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立山亜高山弥陀ヶ原高原における訪花昆虫調査

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(1)

立山亜高山弥陀ヶ原高原における訪花昆虫調査

著者 根来 尚

雑誌名 富山市科学文化センター研究報告

27

ページ 31‑44

発行年 2004‑03‑25

URL http://repo.tsm.toyama.toyama.jp/?action=repos itory̲uri&item̲id=814

(2)

富山市科学文化センター研究報告第27号,pp31‑44;(2004}

立山亜高山弥陀ヶ原高原における訪花昆虫調査*

根 来 尚 富山市科学文化センター 939‑8084富山市西中野町1‑8‑3菖

ASurveyofn0wer‑visitinginSectsatMidagaharahighlandinthesubalpinezoneofMt・Tateyama・

ToyamaPrefEcmre,Hokm・iku,Japan

HisashiNegoro

TovamaScienceMuseum

l‑8‑31Nishinakano‑machi,Toyama,939‑8084,Japan

ThepresentpaperdealswiththeresuItofasurvevofflower‑visitinginsectsat MidagaharahighlandinthesubalpmezoneofMt・Tateyama,ToyamaPrefecmre,

Hokuriku,JapanduringtheHowerseasonin2002‑2003.Atotalof3893individualsin 9ordersofinsectswereobservedonthenowers,Hymenopterawaspredominantinthe numberofindividuals(about50%oftotalindividuals)andfbllowedbyDiptera(about 30%),Coleoptera(about10%),Lepidoptera(about10%),andotherorderswereafewin‐

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Keywords:insects,nower‑visiting,subalpinezone,Mt、Tateyama キーワード:昆虫,訪花,亜高山,立山

は じ め に

筆者は,訪花昆虫の全般的調査を,立山の高山域と 丘陵において行っている(根来,1997,2002,2003)。

今回の調査は,亜高山域での訪花昆虫の概要を知るた めに行った。

本調査は,月に2度の調査で,全て目筆によるもの であって昆虫の同定も科,もしくは目どまりの個体も 多く,概要にふれるのみであるが,富山県の亜高山で の訪花昆虫の一端を示すものである。

なお本調査を実施するに当たり,富山森林管理署、

中部山岳国立公園立山黒部管理官事務所には,ご協方 いただいた。感謝申し上げる。

調 査 場 所 。 調 査 方 法 ・ 調 査 時 期

立山弥陀ヶ原の遊歩道沿いに行われた。図lに実線 で示した道を調査ルート(標高1800m〜1900,,3km)

*富山市科学文化センター研究業績第296号

31

とした。

6月下旬から10月中旬の間,毎月2回の割で,ほぼ一 定の速度で45時間かけ道上を歩行し,その間目撃し た開花植物への訪花昆虫個体数をカウントした。訪花 昆虫はすべて目視による確認であり,微少な昆虫は見 逃された物も多いと思われ,また種までの確認ができ ず目や科どまりの個体も多かった。

調査時間は,A地点を9時30分に出発し,B地点で 約30分の休息をとった後12時に出発,A地点に14時30 分に到着の4時間30分である。調査期間を通しての総 調査時間は36時間である。

この地域は,その年にもよるが一般的に11月中旬か ら積雪が見られ,6月初旬までまったく雪に覆われる。

弥陀ヶ原での積雪はほぼ6mにおよぶ。

道路わきや斜面から雪が消えてゆくが,消雪にした がって順次開花が見られる。当地の平均気温や降水量,

(3)

根 来 尚

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図1.調査地調査ルートを太い実線で示す

ヤマハハユゴマナ,ウメバチソウなど開花。

2002年10月15日曇り時々晴

ミヤマアキノキリンソウ,タカネコウゾリナ7

一子トー

化。

積雪深については,根来(2000)を参照していただき

たい。

主な開花植物は,ミネヤナギ,クロウスゴ,チング ルマ,ナナカマド,イワイチョウ,クモマニガナ,イ タドリ,ウラジロタデ,オオコメツツジ,ミヤマワレ モコウ,タテヤマリンドウ,タテヤマアザミ,タカネ コウゾリナ,ゴマナ,ミヤマアキノキリンソウなどが 挙げられる。

