EUにおける国境を越えた合併 ― EU第一〇指令を中 心として
著者 早川 勝
雑誌名 同志社法學
巻 58
号 5
ページ 1‑53
発行年 2006‑11‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011003
同志社法学 五八巻五号 一EUにおける国境を越えた合併
E U における国境を越えた合併 ―
E U 第一〇指令を中心として
早 川 勝
目 次はじめに第一章 EU第一〇指令の成立の経緯第二章 EU第一〇指令の主要な内容 第一節 会社法に関する規制 一 合併手続
1適用範囲と概念
2国内法優先適用の原則
3合併計画
4合併計画の開示
5合併報告書
6専門家報告書
7社員総会の承認
8適法性の検査
9効力の発生
10 合併の登記と公示
11 コンツェルン合併に関する略式手続 二 合併当事会社の利害関係者の保護
1公共の利益の保護に基づく合併異議の申述
2債権者保護
3少数株主の保護 三 欧州型合併モデルの特徴
︵一六七五︶
同志社法学 五八巻五号 二EUにおける国境を越えた合併
はしがき
合併に関する近年の法規制の移り代わりの早さには目を見張るものがある︒平成九︵一九九七︶年には︑合併手続の簡素化が行なわれ︑平成一五︵二〇〇三︶年四月には︑経済産業省の主導の下で改正された産業活力再生特別措置法が 認定事業者に親会社の株式や現金を対価として合併できることを認め︵同法一二条の九 ︵
柔き化軟うの価対併大ない政策目標を実現したと ︵ ︶︑合︑は法社会の年七一成平 1︶
っしに全完を義疑の上法釈解てよ拭に法立︑は併合金付交銭金︒払 2︶︵
︑ 3︶
三角合併 ︵
でき︑アウト・イン型︶の全部の株式を取得して国境企業を越える組織再編ができ︑その結果︑国際的合併を実現︵の の︑方法によれば︑日本企業が日本の国境を越えて外国企業日本︵イン・アウト型︶と︑さらに外国の企業が 4︶
ることになった︒このために︑子会社が親会社の株式を取得することを例外的に明文規定をもって許容した︵会社法八〇〇・一三五条・二条三号︶︒このような改正は︑今回制定された膨大な会社法の中身が主として法務官僚を中心とし
た精力的な作業の成果であるといわれるのに対して︑いわば法務省の外で事前に周到な検討が積み重ねられた成果が結 第二節 労働者の共同決定に関する規制
一 労働者の共同決定に関する適用法 二 交渉特別委員会の設置 三 国境を越える合併指令における交渉委員会制度 四 外国における事業所の労働者 五 労働者の共同決定制度の存続
六 労働者の共同決定規制に対する評価 結語に代えて―わが国における規制の不備
︿資料﹀ 異なる加盟国の資本会社の合併に関する二〇〇五年一〇月二六日のEU欧州議会と閣僚理事会の指令︵試訳︶ ︵一六七六︶
同志社法学 五八巻五号 三EUにおける国境を越えた合併 実したものである︒会社法の全体の制定プロセスからすれば本流から少し離れたかのような特異な部分であるといえるかもしれない ︵
︑からは規制する関に国際的組織再編︑しているが船出日の発効の平成一八年五月一日すでに︑は会社法︒ 5︶
外資による国内企業の支配が懸念されるとの理由から ︵
国て特異性が見られる︒いずれにしも正間がわ︑に間の期︑たれさ残のこの改成条の十七年附四則︶︒この点にも今回 この経済界の強い要望により︑︑部分の発効が一年延長された︵平 6︶
の企業は︑新設された開放政策に対して万全の措置を十分に整えることができよう ︵
という対比︑してしまっている緩和を規制に簡単りにも余など救済策の反対株主してと米国法︑しては対に織再編規制 ︒組された改正︑では他方︑しかし 7︶
厳しい評価もある ︵
︒ 8︶
企業組織再編法制の変革︑とくに国境を越える合併規制は︑わが国だけでなく︑歩調をあわせたかのように︑世界最
大規模の市場の実現に成功したEU連合においても導入されている︒EUでは︑アメリカ︑日本のような第三国における企業および加盟国における企業との間の競争が激化し︑EU域内市場においても進展した経済のグローバル化の下で
競争に生き残るため国境を越えた企業の再編も現実化している ︵
に政治的妥協連合UEに契機を電撃的出来事この︑後した成立がな劇的についてニースにおいて共同決定の労働者うな ︒もできないよ想像ばからすれ経緯これまでの︑とくに 9︶
おける企業の国際的な活動を加速し︑とくに︑欧州株式会社法規則 ︵
の採択は︑EU域内レベルで超国家的企業の出現の 10︶
法的基盤となり︑各加盟国において根強いわだかまりとなっていた国境を越えた企業の活動に対する社会的︑心理的︑文化的障害が︑少しずつであるが︑だんだんと薄まってきていることが注目される︒すでに一部の大企業が欧州株式会
社を設立しており ︵
に五年という以下本指令︵指令〇第一UE〇〇 ︵ ︒二︑で下の背景このようなめているに始Uは新たな歴史の一頁向︑かって確実にかつ着実に歩みE 11︶
しなけ本指令国内法化までに七年〇〇二をは各加盟国︒された採択が︶ 12︶
ればならないので ︵
による︑欧州司法裁判所じくする同を時期ほぼさらに︒されるであろう一層促進は方向このような︑ 13︶
︵一六七七︶
同志社法学 五八巻五号 四EUにおける国境を越えた合併
セヴィック︵
SEVIC
︶判決 ︵け本を駄目押しした︒指進令によるEUにお展のる制EU域内におけ国は際的企業再編法︑ 14︶
る合併法制の急速な国際化の背景には︑後述するように︑一九七八年のEU域内の加盟国間における合併規制に関する会社法上の調整を目的とするEU第三会社指令 ︵
によってEU加盟国内相互の規制の調整の実現および既述の欧州株式会 15︶
社法規則の採択によってすでに地ならしが行なわれていたことが大きく影響している︒もちろん︑第三指令︑欧州株式会社法規則および本指令は︑それぞれ規制の目的を異にしている ︵
︒とはいえ︑これらの指令や規則における手続の流れ 16︶
については︑たとえば︑合併計画書の記載事項のように︑個々の点には規制目的の違いを反映した相違が見られるものの︑全体的には︑いわばヨーロッパ・モデルと呼べるような特徴が形作られているように思われる︒
