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3.地方都市郊外戸建住宅地の居住の継続に関する研究

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Academic year: 2021

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[平成16年度土地関係研究者育成支援事業 研究報告書概要]

地方都市郊外戸建住宅地の居住の継続に関する研究

福井大学工学部建築建設工学科 助手 原田 陽子 福井大学工学部建築建設工学科

講師 薬袋 奈美子 福井大学工学部建築建設工学科

助手 菊地 吉信

1.はじめに

高度経済成長期以降、地方都市における住宅供給は 中心市街地の周縁部から外延化し、分譲住宅地の供給 が続けられている。既につくられたこうした住宅地に おける良質な居住の検討は、住宅供給計画上の大きな 課題の一つであると考えられる。そこで本研究では、

地方都市において 30 年以上経過した郊外分譲住宅地 を対象に、生活環境の現状把握と、居住の継続に向け ての今後の物的・質的課題に向けての考察を行うこと を目的とする。

調査対象地としては、福井市近郊の福井県坂井郡春 江町において1)、開発時期が古く(1980年以前)かつ 開発面積が比較的大きい(3ha以上)8事例を選定し、

航空写真からのデータ収集、居住者や供給主体へのヒ アリング、春江町役場からの提供資料に基づき分析を 行った2)(図1、図2、表1)。

2.土地利用と土地所有の実態 2-1.空地の変化

図3は、航空写真をもとに、各団地における建物建 設区画数の経年変化を表わしたものである3)。ここか ら、8団地の内、区画整理による開発の4団地は供給 当時から住宅の建て込みが積極的に行われている一方 で、春日野団地をはじめとした他の開発許可申請によ る団地では、開発当初は空地ばかりであることがわか る。

0 50 100 150 200 250 300

1975 1985 1995 2005

中筋北浦 亀が久保

新町 矢島

春日野 高江京町

豊島 室町

図3 建物建設区画数の経年変化

(母数:開発当初の区画数)

図 2 対象団地の位置

表 1 8 住宅地の概要

番号 住宅地名 開発年度 開発形態 面積

(ha)

区画

住宅が ある 区画

一体的 利用の 区画

中 筋 北 浦 1965 区画整理 4.8 182 92.3% 0.0%

1968 3.3 140 93.6% 0.7%

1969 3.3 137 94.2% 2.9%

亀 ヶ 久 保 1971 3.9 135 97.8% 0.7%

1971 開発許可 8.8 296 66.3% 9.1%

高 江 京 町 1973・1978 4.5 169 70.7% 4.7%

1973 3.0 106 72.9% 4.7%

1975 4.0 89 86.5% 9.0%

図 1 春江町の位置

(2)

2-2.春日野団地における土地利用状況の変遷 次に空地の特に大きい春日野団地を取り上げ、1975 年から10年ごとの空地利用の状況を図4に示す。こ こから、春日野団地では、供給当時の入居者は少なか ったものの、次第に住宅が建ち、また畑や駐車場とし て利用されることにより利用度が次第に高まっている。

2-3.複数敷地の一体的利用

図5は最も敷地統合の多かった春日野団地における 土地利用状況を示したものである。隣接する宅地を購 入し、既に家を建て替えたり庭として整備をして、一 体的な利用をしている件数だけでも 28 件あり、さら に整備はしていないが隣接宅地を購入している件数が 2 件ある。このような敷地の統合を行うことで、住環 境の向上がはかられている。

3.空地の所有者

一方図6は空地の所有者について整理したものであ る。ここから、団地内居住者による所有も多く、特に 隣地の取得という状況も多い。また隣地の所有者では

ない世帯の団地内購入も見られ、福井市内の居住者の 所有が最も多い。この背景には、将来、子供や孫とい った親族の居住地の先行的取得というケースが多く、

畑として利用されている空地の多くは、これらの団地 外居住者が暫定的に畑として利用しているものである という。

4.各地区の人口の推移と年齢構成

8団地の人口構成の変化を整理したものが図7であ る。人口推移に大きな変化のない団地と、少しずつ増 加している団地とが見られる。これは前稿の住宅の建 て込み具合と関連しており、住宅の増加とともに人口 も増加していると考えられる。