調査日と調査時の天候および主要な開花植物を記す。

2003年6月22日晴れ後雲

イワイチョウ,ナナカマド,ミネヤナギなど開花。

2003年7月17日晴時々曇り

チングルマ,クモマニガナ,クロウスゴなど開花。

2002年7月25日晴時々曇り

オオコメツツジ,ゼンテイカ,タテヤマリンドウ,

ウラジロタデなど開花。

2003年8月3日晴後曇り

タテヤマアザミ,タカネコウゾリナ,ミヤマワレモ コウなど開花。

2003年8月13日晴後曇り

ミヤマアキノキリンソウ,タテヤマウツボグサなど 開花。

2003年9月2日曇り一時晴れ

イワショウブ,ゴマナ,イタドリなど開花。

2002年9月20日曇り時々晴

タ カ ネ コ ウ ゾ リ ナ な ど 開

調 査 結 果

表1に調査日ごとに訪花植物ごとの訪花昆虫個体数 を示し,表2に各科各植物ごとに調査日ごとの訪花昆 虫個体数を示した。また,図2〜5に訪花昆虫個体数 および各調査日ごとの個体数の割合の季節変動を示し た 。 目 撃 昆 虫 は 全 て 種 ま で 同 定 し 得 た わ け で は な い の で種数については不明である。

1.結果概要

8日間の調査の結果,膜迩目・双迩目・甲虫目・鱗 迩 目 ・ 長 迩 目 ・ 脈 迩 目 ・ 積 迩 目 ・ 半 迩 目 ・ 直 通 目 の 9

目にわたる3893個体の昆虫の訪花が確認された。最も 多かったのは膜迩目で全個体数の51%1971個体,次い で双迩目の28%1088個体,この2目で全体の約80%の 個体数となる。甲虫目11%,鱗迩目9%,他の目は大 変少なかった。

膜 迩 目 双 迩 目 中 で は 各 々 , ハ ナ バ チ 類 ( 膜 迩 目 中 の81%1602個体),ハナアブ類(双迩目中の62%669個 体)が多く,ハナバチ類,ハナアブ類は全体の41%,

17%と訪花昆虫の大きな部分を占める。

(4)

立山l胆高山弥陀ヶ原高原における訪花昆虫調査

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立 山 亜 高 山 弥 陀 ヶ 原 高 原 に お け る 訪 花 昆 虫 調 査

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立山亜高山弥陀ヶ原高原における訪花昆虫調査

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(10)

立 山 亜 高 山 弥 陀 ヶ 原 高 原 に お け る 訪 花 昆 虫 調 査

アブラナ,イネ,イワハゼ,サクラソウ,サトイモ,

スイカズラ,イワウメ,オトギリソウ,ミズキ,ヤナ ギ,ユキノシタ科が各1種である。

最も訪花個体の多かった植物は,ナナカマド(10%

376個体),次いでゴマナ(9%366個体),ウラジロタ デ(8%316個体),チングルマ(7%260個体),イワイ チヨウ(5%214個体)。

6位以下は,イタドリ(5%205個体),アザミ類(5

%204個体),クモマニガナ(5%190個体),ミヤマワ レモコウ(4%172個体),オオコメツツジ(4%155個 体)であり,以上上位10種で全個体数の63%を占める。

うち3種がキク科とバラ科でタデ科2種,ツツジ科,

リンドウ科が各1種であり,ここでもこれらの科が上 位を占める。

訪花期間は6月中旬から10月中旬で,7月下旬と9 月上旬に訪花個体数のピークがあり,全般的な季節消 長には膜迩目ハナバチ類と双迩目ハナアブ類の寄与が 大きい。

全訪花昆虫中,キク科を訪れた昆虫は29%1131個体 で最も多く,次いでバラ科22%859個体,タデ科13%E 21個体,リンドウ科8%,ツツジ科6%であり,この

5科で全体の約80%を占める。

この結果は,丘陵地の調査結果(根来,1997)とは 膜迩目・双迩目の割合が他の目に比べ多く,特に膜迩

目ハナバチ類が多く,甲虫目・鱗迩目の割合が比較的 少ないことで類似し,バラ科への訪花が多くキク科と さほど差がないことで異なる。

また,高山域の結果(根来ラ2002,2003)とは,双 迩目の割合がより少なく,膜迩目の割合がより多く,

膜迩目が双迩目より多くなっていること,セリ科への 訪花が少ないことで異なっている。また,キク科・ノミ

ラ科がほぼ同様に多いことで類似している。

今回昆虫の訪花が確認された植物は24科66種である。

キク科12種,バラ科・ユリ科6種,セリ科・ツツジ科・

ラン科5種,キンポウゲ科・ゴマノハグサ科・リンド ウ科が3種,カエデ・シソ。タデ科2種,アカバナ,

そ の 他 割合(%:

