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Gerstmann‑Stäussler‑Scheinker 病(P102L)の臨床疫学的研究 

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Academic year: 2021

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(1)

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業) 

プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班  分担研究報告書(総合)   

Gerstmann‑Stäussler‑Scheinker 病(P102L)の臨床疫学的研究 

 

研究分担者:村井 弘之    九州大学大学院医学研究院脳神経治療学 

  中村 好一 自治医科大学公衆衛生学 

      北本 哲之 東北大学大学院医学系研究科病態神経学        坪井 義夫    福岡大学医学部神経内科学     

 

研究要旨 

コドン 102 に変異を有する Gerstmann‑Stäussler‑Scheinker 病(GSS‑P102L)の臨 床疫学的検討を行った。GSS‑P102L の大部分は九州居住者もしくは九州出身者であっ た。九州のなかでは福岡県〜佐賀県(北部)と鹿児島県(南部)に二大集積地があ ることが明らかとなった。GSS‑P102L には脊髄小脳変性症に類似した緩徐な進行を呈 する典型例と、認知症が急速に進行する CJD 類似型があるが、MRI 拡散強調画像での 高信号が急速進行性の予測因子になる可能性が示唆された。

 

A.研究目的 

Gerstmann‑Stäussler‑Scheinker 病(GSS)

のうちコドン 102 に変異を有するもの(GSS‑ 

P102L)は欧米に比べ本邦で有望率が高い 1。 また、本邦のなかでも九州地方に多いことが 知られている。本疾患についてはこれまでに 鹿児島大学より臨床像について報告がなされ ている 2。しかし、福岡・佐賀にも患者の集 積がある。ここでは、本邦における GSS‑P102 の臨床疫学的な特徴を明らかにすることを目 標とした。 

B.研究方法 

1999 年から 2015 年末までにクロイツフェ ルト・ヤコブ病(CJD)サーベイランスで検討 された症例のうち、GSS‑P102L 症例を抽出し、

その出身地、現在の居住地、家族歴の有無、

臨床症状、脳波所見、MRI 画像所見などにつ いて検討した。 

 (倫理面への配慮) 

  調査にあたっては、患者本人または家族に 研究の同意書を記載していただき、また個人 が特定できないよう、匿名で調査票を記載し た。

C.研究結果 

  CJD サーベイランスのデータからは、合計 85 人の GSS‑P102L 症例が集積された。これら の症例の現在の居住地は、北海道 3、東北 1、

関東 21、東海 3、近畿 11、中国 2、九州 44 であった。九州以外に居住している 41 人のう ち、出生地が九州である者が 16 人(39.0%)

であった。九州居住者 44 人の内訳は、福岡 20、佐賀 13、熊本 1、鹿児島 8、宮崎 2 であ り、北部と南部に二大集積地があることが明 らかとなった。 

GSS‑P102L 症例 85 人のうち 71 人(83.5%)

(2)

が家族歴を有していた。初発症状は 52 人

(61.2%)がふらつきまたは歩行障害であり、

認知症での発症は 12 人(14.1%)であった。

全経過中に小脳失調、認知症を呈したのはそ れぞれ 77 人(90.6%)、56 人(65.9%)であ った。無動無言状態を呈したのは 39 人(45.9%)

であった。 

脳波上 PSD が観察されたのは 12 人(14.1%)

であり、その 12 人のうち 9 人(75.0%)が無 動無言状態になっている。PSD が観察されな かった 62 人のうち無動無言状態になったの は 26 人(41.9%)であった。無動無言状態ま での平均期間は PSD あり群で 18.0 月、PSD な し群で 26.5 月であり、前者で短かったが統計 学 的 に 有 意 差 は な か っ た ( Mann‑Whitney  test; 

= 0.4)。MRI 画像で高信号を呈した のは 32 人(37.6%)であり、そのうち無動無 言状態になったのは 20 人(62.5%)であった。

高信号を呈さなかった 46 人のうち無動無言 状態になったのは 15 人(32.6%)であった。

無動無言状態までの平均期間は高信号あり群 で 9.2 月、高信号なし群で 44.5 月であり、高 信号あり群で有意に短かった(Mann‑Whitney  test; 

= 0.0002)。 

D.考察 

  GSS‑P102L の全国的な臨床疫学調査を行っ た 。 今 回 の 研 究 で 抽 出 さ れ た 症 例 全 体 の 70.6%が九州在住もしくは九州出身であった。

