介護費用支出の地域特性の分析
著者 船橋 恒裕
雑誌名 經濟學論叢
巻 61
号 2
ページ 249‑273
発行年 2009‑10‑20
権利 同志社大學經濟學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012496
【論 説】
介護費用支出の地域特性の分析
*船 橋 恒 裕
1 は じ め に
急速な高齢化,女性の社会進出による自宅介護の担い手の不足,病院での 社会的入院の増加など,このような状況の中,新たに創設された社会保険制 度が,2000(平成12)年4月に制度化された公的介護保険であった.
介護保険の費用は,2000(平成12)年度では3.6兆円だったが,介護保険制 度の周知が行き渡るとまもなく,当初の予想を超え,2005(平成17)年度では6.3 兆円と急速に増加した1).同じく,主な利用者である65歳以上の高齢者の要 支援者および要介護者数2)も急速に増加し,介護保険制度における要介護者 または要支援者と認定された者のうち,65歳以上の者は,2000(平成12)年 度末で247.1万人だったが,2005(平成17)年度末で417.5万人,2006(平成
18)年度末で425.1万人となっている3).また,特に75歳以上の後期高齢者
* この研究は,平成20年度私立大学等経常費補助金特別補助高度化推進特別経費大学院重点特 別経費(研究科分)の助成を受けて行われた.
1) 制度改正が行われた2006(平成18)年度は6.1兆円に減少した(厚生労働省老健局,2008a).
2) 要介護状態とは,身体上または精神上の障害があるために,入浴,排せつ,食事等の日常生 活における基本的な動作の全部または一部について,一定期間にわたり,継続して,常時介護 を要すると見込まれる状態を指す.また,要支援状態は,要介護状態に至らないが,身体上ま たは精神上の障害があるために,一定期間にわたり継続して,日常生活を営むのに支障がある と見込まれる状態を指している.
3) 65歳以上75歳未満の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者について,それぞれ2005(平成
17)年度末で要支援,要介護の認定を受けた者の割合をみると,前期高齢者は要支援の認定を 受けた者が0.9%,要介護の認定を受けた者が3.9%であるのに対して,後期高齢者で要支援の 認定を受けた者は4.9%,要介護の認定を受けた者は24.7%となっており,後期高齢者になる と要介護の認定を受ける者の割合が大きく上昇している(厚生労働省老健局,2007,内閣府,
2007).その他,厚生労働省老健局(2008a)を参照.
でその割合が高く,2008(平成20)年7月末現在の要介護および要支援認定
者数は460.6万人,うち75歳以上の後期高齢者は379.7万人となっている4).
さらには,制度誕生から時が経つにつれ,地方に介護事業者およびその事業 所数が少ないなど,介護サービスの地域間格差の問題も大きくなってきた5). 各都道府県の2005(平成17)年度,2006(平成18)年度の第1号被保険者1人 当たりの介護費用6)は第 1 表の通りである.2005(平成17)年度と制度改正 された2006(平成18)年度の第1号被保険者1人当たりの介護費用は,とも に最高額の1位が徳島県,最低額の47位は埼玉県であり,その差もかなり大 きなものであった.
そこで,本稿では,前回の近畿圏での分析を踏まえ7),新たに公表された 平均寿命の変数を加え,全国について,介護増加におよぼす要因が何である のか,地域において特徴や大きな違いがあるのかを明らかにしたい.介護保 険における介護費用が,何を要因として,どのように変化するのかについて 都道府県ごとに回帰分析を行う.第2章で仮説と推定モデル,および第3章 にてデータについての説明を行い,第4章において,推定結果を示し,その 分析を行いたい.
2 仮説および推定式
本稿では,介護保険費用について分析を行う.そこで,まず,家計の介護 費用への支出に影響を与える要因について,一般的な家計の総消費支出につ いて考える場合と同様なのかを考慮しなければいけない.
介護という特殊な財・サービスを考えた場合,医療サービスほどではない としても価格に対する需要の弾力性は小さいものであろう.つまり,介護と
4) 厚生労働省老健局(2008b).
5) 介護費用の地域格差について前田(2002),利用料の地域差の分析について二村(2008)など
がある.
6) 第1号被保険者1人当たりの介護費用=〔第1号被保険者分の介護給付・予防給付(費用額)〕/
〔第1号被保険者の要介護(要支援)認定者数(当年度末現在)〕. 7) 船橋(2008).
