思 想 と い う 語 を め ぐ っ て ( 柳 田 )
思
想
と
い
う
語
を
め
ぐ
つ
て
柳
田
聖
山
一 思 想 と い う 語 は、 今 日 一 般 に 英 語 の th o u g h t 又 は id e a の 課 語 と し て、 廣 く、 思 う こ と、 考 え る こ と、 等 の 意 と せ ら れ て い る が、 元 來 は 漢 語 に な か つ た 佛 敢 猫 自 の 術 語 で あ つ て、 中 國 に 於 け る 佛 教 教 學 の 獲 展 と と も に、 實 に 多 義 を 含 ん で い る よ う に 思 わ れ る。 こ こ に、 こ の 語 が 今 日 の よ う な 一 般 的 な 意 味 を も つ に 至 る ま で の 歴 史 的 由 來 を 尋 ね つ つ、 こ の 語 が も と も と 深 い 關 係 を も つ て い た と 思 わ れ る 輝 観 の 攣 遷 を 併 せ 明 か に し て 見 よ う と す る の が、 こ の 小 論 の 目 的 で あ る。 二 先 ず、 こ の 語 が 中 國 の 佛 教 文 鰍 の 上 に 最 初 に 表 わ れ る の は、 漢 土 課 経 の 始 め と さ れ る 後 漢 の 安 世 高、 支 婁 迦 識 の 作 品 に 於 い て で あ つ て、 彼 等 の 課 出 し た 経 典 の 随 所 に 見 ら れ る が、 そ れ ら は 圭 と し て 五 陰 中 の 想 の 奮 い 課 語 と し て 用 い ら れ る も の で あ る。 今 假 り に、 安 世 高 課 の ﹃ 佛 説 漏 分 布 経 ﹄ と、 そ の 同 本 ・ 異 課 た る 嬰 曇 僧 伽 提 婆 課 ﹃ 中 阿 含 経 ﹄ 巻 二 十 七、 百 + 一 経、 達 梵 行 経 の 該 當 部 分 を 封 照 す れ ば 次 の 如 く で あ る。 比 丘 當 知 思 想、 亦 當 知 思 想 從 本 有、 亦 當 知 從 思 想 受 狭、 亦 當 知 思 想 分 布、 亦 當 知 思 想 蓋。 亦 當 知 受 何 行 令 思 想 畢。 何 等 爲 當 知 思 想、 謂 有 四 思 想、 一 爲 少 思 想、 二 爲 多 思 想、 三 爲 無 有 量 思 想、 四 爲 無 所 有 不 用 思 想、 如 是 爲 知 思 想。 何 等 爲 當 知 思 想 從 本 有、 謂 本 爲 思 想、 如 是 知 思 想 從 本 有。 以 下 略。 ﹃ 佛 読 漏 分 布 経 ﹄ (正 藏 一、 c。 認 b -c ) 汝 等 當 知 想、 知 想 所 因 生、 知 想 有 報、 知 想 勝 如、 知 想 滅 壼、 知 想 滅 道。 ⋮⋮ 云 何 知 想、 謂 有 四 想、 比 丘 者、 小 想 亦 知、 大 想 亦 知、 無 量 想 亦 知、 無 所 有 虚 想 亦 知、 是 謂 知 想。 云 何 知 想 所 因 生、 謂 更 樂 也、 因 果 樂 則 便 有 想。 是 謂 知 想 所 因 生。 以 下 略。 ﹃ 中 阿 含 経 ﹄ 巻 第 二 十 七 ( 正 藏 一、 5 99 b -c ) な お 安 世 高 が 五 陰 を 色 ・ 痛 ・ 思 想 ・ ・ 識 と 課 し た 例 は ﹃ 陰 持 入 経 ﹄ の 始 め に も 見 え、 呉 の 陳 慧 は そ の 思 想 の 語 を 注 し て想 像 也、 獣 念 日 思 在 所 志、 若 賭 共 像 之 虚 已 則 前、 故 日 思 想 莫 ( 正 藏 三 三、 9 c ) と 云 い、 又 想 像 也、 意 所 存 日 思、 髪 髭 如 賭 其 容 之 塵 前 日 想 ( 同、 1 1c ) と 云 っ て 居 り、 當 時 に 於 け る 思 想 の 語 の 解 繹 が 窺 わ れ る。 