したがって︑わが国における合併法制の緩和を契機に︑EU市場への進出をめざす国内企業にとっては︑そのような規制の特徴と内容を理解しておくことが重要になる︒そこで︑本稿では︑まず︑本指令を中心として︑第三指令や欧州
株式会社法規則も視野に入れながら︑欧州型合併規制の制定の経緯︑および︑その内容について会社法関連手続きと共同決定の問題に分けて検討する︒つぎに︑会社法で制定されたわが国の組織再編規制には︑米国法と対比して︑規制が
緩和されすぎて反対株主の救済策など問題があるとの指摘に関連して︑それでは欧州型モデルとの対比では︑どうなのか︑特に国際合併に関わる局面に限定して簡単に検討することにしたい︒
第二章 E U 第一〇指令成立の経緯
異なる加盟国の資本会社の国境を越える合併のためのEU第一〇指令は︑二〇〇五年一二月一五日に発効した︒EU加盟国は︑二〇〇七年一二月までに本指令を国内法化しなければならない︒指令が国内法化されると︑ヨーロッパにお ︵一六七八︶
同志社法学 五八巻五号 五EUにおける国境を越えた合併 ける中小の企業は︑これまで欧州株式会社の設立によってのみ許されていた国境を越える企業再編を合併によって直接に行う可能性が開かれることになる︒EU域内における国境を越える国際的な合併を急速に進展させたのは︑既述した
ように︑まずEU第三会社指令がEU加盟国間における合併規制に関して会社法上の調整を実現し︑さらに欧州株式会社法規則によって合併方式による欧州株式会社の設立を可能にしたことによっている︒このことは︑本指令が多くの手
続規制において両者の規制に倣っていることからも指摘できよう︒つぎに︑このような国境を越える合併に関する法規制の構想がどのような経緯をたどって実現するに至ったのか簡単に触れたい︒
⑴ 欧州閣僚理事会が︑二〇〇五年九月二〇日︑ブリュッセルで採択した資本会社の国境を越える合併に関する第一〇会社法指令は︑一九五七年の欧州経済共同体設立条約︵ローマ条約︶で定めていた会社について支店開設を自由に認
める規定︵五二条と五八条︒現行四三条と四八条︶に遡ることができる︒同条約は︑さらに︑異なる加盟国の法律規定に服している会社の合併に関する協定を結ぶために︑加盟国間で交渉を開始できるとする明文規定を設けていた︵二二
〇条・現行二九三条︶︒そこで︑一九六五年から︑フランスの会社法学者であるゴルトマン︵
Goldman
︶教授を議長として︑協定草案について協議が始められ︑一九七二年にその草案が公表された︒さらに︑一九七三年にデンマーク︑アイルランドおよびイギリスが加盟した後も︑一九八〇年まで協議が継続されたが︑全加盟国の承認がえられず︑成果を
みないまま終了した︒
⑵ その間に︑株式会社の国内の合併の調整のための第三会社法指令が︑一九七八年一〇月九日に採択された︒加盟
国の国内法においてこのような調整が会社法指令で行なわれることになったために︑EU委員会は︑国境を越える合併について既述したような協定を締結するという構想を断念し︑指令によって調整することにし︑一九八五年一月に第一
〇指令案 ︵
加盟現行四四条︑では欧州議会︑しかし︒とする法的根拠を︶︵条約第五四条UE︑は同指令案︒した公表を 17︶
︵一六七九︶
同志社法学 五八巻五号 六EUにおける国境を越えた合併
国間で労働者の共同決定の取扱があまりにも異なっているために︑意見表明する準備が非常に難しくなったので︑指令
案の真摯な審議は行なわれなくなり︑そのままの状態が続いた ︵
︒ 18︶
⑶ しかし︑二〇〇〇年一二月には︑共同決定規制史上まったく信じられないことが起こり︵ニースの奇蹟︶︑欧州
株式会社法︵SE︶が成立した︒同法は︑共同決定問題について︑妥協の産物として︑後述するように︑一定の解決方法を提示している︒これによって国境を越える合併に関する指令の作成作業の進展に弾みがついた︒委員会は︑二〇〇
一年に最初の第一歩として︑一九八五年の指令案を引っ込めた︒会社法改正について検討することを委託されたハイレベル専門家委員会︵オランダの
W inter
委員長︶は︑二〇〇二年一一月︑報告書を提出し ︵︑企業の国境を越える活動を 19︶
容易にする規制の制定が優先課題であることを強調した︒委員会は︑行動計画書﹁欧州連合における会社法の現代化とコーポレート・ガバナンスの改善﹂において答申を評価し︑その後まもなく新指令案の作成作業に入ることを公表し ︵
︑ 20︶
二〇〇三年一一月下旬に新指令案 ︵
に内容二〇〇四年一一月には︑指令案のについてわれ政治的合意がえられた︒欧州議会では所管の法律委員会︑行に発 のした︒ブリュッセルでは︑アイルランドとオランダ出身議長をの下で交渉が活提出 21︶
おいて︑ドイツの議員である報告書作成者レーネ︵
Lehne
︶が︑議会と理事会の間の時間のかかる交渉を回避するために精力的な努力を払い︑議会が第一読会だけで指令を採択できるように働きかけた︒議会は︑二〇〇五年五月初旬に総 会でレーネが提出した指令案を実質的に承認し︑若干の点についてだけ技術的な修正を施した︒日本の法制局のような部署︵Gruppe der Sprachjuristen
︶で指令に表題をつけて︑条文の配列も整えた後に︑理事会が二〇〇五年九月二〇日に指令を採択した︒二〇〇五年一〇月二六日の指令は︑二〇〇五年一一月二五日に欧州連合官報で公示された ︵
︒ 22︶
本指令は︑適用範囲︵一条︶︑合併の定義︵二条︶︑適用範囲に関する特別規定︵三条︶︑国境を越える合併のための
前提要件︵四条︶︑国境を越える合併に関する共同計画︵五条︶︑公告︵六条︶︑指揮機関または監督機関の報告書︵七条︶︑ ︵一六八〇︶
同志社法学 五八巻五号 七EUにおける国境を越えた合併 独立の専門家の報告書︵八条︶︑社員総会の承認︵九条︶︑事前の証明︵一〇条︶︑国境を越える合併の適法性の検査︵一一条︶︑国境を越える合併の効力の発生︵一二条︶︑登記︵一三条︶︑国境を越える合併の効果︵一四条︶︑略式手続︵一
五条︶︑労働者の共同決定︵一六条︶︑効力︵一七条︶︑検査︵一八条︶︑国内法化︵一九条︶︑発効︵二〇条︶︑名宛国︵二一条︶に関する規定によって構成されており︑その内容は︑大別すれば︑会社法と共同決定に関するものに分けられる︒