2005年度 2006年度 2005年度 2006年度 費用 順位 費用 順位 費用 順位 費用 順位 北 海 道 233.1 31 224.0 34 滋 賀 県 231.5 32 227.7 31 青 森 県 278.3 6 270.8 5 京 都 府 251.4 24 242.3 22 岩 手 県 224.2 36 216.7 38 大 阪 府 243.8 26 240.7 23 宮 城 県 216.5 40 215.4 40 兵 庫 県 241.6 27 235.2 27 秋 田 県 238.4 28 233.5 28 奈 良 県 225.6 35 218.8 35 山 形 県 235.2 30 228.4 30 和歌山県 268.0 15 261.2 12 福 島 県 208.4 43 206.0 43 鳥 取 県 275.3 10 264.7 8 茨 城 県 195.1 45 195.4 45 島 根 県 271.0 13 262.5 11 栃 木 県 201.4 44 198.3 44 岡 山 県 263.2 18 254.0 16 群 馬 県 229.6 34 224.4 33 広 島 県 275.1 11 264.1 9 埼 玉 県 182.5 47 182.9 47 山 口 県 259.5 20 239.1 26 千 葉 県 189.7 46 189.9 46 徳 島 県 309.5 1 296.5 1 東 京 都 230.5 33 224.8 32 香 川 県 252.1 22 243.5 21
神奈川県 212.1 41 213.2 41 愛 媛 県 277.6 7 270.7 6
新 潟 県 258.5 21 249.5 19 高 知 県 275.5 9 263.6 10 富 山 県 282.6 5 269.1 7 福 岡 県 274.3 12 260.1 13 石 川 県 285.4 3 278.5 2 佐 賀 県 267.4 16 257.9 14 福 井 県 263.5 17 251.3 18 長 崎 県 284.9 4 272.3 3 山 梨 県 224.1 37 218.3 37 熊 本 県 277.1 8 257.6 15 長 野 県 244.8 25 239.9 24 大 分 県 260.4 19 246.2 20 岐 阜 県 221.3 38 216.6 39 宮 崎 県 251.5 23 239.7 25 静 岡 県 220.5 39 218.3 36 鹿児島県 268.6 14 253.2 17 愛 知 県 210.4 42 210.0 42 沖 縄 県 289.3 2 271.6 4 三 重 県 237.6 29 231.7 29 全国平均 237.0 230.8
第 1 表 都道府県別にみた第1号被保険者1人当たりの介護費用とその全国における順位
(単位:1,000円)
は,必要でない人には見向きもされない財・サービスであるが,要介護者や その親族にとっては,なくてはならない大事な財・サービスと思われる.ま た,前稿8)でも考慮された点であるが,要介護者の情報量の乏しさから生じ る,要介護者と介護事業者や行政との情報格差の存在や,介護保険の自己負 担額の割合が1割負担という点から,軽度の要介護者にとって比較的費用負 担が軽いということなどを考えると,やはり,前稿同様,価格のような消費者,
つまり要介護者の需要への重要な判断材料となる変数は,あまり影響を与え ないと考える方が正しいであろう.
このような考えにより,所得以外に,65歳以上の高齢者の人口,65歳以上 の高齢者の世帯数,人口密度,老人ホーム数,平均寿命,介護給付件数など の要因が,介護保険費用の支出額に対して,どのような影響を与えるのかを 分析する.
これらの説明変数について考慮される理由,およびその予測については以 下の通りである.
所得が消費支出に影響を与えるという考え方は,上述した理由に加え,ケ インズの消費関数の理論9)などで,すでに当然のこととなっている.ライフ サイクル仮説や重複世代モデルでは,若年期に労働によって所得を得て,一 部を定年退職後のために貯蓄し,高齢期にその貯蓄によって生計を立てると 考えられている10).総人口に占める退職した高齢者数が多くなるほど,人口 全体における貯蓄性向が小さくなり,逆に,消費性向が大きくなると考えら れる.すなわち,総人口に対する高齢化率が高くなるほど,国民所得に対す る総消費比率は高くなる.介護支出についても,高齢化によって支出額自体 の増加が起こると考えられる.
これらから,総消費の一部分を占める介護支出も,所得,特に可処分所得
8) 船橋(2008). 9) Keynes (1936)を参照.
10) Samuelson (1958)やDiamond (1965)などを参照.
の大きさにより,影響を受けると考えられる.ただし,可処分所得について 入手できないというデータ上の制約を受けるため,本稿では,変数として,
課税対象所得を使用している(データの説明については第3章で行う).
加えて,介護には,高齢化が大きな影響を受けるということで,人口高齢 化を示すものとして,65歳以上の高齢者の人数を示す老年人口という変数を 入れている.
次に,65歳以上の高齢者の世帯数についてであるが,この変数により,例 えば,三世代同居家族などの大家族に比べて,高齢者夫婦もしくは高齢者単 身という世帯状況が,介護サービスの利用に与える影響が大きいのかどうか,
高齢者世帯が増えるということが,介護サービスの増加につながるのか否か を示したい.
