一般化三角関数に対する積分公式
Integration formulas of the generalized trigonometric functions
シ ス テ ム 理 工 学 専 攻
MF15029こばやし
小 林
ひろゆき佑 行
非 線 形 解 析 研 究 指導教員 竹内 慎吾
1
研究の背景と目的
定数
p >1, q >0に対して
,一般化三角関数
sinp,qxを
sin−p,q1x:=
∫ x 0
dt
(1−tq)1/p, 0≤x≤1
の逆関数として定義し, cos
p,qx := (sinp,qx)′と定義 する
.また一般化円周率
πp,qを
πp,q := 2 sin−p,q11 = 2
∫ 1 0
dt
(1−tq)1/p (1)
と定義する. これらは
p = q = 2のとき, それぞれ
sinx,cosx, πと一致する
.Dr´abek-Man´asevich(1999)
は上記の一般化三角関数 を導入して
,p-Laplacianの非斉次固有値問題
−(|u′|p−2u′)′ =λ|u|q−2u, x∈(0, L), u(0) =u(L) = 0
の固有値
λと解
uを次のように与えた:任意の
n ∈ N, R∈R\{0}に対して
λ=λn,R= (p−1)q p
(nπp,q L
)p
|R|p−q, u=un,R=Rsinp,q
(nπp,q
L x
)
と表せる
.一般化三角関数はこのような
p-Laplacianの固有値問題や
Gauss-Legendreアルゴリズムを用い た
πp,qの計算公式の研究に用いられている
.特に
p=qの場合はより古く
Lundberg(1879)によって導入され たのち, Elbert(1979) が半分線形微分方程式の振動理 論の研究に用いて以来
,多くの研究者によって利用さ れている.
一般化三角関数に対する基本公式として
,次が知ら れている:
x∈(0, πp,q/2)のとき,
cospp,qx+ sinqp,qx= 1,(sinp,qx)′= cosp,qx, (cosp,qx)′=−q
psinqp,q−1xcos2p,q−px
が成り立つ. 一般化三角関数は
Pythagorasの定理を はじめとして三角関数によく似た性質をもつ. 一般化
三角関数の性質については
[1]も参考にされたい. し かし, cos
p,qxの導関数が
cosp,qxを陽に含むことから も想像されるように, しばしば三角関数と同様に計算 を行うことができず, 未だ解明されていない性質が多 い
.特に
, sinp,qxの原始関数は
p=qの場合を除いて 与えられておらず, これまで具体的な積分計算を行う ことができなかった
(他にも例えば,加法定理が成り立 つのかどうかは特別な場合を除いて知られていない).
本研究の目的は, 一般の
p, qに対する一般化三角関 数の積分公式を導出し
,新しい関係式と諸性質を発見 することによって,
πp,qの計算公式等の研究の発展に 寄与することである
.2
一般化三角関数に対する積分公式
定数
a, b >0に対して,
B関数を
B(a, b) :=∫ 1 0
ta−1(1−t)b−1dt
で定義する.
πp,q= (2/q)B(1−1/p,1/q)と表せるこ とに注意する
.また
, Pochhammer記号を
(α)n:=α(α+ 1)(α+ 2)· · ·(α+n−1),(α)0:= 1
と定義する
.さらに実数
a, bと
c̸= 0,−1,−2, . . .に対 して, Gauss の超幾何級数を
F(a, b;c;x) :=
∑∞ n=0
(a)n(b)n
(c)n
xn n!
と定義する
.一般の
p, q >1に対して, 次の積分公式を得た.
定理
2.1. k > −1, ℓ ∈ Rとする. このとき, 任意の
x∈(0, πp,q/2)に対して
,∫ x 0
sinkp,qtcosℓp,qt dt
= 1
k+ 1sink+1p,q xF
(k+ 1 q ,1−ℓ
p ; 1 +k+ 1
q ; sinqp,qx )
.
証明は, 左辺において
cosp,qx= (1−sinqp,qx)1/pを 用い
, sinqp,qx=zとして置換積分すると
,1 q
∫ sinqp,qx 0
z(k+1)/q−1(1−z)(l−1)/p+1−1dz
となる. さらに
Eulerの積分公式を用いてこれを
Gaussの超幾何級数で表すと定理
2.1を得る
.特に
k = 1, ℓ= 0とすると, sin
p,qxの原始関数を, また
x→πp,q/2とすると定積分の公式を得る:
系
2.1. x∈(0, πp,q/2)に対して,
∫ x 0
sinp,qt dt=1
2sin2p,qxF (2
q,1 p; 1 +2
q; sinqp,qx )
.
