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斜面住宅地における生活環境の維持・改善に関する研究-ゴミステーションの改善試行を通じて- [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)斜面住宅地における生活環境の維持・改善に関する研究 −ゴミステーションの改善試行を通じて−. 淺野 耕平. 1. 研究の背景と目的. る生活環境の維持・改善手法として、ゴミステーショ. 我国は現在、人口減少社会への転換点を迎えており、 ン改善の効果と課題を明らかにするため、対象地区に 少子高齢化の進展とともに地域の活力低下や生活環境. おけるゴミステーションの現況分析及びモデルスタ. の悪化が地方都市を中心に懸念されている。また、国. ディエリアにおける移設改善の試行と評価を行うこと. や地方自治体の財政状況が厳しさを増すなか、良好な. を目的とする。. 生活環境を維持するためには地域住民の主体的な取り. 2. 研究の方法. 組みがより重要となっている。このため、公共依存に. 本研究では、北九州市八幡東区枝光一区を調査対象地. よらない地域運営や空間再整備の手法開発が強く求め. 区とする。地区のグロス面積は約 44.4ha で、標高 5m. られる。. 〜 110m にかけて戸建住宅を中心に約 1,300 棟(住戸. こうした問題意識から、筆者らは、急激な人口減少. 数約 1,800 戸)の住宅が立地している(図 -1)。当地. と少子高齢化が進行する斜面住宅地である北九州市八. 区は、明治 34 年の八幡製鉄所の創業以降、工場労働者. 幡東区枝光一区において、地元住民組織と協働して住. の住宅需要を受けて形成された住宅地であるが、昭和. 文献 1). 環境点検・改善プログラム. を平成 18 年度に企画し、 41 年〜 50 年の製鉄所の再編・合理化によって労働人. 点検地図づくりによる実態把握から独自プロジェクト. 口が流出し、その後もモータリゼーションの進展や郊. の立案・実行に至る一連の取り組みを継続して行って. 外住宅地の拡大に伴って居住世帯の減少や高齢化が急. きた。. 激に進んでいる。. このなかで、ゴミステーションの維持管理に関する. 本研究では、まず、地区全体におけるゴミステーショ. 問題は、斜面地の空間的制約を背景に、カラス被害や. ンの現状と問題点及び町会長等による改善行為の取り. 利用マナーの悪化、道路への張出しによる通行障害な. 組み実績を捉え、ゴミステーションの改善課題につい. ど多岐にわたり、住民の改善ニーズも高いテーマであ. て考察する。続いて、地区の上下を結ぶ狭あい道路で. る(写真 -1)。特に、狭隘な道路沿いのゴミステーショ. ある通称“ヒヨドリ越え”沿いをモデルスタディエリ. ンは複数の問題を抱えており、移設等の改善を行うこ. アとし、まちづくり協議会と協働して行ったゴミステー. とで得られる効果は大きいと考えられる。. ションの移設改善の取組みプロセスと成果を検証し、. そこで本研究は、斜面住宅地における住民主体によ. 当手法の効果と課題について考察する。. カラスによる被害の例. 道路への張り出しによる通行障害の例. ヒヨドリ越え. 写真 -1 ゴミステーションの問題事例 表 -1 調査の概要. 図 -1 調査対象地区のエリア区分. 33-1.