人口密度については,都市部と過疎地とでの介護サービスへのアクセスが 異なるのかどうかを分析したい.過疎地は,高齢者比率が高いため利用者も 多く,利用料やその金額も多いのか.また,都市部は,要介護者にとって,
身近な距離に介護事業者やその事業所,日帰り介護・通所リハビリといった デイサービスなどの施設があるケースが多いので,アクセスが容易で利用量 や利用金額も多いのかを示したい.
また,施設介護と自宅介護,デイサービスなどにより費用に違いができる のか,施設数が支出状況に影響を与えるのかについて,老人ホーム数という 変数を入れている.
さらに,平均寿命と介護支出の関係についてみてみたい.介護サービスを 受けることが,寿命にどのように影響するのかを示したい.
最後に,要支援・要介護度の違いにおいて,給付件数の変化が費用にどの ような影響を与えるのかをみるため,要支援・要介護度における介護給付件 数という変数を入れている.ただし,要支援と要介護1〜5までの6つの変 数を入れると説明変数が多くなりすぎるために,軽度である要支援と要介護 1の合計,中度に相当する要介護2と要介護3の合計,重度に相当する要介
護4と要介護5の合計というように3つの階級にまとめている11). これらの仮定をもとに推定式は以下のようになる.
推定式
NCij=α0+α1YTij+α2EPij+α3AHij+α4PDij+α5NHij
+α6LEij+α7NBAij+α8NBBij+α9NBCij+εij (1)
(1)式を説明すると,下付き文字のiは各都道府県,jは各市町村を表して いる.被説明変数(NC)は介護費用について表している.以下,説明変数と して,(YT)=課税対象所得,(EP)=老年人口,(AH)=高齢者世帯数,(PD)
=人口密度,(NH)=老人ホーム数,(LE)=平均寿命である.(NBA),(NBB),
(NBC)は,それぞれ要支援・要介護度別の介護給付件数を表し,(NBA)=
要支援と要介護1の介護給付件数の合計,(NBB)=要介護2と要介護3の介 護給付件数の合計,(NBC)=要介護4と要介護5の介護給付件数の合計であ る.各変数について,詳しくはこの後の第3章で説明する.
3 データについて
推定に使用されるデータについて説明する.サンプルは各都道府県の保険 者別,すなわち市町村別のデータである12).
まず,被説明変数である介護費用(NC)については,厚生労働省老健局『介
11) 要支援,要介護度の分類について,2008(平成20)年度現在の介護保険制度では,最も軽度
の要支援1,その次の要支援2,そして要介護1,要介護2,要介護3,要介護4,最も介護を必
要とされる最重度の要介護5の7段階に分けられている.
12) 2005年のデータを使用している.また市町村によっては,介護保険法及び介護保険法施行法
に基づく事務,介護保険事業などに関して,近隣地域と広域連合を構成している場合もあるので,
実際の都道府県の市町村数と比較してサンプル数が異なる場合もある.また,その場合,介護 関係以外のデータも各広域連合のデータに換算して用いている.広域連合とは,地方自治法の 特別地方公共団体として,都道府県,市町村,特別区など,複数の自治体にまたがる広域的な 行政事務を処理するために自治体が設置することができる行政機構のことであり,都道府県や 市町村をそのまま残したうえで,特定事務を関係自治体が共同して処理するために設けるもの である.国や都道府県から権限委譲を受けることができる.ゴミ処理や消防,介護保険,後期 高齢者の医療制度などの事務を中心に事務組合が広く活用されている(総務省HP参照).
護保険事業状況報告』の保険者別保険給付―介護給付・予防給付―の総 数(費用額)である(単位:1,000万円).
次に,説明変数であるが,市町村ごとの可処分所得を入手できないという データ上の制約を受けるため,所得に関しては,各市町村の課税対象所得(YT)
で,資料源は日本マーケティング教育センター『個人所得指標』である(単位:
1,000億円).
65歳以上の人口のデータは,高齢者の人数を表す老年人口(EP)である.こ の統計データの資料源は,総務省統計局『国勢調査報告』である(単位:1,000人). 高齢者世帯数(AH)は,総務省統計局『国勢調査報告』の世帯数に関する 調査より,「高齢夫婦世帯」,「高齢単身世帯」について入手し,これらを合計 した数値である.高齢夫婦世帯とは,「夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦一組 の一般世帯(ただし,他の世帯員がいないもの)」を意味し,高齢単身世帯とは「65 歳以上の者1人のみの一般世帯」を指している13)(単位:1,000世帯).
人口密度(PD)については,総務省統計局『国勢調査報告』の人口総数と,
同じく総務省統計局『国勢調査報告』の可住地面積から算出している(単位:
1,000人/km²)14).