つぎに︑それぞれに分けて指令の内容について概略したい︒
第三章 会社法第一〇指令の主要な内容
第一節 会社法に関する規制 会社法と密接に関連する内容について︑指令は︑適用範囲︵一条︶と概念規定︵二条︶︑適用範囲に関する特則︵三条︶︑国境を越える合併の要件︵四条︶︑および合併計画書︵五条︶について規定し︑さらに︑公示︑指揮または監督機関の報告書︑独立した専門家の報告書︑資本会社の総会の承認に関する規定︵六条から九条︶を設け︑その他の重要な規定
として国境を越える合併の効果︵一四条︶について定める︒以下では︑指令が定める合併手続と合併当事会社の利害関係者の保護規定に分けて検討する︒
一 合併手続
合併手続は︑概略すれば︑次のような流れに沿って進行する︒すなわち︑まず︑⑴共同合併計画の作成︑⑵合併当事
︵一六八一︶
同志社法学 五八巻五号 八EUにおける国境を越えた合併
会社の機関による合併報告書の作成︑⑶合併検査役が専門家報告書を作成︑⑷一定の合併書類を商事登記簿に提出︑⑸
共同決定に関する交渉を受け入れなければならない場合には︑労働者の側でいわゆる特別な交渉委員会を設置しなければならない︒さらに︑⑹合併当事会社の総会︑および︑合併と交渉委員会で経営者と労働者︵代表︶の間で成立した場
合には︑その共同決定について承認する︑⑺権限をもつ部署︵官庁︑裁判所︑公証人︶が合併手続が正規に行なわれたことを証明し︑最後に⑻合併が登記され︑登記簿で公示される︒次に時間的順序に従って︑それぞれの手続の内容を検
討する︒
1
適用範囲と概念︵一条から三条︶国境を越える合併を利用できるのは︑資本会社だけであり︑その適用範囲が限定されている︒つまり︑国境を越える
合併指令は︑少なくとも二個の会社がそれぞれ異なる加盟国の法律に服する限りにおいて︑一つの加盟国の法律によって設立され︑かつ︑定款上の住所︑その本店または事業活動の本拠地を共同体に有する資本会社の合併に適用される︵一
条︒以下では︑合併指令の条文については当該条文数のみを記す︶︒
合併には︑吸収合併と新設合併がある︒前者は︑⒜一個以上の会社が︑清算せずに解散する時にすべての積極財産と 消極財産を︑既存の会社
―
﹁吸収会社﹂―
に︑別の会社の株式または資本に対するその他の持分と引き換えに︑その自己の社員に︑および場合によっては︑現金を追加払いして︑譲渡することをいう︒追加払いは︑当該株式またはそ の他の持分の額面価値もしくは―
そのような価値がない場合には―
計算上の価値の一〇%を超えてはならない︵二条二項a︶︒後者の合併類型は︑⒝二個以上の会社が︑清算せずに解散する時に︑すべての積極財産と消極財産を︑これらの会社が設立した会社
―
新︵設︶会社―
に︑当該新会社の会社の株式または資本に対するその他の持分と引き ︵一六八二︶同志社法学 五八巻五号 九EUにおける国境を越えた合併 換えに︑その自己の社員に︑および︑場合によっては︑現金を追加払いして︑譲渡することをいう︒追加払いは︑当該株式またはその他の持分の額面価値もしくは
―
そのような価値がない場合には―
計算上の価値の一〇%を超えては ならない︵二条二項b︶︒この定義は︑合併課税指令 ︵の規定︵同指令二条a︶に従っている︒ 23︶
この原則の例外として︑現金追加払いの一〇%基準が︑合併当事会社の一社に適用されない場合にも︑合併指令が適 用される︵三条一項︶︒現金追加払いは︑会社持分の交換比率を決定した後に取り決められた最高額︵
Spitzenbetrag
︶を補償するためのものである︒これは︑第三国内合併指令の規定︵同指令第三〇条 ︵︶によって株式会社について認めら 24︶
れており︑すべての当事会社に同様な仕方で適用される︒しかし︑同指令を利用している国とそうでない国の会社とが相互に国境を越えて合併する場合には︑問題となる︒したがって︑持分の交換比率と現金追加払いとは︑すべての合併
当事会社について合併計画書において統一的な原則によって決定されるべきであった︑と指摘されている ︵
︒ 25︶
合併できる会社は︑合併課税指令の規定と同様に︑列挙された一定の会社形式および定められた一定の特徴を備えた 会社である︒両者の会社を認めるかどうか議論があり︑本指令は︑一九八五年案と異なり︑株式会社だけでなく資本会社にも適用される︵二条一項︶︒したがって︑開示指令 ︵
有︵︑社会式株︑合場のツイド社会のてべするいてれらげ掲に 26︶
限会社および株式合資会社︶と各加盟国の法律において実際に利用されている類似の構造をもつ法形式が対象となる ︵
︒ 27︶
まったく一般的には︑本指令が適用される会社は︑責任資本を有し︑かつ︑開示規定が適用される法人である︒この定義によって︑若干の加盟国︑特に南欧州では︑特別な協同組合がこの法形式に該当することになる︒従来︑欧州にお
いて協同組合はまったく調整されてこなかった︒したがって︑協同組合という名称の下で活動している結合組織は︑見通すことができないほど多種多様である︒もしこれらの組織について国境を越える合併を認めるならば法的安定性が問
題となる︒国境を越えて活動することを望む協同組合には︑新欧州協同組合 ︵
の法形式を選択することができる︒そこで︑ 28︶
︵一六八三︶
同志社法学 五八巻五号 一〇EUにおける国境を越えた合併
指令が定める資本会社の基準を満たす場合でも︑加盟国は︑指令を協同組合に適用しないことができることになった︵三
条二項︶︵
opt-out
方式︶︒さらに︑指令は︑指令
85 / 611 / EWG
︵Organismen für gemeinsame
第一条の意味における所謂有価証券共同投資機構︵ 29︶Anlage in W ertpapieren, OGA W
︶に適用されない︵三条三項︶︒このような投資組合は︑特別な規制に服し︑国境を越える合併について特別法で規制されることになる ︵︒ 30︶
2
国内法優先適用の原則︵四条︶指令は︑合併の当事会社に適用される国の法律が国境を越える合併の基準になるという原則を定める︵四条︶︒従って︑加盟国の法律が合併を認める法形式の間の合併だけが可能となる︒手続については︑まず最初︑国内の法律規定が適用
