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固体高分子形燃料電池システム技術開発

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Academic year: 2021

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2.8 水素分離型改質技術開発

社団法人日本ガス協会 白崎 義則 1.事業の概要 水素分離型リフォーマには水蒸気改質反応より水素が生成する触媒層中に水素透過膜が配置さ れており、改質反応と水素精製を単一の反応器で行うことができるため、シンプルかつコンパク トで高効率なシステムになることが期待できる。(社)日本ガス協会では、固体高分子形燃料電池 用水素製造に関して、水素分離型改質方式の高効率化と水素製造システムとしての実用化を目的 とし、平成12 年 7 月から平成 17 年 3 月までの 5 年間において、水素分離型改質技術開発を実施 した。本事業は、水素分離型リフォーマの高効率化技術開発、水素分離型リフォーマの重要な構 成部品である膜モジュールの製造技術開発、水素分離型改質システム 40Nm3/h 級試験機の開発 からなる。 平成 14 年度までに、パラジウム系合金膜を使用した水素分離型リフォーマと水素吸蔵合金利 用水素吸引ユニットを搭載した水素製造能力20 Nm3/h の純水素製造システムを開発、運転試験 を実施し、本方式の最大の特長である高い水素製造効率70%を実証することができた。20 Nm3/h 級機を用いた一連の運転試験から抽出された課題を基に、平成 15 年度までに水素製造量 40Nm3/h 級試験機を製作し、平成 16 年度において、本事業の開発目標である①水素製造能力 40Nm3/h 以上、②水素純度 99.99%以上、③水素製造効率 70%以上を達成した。 2.開発目標 水素吸引ユニットとの連動運転を通じ革新的な水素製造装置を開発し、固体高分子形燃料電池 用の純水素製造装置として水素分離型改質システムが有効であることの検証を目的として、以下 の事業目標を設定した。 事業目標(平成17 年 3 月末) 水素燃料電池自動車に水素を供給するステーションを含む種々の純水素製造装置として水素分 離型リフォーマシステムが有効であることを検証すること ①1時間当たりの水素製造量が40Nm3/h 以上であること ②水素の製造効率が70%以上であること ③水素の純度が4N(99.99%)以上であること 3.事業全体での成果 図1 20Nm3/h 級高効率試作機 平成12 年から平成 14 年度において、高効率化技 術開発と膜モジュールの製造技術開発を実施し、平 成14 年度から平成 16 年度においては、水素分離型 改質システム40Nm3/h 級試験機の開発を実施した。 3-1 高効率化技術開発 (1)高効率試作機の設計・製作・試験 竪置単管多重円筒型、バーナ燃焼方式のリフォー マ構造を有する水素製造能力 20Nm3/h の高効率試 175

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作機(図1)の設計・製作・試験を行い、水素製造量21.5Nm3/h を確認した。製造した水素は、 燃料電池コージェネや水素燃料電池自動車に必要な水素純度(99.99%)を上回る水素純度 99.999%であった。また、従来の水素製造装置と比較して約 10%程度高効率となる水素製造効率 70.3%(HHV)が得られた。性能試験後、耐久試験に着手し、起動回数 33 回、運転時間 1630 時間の実績を得たが、膜モジュールの熱機械的信頼性に関する課題が抽出された。 (2)水素吸引ユニット要素試験 水素分離型リフォーマと水素吸引ユニットを組み合わせたシステムの最適化に必要なデータの 収集を目的として、水素吸蔵合金を利用した水素吸引ユニットについて、水素吸引・放出に関す る熱的データ取得と不純物耐性に関するデータ取得を実施した。要素試験で得られた知見を基に、 40Nm3/h 級試験機向け水素吸引ユニットとして、水素吸蔵合金利用水素吸引ユニットの最適化を 検討するとともに、機械式吸引ポンプも候補として加えて比較検討を行い、システム効率、装置 の大きさ、コストを勘案し、機械式吸引ポンプを選択し製作を行った。 3-2 膜モジュール製造技術開発 平成12 年から平成 14 年度において、水素分離型リフォーマシステムに最適なモジュールの仕 様を見出すことを目的として、圧延法、無電解メッキ法、アークイオンプレーティング法により 膜モジュールを製作し、特性評価を実施した。その結果、いずれの製法による膜モジュールにお いても、熱サイクルに対して性能低下が観察されたが、水素透過膜と支持体の接合方法の改良に より、耐熱サイクル特性が向上する可能性があることを明らかにした。 3-3 40Nm3/h 級試験機の開発 (1)40Nm3/h 級試験機の構造 20Nm3/h 級高効率試作機で得られた知見を基に、スケールアップ性、メンテナンス性を考慮し て、40Nm3/h 級試験機の設計、製作を行った。図2にリフォーマの構成単位である反応管の構造 を、図3に外観を示す。使用した水素分離膜モジュールは平板型であり、厚さ20 ミクロン以下 のパラジウム系合金薄膜を金属製支持体と一体化させたものである。反応管の中には、2 本の膜 モジュールが組み込まれており、膜モジュールの周囲には、Ni 系改質触媒が充填してある。図4 には、40Nm3/h 級水素分離型リフォーマの構造を、表1に はリフォーマ各部の寸法を示す。本リフォーマは、竪置多 管式角型構造であり、本体下部に火炉を設け、反応管を火 炉の上部に一定の間隔をおいて均等に配置し、火炉で発生 させた燃焼ガスを反応管の間隙を上向きに流しながら反応 原料ガス オフガス N-3 N-1 N-2 N-3 膜モジュール 触媒 水素 オフガス 原料ガス 水素 水素 オフガス 膜モジュール 触媒 615.0 86.2 22 . 0 水素 水素 図2 反応管の概略構造 図3 反応管外観

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177 水処理装置 水 ブロワ 冷却水 管を加熱する。反応管は、7 本を 1 組にした ユニットを構成し、このユニットを16 個組 み込み、メンテナンスのために膜モジュール をユニット単位で交換可能な構造とした。試 験装置のフローを図5に示す。リフォーマの 後段には水素吸引ユニットを設置し、製造し た水素は常圧以下で吸引し、0.64MPaG に昇 圧放出させた。装置の外観を図6に示す。ユニットの大きさは、幅3.56 m×奥行き 2.56 m×高さ 2.30 m であり、従来型 PSA 方式水素製造装置と比較すると、約 1/3 の大きさに小型化されたも のとなった。なお、図6の試験機ユニット内にはリフォーマ、ボイラー、ブロワ、熱交換器類、 および制御盤を設置した。その他、試験装置システムに含まれている脱硫器、都市ガス圧縮機、 水処理装置および水素吸引ユニットは別置きとした。 都市ガス+水蒸気 水素 オフガス 火炉 バーナ 分散板 燃焼排ガス 膜モジュール 予備触媒層 ジャケット ヘッダー 角型反応管 膜モジュール 反応管ユニット 角型反応管 図4 40Nm3/h 級リフォーマの概略構造 水素吸引ユニットへ 排気ガス 圧縮機 都市ガス 脱硫器 バーナ 空気 水素 水素 オフガス ボイラ- 気 冷却水 ドレン 水蒸 <A> <A> 水素分離型 リフォーマ 膜モジュー ル 触媒層 排気ガス 表1 40Nm3/h 級試験機各部の寸法 各部名称 単位 寸法 膜厚 μm < 20 本数 本 224 長さ mm 460 幅 mm 40 膜モジュール 厚さ mm 8 長さ mm 615 幅 mm 86 厚さ mm 25 反応管 本数 本 112 横 mm 1200 奥行き mm 750 リフォーマ (保温材含) 高さ mm 1350 図6 40Nm3/h 級試験機ユニット 図5 システムフロー図 (2)40Nm3/h 級試験機の改造 平成15 年度までに、水素製造量 40Nm3/h 級の水素分離型リフォーマ試験機の製作・試験を実 施したが、①水素製造能力40Nm3/h 以上、②水素純度 99.99%以上、③水素製造効率 70%以上 を同時に達成する運転条件を見出せなかった。そのため、性能向上のための検討を行い、H16 年 度において、試験機の性能向上のための改造工事を実施した。40Nm3/h 級水素分離型リフォーマ は図4に示すように、当初は 16 個の反応管ユニット各々に原料を均一に供給するように構成し

