 令 第542号 、 以 下 「ポ ツ ダム 緊急 勅 令 」)と 、 そ の 委 任 に よ っ て500本 以 上 発 出 さ れ た 所 謂 「ポ ツ ダ ム命 令 」 で あ っ た 。 「連 合 国 最 高 司 令 官 ノ為 ス 要 求ニ 係 ル事 項 ヲ実 施 ス ル 為 特ニ 必 要 ア ル 場 合 」 とい う条 件 の み を掲 げ た 授 権 法 で あ る ポツ ダム 緊 急 勅 令 は 、 そ の 委 任 範 囲 の 広 さが 新 旧 の 憲 法 の 規 定 と抵 触 す る 疑 い が 極 め て強 か っ た上 、「連 合 国 最 高 司令 官 ノ為 ス 要 求」

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の 内 容 が 憲 法 秩 序 と矛 盾 を 来 す も の で あ っ た 場 合 、 そ の 実 施 の た め に 発 出 さ れ る ポ ツ ダ ム 命 令 も ま た 憲 法 秩 序 を逸 脱 せ ざ る を 得 な い とい う構 造 を 抱 え て い た(1)。 ポツ ダ ム 緊 急 勅 令 は 、 「占領 管 理 体 制 」 が 当 初 ア メ リ カ 政 府 に お い て構 想 され て い た 直 接 軍 政 で は な く、 占 領 開 始 直 前 に決 定 され た間接 統 治 に よ り運 営 され る と い う原 則 を担 保 す る た め の 「巳 ム ヲ 得 ザ ル」 措 置 と して 制 定 さ れ た もの で あ っ た 。 す な わ ち 連 合 国 最 高 司 令 官 が 留 保 して い た 「直 接 行 動 」 を 取 る 権 限 を抑 制 し、 そ の 「要 求 」 に つ い て は可 能 な 限 り国 内 法 の 枠 組 み に よっ て 解 決 し よ う とす る た め に、 ポ ツ ダ ム 緊 急 勅 令 、及 び 、そ の 授 権 に基 づ くポ ツ ダ ム 命 令 が 孕 む 「超 憲 法 性 」 が 是 認 され ざる を得 な か っ た の で あ る(2)。

さ て 、 連 合 国 最 高 司 令 官 の 「要 求 」 の 実 施 に あ た っ て は 、 既 存 の 法 令 の運 用 に よ っ て 処 置 す る こ とが 不 可 能 な 場 合 は、 新 た に 立 法 措 置 を と る か 、 そ う で な け れ ば 、 そ の 「要 求 」 を直 接 の 根 拠 と して 処 置 を行 う必 要 が あ っ た 。 前 者 に つ い て は、 法 律 の 制 定 、 ポ ツ ダ ム 命 令 の 発 出 の 他 、 明 治 憲 法 下 に お い て本 来 命 令 の 所 管 に属 して い た 場 合 に は 命 令 に よ っ て 、 特 定 分 野 にか か る既 存 の 法 律 の 授 権 規 定 で まか な い 得 る 場 合 に は 委 任 命 令 に よ っ て 処 置 さ れ た が 、 後 者 に つ い て は 「別 段 の 国 内 立 法 手 続 を経 な い で 先 方 の 要 求 が 直 ち に実 施 さ れ た も の も少 な く な」 か っ た と さ れ る。

こ の 両 者 、 す な わ ち 、 「立 法 措 置 を とつ た もの と、 直 接 実 施 に移 され た も の との 区別 の 標 準 」 は 必 ず し も明 瞭 な もの で は な か っ た よ うだ が 、 本 稿

に お い て取 り上 げ る 「占領 目 的 に有 害 な行 為(占 領 目 的 阻 害 行 為)」 は、

ま さに この 両 者 の 境 界 線 に 関 係 す る 問 題 で あ っ た(3)。1946(昭 和21)年 6月12日 に勅 令 第311号 と して 公 布 され 、7月15日 に施 行 さ れ た 「昭 和 二 十 年 勅 令 第 五 百 四 十 二 号 ポ ツ ダ ム 宣 言 の 受 諾 に伴 ひ発 す る命 令 に関 す る件 に基 く連 合 国 占領 軍 の 占領 目 的 に有 害 な行 為 に 対 す る 処 罰 等 に 関 す る勅 令 」(以 下 「勅 令 第311号 」)は 、 同 年2月19日 付 「刑 事 裁 判 権 の 行 使 に 関 す る覚 書 」(SCAPIN756)に よ り、 日本 側 裁 判 所 か ら、 連 合 国 人 又 は会 社 そ の 他 の 団 体 に対 す る 人 的 管 轄 、 及 び、 占 領 軍 の 安 全 も し くは 利 益 を 害 し又 は 占 領 目 的 に反 す る 特 定 の 行 為 に対 す る 物 的 管 轄 が 排 除 さ れ た こ と を踏 ま え 、こ の こ と を第1条 で 改 め て 確 認 した 上 で 、第2条 で 「連

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「占領 目的 に有 害 な行 為」 に 関す る検 察 官 の起 訴 猶 予 裁 量 の運 用(出 口 雄 一)

合 国 最 高 司 令 官 の 日本 帝 国 政 府 に対 す る 指 令 の 趣 旨 に 反 す る 行 為 、 そ の 指 令 を 施 行 す る た め に、 連 合 国 占領 軍 の 軍 、 軍 団又 は 師 団 の 各 司 令 官 の 発 す る 命 令 の 趣 旨 に 反 す る 行 為 及 び そ の 指 令 を履 行 す る た め に 、 日本 帝 国 政 府 の 発 す る 法 令 に違 反 す る行 為 」 を 「占 領 目 的 に有 害 な 行 為 」 と規 定 し、こ れ ら に つ い て は 「公 訴 は 、こ れ を行 は な け れ ば な ら な い」 と して 、 明 文 で 起 訴 法 定 主 義 を採 った の で あ る(4)。

と こ ろ で 、 「占領 管 理 体 制 」 の 下 で 行 わ れ た 法 制 改 革 、 と りわ け 、 日 本 国 憲 法 の 制 定 と、 そ れ に伴 う広 範 な 憲 法 附 属 法 等 の 制 定 ・改 正 が 、 「戦 後 」 の 我 が 国 の 法 シス テ ム の 中核 を な して い る こ とは 言 う まで もな い(5)。

そ の 中 で も、 詳 細 な 人 身保 護 規 定 を備 え た 日本 国 憲 法 に対 応 す る 形 で 刑 事 訴 訟 法 が 全 面 改 正 され た こ とが 象 徴 す る よ う に(1948(昭 和23)年7 月10日 公 布 、 翌49年1月1日 施 行 〉、 刑 事 司 法 シ ス テ ム の見 直 しは 「戦 後 改 革 」 の 重 要 な一 角 を 占 め る テ ー マ で あ っ た(6)。 しか し、 制 定 の 当 初 よ り認 識 さ れ て い た よ う に 、 現 行 刑 事 訴 訟 法 に は 、 旧 刑 事 訴 訟 法(大 正 刑 事 訴 訟 法)と の 「連 続 」 と 「非 連 続 」 の 両 面 が 存 在 して い た(7)。 こ の こ とは 、 現 行 刑 事 訴 訟 法 の制 定 過 程 にお い てGHQ(General  Headqualters/

Supreme  Commander  for the Allied Powers、 連 合 国 最 高 司令 官 総 司 令 部)側 と 日本 側 立 法 関係 者 の 「協 調 的努 力 」が 顕 著 に あ ら わ れ た こ との 反 映 で あ り、

特 に 、GHQ側 で 法 制 改 革 に 深 く係 わ っ た 民 政 局(Government  Section) の オ プ ラ ー(Alfred C.Oppler)や ブ レ ー ク モ ア(Thomas  L.Blakemore)と い っ た 人 物 が 備 え て い た 「比 較 法 的 差 異 」 の 認 識 に よ り、 ア メ リカ 法 継 受 へ の 慎 重 な 態 度 が 維 持 さ れ た 結 果 で あ る と理 解 す る こ とが 出 来 る(8)。 旧刑 事 訴 訟 法 と現 行 刑 事 訴 訟 法 の 「連 続 」 の 局 面 の 内 実 は、 特 に オ プ ラ ーが 強 調 して い た 、 戦 前 の 日本 の 刑 事 司 法 の 大 陸 法 的 な特 色 に と ど ま る もの で は な く、 戦 時 に お い て 生 じ た刑 事 手 続 の 簡 略 化 を も そ の 射 程 に 収 め る もの で あ っ た が(9)、本 稿 の問題 関 心 か ら検 討 す るべ き は、刑 事 司 法 の 「日 本 的 特 色 」 の 中核 を な す と も評 価 さ れ て い る 、 旧 刑 事 訴 訟 法 の 制 定 に先 立 っ て実 務 に お い て 顕 在 化 して い た 、 検 察 官 の 起 訴 猶 予 裁 量 の 行 使 の あ

り方 の 変 容 で あ る(10)。

現 行 刑 事 訴 訟 法 にお い て 検 察 官 の 起 訴 猶 予 裁 量 を規 定 した 第248条 は 、

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旧 刑 事 訴 訟 法 第279条 の 「犯 人 ノ性 格 、 年 齢 及 境 遇 並 犯 罪 ノ 情 状 及 犯 罪 後 ノ 情 況ニ 因 リ訴 追 ヲ 必 要 トセ サ ル トキ ハ 公 訴 ヲ提 起 セ サ ル コ トヲ得 」 と い う規 定 に 「犯 罪 の 軽 重 」 とい う語 句 が 追 加 され た に留 ま っ て お り、

