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啓 蒙 記 事 芸 術 の 総 合 としての 奉 神 礼 ここで 言 う 芸 術 とは 一 般 に 言 われる 意 味 の 芸 術 ではなく 教 会 芸 術 のことである 一 般 に 芸 術 と 言 えば 個 人 的 な 感 情 や 主 張 や 趣 向 を 表 現 するもので そのテーマ や 表 現

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- 1 - 発行者:函館ハリストス正教会 長司祭ニコライ・ドミートリエフ 〒040-0054 函館市元町3-13 TEL(0138)23-7387/FAX (0138)23-7939 URL http://orthodox-hakodate.jp 編集者:会報編集委員会 郵便振替 02660-5-1721

2014年8・9月 第37号

函館

ハリストス正教会

【神の国のシンボルとしての聖堂】

正教会以外のハリストス教徒が、聖堂を 「集会所」とみなすのに対し、正教会は聖堂 を「神の家」であると明確に位置付けてい る。 初めて訪れた人でも、 ご祈祷が行われている 正教会の聖堂の雰囲気 に感銘を受ける人は多 い。その雰囲気は、そこ に存在する見ゆると見え ざる全てのものを総括し て「荘 厳」、「厳 粛」、「神 聖」などの言葉で表現さ れる。 信徒にとっては、夜の徹夜祷のほのかな 蝋燭の灯り、大斎期の青いランパーダと司 祭の紫色の祭服、聖枝祭のネコヤナギ、復 活祭の紅卵、香炉から立ち昇る煙と香り、聖 歌の響き…など言葉では全てを言い表せな いほどの体験が聖堂の中にある。その体験 は人間の五感を通しているのだが、五感を 越えた聖神°性に及ぶ。 聖堂の中にあるもの、聖堂の中で起こるこ と は、色、形、味、温 度、 音 色、香 り な ど、人 間 の 感覚に訴えていながら、 実はそれらの感覚を越え たところにある神の国に 人間の注意を 向けるの である。 その意味で、聖堂の中 にある色、形、味、温度、 音 色、香 り など は 全て、 神 の 国 に 関す る シ ンボ ルである。 そして大事なことは、それらの一見“個々” のシンボルは、奉神礼に仕えるという共通 の目的のもとに、相互的に作用しながら聖 なる空間を造り出しているのである。 ▲ 聖三者教会(南極/ロシア正教会)

― 「イコン(聖像)」について(2) ―

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【芸術の総合としての奉神礼】

ここで言う芸術とは、一般に言われる意味 の芸術ではなく、教会芸術のことである。 一般に「芸術」と言えば、個人的な感情や 主張や趣向を表現するもので、そのテーマ や表現方法もまた個人的であり、時として 「芸術」という名の庇護のもとに奔放でさえ ある。そしてこのイメージは、正教会のもの について「芸術」という言葉を使うことを躊躇 させる。 しかし実際、イコンや聖堂建築や聖歌や祭 服の刺繍や美しい 聖器物が美を追求 する「芸術」であると いう事実を否定する ことはできない。 聖歌にしても、聖 歌が教会で担って い る 役 割 が ど れ ほ ど 崇 高 で こ の 世 的 で な い と し て も、そ の手法が この世の もの、即ち音楽であ り、合唱という「芸術」であることを否定する ことはできない。 このように特別に聖なる役割を担っている 教会芸術も、やはり美を意識した「芸術」な のである。個人的な喜怒哀楽を表現するこ とではなく、神を讃美する奉神礼に仕えるこ とを至上の目的として存在している「芸術」 なのである。