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ていた。これらの16 ユニットを 2 段に分割し、前段 8 ユニットと後段 8 ユニットを直列に連結 し、前段8 ユニットに原料ガスを供給し、前段 8 ユニットから排出されたプロセスガスを後段 8 ユニットに供給するように改造をした。この改造は、反応管の温度分布状態を改善するとともに、 反応管内のガス流速を増加させ水素分離膜表面へのガスの拡散を促進することにより、水素製造 量を増大させることを目的として実施した。 3)40Nm3/h 級試験機の運転試験結果 供 -4 膜モジュールの耐久性試験 て、40Nm3/h 級試験機用水素分離膜モジュール単体の性 能 .今後の課題 開発した水素分離型リフォーマシステムおいて、水素製造効率76.2%を達成し、 化 ( 図7に改造前および改造後の都市ガス 給量に対する水素製造効率、水素製造 量 の 関 係 を 示 す 。 都 市 ガ ス 供 給 量 11.6Nm3/h の時、水素製造量 40.1Nm3/h、 水素純度 99.999%以上、水素製造効率 76.2%であることを確認した。このとき のバーナ燃料はオフガスのみで、熱自立 運転となっている。改造前と比較し、同 じ原料負荷においても、水素製造量が増 加し、効率は 5 ポイント程度向上した。 反応管を直列化したことにより、ガス流 速が増大し、水素分離膜表面へのガスの 拡散が促進されたことにより、性能が向 上したと考えられる。以上の試験結果により、事業全体の目標である①水素製造能力 40Nm3/h 以上、②製品水素純度99.99%以上、③水素製造効率 70%以上、を達成することができた。また、 部分負荷運転も実施し、30%までの負荷範囲において高効率を維持していることが確認された。 その後、連続運転を継続し、延べ改質時間3310 時間、起動回数 61 回を経過後も、水素純度 99.99% 以上を維持していることを確認した。なお、水素製造効率は、次の計算式により算出した。 0 10 20 30 40 50 60 70 2 4 6 8 10 12 14 16 原料都市ガス流量(Nm3/h) 効率 (% 、HH V) 10 15 20 25 30 35 40 45 水素 製造 量( Nm 3 /h ) 圧力:(一次側);0.8 MPaG, (二次側);-0.06~-0.08 MPaG 温度:(改造前);536~560℃ (改造後);495~540℃ S/C:3.0 ~3.2 水素製造量 改造前 改造後 改造前 改造後 吸引ユニット込み 図7 水素分離型リフォーマ試験機性能曲線 80 90 100 50 55 60 効率 改造後 ×都市ガス総発熱量 +補機動力 原燃料都市ガス流量 100 HHV) = 水素製造量×水素総発熱量  × 効率(%、 3 平成15 年度から平成 16 年度におい を把握するため、反応管単位での長時間連続改質運転試験を実施した。運転時間 2000 時間ま でに、水素透過性能は初期性能の40%程度まで低下したが、その後性能劣化はなかった。膜モジ ュールの長時間連続運転により、約5000 時間の耐久性を見極めることが出来た。 4 本事業を通じて 石燃料からの水素製造において最も高いエネルギー効率を提供できる有力な改質技術であるこ とを示すことができた。水素分離による非平衡型改質システムでは、80%以上の効率が期待でき るが、今後、実用化を推進するうえでは、更なる高効率化・低コスト化・耐久性の向上が必要で ある。

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2.9 固体高分子形燃料電池システム実用化技術開発

(株)日立製作所 小町谷 昌宏、藤村 秀和、渡辺 紀子 バブコック日立(株) 谷田部 広志 1.事業の概要 固体高分子形燃料電池(PEFC)の実用化を図る上で、他の燃料電池や競合技術に比較してコストをど の程度抑えることができるかが非常に大きな意味をもつ。本開発では PEFC 定置形分散電源を対象 として、材料、コンポーネント、システムの広い範囲に亘り低コスト化を目指した技術開発を進めた。電池部品、 水素製造装置及び触媒を中心に相互にコストに影響し合う要素を把握しながら、最適な材料構成と構 造の評価・選定を進め、実用化を見通すことを目標としている。なお、水素製造装置は、化学 プラント及び溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)用水素製造装置に関し実績のあるバブコック日立株式会 社に再委託した。 2.開発目標 実用化に向けては、PEFC スタックの主要構成部材である電解質膜及びセパレータのコスト低減の見通しを 得ることを目的とする。電解質膜は汎用エンジニアリングプラスチックを用いた電解質膜を開発し、従来のフ ッ素系電解質膜の約 1/20 までコスト低減することを目指した。セパレータはプレス加工した耐食性金属に導 電性耐食塗料を塗布する複合化材料を開発し、モールド黒鉛セパレータの量産時コスト目標の約 1/2 への低 減を目指した。さらに、低コスト、小型化かつ起動時間の短い低温作動型の水素製造装置開発のた めに、燃焼触媒、改質触媒及び CO 選択酸化触媒等の各過程での最適反応条件を把握し、開発触媒 の寿命及び信頼性の評価を行う一方、水素製造装置の金属部材のコスト低減及びオートサーマル改質方式 の採用と触媒のハニカム化を検討した。本開発の低コスト PEFC スタック、高速起動水素製造装置及び二 次電池等を組み合わせて、システム総合効率が 70%(LHV 基準)以上を見通すことができる高効率の 1kW 級 PEFC システムを構築しその実用性を検討した。 3.事業全体での成果 3―1 電解質膜の開発 固体高分子形燃料電池の低コスト化を目的に、安 価な汎用エンジニアリングプラスチックと簡便なスルホン化処 理の組合せによる電解質膜の作製法を検討し、 ベース材料として PES(ポリエーテルスルホン)系の樹脂を 選択した。次に、スルホン化した PES(S-PES)の ME 化条件について検討し、小型単セルで従来膜と同 等の性能を発現できる事を確認した。また、連 続発電による寿命耐久試験を行い、5,000 時間 運転を達成し、炭化水素系電解質膜として長時 間の発電に耐え得る電解質膜であることを確認した。(図1)さらに、大型化について検討し、 実機サイズの MEA を作製した。この MEA を、金属セパレータと組合せショートスタック(10 セル)を作製し、性能 評価した。図 2 に示すように 500mA/cm2まで発電可能であることを確認でき、課題とされてき 図1 S-PES系膜使用セルの電圧の経時変化 経過時間(h) セ ル電圧 (mV ) 0 200 400 600 800 1000 1200 0 1000 2000 3000 4000 5000 小型単セル I : 250mA/cm2 Gan/Gca : 純水素/空気 Tcell : 70℃ Uf/Uo : 70/40% 図1 S-PES系膜使用セルの電圧の経時変化 経過時間(h) セ ル電圧 (mV ) 0 200 400 600 800 1000 1200 0 1000 2000 3000 4000 5000 小型単セル I : 250mA/cm2 Gan/Gca : 純水素/空気 Tcell : 70℃ Uf/Uo : 70/40% 経過時間(h) セ ル電圧 (mV ) 0 200 400 600 800 1000 1200 0 1000 2000 3000 4000 5000 小型単セル I : 250mA/cm2 Gan/Gca : 純水素/空気 Tcell : 70℃ Uf/Uo : 70/40% A 179

