トンネル覆工コンクリートへの収縮低減型混和剤の適用効果
㈱竹中土木 正会員 ○吉田 邦勝 同 安藤慎一郎 松田 隆文 西尾 泰三
㈱竹中工務店 正会員 三井 健郎 井上 和政
竹本油脂㈱ 正会員 木之下光男 同 齊藤 和秀 稲垣 順司
1.目 的
トンネルにおける二次覆工コンクリートは,巻厚が薄く,側壁 からアーチ下部までを検査窓からの順打ち,クラウン部を吹上げ 打設方式とし,養生時間
12~20
時間程度1)で打設翌日には脱型 する施工サイクルを特徴としている.筆者らはコンクリートの品質やコストが改めて問われる昨今,
収縮低減型コンクリート混和剤(以下,SR という)を用いた低収 縮コンクリートの検討を進めている.この度,実トンネルの 覆工コンクリートに
SR
を適用する機会を得たので,実測し た収縮低減効果について報告する.2.実験概要 2.1 目標性能
本検討に用いた低収縮コンクリートの目標性能は,表
2-1
に示す通り,特記仕様書に基づき現行配合と同等以上のフレ ッシュ性状,硬化物性に加え,ひび割れ抑制のために必要な 値として収縮低減率10~15%の確保とした.
2.2 実施工適用コンクリート配合の試験練り (1)収縮低減型混和剤(SR)の概要
使用した
SR
は減水成分と収縮低減成分の性能を兼ね 備えたハイブリッド混和剤である.高性能AE
減水剤の 減水成分として実用化されているポリカルボン酸系ポ リマーに,ポリエーテル誘導体から成る収縮低減成分を 加え一液化している2).(2)使用材料とコンクリート配合および試験方法
試験練りの使用材料を表
2-2
に,検討したコンクリー ト配合を表2-3
に示す.試験は表2-4
に示す通りに行っ た.なお低収縮配合ではSR
の収縮低減成分量を変化さ せ,ワーカビリティー及び収縮低減効果の確認を行った.(3)試験結果
試験練りの結果をまとめて図
2-1
に示す.フレッシュ 性状については①スランプおよび②空気量(注水後60
分),硬化物性については③圧縮強度(材齢18hr(脱型強
度),4W(設計基準強度))および④乾燥収縮量(乾燥材齢4W)を,⑤コスト評価を加えて総合評価を行った.乾燥
収縮量については材齢
26W
での10~15%低減を目標としているため,材齢 4W
時点での判断では20%以上
の低減(実績より設定)とした.その結果,本試験施工で用いる低収縮コンクリートの配合は「SR 改②」,或いは「SR改③」が適当と判断されたが,コスト検討を加え「SR改②」配合を選定するものとした.
表
2-1 目標性能
性能項目 単 位 目標性能 コンクリートのタイプ 普通 ・ 低収縮
スランプ cm 15.0±2.5
空気量 % 4.5±1.5
フレッシュ性状
塩化物イオン量 kg/m3 0.30以下 設計基準強度 N/mm2 18.0 強度管理材齢 日 28
18hr脱型強度 N/mm2 3.0
硬化物性
収縮低減率* % 10~15 但し,*低収縮配合のみ(乾燥材齢26W)
表
2-2 使用材料
項目 略号 仕様
セメント C 高炉セメントB種 S社製 密度3.02g/cm3 フライ
アッシュ FA フライアッシュⅡ種 密度2.33g/cm3 細骨材 S
表乾密度2.59g/cm3混合質量比S1:S2=3:7 S1:海砂(熊本県八代市産)
S2:海砂(佐賀県唐津市産)
粗骨材 G
表乾密度2.63 g/cm3混合質量比G1:G2=6:4 G1:砕石(熊本県芦北町産)
G2:砕石(熊本県芦北町産)
混和剤 Ad Ad1:AE減水剤(SV)F社製
Ad2:収縮低減型混和剤(SR)T社製
表
2-3
検討コンクリートの配合単位量(kg/m3) 粉体量B
配 合 No.