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図3.訪花昆虫の季節消長(各調査日ごとの各目の割合)

割 合 ( % ) そ の 他 セ リ ユ リ 図2.訪花昆虫の季節消長(昆虫各目ごとの個体数:

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国5.訪花昆虫の季節消長(各調査日ごとの各科の割合)

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図4.訪花昆虫の季節消長(植物各科ごとの個体数子

3

(11)

根来

2.季節消長概要

訪花期間は,6月中旬から10月中旬であるが,7月 下旬と9月上旬に訪花個体数のピークがあり,各々全 訪花個体の19%748個体および16%636固体である。7 月下旬のピークは主に双迩目主にハナアブ類による。

全般的な季節消長には膜迩目ハナバチ類および双遡目 ハナアブ類の寄与が大きい。

鱗迩目は8月下旬〜9月上旬に多く,甲虫目では7 月中旬〜8月上旬に多くなっている。

訪 花 期 は 7 月 中 旬 ま で と 7 月 下 旬 〜 8 月 , 9 月 以 降とに大きく3分される。

6月下旬〜7月中旬は,開花種数はまだ少なくヤナ ギ科・キンポウゲ科・バラ科が多くの個体(60%程度)

を集める。7月下旬〜8月がもっとも開花種数が多く 訪花個体数も多く,キク科・タデ科・バラ科・リンド ウ科などが多くの個体を集める。9月以降は,開花種 数 は 少 な く な り 訪 花 個 体 数 も 減 少 し は じ め キ ク 科 が 訪 花個体の多く(60%以上)を集める。

1調査日において最も訪花昆虫を集めた植物は,ゴ マナ(キク科)で9月2日に191個体が訪花した。次 いで,チングルマ(バラ科)が7月17日に180個体,

ゴマナ9月20日175個体,ナナカマド7月17日138個体,

同8月3日133個体,ウラジロタデ7月25日,イタド リ8月13日112個体と続く。

3.訪花昆虫各目 3 − 1 . 膜 趨 目

全訪花昆虫の51%1971個体が膜迩目であり,その81

%1602個体がハナバチ類である。またその24%378個 体 が マ ル ハ ナ バ チ 類 で あ る 。 今 回 の 調 査 で は マ ル ハ ナ バチ類は,ヒメマルハナバチとオオマルハナバチ,ト ラマルハナバチ,ヤドリマルハナバチが観察された。

ハナバチ類以外ではアリ類が多く膜迩目の15%283個 体,ハバチ類,ヒメバチ類,カリバチ類では25個体前 後と少ない。

膜迩目は22科の植物を訪花したが,約36%708個体 がキク科植物に訪花し,バラ科19%374個体,タデ科 11%213個体,ツツジ科10%193個体,以上4科で75

%を占める。ハナバチ類では20科を訪花し,キク科41

%653個体,バラ科18%287個体,ツ急ツジ科12%189個 体であり,タデ科は7%108個体である。そのうちマ ルハナバチ類では10科を訪花し,ツツジ科39%147個 体,キク科29%110個体,バラ科は13%48個体である。

アリ類では16科を訪花し,セリ科28%83個体,バラ科 26%77個体,キク科15%44個体である。

膜 迩 目 の 個 体 数 の 季 節 消 長 は , 7 月 中 旬 と 9 月 下 旬

4§

にピークがあり8月中旬には減少するが,出現期間中 の さ ほ ど 大 き な 変 動 は 無 い 。 各 調 査 日 で 占 め る 割 合 で は訪花期の初期と終盤に多く,7月下旬〜9月上旬の 中盤には少なくなる。ハナバチ類の季節消長は,ほぼ 膜迩目の季節消長に平行し,各調査日のハナバチ類の 膜迩目に対する割合は全般的に80%前後であるが,訪 花期前半は少し比率は小さく後半で増大する。

ハナバチ類に関しては,根来(2000)の立山弥陀ケ 原 で の ハ ナ バ チ 類 調 査 の 結 果 と 特 に 相 違 す る と こ ろ は 無 い 。 ハ ナ バ チ 類 の 訪 花 の 詳 細 に つ い て は , 根 来

(2000)を参照していただきたい。

3−2.双遡目

全訪花昆虫の28%1088個体が双迩目であり,その61

%664個体がハナアブ類である。その他オドリバエ類,

クロバエ類,小型のハエ類などの訪花が見られた。

双迩目は21科の植物を訪花したが,24%263個体が バラ科を訪花し,次いでキク科23%246個体,タデ科 16%174個体,リンドウ科10%114個体とこの4科で73