統 計 的 に見 て も、 こ の 語 句 の 挿 入 に よ っ て 検 察 官 の 起 訴 猶 予 裁 量 の 行 使 の あ り方 に 大 き な 変 化 が 生 じ た と は 考 え に くい(11)。 そ う で あ る とす れ ば 、 上 述 の 勅 令 第311号 の 制 定 は、 戦 前 か ら戦 時 、 更 に 、 占 領 期 か ら戦 後 に わ た っ て も 「断 絶 」 せ ず に 運 用 され 続 け た 検 察 官 の 起 訴 猶 予 裁 量 権 に つ い て の 重 要 な例 外 を 設 け る こ と に な っ た筈 で あ る。 確 か に こ の 点 に つ い て は、 勅 令 第311号 の制 定 過 程 に お い て 、 連 合 国 最 高 司 令 官 に よ る 指 令 な どが 直 接 国 内 法 化 され る た め 「占領 政 策 の 大 幅 な変 更 」と な る点 や 、 広 範 な 白 地 刑 罰 法 規 で あ る た め 罪 刑 法 定 主 義 に反 す る と い う点 と併 せ て 、 日本 側 立 法 関 係 者 が 激 し く抵 抗 を示 した 問 題 で あ っ た。GHQ側 で 「占 領 目的 に有 害 な行 為 」 な ど を管 轄 して い た 法 務 局(Legal  Section)は 、勅 令 第311号 に お い て 「Public prosecution must  be had(公 訴 を提 起 す べ し)

な る字 句 を用 ひPublic  prosecution may  be had(公 訴 を提 起 す る こ と を得) な る表 現 を用 ひ ざ り し は 、 若 し斯 る 語 を使 用 す れ ば 、 汎 く起 訴 、 不 起 訴 の 裁 量 権 を 、 検 事 に与 ふ る こ と と な る 結 果 、 連 合 軍 側 に好 意 を持 た ざ る 検 事 在 りて 、 不 起 訴 権 を 濫 用 す る虞 な き に し も非 ざ る が 為 な り」 と して 、

明 文 上 で は起 訴 法 定 主 義 の 修 正 を許 さ な か っ た 。 しか し、 本 稿 の 問 題 関 心 か ら極 め て 興 味 深 い の は 、 日本 側 の 再 三 の 要 請 に 従 う形 で 、 事 前 に地 方 軍 政 部 と連 絡 して 適 当 な指 示 を求 め る こ と と を条 件 に 、 法 務 局 は 日本 側 検 察 官 の起 訴 猶 予 裁 量 の行 使 を是 認 す る に至 っ て い る と い う点 で あ る 。 す な わ ち 、 こ の 「占 領 目 的 に有 害 な行 為 」 の 取 扱 い を通 じて 、GHQの 民 政 局 と 日本 側 立 法 関係 者 との 間 に法 制 改 革 を 通 じて 構築 さ れ た 「ク ロ

ス ・ナ シ ョナ ル 」 な 関 係 と は異 な る、 も う一 つ の 「ク ロ ス ・ナ シ ョナ ル」

な 関 係 が 、GHQの 法 務 局 及 び 地 方 軍 政 部 と 日本 側 の 司 法 省 及 び 地 方 検 察 庁 との 問 に構築 され る こ と と な っ た と考 え られ る の で あ る(12)。本 稿 は 、

1947(昭 和22)年 に 政 令 第165号 と して 制 定 さ れ た 「連 合 国 占 領 軍 、 そ の 将 兵 又 は連 合 国 占 領 軍 に 附 属 し、 若 し くは 随 伴 す る 者 の財 産 の 収 受 及 び所 持 の禁 止 に 関 す る政 令 」(以 下 「政令 第165号 」)の 立 法 過 程 、 及 び 、

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「占領 目的 に有 害 な行 為」 に 関す る検 察官 の起 訴 猶 予裁 量 の運 用(出 口雄 一)

勅 令 第311号 の 一 部 改 正 の過 程 に つ い て の 会 談 記 録 と、 そ の 改 正 を踏 ま え て 作 成 され る よ う に な っ た報 告 文 書 な ど の 史 料 を紹 介 しつ つ 、 「占領 目 的 に有 害 な行 為 」 に 関 す る 日本 側 検 察 官 の 起 訴 猶 予 裁 量 の行 使 の あ り方 に つ い て検 証 し、 上 述 した も う 一 つ の 「ク ロ ス ・ナ シ ョナ ル」 な関 係 が ど の よ う に 構 築 され て い っ た か を明 らか にす る こ とで 、 「戦 後 」 刑 事 司 法 が

「占領 管 理 体 制 」 の 下 で どの よ う に そ の 最 初 期 の 歩 み を開 始 した の か 、 と い う こ と を跡 付 け よ う とす る試 み で あ る(13)。

二  昭 和22年 政 令 第165号 及 び 第166号 の 制 定

【1】 前 章 に お い て 言 及 した よ う に、 勅 令 第311号 は 、1946(昭 和21) 年2月19日 付 「刑 事 裁 判 権 の行 使 に 関 す る 覚 書 」 を受 け て 制 定 され た も の で あ っ た。 同 覚 書 第1項 に よ っ て、 日本 の 裁 判 所 は 「連 合 国 の 人 又 は 法 人 そ の 他 の 諸 団体 に対 し、 刑 事 裁 判 権 を行 使 して は な らな い 」 と され 、 ま た 、 第2項 に よ っ て 、 以 下 に列 挙 した 犯 罪 に つ い て も 「刑 事 裁 判 権 を 行 使 して は な ら な い 」 と さ れ た の で あ る。

(a)占 領 軍 又 は そ の 凡 て の 兵 員 、 又 は 占領 軍 に所 属 若 くは 随 伴 す る 凡 て の 者 の 安 全 に 有 害 な行 為 。

(b)占 領 軍 の 凡 て の 兵 員 、 又 は 占領 軍 に所 属 若 くは 随 伴 す る凡 て の 者 に対 す る殺 害 又 は 暴 行 。

(c)占 領 軍 又 は そ の 凡 て の 兵 員 、 又 は 占 領 軍 に所 属 若 くは 随 伴 す る 凡 て の 者 の 財 産 を権 限 な し に所 持 、 取 得 、 受 領 又 は処 分 す る行 為 。 (d)占 領 軍 又 は 連 合 国最 高 司令 官 ま た は そ の 権 限 を 有 す る 部 下 の 命 令 に従 っ た そ の他 の 者 が 、 追 求 中 の 者 を 逮 捕 す る こ と に干 渉 ま た は 妨 害 を為 し又 は拘 禁 中 の者 の 逃 亡 を援 助 又 は容 易 な ら しめ る行 為 。 (e)公 務 に 関 して 占 領 軍 の 兵 員 又 は 占 領 軍 に所 属 若 くは 随 伴 す る 如 何 な る 者 に対 して も、 こ れ を妨 害 し、 こ れ か ら要 求 さ れ た 報 告 を拒 絶 し、

口頭 又 は文 書 を以 て 虚 偽 の 又 は これ を誤 らす や う な供 述 を な し、 又 は、

如 何 な る方 法 に依 る か を 問 は ず こ れ を偽罔 す る行 為 。

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(f)連 合 国最 高 司令 官 に依 っ て、 又 は同 司令 官 の命 令 に基 い て解 散 させ ら れ又 は非 合 法 と宣告 さ れ た団 体 の 利益 を計 り、 又 は これ を支持 す る行 為 。 (g)上 記 の各 犯 罪 に 共 謀 し又 は これ を教唆幇助 す る行 為(14)。

日本 側 裁 判 所 か ら除 か れ た人 的 ・物 的 管 轄 は 、同 日設 置 が 命 令 され た 「軍 事 占領 裁 判 所(Military  Occupation  Courts)」 に移 され る こ と とな った(15)。

こ の こ と に伴 い 、 日本 側 で は まず 同年5月15日 に 「刑 事 裁 判 権 等 の特 例 に関 す る勅 令 」 を公 布 ・施 行 し(勅 令 第274号)、 軍 事 占領 裁 判 所 へ と管 轄 が 移 さ れ る事 件 につ い て 何 時 で も公 訴 を取 り消 し得 る もの と し、 そ の 指 示 が あ った 場 合 に は監 獄 の 長 は 指 定 され た 者 を拘 禁 又 は留 置 しな け れ ば な ら な い 旨 を規 定 して対 処 した が 、GHQ側 に と っ て こ の 勅 令 は 「刑 事 裁 判 権 の 行 使 に 関 す る 覚 書 」 に対 応 した 措 置 と して は 不 十 分 な もの で あ っ た 。 そ こ で 、「占領 目的 に有 害 な行 為 」 につ い て 「罰 則 の絨毯 を敷 く」

こ と を企 図 し て 、5月17日 に、 「一 週 間 以 内 に 制 定 公 布 せ よ」 と の 口 頭 命 令 を付 して 、 法 務 局 の ア ン ド レー(H.P.Andree)か ら 日本 側 に対 して 勅 令 第311号 の原 案 が 提 示 さ れ る こ と と な っ た の で あ る 。 この 勅 令 案 に は 、 司 法 省 及 び 法 制 局 が 「従 来 の 法 制 と著 し く異 な っ て い る」 と して 強 い 抵 抗 を示 した が 、法 務 局 の バ ッ シ ン(J.Bassin)ら は強 硬 な 姿 勢 を 貫 き、

結 局6月4日 に 日本 側 は 「曩に 貴 方 よ りお 示 し の勅 令 案 を、 全 面 的 に お 受 けす る様 、 今 般 政 府 の 方 針 が 決 定 した」 旨 を 法 務 局 に伝 え、12日 に勅 令 第311号 が 公 布 され る こ と とな った(16)。

さ て 、 勅 令 第311号 の 第1条 は 、 前 掲 の 「刑 事 裁 判 権 の 行 使 に 関 す る 覚 書 」 にお い て 日本 側 の 裁 判 管 轄 か ら除 か れ た 犯 罪 類 型 に つ い て列 挙 し、

こ れ ら に つ い て は 「公 訴 は 、 これ を行 は な い 」 と規 定 して い る。 こ の う ち 、 本 稿 が 主 な 検 討 対 象 とす る 同覚 書 第2項(c)に 掲 げ られ た 「占領 軍 又 は そ の 凡 て の兵 員 、 又 は 占領 軍 に所 属 若 くは 随 伴 す る 凡 て の 者 の 財 産 を権 限 な しに所 持 、 取 得 、 受 領 又 は処 分 す る行 為 」(以 下 「連 合 国 占領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 」)に つ い て は 、 そ の解 釈 及 び 範 囲 に つ い て 、 日本 側 か ら しば しば疑 義 が 提 示 さ れ る こ と とな っ た 。 「刑 事 裁 判 権 の行 使 に 関 す る 覚 書 」 が 発 出 さ れ た2日 後 の2月21日 に 、 こ の件 に つ い て のGHQ側

