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暴力映像が攻撃行動に及ぼす影響

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(1)

暴力映像が攻撃行動に及ぼす影響

著者 伊藤 安代

雑誌名 東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学

巻 46

ページ 151‑158

発行年 2006

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009197/

(2)

暴力映像が攻撃行動に及ぼす影響

  伊藤 安代

(平成17年10月6日受理)

The Effects of Media Violence on Aggression

   ITO, Yasuyo

(Received on October 6,2005)

キーワード:暴力映像,攻撃行動,反戦映画,苦痛描写映像

Key words:media violence, aggressive behavior, antiwar films, pain−cues film

1.はじめに

 近年,青少年犯罪の凶悪化や犯罪の増加が懸念されて いる.最近起こった青少年犯罪としては,神戸連続児童 殺傷事件や長崎小6女児殺害事件があげられる.これら の事件では,残虐な映画やテレビ等に影響を受けた可能 性があると報道された.その結果,テレビ・映画等のメ ディアに描かれる暴力(以下,暴力映像と略記)の影響 が指摘されるようになってきている.

 この問題に関して,アメリカでは1960年代から盛んに 研究されてきた.そして,その結果,暴力映像は攻撃行 動を促進するという説が有力となっている.これらの実 験研究の多くは挑発操作によって被験者の怒りを喚起し ており,怒りが喚起されている方が攻撃行動を促進しや すいといった結果を報告しているD.しかし,逆に,挑 発操作が行われていない場合には攻撃行動を促進しない という結果も報告されている2).また,暴力行為を受け た時の苦痛に焦点をあてている映像(苦痛描写映像)は 挑発を受けた場合には攻撃行動を促進し,受けていない 場合には抑制的に働くといった研究もある3).

 これに対して,日本ではテレビ番組の内容分析や暴力 映像の種類・特性に関する研究が多く行われている.テ レビ番組の内容分析では,日本のテレビ番組でもアメリ カのテレビ番組に匹敵するほどたくさんの暴力映像が放 送されており,日本製の方がアメリカ製の番組よりも暴 力場面の持続時間が長く,暴力行為に伴う苦痛の描写の

割合が高いことが報告されている4).

 また,様々な種類の暴力映像をひとっにまとめて論じ るのは問題であり,その種類や性質によって異なる効果 があるのではないかという見解を主張している研究もあ

る5)°6).そこで注目すべきなのは,反戦映画というジャ

ンルである.反戦映画は,戦争という暴力行為を二度と 繰り返してはならないといった,暴力行為に対する批判 的なメッセージが含まれている,それでは,暴力行為を 批判的に描いた暴力映像は,視聴者に暴力行為がいけな いことであると伝え,攻撃行動を抑制させることができ るのであろうか.そこで,本研究では,反戦映画のよう に暴力行為に対する批判を込めて製作された暴力映像が 視聴者の攻撃行動に与える影響に関して実験的に検討す

ることにした.

国際コミュニケーション科

皿.調 査(1)

1.目的

 戦争映画には大きく分けて「娯楽的な好戦映画」と

「反戦映画」に分けることができる.そこで,まず,こ れまで公開されてきた戦争映画を反戦映画と好戦映画と に分類し,反戦か好戦かによって映像表現に違いがみら れるのか調査することにした.この問題に関して,以下 のような仮説が考えられる.

仮説 反戦映画は戦争の悲惨さや自分がいかにひどい目   に遭ったかを訴える目的で製作されているため,戦   争の非暴力者がより多く描かれる傾向があるだろう.

 そこで,本研究の調査(1)では,戦争映画を反戦映

画と好戦映画とに分類し,暴力行為の描写に違いが見ら

(3)

伊藤 安代

れるのか検討することで,上記の仮説を検討することに

した.

 この調査における暴力とは,「人が素手による身体的 かっ直接的な(殴る,蹴る),道具による間接的な(銃 で撃っ,刀で切る),言語的な(侮辱する,ののしる),

危害を相手に与える行為や,人間以外の生物や物を傷っ けたり壊したりする行為」とした.

