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CorrosionResistanceofDLC-coatedAluminuminSodiumChlorideSolution DLC 被覆したアルミニウムの塩化ナトリウム水溶液中での耐食性

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Academic year: 2021

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(1)

DLC被覆したアルミニウムの塩化ナトリウム水溶液中での耐食性

南守1 土山明美*1

Corrosion Resistance of DLC-coated Aluminum in Sodium Chloride Solution

Mamoru Minami, Akemi Tsuchiyama

硬度が大きく耐摩耗性に優れ,化学的に安定しているといった優れた性質を有しているダイヤモンド状炭素(以 下DLCと記す)膜をアルミニウム基板上に作製し,DLC膜被覆アルミニウム(以下,DLC/Alと記す)の腐食挙動 について電気化学的手法を用いて検討した。その結果,DLC/Al は,保護膜として応用実績のある SiN 膜をアルミ ニウム上に形成した試料と類似した電気化学的挙動を示し,耐食性に優れていることがわかった。また,DLC/Al の腐食は,ピット状の腐食孔同士が合体し,膜に対して水平方向へ進行していくことが明らかになった。

1 はじめに

高性能,高機能な材料を開発するために,材料表面 に薄膜を形成させ強度(耐摩耗性、硬さ等)や耐環境 性(耐食性、耐熱性等)を向上させたり,機能(導電 性、絶縁性、磁性等)を付与させたりすることが盛ん に行われている。特に LSI(大規模集積回路)等の電 子材料はその性能を発揮するために配線金属膜,層間 絶縁膜,パッシベーション膜など多数の薄膜が PVD 法やCVD法を利用して作製されている 。1)

近年,LSI の小型化,高機能化が急速に進む中で膜 の微細化,薄膜化が試されており,集積された各種薄 膜の信頼性に対する要求が厳しくなっている。特にア ルミニウム(以下 Al と記す 、) Al 合金からなる配線 材料等を保護する保護膜は,微細化,薄膜化により力 学的強度が低下したり,熱の放散が悪くなったり,吸 湿性や透湿性が増したり,さらには不純物拡散に対す るバリヤ効果が減少するといった問題が生じるため,

さらなる高性能化が求められている 。これらの要求2)

に答える保護膜材料として,非晶質で平滑な表面を持 ち,硬く,摩擦係数が低く,電気的に絶縁,化学的に 安定といった優れた性質を有しているダイヤモンド状 炭素(Diamond-like Carbon,以下DLCと記す)膜が期 待されている。

一般的に,PVD 法やCVD 法で作製されたドライコ ーティング膜にはピンホールと呼ばれる貫通型の欠陥 が多数含まれており,それが膜の耐食性を実質的に支 配していることが知られている 。したがって,機器3)

の信頼性を高めるためには,ピンホールの少ない環境 遮断性,耐食性に優れた薄膜を作製する必要がある。

しかし,薄膜の環境遮断性,耐食性は膜の作成条件や 基板との相性により著しく変化するため,より低欠陥 で耐食性に優れた保護膜を開発する上では,保護膜と 被保護材料とが一体となった形で環境遮断性,耐食性 の評価を行う必要がある。

本研究は,前述の保護性能に優れたDLC膜をAl系 配線材料の保護膜として利用するための基礎研究であ る。本報ではイオン化蒸着法を用いてDLC膜をAl基 板上に作製した DLC 膜被覆 Al(以下,DLC/Al と記 す)の腐食挙動を電気化学的手法により評価検討した 結果を報告する。

2 研究,実験方法 2-1 DLC膜の形成

DLC 膜の形成には PVD法の中でも比較的低温で処 理 で き る イ オ ン 化 蒸 着 法 を 用 い た4 )。 実 験 に 用 い た DLC 薄膜形成装置(ナノテック(株)製)の概略を 図−1に示す。本装置は基板ホルダー,放電用電極お よびタングステンフィラメントから構成され,原料ガ スとして供給されたベンゼン(林純薬工業(株)製,