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「占領 目的 に 有 害 な行 為 」 に 関 す る検 察 官 の起 訴 猶 予 裁 量 の運 用(出 口雄 一)

と 日本 側 と の会 談 が 開 始 さ れ て い る が 、 そ の 際 に も、 「例 へ ば 、 日本 人 が 連 合 国 軍 の倉 庫 に侵 入 し缶 詰 を盗 ん だ 場 合 に は 、 一 応 第 二 項cに よ り、

占領 軍 の 裁 判 管 轄 に 服 す べ き な る も、 同 時 に右 は侵 入 罪 、 窃 盗 罪 、 と し て 、 日本 法 律 に よ り 日本 裁 判 所 に於 て も裁 判 し得 べ き こ と を、 規 定 し た る もの 」 で は な い か と の 日本 側 の 主 張 に対 し、GHQ側 は そ れ を否 定 し、

「御 引例 の 場 合 に は 日本 裁 判 所 に管 轄 権 な き こ とは 、第 二 項 に明 示 しあ り」

と述 べ て い る 。 そ して 、 「日本 裁 判 所 は 、 占領 目的 に有 害 な 行 為 が 、 日本 の法 律 違 反 と な る も の で あ る 限 りこ れ に対 して 裁 判 権 の行 使 を継 続 す る こ とが で きる」 と した上 で 、 「軍 事 占 領 裁 判 所 も亦 、 この 種 の 行 為 そ の 他 占領 目 的 に有 害 な 行 為 に対 して裁 判 権 を 引 取 つ て 行 使 す る こ と を妨 げ な い」 旨 を規 定 した 同 覚 書 第3項 は 「例 へ ば 闇 市 場 取 締 の 場 合 に於 て 、 日 本 法 律 が 之 等 を罰 し得 る もの な ら ば 、 日本 裁 判 所 は 之 を 裁 判 して 可 な る も、 同 時 に 闇 行 為 の 如 き は 、 占領 軍 の 目 的 に 反 す る 行 為 な る を以 て 、 占 領 軍 の 裁 判 所 も管 轄 権 を主 張 し得 る訳 な り」 と返 答 して い る の で あ る(17)。

更 に 、 本 稿 の 問題 関 心 か らは 、2月25日 の 会 談 の段 階 で 、GHQ側 か ら以 下 の よ う な解 釈 が 提 示 され て い る こ とが 注 目 され る 。

1日 本 人 が 、 刀 剣 、 拳 銃 等 を正 当 な 理 由 な く して 所 持 す る 場 合 は 、 其 の 事 自体 に於 て 既 に 連 合 軍 の安 全 に 有 害 な る を以 て 、 該 所 持 者 に 於 て 、 連 合 軍 其 の 者 に対 す る害 意 あ る と否 と を 問 は ず 総 て 連 合 軍 側 に 於 て之 が 審 判 を為 す 。

メ チ ー ル 、 其 の 他 、 有 毒 物 含 有 飲 料 の販 売 に は亦 同 じ、 但 し、 之 等 事 件 を連 合 軍 側 に 於 て 一 応 審 理 し た る 結 果 連 合 軍 に対 す る 害 意 無 き事 明 とな りた る場 合 は 、 該 事 件 を 日本 側 に 移 し審 判 せ しむ こ とあ るべ し。

(以 上 はaに 関 す る もの 。)

2連 合 軍 側 の 内 規 と して は 、 連 合 軍 将 兵 等 が 物 品 を 日本 人 に譲 渡 し、

又 は、 贈 与 す る を一 切 禁 止 し居 る を以 て 、 日本 人 に して 右 将 兵 よ り物 品 を譲 受 け又 は 貰 ひ 受 くる 行 為 は 原 則 と して 総 てunauthorizedと 謂 は ざ るべ か らず 。

然 れ ど も、 実 際 と して は 適 当 な る斟酌 を加 へ 、 極 く少 量 な る物 品 贈

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与 の 如 き(例 、 煙 草 二 、 三 本)は 之 を不 問 に 附 す る 考 な り。(以 上 は bに 関 す る もの)(18)。

この う ち後 者 の 点 を担 保 す る た め に、 同 年3月24日 付 で 「連 合 国 軍 将 兵 よ りの 物 資 購 買 の 禁 止 に 関 す る 覚 書 」 が 発 出 され て お り(19)、更 に 、7 月15日 の 勅 令 第311号 の 施 行 を受 け て 、 以 下 の よ うな 内 容 を持 つ 「連 合 国 軍 将 兵 よ りの 物 品 買 受 等 禁 止 に 関 す る件 」 が7月30日 に ポ ツ ダ ム命 令 と して公 布 ・施 行 さ れ て い る(内 務 司 法 省 令 第1号)。

第 一 条 何 人 も左 の各 号 に掲 げ る物 品 は、こ れ を 連 合 国 占領 軍 将 兵(連 合 国 占領 軍 に 附 属 し又 は 随 伴 す る 者 を含 む 以 下 同 じ)よ り買 受 け又 は 交 換 に よ り譲 受 け る こ と は で き な い 。

一 亜 米 利 加 合 衆 国 そ の他 の 連 合 国 の 所 有 に属 す る 給 与 品

二 連 合 国 占領 軍 将 兵 の使 用 に 充 て る 目 的 を も つ て 連 合 国 政 府 機 関 よ り、 又 は 同 機 関 に よつ て 物 品 給 与 の 権 限 を 附 与 せ られ て お る福 利 機 関 よ り適 法 に給 与 又 は売 渡 さ れ た 給 与 品 そ の他 の 物 品

第 二 条 何 人 も前 条 各 号 に掲 げ る 物 品 に つ き、 同 条 に違 反 して 取 得 せ られ た も の で あ る 事 情 を知 りな が ら、 こ れ を売 渡 し若 し くは 、 買 い 受 け又 は交 換 に よ り授 受 す る こ と は で きな い 。

第 三 条 前 二 条 の 規 定 に違 反 した 者 は 、 三 年 以 下 の懲 役 若 し くは五 千 円 以 下 の 罰 金 又 は拘 留 若 し くは 科 料 に処 す る。 但 し、 情 状 に よ り懲 役 及 び 罰 金 を併 科 す る こ とが で き る。

前 項 の 規 定 は 、 昭 和 二 十 一 年 勅 令 第 三 百 十 一 号 第 一 条 第 四 号 の規 定 が 適 用 さ れ て い る 間 は 、 こ れ を適 用 しな い 。

第3条 第2項 が 規 定 す る よ う に 、 こ の省 令 は 制 定 され た もの の 「実 際 に は 運 用 され て 居 な い 」 状 態 で あ っ た(20}。そ もそ も この 「連 合 国 軍 将 兵 よ りの 物 品 買 受 等 禁 止 に 関 す る件 」 は 、 占領 が 開 始 さ れ て か ら 「国 民 中 ニ 連 合 軍 将 兵 ヨ リ煙 草 其 ノ他 ノ物 資 ヲ買 漁 ル 者 」 が 発 生 し、 こ の傾 向 が

「進 駐 ガ全 国ニ 拡 大 ス ル ト共ニ 各 地ニ 波 及 シ其 ノ犯 情 モ 漸 次 悪 質 トナ リー

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「占 領 目的 に有 害 な行為 」 に 関す る検 察官 の起 訴 猶 予裁 量 の 運 用(出 口雄 一)

部 連 合 軍 将 兵 中ニ ハ 軍 紀 ヲ紫 リ官 給 品 タ ル 軍 衣 、 軍 靴 等 サ へ 盗 ミ出 ス 者 ヲ出 シ 、 他 面 国 民 中ニ ハ 之 ヲ転 売 シ テ 暴 利 ヲ企 求 ス ル 者 ア ル ヲ見 ルニ 至 リ タ リ」 とい う状 況 と な って い た に も拘 らず 「我 国 現 行 法 制 上ニ ハ 之 ヲ 強 力ニ 取 締 ル 法 規 ナ ク」、 そ の 処 分 につ い て 「現 地 進 駐 軍 当 局 ヨ リ軽 キニ 失 ス ル トノ 非 難 各 地ニ 於 テ 起 リ司 法 権 ノ 円 満 ナ ル 遂 行 上 軽 視 シ得 ザ ル情 勢 ヲ惹 起 ス ルニ 至 」っ て い た た め 、この 種 の事 件 に 関 す る 「厳 重 ナ ル 罰 則 」

を課 す た め の ポツ ダ ム 命 令 を 「司 法 内 務 両 省 令 ヲ 以 テ 制 定 ス ベ ク一 月 以 来 総 司 令 部 ト折 衝 ヲ開 始 」 して い た が 、 上 述 の 「刑 事 裁 判 権 の 行 使 に 関 す る覚 書 」 の発 出 を受 け て 「右 省 令 ノ発 布 ハ 更ニ 再 検 討 ヲ要 ス ル コ ト ト」

な っ た と い う経 緯 を持 っ て い る(21)。勅 令 第311号 第1条 第4号 の 規 定 す る連 合 国 占 領 軍 財 産 等 の 収 受 所 持 行 為 は、 さ しあ た り、 軍 事 占領 裁 判 所 が 管 轄 す る もの と して 、 運 用 が 開 始 され る こ と と な っ た の で あ る 。

【2】 勅 令 第311号 の 発 出 の 前 提 と な っ た 「刑 事 裁 判 権 の行 使 に関 す る 覚 書 」 は 、しか し、1947(昭 和22)年6月27日 付 の 「「刑 事 裁 判 権 の 行 使 」 の修 正 に関 す る 覚 書 」(SCAPIN1740)に よ っ て 、 以 下 の よ う な修 正 が 加 え られ る こ と と な っ た 。