こ の 外、 後 世 の 課 語 で 非 想 非 非 想 と 呼 ば れ る も の も、 無 有 思 想 亦 不 無 有 思 想 と 課 さ れ て 居 り、 更 に、 支 婁 迦 識 澤 の ﹃ 般 舟 三 昧 経 ﹄ で は 菩 薩 復 有 四 事、 疾 得 是 三 昧。 何 等 爲 四、 一 者 不 得 有 世 間 思 想、 如 指 相 弾 頃 三 月。 二 者 不 得 臥 出 三 月、 如 指 相 弾 頃。 云 云 ( 正 藏 十 三、 9 0 6 a ) と い う 如 き 用 例 が あ つ て、 こ の 場 合 は 必 ず し も 五 纏 中 の 想 と の み 解 せ ら れ な い が、 や は り 廣 い 意 味 で の 想 像 の 義 に 用 い ら れ、 課 語 と し て 一 定 さ れ て い な か つ た の で は あ る ま い か。 然 る に、 右 の ﹃ 般 舟 三 昧 経 ﹄ と 同 本 で あ る 階 の 闇 那 岨 多 課 ﹃ 大 方 等 大 集 経 賢 護 分 ﹄ に よ る と、 思 惟 品 第 一 之 二 に 次 の 如 き 用 例 が 見 出 さ れ る。 心 有 想 念、 則 成 生 死。 心 無 想 念 印 是 浬 繋。 諸 法 不 眞、 思 想 縁 起。 所 思 既 滅、 能 想 亦 塞。 賢 護 當 知、 諸 菩 薩 等、 因 此 三 昧、 誰 大 浬 繋。 ( 正 藏 十 三、 8 77 b ) こ こ で、 ﹁ 思 想 縁 起 ﹂ と 言 つ て い る の は、 次 に ﹁ 所 思 既 滅、 能 想 亦 室 ﹂ と あ る よ り 明 か な よ う に、 思 と 想 と が 相 依 つ て 起 る こ と で あ り、 そ れ が ﹁ 諸 法 不 眞 ﹂ な る 因 で あ り、 浬 藥 に そ む く 生 死 的 な 我 々 の あ り 方 に 外 な ら な い、 と い う こ と を 意 味 し て い る よ う で あ る。 而 も、 注 意 す べ き は、 こ こ に 用 い ら れ て い る 思 想 と い う 語 が、 以 上 の こ と か ら 明 か な よ う に、 思 と 想 と を 結 び 合 わ せ て 作 ら れ た 言 葉 で あ り、 恐 ら く は 梵 語 か ら の 直 課 で は な か ろ う と 思 わ れ る こ と で あ る。 こ の こ と は、 右 の 階 課 を 後 漢 の 支 婁 迦 識 課 の 相 當 箇 所 に 参 照 す る と、 心 有 想 爲 療、 心 無 想 是 泥 沮。 是 法 無 可 樂 者、 皆 念 所 爲。 設 使 念 爲 室 耳、 設 有 念 者、 亦 了 無 所 有。 ( 正 藏 十 三、 9 0 6 a ) と な つ て い て、 ﹁ 思 想 縁 起 ﹂ の 句 が 見 出 さ れ ず、 軍 に ﹁ 念 ﹂ と 云 わ れ て い る こ と か ら も 明 か で あ る。 從 つ て 當 時、 思 想 と い う 語 は、 思 念、 想 念 等 の 語 と 共 通 し た 意 義 を も つ た 廣 義 の 心 の 作 用 と み ら れ て い た の で あ ろ う。 