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とを示している 特に, 緑のカーテンの場合は, 単に屋内の温熱環境の低下のみでなく,Kato et al. 8) のアンケート調査結果では快適性の向上が指摘されており, 幅広い指標 ( 選択語 ) で評価する必 7) 要がある 採用する選択語としては, 兼子が研究の中で提案している暑 - 寒, 暖

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日本建築学会技術報告集 第 22 巻 第 51 号,559-564,2016 年 6 月 AIJ J. Technol. Des. Vol. 22, No.51, 559-564, Jun., 2016 DOI http://doi.org/10.3130/aijt.22.559

視覚刺激としての緑のカーテン

が室内温熱環境評価に及ぼす影

THE INFLUENCE OF VISUAL

STIMULATION BY INSTALLING

“GREEN CURTAIN” ON THE

EVALUATION OF INDOOR THERMAL

ENVIRONMENT

加藤真司— ———— * 1 石井儀光— ———— * 2 桑沢保夫— ———— * 3 橋本 剛— ———— * 4 栗原正夫— ———— * 5 キーワード : 緑のカーテン,視覚反応,快適感 Keywords:

Green curtain, Visual reaction, Comfortable feeling

Masashi KATO

——————— * 1

Norimitsu ISHII

—ーーーーーー * 2

Yasuo KUWASAWA

— —— * 3

Tsuyoshi HASHIMOTO

— ー * 4

Masao KURIHARA

— ——— * 5

We conducted an experiment for the purpose of researching the psychological reaction of indoor environment in the rooms which setting up green curtain or not at the apartment building. At the result, when sensible temperature (SET*) of rooms were equal, examinees felt more cool at under the thermal conditions over around 25℃ according to evaluation by the index of warm/cool. It is almost same with the result of evaluation by the index of hot/cold on the basis of previous research. On the evaluation by the index of comfortable/uncomfortable, examinees felt more comfortable under the thermal conditions range from 25.4℃ till 28.5℃ . *1 国立研究開発法人建築研究所住宅・都市研究グループ  上席研究員・博士(デザイン学) (〒 305-0802 つくば市立原 1 番地) *2 国立研究開発法人建築研究所住宅・都市研究グループ  主任研究員・博士(都市・地域計画) *3 国立研究開発法人建築研究所環境研究グループ 上席研究員・博士(工学)

*1 Chief Research Engineer, Dept. of Housing and Urban Planning, Building Research

Institute, Ph.D.

*2 Senior Research Engineer, Dept. of Housing and Urban Planning, Building

Research Institute, Ph.D.

*3 Chief Research Engineer, Dept. of Environmental Engineering, Building Research

視覚刺激としての緑のカーテン

が室内温熱環境評価に及ぼす影

THE INFLUENCE OF VISUAL

STIMULATION BY INSTALLING “GREEN

CURTAIN” ON THE EVALUATION OF

INDOOR THERMAL ENVIRONMENT

加藤真司 *1 石井儀光 *2 桑沢保夫 *3 橋本 剛 *4 栗原正夫 *5 キーワード: 緑のカーテン,視覚反応,快適感 Keywords:

Green curtain, Visual reaction, Comfortable feeling

Masashi KATO *1 Norimitsu ISHII *2 Yasuo KUWASAWA *3 Tsuyoshi HASHIMOTO *4 Masao KURIHARA *5

We conducted an experiment for the purpose of researching the psychological reaction of indoor environment in the rooms which setting up green curtain or not at the apartment building. At the result, when sensible temperature (SET*) of rooms were equal, examinees felt more

cool at under the thermal conditions over around 25℃ according to evaluation by the index of warm/cool. It is almost same with the result of evaluation by the index of hot/cold on the basis of previous research. On the evaluation by the index of comfortable/uncomfortable, examinees felt more comfortable under the thermal conditions range from 25.4℃ till 28.5℃.