1.一 九 四 六 年 二 月 一 九 日付 日本 政 府 宛 覚 書(SCAPIN756)「 刑 事 裁 判 権 の行 使 」 に 関 す る 件‑こ れ は 一 九 四 六 年 九 月 一 九 日付 同 修 正 に 関

す る件(SCAPIN1218)で 修 正 され た‑の 第 二 項cを 削 除 す る。

2.占 領 軍 若 し くは そ の す べ て の 兵 員 、 又 は 占領 軍 に所 属 若 し くは 随 伴 す る凡 て の 者 の財 産 を正 当 の権 限 な しに 所 持 、 取 得 、 受 領 又 は処 分

す る こ と を禁 止 す る。

3.上 記 第 二 項 の 違 反 は 、 一 九 四 六 年 六 月 一 一 日の 勅 令 第 三 一 一 号 の 規 定 に よ っ て 訴 追 す る 。

4.こ の 覚 書 の 内 容 に 抵 触 す る 一 切 の 法 律 規 定 は 、 これ に 従 っ て修 正 す る こ とを 要 す る。

5.勅 令 第 三 一 一 号 に よ っ て 行 わ れ た 裁 判 事 件 に 関 す る 月 次 報 告 を、

各 事 件 毎 に法 廷 の所 在 地 、事 件 番 号 、犯 罪 の概 要 、被 告 訴 人 員 数 、抗 弁 、

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有 罪 の 判 決 及 び そ の 他 関 係 事 項 を 記 入 の 上 、 各 地 方 軍 政 部 を経 て本 司 令 部 に提 出 せ ね ば な ら ない(22}。

こ の 覚 書 の発 出 に よ り、 「刑 事 裁 判 権 の 行 使 に 関 す る 覚 書 」 に よ っ て 日 本 側 の 裁 判 管 轄 か ら除 か れ て い た 連 合 国 占 領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 が 日 本 側 に移 管 さ れ る こ と と な り、 そ の 取 扱 い の た め に勅 令 第311号 の 一 部 改 正 が 必 要 と な っ た(23)。そ の 措 置 に 関 す る 日本 側 とGHQ側 との 間 の 会 談 は7月1日 か ら 開始 さ れ て い るが 、 そ の 過 程 で は 「占領 管 理 体 制 」 の 法 的 特 質 を検 討 す る上 で 興 味 深 い論 点 が い くつ か提 示 さ れ て い る 。

ま ず 問 題 と な っ た の は 、 連 合 国 占 領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 に対 して 科 さ れ る 罰 則 の軽 重 につ い て で あ っ た 。 当 初 日本 側 は 、 前 述 し た 「連 合 国 軍 将 兵 よ りの物 品 買 受 等 禁 止 に 関 す る件 」 等 を踏 ま え て 「三 年 以 下 の懲 役 若 し くは五 千 円以 下 の 罰 金 」 程 度 を想 定 して い た が(24)、 こ の 点 に つ い て 、GHQ法 務 局 の バ ッ シ ン ら は 「勅 令 第 三 百 十 一 号 は 十 年 、 七 万 五 千 円 と きめ て い る の に省 令 の 方 が 三 年 、 五 千 円 と い うの は 、 そ の 調 和 か ら い つ て お か しい 。 わ れ わ れ と して は 一 箱 の 煙 草 と い う よ う な小 さな 事 件 を問 題 に す る の で な くて 、 大 き な 闇事 件 の 撲 滅 を 目的 と して い る の で あ る が 、こ の刑 で他 の 目的 が 達 せ られ る で あ ろ うか 」と疑 義 を提 示 して い る。

こ れ に 対 し 日本 側 は 、 上 述 の 「昭 和 二 十 一 年 内 務 、 司 法 省 令 第 一 号 を 改 正 して 、 そ の 第 三 条 第 二 項 を 削 る と、 同令 第 一 条 が 生 きて は た ら くこ と に な る 」 と して 「そ も そ も、 こ の 省 令 は今 日 あ る に そ な え て作 つ た もの なの で あ るが 、 こ の省 令 で ま か な う こ と に して は い け ない か」 と反 論 し、

闇 行 為 に つ い て は物 価 統 制 令 に よ っ て 処 罰 す る こ とが 可 能 で あ る 旨 回答 し て い る(25)。GHQ側 は 一 旦 了承 した が 、 後 に 、 軍 事 占 領 裁 判 所 を構 成 す る憲 兵 裁 判 所(Provost  Courts)の 罰 則 の 基 準 を勘 案 して 「懲 役 の 方 を最 高 五 年 と し、重 金 の 方 も最 高七 万 五 千 円 か 、或 は 少 く と も五 万 円程 度 に 引 き上 げ る 方 が 良 い の で は な い か と思 わ れ る」 と して い る。 「さ よ う に しな い と、 プ ロ ボ ー ・コー トの方 で 事 件 を取 つ て 、 しまつ て な か なか 日本 側 の 方 へ 渡 そ う と し な い お そ れ が あ る」 た め 、 「プ ロ ボ ー コ ー トを コ ン トロ ー ル して 、事 件 を 日本 側 か ら取 ら ない よ うに す る た め に 、是 非 刑 の足 並 み を

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「占領 目 的 に有 害 な行 為 」 に関 す る検 察 官 の 起 訴 猶予 裁 量 の 運 用(出 口雄 一)

揃 え て も らい た い」 とい う のが 、 そ の 理 由 で あ っ た(26)。

ま た 、勅 令 第311号 の 改 正 、及 び 、 そ れ に伴 う立 法 措 置 を どの よ う な法 令 形 式 で 行 うべ きか とい う点 も議 論 と な っ た。 こ の 問 題 につ い て は 、 日 本 側 は 「新 憲 法 の 実 施 さ れ た 今 日、 殊 に 国 会 の 会 期 中 で あ る現 在 、 政 令 の 形 式 で 行 い 得 る か ど う か 、 法 律 に よ ら ね ば な ら な い か ど う か の 点 に つ い て は 、 法 制 局 と も打 合 せ の上 決 定 す る こ と と した い」 と述 べ て お り(27)、

当 初 は 法 律 に よ り改 正 を行 う こ と と し て い た。 一 方 、GHQ側 で こ の 問 題 に つ い て 強 い 関 心 を寄 せ て い た の は 民 政 局 で あ り、そ の 見 解 は 当 初 「本 問 題 も 目下 国 会 開 会 中 で あ る か ら、 総 司 令 部 側 で 日時 の制 限 を附 して い る と い う よ う な 緊 急 や む を え な い もの で な い 限 り政 令 で な く法 律 の 形 式 に よ るべ きだ 」 と い う もの で あ っ た。7月15日 に行 わ れ た 会 談 に お い て 、 国 会 審 議 の 遅 延 に 逢 着 した 法 務 局 が 、 口頭 で この 件 につ い て の 立 法 措 置 を 「本 日 か ら十 日内 に実 施 す る こ と を命 ず る 」旨 を 日本 側 に伝 え た 際 に も、

日本 側 の 申 し出 に よ っ て 法 務 局 と民 政 局 の 問 で 電 話 に よ る調 整 が 行 わ れ 、 民 政 局 の ケ ー デ イス(C.L.Kades)の 見 解 と し て 、 「勅 令 は現 在 法 律 と 同 様 の 効 力 を 有 す る もの と な つ て お り、 勅 令 を政 令 で 改 正 す る こ とは 許 さ れ な い 。 も し さ よ う な こ と を して も、 最 高 裁 判 所 が 違 憲 の 判 決 を す る こ と に な つ て 了 うだ ろ う」 と の 意 見 が 伝 え られ て い る(28)。 しか し興 味 深 い こ と に 、7月31日 に 国 会 に提 出 され た法 律 案 は 、後 に 、民 政 局 自 らが 「国 会 で 審 議 す べ き も の で は な くて 、 ポツ ダ ム 勅 令 で 規 正 され る べ き もの で あ る とい う こ と に なつ た 」 と して 審 議 を差 し止 め て い る の で あ る(29)。 こ の 点 に つ い て は 「要 す る に こ の種 の 事 項 を 国会 の論 議 に付 した くな い と い う こ とで あ つ た と思 わ れ る」 と も推 測 され て い るが(30)、民 政 局 の オ プ ラ ー は 、8月27日 付 の 民 政 局 内 に お け る 覚 書 で 「連 合 国 最 高 司 令 官 の 指 令 が 実 行 され る 必 要 が あ り、 そ の 修 正 に他 の選 択 肢 が 無 い とい う よ う な 場 合 で あ れ ば 、 立 法 の 基 礎 的 な 要 素 の 一 つ を構 成 す る行 動 の 自 由 が 欠 け て い る 」 た め 、 こ の場 合 は 国 会 に よ る立 法 よ り もポツ ダ ム 命 令 の 方 が 望 ま しい との 意 見 を記 録 して い る(31)。こ の 見 解 は 、 ち ょ う ど 同 じ時 期 に 進 め られ て い た 「日本 国 憲 法 施 行 の 際 現 に 効 力 を有 す る命 令 の 規 定 の 効 力 等 に 関 す る法 律 」(昭 和22年 法 律 第72号)の 改 正 過 程 に お い て 、オ プ ラ ー

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が 後 に提 示 す る こ と とな る 、ポ ツ ダ ム命 令 は 「明 白 に 占 領 法 規(occupation l

aw)を 構成 し、 そ れ らを 改 正 した り、 あ るい は 無 効 に な る こ と を決 定 し た りす る 国 会 の権 限 を超 越 す る(beyond  the power  of the Diet)」 との 立 場 と 軌 を一 に す る もの で あ っ た と考 え られ る 。 第 一 回 国会 は ま さ に 「占領 管 理 体 制 」 と 「新 憲 法 秩 序 」 との矛 盾 が 表 面 化 す る 場 で も あ っ た の で あ る(32)。

しか し、 最 大 の 論 点 と な っ た の は、 や は り、 連 合 国 占 領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 と検 察 官 の起 訴 猶 予 裁 量 権 との 関 係 で あ っ た。 前 述 した よ う に 、