両親の出身地は調査項目に入っていないため、

両親の出身までは不明である。GSS‑P102L が 九州に集積していることがあらためて明らか となった。 

  九州の中でも、福岡県〜佐賀県(北部)と 鹿児島県(南部)が 2 大集積地であること、

とくに福岡県と佐賀県の県境近くに大きな集 積地があることが明らかとなった。ただし南 部には一部 CJD サーベイランスの調査対象に なっていない症例が存在するため、実際には

今回の結果よりも大きな集積があると考えら れる。サーベイランスから漏れていた九州南 部 23 例の存在を確認できたため、今後それら を調査し、サーベイランス情報に加味する予 定である。

  GSS‑P102L には小脳失調で発症し、脊髄小 脳変性症に類似した緩徐な進行を呈する典型 例と、認知症が急速に進行して無動無言状態 に陥る CJD 類似型があるが、その区別は明瞭 ではなく、同一家系でもその両者がみられる 場合がある。今回の研究では、脳波上 PSD や MRI 上の高信号が観察された症例では無動性 無言に陥る確率が高かった。また、MRI 上の 高信号を有する症例では無動無言状態までの 期間が有意に短かった。これは、これらの所 見が GSS‑P102L の急性進行型(CJD 類似型)

の予測に使用することができる可能性を示し ているが、検査の時期を考慮に入れる必要が ある。今後症例を追加し、1 例ずつの詳細に 検討する予定である。 

E.結論 

  GSS‑P102L の臨床疫学的検討を行った。

GSS‑P102L の大部分は九州居住者もしくは九 州出身者であった。九州のなかでは福岡県〜

佐賀県(北部)と鹿児島県(南部)に二大集 積地があることが明らかとなった。GSS‑P102L には脊髄小脳変性症に類似した緩徐な進行を 呈する典型例と、認知症が急速に進行する CJD 類似型があるが、MRI 拡散強調画像での高 信号が急速進行性の予測因子になる可能性が 示唆された。今後、サーベイランスからもれ た九州南部の症例を加えてさらなる検討をす る予定である。 

 

 [参考文献] 

1. Nozaki I, Hamaguchi T, Sanjo N,  Noguchi‑Shinohara M, Sakai K,  Nakamura Y, Sato T, Kitamoto T, 

(3)

Mizusawa H, Moriwaka F, Shiga Y,  Kuroiwa Y, Nishizawa M, Kuzuhara S,  Inuzuka T, Takeda M, Kuroda S, Abe K,  Murai H, Murayama S, Tateishi J,  Takumi I, Shirabe S, Harada M,  Sadakane A, Yamada M. Prospective  10‑year surveillance of human prion  diseases in  Japan. Brain. 2010: 133; 

3043‑57   

2. Arata H, Takashima H, Hirano R,  Tomimitsu H, Machigashira K, Izumi K,  Kikuno M, Ng AR, Umehara F, Arisato T,  Ohkubo R, Nakabeppu Y, Nakajo M, Osame  M, Arimura K. Early clinical signs and  imaging findings in 

Gerstmann‑Straussler‑Scheinker  syndrome (Pro102Leu). Neurology. 

2006: 66; 1672‑8   

F.健康危険情報  なし

G.研究発表  1.論文発表 

1. Qina T, Sanjo N, Hizume M, Higuma M,  Atarashi R, Satoh K, Nozaki I,  Hamaguchi T, Nakamura Y, Kobayashi A,  Kitamoto T, Murayama S, Murai H,  Yamada M, Mizusawa H. Clinical  features of genetic Creutzfeldt‑Jakob  disease with V180I mutation in the  prion protein gene. BMJ Open. 2014: 4; 

e004968   

2. Amano Y, Kimura N, Hanaoka T, Aso Y,   Hirano T, Murai H, Satoh K, Matsubara  E. Creutzfeldt‑Jakob Disease with a  prion protein gene codon 180 mutation  presenting asymmetric cortical  high‑intensity on magnetic resonance  imaging. Prion. 2015: 9; 29‑33   

2.学会発表 

1. Murai H, Nakamura Y, Kitamoto T,  Tsuboi Y, Sanjo N, Yamada M, Mizusawa  H, Kira J. Clinical and 

epidemiological survey of  Gerstmann‑Sträussler‑Scheinker  disease with codon 102 mutation in  Japan. The 22nd World Congress of  Neurology. Santiago, Chile, 2015.11.4 

H.知的財産権の出願・登録状況  (予定を含む.) 

なし 

1.特許取得  なし 

2.実用新案登録  なし 

3.その他  なし

参照

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