される︒合併決議︑合併当事会社の債権者︑社員および労働者保護に関する規定は︑明確にするために設けられている︒加盟国は︑必要な限りにおいて︑合併に異議を留める少数社員保護のための特別規定を設ける権限を認められている︒
これは︑欧州株式会社法規則の規定︵同規則二四条 ︵
︶を手本にしたものである︒ 31︶
さらに︑合併指令は︑欧州株式会社法規則の規定︵同規則一九条 ︵
ordre-public
と公由理を︶︵益が局当︑いらなに︶ 32︶して合併に異議を述べる権利を認める︒共同体のカルテル法の優先が︑本指令の考慮理由においてだけでなく︑条項の本文において定められている︒
3
合併計画︵五条︶国境を越える合併手続の基礎は︑合併当事会社の指揮または監督機関が作成する共同合併計画である︒合併計画書に ︵一六八四︶
同志社法学 五八巻五号 一一EUにおける国境を越えた合併 記載すべき事項は法定され︑以下の事項を記載しなければならない︒すなわち︑⒜合併当事会社の法形式︑商号と住所︑および合併後の会社の法形式︑商号と住所︑⒝株式の交換比率︑および︑場合によっては︑現金追加払額︑⒞合併後の
会社の株式の譲渡の詳細︑⒟合併が雇用に及ぼす予測される効果︑⒠株式の所有者に利益参加権を与える日︑および︑当該権利に対して及ぼす影響の特殊性︑⒡合併会社の行為が合併後の会社の計算のために行なわれたとみなされる日︑
⒢合併後の会社が︑特別な権利を与えられた社員と持分以外の有価証券の所有者に付与する権利と措置︑⒣合併計画を検査する専門家︑または︑合併当事会社の監督機関等の構成員に付与される特別な権利︑⒤合併後の会社の定款︑⒥合
併後の会社における共同決定に労働者が参加する手続に関する事項︑⒦合併後の会社に譲渡される積極財産と消極財産の評価に関する事項︑および︑⒧合併条件を定めるために使用された合併当事会社の年度決算の期日︑である︒
これらの記載事項は︑第三合併指令五条 ︵
および欧州株式会社法規則二〇条 33︶︵
二号の規定に広範に倣っている︒ と欧州株式会社法規則施行規則二二条一項 34︶
しかし︑第三合併指令の採択後に加盟した国があるため︑本指令では若干の記載事項について異なっている事項がある︒このため︑どのような合併︵国内の合併︑国境を越える合併︑欧州株式会社を設立するための合併︶かによって規
制が部分的に異なる︒新たに補足的に定められたのは︑次の三つの事項である︒すなわち︑まず︑国境を越える合併が
雇用に対して及ぼすことが予測される効果である︵五条d︶︒この記載事項は︑欧州議会における雇用・社会問題委員会が提案し︑これを所管の法律委員会が受け入れ︑理事会もそれに同意したものである︒これは︑二〇〇四年に採択さ
れた買収指令 ︵
するをじうる将来の展開について意見表明する義務負してい︑労働者参加の手続については合併計画書にも記載生対に さらに︵同指令六条三項i︶に倣っている︒︑の当事会社の指揮機関は︑合併計画書において就業者規定 35︶
︵五条j︶︒
︵一六八五︶
同志社法学 五八巻五号 一二EUにおける国境を越えた合併
つぎに︑国境を越える合併後の会社に譲渡される積極財産と消極財産の評価に関する事項︵五条k︶︑および︑国境 を越える合併の条件を定めるために使用された合併当事会社の年度決算の期日︵貸借対照表期日︶︵五条l︶が記載される︒この記載事項は︑フランスの主張によるもので︑合併計画の透明性を高めるのに役立つ ︵
︒しかし︑持分所有者に 36︶
は重要な情報であるが︑当事会社は過大な費用を負担することになろう ︵
︒ 37︶
法定記載事項は︑記載すべき最低限の事項を定めるもので︑個々の会社は補充的な事項を記載することができる︒こ
れに対して︑個々の加盟国の立法者が補充的にさらなる記載事項を定めることができるかどうか議論がある︒欧州株式会社法規則は︑加盟国が記載事項を補充できることを明文規定によって明らかにしている︒そこで︑記載事項に関する
最低限の規制として一般に承認されている第三指令五条と同様に︑純粋に最低記載事項を定めた統一的基準として構想されており︑国に補充権限があると解されている ︵
︒合併報告書の方式については規定がなく︑国の法律に従うことにな 38︶
るが︵四条一項b︶︑共同の合併報告書について統一的な書類が必要なので︑もっとも厳格な国の規定によることになる︒
4
合併計画の開示︵六条︶合併計画は︑国内の法律で規定されている方法によって公告しなければならない︵六条一項︶︒合併計画は︑欧州株 式会社法規則の規定︵同二一条 ︵
︑公告すなわち︒する要求をもって明文することをを事項の以下︑して相応に︶ 39︶
① 合併当事会社の法形式︑商号および住所 ② 合併当事会社に対して権限を有する登記所︑および登記された登記簿の登録番号 ③ 債権者と少数株主の権利に関する指示︑である︒
共同合併計画の公告は︑開示指令に基く国内の法律に従い︵六条二項︶︑たとえば官報に公告するような方法で︑総 ︵一六八六︶
同志社法学 五八巻五号 一三EUにおける国境を越えた合併 会の一カ月前になされる︒
5
合併報告書︵七条︶合併報告書に関する規制は︑当初の委員会提案と異なり︑各合併当事会社の指揮機関または監督機関は︑社員のため に︑合併の法的および経済的観点について説明と理由︑および︑合併が社員︑債権者および労働者に及ぼす効果を説明する一定の報告書︵合併報告書︶を作成する︑と定められた︵七条 ︵
カ労一の会総員社に者働と員社︑は書告報のこ︶︒ 40︶
月前に公開される︒さらに︑労働者の代表者から合併に対する労働者の意見表明書を受領した場合は︑この意見表明書を報告書に添付しなければならない︵七条︶︒
合併報告書に関する以上の規制は︑欧州議会の指示によって実質的に拡大されたものである︒まず最初︑社員の判断を決定するために通知される合併報告書は︑同じ時に労働者も入手することができる︒本規制も︑合併報告書に予測さ
れる雇用に対する合併効果︵五条d︶を記載することと同様に︑できるだけ早く包括的な通知を与えたいとする欧州議会の雇用委員会の要望に基いている︒
買収指令の規定︵同九条五項三文︶に倣い︑国内法が同様な定めを設けている場合には︑労働者の代表者の意見表明