1.はじめに

近年,手軽な壁面緑化の一形態として緑のカーテンの利用者が増

えている。緑のカーテンは,アサガオ(Ipomoea nil (L.)Roth)や

ツルレイシ(Momordica charantia L. var. pavel Crantz)などの主

に蔓性の一年生植物をネットに這わせて,建物の窓・ベランダ・壁 面などを緑で覆うものを指し,夏季の日射を緑のカーテンによって 遮蔽することにより,屋内温熱環境の改善が図られることが期待さ れている。こうした日射遮蔽による緑のカーテンの屋内温熱環境改 善効果については,成田ら1) や吉田2) などによる実験によって確認 されている。ただし,実験によって求められた緑のカーテンによる 屋内温熱環境改善効果よりも,アンケート調査によって求められた 実際の生活動態から得られた緑のカーテンの温熱環境改善効果の方 が大きいという傾向を加藤ら3) は指摘し,そのことから窓辺に設置 された緑のカーテンが屋内からは涼しげに感じられるのではないか という仮定のもとに,緑のカーテンが心理的に人に与える影響を定 量的に把握する実験(屋内体感温度 SET*と温冷感の申告値の比較実 験)を実施している。その結果,被験者は緑のカーテンを設置した 部屋においては設置しない部屋よりも,より室温を涼しく感じ取っ ているという結果が得られている。このような緑のカーテンが心理 的に人に与える影響を定量的に把握することを目的とした既往研究 には,他には井上ら4)の研究がある。これらの加藤ら3) や井上ら4) の研究は,被験者が室内の温熱環境を申告する方法として,温冷感 を申告する評定尺度法を用いている。しかしながら,人が心理的に 感じ取る効果は単に温冷感のみにとどまらない。温熱環境に関する 人間の心理反応の評価方法としては,Houghten et.al5) が実験に使

用した評定尺度法が嚆矢とされ,これは too warm と too cool の間 を段階的(5 段階)に選択する方法である。我が国では,この方法 を踏襲して,日本語の様々な評価項目(選択語)を用いて,それぞ れの段階を数値に置き換える数値尺度法(おおむね 3~7 段階で)が 用いられてきた。しかし,これらは選択語の順序のみが保証された だけだったため,堀越ら6) はこうした順序尺度では示すことのでき ない間隔尺度の必要性の認識から,直線状の評価尺度上に任意の評 価点を記すことによって数値換算が可能となる直線評定尺度が望ま しいことを示した。さらに,兼子7) は,従来の評定法で混同して使 用されていた選択語の「暑い」,「寒い」,「暖かい」,「涼しい」につ いては,「暑い」と「寒い」には不快な気持ちが含まれている一方で, 「暖かい」と「涼しい」には快適性の意味合いが含まれていること を明らかにした。このことから,暑-涼-暖-寒の選択語は一次元的に 評価すべきではなく,暑-寒,暖-涼,乾-湿,快-不快は別の選択語 の項目として評価すべきことを示し,それを考慮した尺度付言語選 択法を提案した。 これらの既往研究は,屋内の温熱環境を表現する指標(選択語) は,人間の住環境を,そこに生活する人間の生理反応や心理反応, そして人間の価値観をも合わせて総合的に判定される必要があるこ *1 国立研究開発法人建築研究所住宅・都市研究グループ 上席研究員 (〒305-0802 つくば市立原 1 番地)

*1 Chief research engineer, Building research institute,

Department of housing and urban planning

*2国立研究開発法人建築研究所住宅・都市研究グループ 主任研究員 *2 Senior research engineer, Building research institute,