【イコンにはイコンの在るべき場所がある】

前置きが長くなったが、以上のことから言 えることは、イコンには、イコンの在るべき 場所があるということである。 神学者パウェル・フロレンスキイ神父は、 その場所を「諸芸術(教会芸術)を総合す る奉神礼という有機的な統一体の中」だと 言っている。 イコンはたまたま聖堂の中にあるのでは ない。講義室や博物館やサロンなど、どこ に置かれてもその価値が変わらないという ようなものではない。 しばらくフロレンスキイ神父の言葉を引用 してみよう。 「この有機的に統一された芸術的な環境 の 中 で、そう し た 環 境のなかだけで、イ コ ン は 真 の 芸 術 的 価値を持ち、またイ コンを真の芸術とし て 見 る こ と が で き る。教会芸術のどん な側面でも、それを 少 し 分 析 し て み れ ば、それが他の面と ― ― 私 の 個 人 的 な確信によれば、す べての側面と ―― 結びついていることがわかる。 (中略) 金 は天上世界に属するものとされ、博物館の なかではわざとらしい、寓意的なものであ るが、かすかに燃えるランパーダや数多く の蝋燭のともる聖堂の中では生きたシンボ ルと なり、なにかを表現するも のと なるの だ。これとまったく同じように、イコンの素朴 さ、ときには鮮やかな、耐えがたいほどに 鮮 や か な 色 彩、過 度 の 充 実 や 強 調 な ど は、教会の照明の効果を微細にわたって 考慮したものなのである。聖堂では、過度 に強調されたものは和らぎ、ふつうの表現 方法では到達できない力を伝えてくれる。 啓 蒙 記 事 ▲ 聖イサアク聖堂の天井壁画(クーポルの内側) (サンクト・ペテルブルク)

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- 3 - フロレンスキイ神父は、奉神礼を構成す る芸術の一つとして「煙の芸術」を挙げて いる。これはもちろん香炉から立ち昇る煙 であるが、「空気中に融けた香りの、薄い 空色の幕のおかげで、イコンや壁画を見る とき、空中の遠近が和らげられ、深められ ることは証明するまでもないだろう。このこ とは博物館においては夢想だにできず、ま た知られてもいない」と言っている。 フロレンスキイ神父は、奉神礼を構成す る芸術的要素として、神品の香炉を振る動 作や歩き方、聖パンを焼く“芸術”まで挙げ ている。また唇で福音経や十字架を接吻 する時のような「触覚の芸術」も含めて、こ れら全てが、奉神礼の構成要素なのだと。 そして一つが欠けても、一つのまとまりを 成している総体としての芸術の完全さ、完 結性が失われてしまうと言っている。 私たちは常日頃からこのような指摘を、 具体的に一つひとつ意識していなかったと しても、聖堂で祈ることに親しんでいる信 徒であれば、フロレンスキイ神父が言わん としている「芸術の総合体」を多かれ少な かれ霊のどこかで感じているのではないだ ろうか。 以下は私見になるが、私がフロレンスキ イ神父の“教会芸術の有機的総合論”を読 んでいてイメージしたものは「みかん」であ る。みかんの外側の皮は神・聖神°の恩 寵で、全てを包み、そして生かしているも のだ。みかんの房の一つひとつは、教会 芸術の諸分野(イコン、聖歌、建築、香りな ど)であり、それが統合されて奉神礼が成り 立っている。そしてその一つが欠けても、 奉神礼は完結しない。また、みかんの房の ようにそれらがお互いにくっついているの で、逆にその内の一つが脱落することを防 ぐ役割も果たしているのである。…フロレン スキイ神父が聞いたら、何と言うだろうか。 〔次号に続く〕 (長司祭ニコライ・ドミートリエフ) ◎参考文献:『逆遠近法の詩学』(フロレン スキイ著) 啓 蒙 記 事 ▲ 明るい電灯で照らされた美術館内に 無機的に展示されたイコン ▲ 乳香の香りが漂い、蝋燭の灯りが揺ら めく空間に浮かび上がる聖堂内のイコン

