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通常の保育園に在籍する発達に困難を抱える幼児の心理臨床的発達援助に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)通常の保育園に在籍する発達に困難を抱える幼児の 心理臨床的発達援助に関する研究 キ ー ワ ー ド :「 気 に な る 子 」、 発 達 援 助 、 保 育 園 支 援 、 保 育 士. 人間共生システム専攻 橋本. 本研究は事例研究であり、プライバシー保護のため概 要のみを記す。. 亜希子. ①保育士に対してどのように援助・介入していくこと で、保育士の不安が軽減され、対象児への関わりが 変わるのか. 1.はじめに 近年、就学前の障害児の保育の場が「分離保育」から 「統合保育」へと移り変わってきた。統合保育のデメリ. ②保育士と園長との関係 ③直接的に保護者に関わらずに保育園と保護者、保育 士と保護者と関係を支援していく方向性. ットも指摘される中、メリットも期待されており、障害. を中心に、保育士を支援の対象とし、保育士を支援して. 児の生活の場は療育施設から一般の幼稚園・保育園と移. いくことで「発達に困難を抱える子ども」への発達援助. 行することが予測されている(中坪・上田 2000)この. を行なう方向性を示す事を本研究の目的とする。. ように、保育園に在籍する障害児が増加する一方で、保 育者の加配などの保育条件は極めて不十分で、地域間格. 2.事例の概要. 差も大きいという状況が見られる。さらに、巡回相談な. 【対象保育士】保育士7年目の中堅保育士。これまでの. ども不十分な点が多く、保育士や園長が抱える不安や悩. 障害児の保育経験は無し。. みは大きいことが明らかにされている(橋本 2001) 。. 【対象児】Aくん(セッション開始時における KIDS の. また、これまでの先行研究では、対象となる子どもは. 発達検査では、生活年齢より2∼3歳の遅れが見られ、. 「障害」の診断が下されているケースが多い。しかしな. 特に社会性(対子ども、対大人)に大きな困難を抱えて. がら、橋本(2001)によれば、障害の診断がついている. いることが伺えた). 「障害児」の受け入れよりも、 「障害」の診断がなされて. 【保育園側からの主訴】. はおらず、保育園入園後に、保育園側から「何かしら気. ・活動中ウロウロしてしまう。. になる」と気付いた子どもの存在に保育園側は大きな不. ・保育士の話が集中して聞けない. 安や悩みを抱えていることが明らかになった。その背景. ・対応の仕方が分からない. には、遅れているかもしれないという判断の難しさや、. ・保護者との関係. その事柄を受け入れることの出来ない保護者との関係に. 【支援形態】 (Fig.1参照). 問題を抱えているということがあげられる。保護者との. 週1回、約2時間の訪園(19 セッション、現在も継続中). 関係においては、先行研究では保育者と保護者の関係を 支援して行くことが望ましいとされている(浜谷 2000) 。 しかし、筆者が行なっている保育園支援において、保育. 3.結果 毎回のセッション時における保育士との面談記録、筆. 園側は保護者との関係や連携に困難を抱え、その対応へ. 者の行動観察記録より. 支援を求めているが、専門機関からの立場として直接的. ① 保育士が語る主たる不安(Table.1). に保護者と関わる事を懸念する傾向が見られる。. ② 保育士の自己考察(Table.2). これらの状況を踏まえ、. ③ 保育士・筆者の本児に対する気付き(Table.3).