%となる。

ハナアブ類では18科を訪花し,バラ科28%190個体,

キク科22%150個体,タデ科14%96個体,リンドウ科 12%79個体の順である。

双迩目の個体数の季節消長は,7月下旬(双迩目個 体の27%289個体)8月上旬(24%263個体)にピーク があり,6 月 下旬〜 7 月中旬 へ と徐々 に 増加し 8 月中 旬から徐々に減少する。

各調査日で占める割合では,7月下旬に膜迩目を越 えるがそれ以外では膜迩目が多い。7月下旬から8月 中旬では双迩目と膜迩目の割合に大差は無いが,訪花 期の初期と終期では膜迩目の割合が大きくなる。

3−3.甲虫目

全訪花昆虫の11%弱426個体が甲虫目であり,ハム シ類やカミキリムシ類の訪花が多かった。

甲虫目は13科の植物を訪花したが,バラ科には甲虫 目中35%(151個体),リンドウ科23%(93個体),タ デ科21%(88個体)への訪花が多かった。カミキリム シ類(主にハナカミキリ類)では9科曇への訪花が認め られバラ科(ナナカマド)への,また,ハムシ類(主 に ネ ク イ ハ ム シ 類 ) で は 7 科 へ 訪 花 し た が リ ン ド ウ 科 (イワイチョウ)への訪花が多かった。甲虫目の訪花 は,7月中旬〜8月上旬に多く見られた。

3 − 4 鱗 迩 目

全訪花昆虫の9%351個体が鱗迩目であり,そのほ とんど268個体がチョウ類である。残り83個体がガ類 である。

鱗迩目は15科の植物を訪花したが,39%136個体が

(12)

立山亜高山弥陀ヶ原高原における訪花昆虫調査

キク科に訪花し,ユリ科には17%59個体であった。

ガ類,チョウ類ともに12科の植物を訪花した。チョウ 類は,コチャバネセセリ,イチモンジセセリ,ミヤマ カラスアケハ,モンシロチョウ,モンキチョウ,ミヤ マモンキチョウ,ヒメシジミ,アサギマダラ,コヒョ ウモン,ベニヒカゲの10種がみられ,特にベニヒカゲ とコヒョウモンの訪花が圧倒的に多かった。ベニヒカ ゲは8月中旬から9月下旬に訪花し、特に9月上旬に 多く,コヒョウモンは8月中旬から9月下旬に訪花し,

特に8月中旬に多い。

3−5.直通目

訪花の認められた直通類は,クモマヒナバッタとイ ブキヒメギスの2種で29個体である。7月中旬のチン グルマ花上に両種の幼虫が各5個体前後見られた他は,

9月下旬まで各1.2個体がキク科,キンポウゲ科,

バラ科,リンドウ科の数種の花上に見られ,共に花粉

を食しているようであった。

3−6.長迩目

スカシシリアゲモドキが18個体,7月中旬から8月 中旬にナナカマド(8個体),オオコマツツジ(5個 体),ウラジロタデ(3個体),イタドリ,クモマニガ

ナ(各々1個体)を訪花した。

3−7.半遡目

半迩目は8個体のみであり,全てカメムシ類である。

6月下旬から7月中旬と8月中旬に訪花し,セリ科の ミヤマゼンコに5個体の他は,イワイチョウ,シモツ ケソウ,ヤナギ類に各1個体であった。

3−8.積遡目

カワゲラ類が,6月下旬ヤナギ類に1個体訪花した。

3−9.脈遡目

センブリ類が,8月上旬ナナカマドに1個体訪花し

4.植物各科への訪花昆虫 4−1.キク科

キク科で昆虫の訪花した植物は12種。キク科を訪れ た昆虫は全訪花昆虫中29%6目1131種である。

最も訪花個体の多かった植物は,ゴマナ(キク科訪 花中32%5目366個体)で,次いでアザミ類(18%

4目204個体),クモナニガナ(17%6目190個体),ミ ヤマアキノキリンソウ(11%4目125個体)であり,

以上4種でキク科訪花昆虫中の78%の個体を占める。

季節消長では,6月下旬から路傍のセイヨウタンボ ポヘの訪花個体が見られ,7月からじょじょに増加し 9月に急激に多くなる。9月上旬(その調査日の全訪 花昆虫中54%の個体を集めた),9月下旬(77%)で