勅 令 第311号 の 制 定 に あ た っ て 、 日本 側 はGHQの 法 務 局 と再 三 の 折 衝 を重 ね 、 「占 領 目的 に有 害 な 行 為 」 に 関 して は 、 日本 の検 察 官 は 「全 般 的 に進 駐 軍 の 意 向 に依 つ て 拘 束 せ らるゝ こ とゝ な りた る もの 」 の 、 「例 へ ば 或 る 進 駐 軍 関 係 の 事 件 に付 、 之 を起 訴 す べ きや 又 は 不 起 訴 処 分 に付 す べ き や 疑 は し き場 合 に は、 事 前 に 現 地 進 駐 軍 と連 絡 して適 当 な る指 示 を 求 む べ く、 此 の 場 合 現 地 進 駐 軍 に於 て 当 該 被 疑 者 の 年 齢 、 境 遇 そ の 他 諸 般 の 情 状 を総 合 勘 案 の 上 、 起 訴 、 不 起 訴 に 関 す る一 定 の指 示 を与 ふ べ き に よ り、検 事 は そ の 指 示 に従 ひ事 件 を処 理 す べ き こ とゝ な る な り」 と して 、 検 察 官 が 事 前 に 地 方 軍 政 部 と折 衝 を行 う こ と に よ り、 起 訴 猶 予 処 分 を行

い 得 る との 妥 協 を引 き 出 して い た 。 実 際 、 こ の 枠 組 み に 従 っ た 起 訴 猶 予 処 分 は 広 範 に行 わ れ て お り、 そ の 実 績 を 踏 ま え て 日本 側 は 、7月10日 に 持 参 した 質 問 書 にお い て 「public prosecutionの 行 使 につ い て は、Paragraph

l article 2 of Imperial Ordinance No.311の 施 行 に つ い て 当 時 各 地 軍 政 部 よ り与 え られ た 諒 解 に 従 い 従 来 どお り無 罪 、 軽 微 、 情 状 酌 量 等 の 理 由 に よ る 不 起 訴 処 分 を 行 う こ とは 差 支 な い もの と解 す る」 旨 の 申 し入 れ を行 っ て い る 。 これ に対 して 法 務 局 側 は 当 初 「貴 見 の 通 りで あ る」 と 回答 した が 、 後 に これ を撤 回 し、 「こち らか ら オ フ ィ シ ャル な意 見 を発 表 す る こ と は、 こ れ を差 し控 え る 方 が よ い と思 わ れ るか ら、 三 百 十 一 号 の 場 合 と同 様 、各 現 地 の 軍 政 部 と相 談 の 上 で 、適 当 に処 理 す る よ う に して も らい た い」

と意 見 を変 更 して い る。 一 方 民 政 局 の オ プ ラ ー らは 、 法 令 の 条 文 と実 務 の 運 用 の 乖 離 を問 題 視 す る 観 点 か ら、この 機 会 に 「占 領 目 的 に有 害 な行 為 」 に つ き起 訴 猶 予 裁 量 の 明 文 化 を企 図 して い た が 、 日本 側 は 「バ ッ シ ン氏 な どの ご尽 力 の 結 果 、 疑 わ しい 事 件 に つ い て は 、一 々現 地 軍 と相 談 して

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「占 領 目的 に有 害 な行 為 」 に 関す る検 察官 の起 訴 猶予 裁 量 の 運 用(出 口雄 一)

起 訴 不 起 訴 を決 定 して お り、 別 段 の 不 都 合 も生 じて居 らな い 状 態 」 で あ る と して 、この 点 に つ い て は 消 極 的 な 態 度 を示 して お り、「将 来 検 事 が 一 々 現 地 軍 の 意 見 を 聞 か な くて も よい よ う に して あ げ た い と思 つ て 努 力 して」

い る とい う オ プ ラ ー の 発 言 に対 して も 「G・SとL・Sの 板 挟 み に な つ て 、 相 当 に 当 惑 」 して い る と述 べ る に留 ま り、GHQ内 部 の 対 立 を超 え て ま で 起 訴 猶 予 裁 量 の 明 文 化 に こ だ わ っ て い な い こ とが 注 目 され よ う(33)。

こ の 点 は 、 連 合 国 占 領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 の 取 締 りの 目的 及 び 射 程 と密 接 に 関 連 し た 問 題 で あ っ た 。7月8日 に 行 わ れ た 会 談 の 際 、 法 務 局 の バ ッ シ ン は 「一 箱 の 煙 草 とい う よ う な小 さ な事 件 を 問 題 にす る の で な くて 、大 きな 闇 事 件 の撲 滅 を 目的 と して い る」 の で あ り、そ の た め に 「小 さ な 犯 罪 は 、 な るべ くこ れ を起 訴 しな い よ う に 、 も し起 訴 して も説 諭 か 罰 金 位 で す ま す こ と に し、 特 に重 大 な犯 罪 につ い て徹 底 的 に之 を取 締 ま る こ と を望 む もの で あ る」 と した 上 で 「当 方 で も、 プ ロボ ー ・コ ー トに、

日本 側 で 小 さ な事 件 を 起 訴 し な い らか と て か れ こ れ 文 句 を言 は な い よ う に指 示 を与 へ る積 りで あ る 」 と して 、 「重 ね て い うが とに か く持 つ て い る か らす べ て 罰 す る と い う の で な く、 キ ヤ ンデ ー を一 つ 持 つ て い る とい う よ う な小 さな 事 件 に は 手 心 を加 え て処 罰 な しい とい う よ う に や つ て 貰 い た い 」 旨 を 日本 側 に伝 え 、 連 合 国 占領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 につ い て は 、 法 定 刑 を重 く設 定 した 上 で 、 起 訴 猶 予 裁 量 の 運 用 に よ っ て悪 質 な もの の 取 り締 ま りを徹 底 す る よ う求 め て い る。

更 に 、 「不 法 に所 持 す る 」 とい う文 言 の 意 味 につ い て 日本 側 が 疑 義 を呈 示 した 際 に も、 バ ッ シ ン は 「酒 保 で 買 つ た 品 物 は 、 日本 人 にや つ て は い け な い こ と に な つ て い る 。 徒 つ て 自分 が 貴 下 に一 本 の煙 草 を与 え る こ と も、 厳 密 に言 え ば 、 「不 法 」 で あ る」 と し、 以 下 の よ う に述 べ て い る こ と が 注 目 され る 。

自分 が 貴 下 に煙 草 を一 、 二 本 与 え て も、 何 人 も 自分 を処 罰 す る こ と は しな い 、 そ れ は 自 分 に は 「意 思 」(酒 保 品 を 日本 人 に や つ て は い け な い とい う規 則 を犯 す 意 思 の 意 味 だ と思 う‑服 部 〔終 戦 連 絡 事 務 局 事 務 官 〕 註)が な い か らで あ る。 日本 法 は さて お き、 英 米 法 は 「意 思 」

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を重 ん ず る。 「目的 」 が 不 法 で あ る と きは 処 罰 す る が 、 しか ら ざ る と き に は 処 罰 し な い 。 そ れ 故 、 各 検 察 庁 に対 して 少 し位 の 煙 草 や 少 しの キ ヤ ンデ ー を持 つ て い る の は 「不 法 の 所 持 」 に、 は い ら な い と い う こ と を指 示 す れ ば よい 。 進 駐 軍 の 家 庭 で 、 日本 人 の 女 中 に 着 古 した 着 物 を や つ た り、 食 物 の残 り をや つ た りす る 場 合 も 同様 で 、 こ の よ う な事 件 は起 訴 す べ きで は な く、 仮 に 起 訴 され て も刑 罰 は 科 さ な い よ う に裁 判 官 が 裁 量 す べ き だ と思 う。 要 る に 、 司 法 官 憲 の 裁 量 に よ る こ と とす れ ば よ い(34)。

こ こ に 看 取 され る 、 日本 法 と ア メ リ カ法 の 「比 較 法 的 差 異 」 の認 識 は 、 前 年 の 勅 令 第311号 の 制 定 過 程 に お い て 法 務 局 が 示 して い た 「元 来 、 日 本 の 法 制 は 、 大 陸 法 系 故 、 英 米 法 の 立 前 と一 致 せ ざ る は 当 然 に し て 、 若 し両 者 が 現 実 に衝 突 す る と き は、 日本 側 に於 て 、 英 米 法 の立 場 に 譲 歩 す る は 当 然 な る 点 を、 十 分 念 頭 に置 か れ 度 き こ と な り」 と の言 明 と軌 を 一 に した 、 あ る意 味 「政 治 的 」 な も の で あ り、 法 制 改 革 を担 っ て い た 民 政 局 の 法 律 ス タ ッ フ が 彼 我 の 「比 較 法 的差 異 」 の 認 識 を 「協 調 的 努 力 」 の 実 践 へ と接 続 した 態 度 と は 好 対 照 を な して い る(35)。法 務 局 は7月10日 の 会 談 で 、連 合 国 占領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 につ い て 過 失 犯 を処 罰 す る こ と の 可 否 が 問題 とな っ た 際 に も 「米 国 に は 、制 定 法(statute)と 普 通 法 (Common  law)と が あ る 」 と述 べ 、 「も し制 定 法 で 飲 食 店 をや る 者 は 免 許 を受 け な け れ ば な ら な い と い う規 定 が あ る とい う 場 合 に免 許 を 求 め に 行 つ た が 役 所 で は 後 に して呉 れ と い つ て与 え な か つ た た め 、 免 許 を 受 け な い で 営 業 を した と い う よ うな 場 合 に は 実 際 上 処 罰 し な い取 扱 に して い る」

と して 、当該 行 為 を 「故 意 の有 無 を 問 わ ず 処 罰 」しつ つ 「運 用 で 適 当 に 中和 」 す る こ と を示 唆 し、 日本 法 との 「比 較 法 的 差 異 」 を説 得 の材 料 と して 持 ち 出 して い る(36)。

以 上 の よ う な議 論 を踏 ま えて 、 日本 側 は7月23日 に 法 制 局 の 審 査 を経 た 法 律 案 をGHQ側 に呈 示 した 。 この 最 終 案 に は 、 「社 交 友 情 そ の他 の 正 当 の 理 由 に よ り贈 与 さ れ た前 項 の財 産 」 に つ い て は収 受 や所 持 を認 め て も 良 い 、 と の 規 定 が 盛 り込 まれ て い た が 、GHQ側 は 「一 、 二 本 の タバ