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とを示している。特に,緑のカーテンの場合は,単に屋内の温熱環 境の低下のみでなく,Kato et al. 8) のアンケート調査結果では快 適性の向上が指摘されており,幅広い指標(選択語)で評価する必 要がある。採用する選択語としては,兼子7) が研究の中で提案して いる暑-寒,暖-涼,乾-湿,快-不快の 4 つの選択語にて評価するの が望ましい。なお,兼子は本選択語による評価は直線評定尺度法を 用いている。このため,本研究は窓辺への緑のカーテン設置による 視覚効果が,人の温熱環境の感じ方に与える影響について,暑-寒, 暖-涼,乾-湿,快-不快の 4 つの選択語によって評価することを目的 とした。なお,先に掲げた加藤ら 3) は温冷感(暑-寒)を示す選択 語を用いた実験を実施したが,本実験において,同時に他の選択語 (暖-涼,乾-湿,快-不快)による評価実験を実施し,その実験結果 の評価を行ったものである。また,心理反応に関しては,年齢別や 性別で感じ方が異なることが想定され,兼子7) も自らの研究の今後 の課題として,年齢差や性差による検討の必要性をあげている。特 に緑化による心理反応の性別のデータの蓄積はほとんど見られない ので,併せて心理反応の性別差についても評価を行った。 2.実験計画 実験場所・実験日・被験者は加藤ら3) の実験と同一であり,後述 する SET*のを求めるための各種センサーの測定値については,加藤 ら3) の実施した実験結果を活用している。特に,本実験では兼子7) が示した 4 つの選択語のうちの暖涼感・乾湿感・快適感を尋ねたと ころであり,その結果と,加藤ら3) の温冷感に関する結果とを比較 検証した。実験地は,集合住宅の間取りが同じ複数の居室において, ベランダにガラス戸を覆う状態で緑のカーテンを設置した部屋と, 何も設置しない部屋を設定し,それぞれエアコン(ダイワラクダ工 業株式会社製,型式 ES-11,能力 1 馬力)によって強制的に室温を 調整できるようにした。これらの各々の部屋に順次被験者が入り, 各種視覚効果に関するアンケート項目に記載するようにした。この 心理的に感じる各種指標(暖涼感・乾湿感・快適感)の結果と,部 屋に設置した各種センサーから求められる温熱環境指標 SET*とを 比較してその効果を求めた。申告する評価項目は暖涼感・乾湿感・ 快適感の 3 種類としたが,これは,堀越ら6) や兼子7) の研究によっ て提案された評定尺度のアンケート票を用いたところである(図 1)。 これは,7 段階評価の数値を選択すると同時に,その数値の上に設 けられている直線評定尺度に印を記載するものである。この直線評 定尺度は 10 cm の長さのため,記した印の箇所をミリ単位で計測す れば,温冷感を 100 目盛として数値化することが可能となる。SET* は,気温・湿度・風速・放射熱の温熱 4 要素に加えて,被験者の着 衣量や作業量も考慮して算定する温熱環境指標のため,精緻な評価 が可能である。 2.1 実験居室の設置方法 実験場所は,東京都足立区花畑 4 丁目にある独立行政法人都市再 生機構が所有する花畑団地の 67 号棟(5 階建,昭和 39 年築,RC 造, 南向き:図 2)の 4 居室(203,204,303,304 号室:写真 1)を選 定した。この建物は,建て替えに伴う撤去が決定しており,実験実 施予定時期には居住者がいないため,十分な空室が確保できた。ま た,同じ住棟の住戸は全て間取りが同じであることも実験に適して いた。ツルレイシの設置場所は,各住戸のベランダ上のガラス戸の 直前とし,ツルレイシ苗はプランター(W 70 cm×D 32 cm×H 28 cm) に植え,支柱はプランターから自立させてネットをかけた。ツルレ イシの成長に伴ってネットに蔓が絡んで緑のカーテンが形成された。 緑のカーテンの 1 枚の大きさは,概ね幅 85 cm×高さ(プランター 含む)200 cm である。プランター2 個で,ガラス引戸の開口部 1 か 所(W 169 cm×H 174 cm)をほぼ覆うことができた(写真 2 参照)。 ここで,本研究の主目的は緑のカーテンの設置の有無に伴う被験者 図 1 室内環境の申告アンケート票(記載例) 図 2 間取図 (単位:mm) 写真 1 67 号棟における実験住戸の配置 203 号室 204 号室 304 号室 303 号室