41

は第一番の科である。

キク科を訪花した昆虫のうち最も多いのが膜迩目で 708個体(キク科訪花昆虫中63%)うちハナバチ類653 個体(58%)そのうちマルハナバチ類は110個体,次 いで双迩目246個体(22%)うちハナアブ類が150個体 (13%)でこの2目で85%となる。

鱗迩目136個体(12%)で,甲虫目34個体,直通目 6個体,長迩目l個体である。

特にアザミ類,タカネコウゾリナが膜迩目を多く集 める。

4 − 2 バ ラ 科

バラ科で昆虫の訪花した植物は6種。バラ科を訪れ た昆虫は全訪花昆虫中22%8目859個体であり,ナナ カマドが最も多く,バラ科中44%6目376個体,チン グルマが5目260個体(30%),ミヤマワレモコウ5目 172個体(20%)と続く。

バラ科は6月下旬から9月下旬までシーズンを通じ て訪花が見られるが,7月上旬から8月上旬までは多 く,8月中旬以降は急激に減少する。7月中旬が最も 多く318個体,この調査日と8月上旬(204個体)では バラ科が最も訪花個体の多い科である(各調査日の51

%,31%である)。

バラ科を訪花した昆虫中最も多いのは,膜迩目で 374個体(バラ科訪花昆虫中44%)うちハナバチ類が 287個体(33%)そのうちマルハナバチ類は48個体,

双迩目263個体(31%),ハナアブ類190個体(22%),

甲虫目151個体(18%)で,鱗迩目43個体(うちチョ ウ類39個体)・直通目18個体,長迩目8個体,半迩目

l個体,脈迩目l個体である。

ナナカマドが甲虫類を,チングルマがハナバチ類を,

ミヤマワレモコウがハナアブ類を多く集めた。

4−3.タデ科

タデ科で昆虫の訪花した植物は,ウラジロタデ5目 316個体(タデ科訪花昆虫中61%)とイタドリ5目205 個体(39%)の2種である。タデ科を訪れた昆虫は全 訪花昆虫中13%5目521個体である。

タデ科の季節消長は,7月中旬の少数個体の訪花に 始まり,7月下旬から増え8月中旬まで多く9月には 少なくなる。8月中旬では,その調査日に最も多く訪 花した科であり213個体(41%)である。

シーズンの前半期にはウラジロタデ,後半期はイタ ドリヘの訪花が多くなる。

タデ科を訪花した昆虫中最も多いのは,膜迩目で 213個体(タデ科訪花昆虫中41%)そのうちハナバチ 類が108個体(21%)マルハナバチ類は4個体のみ,

アリ類83個体であり,双迩目174個体(33%)うちハ

(13)

根 来

ナアブ類は96個体(18%)であった。甲虫目88個体 (17%),長迩目4個体,鱗迩目42個体である。

ウラジロタデが甲虫類を多く集めた。

4−4.リンドウ科

リンドウ科で昆虫の訪花した植物は3種。リンドウ 科を訪れた昆虫は全訪花昆虫中8%6目328個体であ り,イワイチョウが6目214個体,タテヤマリンドウ 4目111個体,オヤマリンドウ3個体である。

リンドウ科は6月下旬から8月中旬までと9月下旬・

10月中旬(オヤマリンドウに少数個体)に訪花が見ら れ,7月下旬が最多日で151個体でありリンドウ科全 体の46%であり,その調査日で最多の科(20%)であ

リンドウ科を訪花した昆虫のうち最も多いのが双迩 目で114個体(リンドウ科訪花昆虫中35%)でありハ ナアブ類は79個体である。膜迩目は104個体うちハナ バチ類70個体,甲虫目93個体,鱗迩目12個体,直通目

4個体,半迩目1個体である。

イワイチョウに甲虫目(ハムシ類)が多く訪花した。

4−5.ツツジ科

ツ ツ ジ 科 で 昆 虫 の 訪 花 し た 植 物 は 5 種 。 ツ ツ ジ 科 を 訪れた昆虫は全訪花昆虫中6%5目247個体であり,

オオコメツツジが多くを占め,5目155個体(ツツジ 科全体の63%)であり,次いで,クロウスゴ69個体

(28%)である。

ツツジ科は6月下旬から8月中旬に訪花され,前半 6月下旬から7月中旬はクロウスゴヘ後半7月下旬か ら8月上旬はオオコメツツジへの訪花が主である。ツ ツジ科を訪花した昆虫中最も多いのは,膜迩目で193 個体(ツツジ科訪花昆虫中78%)うち189個体がハナ バチ類であり,うち147個体がマルハナバチ類である。