書を合併報告書に添付することが補足的に定められた︒合併を決議する社員総会の一カ月前に社員だけでなく労働者にも合併報告書が公開されるので︑このような意見表明が可能となる︒そのため︑合併報告書は社員のための保護手段か
ら債権者︑とくに労働者に対する包括的な情報提供に合併報告書の重点が移ったと評価する論者もいる ︵
成定ゆる状況を知ってから決であきるように合併報告書を作ら︶どむが合併を承認するかうか︑︵そのような意見も含 ︒社員︑しかし 41︶
するのは簡単ではないため︑合併は︑この新たな規制によって著しく遅延するのではないかという懸念も表明されて
︵一六八七︶
同志社法学 五八巻五号 一四EUにおける国境を越えた合併
いる ︵
︒ 42︶
合併報告書は︑各合併当事会社の社員が関心をもつ︒その点で︑合併報告書は︑最初から自己の会社に焦点を置いているため︑合併検査報告書と異なっている︒合併検査報告書は︑すべての合併当事会社の社員が同意するときにのみこ
れを作成しないことが許される︵八条四項︶︒合併報告書は︑適用される国内の法律に従って判断される︵四条一項b︶︒したがって︑たとえば︑これを認めるドイツ法による場合には︑合併当事会社のすべての社員が同意する場合には︑合
併報告書を作成しないことが許される︵ドイツ組織変更法第八条三項 ︵
︶︑と解されている 43︶︵
︒ 44︶
6
専門家報告書︵八条︶合併報告書は︑独立した専門家の検査をうける︒合併手続の中核をなす手続の一つである︒第一〇指令の規定︵八条︶
によれば︑独立の専門家が合併報告書を検査して︑検査結果を報告書として社員のために作成し︑合併について決議する社員総会の一カ月前に提出する︒専門家は︑合併当事会社が任意に選任するか︑または申請に基いて︑共同して検査
する専門家を国が定める方法に従い︑裁判所または行政庁が選任する︒合併検査報告書は︑第三合併指令︵同指令一〇条二項 ︵
し遂行既述︒えられる与が権利める求を説明な必要するためにを職務︑には専門家︒する記載を事項めた定が︶ 45︶
たように︑各合併当事会社の社員が同意するときは︑独立の専門家による共同計画書の検査および専門家の報告書の作成は不要である︒
このような︑専門家による検査︵八条三項︶は︑第三指令の規定︵同指令一〇条 ︵
規則二二条 ︵ ︶と欧州株式会社法規則の規定︵同 46︶
よっ別々に選任の裁判所または︑するか作成に︑が各当事会社︑これは︒されている実施によってすでに︶ 47︶
て共同して検査して︑共同で報告書を作成することができる︒合併当事会社が別々に検査役を選任する場合には︑指令 ︵一六八八︶
同志社法学 五八巻五号 一五EUにおける国境を越えた合併 の規定によって個々の加盟国の法律に従う︒検査役の選任を共同して申請する場合には︑会社は︑検査が合併当事会社の一社の国において行なわれるか︑または目的の会社の加盟国でなされるか選択することができる︒したがって︑検査
役の選任とその資格は︑国の法律に従う︒
各合併当事会社のすべての社員が放棄するときは︑すでに触れたように︑検査と報告はなされない︵八条四項︶︒報 告書を作成をしない可能性を認めたのは︑ドイツの提案によるもので︑社員の合意の下で費用を節約し︑手続を省略できる ︵
︒ 48︶
7
社員総会の承認︵九条︶各合併当事会社の社員総会は︑原則として︑国境を越える合併について承認する︒社員総会の承認決議は︑合併報告書︵七条︶と検査報告書︵八条︶を受領した後に︑共同合併計画について承認の決議をする︵九条一項︶︒総会招集手
続および決議要件等については︑本指令四条一項bが一般的に指示しているように︑国の法律に従う︒
各合併当事会社の社員総会は︑合併後の会社における労働者の共同決定に関する手続が明確に認められることを合併
実施の条件とすることができる︵九条二項︶︒つまり︑総会の承認は︑欧州株式会社法規則の規定︵同規則二三条二項
二文 ︵
︒︑協議される共同決定について合意するかどうかは最終的には︑社員が決定権をもつことになる とで間の労働者代表使用者のの定めているように︑明確に共同決定手続︶きにも及ぶ︒したがって︑企業において 49︶
一定の場合には︑例外的に︑吸収会社における承認決議が不要となる︒つまり︑第三指令第八条 ︵
︶︒は同指令八条三項︵がない必要める定について同意の社員総会の吸収会社︑法律規定の加盟国︑には場合されている た満が条件める定が 50︶
そのためには︑特別な開示要件を遵守し︑かつ社員総会の招集権限が少数社員に認められていることが必要である ︵
︒ 51︶
︵一六八九︶
同志社法学 五八巻五号 一六EUにおける国境を越えた合併
8
適法性の検査︵一〇条と一一条︶各加盟国は︑国境を越える合併の適法性の検査をする裁判所︑公証人またはその他の権限を有する当局を指定する︒合併する当事会社が国境をまたがっているという特殊性が考慮され︑検査は︑欧州株式会社法規則の規定︵同規則二四 条および二五条 ︵
︒される実施によって公証人または行政庁 裁判所︑指定された有︑権限を準するじてに検査︶の加盟国︑は検査︒される規制で二段階︑って倣に 52︶
第一段階では︑各合併当事会社の所在国において︑共同合併計画が作成され︑公示されたかどうか検査される︵一〇条一項︶︒検査後に遅滞なく証明書が交付される︵一〇条二項︶︒これにより︑合併行為と手続が正規に行われたことが
証明される︒
第二段階では︑吸収会社または新会社の所在国において権限のある部署が︑各会社が同一の内容の合併計画を承認し︑
および︑共同決定について合意されたかどうか検査する︵一一条︶︒このために︑各合併当事会社は︑総会で承認された合併計画ならびに検査証明書をその発行後六カ月以内に当該部署に提出しなければならない︒
欧州株式会社法規則の規定︵同規則二五条三項︶にならった規定は︑ドイツとオーストリアの提案によって設けられた規制である︒両国は︑株式およびその他の持分の交換比率の検査もしくは変更または少数社員の代償手続を定めてい
るからである︒そこで︑相手方当事会社の国でそのような手続が設けられていない場合が問題となる︒この問題は︑次のように処理される︒合併当事会社の一社が服する加盟国の法律が︑株式およびその他の持分の交換比率の検査もしく