イコンは聖堂内の全ての奉神礼的要素と一体となって存在する時、

はじめてイコン本来の存在意義において生きることができる

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全国公会・東日本主教々区会議・北海道ブロック会議

で き ご と 平成26年度全国公会・東日本主教々区会議開催 北海道ブロック拡大宣教会議開催 ▲ 2014.06.28~29 東日本主教々区会議 ▲ 2014.05.24~25 北海道ブロック拡大宣教会議 7月12日(土)、13日(日)、ダニイル府 主教座下、セラフィム大主教座下ご臨 席のもと、2014(平成26)年度日本ハリ ストス正教会教団「通常公会」が東京復 活大聖堂を主会場として開催された。 ダニイル府主教座下の訓示は、資料 「聖者のはなし」をもとにして聖人の生 き方について説かれた。続いて活動報 告、決算、予算承認など議事日程に 従って議事が進められた。ステファン内 田圭一神父(釧路)が金十字架の佩用 及びカミラフカの戴帽を祝福された。セ ラフィム大主教座下の閉会訓示は、「宣 教」について、「救い」が実感できるよう な地道な使徒的役割を担っていく努力 と積み重ねの大切さを説かれた。 6月28日(土)、29日(日)、2014(平成 26)年度東日本主教々区会議が札幌 正教会を会場として行われた。 5月24日(土)、25日(日)、北海道ブ ロック拡大宣教会議が苫小牧正教会を 会場として行われた。2014年(平成26) 度の活動は以下の通り。 ・2014 年 7 月 29 日(火)~ 31 日(木) 「キャンプだホイ!2014 in 日高」 ・2014 年 9 月 13 日(土)~ 15 日(月・ 祝) 聖歌研修会(会場:函館正教会) ・2013年11月22日(土)~23日(日) 誦経者研修会(会場:札幌正教会)/24日(月・祝)信徒学びの会「イコンについて」 ・2015年1月24日(土)、25日(日) 宣教会議(会場:苫小牧正教会) ・2015年5月16日(土)、17日(日) 拡大宣教会議(会場:釧路正教会)

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- 5 - で き ご と

下村文部科学大臣来堂

6月14日(土)、下村博文文部科学大臣(オリンピック・パラリン ピック担当大臣兼)が聖堂拝観のために来堂した。管轄司祭が聖 堂を案内した後、函館正教会のゲストブックに一筆お願いすると、 「意志あるところ 必ず道あり」と署名と共に記した。 今回は、自民党の応援演説の関係での来函で、函館正教会の 拝観は下村大臣の個人的な希望とのこと。午後1時半より10分ほ どのスケジュールで拝観し、次の目的地へと移動した。 ▲ 聖堂を拝観する 下村文部科学大臣

函館正教会〔婦人会総会、詠隊総会〕

平成26年度婦人会総会、詠隊総会開催

6月1日(日)、婦人会と詠隊の総会が開かれた。婦 人会役員の改選があり、イリナ鈴木恵美子姉が婦人 会長に選出された。セルギイ下田執事長より「教会の 奉仕は、自分の信仰、自分の成長のために奉仕させ て頂くという気持ちを忘れないようにしましょう」と話が あった。詠隊は今年、新たにフォティ田村啓明兄とい う力強いメンバーを得、更なる向上が期待される。 ▲ 笑顔が素敵な婦人会です 管轄司祭より両会に向けて、日頃の熱切な奉仕に対する感謝と励ましの言葉があった。

函館正教会〔信徒総会〕

▲ 粛々と進められる議事日程 7 月 27 日(日)、信 徒 総 会 が 行われた。冒頭、管轄司祭より 信仰生活における「敬虔」につ いて、自分が内面的に日々変 わっていくことの大切さについ て話があった。今年度は多岐 にわたる諸行事及び準備が計 画され ており、信徒の活発な 参加が求められる。予算・決算の書類については、信徒にとってより解り易いフォームの検討 が課題として挙がった。その他の諸意見についても、後日執事会で誠意検討し、対応すること となる。役員改選では、キリル高井秀樹兄とピーメン西村考平兄が会計監査として代表役員よ り指名された。今年洗礼を受けたイオアン関本博兄が、信徒総会に初めて出席した。