系
2.2. k >−1, ℓ >1−pとする. このとき,
∫ πp,q/2 0
sinkp,qtcosℓp,qt dt= 1 qB
(1 +k
q ,1 +ℓ−1 p
) .
さらに
cosp,qxの導関数公式の両辺を積分し定理
2.1を用いると, cos
p,qxの超幾何級数による表示を得る:
系
2.3. x∈(0, πp,q/2)に対して,
cosp,qx= 1−1psinqp,qxF (
1,1−1
p; 1; sinqp,qx )
.
以下では
p∗:=p/(p−1)とする
.Takeuchi[2]
は一般化三角関数に対して次の倍角公
式を示した.
補題
2.1. x∈[0,2−2/pπ2,p] = [0, πp∗,p/2]に対して,
sin2,p(22/px) = 22/psinp∗,pxcospp∗∗−,p1x, (2)cos2,p(22/px) = cospp∗∗,px−sinpp∗,px.
補題
2.1は
, p= 2のとき通常の三角関数の倍角公 式に一致する. また, パラメータ
(p∗, p)と
(2, p)を関 連付ける式としても重要で
,p-Laplacianの固有関数と
Laplacianの固有関数の関係や, sin
4/3,4xの
Edmunds-Gurka-Lang(2012)
による倍角公式の別証明等に応用
される.
式
(2)の両辺を積分して, 各辺にそれぞれ定理
2.1を 適用すると次の等式を得る
.この等式は補題
2.1と同 様に, パラメータ
(p∗, p)と
(2, p)の新しい関係を与え ている.
系
2.4. x∈[0,2−2/p−1π2,p] = [0, πp∗,p/4]に対して,
cos−p∗2(p,p∗−1)xF(2 p,1−2
p; 1 + 2
p; sinpp∗,px )
=F (2
p,1 2; 1 +2
p; sinp2,p(22/px) )
.
3
特別な
k, ℓの場合
定理
2.1において,
k, ℓの値によっては積分値が有限 和であったり帰納的に計算できる場合がある
.例えば, 定理
2.1において
ℓ=pn+ 1, n= 0,1,2, . . .とすると
,右辺の超幾何級数の第
2パラメータが
−nに等しい. (
−n)m= 0 (m≥n+ 1)であるので, 右辺 の超幾何級数は有限和になる. すなわち
系
3.1. k >−1, n= 0,1,2, . . .とする. このとき任意 の
x∈(0, πp,q/2)に対して
,∫ x 0
sinkp,qtcospn+1p,q t dt
=
∑n m=0
(−1)m (n
m
)sink+1+mqp,q x k+ 1 +mq
ただし
,右辺の
(nm
)
は二項係数を表す
.次に
,k >−1, ℓ >1−pを実数とし
, Ik :=∫ πp,q/2 0
sinkp,qt dt, Jℓ:=
∫ πp,q/2 0
cosℓp,qt dt
と定義する
.これらは系
2.2を用いれば
B関数で表せ るが, 次の公式も有益である:I
k, Jℓは漸化式
Ik = k+ 1−q
k+ 1−q+q/p∗Ik−q, Jℓ= ℓ−1
ℓ−1 +p/qJℓ−p
を満たすことがわかる. よって
k, ℓをそれぞれ,
k= qm+r(m∈Z,0≤r < q), ℓ=pm+r(m∈Z,0≤r < p)
と表せば,
mについての漸化式に帰着できる.
この漸化式を繰り返し用いて次の定理を得る.
定理
3.1. u:=q/(1 +r), v:=p/(p−1 +r)とする.
このとき,
Iqm+r= u(1/u)m
q(1/u+ 1/p∗)m πp,u
2 , Jpm+r= v(1/v)m
q(1/v+ 1/q)m
πq∗,v
2 .
定理
3.1は
Wallisの積分公式の一般化である. 実際,
p=q= 2とすると
, k= 2m,2m+ 1の場合の
Ikは それぞれ
∫ π/2 0
sin2mt dt=(1/2)m (1)m
π
2 = (2m−1)!!
(2m)!!
π 2,
∫ π/2 0
sin2m+1t dt= (1)m
(3/2)m π2,1
4 = (2m)!!
(2m+ 1)!!
となって
, Wallisの積分公式と一致する
.ただし
, n!!は二重階乗であり, (
−1)!! = 0!! = 1である.
参考文献
[1] J. Lang and D. Edmunds, Eigenvalues, Embed- dings and Generalized Trigonometric Functions, Springer, Lecture Notes in Mathematics, 2011.
[2] S. Takeuchi, Multiple-angle formulas of general- ized trigonometric functions with two param- eters. J. Math. Anal. Appl. 444 (2016), no.2, 1000–1014.