は変更または少数社員の代償手続について定め︑当該法律が国境を越える合併の登記を妨げない場合には︑当該手続は︑そのような手続を定めていない加盟国における他の合併当事会社が︑合併計画の承認の際に︑合併当事会社の社員が会
社の管轄裁判所に手続を申請できることを明文をもって認めるときに限り︑適用する︒この場合には︑検査する部署は︑ ︵一六九〇︶
同志社法学 五八巻五号 一七EUにおける国境を越えた合併 手続が開始されたときにも適法性を示す証明書を発行することができる︒しかし︑証明書には︑そのような手続が係属していることを付記しなければならない︒申請手続において下された決定は︑国境を越える合併後の会社およびそのす
べての社員を拘束する︵一〇条三項︶︒しかし︑この手続は︑右の両国の譲渡会社についてだけ許されるにすぎず︑相手方会社の国の吸収会社の社員については認められないため十分に保護されるか問題がある︒
9
効力の発生︵一二条と一四条︶国境を越える合併が有効となる日は︑合併後の吸収会社または新会社が服する国の法律にしたがう︒有効となるためには︑いずれの場合にも︑第二段階の適法性の検査手続︵一一条︶が終了しなければならない︵一二条︶︒通常は︑登
記によって効力が発生する︵登記の創設的効力︶︵ドイツの場合には組織変更法二〇条一項︶︒
国境を越える合併の法律効果は︑欧州株式会社法の規定︵同規則二九条 ︵
︑財れさ継承括包が産の切一︑てっらなに︶ 53︶
社員が交替し︑譲渡会社が消滅する︒加盟国の法律が︑法律効果について特別の規定を設けている場合には︑当該法律規定が適用される︵一二条三項︶︒労働者の権利に関して︑欧州株式会社法規則の規定︵同規則二九条三項︶に相応して︑
合併の効力が発生した時に労働契約または雇用契約から生ずる合併当事会社の権利と義務が合併後の会社に移転するこ
とを明確にする規定が設けられている︵一二条四項︶︒さらに︑自己株式が発生しないように規定が設けられた︒これは︑第三合併指令の規定︵同指令二九条二項 ︵
︶を手本にしている︒ 54︶
第一二条によって有効となった国境を越える合併は︑事後に無効を宣言することが許されない︵一七条︶︒本規定は︑国境を越える合併が一旦効力を生じた後には︑合併手続に瑕疵があっても国境を越える合併の効力に影響を及ぼさない としたもので︑有効となった合併に絶対的な存続保護を認める重要な規定である︑とされる ︵
︒欧州株式会社法規則の規 55︶
︵一六九一︶
同志社法学 五八巻五号 一八EUにおける国境を越えた合併
定︵同規則三〇条 ︵
ex nunc
にか果は︵将来に向てっ的か︵︶か︑過去効及明遡比べるとさらに確︶で︑これによってと 56︶まで遡るか︵
ex tunc
︶かとは関係なく︶︑排除される︒国境を越える合併では︑実務上非常に重要となる︒10
登記と公示︵一三条︶国境を越える合併の登記とその公告も︑合併当事会社に適用される国の法律に従って行なわれる︒国の法律は︑開示
指令の規定︵三条︶に合致している︒
国境を越える合併後の会社が登記される登記所は︑遅滞なく︑各合併当事会社を登記している登記所に対して国境を 越える合併が効力を生じたことを通知する︵一三条二文︶︒それぞれの国の登記所の相互の通知は︑ドイツが︑法的安定性を考慮して提案したもので︑欧州株式会社法規則の規制が改善されている ︵
︒従来の登記の抹消登記は︑新登記所が︑ 57︶
合併後の会社が登記されたことを通知した後にはじめて行なわれる︒
11
コンツェルン合併に関する略式手続︵一五条︶第三合併指令 ︵
の完全子会社未満%〇〇一で以上%〇九との%〇〇一が親会社︑にならい規定の欧州株式会社法規則と 58︶
子会社を吸収する場合の手続が簡略化される︒
一〇〇%子会社の場合には︵
up-stream-mergers
︶︑合併計画書において︑持分所有者の交換に関する事項︵五条⒝⒞と⒠︶の記載は︑株式交換がなされないので︑不要である︒したがって︑交換比率に関する検査は必要がない︒社員の交替︵一四条一項b︶も行なわれない︒譲渡会社である子会社の総会決議も不要である︵一五条一項︶︒
九〇%以上で一〇〇%未満の子会社の場合には︑合併当事会社の国の法律が規定しているときにのみ︑専門家の検査 ︵一六九二︶
同志社法学 五八巻五号 一九EUにおける国境を越えた合併 報告書と適法性検査の報告書の提出が必要である︵同条二項︶︒
二 合併当事会社の利害関係者の保護
1
公共の利益の保護に基く合併異議の申述権︵四条一項b第二文︶加盟国の法律は︑すでに触れたように︑当該加盟国の行政庁が公益を理由に国内の合併を禁止することを認めることができる︒この場合には︑合併禁止は︑少なくとも合併当事会社の一社が当該加盟国の法律に服する国境を越える合併 にも適用する︵四条一項b第二文︶︒この規定は︑法律委員会で挿入された規定である︒これは︑欧州株式会社法規則の類似する規定︵同規則一九条 ︵
めているのではえる定を権利の特別する拒否を合併越を国境に加盟国︑に対照的とは︶ 59︶
なく︑国内合併に対して加盟国がすでにもつ既存の異議申述権の射程距離を国際的合併にも拡大することを定めているにすぎない ︵
つこと︑立に観点の競争法上︑することにより優位が合併規制法は異議申述権する対に合併える越を国境︒ 60︶
ができない ︵
︒ 61︶
2
債権者保護︵四条一項b第一文︑二項︶債権者と社債権者の保護は︑国境を越える合併の特殊性を考慮して︑合併する会社の債権者︑社債債権者の保護に関する加盟国の規定が適用される︵四条二項︶︒これは︑加盟国が特別な規定を設けるのではなく︑国の法律が国内の合 併に適用される債権者保護規定を国境を越える合併に実質的に適合させて適用できることを表明するものである︒たとえば︑債権の履行が危殆化するかどうかという問題に関して︑国境を越える合併の特殊性を考慮することになる ︵
︒ 62︶
︵一六九三︶
同志社法学 五八巻五号 二〇EUにおける国境を越えた合併
3
