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市街地集積度を対象とした広域分析に関する一考察
熊谷樹一郎,森翔吾
A Study of the Density Analysis of Urban Areas
Kiichiro KUMAGAI and Shogo MORI
Abstract : The graying and birth dearth are serious problems facing urban planning. We had developed the density analysis method of urban areas regarding land use and population. The density analysis consists of spatial autocorrelation method. In this study, we analyzed the statistical relationship between population density and residential area ratio using principal component analysis. Then the scores of second principal component were applied to spatial autocorrelation analysis because there seemed to be meaningful differences between population density and residential area ratio on the second principal component. In addition, we examined the effectiveness of our approach to the density analysis of urban areas.
Keywords: 人口密度(population density),住宅地面積率(residential area ratio),
集 積 度 (density) , 主 成 分 分 析 (principal component analysis) , 空間的自己相関分析(spatial autocorrelation analysis)
1. はじめに
近年,少子高齢化・人口減少といった問題は,
種々の計画策定に様々な影響を与えている.コンパ クトシティのような都市機能の集約化を図ろうとす る動きもその一つであり,都市内の総人口だけでな く,地域・地区ごとの人口分布に注視する必要も出 てきている.また,今後の都市整備の方針を決定し ていくには,このような取り組みに加えて,対象と する都市の現況を空間的な集積度の観点から調査・
分析していくことが大切となる.
これまでの研究では,100mメッシュ内の単位空
間において建物用途別に市街地の集積度を分析して いる事例は見られるものの(佐々木・飯田・石本,
1994),都市機能のベースとなる土地利用分布と人 口分布を対象に空間的な観点から市街地集積度を議 論した事例は見られない.市街地の集積そのものに ついては,空間的な分布特性が現れた状態とも解釈 でき,検討の余地が残されていた.また,将来の変 化が空間的な観点からシミュレートできれば,計画 策定の支援情報となる.そこで著者らは,地域ごと の人口分布と土地利用分布を対象に,空間的な観点 から人口・土地利用の集中・分散する状態を分析す る手法について検討してきた(熊谷・森,2009).
これまでの研究では,空間的自己相関分析を用 いることで人口の多い地域や少ない地域が集積して おり,かつ,住宅地面積などの広い地区や狭い地区
が集積している領域を統計的に抽出してきた.本研 究では,主成分分析によって町丁目単位での人口密 度・住宅地面積率の関連性を分析するとともに,主 成分得点を対象とした空間解析を実施し,市街地集 積度の広域的な特性について考察した.さらに,推 定人口データの適用についても併せて議論した.
2.対象領域と対象データの選定 2.1 対象領域
本研究の対象領域として,大阪府寝屋川市全域およ び寝屋川市に隣接する周辺都市の一部(約 13km×12km) を選定した.対象領域を図-1に示す.領域内の町丁目 数は645個である.領域内の京阪電気鉄道の沿線には 住宅市街地総合整備事業地区,第二京阪道路建設予定 地周辺には土地区画整理事業地区が存在している.ま た,集落の多い地域や準工業地域が広く分布する地域 などさまざまな特性を有する地域が複数存在している.
2.2 対象データ
土地利用現況データとして数値地図 5000(土地 利用)を使用した.人口データについては,総務省 統計局が提供している平成12年および平成17年の 国勢調査データ(町丁目単位)を採用した.推定人口 データの生成については,国立社会保障・人口問題 研究所が公表している将来人口推計結果を参考に,
コーホート変化率法を使用している.平成 12年か ら平成 17年のコーホート変化率や婦人子ども比を 用いて,町丁目ごとに平成22年から平成47年まで 男女別・年齢階級別に推定人口データを生成した.
3.人口密度と住宅地面積率の関連性 3.1 主成分分析の適用
平成 17年の総人口密度と住宅地面積率の散布図 を図-2に示す.人口密度と住宅地面積率の2変量間 において相関係数 rは0.711であった.一方,平成 17年のデータを対象に実施した主成分分析により,
図-2のような第1主成分・第2主成分といった新た な軸を抽出した.寄与率は第1主成分で0.858,第2
主成分で0.142であった.