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- 6 - で き ご と

ゴシケヴィッチ生誕200年記念行事

日本で最初にロシア帝国領事館が置かれた函館市では、その初代領 事であったゴシケヴィッチの生誕200年を数える今年、記念行事を行うこと となった。実行委員会は「函館日ロ交流史研究会」を中心とする市民団体 が行う。期日は9月27日(土)、28日(日)をメイン・イベントとし、その他には ゴシケヴィッチに関する「移動展」を十字街の函館市地域交流まちづくり センターにおいて3週間ほど展示する。この「移動展」は、ゴシケヴィッチ ゆかりの地、ミンスク(ベラルーシ)→サンクトぺテルブルク(ロシア)→パリ (フランス)→函館(日本)の各地を展示会が順番に移動するもの。 函館正教会は、現在のこの境内地そのものが、ゴシケヴィッチが1858年 ~1859年に箱館奉行所との根気強い交渉の末、奉行所より借受け、最初の領事館及び付属 聖堂を建てた地である。初代聖堂に「箱館復活聖堂」と命名したのも彼であった。聖ニコライ がこの箱館復活聖堂に赴任したのも、ゴシケヴィッチがサンクトペテルブルクの宗務院に宛て た手紙がもとであった。この境内地に、ゴシケヴィッチが率いるロシア領事館スタッフが居住 し、勤務した。1864年に妻エリザヴェータが永眠し、翌1865年、ゴシケヴィッチは帰国する。エ リザヴェータの骨は今日も函館に眠る。 このような経緯から、9月のメイン・イベントに関して、教会関係としてセラフィム大主教座下 (仙台)及びロシアより主教品が来賓として来函され、函館市内で行われる諸行事に参加され ることになっている。セラフィム大主教座下は、9月26日(金)~28日(日)のご祈祷を函館正教 会において立たれる予定(26日17:00~十字架挙栄祭徹夜祷、27日10:00~十字架挙栄祭聖 体礼儀、27日17:00~主日晩課、28日10:00~主日聖体礼儀。詳細は「9月の奉事・行事予 定」参照)。この機会に主教品祈祷のご恩寵に与り、ご聖体を拝領しましょう。

聖堂修復

聖堂修復の文化庁補助金事業に関して、2011年の東北大震災の前と後では大きく変わっ た点があり、今後、「函館ハリストス正教会復活聖堂」もその方針に従っていくこととなる。 その方針とは、修復の補助金を申請する際に、「耐震診断」を行っているかどうかが、申請 許可の可否に大きく影響するという点にある。耐震診断を行った上で、大規模修復の機会に 耐震補強工事を併せて行うことが補助金事業の条件となる。 耐震診断及び耐震補強工事自体は補助金事業であるが、それでも耐震補強工事の際の所 有者負担は“驚がく的な金額”になる可能性があるとのこと。 そのため函館正教会では、2014(平成26)年度より聖堂修復引当金を予算化して毎年一定 額を積立て、将来に備えることが7月の執事会において承認された。 ▲ゴシケヴィッチ 領事

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お 知 ら せ - 7 -

函館市北方民族資料館 ― 馬場脩氏のコレクション展示

7月26日(土)~11月31日(日)、末広町の函館市北方民族資料館において、「収蔵資料展 2014 ドクトル・馬場 千島を行く」が開催される。「ドクトル・馬場」とは、モイセイ馬場脩兄のこ とで、函館正教会の信徒であり(1979年永眠)、優れた考古学者・民俗学者であった。1933~ 1938年にかけて北千島を調査しており、当館にはアイヌなど北方先住民族の専門家であっ た馬場氏の貴重なコレクションが収められている。入場料は一般300円、学生150円。