周 知 の よ う に、 思 や 想 や 念 は、 一 方 で 倶 舎 や 唯 識 等 の 敢 學 で 嚴 密 な 定 義 づ け を 得 る に 至 る の で あ る が、 こ こ で は 極 め て 廣 義 に 用 い ら れ て、 そ れ ら の 心 の 作 用 が 虚 妄 的 に 相 依 つ て 生 死 的 な 無 可 樂 的 な 現 實 を 造 作 せ し め る こ と を 誠 め、 そ う し た 思 想 を 室 ず べ き こ と を 敢 え た も の と 解 し て よ い で あ ろ う。 虜 で、 先 の 引 文 に も 見 ら れ る よ う に、 思 想 と い う 語 と 深 い 關 係 を も つ て い た と 考 え ら れ る 思 惟 の 語 は、 佛 教 で は 思 想 よ り も 特 殊 な 術 語 で あ つ て、 通 例、 八 正 道 の 一 と し て の 正 思 惟 の 場 合 が 思 い 合 わ さ れ る が、 佛 敢 で は 思 惟 に そ う し た 正 邪 の 思 想 と い う 語 を め ぐ っ て ( 柳 田 )
思 想 と い う 語 を め ぐ っ て ( 柳 田 ) 雨 面 を 認 め て い た か ら、 思 に も 想 に も 念 に も ま た 正 邪 の 爾 面 を 考 慮 す べ き こ と 言 う ま で も な い の で あ り、 思 想 と 術 語 さ れ る 場 合 は、 常 に ﹁ 思 想 縁 起 ﹂ と い う 妄 惑 性 を 強 く 意 味 す る こ と と な る が、 そ う し た 傾 向 は す で に、 五 陰 の 想 と い う 考 え 方 と も 關 係 し て い た の で あ ろ う。 事 實、 古 い 時 代 の 思 想 と い う 語 の 用 例 は、 殆 ん ど こ う し た 虚 妄 分 別 に 纒 せ ら れ た 想 念 の 義 に の み 解 せ ら れ る よ う で あ つ て、 例 え ば、 呉 の 維 祇 難 繹 ﹃ 法 句 経 ﹄ に よ る と、 そ の 道 行 品 第 二 十 八 に、 遠 離 諸 淵、 如 風 却 雲、 已 滅 思 想、 是 爲 知 見。 ( 正 藏 四、 5 6 9 b ) と い い、 又、 愛 欲 品 第 三 十 二 に、 夫 從 愛 潤 澤、 思 想 爲 滋 蔓、 愛 欲 深 無 底、 老 死 是 用 増。 ( 同、 5 7 1 c ) 我 欲 知 汝 本、 意 以 思 想 生、 我 不 思 想 汝、 則 汝 而 不 生。 ( 同、 5 7 1 b ) 等 と あ り、 共 に 虚 妄 分 別、 若 し く は 見 愛 の 意 と な し、 そ こ に 思 惑 の 意 を 含 ん で い る よ う に 思 わ れ る。 三 次 に 思 想 の 語 を、 虚 妄 分 別 に 纒 せ ら れ た 想 念、 つ ま り 妄 念 と 同 義 に 用 い た 中 國 撰 述 の 書 と し て は、 南 岳 慧 思 ( 5 1 5 -5 7 7 ) の ﹃ 諸 法 無 謝 三 昧 法 門 ﹄ 巻 下 心 念 庭 品 に、 初 學 輝 時、 思 想 多 念、 畳 襯 墾 縁、 如 猿 猴 走、 不 曾 暫 停。 ( 正 藏 四 六、 6 3 6 b -c ) と 云 い、 天 台 智 頻 ( 5 38 -5 9 7 ) の ﹃ 摩 詞 止 観 ﹄ 巻 三 上 に、 息 義 者、 諸 悪 畳 翻、 妄 念 思 想、 寂 然 休 息。 ( 正 藏 四 六、 醇 ぴ ) と 云 い、 又 巻 四 下 に、 思 悦 意 香、 開 結 使 門、 想 於 美 味、 甘 液 流 口、 憶 受 諸 燭、 毛 竪 職 動。 貧 如 此 等、 麓 弊 五 欲、 思 想 計 校、 心 生 酔 惑、 忘 失 正 念。 ( 同、 4 4 c ) と 云 い、 又 ﹃ 繹 灘 波 羅 蜜 次 第 法 門 ﹄ 巻 四 に、 若 人 於 囁 念 之 時、 錐 畳 畳 観、 煩 憶 念 念 不 佳。 但 随 所 時、 或 明 或 昏、 明 則 畳 観 肇 縁、 思 想 不 佳、 昏 則 無 記 燈 謄、 無 所 畳 了。 (正 藏 四 六、 5 0 1 b ) と あ り、 こ こ に 毘 観 と い う の は、 新 繹 に 尋 伺 と 呼 ば れ る 二 種 の 心 所 の 言 い で、 鹿 思 を 畳、 細 思 を 観 と 云 い、 そ れ 自 身 は 無 記 で あ り 乍 ら、 共 に 妄 念 と 相 鷹 し て 定 心 を 障 ぐ る も の と さ れ て い る か ら、 思 想 も 亦 た 畳 観 と 殆 ん ど 同 義 に 用 い ら れ て い る こ と が 知 ら れ る。 又、 肇 縁 の 語 は 後 述 す る よ う に 灘 と 密 接 な 關 係 を も つ て い る が、 畢 寛 は 妄 想 微 動 し て 心 に 執 著 を 起 す を 言 う の で あ つ て、 先 の ﹃ 大 方 等 大 集 経 賢 護 分 ﹄ に 見 え る ﹁ 思 想 縁 起 ﹂ に 外 な ら な い。 か く て、 中 國 輝 観 の 歴 史 に 於 い て、 思 想 の 語 は 古 來 常 に 肇 縁 妄 念 の 意 と せ ら れ る こ と と な つ た が、 か か る 思 想 の 妄 惑 的 方 面 を 更 に 強 く 誠 め た も の は、 唐 代 の 初 め に そ の 教 學 髄 系 を 完 成 し た 達 摩 暉 の 流 れ に 於 い て で あ つ て、 先 ず、 北 宗 の ﹃ 大 乗 五 方 便 ﹄ に は 問、 是 没 是 四 魔。 答、 煩 悩 魔、 天 魔、 纒 魔、 死 魔。 思 想 墓 縁、 是 煩 悩 魔。 身 解 怠、 是 纏 魔。 外 邊 境 界、 是 天 魔。 功 夫 間 臨、 是 死 魔。
(宇 井 博 士、 暉 宗 史 研 究、 p. 4 6 6 ) と 云 い、 又 更 に、 若 菩 薩 佳 是 解 腕 者、 以 須 彌 之 高 廣、 内 芥 子 中、 無 有 増 減。 其 義 云 何。 答、 有 思 則 有 想、 有 想 則 有 妨、 有 妨 則 有 障。 無 思 則 無 想、 無 想 則 無 妄、 無 妄 則 無 妨、 無 妨 則 無 障、 無 障 則 是 解 腕。 無 思 無 不 思、 無 想 復 無 想、 煩 悔 本 自 塞、 芥 子 元 無 障。 恵 眼 分 明、 見 彼 此 相 入、 有 何 妨。 若 無 思 無 想、 二 相 李 等、 則 是 不 思 議。 ( 同、 p. 5 0 7 ) と あ る の は、 か か る 思 想 を 絶 し て 無 思 無 不 思、 無 想 復 無 想 に 至 る 所 に 定 心 の 所 在 を 圭 張 せ ん と す る も の で あ り、 無 思 惟 是 大 定 と さ え 強 調 し て も と も と イ ン ド 的 な 繹 観 の 極 所 と み ら れ て い た 思 惟 を も 超 え る べ き こ と を 教 え る に 至 つ た の で あ る。 