少数株主の保護︵四条二項二文︶少数株主の保護に関して︑本指令は︑加盟国に対して︑国境を越える合併に反対した少数株主に適切な保護を与えるために規定を設ける権限を明文をもって与えている︵四条二項二文︶︒本条でいう適切な保護として︑たとえば︑特別 な情報請求権︑承認および決議要件または現金代償と引き換えに退社する権利などが考えられるが︑本指令一〇条三項から明らかになるように︑交換比率の検査と変更に関する特別手続の創設を観念している︑と指摘されている ︵
︒しかし︑ 63︶
右の規定は︑そのような手続を定めていない加盟国における他の合併当事会社が︑総会における合併計画の承認の際に︑合併当事会社の社員が管轄裁判所に審査手続の実施を申請できることを明文をもって認めるときに限り適用する︑と定
める︵一〇条三項︶︒
この法律状況は︑欧州株式会社法規則の場合に相応した問題がある︒たとえば︑ドイツでは︑この問題について︑組
織変更法では事後的な改善請求権︑合併計画における義務的な現金代償の提供︑合併決議取消訴訟の排除などを定めている︵組織変更法一四条以下︑二九条以下︶︒非常に複雑な最低限の保護制度は欧州株式会社に定めがある︒しかし︑
このような制度については︑実務も学説も当事会社の費用負担が過大となると指摘している︒したがって︑国境を越える合併については事実上機能しないのではないかと懸念されている ︵
︒ 64︶
三 欧州型合併モデルの特徴
以上︑第一〇指令における会社法上の合併手続について検討した︒わが国と対比して︑特徴的なのは︑合併当事会社で承認される前後になされる手続である︒とくに︑①公益に基づく合併の拒否︑②共同合併計画の作成︑③会社機関に
よる合併計画報告書の作成︑④専門家による合併計画の検査︑⑤手続き遵守の検査が特色となっている︒これらの手続 ︵一六九四︶
同志社法学 五八巻五号 二一EUにおける国境を越えた合併 きは︑細目について相違があるが︑考え方としてはEU第三指令や欧州株式会社法規則を引き継いだものである︒ 共同合併計画書における記載事項は︑国内の合併の場合と︵国境を越えた︶国際的な合併の場合と︑それぞれの特性
に対応して若干の相違がみられる︒しかし︑これらの手続は︑第三指令と共通している︒欧州株式会社法規則においては︑③の合併報告書は要求されていない︒したがって︑ここでは︑欧州型国内・国際合併モデルにおける特筆すべき手
続きとして︑④の専門家による検査を共通のものとして指摘できよう︒この制度については︑
㈡⑹
で説明しているので︑ここではその具体的な内容については再論しない︒専門家による合併計画の検査という方法は︑株主に関心の高い合併比率の公正性や正規の手続が進行していることに対する担保となる重要な制度として位置づけられている︒
さらに︑合併に関する情報を株主に提供すると同様に︑労働者に対しても付与することを明文の規定によって保障し
ている︒合併に関し濃密な利害関係を有する者に対する手厚い配慮といえよう︒
第二節 労働者の共同決定に関する規制 労働者の共同決定に関する規制は︑EUにおいては︑長い間︑加盟国間の調整の実現を妨げてきた元凶ともいえる問
題であった︒しかし︑欧州株式会社法規則の制定以来︑状況は一変したように思われる︒そのため︑欧州における労働者の経営参加方式に関する共同決定をめぐる長くて熱い論争は︑現在では︑すでに歴史的にはまったく過去の出来事で
あったかのような印象さえ抱かせる︒さらに︑欧州株式会社の労働者参加指令 ︵
する合併後は︑国境を越えたのな会社における労働者の経営参加に関変化画期的︒した提示を方向性るようなこれらの 呼はべモデルともUEの共同決定規制︑ 65︶
共同決定についても加盟国間の妥協を促す重要な背景となった︒委員会の二〇〇二年の当初の共同決定提案では簡単な
︵一六九五︶
同志社法学 五八巻五号 二二EUにおける国境を越えた合併
規制であったが︑欧州株式会社に関する共同決定指令の影響を受けて︑第一〇指令はかなり内容を変更し︑規制も増や
している︒労働者の共同決定は︑国境を越える合併指令においても労働者の経営参加を基礎とする ︵
合併指がえる越を国境︑では以下︒することになる参画に経営労働者または労働者代表において会社の合併後える越を 国境︑したがって︒ 66︶
令で実現した重要な規制の内容について概観する︒
一 労働者の共同決定に関する適用法
1
国境を越える合併後の会社の所在国の国内法の適用︵原則︶国境を越える合併後の会社が住所を有する国の共同決定法が︑原則として︑適用される︵所在地国原則︶︵一六条一項︶︒したがって︑合併後の会社が住所を定めた国に共同決定法がない場合には︑労働者の共同決定制度は設けられないこと
になる︒たとえば︑スペインの会社とイギリスの会社が合併し︑スペインに住所を置く場合である︒この所在地国原則が妥当するのは︑いずれの当事会社も国の共同決定法に服していない場合︑および︑五〇〇人未満の労働者が就業して
いる場合である︒現在のところ︑加盟国の大体半分位の国は共同決定法を定めていないようである︒五〇〇人という労働者数は︑ドイツ法の基準を参考にしたもので︑他の国ではそれ以下であるといわれる ︵
︒ 67︶
2
国境を越える合併指令の共同決定規制の適用︵例外︶しかし︑所在地国原則は︑つぎの二つ場合には適用されない︒ 第一に︑合併計画の公表前六カ月以内に合併当事会社の少なくとも一社において︑平均して五〇〇人以上の労働 者が就業し︑かつ国内の共同決定制度に服している場合である︵一六条一項 ︵
︶︒ 68︶ ︵一六九六︶
同志社法学 五八巻五号 二三EUにおける国境を越えた合併 つぎに︑国境を越える合併後の会社が服する国の法律が以下のような内容を定めている場合にも︑所在地国原則は︑適用されない︵一六条二項︶︒すなわち︑
⒜ 少なくとも︑合併当事会社において存在していたのと同じ範囲の労働者共同決定を定めておらず︑労働者共同決定が存在するときに︑当該範囲が指揮または監督機関もしくは監査委員会または会社の利益処分を決定する経 営委員会の労働者代表の構成員の割合を明確に定めている場合︑または︑ ⒝ 他の加盟国にいる︑国境を越える合併後の会社の事業所における労働者に対して︑共同決定権の行使について︑
国境を越える合併後の会社の所在地国における労働者に与えているのと同一の請求権を定めていない場合︑である︒