また各団地における居住者の年齢構成を図8に示す。

全体に高齢化の兆しのある構成となっているが、特に 50歳以上の年齢構成が急激に増加しており、今後団地 における高齢化と居住環境について検討する必要があ ることを示している。

図 4 春日野団地の土地利用状況の変遷

図 6 春日野団地内未 利用地の所有者 図 5 春日野団地内敷

地拡張状況

団地

0 100 200 300 400 500 600 700 800

1987 1991

1994 1996

1998 1999

2001 2003

2004

(年)

人口)

中筋北浦北 江留上新町 為国亀ヶ久保 矢島 春日野 京町 沖布目豊島 上小森室町

図 7 各団地居住者の人口推移

2004年の年齢

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中筋北浦北 江留上新町 為国亀ヶ久保 矢島 春日野 京町 沖布目豊島 上小森室町

(団地)

0~9歳 10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上

図 8 各団地居住者の年齢構成

(3)

春江町では町内を 80 の行政区に分割し、区ではコ ミュニティ内の公共施設の管理を行っている4)。特に 水については周辺の区との協調のもと、水路の清掃や 下水道整備に対する意見のとりまとめ、区の会館の整 備・維持等、居住者の住環境として直接影響を受ける 部分について責任を持つ。区の組織には居住者全員が 加盟することとなるために町から依頼されている仕事 以外にも区毎に独自の活動を展開させている。

5.居住者活動と高齢化への対応 5-1.居住者組織とその活動

区内にある組織を整理したものが表2である。この 表からも明らかなように、年齢層別の様々な組織があ り、幅広い活動が展開されていることがわかる。また、

区内の行事としてどの団地でも年に1度か2度は祭り を開催している。また亀ヶ久保では、集会所での食事 会や日帰りバス旅行などが行われたり、春江町の協力 のもと高齢者の引きこもりを防ぐため「ふれあいサロ ン」を開き、健康診断をかねて居住者同士の交流を図 っている。

5-2.交通面に対する取り組み

一方ヒアリング調査から、生活・交通面での不便性、

世代間交流の難しさなどが挙げられている。実際、自 家用車での移動が中心の春江町の住宅地では、高齢者 の移動は大きな課題となっている。このような中春江 町では、高齢者の移動などを目的とした福祉バス「あ いのり号」が取り組まれている。

5-3.空地や統合化した敷地を利用した取り組み さらに春日野団地では未利用となっている敷地につ いて、行政からの支援を受けながらゲートボール場を 整備していた時期がある。また春日野団地内では、近 隣居住者の交流の場となることを意識した庭づくりを 行い、地域に開放している居住者も存在する。

5-4.親子同居・近居のネットワーク(図 9)

一方、前述の図6からも、若年層の人口も一定数確 保されている。ヒアリングからは、区画整理で古くか ら人が住み続けている団地であっても、子世帯が同居 し子供が生まれるというケースが続いているために、

一定割合で若年層が確保されているという。さらに、

二世帯住宅として団地内に居住している世帯があるほ か、同じ地区内の別の場所に居を構え、親子での連携 した生活支援を実現しているケースが5件確認された。

6.事例視察の結果 6-1.アメリカ住宅地視察

アメリカの郊外住宅地4事例への視察の主な要点は

①生活の一部を共有することによる住民間の交流促進、

②共有地のメンテナンスと居住者活動の運営を担当す る第三者機関の存在、③世代の新陳代謝をはかるため

の多様な住宅構成と公的支援の導入、等である。

6-2.東京の超郊外住宅地視察

東京都市圏の郊外住宅地である、きららのくに大網 みどりが丘、ヒルズガーデンあずまを視察した。主な 要点は①ゆとりのある広い区画の供給、②空き区画を 庭として貸与することによる一体的な緑環境の整備、