(2) 3. ゴミステーションの現状と問題点. 接する住民が転居する際に撤去を要請された事例も 2. 八幡東区では、ゴミステーションのルールとして、 件あった。また、設置空間は、従前から道路幅員6m 収集車が通行できる道路沿いで 10 〜 20 世帯に一箇所. 以上が 7 件を占め、いずれもゴミネットと表示板の移. の設置を基準とし、住民合意による設置と住民主体の 維持管理を原則としている。市からネット及び簡易収. 表 -2 前面道路の幅員別のゴミステーションの分布. 集容器が無料配布されるが、対象地区ではネットのみ である。 表 -2 にゴミステーションの分布状況を示す。地区内 の全 111 箇所のうち、前面道路の幅員 6 m以上が 76 箇 所(68.5 %)、4 〜 6 m が 20 箇 所(18.0 %)、2 〜 4 m が 15 箇所(13.5%)である。エリア区分(図 -1)別. 3 箇所以上ある. に見ると、緩勾配で街区が比較的整った平地エリアで は大半が 6 m以上の道路沿いにあるのに対し、急勾配 で道路基盤が脆弱な中腹・山手エリアでは 6 m未満の. 1∼2 箇所ある. ほとんどない. 不明. カラス被害 の多発 ネットやゴミに よる通行の阻害 ゴミ捨てスペース の狭さ. 道路沿いの割合が高い。特に、中腹 A、C は 2 〜 4 mの. ゴミ出しマナー の悪さ. 狭あい道路に面するものが約半数を占める。. 収集後の清掃が 不十分. 次に、町会長経験者へのアンケート結果をもとにゴ. 0. ミステーションの問題発生状況を見る。全体では(図. 20. 10. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 90. 100[%]. 図 -2 担当町会内のゴミステーション問題の発生状況. -2)、カラス被害やゴミ出しマナーを指摘する回答者が 半数を超え、収集後の清掃が不十分との指摘がこれに. 中腹 A (N=4). 平地 (N=17). 問題の内容. 中腹 B (N=12). 中腹 C (N=11). 山手 (N=4). カラス被害 の多発 ゴミ出しマナー の悪さ. 次ぐ。エリア別では(図 -3)、カラス被害やゴミ出し マナーはどのエリアも多く挙がるが、比較的道路条件. 収集後の清掃が 不十分. のよい中腹 A や平地ではカラス被害やマナーの問題に. ゴミ捨てスペース の狭さ ネットやゴミに よる通行の阻害. 指摘が集中しているのに対し、狭あい道路が多い中腹. 25. B、C ではネットやゴミによる通行障害の指摘が多く、. 50. 75. 25. 50. 75. 25. 50. 75. 25. 50. 75. 25. 50. 75. [%]. 図 -3 ゴミステーションの問題のエリア別発生状況 (1 箇所以上ある割合) . また、山手ではゴミ出しスペースの狭さに対する指摘 が最も多い。このように、地形や道路条件によってゴ ミステーションの設置が制約されていることが、問題 指摘の傾向にも表れている。. 改善内容. 平地 (N=17). 中腹 A (N=4). 中腹 B (N=12). 中腹 C (N=11). 25. 25. 25. 25. 山手 (N=4). ゴミ出しマナー の呼びかけ 清掃徹底の 呼びかけ ゴミネットの 補修や交換. 4. 町会長による改善実績 続いて、町会長や周辺住民による改善行為の取組み 実績について分析する(図 -4)。全体では、ゴミネッ トの補修・交換、マナーの呼び掛け、囲いやネット掛 けの設置について関心が高く、実現したものも多かっ. 利用者間の トラブルの調整 囲いやネット 掛けの設置 カラスよけ器具 の設置 ステーションの 移設 ステーションの 新設. 凡例. た。エリア別では、平地は改善への関心は幅広いが、. 75. 50. 75. 50. 75. 50. 75. 25. 50. 75. 図 -4 町会長等による改善実績のエリア比較 . 問題が多いにも拘らず、改善実績は少ない。中腹 B、C. 表 -3 町会長等による移設・新設実績の活動主体 . 置による改善への関心が高いが、実現には至らなかっ たケースが多い。 このうち、移設・新設による改善について詳しく見 る。回答者への補足ヒアリングによって移設 7 件、新 設2件を確認した。改善した理由は、やはりカラス被 害やマナー悪化の対策が大半だが、ステーションに隣. 33-2. [%]. 取り組みを行ったが、実現しなかった. 取り組みが必要な箇所はあったが、行動には至らなかった. 取り組みが実現した割合は必ずしも高くない。山手は. では、囲いやネット掛けの設置、カラスよけ器具の設. 50. 取り組みを行い、全てまたは一部実現.