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た電解質膜およびセパレータの低コスト化において、炭化 カ ―2 セパレータの開発 求められる耐久時間は 40 し 陥部(ピンホール等)が生じても耐食性を確保 済性(コスト)、生産性およ び 寿命を評価した。その結果、 16 3 焼触媒は、当社が製品化し、実績のあるハニカム型 Pd-La・β・Al2O3触媒を適用し、オートサーマル 燃焼することを確認した。 触媒について DSS(Daily start an 水素系電解質膜と金属セパレータの組合せが有力な候 補の一つになり得る見通しを得た。市販フッ素系電 解質膜の現状コスト(年間 100 万枚生産ベース)と比較 し約 1/300 と安価にできる見通しであり、膜メー が将来量産時の目標としているコストに対しても約 1/20 に低減できる見通しである。 3 家庭用分散電源として ,000h 以上とされている。これを達成するため に、金属基板に導電性の塗料を塗布し、セパレータと を補う手法を検討した。また、実用上塗料層に欠 できるように基板金属も合せて検討する必要がある。導電性塗料の防食機能並びに導電性を高 めるため、各種導電性フィラーおよび樹脂バインダーの中から高機能の材料を見出した。基板金属につ いては耐食性を比較評価したところ、チタンクラッド材の耐食性が水素極および空気極下ともに優れ、 かつ、チタン自身からの溶出物が少ないため、セパレータ材料として最も好適と考えられる金属である と判断された。 これに引き続き、各種加工法を用いてクラッド金属セパレータを試作し、経 て耐食性の向上を図ることで、金属の欠点 図2 実機サイズ膜MEAと金属セパレータの    組合せによる10セルスタック性能 0 2 4 6 8 10 0 100 200 300 400 500 電流密度(mA/cm2 スタッ ク電圧(V) 0 100 200 300 400 500 スタ ック出力(W ) Gan/Gca : 純水素/空気 Tcell : 70℃ Uf/Uo : 80/40% 図2 実機サイズ膜MEAと金属セパレータの    組合せによる10セルスタック性能 0 2 4 6 8 10 0 100 200 300 400 500 電流密度(mA/cm2 スタッ ク電圧(V) 0 100 200 300 400 500 スタ ック出力(W ) Gan/Gca : 純水素/空気 Tcell : 70℃ Uf/Uo : 80/40% 0 2 4 6 8 10 0 100 200 300 400 500 電流密度(mA/cm2 スタッ ク電圧(V) 0 100 200 300 400 500 スタ ック出力(W ) Gan/Gca : 純水素/空気 Tcell : 70℃ Uf/Uo : 80/40% 10セルスタック(電極:100×100cm2) 10セルスタック(電極:100×100cm2) 10セルスタック(電極:100×100cm2) 加工精度など、セパレータとして動作するための各種機能性を総合的に評価し、その結果、プレス 成型法が優れていると判断した。そこで、プレスセパレータ構造を検討し、プレスセパレータによる単セルお よびショートスタックを試作した。その結果、燃料ガスとして純水素を用いた場合、従来の炭素系セパレー タとほぼ同等の発電性能を示し、所望の結果を得ることができた。 これと同時に、導電性塗料塗布プレスセパレータ単 セルの発電試験による 図3 プレスチタクラッドセパレータを用いた単セルの発電 寿命試験におけるセル電圧の経時変化 劣化率 : -2.7mV/kh 0 200 400 600 800 0 5000 10000 15000 20000 累積発電時間 (h) セ ル電圧 ( m V) I : 250mA/cm2 Gan/Gca : 純水素/空気 Tan/Tcell/Tca : 70/70/70℃ Uf/Uo : 80/40% 図3 プレスチタクラッドセパレータを用いた単セルの発電 寿命試験におけるセル電圧の経時変化 劣化率 : -2.7mV/kh 0 200 400 600 800 0 5000 10000 15000 20000 累積発電時間 (h) セ ル電圧 ( m V) I : 250mA/cm2 Gan/Gca : 純水素/空気 Tan/Tcell/Tca : 70/70/70℃ Uf/Uo : 80/40% 劣化率 : -2.7mV/kh 0 200 400 600 800 0 5000 10000 15000 20000 累積発電時間 (h) セ ル電圧 ( m V) I : 250mA/cm2 Gan/Gca : 純水素/空気 Tan/Tcell/Tca : 70/70/70℃ Uf/Uo : 80/40% 1000 1000 1000 ,000h の発電時間(図 3)を実証することがで き、かつ、電池劣化率-2.7mV/kh(そのうち、セパ レータ自信に起因する劣化は最大でも-1.3mV/kh と推定)の耐久性に優れるセパレータを得ることが できた。経済性を種々の条件下で計算すると、 従来の切削黒鉛セパレータの数万円に対し、開発金 属セパレータは量産時数百円のオーダーまで低コスト化が 可能であると見込まれる。 ―3 水素製造用触媒の開発 燃 改質方式条件下で安定に着火・ LNG 改質触媒は LNG・ナフサの水蒸気改質用として実績がある Ni-希土類系粒状触媒をハニカム 化し、更に改良を行い低温活性に優れる触媒を開発した。本 d stop)運転 360 回相当の加速耐久評価と連続耐久評価 232 時間を実施し、評価後改質温

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度 650℃における性能に変化が無いことを確認した。 更に、LPG への適用性を C3H8改質反応 で評価し、運転条件を明確にした。 181 12 8 4 0 水素発生量(NL/m 0 50 100 150 200 250 300 350 水素製造装置運転時間(h) 水素製造装置運転結果:65回起動, 350h データプロット :負荷100% 都市ガス量      :5.08~5.14NL/Min 部分酸化空気量   :11.8~13.8NL/min 図6 運転時間と水素発生量の経時変化 12 8 4 0 水素発生量(NL/m 0 50 100 150 200 250 300 350 水素製造装置運転時間(h) 水素製造装置運転結果:65回起動, 350h データプロット :負荷100% 都市ガス量      :5.08~5.14NL/Min 部分酸化空気量   :11.8~13.8NL/min 12 8 4 0 水素発生量(NL/m 0 50 100 150 200 250 300 350 水素製造装置運転時間(h) 水素製造装置運転結果:65回起動, 350h データプロット :負荷100% 都市ガス量      :5.08~5.14NL/Min 部分酸化空気量   :11.8~13.8NL/min 図6 運転時間と水素発生量の経時変化 図5 改良による水素製造装置性能の変遷 0 20 40 60 水素濃度:49vol%以上(dry) H15年 H14年 H13年 H12年 0 20 (%) H16年 図5 改良による水素製造装置性能の変遷 0 20 40 60 水素濃度:49vol%以上(dry) H15年 H14年 H13年 H12年 0 20 (%) H16年 0 20 40 60 水素濃度:49vol%以上(dry) H15年 H14年 H13年 H12年 0 20 (%) H16年 CO 除去用選択酸化触媒は、Ru 系粒状触媒の組成と 製造法を最適化して、初期性能と耐久性の向上を図 CO 濃度 10ppm 以 ム 3 の低温(650~750℃)作動化し、小型化、冷起動の高速化(起動時間の 短縮化)を図るためにオートサーマル改質方式を採用し、その改良をおこなった。図 5 に改良によ An オフガスリサイクルによる連携試験 を 以下 定常運転時) った。また開発した粒状触媒で出口 下になる運転条件を明確にした。さらに、開発触 媒で DSS 運転 360 回相当の加速耐久評価を実施し、 耐久評価後 CO 除去率 95%を維持できる条件を明確 にした。本触媒の製造法を改良し、更に劣化率の小 さい粒状触媒を開発した。触媒の起動性の向上と貴 金属量低減による低コスト化を目的にハニカム化を実施し、 粒状とほぼ同等の性能のハニカム型触媒を開発した。本触 媒の DSS 運転相当 720 回の加速耐久評価を実施し、ハニカ いことを確認した。開発した各種触媒の外観を図 4 に示 ―4 水素製造装置の開発(再委託先:バブコック日立(株)) 部材コスト低減のため 触媒は粒状触媒にくらべて耐久性が高 す。 図4 開発触媒外観写真 ハニカム型燃焼触媒 粒状 ハニカム型 ハニカム型改質触媒 ハニカム型燃焼触媒 粒状 ハニカム型 ハニカム型改質触媒 る水素製造装置の性能推移を示す。また、効率向上のために システム評価装置で実施し、50%~100%間の負荷変化が安定して行えることを確認した。 また、実用化評価試験装置の運転試験及びその取得データ解析から、下記の各項目を確認し、 更に、累計 300 時間の運転(図 6)から、水素発生量、アノード入口 CO 含有量が殆ど変化せず安定 した水素供給が可能なことを確認した。 ①水素製造装置メタン反応率 :99%、 熱効率:74.4% 水素変換率:93.5% ②起動から FC 連携までの時間 :14 分 30 秒 ③NOx 排出量 :1ppm ④電池アノード入口 C0 含有量 :10ppm 未満(100%負荷、定常運転時) ⑤水素製造装置圧力損失 :6~7 kPa(100%負荷、 40 60 80 100(分) 40 60 80 100(分) 40 60 80 100(分) 202020 水素発生量 水素発生量 水素発生量 in)in)in) 起動時間:15分以内 起動時間:15分以内 起動時間:15分以内 161616

