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健康文化 9 号 1994 年 6 月発行 1 巻頭言

生体複雑系のエピステメとしてのカオス

佐久間 貞行 これまで複雑系である生体の解明にあたって、複雑だから判らないとするか、 ほぐして単純な系に直して考えてきた。そして複雑のまま考えるには勘、直観 といったところで対処してきた。しかしここにきて、コンピュータ科学などの 進歩によりいよいよ複雑系の解明へと視線が向けられるようになってきた。 ゆらぎの分析、カオスの解明、フラクタルの概念が複雑系の解明にむけての エピステメとして、3題噺のように雑誌の紙面を賑わせるようになってきた。 生体の1/fゆらぎとのなじみのよさは、治療にも応用されようとしている。 また生物の進化にもゆらぎの重要性が論じられているが、その発生のメカニズ ムはよくわかっていない。カオスの研究も脳・神経系、計算機科学、生物情報 論などとの平行的な発達によって複雑を対象とする機運がでてきた。複雑な生 体構造と複雑に相関する機能を正しく理解するには避けて通れないものであろ う。そのカオスには多種多様なフラクタル構造がみられる。次元を整数でなく 実数にまで拡張したフラクタル構造は、生物では肺や血管などにみられる。そ れぞれの目的を果たすには最も適した構造をとるとこうなるともいえる。これ らの理論は診断論理にも応用されるようになるであろう。 しかし生物学的複雑性の説明には、自然のヒエラルヒーがあるといった目的 論的考えが罷り通っているが、それも何故と問うことが必要であろう。 (財団理事・名古屋大学名誉教授・テルモ研究開発センター長)

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