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Jour. Geol. Soc. Japan, Vol. 123, No. 9, p , September 2017 doi: /geosoc 総 説 25 Progress on petrology of

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Progress on petrology of high- and ultrahigh-pressure metamorphic rocks: 25 years

高圧−超高圧変成岩研究

25

Abstract

This paper provides an overview of recent progress in the study of high- and ultrahigh-pressure metamorphic rocks, which record the dynamics and material interaction at subduction and continental collision zones. The focus is on ultrahigh-pressure metamorphic ter-ranes worldwide for which Japanese scientists have contributed to petrological studies, and high-pressure metamorphic rocks, particu-larly eclogite and related lithologies, from the Sanbagawa, Renge, and other high-pressure metamorphic regions in Japan.

Keywords: metamorphism, metamorphic rocks, high-pressure, ultrahigh-pressure

榎並正樹

 平島崇男

**

Masaki Enami

and Takao Hirajima

**

2016年1024日受付.

2017年426日受理.

名古屋大学宇宙地球環境研究所

Institute for Space-Earth Environmental Re-search, Nagoya University, Nagoya 464-8601, Japan

** 京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻

Department of Geology and Mineralogy, Graduate School of Science, Kyoto Universi-ty, Kyoto 606-8502, Japan

Corresponding author: M. Enami, [email protected]

©The Geological Society of Japan 2017 661

は じ め に 日本地質学会(編)『日本の地質学

100

年』において,廣井 (

1993

)は「

1970

年以降に行われた変成岩に関する研究の多 くは,

1960

年代までに芽生えた考え方や方法によっており, それを発展・拡張していったものである.」とまとめた.そし て,変成岩の研究においては,電子線プローブ・マイクロア ナライザー(

EPMA

)をはじめとする種々の分析装置の実用 化によって精度の良いデータが蓄積されることと相まって, 静的な相平衡解析に動的情報を取り込み,圧力(

P

-

温度(

T

-

時間(

t

-

変形(

D

)解析という新しい研究手法が提唱,実用 化されたことを強調し,多種・多様な他の研究分野との連携 によって現実的に意味を持つテクトニクスも論じられるよう になったことを述べている.すなわち,「合成実験の成果が 変成作用の温度・圧力条件を決定する事を可能にし,それを 固溶体鉱物からなる変成岩に応用するための固溶体の熱力学 的モデルの構築が進み,条件がそろえば個々の岩石の生成温 度・圧力を,単変曲線で囲んだ区域(例えば変成相)でなく, 数値で直接語ることが可能になった.そして,年代測定値や 岩石・鉱物の分析値が質と量の両面で革命的に増加したこと などと相まって,世界各地の造山帯に分布する広域変成岩の 研究が着実に進んでいた.しかし変成岩岩石学の地質学への 貢献は,都城の提案した変成相系列と対の変成帯の概念の枠 内で進歩していた(坂野・榎並

, 2002

)」. 一方で,「日本の地質学

100

年」の原稿が執筆されていた

1980

年末から

1990

年初頭にかけて,超高圧変成作用 (

UHPM

)という変成岩分野における一里塚となる研究が新 たに進行していた.そしておよそ

10

年後の

2001

年に,

UHPM Workshop 2001

Fluid/Slab/Mantle Interactions

and Ultrahigh-P Minerals

”が早稲田大学で,それに続いて

The Sixth International Eclogite Conference

”の討論会 と野外巡検が新居浜市,旧別子山村と旧土居町を会場として

開催された(坂野

, 2002

).本論では,高圧

超高圧変成作用

をキーワードとして,プレート収束域の岩石学的研究に関し て主に日本の研究者が大きな貢献をした成果を概観する.な お,超高圧変成作用を中心とする研究全体のながれは,

Coleman and Wang

1995

),

Hemly

1998

),

Ernst and

Liou

2000

),

Carswell and Compagnoni

2003

),

Ernst

et al.

2006

),

Schertl et al.

2009

)や

Dobrzhinetskaya et

al.

2011

)などを参照されたい.また,丸山ほか(

2004

)や

Maruyama et al.

2010

)は,広域変成帯の研究史を総括す るなかで,それまでの変成作用論に疑問を呈し,広域的温度 構造の成因や変成帯上昇メカニズムなどに関して新しいモデ ルを提唱した. 超 高 圧 変 成 岩

1980

年代前半にコース石を含む変成岩類が西アルプス・

ドラマイラ(

Dora Maira

Chopin, 1984

)とノルウェー・

西部片麻岩地帯(

Western Gneiss Region

Smith, 1984

から報告され,圧力

2.8–3.0 GPa

以上(

90–100 km

以深) で再結晶した岩石が地表に露出することが明らかとなり,そ れらは超高圧変成岩と呼ばれるようになった.当初は,その 様な岩石の産出は極めてまれであろうと漠然と考えられてい た.しかし,

1989

年に中国東部・大別山(

Dabie Shan

総  説

(2)

蘇魯(

Sulu

)地域からコース石の産出が報告されて以来,超 高圧変成作用の痕跡を記録している変成岩が,カザフ共和

国・コクチェタフ(

Kokchetav

)や天山(

Tian Shan

)地域,

ドイツと旧チェコスロバキアにかけてのエルツゲビルゲ (

Erzgebirge

)などから相次いで報告され,沈み込む地殻物 質が

100 km

以深に達した後に再び地表まで戻るという大 規模な物質循環とそれに伴う地殻

マントルの相互作用が, 普遍的な現象として進行していることが次第に明らかとなっ てきた.そして,現在では

Fig. 1

に示すように,南極大陸 を含め多くの地域で超高圧変成岩の存在が確認されている.

ま た, そ の 中 に は コ ク チ ェ タ フ(

Sobolev and Shatsky,

1990

)をはじめとしてノルウェー・西部片麻岩地帯,エルツ ゲビルゲおよびヒマラヤなどのように,ダイヤモンドの安定 領域(

800

°

C

においては

3.5 GPa

以上)で再結晶したものも まれではないことが明らかとなっている.そして,現在で は,圧力

5–6 GPa

(深さ

170–200 km

に相当)の超高圧条件 下で形成されたとみなされる例も報告されている.超高圧変 成岩が産するのは,そのほとんどが沈み込み帯から大陸衝突 帯へ移行した地域であり,現在進行形の大陸衝突型造山帯で あるヒマラヤ(