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3―5 PEFC システムの開発 小型化と 水 An オフガス下流に 4 流 体 、マルチチャンネル熱交換器利用による排熱 回 効率目標の 70 池を積極的に使 っ ) ジェネレーションシステムを製作し、炭化水素系電解質と金属セパレータによるセ ルス 池及び排熱回収のシステム全体について、ムダ時間+一次遅れに基づく動的 モテ .今後の課題 質膜、及び金属系セパレータについては、材料自体の改良及びスタック構造改良による 更 (1)性能評価試験 システム熱回収系統の 回収再利用の検討を目的に 図 7 に示すシステム構成の PEFC シ ステム総合評価設備を設計製作 した。 PEFC の 熱交換器を設けて Ca ガス、 Ca 排ガス、An オフガスおよび水 道水の 4 者を組み合わせるこ とにより熱と凝縮水を効率よく 狙った。 この結果 回収することを 図7 システム構成 FC供給水 凝縮水 改質器 供給水 PEFC Caガス 電池冷却水 Anガス ※ Ca 加 湿 部 空気/ 燃料 空気 純水タンク 熱交③ バイバス ※ 気水分離器 水素製造 装置戻り ※ ※ 水 素 製 造 装 置 An 凝縮水 凝縮水 凝縮水 図7 システム構成 FC供給水 凝縮水 改質器 供給水 PEFC Caガス 電池冷却水 Anガス ※ Ca 加 湿 部 空気/ 燃料 空気 純水タンク 熱交③ バイバス ※ 気水分離器 水素製造 装置戻り ※ ※ 水 素 製 造 装 置 An 凝縮水 凝縮水 凝縮水 FC供給水 凝縮水 改質器 供給水 PEFC Caガス 電池冷却水 Anガス ※ Ca 加 湿 部 空気/ 燃料 空気 純水タンク 熱交③ バイバス ※ 気水分離器 水素製造 装置戻り ※ ※ 水 素 製 造 装 置 An 凝縮水 凝縮水 凝縮水 貯湯槽 熱交① 気水分離器 熱交② 水道水 貯湯槽 熱交① 気水分離器 熱交② 水道水 貯湯槽 熱交① 気水分離器 熱交② 水道水 収系のコンパクト化と、凝縮水再利用による、無 補給水化の実現性を確認できた。 同時に、負荷 75%以上での総合 %LHV の達成を確認した。 なお、当社のシステムは、二次電 て、逆潮流なしの条件で家庭電力需要と FC 供給電力との差を小さくして、FC 由来の電力に より需要電力の 90%以上をまかなうことを目標 に掲げている。図 8 は、二次電池(FC により充電 示す。これにより、二次電池による追従性向上を確認できた。また、同時に自給率 90%以上を 確保できる見通しを得た。 (2)低コスト材料との連系評価 を用いて負荷追従を行ったときの追従結果を 図8 システムの負荷追従性 電力需要 システム供給電力 系統電力 0 1.0 2.0 3.0 時 間(h) 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 需要 ・供 給・系統電 力(kW) 図8 システムの負荷追従性 電力需要 システム供給電力 系統電力 0 1.0 2.0 3.0 時 間(h) 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 需要 ・供 給・系統電 力(kW) 電力需要 システム供給電力 系統電力 0 1.0 2.0 3.0 時 間(h) 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 需要 ・供 給・系統電 力(kW) 1.6 1.6 1.6 上記検討に基づく 1kW 級コー タックとの連系評価を実施した結果スタックに有意なトラブルなく、約 2 週間の DSS 運転を実施し、水 素製造装置と連系した状態で運転、制御可能なことを示せた。 (3)システム設計ツールの作成 水素製造装置、燃料電 ゙ルを作成し、全体を統合した。その後、実験結果によるチューニングを繰り返し、基本的には An 戻りオフガスの影響や制御タイミングの影響を把握できるようになった。 4 炭化水素系電解 なるセル性能向上。水素製造装置については、起動時間の更なる短縮と発生水素濃度の増加。シス テムについては種々の熱/電力需要パターンに対応できるシステムの最適制御法の確立がある。

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2.10 固体高分子形燃料電池システム生産技術開発

東芝燃料電池システム(株) 新井康弘 1.事業概要 家庭用燃料電池システムの実用化・普及に向けての最重要課題は、性能、信頼性、耐久性はも とより、コストの低減、量産における品質の確保にあり、H13 年度は、量産化ライン構想を実現 するための具体的なシステム/パッケージ構成、及び要素機器の開発検討を行なうと共に、商品化 初期における小ロットから中ロット程度での生産方式、及び品質管理方式について検討を進めた。 さらに、MEA 製造工程について、生産技術の開発及び改善を検討した。 H14 年度は、実用化に適した補機、燃料処理装置の開発(設計、試作、試験検証)及び量産製造 工程における検査方法の確立に注力するとともに、電池コストの中で大きなウエイトを占めるセ パレータの構成および製造方法について検討・試作・評価を行った。 H15 年度と 16 年度の 2 年間は、これまでの成果である量産化に適したシステム構成、パッケ ージ構成、製造ライン構成及び検査方法の検討結果をフィードバックして、機器の要素開発や製 造プロセス技術の要素開発を通して、量産化によるコスト低減の可能性の見極めを行った。 2.開発目標 コスト低減施策として、電流密度増大によるセル数低減あるいは触媒層形成技術開発による触 媒塗布量の低減等の技術革新は別途実施されている。今回は、コスト低減に向けたもう一つの柱 である量産化技術を確立し、H17 年度の実用化を目指した研究開発を促進する。 開発目標(H17 年 3 月末) コスト : 100 万円/台(1kW 級) セル性能 : 電圧低下率:1%/1,000h 以下 セル電圧:750mV @ 200mA/cm2 3.事業全体の成果 3-1 量産化に適した反応器の開発 プール沸騰型改質器の開発により、水蒸気分離器、蒸気流量調節弁及び接続配管の削除ができ、 低コスト化 (約 20%のコストダウン)と放熱削減による高効率化(改質器効率 83%HHV)が実現で きた。さらに、低温CO 変成器と CO 選択酸化器を同じ形状とすることにより、量産化しやすい 構造とした(図 1,2)。また、30~60 回の DSS 運転を実施し、空気パージ(N2パージレス)による触 媒の耐酸化性を評価した。その結果、貴金属系改質触媒は十分な耐性が確認されたが、貴金属系 CO 変成器触媒は経時的に活性が低下し、3,000 回の起動・停止では初期活性の 15~30%程度に なることが予測された。 183

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7 2 8 1 6 1 7 0 7 7 8 0 8 2 7 6 8 3 8 4 5 6 5 8 6 0 6 2 6 4 6 6 6 8 7 0 7 2 7 4 7 6 7 8 8 0 8 2 8 4 8 6 0 .5 1 .0 1 .5 2 .0 2 .5 3 .0 3 .5 改 質 燃 料 流 量 (N l/m in ) FPS 効率( %-HHV ) 定 格7 0 0 W 低 負 荷2 5 0 W 7 2 8 1 6 1 7 0 7 7 8 0 8 2 7 6 8 3 8 4 5 6 5 8 6 0 6 2 6 4 6 6 6 8 7 0 7 2 7 4 7 6 7 8 8 0 8 2 8 4 8 6 0 .5 1 .0 1 .5 2 .0 2 .5 3 .0 3 .5 改 質 燃 料 流 量 (N l/m in ) FPS 効率( %-HHV ) 定 格7 0 0 W 低 負 荷2 5 0 W H16 年度上期モデル H16 年度下期モデル 試作機 図 1 燃料処理装置の外観 図 2 燃料処理装置(FPS)効率 3-2 量産化に適した低コスト一体型インバータ/制御装置の開発 実用化段階でのインバータ仕様について、出力形態、直流入力部の昇圧方法、燃料電池本体の 接地方法、主回路絶縁方式等の最適化検討とそれに基づくインバータ開発を行い、200V 出力イ ンバータで定格出力での電力変換効率91%、高調波電流歪率(総合)で 1.5%以下と良好な結果が得 られた(図 3)。 図 3 インバータの定常特性(効率) -3 量産化に適したパッケージの実使用環境下での機能・安全性検証 範囲にならない十分 60% 70% 80% 90% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 交流出力電力(100%=800W) 変換効率( %) 3 燃料電池システムにおける安全要件の検討を行い、換気風量は爆発の危険 な量が確保されていること、パネル表面温度は常に十分に低い温度であることが確認できた(図 4)。さらに、パッケージの騒音の分析・評価、低減策の検討を行い(図 5)、40dB(A)レベルを実現 できる改善策を見出した。

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低 温 部

高 音 部

高 温 部

低 音 部

図 4 パッケージ表面温度(発電 4 時間後) 図 5 サウンドインテンシティ騒音レベル分布 調査結果 3-4 実用化に適したシステム開発 空気パージ(N2 パージレス)とプール沸騰型改質器の採用及びシステム簡素化検討により、約 の削減ができた。また、信頼性向上と低コスト化を狙い、 ポ 20%のプラント監視及び制御用 I/O 点数 ンプやブロア等の補機の再選定を行い、特性及び耐久性試験を実施した(図 6)。さらに、これ までの開発成果を組み込んだシステム検証において、冷起動時間で 40 分、定格での発電効率で 40%(LHV)を達成することができた。(図 7) 図 6)。さらに、これ までの開発成果を組み込んだシステム検証において、冷起動時間で 40 分、定格での発電効率で 40%(LHV)を達成することができた。(図 7) 図 6 カソード空気ブロワ-比較 図 6 カソード空気ブロワ-比較 ロ ー タ 径φ 6 7 制御 基板 制御 基板 小型 化 (樹 脂ケ ース 内部 ) ロー タ径 φ4 7 樹脂 ケー スで 囲い 従来 品 改良 品 185

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2 0 2 5 3 0 3 5 4 0 0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0 1 0 0 0 W A C (W ) 発電効率 (%LHV) H 1 6 年 度 モ デ ル H 1 5 年 度 モ デ ル 試 作 機