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の心理反応を検証するものであるため,緑のカーテンの緑量を把握 しておく必要がある。本実験では緑のカーテンでガラス戸(面積 2.83m2)を一様に覆ったため,単位面積あたりの葉面密度である LAI (葉面積指数)を測定した。測定方法は,実験終了後に緑のカーテン の中央部(30 cm 四方)の葉を摘んでその総面積から LAI を求めた。 LAI の値は 0.93~1.29 で,窓面に対する緑のカーテンの緑被率は 57.1~60.1%であった。緑のカーテンを設置しない居室からは,約 25m 離れた別棟の白い RC 造の集合住宅が見えるのみである。 各実験居室の条件設定を表 1 に,実験居室内の設営状況を図 3 に 示す。図 3 のように,被験者の座る机や椅子を避ける形で,測定機 器を部屋のほぼ中央に配置した。また, エアコンの吹出口からの風 が直接に被験者に当たらぬように風除板を設置した。測定センサー は,図 3 に記した測定位置に設置したポールに取り付け,設置高さ は 110 cm の位置としたが,熱電対は,室内温度分布を確認するため に,各部屋それぞれに 3 種類の高さのところに据え付けた。実験の 測定項目,測定機器及び測定場所を表 2, 3 に示す。各部屋は点灯せ ず自然光のみとし,緑のカーテンのある部屋の実験時間帯における 平均照度は 155.7 Lx(標準偏差 34.57),緑のカーテンの無い部屋は 563.3 Lx(標準偏差 157.14)だった。 写真 2 緑のカーテンの繁茂状況(204 号室) 表 1 各住戸の条件設定 室番号 緑のカーテンの設置内容 日射遮蔽状態 室温管理状態 203 号室 設置せず 遮蔽せず 26℃を保つ 204 号室 ツルレイシプランター 2 個 引戸を全部遮蔽 26℃を保つ 303 号室 ツルレイシプランター 2 個 引戸を全部遮蔽 図 5 参照 304 号室 設置せず 遮蔽せず 図6 参照 図 3 実験室内の設営図 表 2 測定項目と使用機器 測定項目 使用機器 測定箇所 室温 熱電対(二宮電線工業製 Type T) 全4 戸 グロー ブ温度 ミ ニ 黒 球 プ ロ ー ブ( メ ッ ク 社 製 MTP-35B-001 直径 4 cm ) 全4 戸 風速 風速プローブ(シュミット社製 SS20.250) 全4 戸 湿度 湿度センサー(TDK 製 CHS-UPS) 全4 戸 照度 照度計(プリ-ド社製 PCL-01) 全4 戸 外気温 熱電対(二宮電線工業製 Type T) 遮光カバー付 304 号室 ベランダ 日射 日射計(英弘精機製 ML-020VM) 〃 ロガー グラフテック製midi LOGGER GL220 表 3 センサーの設置状況 測定項目 設置箇所 測定高 室温 部屋中央 10 cm, 60 cm, 110 cm 風速 〃 110 cm グローブ温度 〃 110 cm 湿度 〃 110 cm 照度 机上 70 cm 日射 ベランダ手摺 120 cm 外気温・湿度 ベランダ上部 200 cm 2.2 実験方法 実験の被験者は,花畑団地の 67 号棟以外の住棟に居住する住民と 団地内の工事関係者で,あらかじめ実験概要を説明して協力の了解 が得られた者を募った。参加した被験者の内訳を表 4 に示す。実験 の事前説明では,緑のカーテンの有無による効果の実験であるとい う先入観を被験者に与えないために,条件を変えた複数の居室内で 室温等の感じ方を申告する実験であることを説明したが,居室の設 表 4 被験者の構成 年齢 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 計 男性 4 13 12 6 10 9 54 女性 7 3 2 4 4 24 44 計(人) 11 16 14 10 14 33 98 図 4 外気温と 203 号室(前室)・204 号室の室温比較 ※室温は表 3 中の 3 測定高における平均値(図 5, 6 も同様)