老人ホーム数(NH)について,老人ホームのうち介護老人福祉施設(特別養 護老人ホーム)の資料源は,厚生労働省大臣官房統計情報部『介護サービス施設・
事業所調査報告』,および,その他,養護老人ホーム,軽費老人ホーム,有料 老人ホームの資料源は,厚生労働省大臣官房統計情報部『社会福祉施設等調 査報告』である(単位:所).
13) なお,一般世帯とは,以下のような世帯を指す.(1)住居と生計を共にしている人の集まり,
または一戸を構えて住んでいる単身者(ただし,これらの世帯と住居を共にする単身の住み込 みの雇い人については,人数に関係なく雇い主の世帯に含める),(2)上記の世帯と住居を共にし,
別に生計を維持している間借りの単身者,または下宿屋などに下宿している単身者,(3)会社・
団体・商店・官公庁などの寄宿舎,独身寮などに居住している単身者.なお,寮などで起居を 共にし,通学している学生・生徒の集まり,老人ホームなど社会施設の入居者の集まりなどは,
棟ごと,施設ごとに施設等の世帯となる.
14) 可住地面積とは,北方地域および竹島を除いた総面積から林野面積と主要湖沼面積を差し引 いて算出したものである.
平均寿命(LE)については,厚生労働省大臣官房統計情報部『市区町村別生命表』
から得ている(単位:歳).『市区町村別生命表』のデータは男女別で扱われており,
また,各市町村の男女別人口のデータについては入手不可である.そのため,や むを得ず,男女それぞれの平均寿命の平均値をデータとして使用している.
介護給付件数は,厚生労働省老健局『介護保険事業状況報告』の保険者別 保険給付―介護給付・予防給付―の総数(件数)の要支援と要介護1の合 計(NBA),同じく,要介護2と要介護3の合計(NBB),要介護4と要介護5 の合計(NBC)である(単位:万件).
4 推定結果とその分析
分析手法は,以上の仮説と推定モデルおよびデータをもとに,クロスセク ションによる回帰分析を行った.推定結果は,第 2 表から第 9 表に示されて いる15).
回帰分析の結果は,自由度修正済み決定係数は,いずれの都道府県におい ても大きかった.また,有意になった変数,有意にならなかった変数は,各 都道府県において異なる結果となった.これは,地域において介護保険費用 の与える影響が,必ずしも一致しないということである.
まず,各市町村の課税対象所得(YT)であるが,有意になったケースは16 の道県であった.そのうち,有意で符号がプラスになったケースが8つの道 県,反対に,有意で符号がマイナスになったケースが8つの県であった.通常,
所得の増加は,財・サービスの支出増をもたらすと考えられそうだが,介護サー ビスという主に高齢者が利用する特殊な財・サービスを考えると,所得の増 減以上に,要介護者・要支援者自身やその親族の介護サービスへの必要性が,
需要(=支出)に大きく左右すると思われる16).
15) なお,富山県と佐賀県については,サンプル数が説明変数の個数以下であったため,推定不 可であった.
16) 多くの高齢者にとって,課税対象所得が少ないという点も推定結果に影響を与えていると思 われる.
第2表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 北海道変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9754係数2162.8447.0-54.1125.6-138.6-12.9-25.8-0.257-0.271-0.525 t-値2.51*7.34**-2.96**2.91**-3.69**-1.65-2.46*-5.02**-6.08**-8.55** 青森県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9987係数-725.9-84.814.80.948-27.04.669.0937.829.545.5 t-値-1.49-1.774.11**0.092-1.432.17*1.516.83**1.323.15** 岩手県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9920係数-925.0-12.9-4.7222.5-8.6015.211.569.95.0855.8 t-値-0.885-0.351-0.7911.71-0.2802.31*0.8952.61*0.0871.16 宮城県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9997係数-210.35.119.25-4.920.3050.9962.5932.485.4-10.9 t-値-0.7360.2742.91**-0.6120.0830.3910.7432.91**6.73**-0.449 秋田県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9980係数-706.0-221.58.299.08-16.1-6.828.8592.032.671.3 t-値-0.749-4.06**1.490.670-3.98-1.750.7593.67**1.342.54* 山形県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9169係数-81.68.20-1.275.49-2.28-0.0961.020.2800.137-0.240 t-値-0.8641.65-4.13**2.58*-0.759-0.1770.8821.871.08-2.97**
第3表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 福島県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9993係数96.4-118.49.7317.213.7-1.90-1.2352.640.017.5 t-値0.371-11.9**6.39**5.01**1.36-1.40-0.3855.67**3.34**1.67 茨城県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9927係数-726.8-41.08.13-11.06.191.498.8449.169.354.3 t-値-1.30-2.10*3.34**-1.480.4320.6451.292.38*3.09**2.09* 栃木県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9982係数606.81.089.64-6.90-19.04.89-7.3720.654.435.8 t-値0.8380.0782.39*-0.864-1.291.30-0.8291.841.521.30 群馬県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9986係数-998.7-21.52.34-1.94-6.15-1.3312.346.1102.759.8 t-値-2.13*-1.701.32-0.432-0.517-1.032.15*7.04**5.82**2.46* 埼玉県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9994係数-575.8-34.19.60-10.10.3833.357.0650.918.281.0 t-値-2.02*-4.04**10.1**-2.16*0.4303.57**2.02*8.82**1.906.66** 千葉県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9979係数877.94.4110.7-1.06-6.201.02-10.623.0-1.7473.9 t-値1.320.4534.52**-0.210-2.07*0.474-1.301.74-0.1154.03**