(3) 動・新設で済ませ、特に工作等は行っていない。一方、 道路基盤が脆弱な中腹部において車輛が通行できる重 他の 2 件はともに中腹エリアの幅員 6 m未満の道路沿. 要な生活道路であり、その機能性や安全性の向上への. いに位置したものが、公園や道路脇の余裕のあるスペー. 住民関心は高い。当路線にはゴミステーションが 7 箇. スに移され、前者は樹脂製の仮設柵を備え、後者は住. 所あり、道路脇の手すりや擁壁でネットを支持し路肩. 宅の外壁にネット収納の設備を取り付けている。幅員. に収納スペースをつくる形式で確保されているが、ゴ. の狭い道路沿いのゴミステーション改善において、使. ミ収集日はその張り出しで歩行者や車輌の通行の妨げ. 用時の領域 ( 容量 ) 確保と不使用時のネット等の収納. となっている。また、カラス被害も多いが、空間の制. について独自の工夫がなされた事例と言える。. 約から対策はネットの増設程度にとどまる。. 5. 移設改善の取組み. 5-2. 移設改善の試行. 次に、モデルスタディエリア“ヒヨドリ越え”沿い. 4章で捉えた町会長等による移設改善の実績では、. における改善試行と評価を行い、ゴミステーション改. 路肩から路肩、あるいは路肩から公園脇といった公共. 善の効果と課題を明らかにする。. 空間どうしの移設が大半であった。これに対し、狭あ. 5-1. モデルスタディエリアの現況. い道路のヒヨドリ越えでは、適当な公共空間は見出し. “ヒヨドリ越え”は中腹 C エリアを通り、地区の上下. にくいことから、沿道の空家や空宅地等の活用による. を結ぶ狭あいな道路である。一部幅員が 4m 未満だが、 私有地への移設を積極的に試みた。 表 -4 に、ゴミステーションの改善試行の詳細を示す。 ①は、老朽空家の宅地前面の未利用部分を活用し、ゴ ミステーションを移設した。カラス被害が問題となっ ていたため、未利用地を利用することで、常設の囲い の設置を行った。 ②は(表− 5)、斜面地特有の駐車場の張り出し床下 を活用して移設を行った。従前は、カラス被害に加え、 ゴミ出しマナーの悪さが目立った。コンクリートブロッ クで足元に囲いをつくり、カラスのネット内への侵入 を防ぐとともに、傾斜によりゴミが道路へ転がること を防いだ。さらに、張り出し床の懐にネットを吊りカー テン状にスライドさせることで、ゴミの出し入れを簡 単にした。 図 -5 ヒヨドリ越えのゴミステーションの分布 表 -4 ゴミステーション①移設の詳細. 表 -5 ゴミステーション②移設の詳細 ①従前の設置状況. ②従前の設置状況. ①従後の設置状況. ②従後の設置状況. ゴミステーション②. ゴミステーション①. 図 -6 ゴミステーション①移設箇所の周辺状況. 図 -7 ゴミステーション②移設箇所の周辺状況. 33-3.

