助教 越川 皓永 (整数論,数論幾何学の研究)
代数多様体のコホモロジー,特に射影的で滑らかな多様体のコホモロ ジーに興味を持って研究している。少し違う言い方をすれば,純モチー フが研究対象といえる。純モチーフは,Langlands 対応により保型表現 とも対応するので,そのような関連分野や志村多様体にも興味を持って いる。
Bhatt-Morrow-Scholzeは,p進体上の良還元な多様体に対し,Fontaine の定義したp進周期環Ainf に係数を持つ新しいコホモロジー理論を構成
し,整p進Hodge理論の幾何的な理解を進展させた。[3]では,彼らの結
果の大部分を半安定還元の場合に拡張した。(Cesnaviˇˇ cius との共同研究)
Bhatt-Morrow-Scholze は,再び良還元の場合に,Breuil-Kisin 加群版の コホモロジーの構成にも成功し,さらにBhatt-Scholzeはプリズマティッ クコホモロジーという新しい枠組みを導入している。[7]では対数的幾何 におけるプリズマティックコホモロジーの理論の基礎を展開し,引き続き 研究中である。また,Ainf コホモロジーを相対的な状況に一般化する研 究もIldar Gaisin と行っている。
志村多様体のコホモロジーについてKottwitzの予想あるいはそれと関 連する消滅定理が知られている。最近では,Serre予想やTaylor-Wilesの 理論の一般化を背景に,これらの消滅定理の捩れ係数版も盛んに研究され
ている。Caraiani-Scholzeはコンパクトユニタリ志村多様体に対して,中
間次元以外である種のコホモロジー類が消滅するという結果を証明した。
一方,Harris-Taylorが局所Langlands 対応の証明で用いた志村多様体の クラスに対しては,Boyerによってより一般的にどの範囲でコホモロジー 類が消えるかをコントロールする結果が得られている。[6]ではBoyerの 結果と群論的な結果とを組み合わせて得られる消滅定理について調べた。
またBoyer の結果をCaraiani-Scholze のアプローチから一般化する,あ るいは理解するということも行ってきた。最近ではFargues-Scholzeによ り発表された局所Langlands対応の幾何化の理論をCaraiani-Scholze型の 消滅定理に応用するという研究をしている。
[1]ではアーベル多様体のFaltings高さを代数体上の純モチーフについ て一般化する研究を加藤和也のアイデアを修正して行った。正標数の関 数体類似に基づいて,[2]では純モチーフの代わりにそのp進実現である アイソクリスタルのisotriviality について調べた。[4]では有限体上のK3 曲面の自己積のTate予想を証明した。(伊藤和広,伊藤哲史との共同研
究) [5] では有理数体上のGL(3)のある1つの自己双対的でない保型表現
とvan GeemanとTopの純モチーフが実際に対応することを,Greni´eに よる先行研究を基に, 確認した。(伊藤哲史,三枝洋一との共同研究)
[1] On heights of motives with semistable reduction, preprint.
[2] Overconvergent unit-rootF-isocrystals and isotriviality, Math. Res.
Lett. 24 (2017), no. 6, 1707–1727.
[3] TheAinf-cohomology in the semistable case, Compositio Math. 155 (2019) 2039–2128. (with K. ˇCesnaviˇcius.)
[4] CM liftings of K3 surfaces over finite fields and their applications to the Tate conjecture, Forum Math. Sigma 9 (2021), e29. (with K. Ito and T. Ito.)
[5] Galois representations associated with a non-selfdual automorphic representation of GL(3), preprint. (with T. Ito and Y. Mieda.) [6] Vanishing theorems for the modpcohomology of some simple Shimura
varieties, Forum Math. Sigma 8 (2020), e38.
[7] Logarithmic prismatic cohomology I, preprint.