表 2 各区の概要とその活動

区内の会館 年齢層別等

の活動 趣味的活動 区内大行事 コミュニケーション 行事

中筋北浦 補助金利用 夏祭り 健康集会

新町 補助金利用 子供会 ひまわりク ラブ(婦人)

もっしぇ祭 亀が久保 供給公社建

壮年会 子供会 婦人会

民謡クラブ 習字クラブ 夏祭り

どんど焼き

ふれあいサ ロン 春日野 供給会社建

睦会 きらく会 壮年会 すみれ会 子供会

夏祭り どんど焼き

京町 行政補助 老人会 女性部 壮年会 子供会

祭り実行委 員会 夏祭り

室町 行政補助 壮年会 青年部会 子供会

ソフトボー ル同好会 夏祭り

図 9 親子世帯の近居状況/春日野

(4)

③医療施設など高齢者向け施設環境の整備、等である。

7.今後の展望

以上の実態をもとに、アメリカおよび東京超郊外の 事例視察から得られた知見を考えあわせると、地方都 市郊外における住宅地の住環境ならびにコミュニティ の維持・向上のためには次のような方策が考えられる。

1)未利用区画の柔軟な利用

複数区画の一体的な利用(購入)や親族世帯の近居 を促進するような支援策があれば、ゆとりのある住環 境を生み出し継続して住み続ける上で大きなメリット を提供できるものと考えられる。また、個人の庭の開 放など萌芽的な取り組みをコミュニティとしてサポー トする仕組み、さらにそれを支援する施策があれば、

同様の活動を地域全体へと発展させることも可能では なかろうか。

2)居住者間の交流促進

食事や洗濯など生活の一部を共有することにより、

日頃から互いの顔をみる程度の関係を継続できる仕組 みがあれば、居住者間の交流を促進するだけでなく世 帯の高齢化や少人数化に伴う家事負担の軽減にもつな がる。たとえば既存の「区」は行政の末端組織(縦の 関係)であるが、これをベースとしつつ住宅地として のニーズの絞込みや個性的な取り組みを実践するため の拠点組織(横の関係)として発展させることは、自 立的なコミュニティの醸成をはかる上で効果的である。

3)住宅地管理の外部化

住宅地の管理や地域活動を居住者のボランティアに 任せるだけでなく、専従職員のいる第三者機関が介在 することで持続的なマネージメントが可能になる。そ のためには適切な事業体制と事業規模の設定が不可欠 である。たとえば既存の地方住宅供給公社の新たな役 割として検討してみるのも有効であろう。

4)住教育の推進

居住者自らが、自らの欲するところを的確に述べか つ互いの意見を尊重する環境が必要である。それによ り住宅地としての将来の方向性、解決すべき課題等が 明らかになる。そのためには、居住環境に関する基礎 知識とコミュニケーション能力を養うための住教育が 一層推進される必要がある。

<注>

1)福井県坂井郡春江は福井市北部に隣接し,2000年

の人口は23,052人で1995年の21,749人から6.0%増 加しており,福井市のベッドタウンとして住宅地の供

給が続いている。

2)2000年開発状況調書、2003年課税台帳図面および 2003 年住宅地図により春江町における住宅地開発の 概要を調べた。

3)亀が久保団地については、供給当初から全ての区 画に住宅が建てられたため図内には示さない。

4)各区には一部に後から供給された部分の加えられ ているものや周辺の既存住宅地と混合されているもの などもあるが、戸数で主たる構成となっているので区 の活動を考察することでそのコミュニティ活動の一端 を分析することとする。なお、各区の区長へのヒアリ ングについては、8地区の内、矢島と豊島を除く6地 区の区長から話を聞くことができた。

(5)

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