第4表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 東京都変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9983係数-592.08.955.93-10.31.313.237.3153.446.443.8 t-値-1.171.903.03**-2.09*1.022.08*1.188.51**4.34**3.46** 神奈川県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9999係数319.320.25.740.570-3.04-1.54-3.7421.669.429.8 t-値0.6493.14**3.93**0.074-1.37-1.08-0.6233.48**7.32**2.90** 新潟県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9955係数918.1-19.2-8.2924.2-4.255.99-10.854.2203.2-66.4 t-値0.556-0.743-1.631.89-0.5201.12-0.5351.493.64**-1.53 石川県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9546係数-32.113.3-3.758.70-4.531.670.4460.4510.514-0.068 t-値-0.1161.86-2.28*2.39*-2.64*1.610.1330.6390.589-0.405 福井県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9994係数-791.1-78.423.3-1.543.067.539.3924.810.79.25 t-値-1.04-1.233.72**-0.2100.2312.67*1.021.920.4230.260 山梨県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9990係数-410.9-29.98.85-6.41-0.7160.3205.028.03127.120.8 t-値-1.58-1.883.78**-1.84-0.2310.2221.590.6854.75**0.980
第5表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 長野県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9990係数-225.9-40.83.8423.716.4-1.142.6427.635.268.0 t-値-0.718-2.18*1.592.93**2.22*-0.8100.6974.97**2.36*3.91** 岐阜県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9969係数-401.116.95.32-7.47-3.64-3.994.9421.8118.725.6 t-値-0.5990.6681.13-0.555-0.477-1.120.6091.143.96**1.19 静岡県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9984係数-299.186.98.43-15.6-15.313.83.6733.382.6-58.9 t-値-0.3902.28*1.32-1.81-1.953.83**0.3942.28*2.47*-1.59 愛知県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9998係数741.62.9710.310.7-6.426.14-8.9434.5-5.8227.7 t-値1.380.4014.29**3.34**-2.42*2.72**-1.374.18**-0.3681.50 三重県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9978係数-2855.423.13.4730.2-14.6-1.9934.84.6065.023.7 t-値-1.760.6830.5573.56**-1.00-0.6071.770.3661.590.636 滋賀県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9610係数702.0-18.9-37.3207.5105.940.1-8.98-37.3-427.3478.0 t-値0.153-0.102-1.925.06**1.982.92**-0.161-0.673-3.80**3.63**
第6表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 京都府変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9998係数750.3-1.2714.5-48.22.81-4.93-9.1292.691.84.84 t-値0.633-0.0342.83*-2.62*0.831-1.85-0.6373.91**2.39*0.209 大阪府変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9998係数938.2-17.711.6-17.92.77-3.97-11.444.435.1102.4 t-値1.22-1.442.99**-4.30**0.965-1.77-1.226.22**1.744.77** 兵庫県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9999係数540.618.98.69-17.9-4.31-0.012-6.4358.468.719.6 t-値1.712.88**6.94**-6.87**-2.68*-0.008-1.6711.7**8.68**2.22* 奈良県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9977係数231.8-8.1414.1-3.98-1.401.48-2.7632.019.619.2 t-値0.410-0.3862.21*-0.482-0.6490.949-0.4002.37*0.6830.689 和歌山県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9991係数587.669.918.06.47-6.403.32-7.24-10.219.629.3 t-値0.8501.575.26**0.749-0.7811.85-0.855-0.5580.7061.28 鳥取県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9996係数458.8133.312.1-31.3-19.72.17-5.38108.9-38.512.1 t-値1.031.494.50**-1.74-2.170.716-0.9933.96**-0.7040.755