特級試薬)を熱分解,イオン化し成膜を行うものであ る。

基板には,鏡面研磨仕上げした市販の非熱処理型工 業用純Al JIS A 1050 10( , ×15×t1mm)を用いた。

本来,Al 配線は真空蒸着法を用いて形成されるが,

本研究では,前述のように DLC/Al の腐食挙動の基礎 的な知見を得ることが目的であるので,基板としてバ

*1機械電子研究所

(2)

ルクの Al 板を用いた。この基板をアセトン,メタノ ール中で超音波洗浄した後,水冷した回転式基板ホル ダ ー ( 回転 速 度 :5rpm) に 取 り付 け て , 真空 ポ ンプ により装置内を 2.7× 10 Pa-4 以下の圧力になるまで排 気した。所定の圧力に到達後,DLC 膜形成に先立ち 基板の前処理としてアルゴンガスによる基板のイオン ボンバードメントをVb 0〜-2000Vの範囲内で段階的 に変化させ 20 分間行った。続いて,アルゴンガスを ベンゼンガスと置換し Vb -2000Vで 60 分間DLC 膜 形成を行った。成膜条件の詳細を表−1に示す。作製

した薄膜の膜厚は,接触式表面粗さ計(テーラーホブ ソン(株)製,Talysurf) を用い,成膜前に基板の一部を ポリイミドテープでマスキングした部分としていない 部分との段差から求めた。なお本実験では,プラズマ CVD法で形成されたSiO2およびSiN膜( 株)サムコ( インターナショナル研究所製 ともに膜厚約, 0.50 mµ ) を比較材として使用した。

2-2 電気化学的測定

樹脂封止LSI中には樹脂内に不純物としてClイオ ンが存在している。そのため保護膜や下部の電子材料 は常にClイオンの影響を受けている。そこで,今回 成膜処理した各試料の耐食性を,Cl イオンを含み中 性電解質溶液である3mass% NaCl水溶液中でアノード 分極測定 定電位電解測定を行うことにより評価した, 。 アノード分極測定および定電位電解では,図−2に示 すような3電極方式の電解セルを用いた 試料電極は。 , 基板裏面にリード線を取り付け,測定面を 1× 10 m-4 2 残してシリコーン樹脂で被覆した薄膜被覆 Al,未コ ーティングAlを用いた。対極にはPtを,参照電極に は Ag/AgCl(飽和 KCl)電極を用いた。本文中の電位

(以下Eと記す)はすべてAg/AgCl(飽和KCl)電極 を基準にして表示した。試験溶液は特に pH の調整を 行わず,分極測定中も大気開放していた。試験温度は 333K に保った。アノード分極測定は,試料電極を試 験 溶 液 に 300s 浸 漬 後 , 自 然 電 極 電 位 か ら 貴 方 向 へ 0.38mV/s の電位速度で E=1.5V まで掃引し行った。定 電位電解は,試料電極を試験溶液に60s浸漬後,E=0V

に保ち 1.8ks 行った。すべての測定は静止状態で行っ

た。

試験溶液中へ溶出した Al の定量分析は,塩酸を 2 図−2 電気化学測定装置

図−1 DLC膜作製に使用したイオン化蒸着装置

(3)

×10 m-5 3添加することで不溶性の腐食生成物を完全に 溶解し,溶液をろ過した後,高周波誘導結合プラズマ 発光分光分析装置で行った。電気化学的測定後の各試 料表面は,外観観察,光学顕微鏡観察及び走査型電子 顕微鏡観察(日本電子(株)製, JSM-T330型)により 腐食挙動を評価した。

3 結果と考察

3-1 電気化学的測定

図− 3 に,未コーティング Al 基板(図− 3 a))( , DLC/Al(図− (3 b)),Al基板上にSiN膜を被覆した 試料(以下 SiN/Alと記す,図− 3 c( )),SiO2 膜を被 覆 し た 試 料 ( 以 下 SiO /Al2 と 記 す , 図 − 3(d)) の