Himalaya

)地域からも,すでにその深部由来 物質として地表に露出している.超高圧変成作用の年代は, 新 原 生 代 後 期[ マ リ(

Mali

, 620–625 Ma

Jahn et al.,

2001

]から新生代古第三紀[ヒマラヤ

, 45–50 Ma

O

Brien

et al., 2001

],さらには新第三紀[パプアニューギニア(

Pap-ua New Guinea

7.1

±

0.7–4.3

±

0.3 Ma

Baldwin et

al., 2004; Gordon et al., 2012

]まで様々である.しかし, 新原生代よりも古い超高圧変成岩は知られていない.その理 由としては,(

1

)地球深部の平均的な地温勾配が顕生代に比 べて高かった点や(

2

)後の造山運動により古い情報は再編さ れて残りにくいためであろう.また,パプアニューギニアの 例は,超高圧変成岩が地表への露出過程(

exhumation

)が >

1 cm/yr

の極めて大きい速度で起こり得ることを示してい る.このように,超高圧変成岩の最初の報告から

30

年以上 が,また大別山

蘇魯超高圧変成帯の発見がきっかけとなり, 超高圧変成作用が大陸衝突帯にとって本質的な現象であるこ とが認識されるようになって約

25

年が経過する中で,多く の重要な報告がなされてきた.そして,日本の多くの研究者 も,大別山

蘇魯超高圧変成岩の発見に始まる一連の研究に 当初から携わってきた.以下では,日本の研究者が関与した 地域について述べることにする.

1

.大別山

蘇魯超高圧変成帯 これらの地域に超高圧変成岩が産することは,

5

つのグ ループによってほぼ同時に報告され,世界の注目を集めるこ とになった.その中に,京都大学

金沢大学(

Hirajima et

Fig. 1. Simplified global geotectonic map showing the location of known UHP metamorphic rocks (modified after Enami, 2013).

(3)

al., 1990

)と名古屋大学(

Enami and Zang, 1990

)のグルー プがあった.これらふたつのグループはやがて中国科学院と

の共同研究へと合流した.またその後,中国地質科学院(安

徽省地質科学研究所)との共同研究も行われた.中国科学院

のメンバーは,東京工業大学との共同研究も行った.

2000

年代初頭までの研究成果は,

Wallis et al.

2000

)と

Hiraji-ma and Nakamura

2003

)に詳しくまとめられている. 大別山

蘇魯地帯は,北の中朝地塊と南の揚子地塊の衝突 によってペルム紀後期∼三畳紀前期(およそ

250–220 Ma

) に形成され,コース石やその仮像を含むエクロジャイトは, 珪長質片麻岩を母岩として大小のブロックとして産する.そ の様子は,青島(

Qingdao

)北東の仰口(

Yangko

)海岸の露頭 を記載した

Wallis et al.

1997

)に詳しい.このような産状 に関連して,当初大きな争点となったのは,珪長質片麻岩類 それ自身が超高圧変成作用を経験しているか否か,いわゆる “

in situ

”モデルと“

exotic

”モデルの妥当性の検証であった. 花崗岩質岩がその組織を残しつつエクロジャイト相の鉱物組 合せに変化している例は,

Hirajima et al.

1993

)によって 仰口の露頭で記載されていたが,その後,珪長質片麻岩類中 のジルコンに包有されるコース石が広範囲にわたって確認さ れたことにより,大別山

蘇魯地帯は広域的に超高圧変成作 用を経験していることが明らかとなった(

Tabata et al.,

1998; Ye et al., 2000

).これらの成果は,密度が小さい珪 長質岩がマントル深度まで沈み込みうることを示し,マント ル物質の地球化学的進化を論ずる上で大きな意味を持つと同 時に,密度の大きいコース石エクロジャイトが重力に逆らっ て上昇する機構に珪長質片麻岩類の浮力が大きな役割を果た していることを示唆している点でも重要である.また,

Wang et al.

1993

),

Banno et al.

2000

) や

Nakamura

and Hirajima

2000

)は,コース石

エクロジャイトがグラ ニュライト化している例を報告した.このことは,エクロ ジャイトが地殻下部の深さに至るまでは,ほとんど断熱的に 上昇したことを示しており,その上昇速度や機構の議論に大 きな制約を与えた. なお,ざくろ石

単斜輝石

藍晶石

–SiO

2圧力計とざくろ 石

単斜輝石温度計の組合せによって,蘇魯地域の超高圧エ クロジャイトの最高変成条件は

3.0–4.0 GPa/700–900

°

C

と見積もられている(

Hirajima and Nakamura, 2003

).こ

れらの情報は,蘇魯地域の大半の超高圧エクロジャイトは石 墨

コース石安定領域で形成されたが,一部はダイヤモンド

コース石安定領域で形成された可能性を示唆している.

Xu et al.

1992

)は,大別山地域のエクロジャイトから変成 ダイヤモンドの存在を報告しているが,その後,確実な追加 確認情報はない.また,超高圧変成岩にともなうざくろ石

レールゾライトの最高圧力条件は,周囲の超高圧エクロジャ イト同等の圧力を示す場合(例えば

, Yoshida et al., 2004

) と,

5–6 GPa

と周囲の高圧エクロジャイトに比べて有意に

異なる場合(例えば

, Hiramatsu et al., 1995; Spengler et

al., 2012

)が報告されている.超高圧変成岩類の最高変成条 件の多様性が何を意味するについては,今後の研究がまたれ る.

2

.コクチェタフ山塊 カザフスタン共和国(

Kazakhstan

)・コクチェタフ山塊は, 超高圧変成岩中に産するマイクロ・ダイヤモンドが最初に報 告された地域であり,主に東京工業大学を中心とするグルー プとカザフ共和国(科学アカデミーおよび旧地質省)と共同し て精力的な研究がなされ,それらの成果は,

Parkinson et

al.

2002

)にまとめられた.当地域の特徴は,緑れん石

角 閃岩相から角閃岩相高温部

/

グラニュライト相低温部,そし て石英

エクロジャイト,コース石

エクロジャイト相やダ イヤモンド

エクロジャイト相の鉱物共生が,広域的に確認

できることであり(

Masago, 2000; Ota et al., 2000

),それ

らは,より低圧の片岩ユニットの上に,ほぼ水平に分布して いる.なお,これら高圧

超高圧ユニット(緑れん石

角閃岩 相∼エクロジャイト相)間で変成度が連続しているわけでは なく,エクロジャイト・ユニットとより低圧の変成相ユニッ トの間には,

1.5 GPa

以上の圧力差が想定されている.ま た,ジルコンに包有されているコース石のいくつかは,現在 でもなお超高圧条件下にあることが,ラマンスペクトル測定

によって示された(

Parkinson and Katayama, 1999

).これ

らの成果の多くは,ジルコンの耐圧容器としての役割とそこ に保存されている鉱物に注目した画期的な研究の結果あっ た.ジルコンの年代測定と包有されている鉱物を関連づけた 研究は,時計回りの詳細な