交 流 出 力 (W )

図 7 試作プラントの発電効率 4 5 3-5 量産化パッケージとラ 方法の確立 検査工程での所要時間を検査項目毎に「段取り時間」、「検査時間」、「後処理時間」に分けて集計、 析を行い、ラインの統合、並行検査、重複検査作業の省略等により、完成品検査に要する時間 とともに利便性の向上が重要 ある。各家庭に N2ボンベを設置する必要がなく、起動停止操作に係わる追加機器や制御が る空気パージが実現できれば、利便性は著しく向上する。そのためには、触媒 ② ・検討を行ない、200V 出力で 91%の電力変 ③ 性に優れたポンプ ④ イン化の検討及び製造工程における検査 分 を現状の検査時間から約1/30 化と大幅な短縮の見通しを得た。 5.今後の課題 ① 家庭用燃料電池の普及にはシステムの耐久性向上やコスト低減 で 最も簡素化され の耐酸化性が要求されるが、現状、改質触媒を除いては十分とは言えない。低コストで耐酸化 性に優れた触媒開発が必要である。 インバータの電力変換効率向上については、100V 出力では 92%達成することができた。さ らに、一般家庭への家庭用燃料電池設置/普及を目指し、インバータ出力形態と燃料電池シス テムとの適合性の観点より、各種変換方式の比較 換効率を達成したが、さらなる効率向上に向けた取り組みが必要である。 家庭用燃料電池の信頼性、耐久性及び低コスト化にとって、主要機器である電池や改質器と ともに、ポンプやプロアの果たす役割は非常に大きい。H15 年度と H16 年度には新ポンプや ブロアの開発や選定を行ったが、さらに、低コスト、低騒音で低流量の制御 やブロアの開発が必要である。 本開発・研究の成果に基き、H17 年度以降に予定されている「定置用燃料電池大規模実証事 業」のなかのプレ量産で、開発目標である100 万円/台(1kW 級)を確実に見通していく必要が ある。 以上

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2.11 GTL 燃料固体高分子形燃料電池システムの実用化技術開発

新日本石油株式会社 安斉 巌 三菱化工機株式会社 谷口 浩之 1.事業の概要 天然ガスから合成した液体燃料であるGas to Liquid(GTL)燃料は硫黄分が本質的に皆 無であるため、燃料電池システムにとってシステムのコンパクト化や長寿命化が期待できる燃 料である。本事業では、GTL 燃料固体高分子形燃料電池システムの実用化技術開発として、定 置式および可搬型のGTL 燃料固体高分子形燃料電池システムの実用化技術開発を実施した。 1-1 定置式GTL 燃料固体高分子形燃料電池システムの実用化技術開発 燃料処理装置は水蒸気改質反応で得られた改質ガスからパラジウム系の水素分離膜を用いて、 水素を選択分離する水素製造システムと3kW 級固体高分子形燃料電池(PEFC)システムを組 み合わせた定置式燃料電池システムの開発を実施した。概略フローを図1 に示した。 1-2 可搬型GTL 燃料固体高分子形燃料電池システムの実用化技術開発 改質装置とシフト反応、CO 選択酸化を組み合わせた水素製造システムおよび 1kW 級 PEFC を組み合わせた可搬型燃料電池システムの開発を実施した。改質装置には最終的に起動時間の 早い自己熱改質型改質装置を使用した。概略フローを図2 に示した。 原燃料 原燃料 GTL 改質器 改質器燃料 電池排ガス 膜分離器 燃料電池 3kW 水 水素 非透過ガス CO10ppm以下 水蒸気改質 熱 電気 コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム GTL 改質器 改質器燃料 電池排ガス 膜分離器 膜分離器 燃料電池 3kW 水 水 水素 非透過ガス CO10ppm以下 水蒸気改質 熱 電気 コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム 改質器 改質器燃料 電池排ガス シフト 反応器 燃料電池1kW 燃料タンク GTL 水タンク 水素 CO 選択酸化 CO10ppm以下 可搬型システム 改質器 改質器 改質器燃料 電池排ガス シフト 反応器 シフト 反応器 燃料電池燃料電池1kW1kW 燃料タンク GTL 燃料タンク GTL 水タンク 水タンク 水素 CO 選択酸化 CO 選択酸化 CO10ppm以下 可搬型システム 図1 定置式システムの概略フロー 図 2 可搬型システムの概略フロー 2.開発目標 2-1 定置式GTL 燃料固体高分子形燃料電池システム 開発目標は以下の通りである。目標を表1 に示した。 (1)GTL(C5~C12)を原燃料にして、水蒸気改質反応を行い、水蒸気改質反応で得られた改 質ガスをパラジウム系水素分離膜により精製し、一酸化炭素濃度(以下、CO)3ppm 以下の燃 料電池供給ガスを得ることができること。これは燃料電池を高い水素利用率で運転すると出口 付近で不純物が濃縮されるが、この頻度を防ぐためである。 (2)3kW級固体高分子形燃料電池と組み合わせたコージェネレーションシステムの試作と実証 試験を実施すること。 (3)耐久性はDSS による 5 年間の運転に相当する 24,000 時間以上であること。 2-2 可搬型GTL燃料固体高分子型燃料電池システム 開発目標は以下の通りである。目標を表2に示した。 (1)GTL(C5~C12)を原燃料にして、改質反応により得られた改質ガスをシフト反応および CO選択酸化により、一酸化炭素濃度10ppm以下のPEFC供給ガスを得ることができること。 (2)1kW級PEFCと組み合わせた可搬型燃料電池システムの試作と運転を実施すること。 187

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(3)可搬型システムの連続稼働時間が1日程度となること。 表1 定置式システムの目標値 目標値 燃料対応 GTL(C5~C12) 連続稼動時間 約1 日 改質効率 70%以上(LHV) 発電効率 30%以上(LHV) 改質器サイズ 10L/kW 寿命 2,000 時間程度 表2 可搬型システムの目標値 目標値 燃料対応 GTL (C5-C12) CO 濃度 3ppm 以下 改質効率 75%以上(LHV) 送電端効率 37%以上(LHV) 寿命 24,000 時間以上 発電能力 3kW 級 3.事業全体での成果 3-1 定置式GTL 燃料固体高分子形燃料電池システム (1)燃料処理装置の開発 一般に燃料の炭素数が増えるにつれて、改質反応で炭素が析出しやすくなる。ここでは灯油 相当の改質技術が要求されると共に、水素分離膜や触媒燃焼器を組み込み、高効率化を目標に 開発を行った。製作した改質器の写真を図3 に示した。 1 号機 2 号機 3 号機 3β機 図3 製作改質器の写真 1号機はボックス型反応器で反応器を個別に配置した。2号機以降は円筒型反応器で反応器 を同心円状に配置、フローや熱回収方法などを最適化していくことで、次の成果を得た。 ・ 水素製造量は2.4Nm3/h   0.0 1.0 1.5 2.5 3.0 0 500 1,000 1,500 運転時間[h] 水素製造量[ ] , 水素中不純物 (初 1 とす る) 水素製造量 水素中不純物 ・ O2濃度は1ppm 未満 2.0 Nm 3 /h 期値を ・ 改質効率はHHV 77.5% ・ 燃焼ガス中のNOx、CO は 5ppm 未満 0.5 燃料処理装置3 号機および 3β機 の耐久試験結果を図4 に示した。なお 模擬燃料としてnC12(ドデカン)を用いた。 図4 FPS3号機の性能推移(100%ロード)