第7表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 島根県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9993係数-531.6-143.615.512.711.73.736.2112.0140.4-69.4 t-値-0.445-3.64*5.04*1.350.5131.440.4261.976.38**-1.91 岡山県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9996係数-1157.9-12.911.916.79.51-2.0614.026.1-15.186.6 t-値-0.737-0.3493.73**1.730.955-0.9810.7371.75-0.6863.21** 広島県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9999係数310.549.6-1.7320.4-4.531.82-3.3941.4-32.5133.1 t-値0.5518.36**-0.6134.30**-3.02**1.45-0.4978.00**-2.145.31** 山口県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9971係数-278.450.410.04.6011.114.93.1230.4-22.744.2 t-値-0.2090.5830.9290.1650.4932.26*0.1920.924-0.3370.709 徳島県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9983係数420.298.814.60.575-9.21-0.408-4.98-15.3100.157.0 t-値0.4602.082.31*0.060-0.984-0.110-0.445-1.533.03**0.861 香川県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9996係数1972.3-29.018.0-15.89.93-0.318-24.033.862.815.5 t-値1.37-0.5997.41**-1.701.29-0.145-1.373.68**1.040.433
第8表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 愛媛県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9998係数-1878.5106.26.36-2.43-21.07.8223.039.921.542.9 t-値-2.34*6.10**2.41*-0.408-2.204.73**2.35*4.36**2.26*2.36* 高知県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9992係数-110.020.05.2013.5-7.11-0.4941.40-31.1169.584.5 t-値-0.3760.6311.451.50-0.368-0.2510.394-2.10*7.43**2.51* 福岡県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9998係数-1082.025.415.2-26.2-0.019-1.9113.161.572.0-23.4 t-値-0.8142.58*3.64**-4.39**-0.004-0.7820.80710.3**2.02-0.328 長崎県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9988係数-961.3-136.710.6-2.55-4.3813.811.6-20.6145.2155.6 t-値-0.856-2.002.25-0.338-0.1453.42**0.836-0.8651.703.10* 熊本県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9993係数-156.6-75.014.914.05.61-5.941.9013.285.145.3 t-値-0.282-3.47**4.30**1.820.564-2.32*0.2831.423.74**1.45 大分県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9972係数2061.4-26.711.1-7.17-7.062.08-24.937.659.327.7 t-値1.37-1.021.89-0.434-0.1770.381-1.351.511.300.342
第9表 推 定 結 果 *5%水準で有意 **1%水準で有意 宮崎県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2=0.9992係数-188.133.511.421.5-0.860-4.882.42-1.8639.542.5 t-値-0.4921.742.73*1.81-0.088-2.46*0.519-0.1661.450.958 鹿児島県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9994係数-240.0-76.616.3-10.416.4-0.2492.8728.297.831.5 t-値-0.907-5.83**3.11**-1.041.81-0.1850.8814.09**5.32**1.59 沖縄県変数定数項YTEPAHPDNHLENBANBBNBC R2 =0.9995係数-1031.0240.84.51-43.9-22.04.2812.795.732.455.6 t-値-0.8651.160.250-2.83*-1.780.6750.8771.841.201.46
次に,高齢者の人数を表す65歳以上の老年人口(EP)については,有意に なったケースが29の都道府県であり,そのうち,26の都道府県で符号がプ ラスとなった.介護保険の制度上,保険の利用者のほとんどが,第1号被保 険者である65歳以上の高齢者に当たる.このシミュレーションはこれに合致 して,高齢者人口の増減が,介護保険の費用に強く影響しているということ を表している.
高齢者世帯数(AH)の変数は,有意になったケースは16の都道府県であ り,有意で符号がプラスになったケースが9つの道県,反対に,有意で符号 がマイナスになったケースが7つの都府県であった.符号がマイナスになっ た7つの都府県は,沖縄県を除き,埼玉県,東京都,京都府,大阪府,兵庫県,
福岡県といった大都市圏を含む都府県であった.
近年,年金制度の普及もあり,65歳以上の高齢者と子どもとの同居(特に 三世代同居)が減少,高齢者のみの世帯が増加している17).特に,これら大都 市圏の世帯形態は,核家族が多くを占めている.三世代同居のような大家族 は少なく,高齢者のみの世帯が多い.高齢者が属する世帯形態の状況を地域 別にみると,大都市部では一人暮らしの者や夫婦だけで暮らす者の割合が高 く,また,その増加率も高い.さらに,今後は,高度経済成長期に大量に都 市に流入した世代が高齢者の仲間入りをするため,高齢者人口の大都市圏へ の集中化が進むと予想されることから,これら大都市圏において,今後,一 人暮らしを含めた高齢者のみの世帯が更に増加することが見込まれる18).高 齢者のみの世帯では,介護する家族がいないことにより,遠方にいる親族な どによって,在宅介護で十分対応できる要介護者が入院させられてしまうと 予測される.
17) 65歳以上の高齢者の子どもとの同居率は,1980(昭和55)年に69.0%だったが, 2005(平
成17)年には45.0%にまで大幅に低下した.一方,65歳以上の高齢者の夫婦のみまたは一人暮
らしの世帯については,ともに大幅に増加しており,1980(昭和55)年には夫婦のみの世帯が
19.6%,一人暮らしの世帯が8.5%であったものが,2005(平成17)年には夫婦のみの世帯が
36.1%,一人暮らしの世帯が15.5%まで上昇している(内閣府,2008).