P-T

経路を描き出し,初期の上 昇 速度 とし て

5–6 mm/year

の値 を与 えた(

Katayama et

al., 2000b, 2001

).そして,これら地質学的・岩石学的情 報をもとに,沈み込むスラブの分離(

slab breakoff

)にとも なう絞り出しとそれに続くドーム形成によって,高圧

超高 圧ユニットが上昇・露出したとするモデルが提唱されている (例えば

, Kaneko et al., 2000

). 一方,変炭酸塩岩を中心とした研究では,それがマントル 内の巨大な

CO

2貯蔵槽の役割を担っていることが強調され た.また,マイクロ・ダイヤモンドは時としてコアとリムの

2

段階成長を示していることから,

H

2

O

に富む流体の浸透 により,それまでに変炭酸塩岩や泥質片麻岩中で形成されて いたダイヤモンドが不安定となったり,脱

CO

2反応が促進 されたりしたことにより,変成流体中に増加した何らかの炭 酸種が広範囲に移動し,そこからダイヤモンドが再び成長し たとするスラブ内超高圧交代作用モデルが提唱された(

Oga-sawara et al., 2000; Ishida et al., 2003

).また,

Kataya-ma et al.

2006

)は,エクロジャイトの主要構成鉱物である オンファス輝石,ざくろ石やルチルが高圧条件になるほど

H

2

O

を結晶構造中に取り込みやすくなることを示し,それ ら含水珪酸塩鉱物が不安定な条件下における主要な

H

2

O

の 貯蔵相の役割を果たすことにより

H

2

O

をマントル深部まで 移送し,地球内部のダイナミクスに大きな影響を与える可能 性を論じた.なお,超高圧条件を反映した鉱物学的特徴とし て,

Ca-Eskola

成分(

Katayama et al., 2000a

)やフェンジャ

イト離溶ラメラを持つ単斜輝石(

Katayama et al., 2002

)や

チタナイト中のコース石離溶ラメラ(

Ogasawara et al.,

(4)

3

.ボヘミア山塊

チェコ共和国(

Czech Republic

)・ボヘミア山塊(

Bohe-mian Massif

)の主要部を占めるモルダヌビア帯(

Moldanu-bian zone

)の酸性∼中性の高圧グラニュライト中には超高 圧変成作用を受けたかんらん岩とエクロジャイトがレンズ状 あるいは層状に産している.これら形成条件が大きく異なる 地殻起源の変成岩とマントル起源の岩石とを合体させるメカ ニズムについて長らく論争が続いていた.この問題の解決を 目指して日本(京都大学・千葉大学・岡山大学など)とチェコ (カルル大学・科学アカデミー)との共同研究が開始され,現 在も継続して行われている. この共同研究における地質調査によって,南ボヘミアのプ レソヴィッチェ(

Plešovice

)砕石場において高圧グラニュラ イト中にレンズ状に産するかんらん岩が産見だされた.先行 研究においてモルダヌビア帯のかんらん岩類は,多様な起源 と複雑な熱史を示すことが指摘されていた(

Medaris et al.,

1990

)が,このかんらん岩からはそれらのいずれとも異なる 履歴が導き出された.まず,このかんらん岩の初期の平衡条 件は,ダイヤモンドが安定な

6 GPa

±

/1300–1400

°

C

であ り,上昇にともないスピネル

レールゾライト相から緑泥石

かんらん岩の安定領域(およそ

1 GPa/700

°

C

)を経た後, 再びざくろ石

レールゾライト相(およそ

3 GPa/900

°

C

)に 達する

P-T

経路が描かれた(

Naemura et al., 2009; 2011

). しかし,同論文で論じられているように,単斜輝石の離溶ラ メラを持つ

Cr

に富むスピネルが存在することから,かんら ん岩の少なくとも一部は

12.5 GPa

以上の超高圧条件を経験 している可能性が高い注1) .また,東ボヘミア山塊のかんら ん岩体中に産するエクロジャイトは

4.5–4.9 GPa/1050–

1150

°

C

に達する昇圧期変成作用を経験していることが知ら れており(

Nakamura et al., 2004

),この条件はエクロジャ イト周囲のかんらん岩の変成条件(

Medaris et al., 1990

)と 一致する. 超高圧かんらん岩やエクロジャイトを胚胎する主な岩石 は,藍晶石とざくろ石を含む石英長石質の高圧グラニュライ トか珪長質片麻岩である.同様の岩石はボヘミア山塊にとど まらず,ドイツ南部のシュバルツバルト(

Schwartzwalt

)を 経てフランスの中央高地(

Massif Central

)やアルモニカ山 塊(

Armorican Massif

)に至るモルダヌビア帯に広く分布し ている.この岩石の最高変成条件は

ternary feldspar

の存 在などから

2 GPa/1000

°

C

程度と見積もられていた(

Car-swell and O'Brien, 1993

).しかし,チェコ北東部のボー

リング・コアとして採集された高圧グラニュライト中のざく ろ石の包有物としてマイクロ・ダイヤモンドが見いだされた (

Kotkova et al., 2011

).また,

Nove Dvory

かんらん岩体

周囲の珪長質片麻岩中のジルコンの一部の

SiO

2包有物は コース石からの転移を示唆するラマンスペクトルを示した (

Kobayashi et al., 2008

).これらの報告は,モルダヌビア 帯においても超高圧変成岩を胚胎する地殻物質はダイヤモン ド安定な地下

150 km

程度まで沈み込んだ可能性が大きい.

4

.キルギス天山山脈 古生代前期に形成された中央アジア造山帯の中核部に位置 するキルギス共和国(

Kyrgyzstan

)では,北部天山山脈に位 置するマクバル(

Makbal

)地域と南部天山山脈に位置するア トバシー(

Atbashy

)地域の

2

箇所から超高圧変成岩が見つ かっている.天山山脈は東方の中国新疆ウィグル自治区に連 続し,西天山からも超高圧変成岩が報告されている. キルギスの超高圧変成岩の研究は,茨城大学・島根大学と キルギス科学アカデミーの共同研究として,

1990

年代に開 始された.この共同研究の成果によれば,

Makbal

地域に産 する超高圧変成岩の最高圧力時(約

3 GPa

)の変成温度は

650

°

C

以下と非常に低く,その条件下ではローソン石が安

定に存在すると推測されている(

Tagiri et al., 2010;

Oroz-baev et al., 2015

).これは,冷たい沈み込み帯ではローソ ン石や白雲母などの含水鉱物が大量の

H

2

O

をマントル深度 ま で 運 び こ ん で い た こ と を 示 唆 す る注2) .

Orozbaev et

al.