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「占領 目的 に有 害 な行為 」 に 関す る検 察官 の起 訴 猶 予裁 量 の 運 用(出 口雄 一)

コ を贈 与 す る こ と」 も 「そ れ が 適 法 で は な くて 、 違 法 で あ る こ と は 間 違 い な い の で あ る」か ら 、こ れ ら を 「犯 罪 不 成 立 の 規 定 に して し ま わ れ て は、

甚 だ 困 る」 と述 べ 、 こ の 部 分 を 削 除 し た 上 で 「贈 与 の 場 合 で も全 部 い け な い とい う こ とに して 、後 は 、法 律 の 運 用 に任 せ る こ と に して お き、適 宜 、 不 起 訴 裁 量 権 を行 使 す る こ とに した 方 が 、 よ い の で は な い か 」 との 主 張

を繰 り返 した(37)。 日本 側 は 「ア メ リ カ側 と 日本 側 との接 触 が だ ん だ ん 頻 繁 に な つ て ゆ こ う と して い る こ の 際 」 に は 「社 交 友 情 の た め 贈 与 程 度 の もの は 罪 に な らぬ 」 とす る の が 適 当 で は な い か と主 張 し、 「一 応 適 法 だ が 起 訴 し な い で す ま す よ う な や り方 は 、 日本 の 法 制 の 建 前 に は そ ぐわ な い 嫌 い が あ る よ う に思 う」 と の 反 駁 を行 っ た が 、GHQ側 は以 下 の よ う に 強 硬 な 姿 勢 を 貫 い て い る 。

総 〔総 司 令 部 側 〕 そ の 議 論 に は賛 成 で きな い 、 成 程 、 気 持 の 上 か ら云 え ば 、貴 下 の 云 わ れ る こ と もわ か ら な い こ と は な い が 、第 一 に 、例 え ば 、 戸 を少 しで も 開 け ば 人 が ザ ァー ッ と入 つ て 来 て 、結 局 、 初 め か ら大 き

く開 け た の と 同 じ結 果 に な つ て し ま う危 険 が あ る し、 そ れ に 一 定 の 限 度 を きめ て 、 適 法 か 否 か の 標 準 を 立 て る こ と も 、 立 法 技 術 上 難 しい こ と だ と思 わ れ る の で 、 む しろ 、 全 然 さ よ う な こ と を書 か ず に、 全 部 的 に禁 止 して お く方 が よ い の で は な い か と思 う。 そ して 一 応 、 そ うい う こ と に して お い て ご く小 さ な 事 件 の 場 合 は 、検 察 官 が 現 地 の 軍 政 部 と 連 絡 して 不 起 訴 処 分 に す る か 、 又 は 仮 に起 訴 す る に し て も、 軽 い 罰 金 ぐ らい で 済 ま す こ と に して お け ば 、 よい わ け で は な い か 。 第 二 に 、 先 日 の メ モ ラ ン ダ ム を 見 て も、 占 領 軍 等 の 財 産 のpossession及 びreceipt を 一 般 的 に 禁 止 して い る の で あ る か ら、 こ の 点 か ら云 つ て も貴 下 の 云 わ れ る よ う な 除 外 例 を 設 け る こ と は 、 こ の メモ ラ ン ダ ム の 趣 旨 に沿 わ な い こ とに な る と思 う。

総  当 方 の 提 案 が 、 多 少 日本 の法 制 上 の 建 前 に そ ぐわ ぬ と こ ろが あ る か も知 れ な い とい う こ とは 認 め るが 、 と もか く、 こ の 法 律 は 憲 法 や 刑 法 等 の永 久 的 な も の と は違 つ て 、 占 領 が 終 る まで の 臨 時 的 な も の で あ る し、 そ れ に 、 現 在 米 軍 の 物 資 は、 日本 の 経 済 界 を 混 乱 に陥 れ て い る

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有 力 な 要 素 で あ る か ら、 厳 重 に そ の 流 れ を 取 締 らな け れ ば な ら な い 。 さ もな い と、 しま い に は 、円 が 全 く無 価 値 に なつ て 、ア メ リ カ タバ コが 、 そ れ に代 つ て 通 貨 の 役 目 を す る とい う よ う な 破 局 に 陥 る こ と が な い と

も云 え な い と思 う。

総  仮 に 当 方 の 提 案 通 りす る と して も、 検 察 官 は、 実 際 上 起 訴 、 不 起 訴 の裁 量 権 を失 わ な い で 持 つ て い る の で あ る か ら、 こ の 点 か ら云 つ て

も、 日本 の法 制 の 上 か ら見 て お か しい こ と は な い と思 う(38)。

日本 側 は 「貴 下 の 云 わ れ る こ と は よ くわ か つ た か ら、 御 趣 旨 に 沿 う よ う に修 正 す る こ と に し よ う」 とGHQ側 の 主 張 を受 け 入 れ 、 「連 合 国 占 領 軍 、 そ の 将 兵 又 は 連 合 国 占 領 軍 に 附 属 し、 若 し くは 随 伴 す る 者 の財 産 の 収 受 及 び所 持 の 禁 止 に 関 す る 法 律 案 」 は7月31日 に 国 会 に提 出 さ れ た 。

しか し、 上 述 した よ う に 、 民 政 局 内 部 の方 針 転 換 に よ りこ の 法 律 案 は撤 回 さ れ 、8月25日 に 「昭 和 二 十 年 勅 令 第 五 百 四十 二 号 ポ ツ ダ ム 宣 言 の 受 諾 に伴 い発 す る命 令 に 関 す る件 に基 づ く連 合 国 占領 軍 、 そ の 将 兵 又 は連 合 国 占 領 軍 に 附 属 し、 若 し くは 随 伴 す る者 の財 産 の 収 受 及 び所 持 の 禁 止

に関 す る政 令 」 が 政 令 第165号 と して 公 布 され 、即 日施 行 され た。

第 一 条  連 合 国 占領 軍 、 そ の 将 兵 又 は連 合 国 占領 軍 に 附 属 し若 し くは 随 伴 す る 者 の財 産(連 合 国 占 領 軍 の 発 行 す る ドル 表 示 軍 票 、 英 国 占 領 軍 の 発 行 す る ポ ン ド表 示 軍 票 又 は 英 国 占 領 軍 の 使 用 す る一 ペ ニ ー 若 し くは半 ペ ニ ー の オ ー ス トラ リヤ 銅 貨 幣 を 除 く。)は 、 何 人 も、公 に認 め られ た 場 合 を 除 くの外 、 こ れ を 収 受 し、 又 は所 持 して は な ら な い 。

日本 国 の 通 貨 又 は 連 合 国 占 領 軍 の 将 兵 若 し くは 連 合 国 占 領 軍 に附 属 し若 し くは随 伴 す る者 が 、 連 合 国 占 領 軍 、 連 合 国 政 府 機 関 又 は 同 機 関 に よつ て 物 品給 与 の 権 限 を 附 与 さ れ て い る福 利 機 関 の い ず れ に も該 当 しな い 者 か ら 日本 国 内 にお い て 取 得 した 日本 国 内 に お い て 製 造 され た 物 品 は、 前 項 の 規 定 に か か わ らず 、 こ れ を収 受 し、 又 は 所 持 す る こ と が で きる 。

第 二 条  連 合 国 占 領 軍 の 発 行 す る ドル 表 示 軍 票 、 英 国 占 領 軍 の 発 行

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「占 領 目的 に有 害 な行 為 」 に 関す る検 察官 の起 訴 猶 予裁 量 の 運 用(出 口雄 一)

す る ポ ン ド表 示 軍 票 又 は 英 国 占 領 軍 の 使 用 す る 一 ペ ニ ー 若 し くは 半 ペ ニ ー の オ ー ス トラ リヤ 銅 貨 幣 は、 何 人 も、 他 の 法 令 に 別 段 の 定 が あ る 場 合 を 除 い て、 これ を収 受 し、 又 は所 持 して は な ら な い 。

第 三 条  第 一 条 第 一 項 又 は前 条 の規 定 に違 反 した 者 は 、 こ れ を 五 年 以 下 の 懲 役 又 は五 万 円 以 下 の 罰 金 に 処 す る 。

前 項 の 罪 を犯 した 者 に は 、 情 状 に よ り懲 役 及 び 罰 金 を併 科 す る こ と が で き る(39)。

ま た 同 日、 勅 令 第311号 の 一 部 改 正 を 行 うポ ツ ダ ム命 令 が 公 布 ・施 行 され 、 「連 合 国 占領 軍 、 そ の 将 兵 又 は連 合 国 占領 軍 に 附属 し、 若 し くは 随 伴 す る 者 の財 産 を権 限 な く して 所 持 、 取 得 、 受 領 若 し くは 処 分 す る行 為 」

につ い て の 日本 側 で の公 訴 を 禁 じた第1条 第4号 が 削 除 さ れ る こ と と な っ た の で あ る(政 令 第166号)。

三  勅 令 第311号 及 び 政 令 第165号 の 運 用

【1】 さ て 、 政 令 第165号 の 制 定 に よ っ て 、1947(昭 和22)年8月25日 以 降 に発 生 し た連 合 国 占領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 に つ い て は 、 そ の 管 轄 が 軍 事 占領 裁 判 所 か ら 日本 側 裁 判 所 へ と移 さ れ る こ と とな っ た が 、 同 年5 月3日 に は 「日本 国 憲 法 の施 行 に伴 う刑 事 訴 訟 法 の 応 急 措 置 に関 す る 法 律 」

(法律 第76号 、 以 下 「応 急 措 置 法 」)が 施 行 さ れ て お り、 大 正 刑 事 訴 訟 法 の 下 で 行 わ れ て い た刑 事 実 務 の 運 用 に も大 きな 変 動 が 生 じる こ と と な っ た(40)。応 急 措 置 法 は 、 そ の名 称 が 示 す よ う に、 憲 法 附属 法 の改 正 作 業 が 難 航 し た こ と に よ る 「新 憲 法 の 実 施 の た め に 必 要 な 、 い わ ば 最 小 限 度 の 応 急 措 置 」 で あ っ た が 、 そ の 一 方 で 「新 憲 法 に盛 ら れ た 理 想 を追 う て 著 し く現 実 を変 革 し よ う と して い る 点 に お い て 、 刑 事 訴 訟 法 の 画 期 的 な 改 正 」 で あ っ た(41)。