函館ハリストス正教会バザー

2014年第一回実行委員会

期日:8月3日(日) 場所:信徒会館

昨年、信徒一丸となり、市民との交流の場として成果を挙げたバザーですが、今年も実施 することとなりました。実施日は、10月13日(月・体育の日)です。 実行委員会は昨年同様、執事会が中心となりますが、昨年のバザーで何らかの役割を分 担されていた信徒は、第一回実行委員会にできるだけ全員出席して下さい。 (執事会)

北海道ブロック聖歌研修会

期日:2014年9月13日(土)~15日(月・祝)

会場:函館ハリストス正教会

今年度の北海道ブロック聖歌研修会は、久しぶりに函館正教会が会場となります。 他教会から来函する信徒を歓迎する意味でも、開催教会の信徒の積極的な参加・参祷をお 願い致します。研修会にオブザーバーとしての出席を希望する方は、聖歌隊幹事マリヤ大 谷姉までご連絡下さい。 (聖歌隊)

2014年第二回イースターエッグ講習会

期日:9月27日(土)、28日(日)

会場:函館ハリストス正教会信徒会館

定員:16名(予め申込みが必要です) 会費(実費):500円(二日間)、300円(一日のみ) ✿道内外の参加者から好評を得ています。信徒の皆さんも是非、ご参加下さい✿

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- 8 - お 知 ら せ

函館正教会 敬老会のお知らせ

函館正教会恒例の敬老会を下記の日程で予定しています。 信徒全員で賑やかにお祝いしましょう。

期日:9月21日(日)

聖体礼儀の後、聖堂において敬老感謝祈祷を行います。 (当日は敬老感謝祈祷の後、「秋のパニヒダ」も行います)。 ご祈祷の後は、信徒会館においてささやかな祝賀の食事を用意致します。 敬老会ではない方々も是非ご参加下さい(食費:500円)。 ※北海道ブロック聖歌研修会(会場:函館正教会)が9月13日(土)~15日(月・祝)の日程で 行われるため、函館正教会では、「敬老会」と「秋のパニヒダ」を9月21日(日)に行います。

図 版

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上磯ハリストス正教会だより

【 永 眠 者 記 憶 の お 知 ら せ 】

8月13日(水)午前10時より、聖堂においてパニヒダを行い、その後、野崎墓地において墓 地祈祷を行います。墓地の方へも多くの方々のご参祷をお願い致します。糖飯と記憶録を ご持参下さい。 9月23日(火・祝)午後7時より、聖堂においてパニヒダを行います。糖飯と記憶録をご持参下さい。 永眠した祖先の霊の安息のために祈ることは、 正教会の古くからの伝統であり、信徒の大切な勤めです。 お 知 ら せ / 上 磯

【北海道ブロック聖歌研修会(会場:函館正教会)のお知らせ】

今年の北海道ブロック聖歌研修会の開催地は道南です。9月13日(土)~15日(月・祝)、函館正 教会に道内各教会からの信徒が集まって研修と祈りを共にします。道央・道東からの信徒を歓迎 する意味でも、地元信徒が積極的に参加しましょう。

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- 11 - 歴 史 の ひ と コ マ

【日本正教会信徒、千島アイヌを援く】

樺太千島交換条約後10年を経て、初めて 色丹島巡回を行ったティト小松韜蔵神父と アレクシイ澤邉悌太郎伝教者は、正教新報 第112号(明治18〔1885〕年8月1日発行)に 「志古丹島の実況」という記事を投稿してい る。私たちはこの記事から、色丹島に移され た後、たった二年目にして、惨憺たる彼らの 生活の現実を知るのである。 以下、アレクシイ澤邉伝教者の報告より抜 粋(漢字、句読点などについて、読み易いよ うに多少手を加えた)。

千島列島の正教伝道(6)