2015

)は,超高圧変成作用をこうむった泥質変成岩のざ くろ石中に含まれる緑簾石,藍晶石,石英などから成る多相 固体包有物の主要元素組成を復元し,多相固体包有物は超高 圧時にはローソン石であったことを指摘した.彼らは,上記 の多相固体包有物は岩体が減圧上昇する際にローソン石が分 解し多量の水を周囲に放出したとの考えを提示した. 世界の超高圧変成帯の主要岩相は珪長質片麻岩であること が多いが,

Makbal

超高圧変成岩ユニットの主要岩相は珪岩 であり,その中に泥質変成岩・大理石・エクロジャイトなど が層状・レンズ状に散在している.さらに,超高圧変成作用 の痕跡は,珪岩や泥質変成岩からは報告されているが,エク ロジャイトからは確認されていない.この様な地質状況を説 明するために,珪岩を主体とする

Makbal

超高圧変成岩ユ ニットは,コース石が安定な深度においても密度が周囲のマ ントル物質に比べて小さいため,それが駆動力として働くこ とにより上昇し,その途中に分布していた石英エクロジャイ トなどを取り込んだとする構造性メランジュ・モデルが提案 されている(

Tagiri et al., 2010

).また,当該地域の地質構 造として,最下位に超高圧変成岩ユニットが位置し,その上 位により変成度の低い岩石が分布するドーム状構造が想定さ れている(

Tagiri et al., 2010

).このような構造も世界の他 の超高圧変成帯では未報告であり,構造地質学の手法を用い た検証が待たれている.

5

.西アルプス 西アルプスでは,ドラマイラ岩体についで,マッターホン (

Matterhorn

)南 麓 の

Lago di Cignana

か ら

Reinecke

1991

)によってコース石が見いだされ,さらに,

Frezzotti

et al.

2011

)によってマイクロ・ダイヤモンドが見いだされ

た.ドラマイラ岩体の超高圧変成岩からはマイクロ・ダイヤ モンドは未だに確認されてはいないが,高温高圧実験結果等

注1)同様の組織を持つスピネルは,南チベット,ルオブサ・オフィオライト (Luobusa ophiolite)から報告されており(Yamamoto et al., 2009),同地域

からはMoissanite(SiC)の産出も報告されている(Liang et al., 2014).

注2) Maruyama and Okamoto(2007)は,MORB + H2O系における鉱物の安

定関係にもとづいて,沈み込むスラブによって大量のH2Oがマントル遷移

層まで移送され,地球深部の活動に大きな影響をおよぼすとするモデルを 提唱している.

(5)

から,ドラマイラ岩体の超高圧変成岩当該地域の最高変成圧 力も,マイクロ・ダイヤモンド安定領域に達していたとの考 えもある(

Hermann, 2003

).西アルプスの両地域の超高圧 変成岩は,薄いナップ(

5

×

10

×

1.5 km

)として産し,い ずれもその上下を石英エクロジャイト相,あるいは青色片岩 相の変成作用をこうむったナップによって挟まれている.一 方,西部片麻岩地域や中国・大別山蘇魯地域などの広域片麻 岩地域では数

100 km

から

1000 km

にわたって超高圧変成 岩が点在して産している.この様な超高圧変成岩の産状のコ ントラストは,各変成帯における超高圧変成岩の上昇メカニ ズムを考える上で重要な制約条件になっている. ドラマイラ岩体南部の超高圧変成岩ナップとその周辺ナッ プの詳細な地質構造は,

Compagnoni et al.

2012

)によっ て公表されている.それによると,超高圧変成岩の原岩は, バリスカン期の泥質変成岩類や珪長質片麻岩とそれらに貫入 した花崗岩類である.超高圧変成作用をこうむった花崗岩は 上昇時の変形作用の強弱に応じてその大半が眼球状片麻岩か ら細粒の片麻岩に変化している.しかし,変形をまぬがれた 部分では,火成岩組織を保持した超高圧変成花崗岩や数

cm

長の柱状の仮像を変成ホルンフェルスなど,超高圧変成作用 以前の地質情報が解読できる. ドラマイラ岩体で特筆すべき岩石のひとつは

Chopin

が コース石を見いだしたパイロープ石英片岩である.この岩石 の主要成分はほぼ

MgO

Al

2

O

3

SiO

2および

K

2

O

で構成 されている.この様な特異な組成の岩石の成因についてドイ ツ学派を中心とした“蒸発岩起源説(

Schreyer, 1977

)”とア ルプスの地質調査を経験した学者グループによる“高圧変成 作用をこうむった花崗岩の中で生じた交代作用説(

Bearth,

1952

)”が提唱され,長らく論争が展開されていた.

Com-pagnoni and Hirajima

2001

)はパイロープを含む石英片岩

はすべて花崗岩(珪長質片麻岩)ユニットから見いだされ泥質 変成岩と互層しないこと,さらは,コアがアルマンディンで リムがほぼ純粋なパイロイープからなるざくろ石を見いだし た.この発見は,パイロープ石英片岩は交代作用起源である ことを決定付けた.

6

.スカンジナビア半島カレドニア造山帯 スカンジナビア(

Scandinavia

)半島カレドニア(

Caledo-nia

)造山帯では,

21

世紀に入ると,造山帯の構造的最上位

に 位 置 す る ノ ル ウ ェ ー の

Tomoso Nappe

Janák et al.,

2013

)と構造的中位に位置するヤムトランド(

Jämtland

)地

方の

Seve Nappe

Majka et al., 2014

)の泥質変成岩からマ イクロ・ダイヤモンドが相次いで見いだされ,新しい超高圧 変成岩地域として認識されるようになった.これら両地域の 研究はウプサラ大学・トロムセ大学・ボン大学・スロバキア 科学アカデミーに加えて京都大学を中心とする日本の研究グ ループも参画し,日本はラマン分光器を用いたダイヤモンド の相同定の役割を担っている.この形式の共同研究はスロベ ニア(

Slovenia

Janák et al., 2015

)やブルガリア(

Bulgar-ia, Rhodopes

Petrík et al., 2016

)の超高圧変成岩に対し ても展開され,それぞれの地域からマイクロ・ダイヤモンド が見いだされた.