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定条件に緑のカーテンの設置が含まれていることには触れなかった。 なお,被験者への負担を考慮して食事制限は設定しなかったが,自 宅から実験場所への移動・受付・実験説明・前室での待機などを経 るため,少なくとも食事摂取後 30 分以上は経過しているものとみな した。実験実施日は,2012 年 7 月 31 日~8 月 1 日の 2 日間であり, 被験者を時間帯で割り振って参集時間を指定した。 本実験では,部屋の中央に置いた各種センサーの測定値から温熱 環境指標である SET*を求めることとしたが,SETの算定には着衣量 図 5 室温の変化と目標設定温度の関係(303 号室) 図 6 室温の変化と目標設定温度の関係(304 号室) 図 7 被験者の誘導順路 の把握が必要である。このため,受付時において担当者が被験者の 服装状況を記載し,そのデータから文献9) の原単位を用いて,着衣 量の指標である clo 値を求めた。本実験では clo 値の平均値は 0.50 (男性平均値 0.51〔標準偏差 0.110〕,女性平均値 0.48〔標準偏差 0.094〕)だった。また,作業量は椅子に座った状態とした。実験実 施日は盛夏時で外気温が高い(7 月 31 日は快晴,8 月 1 日は午前晴・ 午後曇り)ため,最初に被験者を前室(203 号室)に誘導し,体温 を室温に慣らさせた。 前室は環境履歴の影響をなくす目的で設置した部屋のため,暑く も寒くもない熱的中立条件の熱環境を維持するよう努めた。志村10) らの研究では,26 ℃は比較的広範囲な湿度環境条件下で熱的中立域 に含まれていることから,26 ℃を熱的中立の条件とし,203 号室と 204 号室はこの温度を保つようにした(図 4)。また,303 号室と 304 号室については,寒い側を 23 ℃に,暑い側を 29 ℃に設定し,その 間を 1℃刻みで各実験居室の目標室温を設定した。目標設定温度と 測定した室内温度の関係を図 5,6 に示す。 被験者は,前室である 203 号室を出た後に別の部屋に誘導するが, 被験者の順路が全員同じでは特定の部屋に人数が集中してしまうた め,図 7 にあるように順路は A,B,C の 3 コースを設定し,各実験 居室に滞在した後に必ず前室である 203 号室に戻るように被験者を 誘導した。なお,測定対象が生理量ではなく心理量であること,各 部屋の室温に極端な差があるわけではないこと,また各居室の滞在 時間を揃えていることなどから,実験計画上の制約(被験者への負 担減)を考慮して居室の滞在時間を設定した。誘導員は滞在時間が 終了する 2 分前に時刻を伝え,滞在時間終了までに記載するように 促した。被験者は,各部屋でそれぞれアンケート票に記入するため, 各自で計 6 回記載することになる(写真 3 参照)。 写真 3 実験室内の様子(204 号室) 3.結果と考察 3.1 各選択語の評価 各部屋の SET*を風速・放射温度・湿度・室温・着衣量・作業量を

もとに算定専用ソフト(Ashrae transactions vol.92, part 2B)11)

を用いて算定した。室温は表 3 に示した 3 箇所の測定高における測 定値の平均値を用いた。求めた各部屋の SET*と,直線評定尺度から 求めた被験者の各種の申告値(暖涼感・乾湿感・快適感)との関係 を,図 8,9,10 に示した。用いたデータは,緑のカーテンを設置し た部屋として 204 号室と 303 号室を合わせたデータを,緑のカーテ ンを設置しない部屋として 304 号室のデータを用いた。203 号室は 前室なので,比較対象からは除外している。図では,それぞれの回

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図 8 緑のカーテンのある部屋と無い部屋の暖涼感の違い 図 9 緑のカーテンのある部屋と無い部屋の乾湿感の違い 帰線の上下に 95 %信頼区間を示している。また,SET*の適温域とし て,ASHRAE12) の快適範囲である SET22.2〜25.6℃の温度域を図 8, 10 に矢印で示した。 図 8 から,暖涼感は,概ね SET*の適温域の上限である 25 ℃台以 上において,緑のカーテンを設置した部屋はそうでない部屋に比べ て 95%信頼区間が常に低い値を示している。つまり,適温域より暑 い状態ではより室温を涼しい方に感じ取っているということであり, 夏季における住環境改善に視覚効果が役立っていることが分かる。 加藤ら3) が実施した実験によって得られた温冷感に関す実験では, SET*が概ね 25℃台以上の範囲において,緑のカーテンの有る部屋で はそうでない部屋よりも被験者はより室温を低く感じ取っている結 図 10 緑のカーテンのある部屋と無い部屋の快適感の違い 図 11 緑のカーテンのある部屋の暖涼感の男女差 図12 緑のカーテンの無い部屋の暖涼感の男女差