歴史のひとコマ

▲海に浮かぶ秀峰・阿頼度富士 あ ら い ど ふ じ (千島列島) …… もとより文字なく、律法なし。ただ天然自然の法の民なり。宗教修身の点につきては我 らの教えとなること、もっとも多し。我ら到着せし時、船上よりして見たるは、彼らが墓所に建て たる大いなる十字架なり。即ち知る。彼ら十年余牧者の声を聞かず、十年間霊糧に養われず (聖体拝領に与ることができなかった)。十年の星霜は彼らのために十字架の道なりき。而して 今に至りて十字架を保ちて己の印となし、敬虔の道を忘れざりき。されば小松師父、彼らの宅 に到られし時には、男は女に告げ、女は幼子を抱き、祝福を受く。5、6歳の児童といえども、 手を胸にして福を受け、神父の手に接吻せり。また家宅浄めのために行きて実見せしに、家 ごとに聖像を掛けざるなし。…… 順良敬虔の民なれど、地上の事にうとければ、地上の幸福 に遠し。実にこの民の不幸なるは地上に見ること多からず。その家屋は風雨を防ぐの全きをえ ず、冬時には吹雪家に満ちみちて、寒気しのぐあたわず。…… 冬寒去り春暖至れば、河水増 し、家辺の雪と共に溢れて家に入り、十七、八戸の中、水にひたされざるもの、唯二戸のみ。 且つ衣食甚だ乏しく冬時該島の四面凍るにより、魚肉獣肉野菜等全く尽き、唯米と塩のみ。 腐れたるジャガタライモは病者の養生品なるを以って察すべし。…… 去年8月より今年3月ま でに死去せるもの十五名、即ち九十八名の人員減じて八十三名となれり。その病家を見舞う に当たりてや、目に見るものは血痰を入れたる皿なり。耳に訊くはうめく声と咳なりき。その惨 怛の状、言わん方なし。之を見ば、猛き益荒男も心胆の寒さを覚えん。この稿を終わるに当た りて、一つの間接なることを指さん。それは彼らの飼える牛なり。その痩せさるは世に牛多しと いえども、昔ファラオンが夢みしニール川(ナイル河)の牛の他にかかる牛はあるまじと思う程

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- 12 - 歴 史 の ひ と コ マ なり。その尾は寒気のために切れ落ちたるを見たり。この牛を 見ば、彼ら冬時の状況察し得べし。之を牧する者の食少なくし て食物の獣類に及ばざりしを知るに足るべし。余、ここに筆を 止むるに当たりて、読者諸士に告げ、また乞うこと有り。読者諸 兄よ、我が既に記せるところは飾ならざる事実なりと信ぜられ よ。彼ら十年の星霜、牧者の声を聞かず、諸機密を領するなく して居りしを思えよ。また彼ら去年よりして当冬に至るまで忍び たる惨状を己が身の上に比べ見よ。しかせば必ず大いなる教 えを受けん。ああ、彼らが経過せる十年の有様は文字ならざるも生ける手本なり。彼らが去年 今年忍べる所の事柄は言葉ならずも言葉に勝れる説教なり。いかなる説教ぞ、いかなる手本 ぞ、敬虔の手本なり、矜恤の説教なり。この手本、倣うべし、この説教、聞いて行うべし。敬虔 の教えは彼らより得るところ、矜恤の行いは我らより送るところのものなり。主いわく、この至微 なる者の一人に行わざるは即ち我に行わざりしなり(マトフェイ伝25章45-46)と。主を愛せるの 諸士、至微なる志古丹信者を矜恤せよ、至貧なる聖三者会の兄弟に施せよ。 アレクセイ澤辺伝教者の報告はここで終わり、その後にティト小松神父の後日談が続いてい る。(以下、抜粋。) 右、澤邉アレクセイ兄が述べる所の志古丹の実況、いささかも文飾を加えざるのみならず、 却って言語筆墨の述べ盡すあたわざるを恨むのみ。余の出京するや直ちに之をエピスコプ (聖ニコライ)に腹命す。エピスコプ黙然として感泣し、暫くして余に言いていわく、「汝は彼ら の司祭なれば、もっぱらその任を尽くし、主・神イイススの聖言を実行して、宜しくおもんばかる ところあるべし」と。 小松神父の報告を聞いた聖ニコライが言葉なく涙を流したという記述が胸を打つ。 色丹島の千島アイヌ信徒の艱難を知った日本正教会の信徒たちは、直ちに支援の手を差 し伸べた。「婦女小児に至るまで己の衣服を脱ぎ、皆携えて小松司祭のもとに来りて、志古丹 島の兄弟姉妹に伝与せんことを請う者続々たり」(前掲正教時報)と記されている。 結局、同年(1885年)10月、沢山の金銭衣服を携えて小松神父は再度色丹島を訪れ、無事 これらの矜恤品を千島アイヌ信徒に届けるのである。いよいよ矜恤品を各信徒の家に分配す る段になった時の小松神父との会話は、彼らの順良な性格を表しており、感動的である。小松 神父が、自分は公平に分配したくても服には新しい物、古い物があり、サイズもまちまちなの でどうしようかと彼らに尋ねると、彼らは、「神父さんが分配して下されば些少の差など優劣が あったとしても、私たちにとっては公平至当のことで、甘んじてそれを受けます。神父さんの手 を煩わすのは恐縮ですが、神父さんの手で分配して下さい」と答えているのである。 (次号に続く) 〔S.Y.〕 ▲ ハマナスの花 (色丹島の浜辺に群生する)