(2) ④ 本児の社会性(対子ども)の変化(Table.4). Table.4 本児の社会性(対子ども)の変化. ⑤ 筆者の本児への関わり(Table.5). 1.他児への意識. の 5 つの視点から、記録の整理をし(内容,出現回数,. 2.関わられることへの拒否. 出現時期) 、KJ 法を行ない分類し命名した(Table.1~5). 3.関わりへの戸惑い 4.他児の受け入れ. 保育園からの依頼. 5.本児からの働きかけ Table.5 筆者の本児への関わり. 発達検査の施行(保育園側) 対象児のアセスメント 行動観察記録 (活動内容) ・保育士と対象児の状況確認 (現在の状況、問題点、観察してもらいたい場面) ・行動観察 (自然観察、参与観察) ・保育士からの疑問・質問への対応. 1.気持ちに寄り添う 2.活動を促す 3.賞賛する 4.状況の理解を促す 5.他児とのパイプ役 これらを保育園支援の流れにそって考察していく。セ ッションの流れにおけるそれぞれの変化・出現過程は Table.6に示す。 4.考察 (1) 保育士の不安について. 活動記録のフィードバック ・ 関わり方への助言 ・ 具体的な援助方法の提案 (声掛け、視覚的教示). セッション初期では本児の離席について主に不安が語ら れる。最終的には、本児にとってのウロウロする意味の 理解と、保育士が本児に対して安心して関わりをもち、 本児の離席行動の減少にしたがって保育士は離席に対す る不安を語らなくなった。離席行動への不安が語られな くなった後の新しい不安は、離席無くその場にいるから. Fig.1.筆者が行っている保育士への援助・介入の流れ(行動観察の流れ). こそ、活動に参加して欲しいという願いのもと、何故活 動に参加できないのか、活動を行なう中で、他児との関. Table.1 保育士が語る主たる不安対象 1.集団行動. わりをうまく作れない対人関係についての不安を語る。. ①理由が推測できない離席行動. そして,セッションの後半で,本児の離席行動が再び出. ②理由が推測できる離席行動 ③注意の転導. 現するが,保育士にとってその離席行動は理解でき,そ. 2.友人関係 3.知的発達 Table.2 保育士の自己考察 1.本児への対応方法 2.本児の変化 3.本児への期待 4.保育士自身の変化. Table.3 保育士・筆者の本児に対する気付き. の離席行動への対応も適切な対応を行ない、離席行動は 主な不安対象とはならなかった。また,園長の前で保育 士は不安を語ることは少なく,保育士と園長との関係を つなぐ役割の必要性が示唆された。 (2)保育士の自己考察について 保育士との面談を進めていく中、保育士はその時の気 持ち、自分自身の変化、本児に対する対応など自分自身 について振り返ることで、不安を軽減させ、本児への理 解を深め、新たな気付きをもたらしている。自己を振り 返る中で,他保育士との連携を図り,保育士の対応にも. 1.問題行動の変化. 余裕が見られるようになった。そのような中で、保育士. 2.人間関係. は本児の行動について、その原因とその行動が意味する. 3.言語発達. ことを振り返り、さらに本児の理解を深めていった。. 4.感情・表情. (3)保育士と筆者の本児への気付きについて 保育士と筆者の本児に対する気付きについての大きな 特徴は、以下の点が挙げられる。.

(3) Table.6 セッションの流れ セッション 筆. 者. 1. 本. 状況を見る. 児. 気持ちに寄り. へ. 添う. の. 活動を促す. 関. 賞賛する. わ. 状況理解促進. り. パイプ役. 本. 3 4 5 6 7. 8. 9 10 11. 12. 13 14. 15. 16 17. 18. 19. 他児への意識 社. 関わられる事. 会. の拒否. 性. 関わりへの戸. の. 惑い. 発. 他児受け入れ. 達. 本児働きかけ. 不. 集団行動. 保. 安. 友人関係. 育. 対. 士. 象. 児. 2. ①③. ①. ②. 知的発達. 自. 本児対応法. 己. 本児の変化. 考. 本児への待. 察. 自身の変化 問題行動変化. 気. 人間関係. 付. 言語発達. き. 感情・表情 問題行動変化. 筆. 気. 人間関係. 者. 付. 言語発達. き. 感情・表情. ①筆者は、観察場面における保育士の気付かない場面で. の関係をも深める結果となった。それぞれの専門性を生か. の気付きが多く見られ、保育士は筆者の訪園日以外で. し、 共同者として本児を抱えていく体制作りの一つとして、. の本児の変化などについて多く語られている。. それぞれの立場から対象児を捉えそのことについての気付. ②筆者と保育士で気付いている内容に大きな違いは無 いが、その気付く時期に差が見られた ①については、保育士と筆者の情報交換的な役割を果たし. きを話し合っていくことは、保育士・筆者にとって本児の 理解だけでなく、お互いの関係作りにも影響を与えるもの であることが推察された。. たことが伺える。保育士からの筆者の知らない本児の生活. ②については、本児についての問題行動への気付きにお. 場面・集団場面・対人関係の様子を聞くことは、筆者の本. いて、保育士よりも筆者の方が先に気付いている。筆者が. 児を観察する視点となった。また筆者の本児の気付きのフ. 先に本児の変化について気付く要因としては、筆者がセッ. ィードバックは、保育士の気付きを促し、本児の変化の確. ション開始時の保育士の主訴を踏まえ本児を総合的に捉え. 認や保育士の不安軽減、本児を見る視点の広がりへとつな. ていこうという視点を持って本児を観察していることが考. がっていった。さらに、お互いに気付きを話すことは、単. えられる。保育士の状況や負担を考えつつ、保育士を支え. なる情報交換の役割を果たすだけでなく、保育士と筆者と. ながら本児についての気付きをタイミングよく話していく.