西部片麻岩地帯では超高圧変成作用を支持するコース石と

マイクロ・ダイヤモンドの双方が見いだされている(例えば

,

Hacker et al., 2010

). 一 方,

Seve Nappe

Tromsø

Nappe

ではマイクロ・ダイヤモンドは見いだされているが,

未だにコース石が見いだされていない.上記のマイクロ・ダ

イヤモンドは

CH

4

CO

2流体と一緒に産しており(

Janák

et al., 2013; Majka et al., 2014

)気相・液相から準安定相 として成長した可能性が残されており,その形成圧力条件等 については再精査が必要である. 高 圧 変 成 岩 超高圧変成岩の発見以来,それまで考えられていたよりも はるかに高圧条件下で形成された変成岩までが研究対象と なった.また,角閃岩相∼グラニュライト相程度の岩石中に エクロジャイト相の鉱物共生がしばしば残存していること が,

1990

年代以降の研究によって報告された.そして,数 値計算によって,沈み込むスラブ内での地温勾配は,典型的 な高圧変成帯とされてきた地域の累進変成作用から想定され るものよりも,はるかに低いであろうことが示された(例え ば:

Peacock, 1991

).このような点を考慮すると,三波川 変成岩などは従来のように典型的な高圧変成岩と呼ぶのはふ さわしくないかもしれないが,本論では広い意味で,沈み込 み帯で形成された岩石を高圧変成岩としてあつかうことにす る.なお,フランシスカン(

Franciscan

)変成岩類(

Tera-bayashi et al., 1996; Tsujimori et al., 2006

)やグアテマラ

Guatemala

)に産するローソン石

エクロジャイト(

Endo et

al., 2012b

)の研究をはじめとしてここに紹介すべき成果も

多いが,以下では三波川帯を中心として国内の高圧変成帯の 岩石に関する成果をまとめることにする.

1

.三波川変成帯

1980

年代末葉から

1990

年代初頭は,

Itaya and

Takasu-gi

1988

)によって四国中央部三波川帯の系統的な年代測定 結果が,東野(

1990

)によって変成分帯結果が,そして

Hara

et al.

1990, 1992

)によって構造地質学的情報がまとめら れ,三波川帯の研究にひとつの区切りがついた時でもあっ た.そして,これらの成果をもとにして新たな研究が進行し た.例えば,

Enami et al.

1994

)は,

Na

輝石を含む石英片 岩を中心に研究を行い,

P/T

条件の累進的変化を定量的に論

じた.また,

Mori and Wallis

2010

)は,四国中央部汗見

川地域の詳細な地質調査をもとに,同地域を中心とする広域 的温度構造は,基本的に褶曲構造で説明可能であるとした. 一方,橋本ほか(

1992

)と

Tagiri et al.

2000

)は,それぞれ 関東山地と中部天竜地域においては,三波川帯の地質構造お よび温度構造が,基本的には薄い層状体の累積によって説明 できるとしている.以下では,

1990

年代以降特に理解が深 まった点を,エクロジャイト,ジルコン年代と変成流体を キーワードにしてまとめる. (

1

)エクロジャイト相変成作用:別子地域高温部には,大部 分が斑れい岩を原岩とすると考えられ周囲の結晶片岩類より も粗粒で,角閃岩もしくは変斑れい岩と呼ばれる岩石が大小 の岩体(例えば

,

五良津・東平岩体など)として産し,その中

(6)

にエクロジャイト共生を持つ岩石が産することが知られてい た(例えば

, Takasu, 1989

).そして,結晶片岩類との間には ピーク時の変成条件に大きな不連続が存在すると考えられ, エクロジャイトは結晶片岩からなる三波川変成帯中に固体貫 入したテクトニック・ブロック(異質構造岩塊)と見なされて いた(

Takasu, 1989

).しかし,猶原・青矢(

1997

)によって, その様な変斑れい岩体のひとつである瀬場岩体の周囲に分布 する変塩基性岩(塩基性片岩)中にもエクロジャイト相の鉱物 共生が産することが明らかにされた.その後,結晶片岩類の 大部分を占める変泥質岩中からもオンファス輝石やあられ石

が報告され(例えば

,

櫻井・高須

, 2009; Kouketsu and

En-ami, 2010

),エクロジャイト相条件下で再結晶している範

囲とエクロジャイト相変成作用の痕跡が認められない結晶片

岩類との関係が大きな議論となった.そして,次の

2

つの

モデルが提唱された.

すなわち,

Wallis and Aoya

2000

)と

Aoya and Wallis

2003

)は,主に瀬場岩体周辺の構造地質学的・岩石学的情

報に基づいて,三波川帯高温部はエクロジャイト・ユニット と非エクロジャイト・ユニットからなるとナップ構造を示す と報告した.そして,エクロジャイト・ユニットに属すると

される岩石は

2

回の昇温期変成作用を記録していることを

特徴とするとされ(例えば

, Aoya, 2001; Zaw Win Ko et

al., 2005

),それは上昇するエクロジャイトと沈み込むスラ

ブの相互関係を記録しているとされた.また,

Kouketsu et

al.

2014a

)や

Taguchi and Enami

2014

)は,ざくろ石の累 帯構造,ざくろ石中の包有物と石英の残留圧力の情報をもと に,エクロジャイト・ナップの分布範囲を提唱した.一方,

Ota et al.

2004

)は,別子地域三波川帯は全体として石英

エクロジャイト∼コース石

エクロジャイト相に至る累進変 成作用を受けており,現在認められる広域的累進変成構造 (変成分帯)は,基本的には降温・減圧時の加水反応によって 形成されたとし(

Barrovian-type overprinting

),それは丸 山ほか(

2004

)が提唱した「ウェッジ絞り出し」による変成帯 上昇の結果であるとした. このように,

2

つのモデルは,広域的な温度構造の成因や 変成帯の上昇機構などに関して見解を異にする.しかし,い ずれも従来想定されていたよりも,変堆積岩類を含む広範囲 の岩石がエクロジャイト相条件下での再結晶を経験したこと を示している.このことは,多量の流体や

LREE

などの不 適合元素が沈み込み帯深部までもたらされていることを意味 しており,地殻とマントルの物質的・化学的相互作用や変成 帯上昇機構を論じる上で大きな情報となる. 角閃岩体自身に関しても,地質学的・岩石学的な新しい知 見が得られている.釘宮・高須(

2002

)は,詳細な地質調査 をもとに,五良津角閃岩体のおよそ西半分は,従来想定され ていたようにそのすべてが斑れい岩を原岩としているのでは なく,構造的見かけの下位から順に,超苦鉄質岩,斑れい 岩,塩基性火山砕屑岩,石灰岩および珪質堆積岩と配列して いるとして,それらはもともと礁性石灰岩を頂部に持つ海 山,海台もしくは島弧の層序の一部に由来するとした.そし て,

Terabayashi et al.

2005

)は,この考えを拡張して,五 良津岩体のみならず,それに接して産する大規模なアルプス 型カンラン岩体(東赤石岩体)や周囲の結晶片岩類を含めて, 釘宮・高須(

2002

)と同様の原岩モデルを提唱している.な お,

Utsunomiya et al.