3.2 第2主成分の解釈
主成分分析により得た第1主成分では,人口密度と 住宅地面積率の値がともに大きければ主成分得点は大 きくなり,人口密度と住宅地面積率の値がともに小さ ければ主成分得点は小さくなる.この関係から第1主 成分では町丁目内の宅地化と人口増が連動することを 意味しており,実像から想像しやすい関連性を表して いる.これに対して,第2主成分では,人口密度の値 が小さく,住宅地面積率の値が大きければ主成分得点 は大きくなり,人口密度の値が大きく,住宅地面積率 の値が小さければ主成分得点は小さくなる.これは,
町丁目内での住宅地面積と人口とのアンバランスさを 表しているとも解釈でき,主成分得点の「大」・「小」
が「人口疎かつ土地利用単一」・「人口密かつ土地利 用混在」を示唆している.つまり,市街地の集積度を 人口と住宅地との関連性に絞って考えた場合,人口の 集まり具合と土地利用(住宅地)の集中する具合とが一 致する軸から見ると,第2主成分得点が大小に振れた 町丁目はそれと状態を異にする位置づけとなる.そこ 高槻市
枚方市 茨木市
交野市 寝屋川市
四條畷市
大東市 摂津市
守口市 門真市
0 20 40 60 80 100
0 10,000 20,000 30,000
総人口密度(人/km2) 図-2 散布図(平成17年)
住宅地面積率
( % )
図-1 対象領域
第1主成分
第2主成分
で本研究では,人口密度・住宅地面積率の関連性から 市街地の集中・分散の状態を把握することが期待でき る第2主成分に着目し,第2主成分得点を対象に空間 解析を実施した.
4.空間的な観点からみた市街地集積度 4.1 空間的自己相関分析の導入
本研究では,空間解析手法の一つとして空間的自 己相関分析を採用した.この手法の特徴として,領 域内の空間的属性の集中度を測定することができる
(張,2001).空間的自己相関分析によって得られる標
準化正規変量の高い値を持つ地域は,値の大きい町 丁目が集積していることを示し「正の相関あり」,
低い値を持つ地域は値の小さい町丁目が集積してい ることを示し「負の相関あり」として集中度を把握 できる.なお,本研究では徒歩圏を考慮して,国土 交通省により定義されている徒歩圏(500m~1km程 度)を参考に,空間的自己相関分析に採用する距離パ ラメータdを480m,890m,1300mの3ケースとした.
4.2 標準化正規変量の算出
人口密度と住宅地面積率を主成分分析に適用するこ とで得られた第2主成分得点を空間的自己相関分析に 適用し,距離パラメータごとに標準化正規変量を算出 した.本研究では総人口密度と住宅地面積率の組み合 わせに加えて,老年代人口密度と住宅地面積率につい ても分析しており,第2主成分に同様の傾向が見られ たため,それらの標準化正規変量を算出している.
4.3 区分結果
区分方法には検定の考え方を用いており,算出し た標準化正規変量の値が有意水準+10%(検定統計量 1.282)より大きければ「正の相関あり」,-10%(検定 統計量-1.282)より小さければ「負の相関あり」と区 分している.ここでは,平成17年と生成した推定人 口データ(平成47年)での区分結果を例として示す.
4.3.1 平成 17 年について
図-3に平成17年の総人口密度と老年代人口密度を 適用した結果(d=890m)の一例を示す.図-3 a)の総人口 密度については,守口市,門真市,寝屋川市西部,大 東市西部に「負の相関あり」と区分される町丁目が広 く分布しており,特に対象領域中央部を南北に延びる
京阪電気鉄道の沿線に分布する傾向が見られた.この 地域は,第2主成分得点の低い町丁目が集積している ことを示しており,人口は密に分布しているものの住 宅地と他の土地利用が混在している地域と考えられる.
一方で,対象領域東部や北東部の丘陵地に「正の相関 あり」と区分される地域が分布している.これらの地 域は,戸建住宅を中心とした地域であることを確認し ている.