* 設計 基準 強度
Gmax
(mm) W/C
(%) S/a
(%)
水 W セメ
ント C
フライアッ シュ FA
細 骨材
S 粗 骨材
G Ad1 (SV) Ad2
(SR) 収縮低 減成分 1 57.0 44.0 176 309 40 728 1004 3.71 -
2 - 1.5
3 - 2.0
4
21 40
53.7 44.8 160 298 39 787 994
- 2.5 特
記 18 - 60
以下 - - 270
以上 - - - - -
*No.1:現行配合,No.2~4:低収縮配合SR改①,SR改②,SR改③
表
2-4 試験項目一覧
試験時期 注水後(分) 分
類 試験項目 試験方法 練直
後 30 60
スランプ JIS A 1101 〇 〇 〇
空気量 JIS A 1128 〇 〇 〇
コンクリート温度 温度計 〇 〇 〇
フレッシュ性状
単 位 容積 質 量 JIS A 1116
静置後,人力 攪拌
〇 〇 〇 圧縮強度 JIS A 1108 18hr,1・4W - - 〇
硬化物性 乾燥収縮量
□15,□10cm JIS A 1129 材齢 1,2,3,
4,8,13,26W - - 〇
キーワード 低収縮コンクリート,収縮低減型混和剤,トンネル覆工,ひずみ実測
連絡先 〒270-1395 千葉県印西市大塚1-5-1 竹中技術研究所 建設技術研究部 材料部門TEL0476-47-1700 FAX0476-47-3080
土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)
‑533‑
Ⅵ‑267
2.3 実施工での計測実験 (1)概 要
実施工での計測実験は,熊本県発注:国道
389
号地域連携推進改築 (下田南2
号トンネル)工事(延 長=772m,施工場所:天草市天草町下田南)にて行 った.図2-2
に坑口部の状況を示す.計測実験は,覆工コンクリート全
74
ブロックの うち,No.45・46の2
ブロック(CⅠ支保パターン) を対象に行った.No.45
は現行配合(08/9/30打設),No.46
は試験練りにて選定した低収縮配合SR
改②(同
10/01
打設)であり,実施工に際して採取した試料の品質は両配合とも前述の試験練り時と同等 であった.またコンクリートひずみの計測位置 は図
2-3
に示す通りとし,クラウン・アーチの 巻厚方向3
点(①岩着,②中央,③表面)に埋込み ひずみ計等を設置した(表2-5
参照).埋込みひず み計位置の防水シート表面には充填感知センサ を設置してコンクリートの充填を確認し ている.なお計測頻度は打設後1ヶ月:1 時間毎,2~3
か月:3
時間毎,4
ヶ月以降:6
時間毎とし,計測予定期間は工事完了ま で(09/9/30)を予定した.(2)計測結果
打設後約
5
ヶ月間の計測結果を表2-6,図 2-4
に示す.覆工コンクリートひずみは,現行配合:54~236μに対して低収縮配合 SR
改②:71~171μであった.収縮低減効果は,巻厚深度方向
で若干異なり①岩着(20.4%)>③表面(15.0%)>②中央(13.1%)の順となっている.適用した
SR
改②配合の試験練りでの結果は20%程度の低減
率であったが,実施工でもほぼ同等の効果であ ることを確認できた.全体的にはSR
使用によ って均質な収縮ひずみ低減を確認できており,覆工表面へのひび割れ発生も観察されていない
(09/04/07時点).