2.方法

(1)調査対象となった映画

 戦争映画に関する著作本7)〜9)で紹介されている戦争 映画の中から,日本で公開,もしくはテレビ等で放送さ れたことがあり,映像が入手可能なものに限定した.ま た,日本の戦争映画には反戦映画が多く,製作された戦 争映画のジャンルに偏りがあると思われるたあ,日本製 の戦争映画以外の34本を対象とした.

(2)調査方法

 調査対象となった映画が録画されているビデオテープ を最初から視聴し,暴力映像が出てくるたびにテープを 巻き戻してその持続時間を計測した.それと同時に,非 暴力者(怪我人または死体)の数,流血の程度等の該当 事項を,調査用紙に記入していった,

 暴力行為が行われている場面(暴力部分)については,

暴力を受けていた人数・その際の出血の度合い(5段階 評定)・暴力を受けた人が声を上げて痛がっているシー ンのコマ数・死亡する瞬間が描かれている非暴力者の数 を測定した.

 暴力行為が行われていない場面(ドラマ場面)に関し ては,非暴力者が登場する場面(暴力シーン)の持続時 間・出血の度合いを,手術や治療の場面ではその場面の シーンのコマ数・持続時間・患者の出血の度合い・苦痛 描写のシーンのコマ数とその時間を測定した.

 反戦,好戦映画の分類は,すべての映画を視聴した2 名の評定者が行った.評定者間の一致率は97,06%,一 致係数はα=.94であった.評定者の意見が分かれた映 画については,評定者間の話し合いで決定した.

 この分類に基づいて反戦映画,好戦映画の2群に分け,

測定した映像表現に関する各指標に差があるのか分析し

た.

3.結果と考察

好戦映画と反戦映画に分類して,測定した各指標の平

均点を算出した.これらに関して,t検定を行った結果,

ドラマ部分では非暴力者の登場する割合・登場したコマ の数・非暴力者が登場する場面の時間(秒)・非暴力者 の数・その時の出血の度合いに有意な差がでた.主人公 以外が手術や治療を受けているシーンでは,コマの数に 有意な差が,出血の度合いに有意傾向がみられた.暴力 部分では,反戦映画の方が1コマの平均時間に有意な差 が,暴力行為に伴う苦痛描写が描かれる割合に有意傾向 がみられた.また,主人公が暴力行為を受けた場合のそ の回数に有意傾向が見られ,民間人が暴力行為を受けた 場合には非暴力者の数・出血の度合いに有意な差が出た

(表1参照).

 以上の結果から,反戦映画における暴力映像は,1コ マの平均時間が長く,非暴力者が登場する割合が高いこ とがわかった.また,暴力行為を受けた時の出血や苦痛 をより強調するような特徴を持っているということがわ かった.したがって,本研究の仮説は支持された.

皿,調 査(2)

1.目的

 調査(1)の結果から,反戦映画は好戦映画と比較し て出血が多く,非暴力者の苦痛が描かれる割合が高いと いう傾向が見られた.これはHartmannの研究3)で使用 された暴力映像と同様の特徴を持っていることから,苦 痛描写映像であるといえる.また,反戦映画の方が暴力 場面の1っ1っのコマの持続時間が長いということもわ かった.このような傾向は,岩男4)によって示されて いる日本製の暴力映像の特徴と類似しているといえる.

 そこで,苦痛描写映像が視聴者の攻撃行動を抑制する かを検討することを目的に実験を行うことにした.

 しかし,苦痛描写映像といっても,苦痛の描き方や暴 力行為には様々な種類があり,どのような映像が視聴者 の共感をもたらすかにっいては明らかとなっていない.

したがって,実験を行う前に,まず,視聴者が最も共感 しやすい苦痛描写映像がどのようなものなのかにっいて,

検討する必要があると思われる.

 そこで,調査(2)では実験で用いる苦痛描写映像を 選択することを目的とした.