(6)

[2015 年 6 月 3 日原稿受理 2015 年 11 月 13 日採用決定] 果が得られているが,今回の暖涼感の評価はその温冷感の評価とほ ぼ同様の傾向を示している。つまり,緑のカーテンの設置に伴う効 果は,温冷感と暖涼感の評価語では類似の結果が得られたことにな る。乾湿感については,図 9 のように全ての温度域において信頼区 間が重なっており,緑のカーテンの有無による効果は確認できなか った。今回の実験では,湿度については各居室で同一条件だったこ とや,乾湿感が視覚的に現れにくいことがその原因に考えられる。 また,図 10 の快適感については,緑のカーテンがある・無い双方 の場合でおおむね SET*の適温域(22.2~25.6 ℃)で最大値を示し ているので,実験結果は妥当な結果だと言える。また,信頼区間に 差がみられる範囲は 25.4~28.5 ℃で,SET*で「やや暖かい」と感 じる温度域(25.6~30.0 ℃:既往文献12) )にほぼ収まっている。 つまり適温域よりやや高い温度域で視覚効果が室温の快適性の向上 につながっているということである。松原ら13) は,熱的環境条件を 不快側に設定して色彩を提示した場合に,高温側では寒色が熱的な 心理的負担の軽減効果がより大きいことを実証したが,このことは 本研究による暖涼感と快適感の実験結果と合致するものである。 以上の結果から,緑のカーテンの設置によって屋内から見える窓 辺景観が向上し,その視覚効果によって屋内環境を適温域よりも暑 い範囲において室温をより涼しく感じ取ることが明らかになった。 また,快適感については,SET*が 25.4~28.5 ℃の限られた温度域 において緑のカーテンによる快適感の向上が確認されたので,今後 の緑のカーテンの利用はその温度域において利用が図られるように 配慮することが,効果的な利用につながるものと考える。 3.2 性別による評価結果 性別による心理反応の違いを検証するため,暖涼感・乾湿感・快 適感それぞれについて,緑のカーテンの有無別に男女比較を行った。 また,併せて加藤ら3) の研究成果である温冷感の結果についても同 様に男女比較を行った。回帰直線の 95%信頼区間で比較したところ, 男女間で信頼区間は重なり合い,その違いが認められなかった。参 考までに,そのうちの暖涼感の性別比較結果について図 11, 12 に示 す。本実験に関しては,緑のカーテンの有無にかかわらず被験者の 心理反応に男女差が確認できなかったことになる。 また,併せて暖涼感・乾湿感・快適感,そして加藤ら3) の実験結 果である温冷感について,緑のカーテン設置に伴う効果の評価値を 年齢別に比較したが,明確な傾向は把握できなかった。年齢別の分 析において明確な傾向が窺えなかったのは,年齢別のサンプル数が 少なすぎたことと被験者の年齢に偏りがあったことが原因に考えら れる,今後,各年齢層の被験者が等しく参加する実験によって検証 していく必要があると考える。 4.おわりに 屋内の温熱環境の評価については,単に物理的指標のみでなく, その環境を感じる居住者による環境のとらえ方が重要になる。そう した環境の感じ方をとらえる手法として,本研究では既往研究の成 果も含めて4つの感覚指標(選択語:暑-寒,暖-涼,乾-湿,快-不 快)による評価を行ったところである。緑のカーテンについては, 多くの既往研究が屋内の体感温度の低下を示しているが,本研究に よって,それに加えて視覚効果の影響で室温をさらに低く感じ取っ ていることが明らかになった。その傾向は,温冷感と暖涼感の評価 では高い温度域ほどより顕著になっているので,盛夏期の屋内温熱 環境改善手法として,緑のカーテンの設置に際してはなるべく窓辺 景観に配慮した設置が望ましいことが導ける。また,同時に緑のカ ーテンの設置によってエアコンの設定温度をより高い温度に設定す ることも可能となることを意味する。さらに,快適感については, 適温域よりもやや高い 25.4~28.5℃の範囲で緑のカーテンの効果 が確認できたので,この温度域における活用が住空間の快適性の向 上につながる可能性がある。また,緑化による窓辺景観の向上につ いては,場合によっては緑のカーテン以外の方法でも可能なため, 今後はこうした観点からの窓辺付近の緑化デザインの検討の余地が あると考える。加えて,今回の実験では心理反応に関しての男女差 が確認できなかったが,引き続きその検証を続ける必要があると思 量する。 なお,本研究は,独立行政法人日本学術振興会の科学研究費補助 金により実施したものであり,また,独立行政法人都市再生機構の ご協力により実施が可能となったところである。ここに記して感謝 の意を表します。 参考文献 1) 成田建一:緑のカーテンが教室の温熱環境に及ぼす効果,環境情報科学論 文集 21,501-506,2007.11 2) 吉田伸治:実測による緑のカーテンの室内温熱環境緩和・日射遮蔽効果の 分析,日本建築学会北陸支部研究報告 52,207-210,2009.7 3) 加藤真司,桑沢保夫,石井儀光,樋野公宏,橋本 剛,小木曽裕,持田太 樹:緑のカーテンの有無が人体の心理反応に及ぼす影響, 日本緑化工学会 誌 Vol.39 No.1,3-8,2013.8 4) 井上彩香,東実千代,磯田憲生:窓際植生の暑熱緩和効果(その 6)―西 向き室の温熱環境―, 日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),59-60, 2007.8