3mass% NaCl水溶液中におけるアノード分極曲線を示

す。未コーティング Al 基板および SiO /Al2 の電流密 度は 分極直後から急激に増加し 未コーティング, , Al 基板の場合は E=0V 付近で,SiO /Al2 の場合は E=1.2V 付近でおよそ1×10 A/m3 2 となり,それ以上貴方向へ 電 位を 掃引 し てもほ と んど 変化 せず ほぼ 一定値 を示 している 一方。 ,DLC/AlおよびSiN/Alの電流密度は,E の増加とともに徐々に増加し,E=1.5V でも未コーテ ィング Al基板,SiO /Al2 の場合よりも低い値を示して いる。未コーティング Al の電流密度がほぼ一定値と なる電位,すなわちE=0Vのときの各試料の電流密度 を図− 4 に示す。DLC/Al はおよそ 4A/m2,SiN/Al で はおよそ 1A/m2,SiO /Al2 ではおよそ2×10 A/m2 2であ り,未コーティング Al の場合と比較すると DLC/Al とSiN/Alでは3桁程度,SiO /Al2 では 1桁程度小さな 値 を 示 し て い る。 なお ,電流 密度が変 化する主 な原 因 は腐 食媒 体 が皮膜 の 欠陥 部を 介し て基 板表面 に達 し,そこで腐食反応が開始したことにあると考えられ る。

図− 5 に,アノード分極測定終了後の試験溶液中 へ溶出したAlの定量分析結果を示す。Al の溶出量は DLC/Alの場合およそ75×10 kg/m-3 3,SiN/Alの場合お よそ10×10 kg/m-3 3である。SiO /Al2 の場合,試験溶液 中に Al 溶出に起因する白色の不溶性生成物が多量に 存在し,塩酸を2×10 m-5 3添加しても完全に溶解する ことはできず,Alの溶出量は測定できなかった。

図−6に アノード分極測定後に観察された, SiO /Al2

(図− ( )6 a ),DLC/Al(図− (6 b))およびSiN/Al(図

− (6 c))の外観および断面写真を示す。この図より,

SiO /Al2 は 試 料 全 面が 腐 食 して お り ,DLC/Al,SiN/Al と なる にし た がって 腐 食面 積が 減少 して いるの がわ か る。 また , 腐食部 の 深さ にお いて は, 深さ方 向に 図− 3 未コーティング Al DLC/Al SiO /Al, , 2 および SiN/Alのアノード分極曲線

図−4 E=0 VでのDLC/Al SiO /Al, 2 およびSiN/Alの 電流密度

図−5 試験溶液中へ溶出したAl量

(4)

対 し て 垂 直 に 形 成 さ れ た 半 球 状 の 腐 食 ピ ッ ト が SiN/Al,DLC/Al,SiO /Al2 と な る に し た が っ て 深 さ 方 向に対して水平に広がっていくのが認められる。

アノード分極測定は広範囲な電位域における腐食挙 動を短時間で予測できる迅速評価法であるが,動電位 法であるため微小欠陥などを十分に検出できない場合 がある。これに対して,DLC/Al のような材料の耐食 性を評価するためには,腐食媒体が被膜の欠陥を通っ て基板表面に達し腐食反応が発生するまでの十分な時 間を考慮する必要がある。そこで未コーティング Al の電流密度がほぼ一定値となる電位,すなわち E=0V で各試料を定電位保持し,1.8ks の間アノード電流密 度の経時変化を測定した結果を図−7に示す。SiO /Al2 の場合,アノード電流密度は保持時間が経過するにつ れて大きくなり,1.8ks後には1×10A/m2に達して いる。一方,DLC/Al あるいは SiN/Al の場合,アノー ド電流密度は測定開始から 0.6ks 後までは増加と減少 を繰り返し,0.6ksから1.8ksの間はDLC/Alはおよそ1

×10A/m2,SiN/Alはおよそ1A/m2とほぼ一定値を示し ている。DLC/Al SiN/Al, における測定開始から 0.6ks 後までのアノード電流の激しい変化は,おそらく腐食 により剥離したあるいはしかけた膜が基板と再付着,

離脱を繰り返しているためではないかと推察できる。

腐食後の各試料の表面を観察した結果,アノード分極

の場合と同様に SiO /Al2 ,DLC/Al,SiN/Al となるにし たがって腐食面積が減少し,SiN/Al DLC/Al SiO /Al, , 2 となるにしたがって半球状の腐食ピットが深さ方向に 対して水平に広がっていくのが認められた。