鱗迩目27個体うちガ類22個体,双迩目17個体,甲虫5 個体,長迩目5個体である。オオコメツツジ,クロウ スゴともにマルハナバチ類が多かった。

4 − 6 ユ リ 科

ユリ科は6種が訪花され,全訪花昆虫中5%4目19 6個体が訪花した。6月下旬から9月上旬に訪花が見

られ,7月中旬(主にゼンテイカ)と9月上旬(主に イワショウブ)に多く各々60個体,94個体である。ユ リ科の32%62個体が膜迩目でうち59個体がハナバチ類,

31%61個体が双迩目うちハナアブは43個体であった。

鱗迩目59個体うちチョウ類51個体,甲虫目14個体であっ た。イワショウブ109個体,ゼンテイカ72個体がユリ 科中で多い種であった。

4−7.セリ科

セ リ 科 . は 5 種 が 訪 花 さ れ , 全 訪 花 昆 虫 中 4 % 5 目

12

163個体が訪花した。7月中旬から9月上旬に訪花が 見られ,7月下旬が最も多く64個体であった。

双迩目82個体(セリ科の50%)うちハナアブ56個体,

膜迩目57個体うちハナバチ25個体,甲虫目17個体,半 迩目5個体,鱗迩目2個体であった。

5.植物各種への訪花昆虫 5−1.ナナカマド

最も訪花個体を集めた種で,バラ科訪花の44%が本 種を訪れた。全訪花個体数の10%6目376個体,膜迩 目155個体(ナナカマド全体の41%)うちハナバチ類 85個体アリ類64個体,甲虫目106個体(28%)中でも カミキリムシ類が多く50個体が訪花した。最も多く甲 虫類およびカミキリムシ類が訪れた花である。双迩目 100個体(27%)うちハナアブ類59個体,長迩目8個 体,鱗迩目6個体,脈迩目1個体が本種を訪花した。

6月下旬から8月上旬まで昆虫の訪花が見られ6月 下 旬 ・ 8 月 上 旬 で は 各 調 査 日 の 最 も 訪 花 個 体 を 集 め た 種であり,各々58個体(24%)133個体(20%),7月 中旬は2番目138個体(22%)と開花期を通じ全般的 に上位を占める。

5−2.ゴマナ

ナナカマドに次ぎ2番目に訪花個体を集めた種で,

キク科訪花個体の32%を集めた。全体の9%5目366 個体,膜迩目233個体(ゴマナ中64%)うちハナバチ 類207個体,双迩目75個体(20%)うちハナアブ類36 個体,鱗迩目42個体,甲虫目15個体,直通目l個体が 本種を訪花した。マルハナバチ以外のハナバチ類がもっ とも多く来た花であり,チョウ類が2番目に多く訪花 した花である(41個体で,ベニヒカゲ23個体,コヒョ ウモン18個体)。

9月上旬から9月下旬まで訪花が見られ,各々191 個体(30%),175個体(39%)で各々の調査日で最も 多く訪花された花である。

5−3.ウラジロタデ

全体で第3番目に訪花昆虫を集め,8%5目316個 タデ科の61%を集めた。

膜迩目127個体(ウラジロタデ中40%)うちハナバ チ類が59個体で,アリ類(54個体)がナナカマドに次 い で 2 番 目 に 多 く 来 た 種 で あ る 。 双 迩 目 9 8 個 体 (31%)内ハナアブ類53個体,甲虫目70個体(22%),

鱗迩目18個体(チョウ類14個体),長迩目3個体が訪 花した。

7月中旬から9月下旬に訪花が見られ,7月下旬と 8月中旬が多く各々113個体(15%)と101個体 (20%)であり,7月下旬では最も多く訪花された花

(14)

立 山 亜 高 山 弥 陀 ヶ 原 高 原 に お け る 訪 花 昆 虫 調 査

訪花個体の20%を集めた。双迩目84個体うちハナアブ 類76個体,膜迩目は49個体で内ハナバチ類46個体,鱗 迩目(全てチョウ類で,コヒョウモン18個体,ベニヒ カゲ16個体)34個体,他5個体。7月下旬から9月下 旬に訪花が見られた。最も多くハナアブ類が訪花した 種である。

5−10.オオコメツツジ

訪花昆虫全体の4%5目155個体が訪花し,ツツシ 科訪花個体の63%を集めた。7月下旬から8月中旬に 訪花が認められ,膜迩目104個体うちマルハナバチ以 外のハナバチ類18個体,マルハナバチ類85個体,鱗迩 目24個体,双迩目17個体,他10個体であった。アザミ 類に次いでマルハナバチ類が多く訪花した。