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8月の奉事・行事予定

8/2(土) 函館 17:00 主日徹夜祷 福音経:イオアン64端 20:11-18 上磯 19:00 主日晩課代式祈祷 3(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷 函館 10:00 五旬祭後第8主日聖体礼儀 第7調 使徒経:コリンフ前124端 1:10-18/福音経:マトフェイ58端 14:14-22 ※聖体礼儀の後、8月及び9月の聖名祭モレーベンを行います 13:00 信徒学びの会/婦人会 9日(土)、10日(日) ニコライ神父、上磯正教会出張 9(土) 上磯 19:00 主日晩課式 10(日) 上磯 10:00 主日聖体礼儀 函館 10:00 五旬祭後第9主日代式祈祷 第8調 使徒経:コリンフ前118端 3:9-17/福音経:マトフェイ59端 14:22-34 13日(水) 上磯 10:00 パニヒダ及び墓地祈祷(聖堂でのパニヒダの後、野崎墓地へ移動) 14日(木)~23(土)まで 生神女就寝祭の斎 16(土) 函館 17:00 主日・主の顕栄祭徹夜祷 福音経:イオアン66端 21:1-14/〔祭日〕福音経:ルカ45端 9:28-36 上磯 19:00 主日晩課代式祈祷 17(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷 函館 10:00 五旬祭後第10主日・主の顕栄祭 聖体礼儀 第1調 〔主日〕使徒経:コリンフ前131端 4:9-16/福音経:マトフェイ72端 17:14-23 〔祭日〕使徒経:ペトル後65端 1:10~19/福音経:マトフェイ70端 17:1-9 ※顕栄祭聖体礼儀では、奉神礼の伝統として果物の成聖を行います。 秋の実りの祝福の意味ですので、希望者は各自葡萄などの果実をご持参下さい。 13:00 執事会/聖歌練習 23(土) 函館 17:00 主日・生神女就寝祭徹夜祷 〔主日〕福音経:イオアン67端 21:15-25/〔祭日〕福音経:ルカ4端 1:39-49,56 上磯 19:00 主日晩課代式祈祷 24(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷 函館 10:00 五旬祭後第11主日・生神女就寝祭聖体礼儀 第2調 〔主日〕使徒経:コリンフ前141端 9:2-12/福音経:マトフェイ77端 18:23-35 〔祭日〕使徒経:フィリッピ240端 2:5-11/福音経:ルカ54端 10:38-42,11:27-28 30(土) 函館 17:00 主日徹夜祷 福音経:マトフェイ116端 28:16-20 上磯 19:00 主日晩課代式祈祷 31(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷 函館 10:00 五旬祭後第12主日聖体礼儀 第3調 使徒経:コリンフ前158端 15:1-11/福音経:マトフェイ79端 19:16-26 8 月 の 奉 事 ・ 行 事 予 定

