高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法を用いた
鉄鋼中微量炭素定量のための検量線作成法
1 2
古賀弘毅* 緒方道子*
The Calibration Method for Determination of Trace Amount of Carbon in Steel by Infrared Absorption Method after Combustion in High-Frequency Induction Furnace
1 2
Hiroki Koga
*and Michiko Ogata
*「高周波燃焼−赤外線吸収法」における新たな検量線の作成方法として基準物質にショ糖を用い,自作の石英製 試料セル及び黒鉛封入発熱体による助燃剤フリーの検量線作成法(セル法)を開発した。セル法は汚染の要素が極 めて少ない検量線作成法であり,検量線は原点を通る良好な直線性を示した。一方,実試料分析におけるコンタミ
, ,
ネーションの除去を目的とした前処理操作を検討し 汚染源となるルツボ及び助燃剤に適切な前処理を行うことで コンタミネーションを極めて低く抑えられることがわかった。充分な前処理操作を行った鉄鋼標準物質による検量 線はセル法の検量線と良く一致した。このことからセル法が鉄鋼材料中の微量炭素分析の検量線作成法として適用 できることが明らかとなり,鉄鋼試料中の微量炭素成分を高い精度で定量できることが明らかになった。
1 はじめに
近年の鉄鋼のクリーンスティール化により,自動車 用鋼鈑などに用いられる極低炭素鋼鈑中の炭素含有量 は数
ppm
レベルとなっている。このため品質を保証 する上で微量炭素を精度良く定量する必要がある。一 般に鉄鋼中の炭素定量には「燃焼−赤外線吸収法」が 用いられるが,この方法はルツボ等からのコンタミネ ーションが測定値に大きく影響するため,微量分析の ためにはこれらの汚染の除去が必要がある。一方,微量分析に対応した鉄鋼標準試料は種類が少 なく,より確かなトレーサビリティを確保するため,
化学標準物質を利用した検量線の作成法が検討されて いる。
そこで「高周波燃焼−赤外線吸収法」による微量炭 素定量法を検討した結果,ショ糖を化学標準物質とし て選定し,試作した石英製試料セル(以下,試料セル と称す )及び石英製黒鉛封入発熱体(以下,発熱体。 と称す )を用いることにより,助燃剤フリーの検量。 線が作成できること,また,この検量線が鉄鋼材料の 分 析 に 適 用 で き る こ と が 明 ら か と な っ た ので報 告 す る。
2 研究,実験方法 2−1 装置及び器具
炭素定量には炭素イオウ同時分析装置(
LECO
社製 型)を用いた。図−1に今回試作した発熱CS-444LS
体と試料セルの概略を示す。発熱体は黒鉛を円柱状に 加工して石英管内に真空封入して作製した。試料セル は石英製でショ糖などの化学標準物質をこの中に分取 し乾燥する。その後,試料セル中に発熱体を装填し,
酸素気流中で高周波誘導により発熱体を発熱させ,化 学 物 質 の 酸 化 燃 焼 に よ り 生 じ た 二 酸 化 炭 素を測 定 す る。
図−1 石英セル及び発熱体
*1 機械電子研究所
*2 福岡県産業・科学技術振興財団
2−2 試薬及び試料
分析試料には日本鉄鋼連盟の鉄鋼認証標準物質から 適当なものを選択した。試料の燃焼を促進させる助燃 剤にはタングステンと錫を選択し,いずれも
LECO
製 のものを用いた。化学標準物質にはショ糖(林純薬製 特級)を選択し,100
℃で乾燥させた後,適切な濃 度の水溶液として使用した。3 結果と考察
3−1 セル法による検量線の作成
試作した発熱体は高周波により分析開始から約
40
秒で1200
℃に加熱され,ショ糖の酸化分解に十分な 熱量を供給することができる。発熱体を用いてショ糖 を燃焼させた時の炭素抽出挙動と鉄鋼試料分析時の炭 素抽出挙動の比較を図−2に示す。ショ糖は鉄鋼の場 合と比べて燃焼に時間を要すが炭素抽出は一段階で完, 。
結しており 安定した燃焼が行われていると思われる 本法により検量線を作成し
JIS
法による検量線作成 方法と比較した。炭素濃度と赤外線吸収量の関係を図−3に示す。
図−2 炭素抽出曲線の比較(A:ショ糖,B:鉄鋼試料)
図−3 各種方法で作成した検量線の比較(○:セル法,
×:JIS 鉄鋼標準物質を用いた方法)
0 100 200 300 400 500 600 700
0 30 60 90 120
Time / s
In te ns it y / a. u.
B
A
0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 140000 160000 180000
0 20 40 60 80 100 120 Conc. / μg g
-1In te ns it y / a. u.
検量線の傾きはほぼ同等であり,それぞれの炭素回 収率にほとんど差はないことがわかった。直線を
y
軸 まで外挿したところ原点付近を通ることからブランク 値はゼロとみなせた。以上の結果から鉄鋼材料の微量 炭素分析に対してセル法による検量線が直接適用可能 であることが明らかとなった。3−2 セル法による検量線の実試料への適用
セル法によるショ糖の検量線を用いて鉄鋼標準物質 及び市販の高純度鉄を分析した結果を表−1に示す。
鉄鋼標準物質の分析ではいずれの分析値も認証値と良 い一致を示し,セル法による検量線が適用できること が明らかとなった。また,ルツボ及び助燃剤の前処理 によりブランク値が極めて低く抑えられていることか ら,高純度鉄の測定値についても信頼性は高いと言え る。なお,高純度鉄の分析結果から定量下限を推定す ると
0.21µgg
-1( σ:標準偏差の3 3
倍)となり,本検 量線作成法は鉄鋼中の微量炭素定量に有効であること が示された。表−1 セル法検量線による実試料の分析結果
4 まとめ
「高周波燃焼−赤外線吸収法」のための新たな検量 線の作成方法として,自作の石英製試料セル及び黒鉛 封入発熱体を用いた助燃剤フリーの検量線作製法を開 発した。本法は鉄鋼標準物質による検量線ともよく一 致しており,鉄鋼材料中の微量炭素定量の検量線作成 法として,ブランク補正などの必要がなく直接適用で きることから,極めて有用であることがわかった。
5 論文投稿
古賀弘毅,緒方道子:分析化学(
Bunseki Kagaku)
,, ( )
Vol.49 p.825 2002
JSS1202-1 JSS1201-1 Pure Iron1* Pure Iron2**
1 47.68 4.49 6.97 0.86
2 47.51 4.28 7.00 0.82
Found / µg g-1 3 46.95 4.54 7.08 0.71
4 46.14 4.66 7.04 0.89
5 47.13 4.53 7.16 0.84
47.08 4.50 7.05 0.82
0.43 0.14 0.07 0.07
0.91 3.07 1.05 8.50
47 5 - -
/ µg g-1
*Atomiron, **Niraco 4N. a): Standard deviation. b): Relative standard deviation Sample
RSD b) / % Certified value Average / µg g-1 SD a)