5) Houghten, F.C. and Yaglou, C. P.:Determination Lines of Equal Comfort, ASHVE Trans.,Vol.29, 163-176,1923 6) 堀越哲美,磯田憲生,小林陽太郎:風洞内温熱条件の人体に及ぼす影響に 関する実験的研究(男子裸体)その 2, 夏季―平均皮膚温と温冷感申告, 空気調和・衛生工学会学術講演会論文集 1974,27-30,1974 7) 兼子朋也:建築空間における温熱的感覚・快適性の測定と評価に関する研 究,名古屋工業大学博士論文,1-163,2003.3

8) Kato, M., Iwata, T., Ishii, N., Hino, K., Tsutsumi, J., Nakamatsu, R., Nishime, Y., Miyagi, K., Suzuki, M.,:Effects of green curtains to improve the living environment,The proceedings of international conference 2011 on spatial planning and sustainable Development, B31-10, 1-9,2011.7 9) 社団法人空気調和・衛生工学会:快適な温熱環境のメカニズム,114-117, 1997.12 10) 志村 欣一,堀越 哲美,山岸 明浩:日本人を対象とした室内温湿度条件 の至適域に関する実験研究:夏季至適域の提案, 日本建築学会計画系論 文集,480,15-24,1996.2

11) A.P.Gagge, A.P.Fobelets, L.G.Berglund:A standard predictive index of human response to the thermal environment , symposium papers presented at the 1986 annual meeting in portland,oregon of the American society of heating, refrigerating and air-conditioning engineers, inc.,709-731,1986

12) ASHRAE:2001 ASHRAE Fundamentals Handbook (SI) Chapter8.12 CONDITIONS FOR THERMAL COMFORT, 2001

13) 松原斎樹,伊藤香苗,藏澄美仁,合掌顕,長野和雄:色彩と室温の複合 環境に対する特異的及び非特異的評価, 日本建築学会計画系論文集,535, 39-45,2000.9

図 8  緑のカーテンのある部屋と無い部屋の暖涼感の違い 図 9  緑のカーテンのある部屋と無い部屋の乾湿感の違い 帰線の上下に 95 %信頼区間を示している。また,SET * の適温域とし て,ASHRAE 12)  の快適範囲である SET * 22.2〜25.6℃の温度域を図 8,  10 に矢印で示した。  図 8 から,暖涼感は,概ね SET * の適温域の上限である 25 ℃台以 上において,緑のカーテンを設置した部屋はそうでない部屋に比べ て 95%信頼区間が常に低い値を示している。つまり,適

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