2011

)は,地球化学的情報にもとづ いてエクロジャイトやざくろ石

角閃岩の原岩は,海洋性島 弧の中∼下部地殻に由来するとしている.

Endo et al.

2012a

)は,五良津岩体は,沈み込み開始直

後 の 高 い 地 温 勾 配 の も と で の 沈 み 込 み(

0.9 GPa/

570

°

C

1.2 GPa/660

°

C

)→ エクロジャイト相に達する新 たなゆっくりとした沈み込み(

~ 1.8 GPa/510–560

°

C

)→ 減圧(

exhumation

)初期の温度ピーク時(

1.6 GPa/620

°

C

) → 緑れん石

角閃岩相の累進変成作用の

P-T

履歴を持ち, エクロジャイト・ユニットは浮力による上昇によって,沈み 込みつつあった結晶片岩類(非エクロジャイト・ユニット)と 合体し,その後削剥や構造運動による地殻の薄化によって地 表に露出したと考えている.なお,五良津岩体と東赤石岩体 との境界部に産する石英

エクロジャイトは,他のエクロ ジャイトに比べてより高変成度で形成されていることが知ら

れ て い る(

2.3–2.4 GPa/675–740

°

C

Miyamoto et al.,

2007

).エクロジャイトが記録している変成ピーク時の

P-T

条件のこのような違いは,海嶺に近接した比較的若いスラブ の沈み込みとおよそ

65 km

以深でのウェッジ・マントル内 の対流で説明されている(

Aoya et al., 2009

).また,東赤 石カンラン岩体自身はさらに深部のウェッジ・マントルに由 来すると考えられている(

2.9–3.8 GPa/700–810

°

C

En-ami et al., 2004; MizukEn-ami and Wallis, 2005; Hattori et

al., 2010

).

Aoya et al.

2013

)は,地質図上には表現でき ないような小規模なものを含めて,超苦鉄質岩塊が別子地域 の中∼高変成度(高圧)部には産するものの,低変成度(低圧) 部には確認できないことを示し,三波川変成作用が進行して いた白亜紀沈み込み帯直上前弧域の大陸性地殻の厚さを

30–35 km

と見積もった. 別子地域東方約

80 km

に位置する高越地域にもエクロ ジャイトが産することは知られていた(高須・加治

, 1985

). そして,その後の研究により高越地域には藍閃石

エクロ ジャイトが産することや,上昇時

P-T

経路が開いた時計回 りを示す別子地域のエクロジャイトとは異なりヘアピンの形 状に近いことが明らかとなった.

Matsumoto et al.

2003

) は,ひとつの沈み込み帯の中におけるこのような

P-T

経路 の違いを,変成ユニットの規模(厚さ)や上昇速度の違いによ

るものと解釈した.また,

Tsuchiya and Hirajima

2013

は,ざくろ石に包有されるローソン石とオンファス輝石を見 いだし,昇温期の初期にローソン石エクロジャイト相の条件

を経験していることを明らかにした.

Kabir and Takasu

2016

)は,これと同様に低温型エクロジャイト相条件下で 形成されたと考えられるひすい輝石

ざくろ石

藍閃石片岩 を高越地域の東方約

30 km

に位置する眉山地域から報告し た.そして彼らは,沈み込むイザナギプレートによって形成 された低い地温勾配のもとでこれら低温型エクロジャイト相 変成岩は形成され,その後に拡大する海嶺の接近により回復 した地温勾配のもとで別子地域に分布する高温型エクロジャ

(7)

イト相変成岩が形成されたとするモデルを提唱した. なお,

Ubukawa et al.

2007

)は,高越地域のエクロジャ イト分布域の紅れん石石英片岩から減圧時に形成されたタル ク

フェンジャイトの組み合わせを見いだした.さらに シュードセクション法の解析を行い,紅れん石石英片岩は等 温減圧的な上昇過程を経たとし,

Matsumoto et al.

2003

) とは異なる上昇経路を提案した.タルク

フェンジャイト組 み合わせは別子地域の紅れん石石英片岩からも見いだされて おり(

Izadyar et al., 2000

),この組み合わせはエクロジャ イト相変成作用をこうむった否かを判断する指標鉱物のひと つになるかもしれない. (

2

)年代測定:

K–Ar

法や

Ar–Ar

法による年代測定の結果

(例えば

, Itaya and Takasugi, 1988; Takasu and

Dallmey-er, 1990; Dallmeyer et al., 1995

)に加えて,ジルコンの

U–Pb

年代を中心とする情報の集積により,

P-T-t

経路やユ ニット区分についてより詳細な議論がなされてきた.

Oka-moto et al.

2004

)は石英エクロジャイト中の砕屑性ジルコ ンを取り巻く薄いリムの

U–Pb

測定からエクロジャイト相 の変成年代を

132–112 Ma

と見積もった.同様に,

Araka-wa et al.

2013

)は変成年代を

120 Ma

として,その後

110

Ma

に部分溶融の時期があったとした.なお,汗見川地域高 温部の変泥質岩からはジルコンのリムの年代として

96–81

Ma

が得られているが,それは後退変成作用の時期を示すと された(

Aoki et al., 2009

).一方,ざくろ石

オンファス輝 石

Lu–Hf

アイソクロン法では,

89–88 Ma

116 Ma

の年 代がエクロジャイトから得られており,前者がエクロジャイ ト相変成作用の年代を.後者はそれ以前の緑れん石

角閃岩

相の時期を示しているとみなし(

Endo et al., 2009; Wallis

et al., 2009

),

96–81 Ma

のジルコン年代もピーク変成作用 の時期を表していると解釈可能であるとした. 堆積岩源変成岩中の砕屑性ジルコン年代を統計的に扱い, そのうち最も若い年代を原岩の堆積年代の上限(想定できる 最も古い年代限界)とみなし,その後に起こった変成作用の 年代に制約を与えようとする試みもなされている.

Aoki et

al.