図-3 b)の老年代人口密度では,「正の相関あり」,
「負の相関あり」と区分される地域の分布傾向は総人 口密度と似ているものの,「負の相関あり」に関して は総人口密度に比べて,より京阪電気鉄道本線の沿線 にまとまって現れている傾向を確認できた.また,総 人口密度では見られなかった JR学研都市線四條畷駅 周辺にも「負の相関あり」と区分される地域が現れる ことも確認している.「正の相関あり」の地域は駅か らの距離といった視点では,必ずしも1km程度の徒歩 圏に多くないことが分かる.特に,図中Aの地域につ
a)総人口密度
b)老年代人口密度 京阪電気鉄道
JR学研都市線
四條畷駅
図-3 空間的自己相関分析結果による区分結果(平成17年)
A
いては駅から2km近く離れており,住宅地のみ集積し ている傾向にあることを考慮すると,公共交通機関の 配置などに留意が必要な地域とも解釈できる.
総人口密度,老年代人口密度ともに対象領域の東部 に「正の相関あり」,西部に「負の相関あり」と区分 される地域が見られ,地域ごとの特性がまとまって現 れていることが確認できた.
4.3.2 推定人口データの適用
主成分得点を用いた空間分析の適用性を検討する ために,シミュレーションへの応用を試みた.ここ では,検討の第一段階として,土地利用状況を固定 し,人口のみ変化させた場合について検討を試みて いる.人口変化のデータとして使用した推定人口デ ータは平成12年と平成17年の変化のみに基づいて 生成されたものであり,あくまでも暫定的な位置づ けとなる.本研究では,現状との比較を目的として,
平成17年で得られた第 2主成分をそのまま採用し,
推定人口データと住宅地面積率から主成分得点を計
算した上で,空間的自己相関分析に適用した.図-4 に推定人口データ(平成 47年)での総人口密度と老 年代人口密度を適用した結果(d=890m)を示す.図-4
a)の総人口密度については,平成 17年では「負の
相関あり」と区分されていた京阪電気鉄道の沿線で 相関の見られる地域が香里園駅や光善寺駅周辺のみ に減少していることが分かる.
図-4 b)の老年代人口密度では,平成 17年と似た 分布傾向であるが,京阪電気鉄道寝屋川市駅周辺の
「負の相関あり」と区分される地域が減少すること を確認している.また,総人口密度では「負の相関 あり」と区分されていたが,老年代人口密度では
「正の相関あり」に変化した図中BのJR学研都市 線忍ヶ丘駅周辺のような年齢層で異なる区分となる 地域も確認している.また,駅からの距離といった 視点から見ても平成17年と同様に1km程度の徒歩 圏にある地域が多くないことが分かる.
土地利用に変化なしの仮定の下で人口データに暫 定的に求めた推定値を採用し,検証したところ,地 域や年齢層ごとに種々の集積度の変化が現れる結果 が得られた.
5.おわりに
本研究では,主成分分析により町丁目単位での人 口密度・住宅地面積率の関連性を分析するとともに,
主成分得点を対象とした空間解析から市街地集積度 を分析・検証してきた.今後は,現状のデータ(平 成17年)を対象に用途地域区分を用いて分析結果の 妥当性を検証する必要があると考えている.
【参考文献】
佐々木歩・飯田勝幸・石本正明(1994)建物用途のメ ッシュ内集積度からみた都市空間の機能的集積傾向 について-札幌市を事例として-,日本建築学会北 海道支部研究報告集,67,453-459.
熊谷樹一郎・森翔吾(2009) 空間的な位置関係に着目 した市街地集積度分析の試み,平成21年度土木学会 関西支部年次学術講演概要集(第Ⅳ部門),Ⅳ-14.
張長平(2001)地理情報システムを用いた空間デー タ解析,古今書院,158.
a)総人口密度
b)老年代人口密度
香里園駅 光善寺駅
寝屋川市駅
忍ヶ丘駅
B
B
図-4 空間的自己相関分析結果による区分結果(推定人口データ)