二 交渉特別委員会の設置
所在地国原則の例外となる⑴︑⑵の場合には︑欧州株式会社の労働者参加指令の規定が指示されているので︑同指令と同様な手続となる︵一六条三項︶︒つまり︑労働者と経営者が任意な参加方式について協議して︑合意する手続に移
行するのである︒このため︑合併に関わる労働者が代表する特別交渉委員会が設置される︒特別委員会は︑専門家の助
言を求めることができ︑その費用を会社に負担してもらえる︒労働者参加の合意において︑新たな協議の妥当範囲︑共同決定の合意︑有効期間および手続が定められる︒協議の期間は六か月で︑協議が調わない場合には︑さらに六か月の
延長が認められる︒指令が別段の定めをしない限りにおいて︑会社の所在地国の法律が適用される︒
合意の優先 交渉が合意に達した場合には︑この合意は︑原則として︑法律が定める補充規定に優位し︑協議によって合意に達し
︵一六九七︶
同志社法学 五八巻五号 二四EUにおける国境を越えた合併
た共同決定に従う︒
合意の不成立と補充規定の適用 合意が成立しない場合には︑法律が定める補充規定が適用される︒労働者の占める割合が
33であれ
ば︑補充規定が適
用される ︵
︒ 69︶
特別交渉委員会が︑少なくとも労働者の三分の二を代表する最低限二か国の加盟国から出ている委員の三分の二の多
数で︑協議をしないかまたはすでに開始した協議を打ち切ることを決議した場合には︑合併後の会社の所在地国の共同決定法の規定が適用される︒
三 国境を越える合併指令における交渉委員会制度
しかし︑交渉委員会制度については︑国境を越える合併指令と欧州株式会社の労働者参加指令との間には若干の相違が見られる︒まず︑合併指令は︑経営者と特別交渉委員会が共同決定の合意について協議することを強制していない︒ 合併当事会社の機関は︑事前の交渉をすることなく補充規定を直接に適用する裁量権が認められる︵一六条四項a ︵
︶︒ 70︶
つぎに︑労働者の共同決定をめぐる交渉が調わなかったときには︑すでに触れたように︑補充規定が適用されること
になる︒その基準は︑︵縮減した︶合併後の会社の労働者数が合併当事会社の全労働者数の二五%︵欧州株式会社の場合︶から
33に
引き上げられている ︵︒ 71︶
最後に︑合併後の会社の指揮または管理機関における労働者代表者数を制限することができる ︵
に三分管理機関︑は制限この︑しているときには構成で労働者代表を一のなくとも少が管理機関または指揮の一社の社 合併当事会︑しかし︒ 72︶
おける労働者代表が三分の一以下になるようにすることができない︒これは︑監査役会の制度が存在せず︑指揮と支配 ︵一六九八︶
同志社法学 五八巻五号 二五EUにおける国境を越えた合併 権限を有する取締役会のみ存在するイギリスのような国に適合させるために設けられた規制である ︵
︒ 73︶
四 外国における事業所の労働者
EU加盟国において︑合併後の会社の外国の事業所の労働者は︑特別交渉委員会の選挙の際に考慮される︵一六条五
項︶︒この外国労働者は︑国内法に従って労働者数基準を満たしている場合には︑共同決定が存在している基準︵就業者数︶の算出の際に考慮する必要はない︒したがって︑国内の就業者数が基準とされる︒
五 労働者の共同決定制度の存続
労働者の共同決定制度が国境を越える合併の少なくとも一社の当事会社に存在し︑当該規制が合併後の会社に適用される場合には︑当該会社は︑共同決定権を行使できる法形式を採用する義務がある︵一六条六項 ︵
︶︒したがって︑たと 74︶
えば︑ドイツの場合には︑共同決定制度が適用されない有限合名会社︵
Gmb H & Co. OHG
︶に組織変更することは許されない ︵︒ 75︶
労働者の共同決定権は︑合併後に三年以内に国内で行なわれる合併でも保護される︵一六条七項︶︒これによって︑
三年の間に国内で合併する場合には︑合併後の会社は︑合併後の所在地国で共同決定に移行するときは︑将来の企業がその後三年を経過した後にはじめて組織の変更が自由になる︒
六 労働者の共同決定規制に対する評価
国境を越える合併指令は︑基本的には︑欧州株式会社の労働者参加指令に沿った規制をしている︒しかし︑この参加
︵一六九九︶
同志社法学 五八巻五号 二六EUにおける国境を越えた合併
指令については︑共同決定を導入するための労働者の割合および指揮または監督機関における労働者代表の数が多すぎ
るとの批判が強い︒このため︑国境を越える合併指令は︑法律上の補充規定の適用をもたらす労働者の占める割合を
33
に引き上げ︑さらに︑合併後の会社の労働者の代表数を三分の一に引き下げている︒このような共同決定における基準
の緩和が国境を越える合併指令の成立を可能にしたものと言えよう︒国境を越える合併の場合には︑ドイツの共同決定の水準は国境を越えて侵透するのではなく︑合併後の会社がドイツを離れて移転する場合にその縮小をもたらすことに
なる︑と指摘されている ︵
つに会社できない︒しかし︑不利になるからといっても︑それはどこにのとを住所を置くかという立地の要因の一否定 になるこ制度立場を採用する会社は︑このを︒採用しない会社との間で競争上不利な共同決定 76︶
すぎないので︑共同決定制度を回避するために企業がわざわざドイツから逃避することはなかろう︑と予測されている︒しかし︑ドイツ自体の共同決定を欧州規模並に修正するように向かうならば︑そのことはドイツの立法者にとって圧力
となる︑と指摘されている ︵
︒ 77︶
結語に代えて ― わが国における規制の不備
⑴ 会社法は︑合併に関する規制について大幅な改正を行い︑合併規制は七つの組織再編行為の一形式として整理された︒とくに︑略式合併手続きの新設︵会社七八四条一項︶︑簡易合併行為の要件の緩和︵同七九六条三項︶︑差損の生じる合併を許容する明文規定︵同七九五条二項︶を設け︑さらに内外の要望に応じて︑合併対価の柔軟化︵同七四九条一項二号︶を実現した︒日本の会社と外国会社と間の国際的合併を正面から認める明文の規定は定められなかったが︑
三角合併を可能にする法的措置として︑例外的に︑子会社が親会社の株式をこの目的のために取得できる︑とする明文 ︵一七〇〇︶