虜 で、 こ の よ う に 思 想 乃 至 は 思 惟 そ の も の を 虚 妄 と し て 之 を 絶 し よ う と す る 圭 張 は、 後 に 北 宗 と 封 立 的 な 立 場 に あ つ た と 言 わ れ る 南 宗 に 於 い て も 共 通 で あ つ た よ う で、 例 え ば、 ﹃ 六 租 壇 経 ﹄ に 慧 能 の 語 と し て、 煩 拶 無 邊 誓 願 断、 將 自 性 般 若 智、 除 却 虚 妄 思 想 心 是 也。 ( 正 藏 四 八、3 5 4 a ) と あ り、 又 ﹃ 景 徳 傳 燈 録 ﹄ 巻 十 三、 宗 密 の 條 下 に、 彼 は 宰 相 請 挽 (-8 3 7 ) が 呈 し た 見 解 に 封 し て 註 繹 を 加 え て い る が、 そ の ﹁ 當 眞 如 相 鷹 之 時、 萬 化 寂 滅 ﹂ の 下 に、 萬 法 倶 從 思 想 縁 念 而 生、 皆 是 虚 塞、 故 云 化 也 云 云。 (正 藏 五 一、 30 7 a ) と 云 つ て 居 り、 こ れ ら の 用 例 が 皆 上 來 學 げ 來 つ た 虚 妄 縁 念 の 意 た る こ と に 攣 り は な い よ う で あ る。 四 然 る に、 以 上 注 意 し 來 つ た 如 き 思 想 の 語 の 系 列 に 封 し て、 こ こ に 全 く 別 個 の 意 義 を 與 え て 用 い た も の が、 唐 初 浄 土 教 の 大 成 者 善 導 ( 6 13 -6 8 1 ) で あ つ て、 彼 は 有 名 な ﹃ 観 無 量 壽 経 疏 ﹄ 玄 義 分 に 於 い て、 ﹁ 教 我 思 惟 我 我 正 受 ﹂ の 一 句 を 注 す る に 當 つ て、 從 來 の 諸 師 が 思 惟 を 三 福 散 善 と し、 正 受 を 十 六 正 観 と 解 す る の に 封 し て、 彼 掲 自 の 立 場 か ら こ れ を い ず れ も 定 善 に 囑 す る も の と 見 て、 思 惟 正 受 者 但 是 三 昧 之 異 名。 ( 正 藏 三 七、 2 4 7c ) と 断 じ、 そ の 序 分 義 に 於 い て、 言 教 我 思 惟 者、 帥 是 定 前 方 便、 思 想 憶 念 彼 國 依 正 二 報 四 種 荘 嚴 也。 言 教 我 正 受 者、 此 明 因 前 思 想、 漸 漸 微 細、 畳 想 倶 亡、 唯 有 定 心、 與 前 境 合、 名 爲 正 受。 (同、 2 5 8 c ) と 云 い、 こ の 意 味 で の 思 想 と い う 語 を 随 所 に 使 用 し て い る。 思 う に 此 の 場 合 の 思 想 は、 定 心 の 無 思 無 想 な る に 封 し て、 定 前 の 方 便 た る 意 義 を 有 し 思 想 に よ つ て 思 想 を 亡 ず る 正 受 へ の 過 程 と し て 積 極 的 に 施 設 せ ら れ る の で あ り、 彼 の 散 善 義 に 又 眞 實 心 中 意 業、 思 想 観 察 憶 念 彼 阿 彌 陀 佛 及 依 正 二 報、 如 現 目 前。 ( 同、 2 7 1 a ) と 見 え る よ う に、 思 想 ・ 観 察 ・ 憶 念 と 連 績 し て 観 念 入 定 の 重 思 想 と い う 語 を め ぐ っ て ( 柳 田 )