主 の 顕 栄 祭

正教会では顕栄祭のご祈祷の中で、主・神に祝福 された秋の収穫に感謝するため、ぶどうやりんごを 聖堂に持参し、成聖してもらう伝統があります。希望者は8月17日(日)の聖 体礼儀前に、果物をカゴや器に盛り、聖堂にご持参下さい。

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9月の奉事・行事予定

6日(土)、7日(日) ニコライ神父、上磯正教会出張 6(土) 上磯 19:00 主日晩課式 7(日) 上磯 10:00 主日聖体礼儀 函館 10:00 五旬祭後第13主日 代式祈祷 第4調 使徒経:コリンフ前166端 16:13-24/福音経:マトフェイ87端 21:33-42 13日(土)~15日(月・祝) 北海道ブロック聖歌研修会(会場:函館正教会) 13(土) 函館 16:00 主日徹夜祷 福音経:マルコ71端 16:9-20 上磯 19:00 主日晩課代式祈祷 14(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷 函館 10:00 五旬祭後第14主日聖体礼儀 第5調 使徒経:コリンフ後170端 1:21-2:4/福音経:マトフェイ89端 22:1-14 20(土) 函館 17:00 主日・生神女誕生祭徹夜祷 〔主日〕福音経:ルカ112端 24:1-12/〔祭日〕福音経:ルカ4端 1:39-49,56 上磯 19:00 主日晩課代式祈祷 21(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷 函館 10:00 五旬祭後第15主日・生神女誕生祭聖体礼儀 第6調 〔主日〕使徒経:コリンフ後176端 4:6-15/福音経:マトフェイ92端 22:35-46 〔祭日〕使徒経:フィリッピ240端2:5-11/福音経:ルカ54端10:38-42,11:27-28 聖体礼儀後、敬老会感謝祈祷/秋のパニヒダ (※各自、糖飯と記憶録をご持参下さい) 13:00 敬老会祝賀会/執事会 23(火・祝) 上磯 19:00 秋のパニヒダ(※各自、糖飯と記憶録をご持参下さい) 27日(土)、28日(日) 「ゴシケヴィッチ生誕200年記念行事」(実行委員会主催/会場:函館市) 記念行事の来賓として、26日(金)~28日(日) セラフィム大主教座下が来函されます。26日十字架挙栄祭徹夜 祷、27日十字架挙栄祭聖体礼儀、27日主日晩課、28日主日聖体礼儀は、函館正教会でご祈祷に立たれます。 26(金) 函館 17:00 十字架挙栄祭(12大祭)徹夜祷 福音経:イオアン42半端 12:28-36 27(土) 函館 09:00 十字架挙栄祭(12大祭)聖体礼儀 使徒経:コリンフ前125端 1:18-24/福音経:イオアン60端 19:6-11,13-20,25-28, 13:00 イースターエッグ講習会(第一日目) 30-35 17:00 主日晩課 上磯 19:00 主日晩課代式祈祷 28(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷 函館 10:00 五旬後第16主日聖体礼儀 第7調 使徒経:コリンフ後181端 6:1-10/福音経:マトフェイ105端 25:14-30 13:00 イースターエッグ講習会(第二日目) 9 月 の 奉 事 ・ 行 事 予 定

【お知らせ】

9月の上磯正教会司祭巡回は、第一週(6日〔土〕、7日〔日〕)となります。 「北海道ブロック聖歌研修会」(会場:函館正教会)と「ゴシケヴィッチ生誕200年記念行事」 (会場:函館市)との日程調整の関係です。どうぞご理解とご協力をお願い致します。 (管轄司祭ニコライ・ドミートリエフ)

参照

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