政 令 第165号 の 制 定 に伴 う事 件 処 理 の 引 継 ぎ に 係 わ る調 整 は 、 こ の 変 動 を 踏 ま え な が ら行 わ れ る こ と と な っ た 。 日本 側 とGHQ側 と の 間 で8 月4日 に 「近 い 将 来 右 法 案 〔連 合 国 占領 軍 、 そ の 将 兵 又 は連 合 国 占領 軍

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に 附 属 し、 若 し くは 随 伴 す る 者 の 財 産 の 収 受 及 び 所 持 の 禁 止 に 関 す る法 律 案 〕 の 議 会 通 過 後 に お け る 手 続 上 の 問 題 」 が 話 し合 わ れ た 際 に も、 逮 捕 手 続 に 関 し て 「先 般 の 刑 訴 応 急 措 置 法 に よ る と、 検 察 官 は被 疑 者 逮 捕 後 七 十 二 時 間 以 内 に、 裁 判 官 に対 し、 拘 留 状 の 請 求 を しな け れ ば な ら な くな つ て い る」 こ と を踏 ま え 、MP(Milltary  Police)が 連 合 国 占領 軍 財 産等 収 受 所 持 行 為 を行 っ た 犯 人 を逮 捕 した 場 合 の 「時 間 的 制 限 の起 算 点 」 を ど こ に置 くべ きか が ま ず 協 議 され て い る(42)。逮 捕 に伴 う身 柄 拘 束 時 間 の 問 題 は 、 応 急 措 置 法 の 制 定 過 程 に お い て 「逮 捕 は 、 取 調 べ を 伴 うの が 当 然 で あ る」 とす る 「日本 的 な 逮 捕 観 」 と 「警 察 官 は 、 逮 捕 し た被 疑 者 を 遅 滞 無 く裁 判 官‑な い し検 察 官‑の も とへ 送 致 す べ き だ 」 とす る

「ア メ リ カ的 な 逮 捕 観 」 との 鋭 い対 立 が 見 られ た 問 題 で あ っ た が(43)、司 法 省 は 「日本 側 の 警 察 官 が 、 身 柄 をM・Pか ら 受 取 つ た 時 を起 算 点 と す べ き だ と い う解 釈 も、 も ち ろ ん 成 り立 ち得 る し、 又 実 際 上 もM・Pに 於 て相 当 期 間 身 柄 を拘 束 して い る こ と もあ る と思 う」が 、運 用 と して は 「M・

Pが 犯 人 を逮 捕 した と きか ら七 十 二 時 間 以 内 に な るべ くな ら手 続 を運 び た い と思 つ て い る 」 と して 、GHQの 法 務 局 に 対 し て 「現 地M・Pと 連 絡 して 、 犯 人 の 身 柄 は 、 で き る だ け早 く これ を 、 日本 側 官 憲 に 引 渡 す よ

う指 示 して頂 き た い 」 と要 請 して い る 。 こ れ に対 して 法 務 局 の バ ッ シ ン は 「七 十 二 時 間 とい う時 間 的 の 制 限 は 、日本 側 の 警 察 が 、犯 人 の 身柄 を、M・

Pか ら受 取 つ た時 か ら起 算 す る こ と に して 、さ しつ か え な い 」と した 上 で 、 連 合 国 占 領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 は 引 き続 き軍 事 占 領 裁 判 所 に お い て も 取 扱 う こ とが 出 来 る 以 上 は 「M・Pと して も、 事 件 を 日本 側 に 移 す べ き や 否 や に つ い て相 当 、 慎 重 に 考 慮 す る こ と も あ り得 る と思 わ れ る の で 、 犯 人 の 身 柄 を、 早 く、 日本 側 に引 き渡 す よ う に と い う よ う な命 令 を 出 す わ け に は ゆ か な い 」 と の 姿 勢 を示 し て い る(44)。 こ の 問 題 は 、8月12日 午 後 に行 わ れ た 日本 側 と民 政 局 との 問 の 会 談 で も議 論 され て お り、 日本 側 は 「将 来M・Pが 本 件 被 疑 者 を捕 え た 場 合 」 に は 「原 則 と して 、 日本 側 の 検 察 官 な り司 法 警 察 官 吏 な りが 、 裁 判 官 か ら逮 捕 状 を も らつ て 、 そ れ に よつ て 、 身 柄 の 引 取 を 受 け る」 こ と と な る が 「M・Pが 、 身 柄 を 同 行 して 、 即 刻 、 身 柄 の 引 取 を求 め て 来 た よ う な 場 合 に は 、 応 性 の 措 置 と

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「占領 目的 に有 害 な行 為」 に関 す る検 察 官 の 起 訴猶 予 裁 量 の 運用(出 口雄 一)

して 、 刑 訴 応 急 措 置 法 第 八 条 第 二 号 に よ る 緊 急 逮 捕 処 分 と して 、 事 後 直 ち に裁 判 官 の 逮 捕 状 を求 め る手 続 を 執 る」 こ と と し、 ま た 「応 急 措 置 法 第 八 条 第 三 号 所 定 の 七 十 二 時 間 の 時 間 的 制 限 は、 現 実 にM・Pら 身 柄 を 引 取 つ た 時 か ら起 算 す べ き もの と思 つ て い る 」 との 見 解 を伝 え て い る が 、 民 政 局 の オ プ ラー らか らは 特 段 の 異 論 は 出 て い な い(45)。政 令 第165 号 の 制 定 を受 け て 日本 側 で 発 出 さ れ た 通 牒 に お い て は 、 被 疑 者 の 受 取 は 、 応 急 措 置 法 第8条 第1号 及 び 第2号 「執 れ の 場 合 も四 十 八 時 間 の 起 算 点(逮 捕 の 時)は 占領 軍 官 憲 よ り現 実 に 身 柄 の 引 渡 を受 け た と き と解 して 取 扱

う」 こ と とす る が(46)、 「具 体 的 事 件 の 処 理 に 当 つ て は で き る だ け犯 人 が 事 実 上 拘 束 を受 け た 時 間 を斟酌 さ れ た く、 な お 引 継 を受 け る に 当 つ て は 、 な るべ く進 駐 軍 側 よ り被 疑 事 実 及 び 関 係 証 拠 の梗 目 を記 載 した 書 面 の 公 布 を受 け る こ と と さ れ た い 」 と され て い る(47)。

GHQの 法 務 局 との 会 談 に お け る 日本 側 の 主 張 の 含 意 は 、 連 合 国 占 領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 の 日本 側 裁 判 所 へ の速 や か な 移 管 に つ い て の 地 方 軍 政 部 へ の 命 令 発 出 を促 す こ と で あ っ た もの と思 わ れ る。 逮 捕 の 起 算 点 に つ い て の 議 論 に 続 け て 、 日本 側 は被 疑 者 の 身柄 引 渡 しの 際 に 、 証 拠 物 の 引 渡 し と共 に、 上 述 の 通 牒 で 言 及 さ れ て い る よ う に 「犯 罪 事 実 の概 要 を書 面 に 書 い て 、 一 緒 に引 継 い で 欲 しい 」 こ と、 更 に 「犯 人 が 事 実 を否 認 して い る場 合 に は 関係 証 人 の住 所 氏 名 を も知 らせ て 頂 き た い 」 旨 を法 務 局 側 に要 請 して い る。 これ に対 して法 務 局 の バ ッシ ンは 、 「犯 人 を逮 捕 して 日本 側 に引 継 て 仕 事 は 、 東 京 や 横 浜 で は 、M・Pが や つ て い る が 地 方 に よつ て はM・G(Military  Govemment)が や つ て い る と ころ も あ つ て 、 画 一 的 な指 令 を 出 す こ と は至 難 で あ る 」 た め 、 「犯 罪 事 実 の 概 要 を書 面 に 書 い て 引 継 い だ り、関 係 証 人 の住 所 氏 名 を 日本 側 に知 らせ た りす る こ と は、

一般 的 に指 令 す る わ け に は ゆ か ない 」 と して 、 「結 局、現地 の司法官憲が、

当 該 地 方 の 進 駐 軍 当 局 と適 宜 折 衝 して、 解 決 す る よ うに して も ら い た い と 思 う」 と伝 え て お り、 更 に 日本 側 が 「貴 官 の 御 意 見 を各 現 地 の 司 法 官 憲 に 伝 えて さ しつ か え な いか 」 と確 認 す る と、 バ ッ シ ンは 「自分 の 名 前 を 出 さ れ る こ と に反 対 は しな い が 、 元 来 命 令 は八 軍 を通 じて な さ るべ き もの で 、 自分 に は 、命 令 権 が な い の で あ る か ら 、現 地 の 進 駐 軍 が 自分 の 意 見 に従

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うか ど うか は敢 て 保 証 の 限 りで は な い 」 旨 返 答 して い る(48)。

と こ ろ で 、 こ こ で 興 味 深 い の は 、 政 令 第165号 の 制 定 を め ぐる 具 体 的 な 調 整 の過 程 に お い て 、 日本 側 とGHQ側 で 、 刑 事 司 法 の あ り方 そ の も の に つ い て の 意 見 の齟齬 が 見 られ る こ とで あ る。 上 述 の 会 談 に お い て 法 務 局 の バ ッ シ ンは 、 被 疑 者 と 共 に証 拠 物 の 引 渡 しが 求 め られ た 際 に 「証 拠 物 を 引 渡 す こ とは 、 当 然 な こ と」 で あ り、 「も し引 渡 を拒 む よ う な場 合 に は有 罪 の 証 拠 が 無 い わ け に な る の で あ る か ら、 被 告 人 を無 罪 釈 放 に す れ ば よい の で あ つ て 、 さ よ う な 点 を心 配 され る 必 要 は毫 も な い で は な い か 」 と述 べ 、 更 に 、 占 領 軍 関 係 者 の 証 人 喚 問 が 必 要 と な っ た 場 合 の 協 力 に つ い て 日本 側 か ら 要 請 を受 け た 際 に は 、 以 下 の よ う に 返 答 して い る の で あ る。

