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樋口 隆晴

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Academic year: 2022

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氏 名 授 与 し た 学 位 専攻分野の名称 学 位 授 与 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文の題目

論 文 審 査 委 員

樋口 隆晴

博 士 歯 学

博甲第6374号 令和3年3月25日

医歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

インプラント術前検査としてデンタルエックス線撮影を用いた歯槽骨密度測定の 信頼性と妥当性

沢 禎彦 教授 飯田 征二 教授 河津 俊幸 准教授

学位論文内容の要旨

1. 緒言

本邦では急速な高齢化により骨粗鬆症患者が増加しており,潜在患者を含めると1300万人を超えると報 告されている.全身の骨密度低下は,歯槽骨の骨代謝にも影響を及ぼし,その結果生じる歯槽骨密度低下 は,口腔インプラント治療におけるオッセオインテグレーション獲得のリスク因子となる可能性が示唆 されている.しかし,現在確立されている医科用CTを用いた歯槽骨密度評価は,撮影コストや被曝等の問 題により,広く普及してはいない.また,口腔インプラント治療の術前検査に広く用いられている歯科用 コンビームCTでは,CT値から骨密度を定量的に評価することは困難である.そのため,術前にインプラン ト体埋入部位局所の骨密度を把握できる測定法は確立されておらず,欠損部の歯槽骨密度を評価する方 法の信頼性は明らかではない.

そのような中,近年デンタルエックス線写真を用いて歯槽骨密度(al-BMD)を評価可能なソフトウェア

(BoneRight,デンタルグラフィック・コム社)が承認された.このソフトウェアは,医科保険適用され ている骨密度検査である Microdensitometry (MD)法と同様に,一定のアルゴリズムに基づいた計算式か ら測定データの正規化と標準化を行うことでエックス線画像から骨密度を測定する手法で,これにより 簡便かつ低侵襲にal-BMDを評価することが可能となる.このソフトウェアでは,デンタルエックス線画 像上で,天然歯周囲の定められた関心領域を指定すると,al-BMDが自動的に算出される.そして,第一小 臼歯部のal-BMDが全身の骨密度と相関し,その個人のal-BMDの代表値として使用できることが明らかに なっており,数値が84.9以下であれば歯槽骨減少症,162.5以上であれば歯槽骨硬化症と診断される.

しかし,歯の欠損部のal-BMDを測定する方法は十分研究されておらず,口腔インプラント治療の術前検 査としての信頼性と妥当性は十分確認されていない.

そこで,本研究ではデンタルエックス線写真画像からal-BMDを定量的に評価できる市販ソフトウェアを 用いた欠損部al-BMD測定法を考案し,まず献体において撮影された画像から関心領域のal-BMDを測定す る信頼性と妥当性を確認することを目的とした.

2. 対象および方法

CCDセンサーに規定の参照体であるアルミステップウェッジを貼付して撮影した欠損部のデンタルエ ックス線写真画像上に,インプラント体埋入範囲を想定した3つの関心領域を設定し,市販ソフトウェ ア(BoneRight,デンタルグラフィック・コム社)を用いてal-BMDを測定した.本法で測定した欠損

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al-BMDは3つの関心領域それぞれの平均値とした.

対象は,生前に臨床研究への協力について同意を得た上で献体されたご遺体のうち,口腔内に歯の欠損を 有し,十分な歯槽骨量を有する献体とした.欠損部のデンタルエックス線撮影および頭部から腰部までの医 科用CT撮影を行った.

欠損部al-BMD測定の信頼性の検討は,テストリテスト法にて行った.2名の検者が独立して,1週間の

間隔を空けて 2回,al-BMD測定を行い,2 名の検者の検者内一致度および検者間一致度を,級内相関係 数(ICC)を用いて算出した.ICC を算出するために必要なサンプルサイズに関しては,Doros らの報告に 基づいて計算し,検者2名,有意水準5%,ICC推定値が0.8,信頼区間幅0.2の条件を満たすために必 要な枚数である50と決定した.撮影には口外汎用歯科エックス線診断撮影装置デントナビハンズ(ヨシ ダ社製)およびデジタルデンタルエックス線CCDセンサー(RFシステムlab社製)を使用し,CCDセン サーに参照体であるボーンライト用アルミステップウェッジを固定して行った.

妥当性の検討は,al-BMD測定部位と同部位のal-BMDを医科用CT画像から測定し,デンタルエックス 線写真で測定したal-BMDとの相関をスピアマンの相関係数を用いて検討した.また,al-BMDと全身の骨 密度との関連を検討するため,第一腰椎から第五腰椎の医科用CT画像に基づく骨密度平均値を全身の 骨密度の代表値とし,al-BMD との相関をスピアマンの相関係数を用いて検討した.統計解析には,市販 統計ソフトウエア(IBM SPSS Statistics)を使用し,統計学的有意水準はp<0.05とした.

医科用CT画像による骨密度測定には,参照体として京都科学株式会社製骨塩定量ファントムB-MAS200 を撮影部位に置き,全身用エックス線 CT 診断装置 Alexion(Canon メディカルシステム株式会社)にて CT撮影を行い,3D医用画像解析システムAZE VirtualPlace(Canonメディカルシステムズ株式会社)に てDICOMデータとして構築し,それをPixmeo社製医療画像管理ソフトウェアOsiriXに取り込み,CT値 の計測を行った.測定した関心領域のCT値と骨塩定量ファントムとの相関を確認することで関心領域の 骨密度を算出した.