以上の結果から,DLC/Al は,保護膜として応用実

績のある SiN/Al と類似した電気化学的挙動を示し,

SiO /Al2 よりは遙かに優れた耐食性を有することがわ

かった。また,DLC/Al の腐食は半球状の腐食ピット が深さ方向に対して水平に広がっていくことがわかっ た。

ここで,DLC/Al が SiO /Al2 と SiN/Al の中間的な腐 図 − 7 E=0 V で 定 電 位 保 持 し た と き の DLC/Al, SiO /Al2 およびSiN/Alの電流密度

−6 アノード分極測定後に観察されたSiO /Al DLC/Al2 , およびSiN/Alの外観および断面写真

(5)

食 形態 を示 す 理由と し ては ,皮 膜欠 陥と 膜/基 板界 面における腐食生成物の堆積との 2 つによる影響が 考 えら れる 。 著者ら は 既報 で, 今回 と同 様な方 法に よりステンレス鋼上に形成した DLC SiO, 2,SiN膜の 欠陥面積率について調査し,DLC 膜の欠陥面積率は SiO2 膜より 1/10 程度小さく,SiN 膜と同程度である という結果を得た 。よって,本実験で使用した薄膜5) の欠陥面積率はDLC=SiN<SiO2であると推察でき る。また,一般に SiOx 膜は薄膜作製時に水分を吸蔵 し 膜内 部や 表 面のい ず れに も水 分が 存在 する傾 向が あるといわれている 。つまり,6) SiO2 膜中に試験溶液 が 浸入 ある い は浸透 す るこ とに よる 界面 近傍で の基 板の腐食の可能性が示唆される。以上により,SiO /Al2 は 皮 膜 欠 陥 と 浸 透 腐 食 の 両 作 用 の た め DLC/Al と SiN/Al よ り 激し い腐食挙 動を示 すのでは ないか と推 察できる。次に,欠陥面積率や電気化学的挙動がDLC 膜と SiN 膜は類似しているにもかかわらず,DLC/Al

よりも SiN/Al のほうが腐食部分が少ない理由につい

てだが,この件に関しては今のところ定かではない。

おそらく DLC 膜は,膜形成の際に生じる高い圧縮応 力のため膜と基板との密着力がSiN膜よりも弱く,Al の腐食により形成されるAl水酸化物(Alの約3倍の 体積を持つ)の堆積によりSiN膜よりも容易に膜の破 壊と剥離が起こるからではないかと考えられる なお。 , この点に関しては今後の検討を要する課題である。

4 まとめ

アルミニウム上に形成した DLC 膜の耐食性につい て電気化学的手法を用いて検討した結果,以下のよう な結論を得た。

1 DLC/Al) は SiN/Al と類似した電気化学的挙動を示 し,非常に優れた耐食性を有することがわかった。

2)半球状の腐食ピットが深さ方向に対して水平に広 がっていくことにより DLC/Al の腐食が進行するとい うことが明らかになった。

終わりに,本研究を遂行するにあたり有益なご助言 を賜りました久留米工業大学蓮山寛機氏,兵庫県立工 業技術センター高谷泰之氏に感謝の意を表します。

5 参考文献

1)先端真空利用技術,p126,日経技術図書 株 (( )1996) 2)岩井洋, 大見俊一郎 : 応用物理,Vol.69,No.1,p4

(2000)

3)新田誠司, 木村雄二 : 環境と材料,Vol.45,No.7, p.412 1996( )

4)瀬高信雄 難波義捷 松永正久 若槻雅男編, , , : 人 造ダイヤモンド技術ハンドブック,p162,(株)サイエ ンスフォーラム (1989)

5 M. Minami, A. Tsuchiyama, H. Hasuyama and Y.) Shima : Proc. of the 16th International Japan-Korea Seminar on Ceramics,p.221 1999( )

6)田畑三郎,黄燕清 : 真空技術による高機能コー ティング Ⅱ編, 3章,p143 1987( )

参照

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