思 想 と い う 語 を め ぐ っ て ( 柳 田 ) 要 な る 手 が か り を 與 え る こ と と な る の で あ つ て、 宋 代 以 後 の 公 案 灘 に 於 い て 有 す る 公 案 の 使 命 と 内 容 的 に は 同 一 の も の と 言 つ て よ い で あ ろ う。 一 艦、 思 想 に よ つ て 思 想 を 亡 ず る 方 法 は、 す で に ﹃ 般 舟 三 昧 経 ﹄ に、 若 有 守 是 三 昧 者、 因 想 入 無 想 中。 ( 正 藏 十 三、 9 14 a ) と も 見 え て、 古 來 の 潭 観 に 於 け る 一 般 の 説 で あ る が、 善 導 は こ れ を 念 佛 三 昧 へ の 前 方 便 と し て 積 極 的 に と り 上 げ た の で あ ろ う。 更 に、 思 想 が 思 惟 と 同 じ く 正 邪 爾 面 に は た ら く こ と は 先 述 し た 如 く で あ る が、 妄 念 を 除 く と こ ろ 直 ち に 正 念 の 開 獲 と 見、 更 に 進 ん で 正 念 に よ つ て 妄 念 を 断 じ、 正 妄 の 分 別 を 超 え る 一 心 專 注 の と こ ろ に 韓 迷 得 悟 の 場 を 認 め る 大 乗 潭 観 の 意 義 が あ る と 言 う べ き で あ ろ う。 從 つ て、 こ こ で は 思 想 と い う 語 が 思 惟 と 全 く 同 義 に 用 い ら れ て い る の で あ る が、 興 味 深 い こ と は、 こ の 用 例 が 軍 に 浄 土 系 の み に 限 ら ず、 ﹃ 績 高 侶 傳 ﹄ ( 巻 二 十 六 ) 牛 頭 法 融 傳 に、 貞 襯 十 七 年、 於 牛 頭 山 幽 栖 寺 北 巖 下、 別 立 茅 茨 輝 室、 日 夕 思 想、 無 敏 寸 陰。 ( 正 藏 五 十、 6 0 3 c ) と あ り こ れ ま た 明 か に 坐 輝 思 惟 の 意 に 於 い て の こ と で あ る。 五 と こ ろ で、 撤 煙 資 料 ( S. 6 6 3 1b ) 中 に、 ﹃ 臥 輪 輝 師 偶 ﹄ な る も の が あ つ て、 臥 輪 無 伎 量、 能 定 百 思 想、 煩 拶 因 鼓 断、 菩 提 日 夜 長、 渾 々 常 不 濁、 澄 々 亦 不 清、 清 濁 合 不 合、 故 號 生 無 生、 同 座 随 物 輔、 事 用 常 不 惑、 寧 紳 沢 是 非、 願 得 生 安 樂 國。 と 見 え る が、 之 を 從 來 知 ら れ て い る ﹃ 景 徳 傳 燈 録 ﹄ 巻 五、 荷 澤 紳 會 章 の 末 尾 の 有 檜 墨 臥 輪 輝 師 偶 云、 臥 輪 有 伎 禰、 能 噺 百 思 想、 勢 境 心 不 起、 菩 提 日 日 長。 六 租 大 師 聞 之 日、 此 偶 未 明 心 地、 若 依 而 行 之、 是 加 繋 縛。 因 示 一 偶 日、 慧 能 没 伎 偏、 不 漸 百 思 想、 甥 境 心 藪 起、 菩 提 作 慶 長。 (正 藏 五 一、 2 4 5 b ) と 比 較 す る と、 後 者 所 傳 の 偶 が 如 何 に 慧 能 の 立 場 を も ち 上 げ る た め に、 故 意 の 改 作 を 受 け て い る か を 知 ら し め る が、 も と も と 臥 輪 の 偶 に 能 定 百 思 想 と い う の は、 先 に 述 べ た 善 導 の 意 味 に 於 い て で あ つ た 筈 で、 こ の こ と は 彼 の 偶 の 末 尾 に、 願 得 生 安 樂 國 の 一 句 あ る よ り み て も 極 め て 自 然 で あ り、 こ の 場 合 は、 さ ま ざ ま の 浮 土 の 思 想 の 観 想 に よ つ て、 煩 悩 を 断 ち 菩 提 に 趣 入 す る 分 別 的 な 技 量 を 亡 じ た 心 境 を 詠 じ た も の と 解 す べ き で あ ろ う。 