5−11.タテヤマリンドウ

訪花昆虫全体の3%4目111個体が訪花し,リンド ウ科訪花個体の34%を集めた。7月中旬から8月中旬 に訪花が認められ,7月下旬が最多で68個体であった。

双迩目69個体うちハナアブ類54個体,膜迩目31個体 (全てハナバチ類),鱗迩目8個体(内チョウ7個体),

直通目3個体であった。

5‑12.イワショウブ

訪花昆虫全体の3%4目109個体が訪花し,ユリ科 訪花個体の56%を集めた。8月上旬から9月上旬に訪 花が認められ,9月上旬が最多で94個体,その調査日 ではゴマナに次ぐ2番目(15%)に多く訪花された。

鱗迩目55個体うちチョウ類48個体(ベニヒカゲ37個体,

コヒヨウモン11個体),膜迩目35個ハナバチ類34個体,

双迩目18個体ハナアブ類16個体,甲虫目1個体であっ た。最も多くチョウ類が訪花した種である。

5−13.ゼンテイカ

訪花昆虫全体の2%4目72個体が訪花し,ユリ科訪 花個体の37%を集めた。7月中旬から8月中旬に訪花 が認められ,7月下旬が最多で50個体であった。双迩 目30個体,膜迩目26個体,甲虫目13個体,鱗迩目3個 体であった。鱗迩目はミヤマカラスアゲハ2個体,コ チャバネセセリl個体であったが,他の昆虫類は柱頭 に触れないことが多く花粉媒介はミヤマカラスアゲノI によるところが大きいと考えられる。

5−14.クロウスゴ

69個体が訪花し,ツツジ科訪花個体の28%を集めた。

6月下旬から7月下旬に訪花が認められ,7月中旬が 最多で41個体であった。全て膜迩目で,うちマルハナ バチ類47個体であった。

5−15.オオハナウド

4目55個体が訪花し,セリ科中34%を集めた。7月 中旬から8月中旬に訪花が認められ,双迩目40個体う であり,8月中旬ではイタドリに次いで2番目に多く

訪花された。

5−4.チングルマ

訪花昆虫全体の7%5目260個体が訪花し,バラ科 訪花個体の30%を集めた。膜迩目153個体(チングル マ中59%)うちハナバチ類150個体そのうちマルハナ バチ類14個体でマルハナバチ以外のハナバチ類が2番 目に多く訪花した。双迩目68個体うちハナアブ類48個 体,甲虫目24個体,直通目14個体,鱗迩目1個体が訪 花した。

6月下旬から8月上旬に訪花が見られ,7月中旬は 180個体(チングルマ全体の69%)が訪花し,その調 査日中では最も多く(29%)訪花された。

5−5.イワイチョウ

訪花昆虫全体の5%6目214個体が訪花し,リンド ウ科訪花個体の65%を集めた。6月下旬から8月中旬 に訪花が見られ,7月下旬は83個体でその調査日中で ウラジロタデに次2番に多く(11%)訪花された。

甲虫目(ほとんど全てハムシ類(91個体))93個体,

双迩目45個体うちハナアブ類が25個体,膜迩目70個 体うちハナバチ類36個体アリ類32個体,鱗迩目4個体,

直通目l個体,半迩目l個体が訪花した。

5 − 6 . イ タ ド リ

訪花昆虫全体の5%5目205個体が訪花し,タデ科 訪花個体の39%を集めた。7月中旬から9月下旬に訪 花が見られ,8月中旬に多く112個体(イタドリ全体 の55%)であり,その調査日中最も多く(22%)訪花 された。双迩目76個体うちハナアブ43個体,膜迩目86 個体うちハナバチ類49個体アリ類29個体,甲虫目18個 体が訪花した。

5−7.アザミ類

訪花昆虫全体の5%4目204個体が訪花し,キク科 訪花個体の18%を集めた。7月中旬から9月下旬に訪 花が見られ,8月中旬が最も多く52個体であった。膜 迩目(全てハナバチ類)146個体うちマルハナバチ類 107個体,双迩目16個体,鱗迩目40個体(主にチョウ 類で36個体)直通目2個体が訪花した。