2.方法

(1)刺激映像

苦痛描写が含まれていて, 暴力行為を行っている場面

(4)

表1 戦争映画の内容に関する各指標の平均値(標準偏差)

好戦映画 反戦映画

犠牲者の登場シーン(暴力シーン)のコマの総数

15.21(12.61) 34.35(30.42)   **

犠牲者が登場する割合 12.18(10.51) 35.67(29.87)   ***

死体の数 7.21(7.26) 14.25(8,62)   **

ドラマ部分  犠牲者の登場シーン

出血の度合いの平均 1.28(.76) 1.65(.36)

時間(秒) 77.71(69.82)   232.90(151.80)  ***

主人公以外の人が手術・治療を

受けるシーン

コマの数

15.21(12.61) 34.35(30.42)   **

出血の度合いの平均 .07(.26) .69(1。29)

1コマの平均時間 2.82(.62) 5.14(2.70)

***

暴力行為に伴う苦痛描写の割合 2.81(1.50) 4.46(3.38)

暴力部分  主人公が暴力行為を受けた場合  暴力行為の回数 .36(.84) 1.20(1.47)

       犠牲者の数 民間人が暴力行為を受けた場合

.29(.47) 4.40(.96)

**

出血の度合いの平均 .29(.47) .98(.96)

**

*p<.10,**p<.05,***p〈.01

表2調査■(2)で使用した映像とその内容

映像 内容

ロツキー3

主人公のロッキーがかつて一度戦って負けたことのあるライバルと再び対戦し,

且閧ェ優勢で主人公が一方的に殴られているシーンを中心とした映像.

戦争のはらわた 主人公の部下を故意に攻撃し,重症を負わせた上官を銃で攻撃する場面で,

U撃された上官の方に焦点をあてている映像

プラトーン 意見の食い違いから仲間を見殺しにした仲間と主人公が素手で殴り合いをし,

ナ後に主人公が仲間にナイフを向けられるという場面を中心とした映像

青春の殺人者 主人公が母親をナイフで殺害するシーンで,暴力行為が直接的には描かれておらず,

暴力者である母親の苦痛の声や表情に焦点をあてている映像.

バトル・ロワイヤル 主人公が生徒同士の殺し合いを命令した先生を機関銃で攻撃する映像.

の1っのシーンの持続時間が長いものを選択し,各映像 にっいて暴力場面と苦痛描写の場面を中心に抜粋した約 3分間の映像を用意した.その際①フィクション映像 であること,②コメディ・ポルノ・恐怖映像・アニメー ションは除く,③複数のジャンルにまたがっていないこ と,④傷口から臓器が見えるといった描写が過激すぎな いものであることを基準に5種類の映像を選択した(表

2参照).また,調査(2)における 暴力ttとは「人が,

(a)素手によって身体的かつ直接的に(殴る,蹴る),

(b)道具を用いて間接的に(銃で撃つ,刃物で斬る)

相手を傷っけようとする行為」と定義した.

(2)被験者

 大学院生17名(女性13名,男性4名),と関東近郊に

住む男性8名の合計25名.そのうち回答に不備がなかっ た22名(女性11名,男性11名)を対象とした.

(3)手続き

 被験者は,5種類の刺激映像の各映像を視聴すること に①映像の印象②視聴して生じる感情,③苦痛の度合 いの評定を行った,①映像の印象は,湯川・吉田6)で 使用されていたものを参考にした7項目,②視聴して生

じる感情も,湯川・吉田6)の12項目,③苦痛の度合い は,「痛みがよく伝わってきた」等の5項目とした.い ずれの項目も1(全くそう思わない)から6(非常にそ

う思う)の6段階評定であった.

 最後に暴力映像がまったく含まれていない中性的なア

ニメーションを約5分間視聴した.

(5)

伊藤 安代

3.結果と考察

 映像の印象に関する項目にっいて,それぞれの項目の 平均値を求めた.また,視聴して生じる感情については,

湯川・吉田6)の因子分析に基づいて不快感情得点,快 感情得点,虚無感情得点を算出し,各得点にっいて映像 を要因とする1要因分散分析を行った結果,不快感情に おいて主効果が有意であった(F(4,95)=2.73,p<.05).

また虚無感情において主効果が有意傾向であった(F

(4,95)ニ2.34,p<.10).苦痛の度合いに関しては,5項

目の合計得点の平均値を算出し,性および映像を要因と する2要因分散分析を行った.その結果,性および映像

の主効果が有意であった(F(1,4);10.19,p<.01).多

重比較から,他のどの映像よりも『青春の殺人者』が有

意に高かった.