2007

)は,四国三波川帯の高温部(かつて三縄層とされ ていた地域)と低温部(小歩危層

,

川口層とされていた地域) では,ジルコン年代の分布に大きな違いがあり,低温部の原 岩の堆積年代は高温部の試料で報告されている三波川変成作 用の年代とほぼ同じかそれよりも若いことを論じた.そし て,白雲母

K–Ar

年代の系統的な違いも考慮して,低温部 は三波川帯ではなく四万十帯とみなすべきであるとした. 中部地方・佐久間

天竜地域でも,従来の三波川帯が西部 ユニット(最も若いジルコン年齢:

94 Ma

)と東部ユニット (

73 Ma

)に分けられることが提案されている(

Tsutsumi et

al., 2012

).このふたつのユニットは,炭質物の石墨化度や 角閃石の組成など岩石学的特徴によって区分された白倉ユ ニットと瀬尻ユニット(

Tagiri et al., 2000

)にそれぞれ相当 する.なお,白雲母

K–Ar

年代も系統的に両ユニット間で

異なることも報告されている(

Hara et al., 1992; Nuong et

al., 2011

).また,三波川変成岩の模式地でもある関東山地 三波川帯でも,原岩年齢が少なくとも

79 Ma

まで若返る例 が報告されている(

Tsutsumi et al., 2009

). (

3

)変成流体とその活動:変成反応に流体組成が大きな影響 を与えるであろうことは,多くの研究者によって指摘はされ てきたが,三波川変成岩においてそれを実証的に示した初期 の研究は,榎並・東野(

1988

)と

Goto et al.

2002

)であろ う.榎並・東野(

1988

)は,ドロマイトと石英の共生の分布 から変成流体の

XCO

2

CO

2

/

CO

2

H

2

O

)]値は高変成 度部が相対的に高かったことを示した.また,

Goto et

al.

2002

)は,地表で採取された試料とボーリング・コア試 料を比較して,変成作用が進行していた時の炭酸塩鉱物の産 出頻度が通常研究されている試料中で観察されるよりも有意 に高かったであろうことを論じ,炭酸塩鉱物が変成反応の進 行に大きな影響を与えていた可能性を示唆した.

Goto et

al.

2007

)は,変泥質岩の鉱物共生を

SiO

2を過剰とする

CaO–NaAlO

2

–KAlO

2

–Al

2

O

3系で解析することにより,

変成度の上昇とともに

XCO

2値が系統的に上昇することを,

より定量的の論じた.同様に,

Shinjoe et al.

2009

)は,

Ca–Al

相の安定性に着目し,低変成度部の流体組成につい

て論じた.変泥質岩の石英粒中の流体包有物は多くが,塩水

CH

4

–N

2

–CO

2

–H

2もしくはそれらの部分系の気相である

ことが明らかとなっており(

Nishimura et al., 2008;

Yoshi-da and Hirajima, 2012

),

Arai et al.

2012

)はダナイト中

の再結晶カンラン石と

Ti

に富むクリノヒューム石中から,

CH

4と

C

3

H

8の 気 相 を 報 告 し て い る.ま た,

Yoshida et

al.

2015

)は,石英脈中の流体包有物は高い塩分濃度と

B

お よび

Li

に富むことを示し,それは沈みこむスラブに由来す るとした. 変泥質岩と変塩基性岩の全岩組成に対する変成反応や変成

流体の影響に関する研究は,

Fujiwara et al.

2011

)と

Uno

et al.

2014

)によって,それぞれ報告されている.変泥質岩 では変成度の上昇にともなって中変成度域(ざくろ石帯付近) で

As

と炭質物の

H/C

値が急激に減少し,それらは炭質物 の石墨化度の上昇に関連しているとした.変塩基性岩では, 減圧・加水反応の過程で.スラブ起源の流体と類似した

LILE

LREE

に富んだ高温変成流体が関与し,

Li

B

K

Cr

Ni

Rb

Sr

Cs

Ba

の著しい付加が起こった ことが推定されている.また,

Kawahara et al.

2016

)は, ブルース石は,蛇紋岩中の

H

2

O

量や物性に大きく影響する ことを示すと同時に,その産状と分布に着目してマントル・ ウェッジ浅部の

SiO

2交代作用を論じた.

2

.蓮華帯・黒瀬川帯・長崎変成岩・神居古潭

Nishimura

1998

)は,三郡帯として一括されていた地域 を,蛇紋岩を含むオフィオライト層序で特徴付けられ

470–

340 Ma

の変成年代を示す蓮華帯と

330–280 Ma

の高

P/T

片岩で特徴付けられる周防帯に大別した.一方,

Tsujimori

and Itaya

1999

)は,三郡帯を蓮華帯と周防帯に区別するこ とに同意しつつ,蓮華帯と周防帯をそれぞれ

450–260 Ma

および

230–160 Ma

として,

Nishimura

1998

)とは異なる 年代範囲を提唱している: 蓮華帯に含まれる青海片岩は,藍閃石片岩相変成作用の研 究にとって古典的な地域であり(

Banno, 1958; Miyashiro

(8)

and Banno, 1958

),さらにエクロジャイト相の鉱物共生が

レリックとして,緑れん石

角閃岩(中水ほか

, 1989

)やざく

ろ石

藍閃石片岩(

Tsujimori and Itaya, 1999

)中から報告さ

れていた.そして,緑れん石

藍閃石片岩(青色片岩)相から エクロジャイト相への反応過程を読み取ることができるエク ロジャイト質藍閃石片岩が発見,記載された(辻森ほか

,

2000

).それは,上述した三波川帯のエクロジャイトに次ぐ

2

例目の報告である.ひすい輝石岩が蛇紋岩中のブロックと して産することも古くから知られている(例えば

,

河野

, 1939

). それらは

520–451 Ma

の年代を示す熱水起源と見なされる ジルコンを保持しており(例えば

, Tsujimori et al., 2005

), その形成は蓮華帯の主要な変成作用よりは明らかに古いと考 えられている.ひすい輝石岩は石英をともなわず,それらの 多くは

SiO

2に不飽和な熱水溶液からの沈殿によって形成さ れたと考えられるようになったが(例えば

, Miyajima et al.,

1999

),椚座・後藤(

2010

)が論じたように,大規模な流通 系の熱水活動により,火成岩の構成鉱物が一旦溶解し,その 後ひすい輝石やオンファス輝石として沈殿するという一種の 交代作用によって形成されたものも存在する. 蓮華帯とほぼ同じ変成年代を示す黒瀬川帯の高圧変成岩類 でも,重要な知見が得られた.九州黒瀬川帯では,端成分組 成に近いひすい輝石(斎藤・宮崎

, 2006

)やひすい輝石

オン ファス輝石

透輝石系の不混和領域(

Miyazoe et al., 2009

) や

Mn

に富むローソン石が報告された(

Ibuki et al., 2010

). また,

Miyazoe et al.

2012

)は,パンペリー石

アクチノ閃 石片岩や緑れん石

青色片岩から

Sr

に富む緑れん石を報告 し,降温期変成作用にともなう

Sr

交代作用を論じた.一方,

Kamimura et al.

2012

)は,より低圧条件のぶどう石

パン ペリー石相に属する変塩基性岩分布域を報告し,

Sato et

al.

2014

)は変成条件や白雲母

K–Ar

年代の特徴によって, 高圧・低圧の両変成岩類は,西南日本内帯の蓮華帯および周 防帯の岩石に,それぞれ対応できるとした.さらに,

Sato

et al.