18) これら高齢者が属する世帯形態については,厚生労働省(2003),厚生労働省大臣官房統計情
報部(2003)などを参照.
以前行ったシミュレーションにおいて,高齢者世帯と医療費用の支出の関 係をみると,都市部が多くを占める府県では,医療費用支出に対する高齢者 世帯の推定結果は有意となり,符号はプラスとなっている19).このことから,
高齢者のみの世帯においては,介護する家族が存在せず,通院で対応できる 場合でも入院したり,いったん入院してしまうと入院期間が長期化したりす ると予測される20).また,都市部では,入院設備の整った医療施設も多数存 在し,容易に入院することが可能である21).さらに,常識的に考えると,介 護が必要な高齢者の多くは子どもや孫などの親類と同居していると考えられ る.これは,必然的に同居せざるを得ないのかもしれない.今回の推定結果 もこれらに合致したものであると思われる.
人口密度(PD)は,7つの道県で有意となり,そのうち6つの道県で符号は マイナスとなった.これらから過疎地の方が費用増になると考えられる.た だし,自治体ごとの介護事業者数やその事業所数,施設数などを考慮に入れ ていないので,介護事業者やデイサービスなどの事業所数や施設数およびそ れらへの移動距離の影響について,明確な判断はできない22).
老人ホーム数(NH)については,13の都県で有意となり,そのうち11の 都県で符号はプラスとなった.ただ,老人ホームには,介護老人福祉施設(特
別養護老人ホーム)の他に,養護老人ホーム,軽費老人ホーム,有料老人ホーム も含まれる.また,その規模については,シミュレーションには反映されない.
19) 船橋(2005,2006).
20) 都市と地方の入院形態などの特徴については前田(2000)に詳しい.高齢者の医療費用と介 護費用の関係については,前田(2002,2006)で分析されている.
21) 医師や医療施設が患者の需要行動に与える影響については,中西(1995,2000),漆(1998),
増原他(2002)などを参照.医師数(医療施設数)と医療サービス需要の関係を表す理論と しては,医師誘発重要の理論(Evans, 1974),時間費用の理論(Phelps and Newhouse, 1974, Cauley, 1987, Mueller, 1985,小椋,1990),医療サービスの探索理論(Satterthwaite, 1979, Pauly and Satterthwaite, 1981)などがある.
22) 医療分野では,前述したように,医師数(医療施設数)と医療サービス需要の関係を表す理 論として,医師誘発重要の理論,時間費用の理論,医療サービスの探索理論などがあり,その 他Newhouse (1970)をはじめ,西村(1987),中西(1995),漆(1998),泉田・中西・漆(1998)
などの分析が多数存在するが,介護サービスにおいても,このような介護事業者の介護サービ ス需要への影響があるのかを分析したものとして湯田(2005),佐藤・長山(2005)などがある.
このことから,一概に施設介護が在宅介護よりもコスト高であるとは断定で きないが,通常,予想されるものに合致しているといえる23).
平均寿命(LE)については,4つの道県で有意となり,そのうち3つの県で 符号はプラスとなった.ただ,それ以外の都府県では,有意とならず,説明変 数の中でもっとも影響の低い変数となった.これは,高齢者が,晩年,介護サー ビスを受けることにより,命を長らえることは難しいということを意味してい るのだろうか.以前行ったシミュレーションでは,平均寿命と医療費用の支出 の関係をみると,平均寿命(LE)については,ほとんどの道府県において,符 号がマイナスになり,有意となるケースも多かった24).医療サービスも介護サー ビスも平均寿命の延びにあまり貢献していないということだろうか.
最後に,介護給付件数を表す(NBA),(NBB),(NBC)の3つの変数につい てである.要支援と要介護1の介護給付件数の合計(NBA)の結果は,25の 都道府県で有意となり,そのうち23の都府県で符号はプラスとなった.要介 護2と要介護3の介護給付件数の合計(NBB)の結果は,21の都道府県で有 意となり,そのうち19の都府県で符号はプラスとなった.要介護4と要介護 5の介護給付件数の合計(NBC)の結果は,19の都道府県で有意となり,その うち17の都府県で符号はプラスとなった.このことから,要介護度が軽度で あるケースでの件数増減の影響が,重度のケースよりも大きいということが 示された.これは,要介護度が軽度の利用者の増加が,介護保険の財政悪化 により大きく寄与していることを意味している.また,この3つの変数が1 つも有意にならなかったケースが6つの県であった.