(4) ことにより、保育士が自分の気付きを振り返り、本児を見 る視点を広げることができると考える。. 本児への関わり 保育士. 本児. (4)本児の社会性の発達 KIDS における発達検査をセッション開始時と約半年後 に行なった結果,社会性において大きな伸びが見られた。 これは,本児の対人関係の困難に対して筆者は保育士に対 して 本児の状態を伝える→本児への関わりを示す(モデル提. 保育士を経由した 保育士への支. 本児への関わり 保育士へのモデル. 援援助的関わり. 提示を意図した関 わり. 示が目的)→保育士を巻き込んだ形での対応→保育士の 筆者. 対応を支持する という関わりを行なった。その結果,保育士も安定した状. Fig.2. 保育士への支援形式. 況の中で本児の発達を促す働きかけが増え、本児の発達が 促されたのではないかと考える。. な状況で保育を行なうことは、対象児にとっても好ましく. (5)筆者の本児への関わり方. ない環境である。対象児の問題行動と保育士の不安は密接. 本事例における筆者の本児への関わりは、本児の発達を. に関係しており、対象児の問題行動の減少にともない、保. 促すことを目的として関わりを持つことではなく、筆者の. 育士の不安は和らぐ。そして、新たな問題行動と不安が現. 関わりを保育士に見てもらい、保育士の気付きを促すこと. れる。 このパターンの繰り返しが続くことが予想されるが、. や、保育士が本児と関わる際の手がかりとなるような、モ. 保育士にとって、自分自身の関わりによって対象児が変化. デリングを目的として、本児に関わっていった。そして,. したということは大きな変化をもたらすことが明らかとな. そのことについて丁寧にフィードバックを行なった。その. った。それは、保育士にとっての自信と達成感であり、保. 結果,保育士・園長は対応の仕方,声掛けなど様々なこと. 育を行なっていく上での適切な関わりへとつながった。こ. に気付きが見られ,不安も軽減されて安定した本児との関. のような形態で保育士に援助・介入する意義は大きい。さ. 係を作る事が出来た。. らに、Fig.2のような関わりを行なう中で、園長と保育士、. (6)保護者への対応について. 保育士と他の保育士との関係も整え、保育園全体で本児を. 本事例において,母親は当初不安定な状況であったが, 筆者から保育士・園長を通じてサポートし,信頼関係が作. 抱える体制が本児の発達を促し、保育士の不安や負担を軽 減していくことが、今回の事例において明らかにされた。. られてくると安定してきた。筆者が行なっている保育園支 援では、保護者との対応について、保育園の判断に任せ、. 6.今後の課題 ―他保育園での支援活動を含めて ―. 保護者との関係をとっている。実際に保育園としては、保. 現在の訪園回数については、本研究では週1回で訪園し. 護者との関係を崩さず、対象児の相談を行ない、対象児が. 活動を行なったが、基本的には月1回の支援を行なってい. 変化し、保育士の不安や悩みが軽減されることを求めてい. る。訪園回数は、週1回の方が、保育士との関係作りや本. る。この保育園側のニーズに応える形で支援を行なってい. 児の行動理解などにおいて、迅速な対応ができるように思. る。. われる。しかし、保育園支援を行なう現実問題として、月. 保護者との関係において、実際に保護者と筆者が直接的. 1回訪園するのがやっとの状況である。その月1回の訪園. に関わることがなくても、保護者が安定してきたというこ. において、有効かつ、適切な対応を行なうには、本研究で. とは、今後の保護者への対応の形態として一つの支援方法. 明らかにされたような、保育士を対象として、しっかりと. となりうると思われる。. 支えて行くことが対象児の発達援助において重要な要因と なると思われる。また、対象児を保育士と一緒に共同で支. 5.総合考察. えていくという共同者としての姿勢も大変重要である。さ. 対象となる子どもの発達を援助するために、筆者は保育. らに、保育園支援を続けていく中で、基本的な保育園支援. 士への援助・介入を目的とし本児に関わり、保育士を支え. の形態は必要であるが、保育園の抱える問題、保育士が抱. ていった。 (Fig.2). える問題、保育園側のニーズに合わせて、柔軟に支援を変. このように、保育士を支援することを目的に関わりを持. 化させ対応していくことが今後求められると思われる。. ちセッションを重ねていった結果として、保育士が安定し. 今回の研究の結果は、対象児の発達援助を目的とした保. た中で保育を行ない、本児との信頼関係を築き、保育士自. 育園支援における、基本的対応の姿勢などについて1考察. 身も本児に対する対応に自信を持ち始めてくるという結果. をもたらした。今後、各保育園のニーズに合わせ保育園支. が得られた。保育園を支援していく際に、対象児と毎日生. 援を行なっていくにあたり、今回の研究を基盤として、支. 活し保育を行なうのは保育士である。その保育士が不安定. 援の幅を広げていく必要性があると考える。.

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参照

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