(4) 次に、現在計画を行っている、宅地の未利用部分を. 2)ゴミステーション問題への関心は高いものの、地形. 活用した集約移設式のゴミステーション改善案を示す. や道路条件に制約されて空間的な改善が困難なものも. (表 -6)。③④は、ゴミの張り出しによる通行障害を引. 多く、マナーアップによる対策が主流となっている。. き起こしており、これらを宅地の未利用部分に集約移. 3)狭あい道路沿いでは、空家や空宅地の未利用部分を. 設することで道路の有効幅員が拡充を狙っている。加. ゴミステーションの設置箇所として活用することによ. えてこの際、道路脇に設置された手すりの是非も検討. り、幅員の拡充に頼らずに道路の通行安全性を高める. し、不要な手すりの片側撤去を講じれば、さらなる効. 効果が期待できる。さらに、既存の手すり等の道路工. 果が期待できる。なお、集約移設の実行には、地権者. 作物の撤去や再配置を併せて講じれば効果はより高ま. の承諾と利用者の合意形成が必要であり、関係町会へ. る。. の働きかけや掃除当番等について入念な調整が求めら. 4)地区の高齢化が進むなか、ゴミステーション改善の. れる。また、手すり撤去に関する市との調整も必要で. ような住民負担が少なく自発的な取り組みが期待でき. ある。. る手法でも、その効果的な実行にはまち協のような包. 5-3. 移設改善の評価. 括的組織による計画的な運営が重要と言える。これま. 続いて、移設試行後の周辺住民へのヒアリング結果. での試行を基礎にした地区独自の制度づくりが今後求. と観察調査から改善効果を検証する。まず①では、ボッ. められる。. クス型であるため、カラス対策に効果があるとの声が. 表 -6 ゴミステーション③集約移設の詳細. 聞かれた。次に②では、カラス被害の防止や道路の傾. ①設置状況. 斜によるゴミの荷崩れの改善、ゴミ出しマナーが向上 したという意見があった。また観察では、従前に比べ ①改善後のイメージ. ゴミ出しが容易となり、ゴミ出し時や収集時の作業時 間の短縮がみられた。その結果、道路脇への滞在時間 が短縮され、通行の安全性の向上に繋がった。この他、. 手すりの撤去 側溝に蓋がけ. 今回の試行が住民の関心を惹き、他町会でゴミステー ゴミステーション③④. ション改善の取り組みが始まった事例が見られた。 6. 移設改善の取り組み 最後に、町会長経験者へのアンケート結果からゴミ ステーションの移設・新設の取り組み方に対する意向 をまとめる(図 -9)。全般的に、まち協の支援を求め る回答が多い。移設作業の労力負担については利用住 民で行うべきという指摘が多いが、高齢者が多いため、. 図 -8 ゴミステーション③④移設箇所の周辺状況. 利用住民だけでは作業者の確保が困難という指摘も数 件あった。材料費の負担は特にまち協の支援を求める 回答が多い。これは、町会未加入者の増加により、加. 利用住民のみで行う. 材料費の負担. 高齢化が今後さらに増加する状況化では、まち協のよ. 作業者の確保. うな包括的組織による取り組みの支援が重要と考えら. 関係者の調整. れる。. 0. その他. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 90. 100[%]. 図 -9 町会長によるゴミステーション整備の取り組み意向. 本研究では、以下を明らかにした。 1)道路基盤が脆弱な斜面住宅地におけるゴミステー ション問題は、カラス被害やマナー悪化に加え、ゴミ の張り出しによる通行障害にまで及び、地区の生活環 境の向上においてゴミステーション改善は重要課題と なっている。. まち協の支援を受ける. 取り組みの啓発. 入者のみの負担では公平性を欠くとの理由が大きい。. 7. まとめ. 町会の支援を受ける. 謝辞 本研究に当たり枝光一区町内会長、枝光一区民生委員ならびに枝光南まちづく り協議会の方々に多大なご協力を頂きました。ここに記して深謝いたします。 参考文献 1) 山崎貴幸・志賀勉・他「住民まちづくりにおける地域住環境点検・改善プ ログラムの構築」2010 年度日本建築学会大会学術講演梗概集(選抜梗概)5014 2) 枝光南まちづくり協議会・九州大学大学院志賀研究室「まちなか斜面地の保全・ 再編誘導まちづくりに関する検討調査報告書」平成 18 年度全国都市再生プロジェ クト推進調査. 33-4.

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