気 候 保 全 の 法 的 手 法 に 関 す る 一 考 察
︱ ︱
ドイ ツの﹁国 家気 候保 全プ ログ ラム
﹂と
﹁エ コロ ジー 税制 改革
﹂に 焦点 を当 てて
︱ ︱
岩﨑 恭 彦
は じ め に 一
﹁社 会民 主党
・緑 の党
﹂連 立政 権の 気候 保全 戦略 と﹁ 法的 仕組 み﹂
︵一
︶ 当時 の気 候保 全戦 略を 特徴 づけ る主 な要 因
ઃ
﹁社 会民 主党
・緑 の党
﹂連 立政 権の 誕生
エネ ルギ ー政 策と の関 係︵二
︶﹁ 法的 仕組 み﹂ とし ての
﹁国 家気 候保 全プ ログ ラム
﹂
ઃ
﹁国 家気 候保 全プ ログ ラム
﹂の 性格 およ び内 容
﹁社 会民 主党
・緑 の党
﹂連 立政 権の
﹁国 家気 候保 全プ ログ ラム
﹂ 二 二〇
〇〇 年お よび 二〇
〇五 年の
﹁国 家気 候保 全プ ログ ラム
﹂
︵一
︶ 目 標 設 定
ઃ
二〇〇〇 年プ ログ ラム
二〇〇五 年プ ログ ラム
︵二
︶ 目標 実現 のた めの 諸措 置
ઃ
二〇〇〇 年プ ログ ラム
二〇〇五 年プ ログ ラム
︵三
︶ プロ グラ ムの 見直 しお よび 改訂
ઃ
二〇〇〇 年プ ログ ラム
二〇〇五 年プ ログ ラム 三 気候 保全 の手 法と して の﹁ エコ ロジ ー税 制改 革﹂
︵一
︶﹁ エコ ロジ ー税 制改 革﹂ の背 景お よび 内容
ઃ
導入 の背 景
立法 措置 の概 要︵二
︶﹁ 国家 気候 保全 プロ グラ ム﹂ にお ける 位置 づけ
ઃ
法政 策上 の位 置づ け
期待 され てい る効 果 四 環境 保全 の手 法と して の意 義ઃ
﹁事 前配 慮﹂ 的手 法と して の﹁ 国家 気候 保全 プロ グラ ム﹂ の可 能性
﹁エ コロ ジー 税制 改革
﹂の 有効 性の 考え 方 お わ り に
は じ め に
⑴
地球 温暖 化対 策の ため の環 境税 への 関心 が、 わが 国で も高 まっ てい る。 その 背景 の一 つに は、 二〇〇九 年八 月三
〇日 の第 四五 回衆 議院 議員 選挙 の結 果を 受け た、 民主 党・ 社会 民主 党・ 国民 新党 の連 立政 権の 誕生 があ ると いっ てよ い。 すな わち
、こ の政 権の 大き な一 翼を 担う 民主 党は
、そ のマ ニフ ェ スト の一 項目 とし て﹁ 地球 温暖 化対 策を 強力 に推 進す る﹂ こと を謳 い、 そこ では
、C O
等の 温室 効果 ガス 排出 量 につ いて
、一 九九
〇年 比で 二〇 二〇 年ま でに 二五
%削 減し
、更 に二
〇五
〇年 まで に六
〇% 以上 を削 減す ると いう 極 めて 高い 目標 を掲 げて いる が、 その 実現 のた めの 一措 置と して
、﹁ 地球 温暖 化対 策税 の導 入を 検討 する
。そ の際
、 地方 財政 に配 慮し つつ
、特 定の 産業 に過 度の 負担 とな らな いよ うに 留意 した 制度 設計 を行 う﹂ と明 記
( )
した ため であ
る。 その 帰趨 がど うな るか はま だ予 測は でき ない もの の、 環境 税の 現実 的な 導入 およ び実 施の 気運 がに わか に高 ま りつ つあ るこ とは 確か であ る。 国内 環境 対策 とし ての 環境 税・ 環境 賦課 金の 導入 をめ ぐっ ては
、国 際競 争力 に及 ぼす 影響 への 懸念 や導 入に よる CO
削減 効果 の不 透明 さな どの 理由 から
、わ が国 に限 らず
、産 業界 から の強 い抵 抗が ある こと は少 なく ない
。こ のた め、 それ が導 入さ れる に際 して
、政 権の 推進 力が 大き く作 用す る場 合が ある
。
⑵
その 一例 をあ げれ ば、 本稿 でも 後に とり あげ る、 ドイ ツの﹁エ コロ ジー 税制 改革
﹂︵