 以上の結果から,『青春の殺人者』は衝撃的で残酷な 暴力性の高い暴力映像であり,視聴者が非暴力者の苦痛 に最も共感しやすい映像であるということがわかった.

さらに,男性より女性の方が全体的に高く評定する傾向 が見られた(図1参照).このことから,女性の方が男 性よりも非暴力者の苦痛に共感しやすいことがわかった.

IV.実  験 1.目的

 調査(1)の結果から,反戦映画では苦痛描写映像が 多く描かれる傾向があるということがわかった.さらに,

この特徴が日本で放送されている暴力映像の特徴と重な ることもわかった,また,調査(2)からは女性のほう が男性よりも非暴力者の苦痛に共感しやすいということ がわかった.

 そこで,反戦映画でよく描かれていた非暴力者や非暴 力者の苦痛に焦点をあてている苦痛描写映像が女性の攻 撃行動にどのような効果を及ぼすかについて実験的に検 討しようと考えた.今回の実験で用いる暴力映像も苦痛 描写映像であるからして,Hartmannの研究3)と同様の 結果が予想される.したがって,本実験における仮説は

以下のようになる.

仮説 苦痛描写映像は,挑発操作によって怒りが喚起さ   れている場合には攻撃行動を促進し,怒りが喚起さ   れていない場合には攻撃行動を抑制するであろう.

 本研究では,苦痛描写映像と視聴前挑発の効果を攻撃 的な情動や行動といった側面から実験的に検討すること により,上記の仮説を検討することにした.

2.方法

(1)実験計画

 映像の種類(2水準),視聴前挑発(怒り喚起操作)

の有無(2水準)を要因とする2要因被験者間計画.

(2)被験者

 大学生女子52名.映像×挑発の4条件の各セルに被験 者を13名ずっ配置した.そのうち,質問紙の回答や攻撃

30

25

0   5   0 リム    コ     苦痛得点の平均

5

0

ロッキー3

戦争のはらわた   プラトーン   青春の殺人者       映像

 図1 各映像の性別ごとの苦痛得点の平均

口男性

■女性

バトルロワイヤル

(6)

行動の測定に不備がなかった46名を対象にした.

(3)刺激映像

 (a)調査(2)で最も苦痛が共感されやすかった

『青春の殺人者』の映像を,(b)暴力映像が全く含まれ ない統制映像として『世界の車窓から』(海外の鉄道内 の様子や鉄道沿線の風景を描写した紀行番組)を使用し た.2種類の映像とも放映時間は約3分間であった.

(4)手続き  ①挑発操作

  映像の評価と感情に与える影響に関する研究 とい う名目で被験者は1名ずっ,被験者を装った実験協力者

(以下,サクラとよぶ)とともに実験に参加した.まず,

映像を見て評価する前に最低限の文章力があるかどうか を確認する目的で200字程度の簡単な作文を書き,それ を交換してチェックするよう教示した.その際半数の 被験者はサクラに自分の作文を侮辱されるという挑発操

作を受けた.

 ②多面的感情状態尺度(短縮版),STAX旧本語版の   状態怒り尺度

 多面的感情状態尺度(短縮版)で挑発操作後の「抑う っ・不安」等の8種類の感情状態を測定した.また,

STAXI日本語版の状態怒り尺度で怒りの状態を測定し た.いずれの尺度も1(まったく感じていない)〜4

(はっきり感じている)の4段階評定であった.

 ③映像提示

 題名と概略を述べた後に,約3分間放映した.

 ④映像視聴によって生じた感情の評定,STAXI日本   語版の状態怒り尺度

 ②と同じ質問紙を使用し,映像視聴後の感情状態と怒

りの状態を測定した.

 ⑤映像の感想文

 提示された映像の感想を200字程度書くよう教示した.

 ⑥攻撃行動の測定

 もう一人の実験者が実験を行いたいので別室に移動す るようにと教示し,被験者とサクラは別室に移動した.