最後に,全体としては,第1号被保険者1人当たりの介護費用が高い都道 府県は,有意となった変数が少なかった.1人当たり介護費用が高い都道府 県の有意となった変数の個数は,徳島県(2005年度全国1位)が2つ,沖縄県(2005 年度全国2位)が1つ,石川県(2005年度全国3位)が3つ,長崎県(2005年度 23) 居宅給付と施設給付の決定要因について分析したものとして,田近・菊池(2005)がある.
24) 船橋(2006).
全国4位)が2つなどとなった.反対に,1人当たり介護費用が低い都道府県は,
最も低い埼玉県(2005年度全国47位)の8つ(定数項を含む)をはじめ,比較 的に有意となる変数が多く,1%水準で有意となる変数も多かった.第1号被 保険者の1人当たり介護費用が高い都道府県が,有意となった変数が少ない というのは,シミュレーションされなかった他の何らかの要因が含まれると 考えられる.どのような要因が介護保険費用の増減と関連があるのか,さら なる探求を行いたい.
また,余談であるが,市町村が広域連合を構成し,それによって推定不能だっ た富山県は,1人当たり介護費用の高さが全国5位(2005年度)であった.広域 連合が,様々な広域的ニーズに柔軟かつ効率的に対応するために施行されてい る制度だとすれば,広域連合を構成する意味が生かされていないのではないだろ うか25).
5 む す び
本稿では,介護保険の費用について,各都道府県の市町村別のデータを用 いて回帰分析を行った.
推定結果から,まず,多くの都道府県において高齢化を示す変数の老年人 口が,介護保険費用の増加に大きくかかわっていることが示された.
また,高齢者のみの世帯は,三世代同居世帯をはじめとするその他の世帯 に比べて,介護に使われる費用が少ないという結果となった.このことから,
介護のできる家族がいないことから,入院設備の整った医療施設が多数存在 し容易に入院することが可能な地域であれば,遠方にいる親類により,在宅 介護で十分対応できる要介護者であっても入院させられてしまうと考えられ る.あるいは,介護が必要な高齢者は子どもや孫などの親類と同居している,
25) 広域連合は,様々な広域的ニーズに柔軟かつ効率的に対応するとともに,権限委譲の受け入 れ体制を整備するため,平成7年6月から施行されている制度です.広域連合は,都道府県,
市町村,特別区が設置することができ,これらの事務で広域にわたり処理することが適当であ ると認められるものに関し,広域計画を作成し,必要な連絡調整を図り,総合的かつ計画的に 広域行政を推進します(総務省HPより).
または同居せざるを得ないと予測される.今後の高齢化の進行により,高齢 者のみの世帯も激増すると思われる.現行の介護保険制度は,療養病床など の入院施設を減らし,在宅介護中心へ移行させようとしている26).しかしな がら,このような結果は,現行制度の維持は,現状にそぐわず,困難である ことを示しているのかもしれない.平均寿命との関連も含め,できれば,生 きがいのあるよりよい制度を望みたい.
最後に,要介護度が軽度であるケースでの件数増減の影響が,重度のケー スよりも大きいという推定結果は,軽度の利用者の増加が介護保険の財政悪 化に大きく寄与していることを示している.この点と関連するかのように,
2006年の介護保険制度改正では,費用増抑制のために,それまでの要支援と 要介護1〜5までの6段階の認定区分のうち,要支援と要介護1の一部が要
支援1・要支援2に変わり,要支援1・2と要介護1〜5までという7区分に
変更となった.この改正による今後の状況変化を注意深く見続けたい.第1 号被保険者の1人当たり介護費用が高い都道府県が,有意となった変数が少 なかったという点も加え,制度改正も含め,どのような要因が介護保険費用 の増減と関連があるのかをさらに探求したい.
【参考文献】
Cauley, S.D., (1987) The Time Price of Medical Care, The Review of Economics and Statistics, Vol.69, No.1, Feb., pp.59-66.
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26) 厚生労働省は,2005年度時点で38万床あった長期入院患者のための療養型病床(医療療養
型病床25万床,介護療養型病床13万床)を2011年度末までに介護療養型病床を廃止,2012 年度末までに医療療養型病床を6割減の15万床へ削減する予定である.
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(ふなはし つねひろ・同志社大学経済学部)
The Doshisha University Economic Review Vol.61 No.2 Abstract
Tsunehiro FUNAHASHI, The Analysis of the Regional Characteristics of Nursing Cost Expenditure
It is said that there are large regional differences with regard to nursing services. This paper outlines the main factors that affect nursing care expenditure across all prefectures and examines whether individual prefectures have their own distinct features that are different from the national trends. This study clarifies by using regression analysis results with respect to nursing care insurance that the elderly population is linked closely with the increase in the nursing care expenditures in many prefectures. In addition, this paper confirms that factors such as the number of nursing care benefits, “Aged households” and “Nursing homes”
have far-reaching effects on nursing cost expenditure.