Picone
等式とSturm-Liouville
の振動定理Picone’s Identity and Sturm-Liouville Oscillation Theorems
非線形解析研究室
BV11030
小林 佑行 指導教員 竹内 慎吾 准教授1
はじめにSturm-Liouville型微分方程式の振動する解と,その 解の零点に関する考察において, Sturm-Liouvilleの分 離定理と比較定理が用いられる. Sturm自身による比 較定理の元々の証明はGreenの公式やP¨rufer変換を 用いるが, 計算が複雑になり困難な部分がある. しか
し, Picone等式という等式を用いて比較的明快に示さ
れるようになった.
本論文では, Sturm-Liouville型微分方程式の定義を 確認し, Picone等式を用いた比較定理の証明, 解の振 動理論などを考察し, 微分方程式のさらに発展した解 析の研究に用いたい.
2 Sturm-Liouville
型微分方程式同次二階線形微分方程式 d2u
dx2 +λ2u= 0 (λは実定数)
解はy1= sinλxとy2= cosλxの線形結合の形で与え られるので振動する. 一般に, 次の形の微分方程式を Sturm-Liouville型微分方程式とよぶ.
d dx
(
K(x)dy dx
)
−G(x)y= 0
ここでK(x), G(x)は閉区間[a, b]全体で定義された実 数値連続関数とする. Sturm-Liouville型微分方程式の 解も振動することが期待される.
3
初期値問題の解の存在と一意性Sturm-Liouville理論を考察するにあたり,解の存在
と一意性について次の定理で保証する.
Cauchy-Peanoの存在定理
関数f は領域D = {(x, y);|x−α| ≤ a,|y−β| ≤ b}上で連続かつLipschitz連続であると仮定する. D における|f(x, y)|の最大値M とすると, 初期値問題 y′ =f(x, y), y(α) =βの解が区間, I={x;|x−α| ≤ min{
a,Mb}
} で存在し,一意である.
これをCauchy-Peanoの存在定理という.
存在定理の証明は, 逐次近似法を用いて近似解列を
導き, Weierstrassの優級数定理より近似解列が極限関
数y =φ(x)へ一様収束し初期条件を満たすことで示 せる.
4 Sturm-Liouville
の分離定理Sturm-Liouville型微分方程式の解の,y = 0の周り を振動する様子を調べるため,挙動を考える.
Sturm-Liouvilleの分離定理
y1, y2をSturm-Liouville型微分方程式の異なる一 次独立な解とする. x1, x2 ∈ [a, b]をy1の二つ の隣り合った零点とする. このとき, y2は開区間 (x1, x2)内に少なくとも一つの零点をもつ.
証明は, (x1, x2)の任意の点でy2は零点を持たない とし,y1, y2が(x1, x2)で常に正として背理法で証明す る. この定理によって, y1, y2が[a, b]の中に同じ数の 零点を持つとき,y1の隣り合った零点の間に必ずy2は 零点をもち,零点は交互に現れることが分かる.
図1: 分離定理
分離定理により,二つのSturm-Liouville型微分方程 式の解の挙動についても考えられる. 係数G(x)に大 小関係のある二つのSturm-Liouville型微分方程式の それぞれの解をu, vとして, (a, b)内にvがuよりも多 くの零点をもつとする. このときSturm-Liouvilleの分
離定理とGreenの公式を用いると, uの隣り合った零
点の間に必ずvは少なくとも一つ零点をもつことが示 される.
5 Sturm-Liouville
の比較定理二つの微分方程式, d dx
(
K1(x)du dx
)
−G1u= 0, (1) d
dx (
K2(x)dv dx
)
−G2v= 0, (2) 0< K2≤K1, G2≤G1,
u(a) =a1, u′(a) =a′1, v(a) =a2, v′(a) =a′2,
の振動する解の挙動と,零点の様子を調べる. 比較定理 の証明はPicone等式を用いると, Pr¨ufer変換などの複 雑な手続きを省略でき,証明が比較的明快になる.
Picone等式
[u
v(K1u′v−K2uv′) ]x1
x2
=
∫ x2
x1
(G1−G2)u2dx
+
∫ x2
x1
(K1−K2)(u′)2dx+
∫ x2
x1
K2(u′v−uv′)2 v2 dx
Picone等式を用いて比較定理を証明する. (1), (2)に 対し, 以下の仮定を与える.
• a1, a′1̸= 0, a2, a′2̸= 0
• K1(a)a′1
a1 ≥K2(a)a′2 a2
(a1, a2̸= 0)
• G1≡G2≡0ではない.
このとき, (1), (2) の解と零点について, Sturm-
Liouvilleの第一の比較定理が示される.
Sturm-Liouvilleの第一の比較定理
区間a < x≤bにu(x)はm個の零点をもつとす る. このとき,v(x)は同じ区間内に少なくともm 個の零点をもつ. また, 連続したu(x)の零点xi とxi+1の間にv(x)の零点が少なくとも一つ存在 する.
第一の比較定理の証明は, vが(a, x1)に零点を持た ないとして, Picone等式を用いて背理法で証明する.
u(x)もしくはv(x)の零点でない, 区間(a, b)の任意 の内点をcとする. (1), (2)に対し, 以下の仮定を与 える.
• K1(c)u′(c)
u(c) >K2(c)v′(c) v(c)
このとき, (1), (2)の解と零点について, Sturm-
Liouvilleの第二の比較定理が示される.
Srurm-Liouvilleの第二の比較定理
u(x)とv(x)が区間a < x < c内に同じ数の零点 をもつ.
第二の比較定理の証明は,xiを区間(a, b)内で,cより も前にあるv(x)の零点でないu(x)の零点とし, Picone 等式を用いて示せる.
比較定理を用いれば与えられた(1), (2)の解を求め ずに,解の挙動を調べることができる.
6
振動条件三つのSturm-Liouville型微分方程式を用意する. d
dx (
K(x)dy dx
)
−G(x)y= 0, (3)
d dx
( kdy
dx )
−gy= 0, (4)
d dx
( Kdv
dx )
−Gv= 0, (5)
0< k≤K(x)≤K, g≤G(x)≤G(k,K, g,Gは定数).
(3)の解の振動について考える.
まず, (4)に注目し, (3)の非振動条件を調べる. (4)の 解を求めると,係数gの値によって解が変化する. g <0 のとき(4)の解sin√
−gkxが区間(a, b)内で連続した 零点をもつときの隣り合った零点の間の長さはπ
√−kg となる. このこととSturm-Liouvilleの分離定理によ り, (3)は次のとき, (a, b)内で零点をもたないことがわ かる.
• g≥0⇒非振動
• g <0⇒ −g
k < π2
(b−a)2のとき非振動 次に, (5)に注目し, (3)の振動条件を調べる. (5)の 解が振動するとき,隣り合った零点の間の長さはπ
√K G
となる. 従って, (3)は次のとき, (a, b)内で少なくとも 一つの零点をもつ.
−G
K ≥ π2 (b−a)2
である. また,振動する解に関する他の条件を得ること
ができる. 解が区間(a, b)内に少なくともm個の零点
をもつときの条件は,
−G
K ≥ m2π2 (b−a)2 である.
参考文献
[1] Edward L. Ince, Ordinary Differential Equations, Dover Publications, 2012.
[2] 柳田英二 他,常微分方程式論,朝倉書店, 2002.
[3] 笠原晧司,常微分方程式の基礎, 朝倉書店, 1982.
[4] 堀内利郎 他,関数解析の基礎,内田老鶴圃, 2005.