総  進 駐 軍 の 将 兵 等 を証 人 と して 法 廷 に 喚 問 す る こ とが 絶 対 必 要 の 場 合 に は 、 遠 慮 な くM・Pな りM・Gな り に協 力 方 を要 求 され た ら よ ろ しか ろ う。 さ よ う な 場 合 、 進 駐 軍 と して は、 も ち 論 好 意 的 な 取 計 らい をす る と思 うが 、 万一 要 求 に応 じな い で そ の た め に証 拠 が そ ろ わ な い よ う な 場 合 に は 、 裁 判 に は 、 日本 の 法 律 に従 つ て 無 罪 の 言 渡 を な す べ きで あ る 。

日  も し将 来 さ よ う な 事 態 が 起 つ た 場 合 に は 至 急 貴 官 に 御 連 絡 しよ う と思 う が 如 何 。

総  自分 の 方 へ 連 絡 され る の も結 構 だ が 、 自分 と して は 、 日本 の 裁 判 所 が 、 さ よ う な 理 由 に よつ て 、 被 告 人 を 無 罪 に した か ら とい つ て 、 決 し て そ れ を 非 難 す る よ うな こ と は しな い つ も りで あ る 。 なぜ な ら、 日 本 の 裁 判 所 は 日本 の 法 律 に よ つ て 裁 判 す る もの で あ る 以 上 、 証 拠 不 十 分 の 場 合 に被 告 人 を無 罪 放 免 に す る の は 当 然 で あ る と思 う か ら で あ る。

しか し、 こ れ は最 悪 の 場 合 で 、 自分 と して は 進 駐 軍 が 最 大 限 度 、 日本 側 に協 力 す るで あ ら う事 を確 信 して 疑 わぬ の で あ る(49)。

ま た 、 政 令 第165号 の 制 定 の 最 終 段 階 に な っ て 、 民 政 局 の オ プ ラ ー ら が 、 第1条 第1項 に 「公 に 認 め ら れ た 場 合 を 除 くの 外(unless  duly

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「占領 目的 に有 害 な行 為 」 に関 す る検 察 官 の 起訴 猶 予 裁 量 の運 用(出 口雄 一)

authorized)」 との 文 言 を挿 入 す る よ う求 め た 際 に も、 「不 法 の 所 持 の み が 罰 せ られ る とい う こ と を 明 示 して 置 け ば 、 所 持 の 「不 法 」 な る こ と は 、 検 察 官 が 立 証 しな け れ ば な ら な い こ と に な るで は な い か 」 と の 民 政 局 側 の 主 張 に 対 して 、 日本 側 は 「日本 の 法 律 の 建 前 か ら云 え ば 、 犯 罪 の積 極 的 要 件 の 存 在 は 勿 論 、 消 極 的 要 件 の 不 存 在 に付 て もす べ て 検 察 官 が 立 証 す る 責 任 を負 つ て い る」 と の説 明 を行 っ て い る{50)。も と よ り、本 稿 で 取 り上 げ て い る素 材 は 、 「占領 目的 に有 害 な行 為 」 とい う、 「占領 管 理 体 制 」 の 構 造 に強 く規 定 さ れ た 、 あ る 意 味 極 め て 特 殊 な 性 質 を 帯 び た もの で あ る 。 しか し、 政 令 第165号 の 制 定 過 程 に お い て 看 取 さ れ る 日本 側 とGH Q側 の 意 見 の 食 い 違 い の背 景 に は、 刑 事 司 法 の あ り方 に つ い て の 双 方 の 本 質 的 な認 識 の 相 違 が 横 た わ っ て い る よ う に 思 わ れ る 。 そ し て 、 日本 側 関 係 者 の 主 張 の 背 景 と な っ て い る 、 旧 刑 事 訴 訟 法 下 に お い て 確 立 さ れ て きた 、検 察 を 中 心 とす る刑 事 司 法 の 運 営 の あ り方 につ い て は 、 応 急 措 置 法 を経 て現 行 刑 事 訴 訟 法 が 制 定 され た 後 も、 そ の 「日本 的 特 色 」 と し て 維 持 され て い くこ と とな る の で あ る(51)。

【2】 さ て 、 政 令 第165号 及 び 第166号 の 制 定 の 直 接 の 要 因 と な っ た 、 1947(昭 和22)年6月27日 付 「「刑 事 裁 判 権 の行 使 」の修 正 に関 す る覚 書 」 (SCAPIN1740)は 、 前 章 で 触 れ た よ う に 、 第5項 で 「勅 令 第 三 一 一 号 に よ っ て 行 わ れ た 裁 判 事 件 に 関 す る 月 次 報 告 を 、各 事 件 毎 に法 廷 の 所 在 地 、 事 件 番 号 、 犯 罪 の 概 要 、 被 告 訴 人 員 数 、 抗 弁 、 有 罪 の 判 決 及 び そ の他 関 係 事 項 を記 入 の 上 、 各 地 方 軍 政 部 を経 て 本 司 令 部 に提 出 せ ね ば な らな い 」

と定 め て お り、 この 規 定 に基 づ き、 同 年7月 よ り、 勅 令 第311号 に 関す る 裁 判 記 録 がGHQ側 に提 出 さ れ る こ と と な っ た 。 こ の 間 の 様 子 を伝 え る 史料 と して 、稲 田 得 三 元 仙 台 高 等 裁 判 所 長 官 の 回想 を以 下 に引 用 しよ う。

私 が 進 駐 軍 と 関係 を 持 つ よ う に な っ た の は、 私 が 京 都 区 裁 判 所 の 監 督 判 事 を して い た 時 で あ っ た 。 突 然 ジ ャ ッ ジ ・ア ドヴ ォ ケ ー トの名 で 出 頭 を命 じて き た 。 〔中 略 〕 法 務 部 に は 、 少 佐 を頭 に二 三 人 の 法 務 官 が い た よ う に 思 う。 そ して 出頭 した 私 に 対 し、 今 後 進 駐 軍 に関 係 の あ る

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事 件 が 起 訴 さ れ た 場 合 、 お よ び そ の 裁 判 の あ っ た場 合 に は い ち い ち報 告 せ よ、 と命 じた 。 ど ん な 無 理 難 題 を い わ れ る の か と、 実 は ひ や ひ や して い た の で あ っ た が 、 要 求 され た の が 裁 判 そ の もの に 関す る こ と で は な い し、 単 に事 件 の 報 告 だ け だ っ た の で 、 これ く らい は敗 戦 国 と し て 仕 方 な か ろ う と、 そ こ に 来 た 時 よ りは ず っ と気 楽 な気 持 ち で 法 務 部 を出 た 。 しか しそ れ か ら は 、 た くさ ん の 進 駐 軍 関 係 事 件 の起 訴 状 や そ の 裁 判 の翻 訳 に追 わ れ た 。 乏 しい英 語 の 力 をた よ り に、和 英 辞 典 と首 っ 引 き で 、 曲 が りな りに 翻 訳 を し て は 、 週 に 一 回 く らい 米 軍 の 法 務 部 へ そ れ を持 っ て い っ た(52)。

各 地 方 軍 政 部 を通 じて提 出 され た裁 判 記 録 は 、様 式 が統 一 され て お らず 、 ま た 、 そ の 全 てがGHQ文 書 の 中 に整 理 ・保 管 さ れ て い る わ け で は ない よ うで あ るが(53)、「占 領 目 的 に有 害 な行 為 」 と して 日本 側 裁 判 所 で裁 か れ た も のが 、 具体 的 に は どの よ う な指 令 違 反 で あ っ た か を 知 る上 で 有 益 な 史 料 で あ る 。例 えば 、 勅 令 第311号 の 制 定 当初 か ら問 題 とな っ て い た 、 第1条 第2号 の 「連 合 国 占領 軍 、 そ の 将 兵 又 は連 合 国 占領 軍 に附 属 し、若 し くは 随 伴 す る 者 の 安 全 に対 し有 害 な行 為 」 と 「銃 砲 等 所 持 禁 止 令 」(昭 和21年 勅 令 第300号)違 反 事 件 との 関 連 につ い て 、 司 法 省 刑 事 局 関 係 者 は 「この 勅 令 施 行 当 初 は、 最 高 司 令 部 の見 解 も、 又 各 地 の 事 実 上 の 取 扱 い も大 体 に お い て 第 一 条 第 二 号 該 当 の 事 件 と して 占領 軍 々 事 裁 判 所 にお い て裁 判 が 行 わ れ て い た 」 が、1947年10月 頃 か ら 「第 二 条 該 当 事 件 と して 逐 次 我 方 に裁 判 権 が 委 譲 され る よ う に な り、 銃 砲 以 外 の 刀 剣匕 首 等 の不 法 所 持 は全 面 的 に(個 々 的 にで は な く)我 方 の 裁 判 に付 さ れ」、 ま た 「銃 砲 の 不 法 所 持 につ い て も現 地 軍 司 令 官 の 承 認 が あ る場 合 は我 方 で 裁 判 を行 っ て い る 」 旨 を解 説 して い るが 、 こ れ と平仄 を合 わ せ る よ う に 、1947年 後 半 の 史 料 に は 、特 に 地 方 にお い て 「武 器 不 法 所 持 」 が 勅 令 第311号 該 当 事 件 と して 記 載 され る頻 度 が 高 い こ とが 確 認 出来 る(54)。

さ て 、 「「刑 事 裁 判 権 の 行 使 」 の 修 正 に 関 す る覚 書 」 が 第3項 に お い て 明 示 して い る よ う に 、 政 令 第165号 に 規 定 さ れ た 連 合 国 占 領 軍 財 産 等 収 受 所 持 行 為 に は、 勅 令 第311号 第2条 第1項 が 適 用 さ れ る こ と に な る。

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参照

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