5−8.クモマニガナ

訪花昆虫全体の5%6目190個体が訪花し,キク科 訪花個体の17%を集めた。膜迩目92個体うちハナバ チ類78個体,双迩目65個体うちハナアブ類が47個体,

甲虫目15個体,鱗迩目は16個体,他2個体であった。

7月中旬から8月中旬に訪花が確認され,7月中旬が 最多で69個体であった。

5 − 9 . ミ ヤ マ ワ レ モ コ ウ

訪花昆虫全体の4%5目172個体が訪花し,バラ科

の○

44ユ

(15)

根 来

ちハナアブ類35個体,膜迩目8個体,鱗迩目1個体,

甲虫目6個体であった。

6 主 な 花 粉 媒 介 昆 虫 別 の 植 物 リ ス ト

今回の訪花昆虫観察から,主な花粉媒介昆虫と思わ れるもの別の植物リストを以下に掲げる。

6−1.マルハナバチ類が主体と推定される種

アザミ類,エゾシオガマ,オオコメツツジ,タテヤ マ ウ ツ ボ グ サ

6−2.マルハナバチ類とその他のハナバチ類が主体 と 推 定 さ れ る 種

ク ロ ウ ス ゴ

6−3.マルハナバチ類以外のハナバチ類が主体と推 定 さ れ る 種

ウメバチソウ,ゴマナ,タカネコウゾリナ,チング ルマ,ミヤマアキノキリンソウ,ヤマハハコ

6−4.ハナアブ類が主体と推定される種 オ オ ハ ナ ウ ド

6−5.ハナアブ類とハナバチ類が主体と推定される

イワイチョウ,クモマニガナ,タテヤマリンドウ 6−6.その他,多くのグループ.による種

イタドリ,イワイチョウ,ウラジロタデ,ナナカマ ド , ミ ヤ マ ワ レ モ コ ウ

一応以上の様に区分してみた。ただし,これはほと んど訪花個体数によるものであり,それに多少訪花効 率 を 勘 案 し た も の か ら の 推 定 で あ る 。 実 際 の 花 粉 媒 介 者とそれらの媒介効率は,訪花個体数のみでなく,訪 花効率や訪花忠実度,運搬花粉量等も関係するもので あり,今後より多くの各種の観察研究によって,個々 の場所個々の種について,より正確なものにしていか ねばならない。

ま と め

立山弥陀ケ原高原における6月下旬〜10月中旬の8 日間の訪花昆虫調査の結果,9目約4千個体の昆虫の 訪花が確認された。内訳は,膜迩目1971個体(全訪花

44

個体の51%),双迩目1088個体(28%),甲虫目426個 体(11%),鱗迩目351個体(9%),他の目57個体で あった。

膜迩目中ではハナバチ類(1602個体),双迩目中で はハナアブ類(669個体)が多くを占めた。

24科66種の植物への訪花が確認され,うちキク科が 12種で最も多かった。訪花個体数は,キク科1131個体 (29%),バラ科859個体(22%),タデ科521個体(13

%),以下リンドウ科328個体,ツツジ科247個体,ユ リ科196個体,セリ科163個体が多い科であった。ナナ カマド,ゴマナ,ウラジロタデ,イワイチョウ,イタ ドリ,アザミ類,クモナニガナ,ミヤマワレモコウ,

オオコメツツジが上位十種であった。

7月下旬と9月上旬に訪花個体数のピークが認めら れ,748個体(19%)および636個体(16%)である。

これらのピークは主に双迩目ハナアブ類および膜迩目 ハナバチ類による。全般的な季節消長にはハナバチ類,

ハナアブ類の寄与が大きい。

訪花期は,7月中旬までと7月下旬と8月,9月以 降とに大きく3分される。9月下旬以降は,キク科へ の訪花が大変多く,7月中旬以前はバラ科・ヤナギ科・

キンポウゲ科が多く訪花される。7月下旬と8月は,

キク科・バラ科・ツツジ科・タデ科・リンドウ科など 多くの科が訪花される。

文 献

根来尚,1997.ファミリーパーク地内の訪花昆虫調 査 . フ ァ ミ リ ー パ ー ク 地 内 自 然 環 境 総 合 調 査 報 告

(富山市フアミリーパーク公社):56‑68

根来尚,2000.立山亜高山域弥陀ケ原におけるハナ バ チ 相 の 生 態 的 調 査 . 富 山 市 科 学 文 化 セ ン タ ー 研 究報告,23:127‑139.

根来尚,2002.立山高山帯室堂平周辺における訪花 昆虫調査.富山市科学文化センター研究報告,25:

2339

根来尚,2003.立山高山帯における訪花昆虫調査へ の追加富山市科学文化センター研究報告.26:

73‑101.

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