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(2)燃料電池システム ここでは純度の高い水素が燃料であるため、燃料電池の効率や耐久性の向上が期待できる。 るシステムを開発した。写真を図5 に示す。 0 500 1000 1500 2000 0.5 1 1.5 2 相対LHSV 水素製 造 量 (L /h ) 1kW級1号機 1kW級2号機 97 98 99 100 101 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 相対LHSV C1転換 率( % ) 1kW級1号機 1kW級2号機 0 500 1000 1500 2000 0.5 1 1.5 2 相対LHSV 水素製 造 量 (L /h ) 1kW級1号機 1kW級2号機 97 98 99 100 101 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 相対LHSV C1転換 率( % ) 1kW級1号機 1kW級2号機 2500 2.5 2500 2.5 燃料処理装置3β機と燃料電池からな 燃料電池システムの主な成果は以下の通りである。 。 。 図5 燃料電池システム -2 可搬型GTL燃料固体高分子型燃料電池システム 図7 に 示 HSV と水素製造 量 図7 ATR 評価装置 図 8 1kW 級 ATR 改質器の ・ 発電量はDC 発電端で 3.8kW、効率は HHV 34.5% ・ 熱回収効率は40% @62.5℃ ・ 自動運転システムを構築した ・ 1,200 時間の連続試験を実施した (起動停止回数は20 回以上) 図 6 に燃料利用率に対する改 質効率の結果を示す。アノードオ フガスを循環するシステムによっ て、高い燃料利用率でも安定した 運転を行うことができた。 なお連続運転途中に制御系の トラブルが発生し電池性能が低 下したが、その後70%負荷運転 で安定した性能結果を得た。 70.0% 72.0% 74.0% 76.0% 78.0% 90% 92% 改質効率 (HHV) 80.0% 94% 96% 98% 100% 100%ロード 75%ロード 50%ロード 燃料利用率 3 (1)オートサーマル改質器(ATR)の評価試験 オートサーマル改質器の設計指針を得るために した評価装置を使用してATR 反応における運転条件 と水素ガス発生量および水素ガス性状等の性能との関係 図6 燃料利用率と改質効率 を把握した。 図8 に相対 L あるいは相対LHSV と C1 転化 率の関係を示した。これより、 1kW 級の ATR 固体高分子形燃料 電池システムの必要水素発生量 (1,000L/h)を発生可能で、同時 に十分なC1 転化率条件を安定し て得るための相対LHSV 条件が 把握できた。 評価結果 189

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(2)1kWATR 燃料電池システムの製作、運転 仕様の1kWATR 燃料電池システムを製作、運 転 テムの写真を、図10 に平成 16 年度システムの写真を示した。表 3 に 目標を達成していることが確認できた。 ロス低減による改質効率の 、運転性能 .今後の課題 TL 燃料固体高分子形燃料電池システム 置サイズや製作コスト削減などであ る 4 証および装置サイズ、重量や起動時 間 平成15 年度と平成 16 年度には GTL 灯油燃料 し、性能を評価した。 図9 に平成 15 年度シス 1kWATR 燃料電池システムの運転結果を示した。 これより、システムの運転実証により、概ね初期の 成果概要は以下の通りである。 ① ATR 方式改質器に対し、放熱 向上ならびに短時間起動を可能とする起動方法を確立し、改 質効率の向上、起動時間の短縮が達成できた。 ② ATR 方式の 1kW 燃料電池システムを製作し 評価と数百時間の運転を実施し、発電効率、推定寿命が目標 を達成することを確認できた。 15 年度 16 年度 起動時間1) 50 31 改質効率2) % 58 78 発電効率3) % 27 36 改質器サイズ L 12 12 寿命4) h 1,800 図10 16 年度システム 図9 15 年度システム 表3 可搬型 1kWATR 燃料電池システムの運転結果 1)冷起動時間、2)LHV、改質器出口水素熱量/原料熱量 3)LHV、4)ATR 触媒寿命試算 *モデル燃料 4 4-1 定置式G 実用化への課題はさらなる効率向上と耐久性の実証、装 。そのためには特に水素分離膜の透過性能と信頼性向上が不可欠である。 -2 可搬型GTL 燃料固体高分子型燃料電池システム 実用化への課題は、さらなる発電効率向上と耐久性の実 の削減などである。そのためには、ATR 反応器の反応条件や起動シーケンス等の最適化なら びに部材等の最適化が必要である。

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2.12 新規一酸化炭素被毒耐性アノード触媒の開発

独立行政法人 産業技術総合研究所 五百蔵 勉 1.事業の概要 固体高分子形燃料電池(PEFC)は純水素燃料下では優れた特性を示すが、メタノールなどから得 られる改質ガス燃料下では不純物として微量に含まれる一酸化炭素(CO)による白金触媒の被毒 現象が著しく、一酸化炭素被毒耐性の高い電極触媒の開発が不可欠である。現在、このような電 極触媒として白金ルテニウム合金触媒が利用されている。ルテニウムは白金よりも希少な資源で あるが、現状ではその用途が限られており白金よりも大幅に安価である。しかし、今後定置用の PEFC などに白金ルテニウム合金触媒が大量に使用されるようになれば、ルテニウムの資源量に 起因する問題が生じる可能性も否定できない。本事業では、PEFC の本格的な普及を推進し低コ ストで安定供給可能な新規触媒の開発を行うことを目的として、種々の白金と金属酸化物もしく は金属有機錯体との複合触媒の検討を行った。 2.開発目標 本事業では、50 ppm 程度の一酸化炭素含有改質模擬ガス雰囲気下、電流密度 500 mA/cm2 おいてPtRu/C 触媒と同等以上の特性を達成可能な白金-金属酸化物もしくは、白金-金属有機 錯体アノード触媒を開発することを目標としている。 3.事業全体での成果 3-1 白金-金属酸化物触媒の開発 本研究ではPtRu/C 触媒に代わる白金-金属酸化物触媒の開発を目標としている。金属酸化物 では種々のカチオン種やその酸化数(価数)、結晶構造の材料が存在するので、材料選択の幅を広 くすることができる。また、strong metal-support interaction (SMSI)として知られる、酸化物

担体と担持された触媒金属との相互作用も期待できることから、図1 のように触媒構造を制御し ながら白金ナノ粒子と複合化された触媒を調製することにより、新規な耐CO 被毒耐性アノード 触媒を調製することが可能と考えられる。本事業では異なる2つの手法による迅速な触媒スクリ ーニング法を開発し高スループットな候補触媒系の抽 出を実現した。一方は、貴金属-金属酸化物触媒にCO 空気混合ガスを流通させ、出口ガスにおける残留 CO 濃度を接触燃焼式ガスセンサで、生成CO2濃度は非分 散式赤外ガスセンサにて連続測定することにより CO 吸着の弱い候補触媒を迅速に評価する手法であり、他 方は CO、水素及び酸素を含むガスを流し、気相での 触媒反応による発熱を赤外線式カメラで評価すること により、CO を含有する水素雰囲気下において水素酸 化能が高い触媒を迅速に評価する方法(図2)である。 これらのスクリーニングの結果、白金-モリブデン酸 図 1 白金-金属酸化物担持触媒の模式図 191

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化物、タンタル酸化物触媒などの候補触媒系を抽 出した。 初期的な検討の結果、最も有望な耐CO 被毒触 媒 と 思 わ れ た 白 金 - モ リ ブ デ ン 酸 化 物 触 媒 (Pt/MoOx/C)について、前駆体化学種、担持方 法、焼成温度など、触媒調製条件の検討を詳細に 行った。その結果、塩化モリブデンをモリブデン 源として、水溶液中pH=7-8 の条件下でカーボン 担 体 上 に 析 出 沈 殿 さ せ 、 不 活 性 ガ ス 雰 囲 気 中 400℃で焼成することで、カーボン担体上にモリ ブデン酸化物を高分散に担持できることがわかっ た。また、得られたMoOx/C に白金錯体溶液を含 浸・乾燥後、水素気流中250℃で還元することに よ り 、 白 金 - モ リ ブ デ ン 酸 化 物 担 持 触 媒 (Pt/MoOx/C)を調製した。 白金微粒子担持後の 30%Pt/MoOx/C 触媒粉末 の SEM 像・TEM 像(明視野・暗視野)を図 に示す。白金粒子は3-4 nm の平均粒径でカーボ ン担体上にほぼ均一に分布している。モリブデン粒子は約1 nm 程度と非常に微細な上に像のコ ントラストが低いため明視野像では確認し難いが、暗視野像およびEDX 分析の結果からカーボ ン担体上にモリブデン酸化物と白金微粒子が担持されている様子が確認できた。図4 に 0.5M 硫 酸水溶液中で測定したPt/MoOx/C の CO ストリッピングボルタモグラムを示す。Pt/MoOx/C で は白金のピークに加えて、0.45V 付近に MoOx の酸化還元に起因するレドックスピーク対が現れ た。吸着 CO の酸化は約 0.77V で 30%Pt/C(0.81V)よりも若干低下したのみであるが、100 ppmCO/H 3 2飽和条件下での定常電流(at 100 mV)は Pt/C の約 2 倍の値を示し、従来の PtRu/C とは異なった挙動を示した。図 5 に Pt/MoOx/C アノードを用いた セルの 100 ppmCO/H2を燃料ガスとして供給した場合のアノード 分極特性を示す。Pt/MoOx/C アノードでは燃料ガス流量を 100 ccm