そこで1 相手に罰を与えるときの感情の変化の研究ltと いう名目で,教師役か生徒役になり,教師役は生徒役に

〈なぞなぞ〉を出題し,生徒役が間違えた場合に罰とし てブザー音を与えると教示した(細工されたくじにより,

被験者が教師役,サクラが生徒役に必ずなるよう設定さ れている).ブザー音には10段階の音量レベルがあり,

被験者が自由に設定できるようになっている.サクラは

被験者にかかわらず提示された10問のうち3問のみ正解 する.サクラが正解しない問題で被験者が設定したレベ ルとブザー音の回数・持続時間を測定し,平均値を算出

した.

 ⑦デブリーフィング

 被験者にこの実験の本当の目的にっいて十分な説明を 行った.

3.結果と考察

(1)実験操作の妥当性

 挑発操作直後のSTAXI日本語版の状態怒り尺度と多 面的感情状態尺度(短縮版)の「敵意」得点にっいて,

挑発を要因とする1要因分散分析を行った.その結果,

多面的感情状態尺度(短縮版)の「敵意」得点で挑発あ

り条件の方が有意に高かった(F(1,47)=.51,p<.01).

したがって,本研究の挑発操作は妥当であったと考えら

れる.

(2)視聴前後の質問紙

 視聴前後に行った多面的感情状態尺度(短縮版)と STAXI日本語版の状態怒り尺度の各尺度得点の平均値 を算出し,各群の映像視聴前と映像視聴後の得点の差に 関してt検定を行った.

 その結果,苦痛描写映像は,挑発操作の有無に関係な く視聴者の怒りを促進することがわかった(図2参照).

しかし,挑発操作によって怒りが喚起されている場合に は,喚起されていない場合よりもその促進効果が抑制さ

れる可能性が示された.

(3)攻撃行動

 ブザー音の設定レベルに関しては,挑発操作によって 怒りが喚起されている場合に,攻撃行動を促進する傾向

が見られた(t(21)=−1.90,p〈.10).また,怒りが喚

起されていない場合には攻撃行動を抑制する傾向が見ら

れた(図3参照).

 しかしながら,ブザー音の持続時間や回数に関しては 抑制効果が見られなかった(図4,5参照).

 ブザー音の設定レベルは一度自分で考えてから意識的 に設定するものであり,そのような攻撃行動は苦痛描写 映像による非暴力者の苦痛に共感したため,抑制された と考えられる.しかし,ブザー音を押す時間や回数は,

その都度考えるというよりその場で直感的に行われる攻 撃行動であるため,非暴力者への苦痛に共感しても促進

される可能性があると考えられる.

(7)

伊藤 安代

17

口敵意視聴前

■敵意視聴後

口STAXI日本語版(状態怒り尺度)視聴前 圏STAXI日本語版(状態怒り尺度)視聴後

3      

0り

得点の平均

5

図2 群ごとの視聴前後の各尺度得点の平均

 5.00

設 定4・50

た4・OO

 3.50

ベ ル

 3.00

の 平2.50 均

 2.00

あり

挑発

なし

ロ世界の車窓から

■青春の殺人者

図3 ブザー音の設定レベルの平均

 5.00

続4.50

間4・OO の

 3.50

均3.00

秒2.50  2.00

口世界の車窓から

■青春の殺人者

   あり      なし        挑発

図4 ブザー音の持続時間の平均(秒)

(8)

押9.00

た8・50 回8.00

の7.50

均7・00  6.50

)6.00

     あり      なし       挑発

図5 ブザー音を押した回数の平均(回)

 したがって,苦痛描写映像は,挑発操作によって怒り が喚起されている場合には攻撃行動を促進し,喚起され ていない場合には意識的に操作できる攻撃行動のみを抑 制し,意識が及ばない攻撃行動は促進すると考えられる.

 また,本実験で測定された攻撃行動にっいては,挑発 がなかった群よりも挑発があった群の方が全体的に低く なっている.特に,ブザー音の回数には有意傾向が見ら

れた(t(21)=−1.97,p<.10).これは,先行研究の知

見と一致しない結果であり,検討する必要がある.