然 る に、 傳 燈 録 所 傳 の も の は、 先 述 し た 如 き 思 想 虚 妄 の 立 場 よ り、 臥 輪 の 偶 を 故 意 に 改 め、 更 に 之 を 批 判 す る も の と し て の 慧 能 の 立 場 を 示 さ ん と し て い る の で あ る か ら、 も と の 臥 輪 の 立 場 が 浄 土 系 の も の で あ る 限 り、 歴 史 的 に は 後 者 の 批 到 は 當 ら な い こ と に な る で あ ろ う。
併 し、 そ れ は そ れ と し て、 こ こ に 慧 能 の 思 想 と い う も の に 封 す る 新 し い 考 え 方、 言 わ ば 最 も 積 極 的 肯 定 的 と も 言 う べ き 立 場 が 見 ら れ る こ と は 一 鷹 認 め て よ い の で な か ろ う か。 そ し て、 上 來 學 げ 來 っ た よ う な 思 想 を 虚 妄 と す る 立 場 は も と よ り、 浄 土 系 の 思 想 観 察 の 立 場 に も 省 認 め ら れ る 有 想 的 な 残 澤 を 超 え て、 本 來 的 な 無 念 の 立 場 か ら 却 つ て 思 想 を 肯 定 し、 積 極 的 に 之 を 建 立 し て 自 ら 思 想 の 世 界 に 遊 戯 す る は た ら き に 出 よ う と し て い る こ と は 極 め て 注 目 す べ き で あ り、 そ れ は 古 く ﹃ 桝 伽 経 ﹄ に 四 種 の 潭 を 説 い て そ の 第 三 に 禁 縁 眞 如 繹 と 呼 ん で い る も の と も 内 容 的 な つ な が り を も ち つ つ、 近 世 的 な 思 想 の 語 義 が、 或 い は こ の あ た り か ら 始 ま つ て い る の で は な い か と 思 う が、 こ の 鮎 に つ い て は 更 に 稿 を 改 め る こ と に し た い。 附 記 轍 煤 資 料 ﹃ 臥 輪 暉 師 偶 ﹄ は、 名 古 屋 大 學 の 入 矢 義 高 教 授 の 御 教 示 に よ つ た。 い つ も 乍 ら の 學 恩 を 深 謝 申 し 上 げ た い。 な お 臥 輪 と い う 人 が す ぐ れ た 陣 観 の 達 士 で あ っ た こ と は、 別 に ﹃ 臥 輪 輝 師 看 心 法 ﹄ ( 鈴 木 博 士、 輝 思 想 史 研 究 蔭 刈 り 頁 ) な る も の が あ り、 宗 密 が ﹃ 輝 源 諸 詮 集 都 序 ﹄ の 中 で 達 摩 系 以 外 の 散 聖 と し て、 求 那、 慧 稠 と 並 べ 學 げ て い る こ と に よ っ て も 伺 わ れ る が、 ど う い う 紹 歴 の 人 か 明 確 で な い。 た だ、 ﹃ 績 高 曾 傳 ﹄ 習 輝 篇 六 ( 巻 二 十 五 ) に、 京 師 大 荘 嚴 寺 繹 曇 倫 傳 が あ り、 す こ ぶ る 奇 行 の 人 で、 時 の 人 が 臥 倫 と 呼 ん だ と 云 つ て い る が、 同 一 人 か ど う か 明 か で な い。 思 想 と い う 語 を め ぐ っ て ( 柳 田 )