(燃料利用率:Uf=0.15 at 1.0 A/cm2)から20 ccm(Uf=0.7 at 1.0

A/cm2)へ減少させると、セル電圧は回復しアノード分極は低下し た。この挙動は電解質膜厚に依存することやカソード側に水素を供 発熱 → 良い触媒 発熱 → 良い触媒 Y Ti V Ga Nb La Zr Ir In Ta Ce Pt Bi Y Ti V Ga Nb La Zr Ir In Ta Ce Pt Bi 評価法の模式図 H2 2000ppm+O2 2vol.% 白金-金属酸化物の配置 CO, 水素, 酸素 赤外線式カメラ 赤外線式カメラ CO, 水素, 酸素 H2 2000ppm+CO1000ppm +O2 2vol.% CO1000ppm+O22vol.% 図 2 気相反応を利用した迅速触媒評価 50 nm 50 nm SEM -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 Potential / V vs RHE Cur rent / mA CO-stripping Pot. (Pt/C) CO-stripping Pot. (PtRu/C) 10 nm 10 nm TEM(明視野) 5 nm 5 nm 1 2 TEM(暗視野) 図 4 30% Pt/MoOx/C 触媒の CO ストリッピン グボルタモグラム(0.5 M H2SO4, 20 mV/s, 図 3 30%Pt/MoOx/C 触媒の SEM 像及び TEM(明視野・暗視野)像

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193 白金-金属有機錯体触媒の開発 有機金属錯体触媒の開 0.2 0 0.2 0.4 0.6 Z'(real) / Ω cm2 0.6 0 100 200 300 400 500 Current density / mA cm-2 給した場合では起こらない ことから、カソード側から の微量のクロスオーバー酸 素の影響であると考えられ る。また、開回路条件にお けるアノード出口ガスのガ スクロマトグラフ分析を行 った結果(図 6)、ガス中 CO 濃度は Pt/C・PtRu/ では入り口CO 濃度とほぼ 同 じ で あ っ た が 、 Pt/MoOx/C では明らかに CO 濃度が低下しており、特に低流量時に大幅に低下することがわかっ た。これはPt/MoOx/C ではセル内でシフト反応が進行して CO 濃度が低下する影響と考えられ る。0.3, 0.5 A/cm2負荷状態でのセル電圧とアノード出口ガ スCO 濃度の燃料利用率(Uf)依存性を図 7 に示す。どち らの電流密度においても、Uf が上昇すると共に CO 濃度は 減少、セル電圧は上昇した。これは、シフト反応などによ って低流量(高Uf)時にセル内の燃料ガス中 CO 濃度が低 下し、触媒のCO 被毒が軽減されたためと考えられる。図 8 に各電流密度におけるアノードのインピーダンスプロッ トを示す。透過酸素の影響を除くため、カソード側には水 素を供給した。Pt/MoOx/C では 0.2 A/cm2以上では低周波 側に擬似誘導挙動が観察されたが、同条件のPtRu/C では 観察されなかった。この挙動は触媒表面の吸着CO の酸化 に関連するとされることから、Pt/MoOx/C では実際の作動 条件下でCO 酸化反応の進行 を支持する結果と考えられる。 PtRu/C と 比 較 す る と 、 Pt/MoOx/C は逆シフト反応 による CO2 による被毒の影 響を受けやすいが、図9 に示 すように本事業で開発した Pt/MoOx/C 触媒は改質模擬 ガ ス ( 80ppmCO/20%CO2 /H2)雰囲気下でもPtRu/C と ほぼ同等な特性を示すことが わかった。 3-2 40 50 60 70 0 50 100 150

Fuel flow rate / ccm

C O c onc . / pp Pt/MoOx N2 Pt/MoOx O2 Pt N2 Pt O2 PtRu N2 PtRu O2 0 0.05 0.1 0.15 0.01 0.1 1 Current density / A cm-2 A node pol a ri za ti 0.2 0.25 0.3 on / V H2 100 ccm CO/H2 100ccm CO/H2 30ccm CO/H2 20ccm 80 90 100 m C 発を目標としている。有機金属 図 6 Pt/MoOx/C、Pt/C、PtRu/C 各 アノード出口ガス中 CO 濃度の燃料流 量依存性(セル・加湿:80℃、大気圧、 102ppmCO/H2供給) 図 5 Pt/MoOx/C アノード分極の燃料 流量依存性(セル・加湿:80℃、大気 圧、102ppmCO/H2供給) 図 7 Pt/MoOx/C アノード出口ガス中 CO 濃度とセル電圧の燃料流量依存性 (セル・加湿:80℃、大気圧、80ppmCO/ H2供給) 0 10 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 Uf 620 640 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 Z ''( im agi nar y) / Ω cm 2 0.5 A/cm2 0.3 A/cm2 0.2 A/cm2 0.1 A/cm2 0.05 A/cm2 Anode: 80ppmCO/H2 Cathode: H2 図 9 Pt/MoOx/C、PtRu/C アノードの I-V 特性(セル・加湿:80℃、大気圧、 純水素 or 改質模擬ガス:80ppmCO/ 20%CO2/H2供給) 0.7 0.8 0.9 1 C el l v ol tage / V PtRu/C-H2 PtRu/C-Reformate Pt/MoOx/C-H2 Pt/MoOx/C-Reformate 図 8 Pt/MoOx/C アノードのインピー ダンスプロット(セル・加湿:80℃、大 気圧、80ppmCO/H2供給) 20 30 40 50 CO c on c. / p pm 660 680 700 720 740 760 C el l v ol tag e / mV CO conc.(0.3A/cm2) CO conc.(0.5A/cm2) Cell voltage(0.5A/cm2) Cell voltage(0.3A/cm2) 本研究ではPtRu/C 触媒に代わる白金- 錯体触媒は、分子設計あるいは合成のバリエーションから非常に広い可能性を有しているため、

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触 媒 お よ び 、 白 金 - 金 P ino-metal (以下、 錯 新規耐一酸化炭素被毒耐性アノード触媒として白 属 有 機 錯 体 触 媒 を 検 討 し た 結 果 、Pt/MoOx/C 、 新規でかつ高い耐CO 被毒特性を示す触媒調製を目指し て、種々の材料を検討することができる。有機金属錯体 の役割としては、PtRu 触媒におけるルテニウムの働き を期待しており、本研究では有機金属錯体として、中心 金属への配位子に窒素原子を持つものを選択した。特に、 窒素原子を配位座として金属カチオンに配位する有機錯 体の中でも図10 に示すN,N’-mono-8-quinolyl-o- phenylendiamino-metal ( 以 下 、 M(mqph) )、 N,N’-Bis(salicylidene)ethylenediam M(salen))は比較的構造が簡単であり、合成が容易な有機 体である。これらの金属有機錯体と白金アンミン錯体 を溶液中1:1で混合してカーボン担体上に担持し、乾 燥後にAr 雰囲気下、300~600℃で 2 時間熱処理を行うことによって白金-金属有機錯体触媒を 調製した。金属有機錯体の中心金属について種々検討を行った結果、mqph では Ni、salen では V との錯体が有望であることが示唆された。図 11 に種々の熱処理温度で調製した20%Pt-Ni(mqph)/C 触媒のCO/H2雰囲気下での耐CO 被毒特性を半セル 試験(70℃)により、100 mV vs RHE での電流値 を純水素を100 として比較した結果を示す。これよ り、400℃で熱処理を行った Pt-Ni(mqph)/C が最も 高い耐CO 被毒特性を有していることがわかる。図 12 に Pt-VO(salen)、Pt-Ni(mqph)、Pt/C、PtRu/C 各触媒の耐 CO 被毒特性を同条件の半セル試験 (70℃)により比較した結果を示す。Pt-VO(salen)、 Pt-Ni(mqph) で は Pt/C や PtRu/C に 比 べ て 50ppmCO/H2および、100ppmCO/H2においても高 い水素酸化電流を示しており、これらの白金-金属 有機錯体触媒が耐CO 被毒触媒として有効であるこ とがわかった。耐CO 被毒機構について詳細は明ら かではないが、熱処理後も担体表面に一部残存した 錯体構造が、PtRu における Ru のように機能し酸素 種吸着サイトとしてCO の酸化除去が進行すると考 えられる。 4.今後の課題 図 10 M(mqph), M(salen)の構造 図 11 20%Pt-Ni(mqph)/C 混 合 触 媒 の 各 CO/H2ガス条件下における耐 CO 被毒特性 の熱処理温度依存性(半セル試験、70℃) E=100mV vs RHE での電流値による比較 図 12 Pt-VO(salen)/C、 Pt-Ni(mqph)/C 、Pt/C 、 PtRu/C 触媒の各 CO/H2ガス条件下での耐 CO 被 毒特性(半セル試験、70℃) E=100mV vs RHE で の電流値による比較 金 - 金 属 酸 化 物 t-VO(salen)/C 触媒などでは既存の PtRu/C 触媒に匹敵する耐 CO 被毒特性を有することがわか った。今後、触媒構造の見直しによってさらなる特性改善が求められるともに、より実際的条件 下での触媒の安定性・耐久性についても検討を進めていく必要があると考えている。

(21)