V.総合考察 1.本研究のまとめ

 本研究では,暴力映像の一種である反戦映画に注目し て研究してきた.まず,調査(1)で戦争映画の内容分 析を行った結果,反戦映画は暴力行為を描いているシー ンの継続時間が相対的に長く,苦痛描写映像を多く含む 傾向があるという特徴が見られた.そこで,調査(2)

では,視聴者に最も苦痛が伝わる映像が選択し,男性よ りも女性の方が苦痛に共感しやすいということがわかっ

た.

 そこで女性が苦痛描写映像を視聴した場合に,その後 の攻撃行動が抑制されるか実験を行ったところ,苦痛描 写映像は攻撃的な情動を促進することがわかった.また,

攻撃行動に関しては,顕在的な攻撃行動は抑えられる可 能性があるが,自分の意識で操作することが少ない潜在 的な攻撃行動は促進される可能性が示された.

 したがって,暴力行為を批判的に描いていたとしても,

暴力映像は視聴者の攻撃行動を促進するという可能性が

示唆された.

 また,本研究の実験では挑発操作によって怒りが喚起 された群よりも,挑発操作がなかった群の方が平均的に 高くなっていた.これは性別による差であるとも考えら

れる.

 男性は,挑発操作で喚起された怒りをそのまま攻撃行 動に表出するが,女性の場合には,相手からの報復行為 が怖いために,自らの攻撃行動を意識的に抑えようとす る傾向があるのではないだろうか.あるいは,本実験の 挑発操作では,実験協力者が被験者の文章力を指摘する

という方法を用いた.そのため,攻撃行動測定時に表出 した自らの攻撃行動により,自分の評価が下がることを 恐れたために攻撃行動を抑制したと考えることもできる.

これらに関してはさらなる研究が必要であると思われる.

2.本研究の問題点と今後の課題

 本研究では,挑発操作を組み込んだ実験を中心に行っ た.このようなタイプの実験研究は,自然状況からかけ 離れているという短所を持っている.そのため,ここで 得られた結果を現実の世界に当てはめて考えられるかど うかは疑問である.したがって,さらに詳しい研究が必 要であり,暴力映像に対する視聴者の対応の仕方に関し ても考えていく必要がある.

謝  辞

 本論文を作成するにあたり,調査や実験にご協力いた だいたみなさまに深く感謝いたします.また,論文の作 成を支えてくださった友人たちにも深く感謝いたします.

そして,最後まで丁寧に温かくご指導いただきました西 村純一教授,平澤尚孝助教授,越智啓太助教授に心より

御礼申し上げます.

引用・参考文献

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2)Donnerstein, E., Donnerstein, M.,&Barrent, G.

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3)Hartmann, D.1969. Influence of symbolically

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伊藤 安代

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5)湯川進太郎・遠藤公久・吉田富二雄 2001暴力映    像が攻撃行動に及ぼす影響一挑発による怒り喚起の

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6)湯川進太郎・吉田富二雄 1999暴力映像が攻撃行    動に及ぼす影響一攻撃行動は攻撃的な認知および情

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   94−103,

7)大久保義信 2003 徹底分析戦争映画100!バトル

   &ウェポン 光人社

8)瀬戸川宗太 1998 戦争映画館 社会思想 9)柳沢一博 1995 戦争映画名作選一第2次世界大戦

   ガイド 集英社

Abstract

  Most anti−war films representing a form of media violence are made with the intention of controlling the aggressive tendencies of viewers. In the present study the effects of aggressive behavior following exposure to such media violence was investigated.

  The results revealed that(a)the time of the scenes depicting violence were relatively longer in the anti−war films than those movies in favor and also that(b)the victim零s pain was further emphasized in the former category of movie than the latter.

Following which, the film(pain・cues film)from which this feature was seen was selected as part of prelimi−

nary experiment, and an experiment conducted in which 46 female undergraduates participated. Before view−

ing either of two types of videos(pain−cues or control film respectively), half of the audience of subjects were

provoked by a confederate posing as another subject. Finally, the subjects冒aggressive behavior toward the confederate was measured after viewing.

  Consequently, the subjects aggressive emotions were found to have increased when viewing the pain−cues

film. Moreover, tendencies to facilitate aggressive behavior and promote an attacking attitude were shown.

Therefore, the possibility of the media violence intended to control the aggressive behavior of the viewer, ac−

tually facilitated it.

参照

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