3. 結果

al-BMD 計測の信頼性の検討に用いたデンタルエックス線写真画像は 88 枚(献体 29 体,死亡平均年

齢:84.2±8.1歳,男:女/18:11体,上/下顎:39/49枚,前/臼歯:30/58枚)であった.

2 名の検者のal-BMD平均値は,検者1で130.5±18.4,検者2で131.3±13.3であり,検者内一致度

(ICC)は,検者1では0.958(領域1:0.819,領域2:0.903,領域3:0.900),検者2では0.906(領域 1:0.982,領域2:0.911,領域3:0.881)であった.検者1と検者2の検者間一致度は,0.950(領域1:0.957,

領域 2:0.872,領域 3:0.870)であった.検者内・検者間一致度ともに級内相関係数が 0.81 以上となり

Landisらの基準に基づくと「ほぼ完全な一致」と評価された.

妥当性の検討において,歯槽骨密度との相関を評価したデンタルエックス線画像ならびにCT画像上で 評価した歯槽骨密度は86部位(献体28体,平均年齢:84.2±8.3歳,男:女/17:11体,上/下顎:38/48部 位,前/臼歯:30/56 部位,平均 107.1±23.5mg/cm3,男性平均 111.9±24.9mg/cm3,女性平均 94.2±

10.8mg/cm3),腰椎骨密度との相関を評価した椎体は121椎体(363スライス,平均78.8±17.4 mg/cm2)で あった.デンタルエックス線写真で測定されたal-BMDと医科用CT画像から測定したal-BMDの相関係数 はρ=0.79,p<0.01と有意な強い相関を認めた.一方でal-BMDと腰椎骨密度との相関係数はρ=0.33,

p=0.14と有意な相関が認められたとは言えなかった.

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4. 結論と考察

考案した欠損部al-BMD測定法の検者間一致度,検者内一致度は,「ほぼ完全な一致」と判断され,デン タルエックス線写真よりal-BMDを測定する際の信頼性は良好であった.また,デンタルエックス線写真 で測定した al-BMD と医科用 CT で測定した al-BMD は有意な強い相関を示し,良好な妥当性が確認でき た.

一方,本研究では,欠損部al-BMDと腰椎骨密度との間に有意な相関が認められたとは言えなかった.これ は低ホルマリン固定処理による死後骨質変化や脂肪組織等の軟組織の漏出,それに伴い生じた間隙や血管組 織への空気の迷入など,献体特有の条件が測定結果に影響している可能性が考えられる一方,腰椎等の海綿 骨においては不顕性圧迫骨折による骨密度の上昇がかなりの頻度で観察される可能性から,本関係の有無に 関して結論を導くには,患者様を対象にしたサンプルサイズの大きな多施設臨床研究の結果を待つべきと考 えられた.

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論文審査結果の要旨

高齢者に見られる顎骨の骨密度低下や骨異形成症や炎症に伴う骨の硬化性変化は,口腔イ ンプラント治療におけるオッセオインテグレーション獲得のリスク因子となる可能性が示 唆されている.術前にインプラント体埋入部位におけるこれら骨密度に関わるリスクの評 価は重要であるが,情報量が多く含まれる医科用 CT を用いた骨密度評価は,撮影コストや 被曝等の問題により広く普及しておらず,また,歯科用コンビーム CTでは骨密度の定量的 な評価は困難であるため,埋入部位局所での骨密度を把握できる簡便な検査法の導入が望 まれる.近年,医科骨密度検査である Microdensitometry 法を応用し,デンタルエックス線 画像から歯槽骨密度( al-BMD )を算出可能なソフトウェア( BoneRight,デンタルグラフ ィック・コム社)が開発された.しかし,インプラント治療 を想定した歯の欠損部での al- BMD を測定する方法は確立されていない.そこで学位申請者は本ソフトウェアによる骨質 評価をインプラント術前検査へ導入をすべく,歯牙欠損部での安定したal-BMD測定法を考 案し,献体の歯牙欠損部で撮影したデンタルエックス線写真から算出した al-BMD と医科用 CTとの計測値を比較して本法の信頼性と妥当性を検討した.

研究結果は,以下の内容であった.

1. 撮影した歯牙欠損部においてデンタルエックス線写真上で,2名の検者がインプラント埋 入を想定した部位を策定し,その部位のal-BMDを測定した.測定されたal-BMD値の検者間 一致度・検者内一致度を級内相関係数を用いて検討した.その結果,検者間一致度・検者 内一致度はほぼ完全に一致していると判断された.

2. al-BMD測定法により計測された欠損部 al-BMD値と,医科用CTにて計測された同部位の歯槽

骨密度値の相関を,スピアマンの順位相関係数を用いて検討した.その結果,両測定によ る歯槽骨密度の値は有意に相関していた.

3. al-BMD測定法により計測された欠損部 al-BMD値と,同一献体において医科用CTにて計測さ

れた腰椎骨密度値の相関をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した.その結果,欠損 部al-BMD 値と腰椎骨密度値に有意な相関はなかった.

以上の結果より,本研究で提案された欠損部歯槽骨密度評価法については,医科用 CTと 同様に評価に十分な信頼性ならびに妥当性が確認された.そのため,簡便かつ低侵襲,低 コストである本評価法が今後のインプラント術前検査に有用なものとなると考えられ,今 後のさらなる発展が望まれる新たな研究と考えられた.

よって,審査委員会は本論文に博士(歯学 )の学位論文としての価値を認める.

参照

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