2016

)は,

Sato et al.

2014

)が報告したローソン石青 色片岩は,パンペリー石,アルカリ輝石,緑泥石を消費する 吸水反応によって形成されており,冷たい沈み込み帯の地下

25 km

付近では,沈み込むスラブが多量の水(

5.0–6.4 wt.%

) を結晶水として保持していることを天然の岩石を用いて実証 した. 長崎変成岩類は,その帰属が議論されていたが,現在では 大部分は三波川帯の延長であり,スラストで境されて周防帯 の岩石が接すると解釈されている(

Nishimura, 1998;

西村 ほか

, 2004

).そして,三波川帯相当の地域からは,石英と 共存するひすい輝石が報告され,それは蓮華帯の例とは異な り,アルバイトの分解という固体反応をともなう交代作用に よって形成されたと考えられている(

Shigeno et al., 2005

). ひすい輝石と石英の共存は神居古潭帯からも報告されてい る(合地

, 1983; Takayama, 1986; Osada et al., 2007

).そ

して,同変成帯に関しては,主に

1990

年代に統計的な議論 が可能なデータ数の主として

K–Ar

法と

Ar–Ar

法による年 代測定値が報告され,ユニットによって,およそ

135–120

Ma

115–110 Ma

,および

80–45 Ma

と異なることが報告 された.そして,約

1

億年間の長期間にわたる沈み込みの 継続とそれに伴う地温勾配の回復が描き出された(

Shibaku-sa and Itaya, 1992;

太田ほか

, 1993; Iwasaki et al., 1995

). しかし,近年,変成砂質岩中の砕屑性ジルコン年代学から上 記の

K–Ar

法や

Ar–Ar

法で得られた年代と矛盾した数値が 報告されはじめており(

Okamoto et al., 2015

),今後,長 期間の沈み込み帯の存在の是非が議論されるようになるだろ う. お わ り に

1990

年代以降,高圧

超高圧変成岩の分野でも,それま でに蓄積されていた情報をもとにして多くの新しい研究成果 が報告された.それは,新しい研究手法やデータ解析法の提 案・実用化によるところが大きい.そのひとつは,本文中で も述べたが,顕微ラマン分光装置をはじめとする微小領域分 析である.同法は,当初主に包有物の同定に用いられてきた が,その後,残留圧力の測定をもとにしたラマン地質圧力計 (

Enami et al., 2007; Kouketsu et al., 2014c

)や炭質物を

対 象 と し た ラ マ ン 地 質 温 度 計(

Beyssac et al., 2002;

Kouketsu et al., 2014b

)などの新たな測定法として利用さ

れるようになった.

EPMA

を用いた

CHIME

CHemical

U-Th Total Pb Isochron MEthod

)法(

Suzuki et al., 1991

) やレーザー・アブレーション誘導結合プラズマ質量分析計 (

LA-ICP-MS

)などによる,新しい年代測定法も開発・実用 化された.

EPMA

による

2

次元組成マッピング像は,現在 では結晶の形成過程を理解する上で不可欠な情報となり,結 晶の

3

次元組成内部構造が論じられるまでになった(

Yoshi-da and Hirajima, 2015

).なお,

X

線コンピュータ断層撮 影(

CT

)法による,先駆的な結晶の内部構造解析は,

Ikeda

et al.

2002

)によって行われている.そして,変成岩の分野 でも電子線後方散乱回折分析装置(

EBSD

)が導入されて(例

えば,

Okamoto and Michibayashi, 2006; Mizuochi et al.,

2010

),

EBSD

EPMA

を組み合わせて

P-T

履歴を解析 する試みもなされている(

Enami et al., 2017

).また,集束 イオンビームを用いて切り出した微小試料を

X

線マイクロ・ トモグラフィーで撮像する研究も行われている(

Yoshida et

al., 2016

). 鉱物やメルト相の熱力学的データの集積と計算装置・技術 の発展により,新たなデータの解析法も提案・応用されてい る.そのひとつが

Gibbs

法であり,ざくろ石の様な比較的

単純な固溶体(例えば

, Inui and Toriumi, 2002

)だけではな

く, 角 閃 石 の よ う な 複 雑 な 系(

Okamoto and Toriumi,

2004

)を用いた

P-T

履歴,沈み込む海洋地殻の累進的脱水

反応(

Kuwatani et al., 2011

)や上昇・減圧時の脱水,加水

過程(

Uno et al., 2015

)などの解析が行われている.シュー

ドセクション法も広く利用されるようになり,三波川帯では

変泥質岩の累進的鉱物共生変化(

Matsumoto et al., 2005

Na

に富む相の安定領域などの理解(

Kouketsu and

En-ami, 2011

)に利用されている.ところで,シュードセクショ

ン法は,鉱物共生を制御する全岩化学組成(

effective bulk

(9)

の全岩化学組成).しかし,ざくろ石のように極端な累帯構 造示す相を含む試料や複数の平衡時期の鉱物共生を保持して いる試料では,累帯構造のそれぞれの部分が成長している時 やそれぞれの鉱物共生が安定であった時の全岩組成を,本来 は推定することはできない.にもかかわらず,等濃度線を描 いたシュードセクションと観察された鉱物の累帯構造を組合 せて

P-T

経路を議論するというような研究も少なくない. シュードセクション法は,適切な使用に対して適用すれば有 用なツールではあるが,常に上記の問題点が内在している点 を留意すべきである.

Kuwatani et al.

2012

)は,マルコフ

確率場(

Markov random field

)をざくろ石累帯構造モデル・

システムに適用し,それが岩石学分野におけるさまざまな逆 問題を解く有力な手法であることを提案した. このように,

25

年前には一般的では無かった分析装置や 解析手法の発展によって,新たに多くの成果が得られてき た.そして,まだ印刷公表はされてはいないが,次の記念誌 では紹介されるであろう多くの重要な研究が進行中である. これらの研究対象となった多くの貴重な試料が存在する. 現時点では,まだ研究手法が確立していない試料のいくつか は,近い将来あつかうことができるようになるであろう.ま た,これまでに得られているデータや研究成果も,将来的に は見直しが必要になることがあるかもしれない.データの検 証と新たな測定・解析へ供するために,試料の系統的かつ安 定保管は,これまでと同様に,次の

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年間でも重要な課題 のひとつであろう. 謝   辞 丁寧な査読をしていただいた太田努博士と遠藤俊祐博士, 編集に携わられた桑谷立博士には,原稿を改訂する際にた いへん役立つ貴重なコメントをいただいた.記して謝意を表 します. 文 献

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参照

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