Ö k o l o g i s c h e S t e u e r r e - f o r m
が︶ そう であ った と( )
いう
。そ の導 入に 当た って は、 一九 九八 年に 登場 した 社会 民主 党︵
S P D
︶ およ び緑 の党︵
B ü n d n i s 9 0 / D i e G r ü n e n
︶の 連立 政権 が強 くそ れを 推進 し、 その 結果 とし て実 現に 至っ たこ とで 知ら れて いる
。 ドイ ツに おい て、 環境 保全 の
( )
手法 とし てい わゆ る﹁ 経済 的
( )
手法
﹂︵
ö k o n o m i s h e I n s t r u m e n t e
︶ への 関心 が高 まっ て&
'
いく のは かな り早 い時 期か らの こと であ り、 一九 七一 年に 当時 の連 邦政 府が 公表 した
﹁環 境プ ログ
( )
ラム
﹂︵
U m w e l t -
*
p r o g r a m m
︶に 環境 政策 の原 則の 一つ とし て﹁ 原因 者負 担
( )
原則
﹂︵
V e r u r s a c h e r p r i n z i p
︶が 掲げ られ
、こ の原 則を
﹁賦
/
課金
﹂︵
A b g a b e n
︶ を通 じて も実 行す ると 明記 され たこ とが その 嚆矢 とさ れる が、 その 背景 には、伝 統的 な﹁ 規制 的手 法﹂
︵
o r d n u n g s r e c h t l i c h e I n s t r u m e n t e
︶の 機能 不全 が指 摘さ れ、 それ を賦 課金 によ って 補完 する こと が求 めら れ たと いう 事情 があ
( )
った
。そ して
、現 実に も、 一九 七六 年に は水 質管 理の 分野 での 規制 的手 法の 機能 不全 を補 うべ く
2
﹁排 水賦 課
( )
金法
﹂︵
A b w a s s e r a b g a b e n g e s e t z - A b w A G
︶ が立 法化 され、一 九八 一年 から 実施 され てい る。 また
、炭
3
素・ エネ ルギ ー税
︵
C
2 O - u n d E n e r g i e s t e u e r︶ の導 入に 向け た議 論も
、一 九八
〇年 代中 頃に は既 に開 始さ れて おり
、 ヨー ロッ パの 中で もド イツ は最 も早 く議 論が 開始 され た国 の一 つに 属す ると さ
( )
れる が、 地球 温暖 化問 題に 対し ては
8
直接 的な 規制 が必 ずし も有 効で はな いと され
、こ のた めに 炭素
・エ ネル ギー 税の 導入 を求 める 声が 高ま って きた と いう 点で は、 前記 事情 とも 共通 する
。し かし なが ら、 現実 的に は、 産業 界の 強い 抵抗 もあ って
、そ れを 実施 する こ とは 長ら く困 難と され てき た。 その よう な中 にあ って
、社 会民 主党 およ び緑 の党 の連 立政 権が 一九 九八 年に 成立 した こと
、そ して
、当 該政 権の 連立 協定 にお いて その 実施 につ いて 合意 が形 成さ れた こと から
、エ コロ ジー 税制 改革 の導 入は 決定 的に 大き な一 歩 を進 める こと にな り、 一九 九九 年四 月か ら実 施さ れる こと とな った ので ある
。こ の連 立政 権が 導入 した エコ ロジ ー 税制 改革 は、 新税 によ るの では なく 既存 税を 活用 した もの であ るこ と、 およ び、 エネ ルギ ー消 費に 課税 する 一方 で 社会 保険 料の 雇用 者負 担分 を軽 減す ると いう 方法 によ って
﹁環 境問 題と 雇用 問題 との 同時 解決
﹂を 図ろ うと する
、 いわ ゆる
﹁二 重の
( )
配当