2.13 ナノ構造無機電極触媒の開発(無機担体材料の電子物性とナノ構

造制御による触媒高性能化と貴金属使用量削減)

九州大学大学院総合理工学研究院 佐々木一成

. 事業の概要

固体高分子形燃料電池の本格的普及のためには、現在商品化が進められているレベルよりも格 段の性能向上、長寿命化および低コスト化が求められており、そのための基礎・基盤的かつ革新 的な研究開発を積極的に推進する必要がある。その中で、高性能で貴金属使用量も少ない電極触 媒の開発が、避けて通ることのできない最重要の研究開発課題の一つとなっている。 本事業は、ほとんど試みられなかったような多様な無機材料を触媒担体材料または助触媒とし て探索し、電極触媒の高活性化を目指すものである。貴金属はそのままでも、はるかに安価な新 たな担体材料などを用いることによって発電特性を向上させることができれば、電池セルの高性 能化や貴金属使用量の削減につながると期待される。本研究プロジェクトではこの可能性に集中 して取り組み、多様な材料を探索し、それらのナノ構造や(電気)化学的相互作用、電子物性を 制御して電極特性の大幅な向上を達成することを目的とする。さらに大学の研究グループである 特長を最大限生かして、将来の更なる高性能化やコストダウンへ向けての材料設計指針の構築を 行う。これらの成果によって初めて性能目標が達成できると考えられる。

. 開発目標

本事業では、金属-無機担体材料の相互作用を利用し、貴金属の使用量(コスト)あたりの電極 触媒性能を飛躍的に向上させる触媒無機担体材料の創製によって、固体高分子形燃料電池用のナ ノ構造制御電極触媒を開発し、金属-担体相互作用を利用した電極触媒材料設計指針を確立するこ とを目標とした。

3. 事業全体での成果

①カーボン系材料(炭素ナノ繊維)を用いた 電極触媒の開発 炭素ナノ繊維を電極触媒担体に用いることに よって、ガス拡散パスと集電パスを兼ね備えた ネットワ-ク構造の電極触媒の開発に成功し、 白金有効利用率を5 割以上向上できた。この高 導電性炭素ナノ繊維担持電極触媒を用いて、カ ソード側の白金担持量を 0.2mg/cm2まで低減す ることに成功した。固体高分子形燃料電池の白 金使用量の大幅削減および白金使用量あたりの 高活性化につながる成果であり、さらに表面賦 活処理によって耐久性向上も可能であることを 示すことができた。(図1~2 参照) 図1:気相成長炭素繊維(VGCF)上に担持 したPt/C 電極触媒の FESEM 写真 195

(22)

ガス

拡散層

電極

触媒層

電解質膜

図2:本事業で開発した、導電パスとガス拡散パスを兼ね備えた ネットワーク構造を有する電極触媒 ② 非カーボン系材料(酸化物半導体)を用いた電極触媒の開発 全元素について燃料電池作動温度での pH-電 位図を計算し、強酸・電位印加時に溶出しない 物質を同定できた。その一つである(酸化)チ タンを用い、白金と原子レベルで複合化し、実 用レベルの数nm の粒子径を有する Pt-Ti 合金系 電極触媒の調製に成功した(図3 参照)。この触 媒を用いることによって白金触媒に比べて酸素 還元活性を1.5 から 2 倍に向上でき、また耐 CO 被毒性も向上することを見出した(図 4~5 参 照)。固体高分子形燃料電池の高性能化と白金使 用量削減につながる成果と考えられる。 図3:Pt-Ti 合金系電極触媒の FESEM 写真 1. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 700 C ell vo lta g e / V 0 2 4 6 8 0 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃ Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 700 C ell vo lta g e / V 0 2 4 6 8 0 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃ ▼ Pt ▼ Pt ▼ Pt ▼ Pt Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 700 C a th o di c pol ar iz at io n / V 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃ Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 700 C a th o di c pol ar iz at io n / V 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃ 図4:Pt1Ti1/Cをカソードに用いたセルの(a)I-V特性と(b)カソード過電圧 (Anode: 0.6 Pt-mg/cm2, H / Cathode: 0.4 Pt-mg/cm2, Air / 80℃)

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1. 1. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. ▼ Pt 0. ▼ Pt ▼ ▼ PtPt 担体材料

新規担体材料

新規担体材料

非カーボン系担体材料 非カーボン系担体材料 (酸化物など) (酸化物など) 既存の担体材料 既存の担体材料 (カーボンブラックなど) (カーボンブラックなど) カーボン系担体材料 カーボン系担体材料 (炭素ナノ繊維など) (炭素ナノ繊維など) Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 C ell vo lta g e / V 0 2 4 6 8 0 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃ Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 C ell vo lta g e / V 0 2 4 6 8 0 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃ Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 A n odi c pol ar iz a tio n / m V 0 100 200 300 400 500 600 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃ Current density / mA cm-2 0 100 200 300 400 500 600 A n odi c pol ar iz a tio n / m V 0 100 200 300 400 500 600 ● Pt 1Ti1還元900℃ ■ Pt1Ti1 硝酸処理 還元900℃ ◆ Pt1Ti1 硝酸処理 還元800℃

図5:Pt1Ti1/C をアノードに用いたセルの(a)I-V 特性と(b)アノード過電圧(100ppmCO 含有水素燃料) (Anode: 0.2 Pt-mg/cm2, 100ppmCO-H2 / Cathode: 0.6 Pt-mg/cm2, Air / 80℃)

<担体からの電極触媒設計>

<担体からの電極触媒設計>

PEFC電極触媒(層)に要求される特性  ○高い電子伝導性(伝導パス付与)  ○高いプロトン伝導性(伝導パス付与)  ○高いガス拡散性(多孔性維持)  ○触媒(Ptなど)の高分散性 PEFC電極触媒(層)の技術課題(抜粋)  ○電極触媒活性の向上(特にカソード)  ○耐CO被毒を含めた耐久性の向上(触媒開発、触媒微粒子化、カーボン基材の高性能化)  ○貴金属使用量の低減、代替触媒の開発        (NEDO固体高分子形燃料電池の研究開発 基本計画より引用) (電極触媒の“骨組み”⇒電池性能を決定付ける重要な材料)    <役割・機能> ○触媒微粒子の高分散担持       ○集電パス <メリット> ○触媒微粒子の高分散  担持が比較的容易 ○多くの使用実績あり <デメリット/課題> ○電極触媒層が緻密化し  やすく、そのために触媒  が埋まって、Pt有効利用  率が低下しやすい。 ○多孔構造がつぶれてガス  拡散性が低下しやすい。 ○特に高電位(カソード側)  でのカーボン材料腐食。  (カーボンは高電位にお  いて熱力学的に不安定。) <メリット> ○高導電性で、特に炭素ナノ繊維は繊維方向  に沿った導電パスとして優れている。 ○Pt触媒微粒子が埋まらずに表面に露出する  ので、Pt有効利用率を大幅に向上できる。 ○繊維間に十分なガス拡散パスができ、濃度  過電圧を低減できる。 (本事業で炭素ナノ繊維を担体とした電極触媒  を開発し、Pt有効利用率の向上を実証した。) <デメリット/課題> ○カーボン表面に安定なグラフェン面が出てい  たり、高黒鉛化していると、触媒微粒子との結  合性が弱く、触媒微粒子が移動・凝集しやす  い。(⇒表面処理による凝集抑制などが必要。) ○長時間の耐久性が不明である。  (⇒長時間耐久試験の実施が今後不可欠。) <メリット> ○超強酸(pH≈0)で電位が印加/変動する条件で使用されるの  で、既存のカーボン担体に比べて電気化学的に安定な材料  が見出されれば、劣化を抑制できる可能性がある。 ○触媒と酸化物の相互作用が報告されており、それらを利用  することによって高性能化が図れる可能性がある。  (本事業では、原子レベルでの金属-酸化物複合材料として   Pt-Ti合金系電極触媒を開発し、高い酸素還元活性   と耐CO被毒性を実証した。) <デメリット/課題> ○酸化物などは炭素材料に比べて一般的に導電性が低く、オー   ミック過電圧増加やPt有効利用率低下を引き起こしやすい。   (⇒高導電性酸化物などの探索などが必要。また、微細化    によって酸化物内の伝導パスを短くすることが有用。) ○超強酸・電位印加条件下で安定な材料は少ない。   (⇒熱力学平衡計算などによる効率的な材料探索が有用。) 図6:担体からの電極触媒設計指針 ③ 電極触媒のナノ構造制御と材料設計指針確立 電極触媒材料の骨組みとなる担体材料において、炭素系担体ではファイバ-状材料が有用であ り、高導電性と高分散担持性の両立が重要であることを炭素系担体の設計指針として明らかにし 197

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