3.おわりに
以上,
SR
の収縮低減成分の添加量を変化させ ることでワーカビリティーの確保とともに一定 の収縮低減効果を確認できた.今後とも調査を 継続し低収縮コンクリートの検討を進める予定 である.0%
20%
40%
60%
80%
0 5 10 15 20
① ② ③
現行配 合
低収縮 配合
低下率(%)
スランプ(cm)
配 合 スランプ
練直後 注水30分後 注水60分後 練直後 注水30分後 注水60分後
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
① ② ③
現行配 合
低収縮 配合
低下率(%)
空気量(%)
配 合 空気量
練直後 注水30分後 注水60分後 練直後 注水30分後 注水60分後
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0 10 20 30 40 50
① ② ③
現行配 合
低収縮 配合
1 2 3 4
発現率(%)
圧縮強度(N/mm2)
配 合 圧縮強度
18 時間 7 日(1W) 28 日(4W) 18 時間 7 日(1W) 28 日(4W)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0 100 200 300 400 500
□100 □150 □100 □150 □100 □150 □100 □150
① ② ③
低減率(%)
乾燥収縮量(μ)
配 合 乾燥収縮量
7 日(1W) 14 日(2W) 21 日(3W) 28 日(4W) 7 日(1W) 14 日(2W) 21 日(3W) 28 日(4W)
図
2-1 試験練り結果まとめ
中央部 縦断方向 10.5m 0.3m
クラウン
円周方向
12.0m
①岩盤
②中央 アーチ ③表面
中央部 縦断方向 10.5m 0.3m
クラウン
円周方向
12.0m
①岩盤
②中央 アーチ ③表面
図
2-3 実施工計測装置設置位置
-300 -200 -100 0 100 200
コンクリートひずみ(μ)
現行配合(No.45)
45ク岩円 45ク岩軸 45ク中円 45ク中軸 45ク中厚 45ク表円 45ク表軸 45ア岩円 45ア岩軸 45ア中円 45ア中軸 45ア中厚 45ア表円 45ア表軸
-300 -200 -100 0 100 200
コンクリートひずみ(μ)
低収縮配合②(No.46)
46ク岩円 46ク岩軸 46ク中円 46ク中軸 46ク中厚 46ク表円 46ク表軸 46ア岩円 46ア岩軸 46ア中円 46ア中軸 46ア中厚 46ア表円 46ア表軸
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
2008/9/25 2008/9/30 2008/10/5 2008/10/10 2008/10/15 2008/10/20 2008/10/25 2008/10/30 2008/11/4 2008/11/9 2008/11/14 2008/11/19 2008/11/24 2008/11/29 2008/12/4 2008/12/9 2008/12/14 2008/12/19 2008/12/24 2008/12/29 2009/1/3 2009/1/8 2009/1/13 2009/1/18 2009/1/23 2009/1/28 2009/2/2 2009/2/7 2009/2/12 2009/2/17 2009/2/22 2009/2/27 2009/3/4 2009/3/9
湿度(%RH)
日 時
天草下田2号トンネル(No.45,46)坑内環境
%RH ゚C 多項式 (%RH) 多項式 (゚C)
温度(℃)
図
2-4 実施工計測結果
表
2-6 計測ひずみ比較
巻厚位置 現行配合
(平均) 低収縮配合
(平均)
低減率収縮 (%) 岩着 ① 135~186
(161) 122~133 (128) 20.4 中央 ② 116~236
(176) 135~171 (153) 13.1 表面 ③ 54~159
(107) 71~111 (91) 15.0
図
2-2 下田南 2
号トンネル 表2-5 計測器設置
項 目 位置 数量 摘要 埋込み型ひずみ計 ①② 20 ひずみゲージ ③ 8 無応力計 ② 2 コンクリート表面温度計 ③ 4 温湿度計 ③ 1 コンクリート充填感知センサ ① 18
自動 計測
風速計 ③ 1 手動
〔参考文献〕
1)土木学会;山岳トンネル覆工の現状と対策,pp58
2)木之下ほか;ハイブリッド高性能AE減水剤を用いた耐久性改善コン クリートの性質,土木学会第63回年次講演会,5-243,pp485-486
土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)
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