﹂︵
d o p p e l t e D i v i d e n d e
︶ を期 待し たも ので ある こと で知 られ てい る。10
⑶
とこ ろで、興 味深 いの は、 右に みた 社会 民主 党お よび 緑の 党の 連立 政権 にお ける エコ ロジ ー税 制改 革の 位置 づけ 方と
、そ の後 に二
〇〇 五年 に登 場す るキ リス ト教 民主
/社 会同 盟︵
C D
U /
C S
U
︶ と社 会民 主党 との 大連 立か ら なる 政権 以降 にお ける それ との 間に は、 相当 に大 きな 違い があ る点 であ る。すな わち
、後 者の 政権 以降 は、 環境 保全 のた めの 手法 とい うよ りも
、﹁ 雇用 問題
﹂対 策の 財源 確保 手段 とし ての 性格 が強 めら れて いる よう に思 わ
( )
れる が、 これ に対 して
、そ の導 入に 大き な役 割を 果た した 前者 の社 会民 主党 およ
11
び緑 の党 の連 立政 権は
、こ れを
﹁環 境問 題﹂ 対策 のた めの 手法 とし て明 確に 位置 づけ てい るば かり でな く、 後に 詳 しく 論じ るよ うに
、ド イツ の気 候保 全
( )
政策
︵
K l i m a s c h u t z p o l i t i k
︶ にお ける 最も 重要 な措 置と して 扱っ てお り、 その12
温室 効果 ガス の排 出削 減効 果に 大き な期 待を 寄せ てい るの であ る。 そう であ ると する と、 わが 国に おけ る環 境問 題対 策と して の環 境税 の導 入や
、そ こで の法 およ び行 政の あり 方を 検討 する 上で
、ド イツ のエ コロ ジー 税制 改革 およ び気 候保 全政 策に おけ るそ の位 置づ けを 検討 素材 にし よう とす る とき
、前 記大 連立 政権 以降 ない し現 段階 での それ に目 を向 ける には 一定 の注 意が 必要 とな ろう
。 他方 で、 私見 によ れば
、社 会民 主党 およ び緑 の党 の連 立政 権か らな る当 時の 連邦 政府 が、 気候 保全 のた めの 法政 策を どの よう な﹁ 法的 仕組 み﹂ によ って 行っ てき たの か、 そし てそ の下 に、 エコ ロジ ー税 制改 革に つい てい かな る 法的
・行 政的 な位 置づ けを 与え てき たか を明 らか にす るこ とに より
、環 境に おけ るわ が国 の法 と行 政、 とり わけ そ の手 法の あり 方に 関し て、 有益 な示 唆が 得ら れる よう に思 われ る。 この 点に つい ては
、本 稿で の考 察を 進め てい く こと によ って 明ら かに して いき たい
。 以上 のよ うな 問題 意識 に従 って
、本 稿で は、 行政 法学 ない しは 環境 法学 の観 点か ら、 この 当時 のド イツ 連邦 政府 にお ける 気候 保全 のた めの 法政 策、 およ びそ の下 で導 入さ れた エコ ロジ ー税 制改 革の 法的
・行 政的 な位 置づ けに 焦 点を 当て て、 わが 国に おけ る環 境に 関す る法 およ び行 政に 対し て示 唆を 得る べく 検討 を行 うこ とと する
。し たが っ て、 この 分野 での 制度 等の 変遷 はめ まぐ るし いも のが ある が、 本稿 は、 ドイ ツの 最新 の制 度や
( )
動向 を紹 介す るこ と
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を課 題と する もの では ない 旨を
、あ らか じめ お断 りし てお きた い。 そこ で、 以下 では
、当 時の ドイ ツに おけ る気 候保 全の ため の法 政策 と、 そこ での エコ ロジ ー税 制改 革の 法的
・行