• 検索結果がありません。

書き言葉コミュニケーションを楽しむ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "書き言葉コミュニケーションを楽しむ"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

103 1.はじめに

 「書いてつながる日本語

6 7」はパソコンメールや手書きの手紙などの書き言葉コミュ

ニケーションの練習を行うクラスである。コミュニケーションの目的はよい人間関係を作 ることだと思われる。書き言葉コミュニケーションでは文法や語彙の正確さや適切な敬語 表現はもちろんだが,読みやすいデザインなども必要ではないだろうか。例えば,改行も 段落分けもないメールは日本語として正しくても読む気がしなくなる。人間関係が壊れて しまうかもしれない。読みやすさなど気にしないという人もいるだろうが,このクラスで はこのような点も重視している。

2.クラスの進め方

 このクラスは金曜日の

1

限目にコンピュータールームで行われる。メールの書き方の場 合,授業では悪い例を出すことが多い。悪い例といっても日本語としては正確である。敬 語が適切ではない場合もあるが,多くは必要な情報が抜けていたり不要と思われる情報が 含まれていたりするものである。教材(『日本語を書くトレーニング』の一部を修正使用)

のメールのどこが悪いかを学生自身が考え,皆で話し合い,メールの登場人物になって メールを書き直し,授業時間内に提出する。次週には返却,教師の講評,再提出と続く。

その後,次の課題メールの説明に入る。毎回これを繰り返す。評価のポイントは,読みや すさ・文章の構成・正確さである。

3.教師の工夫

 書き言葉のクラスではあるが,教室という場では話し言葉コミュニケーションも必要 である。教師が一方的に説明し,学生はそれを聞き一人でパソコンに向かって別の人物に なってメールを書き提出して帰るだけでは教師として物足りない。教師と学生また学生同 士が現実の会話を行い親しくなる時間の余裕はない。そこで,コンピュータールームの特 性を生かし,課題提出後にコースナビのディスカッション機能を使って近況などについて メッセージやコメントを書き込んでもらうことにした。自分が書き込んだことを声に出し て読んでもらうこともある。書き言葉コミュニケーションのクラスではあるが,学生同士 の双方向の話し言葉コミュニケーションに近づいていると思われる。

早稲田日本語教育実践研究 第 6 号 【実践紹介】

書き言葉コミュニケーションを楽しむ

河内 千春

  科目名:書いてつながる日本語

  レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7 ・8   履修者数:20 ~ 30 名

(2)

早稲田日本語教育実践研究 第 6 号/ 2018 / 103―104

104

 単に正確に日本語を書く能力を伸ばすだけではなく,メールの登場人物になり想像力を 働かせて書くことで自分自身では書けないところまで世界を広げていく。また,現実の自 分について書くことでクラス全員が親しくなる。この二つが書き言葉コミュニケーション を楽しむということにつながっている。

4.学生の取り組み

 オリエンテーションで授業内容や授業の進め方についてきちんと理解し納得した上で登 録した学生は非常に積極的に取り組んでくれる。欠席も少ない。朝

9

時からの授業なのに 遅刻も少ない。欠席の場合は連絡があり,課題は遅れても提出する。教師の説明はしっか り聞き,不明な点は質問する。初めから教師の意図通りの読みやすいメールが書ける学生 は少ないが,だんだん上達していく。学生たちの多くは授業に満足し,日常生活に役立て ているようである。

 しかし,ごく一部ではあるが,教材に書かれていることは全て正しいと思い込んでいる 学生がいる。どこを書き直すのかを皆で共有しても,書き直せない学生もいる。「先生に 本の貸し出しをお願いするメール」で「借りる」と「貸す」の使い分けが理解できず,こ れに「〜ていただく」などが付くとさらに混乱してしまう。また,「親しい友達にレポー トについて問い合わせるメール」を友達言葉で書くように指示すると丁寧体で書いてくる 学生がいる。「私はいつも丁寧体で書くので友達言葉では書きたくありません」と言う。

こんなときには「あなた自身が書くのではなく別の人物になって書くのです」と説明す る。それで納得してくれる場合もあるが,無理な場合もある。その他にも「授業が易しす ぎた」「授業の進め方が思っていたものではなかった」という声も聞く。こういう学生は オリエンテーションに出席していないことが多い。オリエンテーションにはきちんと出席 して自分に合ったレベルや授業の進め方のクラスを選んでほしいものである。

5.今後の課題

 今の授業はメールだけでなく手書きの手紙なども扱っているが,もしメールやメッセー ジなどネットで送れるものだけにすれば,オンラインクラスにすることも考えられる。教 室での直接コミュニケーションやクラスとしてのまとまりなどを考える必要もなくなるだ ろう。

 また,このクラスを何度も行なっているうちに,別の人物になるのは演劇的な楽しみ方 だと気づいた。別の機会に書き言葉コミュニケーションについて演劇的視点から考察して みたいと思う。

参考文献

野田尚史・森口稔(2003)『日本語を書くトレーニング』 ひつじ書房

(かわち ちはる,早稲田大学日本語教育研究センター)

参照

関連したドキュメント

このような環境ゆえ、私たち日本人は揺れ を表現する能力に長けている。しかしなが

本との縁は別途展開し深まっていった。院で 出合った畏友から 「本は買って読むもの。家

筆者はすでにこれまでの論文や著書において一貫

ここで新たな発想として, r

が用意されている。結果として、話し言葉と書き言葉が異なる状況に共存するという現実を反

高校のように複数の教員が共通の教科書 :

先生は

4ポイ ント下がり,76.2%で80